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特開2024-149751殺菌剤組成物および殺菌効力増強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149751
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】殺菌剤組成物および殺菌効力増強方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/36 20090101AFI20241010BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241010BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20241010BHJP
   A01N 31/04 20060101ALI20241010BHJP
   A01N 31/06 20060101ALI20241010BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20241010BHJP
   A01N 31/14 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A01N65/36
A01P3/00
A01N31/02
A01N31/04
A01N31/06
A01N31/08
A01N31/14
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134425
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2020046775の分割
【原出願日】2020-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 裕之
(72)【発明者】
【氏名】市村 由美子
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
(57)【要約】
【課題】低刺激性の殺菌成分を含有する殺菌剤組成物および殺菌効力増強方法を提供する。
【解決手段】(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のカルベオール、ピノカルベオール、イソプレゴール、カルバクロール、エチルリナロール、ペリラアルコール、ミルテノール、シンナミルアルコール、アニスアルコールから選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる殺菌剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のカルベオール、ピノカルベオール、イソプレゴール、カルバクロール、エチルリナロール、ペリラアルコール、ミルテノール、シンナミルアルコール、アニスアルコールから選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる殺菌剤組成物。
【請求項2】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する殺菌剤組成物に、
(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のカルベオール、ピノカルベオール、イソプレゴール、カルバクロール、エチルリナロール、ペリラアルコール、ミルテノール、シンナミルアルコール、アニスアルコールから選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とする殺菌効力増強方法。
【請求項3】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のリナロール、ゲラニオール、ネロールから選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる殺菌剤組成物(但し、(B)殺菌効力増強成分が植物精油として配合される場合を除く)。
【請求項4】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のベンジルアルコール、チモール、メントールから選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる殺菌剤組成物(但し、植物精油を含む場合を除く)。
【請求項5】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のベンジルアルコールと、を水に混合してなる殺菌剤組成物(但し、植物精油および/又は1,3-プロパンジオールを含む場合を除く)。
【請求項6】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のテルピネオールと、を水に混合してなり、エタノールを含まない殺菌剤組成物。
【請求項7】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のチモールと、を水に混合してなる殺菌剤組成物(但し、チモールを植物精油として含む場合、チモール以外に植物精油および/又は安息香酸を含む場合を除く)。
【請求項8】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のメントールと、を水に混合してなる殺菌剤組成物(但し、メントールを植物精油として含む場合、メントール以外に植物精油を含む場合を除く)。
【請求項9】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のチモールと、を水に混合してなる殺菌剤組成物(但し、チモールを植物精油として含む場合、安息香酸および/又はビグアナイド系殺菌剤および/又は4級アンモニウム塩系殺菌剤および/又はアルカンジオールを含む場合を除く)。
【請求項10】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のメントールと、を水に混合してなる殺菌剤組成物(但し、メントールを植物精油として含む場合、ビグアナイド系殺菌剤および/又は4級アンモニウム塩系殺菌剤および/又はアルカンジオールを含む場合を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌成分を水溶液中に配合して成る殺菌剤組成物、および殺菌剤組成物の殺菌効力増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室・トイレ、キッチン等のタイル、目地、プラスチックに付着する汚れの中には、細菌やカビによって発生する汚れやぬめりなどがある。このような細菌やカビによる汚れは、次亜塩素酸塩を主成分とする液体洗浄剤などで、日常的に殺菌を行うことで、発生を予防することができる。しかし、次亜塩素酸製剤は、酸性タイプの漂白剤等と混用すると危険な塩素ガスを発生することから、本来的には使用を制限すべき製品であるが、他に置き換える製品が存在しないため現在でも広く使用されている。こうした現状から、安全性が高く、且つ殺菌効果の高い洗浄剤が要望されている。
【0003】
このような細菌を除菌、殺菌するために、殺菌成分としてエタノールを配合したスプレータイプの殺菌剤が広く用いられている。しかし、エタノールは引火性を有するため、キッチン周り等の火を使う場所での使用には注意が必要であった。また、エタノールを含む殺菌剤を樹脂製部材に塗布した際に塗装やワックスの剥がれが発生するおそれもあり、エタノールの匂いが苦手な人やエタノールで手が荒れる人には使用し難いという問題点もあった。さらに、キッチン周りには食品や食器等が存在するため、それらに付着しても健康に影響のない安全性の高い殺菌剤が要望されていた。
【0004】
そこで、食品添加物として使用される安全性の高い殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物を配合した殺菌剤が提案されている。例えば、特許文献1には、除菌剤としてグレープフルーツ種子抽出物を含有する30~100%濃度のエチルアルコール溶液からなる口腔内衛生用具の消毒液が開示されている。また、除菌効力を持つ香料成分を配合することで除菌性能を向上できることも記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、「寒天表面コーティングテスト」(ASCT)、「蒸気相テスト」(VPT)又は「直接噴霧法」(DSM)によって測定された少なくとも80%の抗菌活性を有する香料成分、及びグレープフルーツ種子エキス、カラクサケマンエキス、フマル酸又はフマル酸エステル又は乳酸エステルからなるグループから選択された有効成分を含むことを特徴とする抗菌性香料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-10904号公報
【特許文献2】特表2002-528566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の口腔内衛生用具の消毒液は、エタノールを主成分とするため引火性やエタノールによる刺激性の問題があった。また、特許文献2の抗菌性香料組成物は、ボディーケア又はヘアケア用の生成物の賦香を目的としており、特許文献1、2の組成物はいずれも浴室・トイレ、キッチン等の除菌を目的とするものではなかった。さらに、特許文献1、2には、特定の化合物を配合することによるグレープフルーツ種子抽出物の殺菌効力の増強効果、即ち、グレープフルーツ種子抽出物と特定の化合物との相乗効果について何ら記載されていなかった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、低刺激性の殺菌成分を含有する殺菌剤組成物、および殺菌効力増強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のカルベオール、ピノカルベオール、イソプレゴール、カルバクロール、エチルリナロール、ペリラアルコール、ミルテノール、ネロール、シンナミルアルコール、アニスアルコールから選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる殺菌剤組成物である。
【0010】
また本発明は、(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する殺菌剤組成物に、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のカルベオール、ピノカルベオール、イソプレゴール、カルバクロール、エチルリナロール、ペリラアルコール、ミルテノール、ネロール、シンナミルアルコール、アニスアルコールから選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とする殺菌効力増強方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の構成によれば、(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のカルベオール、ピノカルベオール、イソプレゴール、カルバクロール、エチルリナロール、ペリラアルコール、ミルテノール、シンナミルアルコール、アニスアルコールから選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合することにより、殺菌成分として次亜塩素酸やアルコールを含まず低刺激性であり、且つ高い殺菌効力を備えた殺菌剤組成物となる。
【0012】
また、本発明の第2の構成によれば、(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する殺菌剤組成物に、(B)殺菌効力増強成分として0.03質量%以上10質量%以下のカルベオール、ピノカルベオール、イソプレゴール、カルバクロール、エチルリナロール、ペリラアルコール、ミルテノール、シンナミルアルコール、アニスアルコールから選ばれた1種又は2種以上を添加することにより、殺菌成分であるグレープフルーツ種子抽出物の殺菌効力を向上させることができ、高い殺菌効力を備えた殺菌剤組成物を製造可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の殺菌剤組成物について詳細に説明する。本発明の殺菌剤組成物は、(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として水酸基を1個含むメンタン類化合物、α,β-不飽和アルコール構造を有する化合物、α,β-不飽和アルデヒド構造を有する化合物から選ばれた1種又は2種以上と、を(C)水に混合して水溶液としたものである。
【0014】
本発明の殺菌剤組成物に殺菌成分として配合される(A)グレープフルーツ種子抽出物は、グレープフルーツの種子から抽出した天然由来の殺菌、抗菌成分であり、食品添加物として認められている。また、揮発性が小さく持続的な殺菌、抗菌活性を有する。従来、グレープフルーツ種子抽出物が単独である程度の殺菌効力を有することは知られていた。しかし、グレープフルーツ種子抽出物と、後述する特定の殺菌効力増強成分とを併用することで、相乗的に殺菌効力を発揮することは、本発明者らによって初めて発見された知見である。
【0015】
本発明の殺菌剤組成物におけるグレープフルーツ種子抽出物の配合量は、特に限定されないものの、配合量が少なすぎる場合は十分な殺菌効力が得られない可能性がある。十分な殺菌効力を得るためには、グレープフルーツ種子抽出物を殺菌剤組成物全体に対して0.005質量%以上配合することが好ましい。
【0016】
一方、グレープフルーツ種子抽出物の配合量が多すぎる場合、殺菌効力の顕著な向上が期待できない上に、非常に高価なものになり、汎用性がなくなってしまう。配合量と殺菌効力とのバランスを考慮すると、グレープフルーツ種子抽出物の配合量を殺菌剤組成物全体に対して10.0質量%以下とすることが好ましく、5.0質量%以下とすることがより好ましく、1.0質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0017】
本明細書中でいう「メンタン類化合物」は、芳香族メンタン、不飽和脂肪族メンタン、飽和脂肪族メンタン等が挙げられるが、例示すると、下記化学式(1)で示されるシクロヘキサン環の1位と4位にメチル基とイソプロピル基が置換したp-メンタンの炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が置換基で置換された化合物や、p-メンタンの単結合の少なくとも1つが二重結合に置き換わった化合物等が挙げられる。置換基としては、例えば、水酸基、エーテル性酸素原子(-O-)、アミノ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、エステル基、アミド基等が挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
メンタン類化合物の具体例としては、チモール、カルバクロール等の芳香族メンタン、d-リモネン等のリモネン、α-テルピネオール等のテルピネオール、カルベオール、メントン、d-カルボン、l-カルボン等のカルボン、ピノカルボン、ピノカルベオール、ピペリトン、ピペリテノン、プレゴン、ジヒドロカルボン、1,8-シネオール等の不飽和脂肪族メンタン、メントール、酢酸メンチル、p-メンタン等の飽和脂肪族メンタンが挙げられるが、これらに限定されない。なお、本発明におけるメンタン類化合物に不斉炭素に基づく光学異性体や二重結合に基づく幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物であっても良い。
【0020】
本発明の殺菌剤組成物に(B)殺菌効力増強成分として配合される、水酸基を1個含むメンタン類化合物は、上記のメンタン類化合物が置換基として1個の水酸基を含むものである。水酸基を1個含むメンタン類化合物の具体例としては、α-テルピネオール等のテルピネオール、L-メントール等のメントール、カルベオール、ピノカルベオール、イソプレゴール、チモール、カルバクロール等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0021】
本発明の殺菌剤組成物に(B)殺菌効力増強成分として配合される、α,β-不飽和アルコール構造を有する化合物の具体例としては、リナロール、ベンジルアルコール、ゲラニオール、エチルリナロール、1-フェニルエタノール、ペリラアルコール、ミルテノール、ネロール、シンナミルアルコール、アニスアルコール等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。なお、本発明におけるα,β-不飽和アルコール構造を有する化合物に不斉炭素に基づく光学異性体や二重結合に基づく幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物であっても良い。
【0022】
本発明の殺菌剤組成物に(B)殺菌効力増強成分として配合される、α,β-不飽和アルデヒド構造を有する化合物の具体例としては、ペリルアルデヒド、シトラール、サフラナール、シンナムアルデヒド、クミンアルデヒド、アニスアルデヒド等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。なお、本発明におけるα,β-不飽和アルデヒド構造を有する化合物に不斉炭素に基づく光学異性体や二重結合に基づく幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物であっても良い。
【0023】
上述した化合物の中でも、特に、リナロール、カルベオール、テルピネオール、メントール、ベンジルアルコール、ゲラニオール、チモール、カルバクロール、およびペリルアルデヒドから選ばれた1種又は2種以上を用いることで、低い配合量で殺菌成分であるグレープフルーツ種子抽出物の殺菌効力を顕著に向上することができる。
【0024】
本発明の殺菌剤組成物における殺菌効力増強成分の配合量は、特に限定されないものの、配合量が少なすぎる場合はグレープフルーツ種子抽出物の殺菌効力に対する十分な増強効果が得られない可能性がある。十分な殺菌効力増強効果を得るためには、殺菌効力増強成分を殺菌剤組成物全体に対して0.03質量%以上配合することが好ましい。
【0025】
一方、殺菌効力増強成分の配合量が多すぎる場合、殺菌効力増強効果の顕著な向上が期待できない上に、殺菌剤組成物のコストが高くなる。配合量と殺菌効力増強効果とのバランスを考慮すると、殺菌効力増強成分の配合量を殺菌剤組成物全体に対して10.0質量%以下とすることが好ましく、5.0質量%以下とすることがより好ましく、0.5質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0026】
本発明の殺菌剤組成物には、必要に応じて界面活性剤を配合することができる。例えば、界面活性剤には泡を発生する性質(泡立ち性)があり、泡立ち性に優れた界面活性剤を使用することで、本発明の殺菌剤組成物をトリガースプレー等で壁面にスプレーしたときの液ダレを抑制するとともに塗布領域も視認しやすくなる。
【0027】
本発明の殺菌剤組成物に配合される界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも好適に用いられる。本発明の殺菌剤組成物中における界面活性剤の配合量は、特に限定されないものの、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0028】
アニオン界面活性剤の例としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α―オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などが挙げられる。
【0029】
カチオン界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0030】
ノニオン界面活性剤の例としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
【0031】
両性界面活性剤の例としては、ベタイン型界面活性剤が挙げられる。具体的には、ラウリル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、ラウリルアミドプロピル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピル-N,N-ジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン等が挙げられる。
【0032】
本発明の殺菌剤組成物は、水系タイプであり、溶媒としては主に水が用いられる。水としては、イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等が挙げられる。
【0033】
更に、本発明の殺菌剤組成物には、その他の成分として、必要に応じて、無機抗菌剤、有機抗菌剤、防藻剤、防錆剤、溶剤、キレート剤、香料、消臭成分等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することにより、抗菌効果、防藻効果、防錆効果、洗浄効果、芳香性、消臭性等を付与するようにしてもよい。
【0034】
こうして得られた本発明の殺菌剤組成物を、キッチンや浴室の排水口、タイル目地等、細菌やカビの発生しやすい箇所に塗布あるいはスプレーすることで、細菌やカビを効果的に除去することができる。そして、本発明の殺菌剤組成物は、危険で取り扱いにくい次亜塩素酸殺菌剤や刺激臭のある酸性殺菌剤と異なり、安全に、かつ簡単に施用できるので極めて実用性が高いものである。
【0035】
また、本発明の殺菌剤組成物は、殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、殺菌効力増強成分として特定の化合物とを水に配合するだけの、非常に単純な組成であり、エタノール等のアルコールの配合を必須としない。そのため、製造が簡便なうえ、多くの殺菌剤で問題となる皮膚への刺激性も小さく、安全性が極めて高いものである。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、実施例により本発明の効果について更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
【実施例0037】
[試験液の調製]
(A)グレープフルーツ種子抽出物(エービーシーテクノ社製)、(B)リナロール、L-メントール、テルピネオール(以上、塩野香料社製)、カルベオール、ベンジルアルコール、ゲラニオール、チモール、カルバクロール、ペリルアルデヒド(以上、和光純薬工業社製)を表1に示す配合割合(質量%)で配合し、精製水を加えて100重量%として試験液(本発明1~9)を得た。
【0038】
(A)グレープフルーツ種子抽出物(エービーシーテクノ社製)、リナロール、L-メントール、テルピネオール(以上、塩野香料社製)、カルベオール、ベンジルアルコール、ゲラニオール、チモール、カルバクロール、ペリルアルデヒド、アセトフェノン、フェネチルアルコール、p-メンタン-3,8-ジオール(以上、和光純薬工業社製)を表2に示す配合割合(質量%)で配合し、精製水を加えて100重量%として試験液(比較例1~14)を得た。
【実施例0039】
[除菌効果の確認試験(Staphylococcus aureus)]
本発明、比較例の試験液990μLに、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の培養液10μLを接種してよく攪拌した後、混合液をSCDLP培地で100倍希釈した。接種から希釈までの処理時間は60秒とした。この希釈液を滅菌済みのプラスチックシャーレに固化させておいたSCDLP寒天培地上に100μL滴下し、コンラージ棒でよく延ばした後、37℃で培養を行い、発生するコロニー数を計測した。また、対照例(ネガティブコントロール)として試験液の代わりに滅菌水を用いたものも用意した。試験液で処理したものと対照例のコロニー数の比較により除菌率を算出した。
【0040】
評価基準としては、除菌率が99%以上の場合を◎、除菌率が90%以上99%未満の場合を○、除菌率が90%未満の場合を×とした。除菌効果の試験結果を試験液の配合と併せて表1、表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1に示すように、(A)グレープフルーツ種子抽出物と、(B)リナロール、L-メントール、テルピネオール、カルベオール、ベンジルアルコール、ゲラニオール、チモール、カルバクロール、ペリルアルデヒドから選ばれる1種以上の香料成分とを配合した本発明1~9では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して除菌率が90%以上となった。
【0044】
特に、グレープフルーツ種子抽出物と、リナロール、カルベオール、テルピネオール、ベンジルアルコール、ゲラニオール、チモール、カルバクロールのいずれかを配合した本発明1~8では除菌率が99%以上となり、短時間(1分間)の処理で細菌が完全に死滅した。
【0045】
また、グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.10質量%、L-メントールの配合量が0.0005質量%である本発明4、およびグレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.10質量%、L-メントールの配合量が0.015質量%である比較例6の結果より、L-メントールの配合量が0.03質量%以上で即効的かつ十分な除菌効果が認められた。
【0046】
これに対し、表2に示すように、グレープフルーツ種子抽出物、リナロール、L-メントール、テルピネオール、カルベオール、ベンジルアルコール、ゲラニオール、チモール、カルバクロール、ペリルアルデヒドのみを配合した比較例1~11では除菌率が90%未満となり、除菌効果が十分でなかった。
【0047】
特に、グレープフルーツ種子抽出物の配合量を0.10質量%として、リナロール、L-メントール、テルピネオール、カルベオール、ベンジルアルコール、ゲラニオール、チモール、カルバクロール、ペリルアルデヒドのいずれかを0.03~1.00質量%配合した本発明1~9と、グレープフルーツ種子抽出物のみを0.10質量%配合した比較例1の結果より、グレープフルーツ種子抽出物と共に上記の化合物を配合することで即効的かつ十分な除菌効果が認められた。
【0048】
また、グレープフルーツ種子抽出物の配合量を0.10質量%として、アセトフェノン、フェネチルアルコール、p-メンタン-3,8-ジオールのいずれかを0.05~0.5質量%配合した比較例12~14では十分な除菌効果は認められないことから、グレープフルーツ種子抽出物と共に配合する化合物の種類によって十分な相乗効果が認められるものと、相乗効果が認められないものがあることが確認された。
【0049】
以上の結果から、グレープフルーツ種子抽出物と、リナロール、メントール、テルピネオール、カルベオール、ベンジルアルコール、ゲラニオール、チモール、カルバクロール、ペリルアルデヒドから選ばれた1種又は2種以上と、を水に配合することで、黄色ブドウ球菌に対する殺菌剤組成物として作用することが確認された。
【0050】
また、リナロール、メントール、テルピネオール、カルベオール、ベンジルアルコール、ゲラニオール、チモール、カルバクロール、ペリルアルデヒドは、グレープフルーツ種子抽出物と共に配合することで、グレープフルーツ種子抽出物の殺菌効力増強成分として作用することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、低刺激性の殺菌成分を含有し、安全性にも優れた殺菌剤組成物、および殺菌効力増強方法であり、特にキッチンや浴室等で使用される殺菌剤組成物として好適に用いられる。