(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149755
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20241010BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241010BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241010BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241010BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241010BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20241010BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241010BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241010BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241010BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657A
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/78 657F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 657D
H01L29/78 655B
H01L29/78 658H
H01L29/78 652J
H01L21/60 321E
H02M7/48 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134512
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2020119115の分割
【原出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 彰浩
(57)【要約】
【課題】半導体チップの上面と配線とをはんだ等で接続する場合に、はんだ等におけるボイドの発生を抑制することが好ましい。
【解決手段】並列接続された第1の半導体チップおよび第2の半導体チップと、前記第1の半導体チップの上面と接続する第1の配線と、前記第2の半導体チップの上面と接続する第2の配線とを備え、それぞれの前記配線は、前記半導体チップの上面に接合される板状のチップ接続部を有し、前記第1の半導体チップの上面の面積と、前記第2の半導体チップの上面の面積が同一であり、前記第1の配線の前記チップ接続部と、前記第2の配線の前記チップ接続部の形状が異なる半導体モジュールを提供する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された第1の半導体チップおよび第2の半導体チップと、
前記第1の半導体チップの上面と接続する第1の配線と、
前記第2の半導体チップの上面と接続する第2の配線と
を備え、
それぞれの前記配線は、前記半導体チップの上面に接合される板状のチップ接続部を有し、
前記第1の半導体チップの上面の面積と、前記第2の半導体チップの上面の面積が同一であり、
前記第1の配線の前記チップ接続部と、前記第2の配線の前記チップ接続部の形状が異なる
半導体モジュール。
【請求項2】
それぞれの前記半導体チップは、
半導体基板と、
前記半導体基板の上面に選択的に設けられた保護層と
を有し、
前記第1の半導体チップは、前記半導体基板の上方にダイオード素子を有し、
前記第1の半導体チップの前記保護層は、前記ダイオード素子を覆っている
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
それぞれの前記半導体チップは、前記半導体基板の上方における複数の領域に設けられたエミッタ電極を備え、
前記ダイオード素子は前記エミッタ電極に挟まれて配置されている
請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記ダイオード素子は、前記半導体基板の中心位置と重なって配置されている
請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記第1の半導体チップの前記保護層は、前記ダイオード素子を覆い、且つ、前記第1の半導体チップの上面における第1の方向に延伸する第1延伸保護部を有し、
前記第2の半導体チップの前記保護層は、前記第2の半導体チップにおいて、前記第1の半導体チップにおける前記ダイオード素子が設けられた第1領域に対応する位置、且つ、前記第1領域と同じ大きさの第2領域の一部を覆い、且つ、前記第2の半導体チップの上面における前記第1の方向に延伸する第2延伸保護部を有し、
上面視において、前記第2延伸保護部の面積は、前記第1延伸保護部の面積よりも小さい
請求項3または4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記第1延伸保護部は、
前記ダイオード素子を覆うダイオード保護部と、
前記ダイオード保護部から延伸して設けられ、前記ダイオード保護部よりも幅の小さい幅狭部と
を有し、
前記第2延伸保護部は、前記ダイオード保護部よりも幅が小さい
請求項5に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記第2延伸保護部の幅は、前記幅狭部の幅と同一である
請求項6に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記第1の配線の前記チップ接続部は、上面視において、前記ダイオード素子を囲む辺を有し、且つ、前記辺の一部から前記ダイオード素子と重なる位置までスリットが設けられている
請求項2から7のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記第2の配線の前記チップ接続部は、前記第2の半導体チップにおいて、前記第1の半導体チップにおける前記ダイオード素子が設けられた第1領域に対応する位置、且つ、前記第1領域と同じ大きさの第2領域と重なっている
請求項2から8のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記第1の半導体チップの前記半導体基板は、上面視において前記保護層と重ならない位置に、欠陥密度がピークを示す第1ライフタイム調整部を有し、
前記第2の半導体チップの前記半導体基板は、上面視において前記第1ライフタイム調整部と対応する位置に、欠陥密度がピークを示す第2ライフタイム調整部を有する
請求項2から9のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項11】
前記第2の半導体チップは、前記第2延伸保護部の下方に設けられたゲートランナーを備える
請求項5から7のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の半導体チップを含むモジュールにおいて、半導体チップの上面と、リードフレーム等の配線とを接続する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2019-186510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体チップの上面と配線とをはんだ等で接続する場合に、はんだ等におけるボイドの発生を抑制することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様においては、並列接続された第1の半導体チップおよび第2の半導体チップを備える半導体モジュールを提供する。上記半導体モジュールは、前記第1の半導体チップの上面と接続する第1の配線と、前記第2の半導体チップの上面と接続する第2の配線を備えてよい。上記いずれかの半導体モジュールにおいて、それぞれの前記配線は、前記半導体チップの上面に接合される板状のチップ接続部を有してよい。上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第1の半導体チップの上面の面積と、前記第2の半導体チップの上面の面積が同一であってよい。上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第1の配線の前記チップ接続部と、前記第2の配線の前記チップ接続部の形状が異なっていてよい。
【0005】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、それぞれの前記半導体チップは、半導体基板と、前記半導体基板の上面に選択的に設けられた保護層とを有してよい。上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第1の半導体チップは、前記半導体基板の上方にダイオード素子を有し、前記第1の半導体チップの前記保護層は、前記ダイオード素子を覆っていてよい。
【0006】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、それぞれの前記半導体チップは、前記半導体基板の上方における複数の領域に設けられたエミッタ電極を備えてよい。上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記ダイオード素子は前記エミッタ電極に挟まれて配置されていてよい。
【0007】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記ダイオード素子は、前記半導体基板の中心位置と重なって配置されていてよい。
【0008】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第1の半導体チップの前記保護層は、前記ダイオード素子を覆い、且つ、前記第1の半導体チップの上面における第1の方向に延伸する第1延伸保護部を有してよい。
【0009】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第2の半導体チップの前記保護層は、前記第2の半導体チップにおいて、前記第1の半導体チップにおける前記ダイオード素子が設けられた第1領域に対応する位置、且つ、前記第1領域と同じ大きさの第2領域の一部を覆い、且つ、前記第2の半導体チップの上面における前記第1の方向に延伸する第2延伸保護部を有してよい。上記いずれかの半導体モジュールの上面視において、前記第2延伸保護部の面積は、前記第1延伸保護部の面積よりも小さくてよい。
【0010】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第1延伸保護部は、前記ダイオード素子を覆うダイオード保護部と、前記ダイオード保護部から延伸して設けられ、前記ダイオード保護部よりも幅の小さい幅狭部とを有してよい。上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第2延伸保護部は、前記ダイオード保護部よりも幅が小さくてよい。
【0011】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第2延伸保護部の幅は、前記幅狭部の幅と同一であってよい。
【0012】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第1の配線の前記チップ接続部は、上面視において、前記ダイオード素子を囲む辺を有し、且つ、前記辺の一部から前記ダイオード素子と重なる位置までスリットが設けられていてよい。
【0013】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第2の配線の前記チップ接続部は、前記第2の半導体チップにおいて、前記第1の半導体チップにおける前記ダイオード素子が設けられた第1領域に対応する位置、且つ、前記第1領域と同じ大きさの第2領域と重なっていてよい。
【0014】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第1の半導体チップの前記半導体基板は、上面視において前記保護層と重ならない位置に、欠陥密度がピークを示す第1ライフタイム調整部を有してよい。
【0015】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第2の半導体チップの前記半導体基板は、上面視において前記第1ライフタイム調整部と対応する位置に、欠陥密度がピークを示す第2ライフタイム調整部を有してよい。
【0016】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第2の半導体チップは、前記第2延伸保護部の下方に設けられたゲートランナーを備えてよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体モジュール200の一例を示す図である。
【
図4】半導体チップ100-aの一例を示す上面図である。
【
図5】半導体チップ100-bの一例を示す上面図である。
【
図6】半導体チップ100-aの上面における保護層150の配置例を示す図である。
【
図7】半導体チップ100-bの上面における保護層150の配置例を示す図である。
【
図8】半導体チップ100-aの上面に接続されるチップ接続部252-aの一例を説明する図である。
【
図9】半導体チップ100-bの上面に接続されるチップ接続部252-bの一例を説明する図である。
【
図10】半導体チップ100-aの上面における、トランジスタ部70、ダイオード部80およびゲートランナー48の配置例を示す図である。
【
図11】半導体チップ100-bの上面における、トランジスタ部70、ダイオード部80およびゲートランナー48の配置例を示す図である。
【
図14】半導体チップ100-aにおけるライフタイム調整部94の配置例を示す図である。
【
図15】半導体チップ100-bにおけるライフタイム調整部94の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、又、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する場合がある。また、1つの図面において、同一の機能、構成を有する要素については、代表して符合を付し、その他については符合を省略する場合がある。
【0021】
本明細書においては半導体チップの深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体モジュールの実装時における方向に限定されない。
【0022】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0023】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0024】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体モジュール200の一例を示す図である。半導体モジュール200は、インバータ等の電力変換装置として機能してよい。半導体モジュール200は、1つ以上の絶縁回路基板260を備える。本明細書では、1つ以上の絶縁回路基板260が設けられる面における直交軸をX軸およびY軸とし、XY面と垂直な軸をZ軸とする。
図1においては、XY面における各部材の配置例を示している。
【0025】
本例の半導体モジュールは、それぞれがU層、V層、W層のアームを構成する3つの絶縁回路基板260を備えている。絶縁回路基板260には、1つ以上の半導体チップ100が載置される。また、絶縁回路基板260には、半導体チップ100と電気的に接続される回路パターン226およびリードフレーム250が設けられてよい。リードフレーム250は、半導体チップ100の上面に接続される配線の一例である。当該配線は、ワイヤ等であってもよい。半導体チップ100は、絶縁回路基板260を囲む樹脂ケース210、および、樹脂ケース210に充填される封止樹脂212を含む樹脂パッケージ214により保護される。
【0026】
半導体チップ100は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードおよびこれらを組み合わせたRC(Reverse Conducting)-IGBT、並びにMOSトランジスタ等を含んでよい。
【0027】
樹脂ケース210は、絶縁回路基板260を収容する空間194を囲むように設けられる。樹脂ケース210には、1つ以上の端子86が露出して設けられてよい。端子86は、端子接続部198を介して絶縁回路基板260と電気的に接続される。また、樹脂ケース210には、冷却装置等を固定するねじ等の締結部材が挿入される貫通孔84が設けられてよい。
【0028】
本例において、樹脂ケース210は、射出成形により形成可能な熱硬化型樹脂、または、UV成形により形成可能な紫外線硬化型樹脂等の樹脂、等の樹脂により成形される。当該樹脂は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂およびアクリル樹脂等から選択される1又は複数の高分子材料を含んでよい。
【0029】
本例において、封止樹脂212は、樹脂ケース210の内部に設けられる。封止樹脂212は、例えばエポキシ樹脂やシリコーンゲルであるが、これに限定されない。封止樹脂212により、絶縁回路基板260を保護できる。
【0030】
それぞれの半導体チップ100は、シリコン等の半導体材料で形成された半導体基板を有する。それぞれの半導体チップ100の半導体基板には、同一のパワー半導体素子が形成されてよい。例えばそれぞれの半導体基板には、IGBTが形成されてよく、IGBTおよびFWDが形成されてよい。それぞれの半導体チップ100における半導体基板は、同一の大きさであってよい。つまり、それぞれの半導体チップ100における半導体基板は、上面の面積が同一であり、また、上面と垂直な方向の厚みが同一であってよい。つまり、それぞれの半導体チップ100は、同一特性のパワー半導体素子が設けられてよい。
【0031】
また、少なくとも一つの半導体チップ100は、半導体基板の上方にダイオード素子(不図示)を有する。
図1の例では、半導体チップ100-aが、ダイオード素子を有する。ダイオード素子は、例えば半導体チップ100-aの温度を検出する温度検出部の一部として機能する。ただし、ダイオード素子の機能は温度検出に限定されない。ダイオード素子は、例えば半導体チップ100-aの所定のノード間に印加される上限電圧を規定する保護ダイオードとして機能してよく、他の用途に用いられてもよい。ダイオード素子は、ポリシリコンにP型領域およびN型領域が設けられたPN接合ダイオードであってよい。ダイオード素子と半導体基板との間には、BPSGまたは酸化膜等の絶縁膜が形成されている。
【0032】
少なくとも一つの半導体チップ100には、上述したダイオード素子が設けられていない。
図1の例では、半導体チップ100-bが、ダイオード素子を有さない。本例の半導体モジュール200は、それぞれの絶縁回路基板260において、半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bを有する。半導体チップ100-aと、半導体チップ100-bは、絶縁回路基板260において、電気的に並列に接続されている。半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bには、同一波形の制御信号が入力されてよい。例えば半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bには、同一波形のゲート信号が入力される。
【0033】
半導体チップ100-aは、ダイオード素子の電圧または電流等の特性に基づいて制御されてよい。例えば、ダイオード素子が温度検出部として機能する場合、半導体チップ100-aは、ダイオード素子が検出した温度に基づいて制御される。一例として、半導体チップ100-aは、ダイオード素子が検出する温度が所定値以上の場合にオフ状態に制御される。半導体チップ100-bは、並列に設けられた半導体チップ100-aのダイオード素子の特性に基づいて制御されてよい。
【0034】
図1では、半導体モジュール200において冷媒が流れる方向を矢印で示している。冷媒が流れる方向において、半導体チップ100-aは、半導体チップ100-bよりも下流側に配置されてよい。この場合、半導体チップ100-aは、半導体チップ100-bよりも冷却されにくくなるので、温度が高くなりやすい。従って、半導体チップ100-aの温度が所定温度を超えないように半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bを制御することで、半導体チップ100-bの温度も所定温度以下に制御できる。このような構造により、半導体チップ100-bにおけるダイオード素子を省略でき、半導体チップ100-bの製造コストを低減できる。また、複数の半導体チップ100の制御を簡素化できる。
【0035】
図2は、絶縁回路基板260の一例を示す図である。ここでは、代表して1つの層のアームを構成する絶縁回路基板260を例示するが、その他も同様の構成である。本例の絶縁回路基板260は、いずれか一方の面に回路パターン226を設け、他方の面に放熱板222(
図3参照)を設けたものである。回路パターン226および放熱板222は、銅板またはアルミ板、あるいはこれらの材料にめっきを施した板を、窒化ケイ素セラミックスや窒化アルミニウムセラミックス等の絶縁基板220に直接接合あるいはろう材層を介して接合することで、構成されてよい。
【0036】
本例の半導体チップ100は、絶縁回路基板260の上面に設けられた回路パターン226に半田等の接合層230(
図3参照)を介して接合されている。また、半導体チップ100は、その上面がはんだ等の接合層232(
図3参照)を介してリードフレーム250と接続される。リードフレーム250は、半導体チップ100をはんだ等の接合層234(
図3参照)を介して回路パターン226に接続する。
【0037】
リードフレーム250は、銅またはアルミニウム等の金属材料で形成された部材である。リードフレーム250は、ニッケル等により表面の少なくとも一部がメッキされていてもよい。また、リードフレーム250は、樹脂等により表面の少なくとも一部がコーティングされていてもよい。リードフレーム250は、板状の部分を有してよい。板状とは、対向して配置された2つの主面の面積が、他の面の面積よりも大きい形状を指す。リードフレーム250は、少なくとも、半導体チップ100と接続する部分が板状であってよい。リードフレーム250は、1枚の金属板を折り曲げることで、形成されてよい。
【0038】
回路パターン226は、半導体チップ100またはリードフレーム250と電気的に接続されることで、信号または電力を伝送する。回路パターン226は、複数の島状領域226A,226B,226Cを含んで構成されてよい。また、半導体チップ100が回路パターン226の1つの島状領域226A,226Bに複数配置されてよい。また、1つの島状領域226A,226Bに配置された複数の半導体チップ100が、リードフレーム250により、同一の島状領域226B,226Cに接続されてよい。
図2の例では、Y軸方向に並んだ2つの半導体チップ100-aおよび100-bが、2つのリードフレーム250によって同一の島状領域226Bまたは226Cに並列に接続されている。
【0039】
本例の半導体チップ100は、上面および下面に電極(例えば、エミッタ電極とコレクタ電極)が形成された縦型のチップである。半導体チップ100は、下面に形成された電極により回路パターン226と接続され、上面に形成された電極によりリードフレーム250と接続される。なお、半導体チップ100は縦型のチップに限定されない。半導体チップ100は、回路パターン226と接続される電極を上面に有していてもよい。この場合、回路パターン226と当該電極は、ワイヤ等により接続されてよい。
【0040】
端子接続部198は、回路パターン226と、
図1に示した端子86とを接続する。端子接続部198は、金属で形成された板または棒状の部材であってよく、ワイヤ状の部材であってもよい。これにより、半導体チップ100と端子86とが電気的に接続される。
【0041】
図3は、
図2のA-A断面図である。
図3は、XZ面に対して各部材を投影した場合の、各部材の配置例を示している。当該側面において、半導体モジュール200は、絶縁基板220、放熱板222、接合層224、冷却部216、回路パターン226、接合層230,232,234、半導体チップ100、リードフレーム250および封止樹脂212を備える。
【0042】
放熱板222は、絶縁基板220の下面全体を覆っていてよい。放熱板222は、銅等の金属で形成されてよい。接合層224は、放熱板222を冷却部216に接合する。接合層224は、はんだ等である。冷却部216は、内部に水等の冷媒を含む。
図1に示したように、冷却部216の内部において、所定の方向に冷媒が流れている。冷媒が流れる方向は、冷却部216に冷媒を導入する位置、冷媒を冷却部216の外部に導出する位置、冷却部216の内部において冷媒の流路を形成するフィン等により定まる。冷却部216は、放熱板222等を介して、半導体チップ100を冷却する。
【0043】
回路パターン226は、絶縁基板220の上面に配置されている。回路パターン226は、放熱板222と同一の材料で形成されてよく、異なる材料で形成されてもよい。半導体チップ100は、島状領域226Aの上面に、接合層230により接続されている。接合層230は、はんだ等の導電材料により、半導体チップ100を島状領域226に接合する。
【0044】
リードフレーム250は、半導体チップ100と、島状領域226Bとを接続する。本例のリードフレーム250は、チップ接続部252、回路パターン接続部256および架橋部254を有する。チップ接続部252は、半導体チップ100の上面に接合層232により接合される部分である。回路パターン接続部256は、島状領域226Bの上面に接合層234により接続される部分である。チップ接続部252および回路パターン接続部256は、XY面とほぼ平行な板状の部分であってよい。なお、ほぼ平行とは、例えば角度が10度以下の状態を指す。本例では、チップ接続部252の面積が、回路パターン接続部256の面積より大きく構成される。チップ接続部252の面積、回路パターン接続部256の面積は、例えば、半導体チップ100や島状領域226Bに接続される板状の部分の上面の面積としてよい。
【0045】
架橋部254は、チップ接続部252および回路パターン接続部256を接続する。架橋部254は、回路パターン226等の導電部材から離れて配置されている。本例の架橋部254は、回路パターン226等の上方に配置されており、チップ接続部252から回路パターン接続部256まで、回路パターン226等を跨ぐように設けられている。
【0046】
架橋部254には、
図1および
図2に示した開口部274が設けられている。開口部274は、架橋部254をZ軸方向に貫通している。これにより、封止樹脂212をリードフレーム250の上下に確実に行きわたらせる事ができる。
【0047】
封止樹脂212は、樹脂ケース210の内部に設けられる。封止樹脂212は、半導体チップ100、リードフレーム250および回路パターン226が露出しないように、樹脂ケース210の空間194に充填されてよい。
【0048】
はんだ等の接合層においては、ボイドの発生を抑制することが好ましい。半導体モジュール200においては、半導体チップ100が発熱源となり、半導体チップ100に接続するチップ接続部252は、温度変化により膨張収縮を繰り返す。このため、接合層232においては、ボイドの発生をできるだけ抑制することが好ましい。
【0049】
図4は、半導体チップ100-aの一例を示す上面図である。半導体チップ100-aは、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、シリコンまたは化合物半導体等の半導体材料で形成された基板である。半導体基板10は、上面視において端辺102を有する。本明細書では、半導体基板10または半導体チップ100等の所定の部材の上面に、各部材の位置を投影することを上面視と称する。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺102を有する。
図4においては、互いに向かい合う1組の端辺102-1および端辺102-2を示している。
図4においては、端辺102-1および端辺102-2と平行な方向をY軸方向、端辺102-1および端辺102-2と垂直な方向をX軸方向とする。
【0050】
半導体基板10には活性部120が設けられている。活性部120は、半導体チップ100をオン状態に制御した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部120は、IGBT等のトランジスタ、または、FWD等のダイオードが設けられた領域である。エミッタ電極52により覆われた領域を活性部120としてもよい。この場合、上面視においてエミッタ電極52に挟まれた領域も活性部120としてもよい。また、半導体基板10の外周に沿って、ガードリングまたはフィールドプレートが環状に設けられている場合、ガードリングまたはフィールドプレートに囲まれた領域を活性部120としてもよい。ガードリングは、半導体基板10の上面から、後述するベース領域14よりも深い位置まで設けられたP型の領域である。また、フィールドプレートは、半導体基板10の上面の上方に設けられた、導電性部材である。フィールドプレートと半導体基板10の間には絶縁膜が設けられている。ガードリングおよびフィールドプレートは、後述するゲートパッド50と、端辺102-1との間を通過するように設けられてよい。
【0051】
半導体チップ100-aは、ダイオード素子178、エミッタ電極52およびゲートパッド50を備える。エミッタ電極52およびゲートパッド50は、アルミニウム等の金属を含む電極である。エミッタ電極52およびゲートパッド50と、半導体基板10との間には絶縁膜が設けられている。エミッタ電極52およびゲートパッド50と、半導体基板10とは、当該絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して接続する。
図4においては、絶縁膜およびコンタクトホールを省略している。
【0052】
エミッタ電極52は、活性部120の上方に配置されている。エミッタ電極52は、上述したコンタクトホールを介して活性部120と接続されている。エミッタ電極52の上面には、リードフレーム250等の配線が接続され、所定のエミッタ電圧が印加される。エミッタ電極52およびゲートパッド50は、上面視において互いに分離して設けられている。ゲートパッド50の上面には、ワイヤ等の配線が接続され、所定のゲート電圧が印加される。ゲートパッド50に印加されたゲート電圧は、後述するゲートランナー等によって、活性部120のトランジスタ部に供給される。
【0053】
本例のダイオード素子178は、半導体基板10の上方に配置された、PN接合ダイオードである。ダイオード素子178は、温度検出部として機能してよい。ダイオード素子178は、上面視において半導体基板10のほぼ中央に配置されてよい。例えば、半導体基板10の中央位置を、ダイオード素子178が覆っていてよい。ダイオード素子178は、上面視においてエミッタ電極52に挟まれていてよい。本例のエミッタ電極52は、少なくとも2つの領域に分割されており、ダイオード素子178は、エミッタ電極52の2つの領域に挟まれている。他の例では、ダイオード素子178の少なくとも一部は、エミッタ電極52と重なって配置されていてもよい。この場合、ダイオード素子178とエミッタ電極52との間には絶縁膜が設けられる。
【0054】
半導体チップ100-aは、アノードパッド174およびカソードパッド176を有してよい。アノードパッド174は、ダイオード素子178のアノードと電気的に接続し、カソードパッド176は、ダイオード素子178のカソードと電気的に接続する。アノードパッド174およびカソードパッド176は、ポリシリコンまたはアルミニウム等で形成された配線により、ダイオード素子178と接続されてよい。
【0055】
一例として、ゲートパッド50は端辺102-1側に配置され、アノードパッド174およびカソードパッド176は、端辺102-2側に配置されている。端辺102-1側とは、X軸方向における半導体基板10の中央よりも端辺102-1側を指し、端辺102-2側とは、半導体基板10の当該中央よりも端辺102-2側を指す。ゲートパッド50は、エミッタ電極52と端辺102-1との間に配置されてよい。アノードパッド174およびカソードパッド176は、エミッタ電極52と端辺102-2との間に配置されてよい。
【0056】
ダイオード素子178は、ゲートパッド50と、アノードパッド174またはカソードパッド176との間に配置されてよい。つまり上面視において、ゲートパッド50におけるいずれかの点と、アノードパッド174またはカソードパッド176におけるいずれかの点を結ぶ直線が、ダイオード素子178を通過するように配置されてよい。本例においては、ゲートパッド50と、ダイオード素子178と、アノードパッド174またはカソードパッド176とが、X軸方向に一列に並んでいる。ダイオード素子178は、ゲートパッド50と、アノードパッド174またはカソードパッド176との間の中央位置と重なるように配置されてよい。
【0057】
半導体チップ100-aは、電流センスパッド172を更に有してもよい。電流センスパッド172の下方における半導体基板10には、電流センス領域110が設けられてよい。電流センス領域110は、活性部120におけるトランジスタ部と電気的に並列に設けられ、且つ、同様の構造を有するトランジスタ部を含んでよい。上面視において、電流センス領域110は、活性部120よりも小さい。電流センス領域110に流れる電流から、活性部120に流れる電流を推定できる。電流センスパッド172は、エミッタ電極52と、端辺102-2との間に配置されてよい。
【0058】
図5は、半導体チップ100-bの一例を示す上面図である。半導体チップ100-bは、ダイオード素子178を有さない点で、半導体チップ100-aと相違する。他の構造は、半導体チップ100-aと同様である。ただし、本例の半導体チップ100-bは、アノードパッド174、カソードパッド176、電流センスパッド172および電流センス領域110を有さない。また、アノードパッド174およびカソードパッド176と、ダイオード素子178を接続する配線を有さない。
【0059】
半導体チップ100-bは、上面視において半導体チップ100-aと同一の大きさおよび形状を有する。ゲートパッド50は、半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bにおいて、同一の位置に配置されている。
【0060】
半導体チップ100-bのエミッタ電極52は、上面視において半導体チップ100-aのエミッタ電極52と同一の形状を有してよく、異なる形状を有してもよい。本例の半導体チップ100-bのエミッタ電極52は、上面視において半導体チップ100-aのエミッタ電極52と異なる形状を有する。半導体チップ100-bのエミッタ電極52は、複数の領域に分離されていなくてよい。半導体チップ100-bのエミッタ電極52は、半導体チップ100-aにおいてダイオード素子178が設けられていた領域を覆ってもよい。上述したように、半導体チップ100-bにおいてダイオード素子178等を省略することで、半導体チップ100-bのコストを低減できる。
【0061】
図6は、半導体チップ100-aの上面における保護層150の配置例を示す図である。保護層150は、半導体基板10の上面の上方を選択的に覆っている。
図6においては、保護層150が配置される領域を、斜線のハッチングで示している。保護層150は、エミッタ電極52、ゲートパッド50、アノードパッド174、カソードパッド176および電流センスパッド172の上に配置され、これらの電極およびパッドの少なくとも一部の領域を覆っている。各電極および各パッドは、保護層150に覆われていない領域を有する。当該領域に、リードフレーム250またはワイヤ等の配線が接続される。また、保護層150は、ダイオード素子178の上に配置され、ダイオード素子178の全体を覆っている。保護層150は、ポリイミド等で形成されており、各電極、各パッドおよびダイオード素子178を保護する。
【0062】
半導体チップ100-aは、ゲートパッド50の一部を覆う保護層150-1を有してよい。保護層150-1は、ゲートパッド50の端部を覆うように設けられてよい。半導体チップ100-aは、アノードパッド174、カソードパッド176および電流センスパッド172を覆う保護層150-2を有してよい。保護層150-2は、アノードパッド174、カソードパッド176および電流センスパッド172の各パッドの端部を覆うように設けられてよい。
【0063】
半導体チップ100-aは、半導体基板10の端部を覆う保護層150-3を有してよい。保護層150-3は、エミッタ電極52と、端辺102との間の領域を覆ってよい。保護層150-3は、エミッタ電極52の一部を覆っていてもよい。保護層150-3の下方には、ガードリングまたはフィールドプレートが設けられてよい。
【0064】
半導体チップ100-aは、ダイオード素子178の全体を覆う保護層150-4を有してよい。保護層150-4は、ダイオード保護部の一例である。本例の保護層150-4は、所定の第1領域301を覆っている。第1領域301は、上面視においてダイオード素子178が設けられた領域を含む。本例では、保護層150-4が設けられた領域を、第1領域301とする。第1領域301は、保護層150-4よりも大きい領域であってもよい。ただし第1領域301は、保護層150-4および保護層150-7a以外の保護層150を含まない。第1領域301は、半導体基板10の上面視における中央Acを含む領域であってよい。
【0065】
半導体チップ100-aは、保護層150-4から延伸する保護層150-7aを有する。保護層150-7aは、所定の方向(
図6ではX軸方向)に長手を有して設けられる。本例の半導体チップ100-aは、保護層150-4からゲートパッド50に向かって延伸して、保護層150-1に接続される保護層150-7aを有する。保護層150-7aは、ダイオード素子178に接続される配線を覆ってよい。また、半導体チップ100-aは、保護層150-4からゲートパッド50とは逆側に延伸して、保護層150-2aに接続される保護層150-7aを有してよい。保護層150-7aの下方には、ゲートランナーが配置されてよい。
【0066】
保護層150-4は、Y軸方向における幅W1が、保護層150-7aの幅W2よりも大きい。つまり保護層150-4は、ダイオード素子178を覆い、且つ、X軸方向に延伸する保護層150のうち、Y軸方向における幅が広がっている部分である。保護層150-7aは、ダイオード保護部から延伸して設けられ、ダイオード保護部よりも幅の小さい幅狭部の一例である。保護層150-4を設けることで、ダイオード素子178を適切に保護できる。保護層150-4および保護層150-7aは、
図4に示した2つのエミッタ電極52の間に配置されてよい。保護層150-4および保護層150-7aは、エミッタ電極52と重なっていてもよい。
【0067】
半導体チップ100-aは、半導体基板10の上面を、領域152-1、領域152-2および領域152-3に分割する保護層150-5および保護層150-6を有してよい。保護層150-5および保護層150-6は、半導体基板10の上面を、Y軸方向に横切って設けられてよい。領域152-1は、ゲートパッド50が設けられた領域であり、領域152-2は、アノードパッド174およびカソードパッド176が設けられた領域であり、領域152-3は、ダイオード素子178が配置された領域である。本実施形態では、領域152-3は、Y軸方向において、保護層150-7aおよび保護層150-4によって、2つに分割されている。
【0068】
本例の領域152-3は、領域152-1および領域152-2のいずれよりも面積が大きい。保護層150-5は、保護層150-2と接続されていてよい。本例の保護層150-5は、保護層150-2のX軸方向における先端と接続されている。保護層150-6は、保護層150-1と接続されていてよい。本例の保護層150-6は、保護層150-1のX軸方向における先端と接続されている。
【0069】
領域152-3において露出するエミッタ電極52の上面には、はんだ等の接続材料が設けられてよい。これにより、エミッタ電極52の上面に、リードフレーム250またはワイヤ等の配線を接続できる。領域152-3の面積を大きくすることで、これらの配線を容易に接続できる。
【0070】
また、領域152-3と領域152-1とを、保護層150-6により分離することで、領域152-3のはんだ等が、ゲートパッド50まで流れることを抑制できる。また、領域152-1とは逆側に領域152-2を設けることで、半導体基板10の上面におけるはんだ等の位置の偏りを抑制できる。また、
図6に示したように保護層150を配置することで、半導体チップ100の反りを防止できる。
【0071】
図7は、半導体チップ100-bの上面における保護層150の配置例を示す図である。保護層150は、半導体基板10の上面の上方を選択的に覆っている。半導体チップ100-bにおいて、半導体チップ100-aの第1領域301と対応する位置および同一の大きさの領域を、第2領域302とする。半導体チップ100-bは、ダイオード素子178を有さないので、ダイオード素子178を保護する保護層150-4を設けなくてよい。このため、第1領域301において保護層150が設けられる第1面積は、第2領域302において保護層150が設けられる第2面積よりも大きい。つまり、第2面積は、第1面積よりも小さい。
【0072】
エミッタ電極52は、はんだ等によりリードフレーム250等の配線と接続される。この場合、配線とエミッタ電極52との接合部に保護層150が配置されていると、はんだ等にボイドが生じやすくなる。本例によれば、半導体チップ100-bにおいて配線と接続される部分の保護層150の面積を小さくできる。このため、はんだ等の接合部におけるボイド発生を抑制できる。従って、半導体チップ100-bと、リードフレーム250等の配線との接続信頼性を向上できる。
【0073】
本例の半導体チップ100-bは、半導体チップ100-aにおける保護層150-7aおよび保護層150-4に代えて、保護層150-7bを有する。他の保護層150の配置は、半導体チップ100-aと同様であってよい。ただし
図7の例の半導体チップ100-bは、半導体チップ100-aにおける保護層150-2aに代えて、保護層150-2bを有している。保護層150-2bには、アノードパッド174等の各パッドを露出させる開口が設けられていない。
【0074】
保護層150-7bは、保護層150-7aと対応する位置に設けられる。つまり、Y軸方向における保護層150-7bと端辺102との距離を、Y軸方向における半導体チップ100-bの長さで除算した値は、Y軸方向における保護層150-7aと端辺102との距離を、Y軸方向における半導体チップ100-aの長さで除算した値と同一である。半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bの上面視における大きさが同一の場合、保護層150-7bは、保護層150-7aと同一の位置に設けられる。
【0075】
本例の保護層150-7bは、ゲートパッド50からX軸方向に延伸して、保護層150-2bまで設けられている。保護層150-7bは、半導体基板10の中央位置Acを覆っていてよい。保護層150-7bのY軸方向の幅をW3とする。保護層150-7bの幅W3は、保護層150-7bの全体にわたって、保護層150-4の幅W1よりも小さくてよい。
図7の例では、保護層150-7bは、全体にわたって均一な幅W3を有している。つまり、半導体チップ100-bは、半導体チップ100-aにおけるダイオード素子178と対応する位置の保護層150-7bの幅が、半導体チップ100-aの保護層150-4よりも小さい。
【0076】
第2領域302は、第1領域301と対応する位置の領域である。つまり、上面視における第2領域302の中心位置と端辺102との各方向における距離を、半導体チップ100-bの各方向における長さで除算した値は、第1領域301の中心位置と端辺102との各方向における距離を、半導体チップ100-aの各方向における長さで除算した値と等しい。半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bの上面の面積が同一の場合、第1領域301および第2領域302は、同一の位置に設けられる。なお、半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bの上面の面積が異なる場合でも、第1領域301および第2領域302の大きさは同一である。
【0077】
第2領域302は、Y軸方向において保護層150-7bの全体を覆っている。第2領域302のY軸方向の幅は、幅W3よりも大きい。また、第2領域302は、X軸方向の全長にわたって、保護層150-7bと重なっている。第2領域302は、半導体チップ100-bの中央位置Acを含む領域であってよい。第2領域302は、保護層150-7b以外の保護層150を含まない。
【0078】
図6に示したように、第1領域301は、保護層150-4を含んでいる。一方で、第2領域302は、保護層150-4よりも幅の小さい保護層150-7bを含んでいる。このため、第2領域302における保護層150の面積は、第1領域301における保護層150の面積よりも小さくなる。保護層150-7bの幅W3は、保護層150-7aの幅W2と同一であってよい。
【0079】
図6に示した保護層150-4および保護層150-7aを第1延伸保護部とする。第1延伸保護部は、ダイオード素子178を覆い、且つ、X軸方向に延伸している部分である。
図7に示した保護層150-7bを第2延伸保護部とする。第2延伸保護部は、第2領域302の一部を覆い、且つ、X軸方向に延伸している部分である。第2延伸保護部の面積は、第1延伸保護部の面積より小さい。このため、半導体チップ100-bにおけるボイドの発生を抑制できる。
【0080】
図8は、半導体チップ100-aの上面に接続されるチップ接続部252-aの一例を説明する図である。チップ接続部252-aは、第1の配線として機能するリードフレーム250の一部である。
【0081】
チップ接続部252-aは、半導体チップ100-aの上面のエミッタ電極52に、はんだ等で接合される板状の導電性部材である。チップ接続部252-aは、上面視においてダイオード素子178と重ならない形状を有してよい。チップ接続部252-aは、保護層150-4と重ならない形状を有してもよい。
【0082】
チップ接続部252-aは、上面視においてダイオード素子178を囲む辺310-aを有する。辺310-aは、保護層150-4を囲んでもよい。本例のチップ接続部252-aは、平行に配置された2つの辺310-aを2組有する。チップ接続部252-aは、上面視において矩形であってよい。
【0083】
チップ接続部252-aは、いずれかの辺310-aの一部から、ダイオード素子178と重なる位置までスリット312を有してよい。スリット312は、チップ接続部252-aが設けられていない部分である。スリット312は、ダイオード素子178の全体を露出させてよく、保護層150-4の全体を露出させてもよい。このような構成により、半導体チップ100-aにおいても、チップ接続部252-aと保護層150とが重なる領域を低減し、ボイドの発生を抑制できる。スリット312は、保護層150-7aの一部を露出させるように設けられてよい。スリット312は、保護層150-7aに沿って、X軸方向に延伸して設けられてよい。
【0084】
図9は、半導体チップ100-bの上面に接続されるチップ接続部252-bの一例を説明する図である。チップ接続部252-bは、第2の配線として機能するリードフレーム250の一部である。
【0085】
チップ接続部252-bは、半導体チップ100-bの上面のエミッタ電極52に、はんだ等で接合される板状の導電性部材である。チップ接続部252-bは、上面視において第2領域302と重なっていてよい。本例では、第2領域302における保護層150の面積が小さいので、チップ接続部252-bを第2領域302と重ねても、ボイドの発生を抑制できる。本例によれば、チップ接続部252-bと、エミッタ電極52との接合面積を確保できる。
【0086】
チップ接続部252-bは、上面視において第2領域302を囲む辺310-bを有する。本例のチップ接続部252-bは、平行に配置された2つの辺310-bを2組有する。チップ接続部252-bは、上面視において矩形であってよい。
【0087】
図8および
図9に示したように、チップ接続部252-aと、チップ接続部252-bの上面視における形状は異なってよい。これにより、それぞれの半導体チップ100の構造に応じてボイドの発生を抑制できる。他の例では、チップ接続部252-aおよびチップ接続部252-bは、上面視における同一の形状を有してよい。チップ接続部252-aおよびチップ接続部252-bの両方が、
図8に示した形状を有してよく、
図9に示した形状を有してもよい。
【0088】
図10は、半導体チップ100-aの上面における、トランジスタ部70、ダイオード部80およびゲートランナー48の配置例を示す図である。
図10においては、ゲートパッド50等の各パッドおよび各電極、ならびに、保護層150を省略している。
図10においては、トランジスタ部70が配置される領域には記号「I」を付し、ダイオード部80が配置される領域には記号「F」を付している。トランジスタ部70およびダイオード部80は、X軸方向に交互に並んで配置されてよい。
【0089】
図10においては、ゲートランナー48を破線で示している。ゲートランナー48は、不純物が添加されたポリシリコン、または、金属等の導電材料で形成された配線である。ゲートランナー48は、ゲートパッド50に印加されたゲート電圧を、それぞれのトランジスタ部70に供給する。ゲートランナー48の上方には、保護層150が設けられてよい。
【0090】
半導体チップ100-aは、上面視において活性部120を囲んで配置されたゲートランナー48-3を有してよい。ゲートランナー48-3は、保護層150-3の下方に配置されてよい。
【0091】
半導体チップ100-aは、上面視においてゲートパッド50を囲むゲートランナー48-1を有してよい。ゲートランナー48-1は、保護層150-1の下方に配置されてよい。
【0092】
半導体チップ100-aは、上面視においてアノードパッド174およびカソードパッド176を囲むゲートランナー48-2を有してよい。ゲートランナー48-2は、電流センスパッド172を更に囲んでよい。ゲートランナー48-2は、保護層150-2の下方に配置されてよい。
【0093】
半導体チップ100-aは、上面視においてダイオード素子178を囲むゲートランナー48-5を有してよい。ゲートランナー48-5は、保護層150-4の下方に配置されてよい。
【0094】
半導体チップ100-aは、X軸方向に延伸するゲートランナー48-4を有してよい。ゲートランナー48-4は、ゲートランナー48-1からX軸方向に延伸してゲートランナー48-5に接続する部分を有してよい。ゲートランナー48-4は、ゲートランナー48-2からX軸方向に延伸してゲートランナー48-5に接続する部分を有してよい。ゲートランナー48-4は、保護層150-7aの下方に配置されてよい。ゲートランナー48を設けることで、ゲートパッド50から離れたトランジスタ部70も、少ない遅延時間で制御できる。
【0095】
図11は、半導体チップ100-bの上面における、トランジスタ部70、ダイオード部80およびゲートランナー48の配置例を示す図である。半導体チップ100-bにおけるトランジスタ部70およびダイオード部80の配置は、半導体チップ100-aにおけるトランジスタ部70およびダイオード部80の配置と同一であってよい。トランジスタ部70およびダイオード部80のY軸方向の幅は、半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bで同一であってよい。
【0096】
また、半導体チップ100-bは、半導体チップ100-aと同様のゲートランナー48の配置を有してよい。ただし半導体チップ100-bは、ゲートランナー48-5を有していない。半導体チップ100-bにおいては、ゲートランナー48-1からゲートランナー48-2まで、直線状にゲートランナー48-4が設けられている。ゲートランナー48-4は、保護層150-7bの下方に配置されている。これにより、ゲートランナー48-5を覆う幅広の保護層150-4を省略できる。
【0097】
図12は、
図10または
図11における領域Cの拡大図である。領域Cは、ゲートランナー48、トランジスタ部70およびダイオード部80を含む領域である。本例の半導体チップ100は、半導体基板10の上面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。
【0098】
図12においては、エミッタ電極52が設けられる範囲を示している。本例のエミッタ電極52は、ゲートランナー48と重ならない範囲に設けられているが、ゲートランナー48と重なっていてもよい。この場合、エミッタ電極52とゲートランナー48との間には絶縁膜が設けられる。エミッタ電極52と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、
図12では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。
【0099】
エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25は、半導体基板の上面に設けられる。接続部25と半導体基板との間には、熱酸化膜等の絶縁膜が設けられる。
【0100】
ゲートランナー48と半導体基板10との間には、熱酸化膜等の絶縁膜が設けられる。ゲートランナー48は、半導体基板10の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲートランナー48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例のゲートランナー48は、ゲートトレンチ部40の先端部41と重なって設けられる。先端部41は、ゲートトレンチ部40において、最もゲートランナー48に近い端部である。ゲートトレンチ部40の先端部41においてゲート導電部は半導体基板10の上面に露出しており、ゲートランナー48と接触する。
【0101】
エミッタ電極52は金属を含む材料で形成される。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成される。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。さらにコンタクトホール内において、バリアメタルとアルミニウム等に接するようにタングステン等を埋め込んで形成されたプラグを有してもよい。
【0102】
1以上のゲートトレンチ部40および1以上のダミートレンチ部30は、トランジスタ部70の領域において所定の配列方向に沿って所定の間隔で配列される。
図12における配列方向はX軸方向である。トランジスタ部70においては、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられてよい。
【0103】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分39(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの延伸部分39を接続する先端部41を有してよい。
図12における延伸方向はY軸方向である。先端部41の少なくとも一部は曲線状に設けられることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分39において、延伸方向に沿った直線形状の端である端部どうしを先端部41が接続することで、延伸部分39の端部における電界集中を緩和できる。
【0104】
本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部分39の間に設けられる。これらのダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよい。
【0105】
トランジスタ部70において、ダイオード部80と隣接する境界には、表面にエミッタ領域が設けられない中間領域90を備えてよい。また、トランジスタ部70において、中間領域90に隣接する部分には、複数のダミートレンチ部30が連続して配列されてよい。中間領域90に隣接する部分に設けられるダミートレンチ部30も、延伸部分29と先端部31とを有してよい。先端部31および延伸部分29は、先端部41および延伸部分39と同様の形状を有する。先端部31を有するダミートレンチ部30と、直線形状のダミートレンチ部30の延伸方向における長さは同一であってよい。
【0106】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。ウェル領域11は、コンタクトホール54から離れて、所定の範囲で設けられる。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の延伸方向の端部は、ウェル領域11に設けられる。
【0107】
各トレンチ部に挟まれたメサ部60には、ベース領域14が設けられる。メサ部とは、トレンチ部に挟まれた半導体基板の部分において、トレンチ部の最も深い底部よりも上面側の領域である。ベース領域14は、ウェル領域11よりもドーピング濃度の低い第2導電型である。本例のベース領域14はP-型であり、ウェル領域11はP+型である。
【0108】
メサ部60のベース領域14の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。本例のコンタクト領域15はP+型である。ウェル領域11は、コンタクト領域15のうち、トレンチ部の延伸方向で最も端に配置されたコンタクト領域15から、ゲートランナー48の方向に離れて設けられてよい。また、トランジスタ部70においては、コンタクト領域15の上面の一部に、半導体基板10よりもドーピング濃度が高い第1導電型のエミッタ領域12が選択的に設けられる。本例のエミッタ領域12はN+型である。
【0109】
コンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、隣接する一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられる。トランジスタ部70の1以上のコンタクト領域15および1以上のエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向に沿って交互にメサ部60の上面に露出するように設けられる。
【0110】
他の例においては、トランジスタ部70におけるメサ部60には、コンタクト領域15およびエミッタ領域12が延伸方向に沿ってストライプ状に設けられていてもよい。例えばトレンチ部に隣接する領域にエミッタ領域12が設けられ、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられる。
【0111】
ダイオード部80のメサ部60には、エミッタ領域12が設けられていなくてよい。また、中間領域90のメサ部60には、トランジスタ部70のメサ部60よりも、広い面積に渡ってコンタクト領域15が設けられる。
【0112】
トランジスタ部70において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。コンタクトホール54は、ベース領域14およびウェル領域11に対応する領域には設けられない。ダイオード部80において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびベース領域14の上方に設けられる。
【0113】
ダイオード部80において、半導体基板の下面と隣接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられる。
図12においては、カソード領域82が設けられる領域を点線で示している。半導体基板10の下面と隣接する領域においてカソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。
図12では、ダイオード部80の一つのメサ部60を示しているが、ダイオード部80は、X軸方向において複数のメサ部60を有してよい。
【0114】
トランジスタ部70の少なくとも一部の領域には、N+型の蓄積領域16が設けられる。
図12においては、蓄積領域16が設けられる領域を点線で示している。蓄積領域16は、それぞれのメサ部60において、エミッタ領域12またはコンタクト領域15よりも下方に設けられてよい。
【0115】
図13は、
図12におけるb-b断面の一例を示す図である。b-b断面は、エミッタ領域12を通過するXZ面である。本例の半導体チップ100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面に設けられる。
【0116】
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で設けられる。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向と称する。
【0117】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。当該断面の半導体基板10の上面21側には、P-型のベース領域14が設けられる。
【0118】
当該断面において、トランジスタ部70における半導体基板10の上面21側には、N+型のエミッタ領域12、P-型のベース領域14およびN+型の蓄積領域16が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられる。
【0119】
当該断面において、ダイオード部80における半導体基板10の上面21側には、P-型のベース領域14が設けられている。本例のダイオード部80には、蓄積領域16が設けられていない。他の例では、ダイオード部80にも蓄積領域16が設けられてもよい。また、トランジスタ部70と隣接するメサ部60における半導体基板10の上面21には、コンタクト領域15が設けられている。
【0120】
トランジスタ部70において、蓄積領域16の下にはN-型のドリフト領域18が設けられる。ドリフト領域18とベース領域14との間に、ドリフト領域18よりも高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
【0121】
本例の蓄積領域16は、トランジスタ部70の各メサ部60に設けられる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。ダイオード部80において、ベース領域14の下面には、ドリフト領域18が設けられる。トランジスタ部70およびダイオード部80の双方において、ドリフト領域18の下にはN+型のバッファ領域20が設けられる。
【0122】
バッファ領域20は、ドリフト領域18の下側に設けられる。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0123】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。ダイオード部80において、バッファ領域20の下には、N+型のカソード領域82が設けられる。なお、活性部120において、カソード領域82とZ軸方向において重なる投影領域をダイオード部80とする。つまり、半導体基板10の上面21に対して、半導体基板10の下面23と垂直な方向にカソード領域82を投影したときの投影領域をダイオード部80とする。また、投影領域をY軸方向にウェル領域まで延長した領域もダイオード部80としてよい。また、活性部120において、半導体基板10の上面21に対して、半導体基板10の下面23と垂直な方向にコレクタ領域22を投影したときの投影領域であって、且つ、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を含む所定の単位構成が規則的に配置された領域をトランジスタ部70とする。半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bは、上面視におけるエミッタ領域12の総面積が同一であってよい。半導体チップ100-aおよび半導体チップ100-bは、上面視におけるカソード領域82の総面積が同一であってよい。
【0124】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達するように設けられている。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達している。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0125】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21側に設けられたゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチ部40の内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチ部40の内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチ部40の内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0126】
ゲート導電部44は、ゲート絶縁膜42を挟んでベース領域14と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0127】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21側に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。
【0128】
半導体チップ100は、欠陥密度がピークを示すライフタイム調整部94を有してよい。
図13においては、結晶欠陥92の深さ方向における位置を模式的にバツ印で示している。キャリアと結合する結晶欠陥92を設けることで、キャリアのライフタイムを調整できる。ライフタイム調整部94は、半導体基板10の上面21側に配置されてよい。上面21側とは、半導体基板10の深さ方向の中央から、上面21までの領域を指す。ライフタイム調整部94は半導体基板10の上面21側から、ヘリウム等の荷電粒子を注入することで形成できる。ライフタイム調整部94は、各トレンチ部の下方に配置されてよい。ライフタイム調整部94は、X軸方向において、ダイオード部80の全体に設けられてよい。これにより、ダイオード部80の逆回復時間を調整できる。ライフタイム調整部94は、中間領域90にも設けられてよい。ライフタイム調整部94は、トランジスタ部70の一部の領域にも設けられてよい。
【0129】
図14は、半導体チップ100-aにおけるライフタイム調整部94の配置例を示す図である。
図14においては、保護層150-7aとY軸方向において隣り合うライフタイム調整部94-1aと、保護層150-4とY軸方向において隣り合うライフタイム調整部94-2aを示している。
【0130】
いずれのライフタイム調整部94も、保護層150とは重ならない位置に設けられることが好ましい。荷電粒子を上面21側から注入する場合に、保護層150と重なる位置にも荷電粒子を注入すると、保護層150が設けられている領域と、保護層150が設けられていない領域とで荷電粒子の飛程が変化してしまう。このため、ライフタイム調整部94の深さ位置にばらつきが生じ、半導体チップ100の特性にばらつきが生じてしまう。
【0131】
ライフタイム調整部94-1aは、保護層150-7aに対してY軸方向に距離Y1離れている。距離Y1は、1μm以上であってよく、5μm以上であってもよい。ライフタイム調整部94-2aは、保護層150-4に対してY軸方向に距離Y2離れている。距離Y2は、距離Y1と同一であってよい。保護層150-4は、保護層150-7aよりもY軸方向に突出しているので、ライフタイム調整部94-2aのY軸方向の位置は、ライフタイム調整部94-1aのY軸方向の位置に対して、保護層150-7aから離れる方向にシフトしている。
【0132】
なお、カソード領域82も、ライフタイム調整部94と同様に、保護層150-7aと隣り合う領域と、保護層150-4と隣り合う領域とで、Y軸方向の位置がシフトしていてよい。ダイオード部80およびトランジスタ部70の他の構造も、ライフタイム調整部94と同様に、保護層150-7aと隣り合う領域と、保護層150-4と隣り合う領域とで、Y軸方向の位置がシフトしていてよい。保護層150-7aおよび保護層150-4の下方には、ベース領域14よりも深くまで形成されたP型のウェル領域11が設けられてよい。
【0133】
図15は、半導体チップ100-bにおけるライフタイム調整部94の配置例を示す図である。
図15においては、ライフタイム調整部94-1aと対応する位置に設けられたライフタイム調整部94-1bと、ライフタイム調整部94-2aと対応する位置に設けられたライフタイム調整部94-2bを示している。対応する位置とは、X軸方向における位置が同一であることを指してよい。半導体チップ100-aと、半導体チップ100-bのX軸方向の大きさが異なる場合、対応する位置とは、ライフタイム調整部94と端辺102とのX軸方向の距離を、対応する半導体チップ100のX軸方向の長さで除算した値が等しいことを指してよい。本例においても、いずれのライフタイム調整部94も、保護層150とは重ならない位置に設けられることが好ましい。
【0134】
ライフタイム調整部94-1bは、保護層150-7bに対してY軸方向に距離Y3離れている。距離Y3は、距離Y1と同一であってよい。
【0135】
ライフタイム調整部94-2bは、保護層150-7bに対してY軸方向に距離Y4離れている。ライフタイム調整部94-2bのY軸方向の位置は、ライフタイム調整部94-2aのY軸方向の位置と対応している。このため、距離Y4は、距離Y3よりも大きい。このような構造により、半導体チップ100-aと半導体チップ100-bとで、ライフタイム調整部94の配置を同一にでき、半導体100-aと半導体チップ100-bの特性の差異を低減できる。
【0136】
なお、カソード領域82も、ライフタイム調整部94と同様に、Y軸方向の位置がシフトしていてよい。半導体チップ100-aと半導体チップ100-bとで、カソード領域82の配置を同一にでき、半導体100-aと半導体チップ100-bの特性の差異を低減できる。ダイオード部80およびトランジスタ部70の他の構造も、ライフタイム調整部94と同様に、Y軸方向の位置がシフトしていてよい。
【0137】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0138】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、29・・・延伸部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・延伸部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、48・・・ゲートランナー、50・・・ゲートパッド、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、60・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、82・・・カソード領域、84・・・貫通孔、86・・・端子、90・・・中間領域、92・・・結晶欠陥、94・・・ライフタイム調整部、100・・・半導体チップ、102・・・端辺、110・・・電流センス領域、120・・・活性部、150・・・保護層、152・・・領域、172・・・電流センスパッド、174・・・アノードパッド、176・・・カソードパッド、178・・・ダイオード素子、194・・・空間、198・・・端子接続部、200・・・半導体モジュール、210・・・樹脂ケース、212・・・封止樹脂、214・・・樹脂パッケージ、216・・・冷却部、220・・・絶縁基板、222・・・放熱板、226・・・回路パターン、226A、226B、226C・・・島状領域、224、230、232、234・・・接合層、250・・・リードフレーム、252・・・チップ接続部、254・・・架橋部、256・・・回路パターン接続部、260・・・絶縁回路基板、274・・・開口部、301・・・第1領域、302・・・第2領域、310・・・辺、312・・・スリット