(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149761
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】コークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 57/06 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
C10B57/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134854
(22)【出願日】2024-08-13
(62)【分割の表示】P 2024506144の分割
【原出願日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2023051468
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】井川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】土肥 勇介
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】川内 健
(57)【要約】
【課題】非微粘結炭を成型炭中に含む場合であってもコークス強度を推定できるコークス強度の推定方法を提供する。
【解決手段】非微粘結炭が配合された成型炭と粉状の石炭とを含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度を推定するコークス強度の推定方法であって、粉化していない状態の成型炭と粉状の石炭とを含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度と、配合炭に配合する成型炭の配合率と、成型炭の強度と、成型炭に配合する非微粘結炭の配合率と、非微粘結炭に芳香環を有する1級アミン化合物、2級アミン化合物から選ばれる1種以上を添加した混合物の軟化溶融特性と、を用いて、成型炭が一部粉化した状態の配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度を推定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非微粘結炭が配合された成型炭と粉状の石炭を含む配合炭を乾留してコークスを製造するコークスの製造方法であって、
前記非微粘結炭10質量部に対してN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン1質量部を添加してギーセラー最高流動度MFを測定し、
測定されたギーセラー最高流動度MFの常用対数値が3.0以下の非微粘結炭の成型炭中の配合率が、測定されたギーセラー最高流動度MFの常用対数値が3.0以下の非微粘結炭の粉状の石炭中の配合率よりも高くなるように配合炭を調製し、調製された配合炭を乾留してコークスを製造する、コークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘結性の低い非微粘結炭が配合された成型炭と粉状の石炭とを含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度の推定方法およびコークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉に装入されるコークスは高強度であることが求められる。従って、コークス用原料としては、高強度のコークスが製造される粘結性が高い石炭を使用することが好ましい。しかしながら、粘結性が高い石炭のみが採掘されることはなく、粘結性が低い石炭も採掘される。よって、性質の異なる複数種類(銘柄)の石炭を配合して配合炭を作製し、当該配合炭をコークス用原料とすることが通常である。石炭の粘結性とは、石炭が乾留される際に溶けて固まる性質であり、コークスを製造するうえで不可欠な性質である。粘結性は、石炭が軟化溶融した際の特性によって決定されることから、ある銘柄の石炭がコークス用原料として適しているか否かを評価する場合、石炭の軟化溶融特性に関する値(測定値や推定値)を指標にすることが有効になる。
【0003】
また、粘結性が高い石炭は価格が高く、粘結性が低い石炭は価格が低い場合が多い。このため、コークス用原料に粘結性の低い、いわゆる非微粘結炭を積極的に使用することが原料コストを抑える点で有効である。
【0004】
非微粘結炭をコークス原料として有効に利用するための技術として成型炭配合法がある。コークスの製造では、原料となる石炭を、例えば、3mm以下の粉の比率が70~100質量%となるように粉砕した粉炭をコークス炉で乾留してコークスを製造する。成型炭配合法では、コークス炉に装入される粉状の石炭を一部成型して成型炭(ブリケット)とし、この成型炭と粉炭とを混合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造する。
【0005】
成型炭は粉炭に比べて圧密されているので、成型炭を構成する石炭粒子は互いに接近している。このため、粘結性の低い石炭でも加熱による石炭同士の融着、接着が起こりやすく、コークス強度が向上する。従って、成型炭配合法を利用すれば、粘結性の劣る非微粘結炭の使用量を増やしてもコークス強度を維持できる。
【0006】
成型炭を粉炭に混合した配合炭を乾留する場合には、成型炭部と粉炭部で石炭の配合を同一にして、成型炭部にはバインダー類を添加して成型することが多い。しかしながら、成型炭部と粉炭部で配合する石炭を変えることもある。
【0007】
経験的に非微粘結炭の銘柄によって、製造されるコークスのコークス強度が異なることが知られている。その原因の1つは、粘結性の低い石炭の評価精度が低いことである。
【0008】
石炭の粘結性の評価にはJIS M 8801:2008に規定されるギーセラープラストメータが広く用いられている。この方法では、撹拌子を有する容器に充填した石炭を加熱しながら撹拌子に一定のトルクを付与し、その撹拌子の最大の回転速度(最高流動度ddpmで表される)に基づいて石炭の軟化溶融特性が評価される。しかしながら、非微粘結炭の最高流動度が低いと、十分な精度で非微粘結炭の優劣を評価できない。これは、ギーセラー最高流動度MFの測定可能範囲が0~約50000ddpmであるものの、温度とギーセラ―最高流動度MFの常用対数値(logMF)の片対数グラフにて評価するものであり、一般に非微粘結炭と呼ばれる石炭のMFが100ddpm以下程度の場合では十分な精度で優劣を評価することが難しいことが一因とされる。さらに、MF=0である非微粘結炭(MF=0の石炭は、「非粘結炭」と呼ばれることもある。)も多数存在し、それらの非粘結炭をコークス原料に用いる場合、その粘結性の違いを評価することが困難になる。
【0009】
特許文献1には、このような粘結性の低い非微粘結炭の粘結性を評価する手法として、芳香環を有する1級もしくは2級アミン系化合物を石炭に添加してギーセラー流動度を測定する方法が開示されている。芳香環を有する1級もしくは2級アミン系化合物を石炭に添加すると流動性が向上し、石炭のみで測定したギーセラー最高流動度MFが0ddpmの非微粘結炭であっても、このアミンを添加して測定したギーセラー最高流動度MFには違いが見られるようになる。さらに、特許文献1には、非微粘結炭を粉炭に添加した場合のコークス強度が、芳香環を有する1級もしくは2級アミン系化合物を添加して測定されるギーセラー最高流動度MFとよい相関を示すことが開示されている。すなわち、特許文献1によれば、このアミンを添加して測定される流動性は、コークス原料としての非微粘結炭の優劣を評価するための指標になるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非微粘結炭を成型炭に配合し、当該成型炭を用いて製造されるコークスでは、特許文献1の方法を用いて使用可能と評価された石炭を用いても目標とするコークス強度のコークスが製造されないという課題があった。本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、非微粘結炭を成型炭に配合した場合であってもコークス強度を推定できるコークス強度の推定方法を提供することである。さらに本発明の他の目的は、当該コークス強度の推定方法を用いるコークスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 非微粘結炭が配合された成型炭と粉状の石炭とを含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度を推定するコークス強度の推定方法であって、粉化していない状態の前記成型炭と前記粉状の石炭とを含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度と、前記配合炭に配合する前記成型炭の配合率と、前記成型炭の強度と、前記成型炭に配合する前記非微粘結炭の配合率と、前記非微粘結炭に芳香環を有する1級アミン化合物、2級アミン化合物から選ばれる1種以上を添加した混合物の軟化溶融特性と、を用いて、前記成型炭の一部が粉化した状態の前記配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度を推定する、コークス強度の推定方法。
[2] 非微粘結炭が配合された成型炭と粉状の石炭を含む配合炭を乾留してコークスを製造するコークスの製造方法であって、[1]に記載のコークス強度の推定方法によって推定されるコークス強度が、予め定められたコークス強度以上になるように、粉化していない状態の前記成型炭と前記粉状の石炭を含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度と、前記配合炭に配合する前記成型炭の配合率と、前記成型炭の強度と、前記成型炭に配合する前記非微粘結炭の配合率と、前記非微粘結炭に芳香環を有する1級アミン化合物、2級アミン化合物から選ばれる1種以上を添加した混合物の軟化溶融特性と、のうちのいずれか1つ以上を調整して成型炭の調製および/または配合炭の調製を行い、調製した配合炭を乾留してコークスを製造する、コークスの製造方法。
[3] 非微粘結炭が配合された成型炭と粉状の石炭を含む配合炭を乾留してコークスを製造するコークスの製造方法であって、前記非微粘結炭10質量部に対してN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン1質量部を添加してギーセラー最高流動度MFを測定し、測定されたギーセラー最高流動度MFの常用対数値が3.0以下の非微粘結炭の成型炭中の配合率が、測定されたギーセラー最高流動度MFの常用対数値が3.0以下の非微粘結炭の粉状の石炭中の配合率よりも高くなるように配合炭を調製し、調製された配合炭を乾留してコークスを製造する、コークスの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコークス強度の推定方法を用いることで、非微粘結炭が配合され、一部が粉化した状態の成型炭と粉状の石炭とを含む配合炭を用いて製造されるコークスのコークス強度を高い精度で推定できる。このコークス強度の推定方法を用いてコークスを製造することで、目標とするコークス強度のコークスの製造が実現できる。また、目標とするコークス強度を満足しつつ、粘結性が低い安価な非微粘結炭の使用量を増やすことができるようになるのでコークスの製造コストの削減も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、成型炭に含まれる非微粘結炭のlogCATMFと、当該成型炭を粉炭に配合した配合炭を用いて製造されたコークスのコークス強度との関係を示すグラフである。
【
図2】
図2は、粉炭に含まれる非微粘結炭のlogCATMFと、当該粉炭を用いて製造されたコークスのコークス強度との関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、成型炭の粉化率と、当該成型炭を粉炭に配合して製造したコークス強度との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、成型炭中に配合される非微粘結炭のlogCATMFと、粉化率1質量%あたりのコークス強度の低下量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を本発明の実施形態を通じて説明する。本実施形態に係るコークス強度の推定方法では、下記の5つのパラメータを用いて、非微粘結炭が配合された成型炭(一部が粉化した状態の成型炭を含む。)と、粉状の石炭(以下の説明では「粉炭」と記載する場合がある。)と、を含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度を推定する。
1.粉化していない状態の成型炭と粉状の石炭とを含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度(DIbase)
2.配合炭に配合する成型炭の配合率(Wbq)
3.成型炭の強度(Sbq)
4.成型炭に配合する非微粘結炭の配合率(Wncc)
5.非微粘結炭に芳香環を有する1級アミン化合物または2級アミン化合物を添加した混合物の軟化溶融特性(CATP)
まず、本実施形態に係るコークス強度の推定方法に想到した経緯について説明する。
【0016】
発明者らは、非微粘結炭を含む成型炭を用いて製造されたコークスのコークス強度と、非微粘結炭を含む粉炭を用いて製造されたコークスのコークス強度とを確認した。この結果、非微粘結炭の粘結性は、アミンを添加したギーセラー流動度の測定で評価できるものの、非微粘結炭が成型炭中に存在する場合と粉炭中に存在する場合とでは、当該非微粘結炭を用いて製造されるコークスの強度に対する影響が異なることを見出して、本実施形態に係るコークス強度の推定方法に想到した。
【0017】
コークス強度に対する非微粘結炭の影響について確認したコークス製造試験について説明する。コークス製造試験に用いた8種類の非微粘結炭(T1~T8)の性状を下記表1に示す。
【0018】
【0019】
上記表1において、MFは、JIS M 8801:2008に規定された方法で求めたギーセラー最高流動度MF(ddpm)である。Roは、JIS M 8816:1992に規定された方法で求めた石炭のビトリニット平均最大反射率(%)である。TIは、JIS M 8816:1992に規定された方法で求めた石炭の微細組織成分の量と、その解説に記載のParrの式に基づいた下記(1)式で算出される全イナート(体積%)である。
【0020】
TI(体積%)=フジニット(体積%)+ミクリニット(体積%)+(2/3)×セミフジニット(体積%)+鉱物質(体積%)・・・(1)
【0021】
表1のCATMFは、特許文献1に記載の方法に準じて、石炭10質量部(5g)に対して、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン1質量部(0.5g)を添加した混合物を、JIS M 8801:2008に規定の測定方法に基づいて測定された最高流動度(ddpm)である。本実施形態では、この条件で測定された最高流動度をCATMFと記載する。なお、参考までにCATMFの右列にCATMFの常用対数をとったlogCATMFも示す。このCATMFは、上述の非微粘結炭に芳香環を有する1級アミン化合物または2級アミン化合物を添加した混合物の軟化溶融特性(CATP)の一例である。
【0022】
表1に示した非微粘結炭(T1~T8)は、MFがいずれも0ddpmであり、JIS M 8801:2008に規定された測定方法では流動性を示さない石炭である。しかしながら、非微粘結炭にN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを添加した混合物を測定すると、これら非微粘結炭であっても流動性を示すようになり、非微粘結炭の銘柄によってアミン添加時の流動性CATMFが異なることがわかる。表1のCATMFの値から、非微粘結炭(T1~T8)のうちでは、T7、T1は粘結性が高い石炭であり、T4、T5は粘結性が低い石炭であることがわかる。
【0023】
上記試験では石炭の流動性を向上させるアミンとしてN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを用いたが、これに限らない。芳香環を有する1級もしくは2級のアミン系化合物であって、石炭に添加して石炭の流動性を向上させることができる化合物であれば他のアミンを用いてもよい。また、1種に限ることはなく、複数種を混合して用いてもよい。具体的には、フェノチアジン、カルバゾール、N-フェニル-1-ナフチルアミンなどを用いてもよい。また、上記アミンの添加割合を変えて非微粘結炭の流動性を評価してもよい。
【0024】
次に、非微粘結炭を配合した成型炭を製造し、当該成型炭を、非微粘結炭を配合していない粉炭に配合した配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度について説明する。コークスの製造に用いた成型炭の配合構成を下記表2に示す。成型炭に使用したすべての石炭は、全量が3mm以下(目開き3mmの篩下)になるように粉砕した。本実施形態において配合率は、乾燥基準での質量%である。
【0025】
【0026】
上記表2に示したB1~B4は粘結性を有する石炭であり、TARPは粘結材として添加したコールタールから得られる重質のピッチである。石炭B1~B4の性状を下記表3に示す。
【0027】
【0028】
表3のlogMFは、JIS M 8801:2008に規定された測定方法で測定された最高流動度MF(log[ddpm])の常用対数値である。RoとTIは表1と同じである。
【0029】
上記表2に記載した比率で配合した各石炭の合計質量に対して、バインダーとして0.5質量%のタール系軟ピッチ(SOP)と、6質量%のコールタールとを加え、蒸気を吹込みながら加熱しつつ1.5分間混練した。この状態で原料温度は約95℃となり、水分含有量は12~15質量%となった。その後、混練物を44mm×44mm×13mm(片側)のカップを有するダブルロール型の成型機でロールギャップ2mmの条件で成型してマセック型の成型炭を製造した。成型炭の密度は1120kg/m3であった。
【0030】
製造した成型炭20質量部に、粉砕して粒度調整した粉炭80質量部を配合して配合炭を調製した。粉炭は、全量が3mm以下(目開き3mmの篩下)になるように粉砕して粒度を調整した。成型炭に配合した粉炭の配合構成を下記表4に示し、粉炭として用いた石炭C1~C7の性状を下記表5に示す。
【0031】
【0032】
【0033】
8種類の非微粘結炭(T1~T8)を用いて製造された8種類の成型炭について、それぞれ上記の粉炭に配合して8種類の配合炭を作製して乾留した。配合炭の乾留は、配合炭の嵩密度が844kg/m3となるように乾留缶に充填して実施した。この嵩密度は、嵩密度が1120kg/m3の成型炭20質量%と、嵩密度が775kg/m3の粉炭80質量%の加重平均嵩密度である。
【0034】
乾留缶中の石炭の上に10kgの錘を乗せた状態で、炉内温度1050℃の電気炉内で6時間乾留した後、電気炉から取り出し、窒素雰囲気下で冷却してコークスを製造した。各コークスに対して、JIS K 2151:2004に規定された回転強度試験法に基づき、回転速度15rpmで150回、回転後の粒径15mm以上のコークスの質量を測定し、当該試験に供したコークスの全質量に対する比に100を乗じたドラム強度指数DI(150/15)を求めた。本実施形態では、このドラム強度指数DI(150/15)をコークス強度とした。
【0035】
表1に示した非微粘結炭(T1~T8)に、表2の配合率で石炭類を配合して成型された成型炭を、表4の粉炭と、成型炭質量:粉炭質量=20:80で配合した配合炭を乾留して製造されたコークスのコークス強度を下記表6に示す。
【0036】
【0037】
図1は、成型炭に含まれる非微粘結炭のlogCATMFと、当該成型炭を粉炭に配合した配合炭を用いて製造されたコークスのコークス強度との関係を示すグラフである。
図1の横軸は非微粘結炭のlogCATMF(log[ddpm])であり、縦軸はコークス強度DI(150/15)(-)である。なお、(-)は無次元であることを意味する。また、MF=0ddpmのデータは便宜上logMF=0の位置にプロットしている。
【0038】
図1に示すように、コークス強度は非微粘結炭のCATMFに関わらず、ほぼ一定になった。この結果から、非微粘結炭は成型炭に配合されていれば、非微粘結炭の粘結性は製造されるコークスのコークス強度に影響を及ぼさないことが確認された。
【0039】
次に、非微粘結炭を粉炭に配合し、当該粉炭を含む配合炭を乾留して製造されたコークスのコークス強度について説明する。粉炭の配合構成を下記表7に示す。
【0040】
【0041】
非微粘結炭以外に粉炭として用いた石炭A1~A5の性状を下記表8に示す。
【0042】
【0043】
各石炭は、全量が3mm以下(目開き3mmの篩下)になるように粉砕して粒度を調整した。非微粘結炭(T1~T8)をそれぞれ20質量%含む8種類の配合炭を調製して、嵩密度が775kg/m3となるように乾留缶に充填し、上述した成型炭を含む配合炭の乾留と同じ条件で乾留してコークスを製造した。製造されたコークスのコークス強度を下記表9に示す。
【0044】
【0045】
図2は、粉炭に含まれる非微粘結炭のlogCATMFと、当該粉炭を用いて製造されたコークスのコークス強度との関係を示すグラフである。
図2の横軸は非微粘結炭のlogCATMF(log[ddpm])であり、縦軸はコークス強度DI(150/15)(-)である。なお、MF=0ddpmのデータは便宜上logMF=0の位置にプロットしている。
【0046】
図2に示すように、非微粘結炭を粉炭中に配合した場合には、非微粘結材のCATMFとコークス強度とに相関がみられ、非微粘結材のCATMFが低いほどコークス強度は低くなった。
図1と
図2から、非微粘結炭(T1~T8)を含む成型炭を用いて製造されたコークスのコークス強度差は0.1であったのに対し、同じ非微粘結炭(T1~T8)を含む粉炭を用いて製造されたコークスのコークス強度差は12.4に拡大した。コークス強度差とは、同じグラフ中で最も強度が高いコークスと最も強度が低いコークスとの強度差である。
【0047】
非微粘結炭を成型炭に含めた場合の配合炭中の非微粘結炭の割合は、4質量%(成型炭中の非微粘結炭の配合率20質量%×配合炭中の成型炭配合率20質量%)である。このため、粉炭中に非微粘結炭を20質量%配合した場合の強度低下効果が成型炭に配合した場合の約5倍になると考えられるが、これを考慮したとしても、非微粘結炭を成型炭に配合した場合のコークス強度の低下は著しく小さかった。これらの結果から、非微粘結炭を粉炭に配合すると非微粘結炭のCATMFが低い石炭ではコークス強度が大きく低下するのに対し、同じ非微粘結炭を成型炭に含めた場合には、コークス強度の低下がほとんどないことが確認された。
【0048】
非微粘結炭を成型炭として用いた場合と、粉炭のまま用いた場合とでコークス強度への影響が異なることは、CATMFが異なる非微粘結炭を成型炭として用いたコークス製造試験と、粉炭のまま用いたコークス製造試験とを行うことで初めて明らかになった知見である。特許文献1からは、CATMFが低い石炭を粉炭に添加するとコークス強度を低下させる可能性があることが推察できる。しかしながら、非微粘結炭を成型炭として用いると非微粘結炭のCATMFは製造されるコークスのコークス強度に影響しないことは、今回のコークス製造試験によってはじめて明らかになった知見である。
【0049】
次に、成型炭が粉化した場合のコークス強度への影響について説明する。成型炭と粉炭を混合して乾留するコークスの製造方法において、非微粘結炭を粉炭として用いるとコークス強度を低下させる可能性があるが、非微粘結炭を成型炭として用いればコークス強度の低下が起こらない、という知見は実操業において重要な意味をもつ。その理由は、実操業においては、搬送、ハンドリングの過程で成型炭は必ず多少の粉化を起こすからである。このため、同じ成型炭であっても、強度が弱く粉化しやすい成型炭であると、成型炭の粉化により非微粘結炭の粉炭が放出されることになる。放出される粉炭の非微粘結炭のCATMFが低いと、CATMFが低い非微粘結炭の粉炭を含む配合炭を用いてコークスを製造することになり、製造されるコークスのコークス強度を大きく低下させてしまうことが懸念される。従来から成型炭の粉化はコークス強度に悪影響を及ぼすという考え方があり、成型炭の強度は高い方が好ましいと考えられていたが、粉化による影響が用いる非微粘結炭のCATMFによって異なることは知られていなかった。
【0050】
すなわち、非微粘結炭を含む成型炭を用いた場合に、コークス強度の推定が難しかった理由は、成型炭の粉化によるコークス強度の低下が非微粘結炭のCATMFによって変わることを正しく理解できていなかったことによると考えられる。そこで、発明者らは、非微粘結炭を含む成型炭の粉化によって、どの程度コークス強度が低下するか確認した。
【0051】
まず、CATMFが異なる非微粘結炭を含む成型炭を準備し、それぞれの成型炭に衝撃を与えて粉化させ、破壊成型炭を作製した。成型炭は以下の手順で製造した。まず、非微粘結炭として表1のT1、T5、T8のいずれかを20質量%含み、それ以外の石炭O17~O20および粘結材のピッチ(TARP)を下記表10の配合率で各石炭類を配合した。これにバインダーとして軟ピッチ(SOP)を0.5質量%、タールデカンタから回収された固体微粉を含むタール(タール滓)を6質量%加え、蒸気を吹込みながら加熱しつつ1.5分間混練した。混練物を44mm×44mm×13mm(片側)のカップを有するダブルロール型の成型機でロールギャップ2mmの条件で成型してマセック型の成型炭を製造した。成型炭の配合構成を下記表10に示し、成型炭の製造に用いたO17~O20の石炭の性状を下記表11に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
製造した3種類の成型炭のそれぞれについて、成型炭に衝撃を与えて粉化させた。粉化は、成型炭を円筒状のドラムに装入し、ドラムを回転させることで成型炭に衝撃を与え、ドラムの回転時間を変えることで、それぞれの成型炭について粉化率の異なる成型炭試料を2種類調製した。このようにして調製された成型炭(粉化せず残った成型炭および粉化して発生した粉の混合物)13質量%と、別途調製した粉炭87質量%を混合して、乾留し、コークス強度に及ぼす成型炭粉化の影響を確認した。乾留の条件は、上述したコークス製造試験と同じであるが、成型炭の粉化により発生した粉と粉炭を合わせた部分の嵩密度が775kg/m3になるように乾留缶に充填して乾留し、コークスを製造した。成型炭(または粉化した成型炭)に配合した粉炭C21~C27の配合構成を下記表12に示す。また、粉炭として用いた石炭C21~C27の性状を下記表13に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
非微粘結炭T1、T5、T8のいずれかを含む3種類の成型炭のそれぞれについて、粉化させていない場合と粉化率を2水準変えた場合について、製造されたコークスのコークスの強度を表14に示す。
【0058】
【0059】
成型炭の粉化率(質量%)は、下記(2)式で算出される値である。また、粉化率0.0質量%は粉化させずに乾留した試験水準を示す。
【0060】
粉化率=(発生粉質量)×100/(試験機に装入した成型炭質量)・・・(2)
【0061】
図3は、成型炭の粉化率と、当該成型炭を粉炭に配合して製造したコークス強度との関係を示すグラフである。
図3の横軸は成型炭の粉化率(質量%)であり、縦軸はコークス強度DI(150/15)(-)である。
【0062】
図3に示すように、3種類の非微粘結炭のいずれにおいても成型炭の粉化率が高くなるとコークス強度は低下したが、コークス強度の低下量は3種類の非微粘結炭の種類によってそれぞれ異なった。ここで、非微粘結炭のそれぞれの銘柄について、粉化率1質量%あたりのコークス強度の低下量を回帰直線の傾きから算出した結果を下記表15に示す。表15には、表1に示した非微粘結炭のlogCATMFの測定結果も併せて示す。
【0063】
【0064】
図4は、成型炭中に配合される非微粘結炭のlogCATMFと、粉化率1質量%あたりのコークス強度の低下量との関係を示すグラフである。
図4の横軸はlogCATMF(log[ddpm])であり、縦軸はコークス強度低下量(-)である。
【0065】
図4に示すように、logCATMFが3.0を超える非微粘結炭T1およびT8は、成型炭が粉化してもコークス強度はほとんど低下しなかった。一方、logCATMFが3.0以下の非微粘結炭T5は、成型炭が粉化するとコークス強度が低下した。この結果から、logCATMFが3.0を超える非微粘結炭は成型炭が粉化してもコークス強度を低下させない非微粘結炭であるといえる。
図2の結果より、コークス強度と非微粘結炭のlogCATMFとの間には線形の相関関係が認められることから、
図4に示したコークス強度の低下量とlogCATMFとの間にも線形の相関関係が認められることが推定される。すなわち、logCATMFが3.0以下の非微粘結炭は成型炭が粉化するとコークス強度を低下させる非微粘結炭であるといえる。
【0066】
成型炭の粉化の程度は成型炭の強度によって変わるが、製造した成型炭の粉化を完全に防止することは困難である。従って、logCATMFが3.0以下の非微粘結炭を成型炭に配合する場合には、成型炭の強度を高めて粉化を抑制することが好ましい。成型炭の強度を上げるために、例えば、成型炭に添加するバインダーの量を増やしてもよく、また、接着強度の高いバインダーに変更してもよい。
【0067】
本実施形態に係るコークス強度の推定方法に好適に用いられる非微粘結炭は、通常の測定方法では流動性が観測されないギーセラー流動度が0ddpmの石炭である。なお、logCATMFが3.0以下の石炭の中にもJIS M 8801:2008に規定されたギーセラー最高流動度MFが0ddpmを超えるものもある。また、
図4より、logCATMFが4.0を超える石炭では、成型炭の粉化によるコークス強度の低下がほとんどないと推定される。このため、本実施形態に係るコークス強度の推定方法に好適に用いられる非微粘結炭としてはlogCATMFが4.0以下の石炭と定義できる。より簡便な定義としては、CATMFとギーセラー流動度の間に相関があることを利用して、JIS M 8801:2008に規定されたギーセラー最高流動度MFが20ddpm以下の石炭を非微粘結炭と定義してもよい。
【0068】
発明者らが明らかにした上述の知見を利用することで、非微粘結炭が配合され、物流等の衝撃で一部が粉化した状態の成型炭と粉炭とを含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度を、従来の方法よりも高い精度で推定できるようになる。
【0069】
本実施形態に係るコークス強度の推定方法では、まず、成型炭の粉化がないとした場合のコークス強度DIbaseを求める。コークス強度は成型炭中の非微粘結炭以外の石炭および、成型炭と混合する粉炭の性質にも依存する。従って、まず、成型炭の粉化がないと仮定した場合のコークス強度DIbaseを求め、このコークス強度から粉化による強度低下量を減じていくことでコークス強度を推定する。
【0070】
成型炭の粉化がないと仮定した場合のコークス強度DIbaseは、例えば、コークス製造試験によって求められる。具体的には、実コークス炉で使用すると想定している成型炭と粉炭の配合構成を定め、この配合構成で試験的に成型炭を製造し、試験炉で製造した当該コークスのコークス強度を測定することで、成型炭の粉化がないと仮定した場合のコークス強度が求められる。試験炉でコークスを製造することで、ハンドリングによって成型炭を粉化させることなくコークスを製造できる。この時、試験炉で製造されるコークス強度と、実炉で製造されるコークス強度との相関を考慮して実炉でのコークス強度を推定してもよい。この試験炉と実炉との相関は、コークス強度を低下させる原因となる非微粘結炭を含まない成型炭を用いた試験であらかじめ相関を確認しておくことが好ましい。また、乾留試験を実施することなく、公知の方法で得られるコークス強度推定式を用いてもよい。
【0071】
成型炭の粉化によるコークス強度の低下量を見積もる方法の例を以下に示す。コークス強度の低下は成型炭の粉化により粉状の非微粘結炭が粉炭に放出されることで起こる。従って、まずは、放出される非微粘結炭の量を推定する必要がある。
【0072】
成型炭の粉化によって放出される非微粘結炭の量(配合炭中の比率)は、成型炭の配合率に、成型炭の粉化率と、成型炭中の非微粘結炭の配合率を乗じることで算出できる。成型炭の粉化率は、成型炭の強度と、成型炭に与えられる衝撃力によって決まる。ここで、成型炭が製造されてからコークス炉に装入されるまでの間に受ける衝撃によって発生する粉の発生率を強度の指標とすれば、粉化率と強度は同じ意味をもつ。すなわち、その場合の成型炭の強度は、成型炭が製造されてからコークス炉に装入されるまでの間に受ける衝撃によって発生する粉の発生率(粉化率)として表せる。この強度(粉化率)は、例えば、成型炭が製造されてからコークス炉に装入されるまでに受ける衝撃を、累積落下高さなどにより見積もり、その衝撃を別途成型炭に与えた時に発生した粉の量を測定する試験によって求められる。さらにこの粉化率を、他の強度指標と粉化率の相関に基づいて推定してもよい。
【0073】
上述したように、成型炭の粉化によって発生した非微粘結炭の粉が粉炭に混入することによってコークス強度が低下する。粉炭中の非微粘結炭の配合比率が増えることによるコークス強度の低下は、
図2に示すように、非微粘結炭のlogCATMFに依存する。また、
図3に示すように成型炭の粉化率(粉の発生量)にも依存する。
【0074】
図2のグラフの傾きから、非微粘結炭の配合率が20質量%の条件で、logCATMFが1低下すると、コークス強度が3.07低下することがわかる。従って、非微粘結炭の粉炭中の配合率1質量%あたりに低下するコークス強度は、3.07を20で除することで求められ、0.1535になる。
【0075】
図4に示した例では、logCATMFが4.0以上では強度低下がほぼ0であると推定される。従って、logCATMFが1低下することによる粉炭中の非微粘結炭1質量%あたりのコークス強度の低下量は、(4.0-logCATMF)×0.1535で算出できる。このため、
図4に示した例に基づくコークス強度の推定方法を式の形で表現すると、下記(3)式を用いることでコークス強度を推定できることがわかる。
【0076】
DI(150/15)=DIbase-K×(a-logCATMF)×R・・・(3)
【0077】
上記(3)式において、aは非微粘結炭が配合された成型炭が粉化してもコークス強度が低下しない最低のlogCATMFの閾値である。
図4に示した例において、aは4.0である。logCATMFは、非微粘結炭のCATMF測定値の常用対数であって、非微粘結炭に芳香環を有する1級もしくは2級アミン化合物を添加した混合物の軟化溶融特性(CATP)の一例である。Kは、logCATMF単位および成型炭による粉炭中の非微粘結炭含有量単位あたりのコークス強度の低下量を表す定数である。
図4に示した例において、Kは、0.1535である。
【0078】
Rは、成型炭の粉化による粉炭中の非微粘結炭含有量の増加割合である。成型炭の粉化による粉炭中の非微粘結炭含有量の増加割合Rは以下のように求められる。粉の発生量が配合炭全体に占める割合は、成型炭の配合率Wbqと成型炭中の非微粘結炭の配合率Wnccと成型炭がコークス炉に装入されるまで受ける衝撃と同等の衝撃を与えた場合の粉化率とによって求められる。成型炭に対して、コークス炉に装入するまでの衝撃を与えた場合の粉化率を成型炭の強度Sbqとし、粉の発生量が配合炭全体に占める割合をWpとするとWp=Wbq×Wncc×Sbqとなる。
【0079】
この発生粉により、配合炭中の粉炭の比率は、粉化前の粉炭比率(1-Wbq)からWpだけ増加するので、粉炭中に占める非微粘結炭粉の増加割合Rは、R=Wp/(1-Wbq+Wp)となる。
【0080】
従って、あらかじめ実験等により定数aと定数Kを求めておき、DIbaseを乾留試験等により求め、非微粘結炭の軟化溶融特性CATP(上述の例ではlogCATMF)を測定し、Wbq、Wncc、SbqからRを求めれば、上記(3)式を用いて、成型炭の粉化を考慮してコークス強度を推定できることがわかる。
【0081】
このように、本実施形態に係るコークス強度の推定方法は、下記の5つのパラメータを用いて、非微粘結炭が配合され、一部が粉化した状態の成型炭と、粉状の石炭と、を含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度を推定するコークス強度の推定方法である。
1.粉化していない状態の成型炭と粉状の石炭とを含む配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度(DIbase)
2.配合炭に配合する成型炭の配合率(Wbq)
3.成型炭の強度(Sbq)
4.成型炭に配合する非微粘結炭の配合率(Wncc)
5.非微粘結炭に芳香環を有する1級アミン化合物、2級アミン化合物から選ばれる1種以上を添加した混合物の軟化溶融特性(CATP)
【0082】
上記5つのパラメータを用いてコークス強度を推定することで、配合炭に含まれる成型炭の一部が粉化することによるコークス強度の低下を考慮しながらコークス強度を推定できる。これにより、従来の方法よりも高い精度で、非微粘結炭が配合された成型炭と粉状の石炭とを含む配合炭から製造されるコークスのコークス強度を推定できる。
【0083】
次に、成型炭に配合する非微粘結炭の軟化溶融特性に応じてコークス強度を推定し、推定されたコークス強度に基づいて成型炭に配合する非微粘結炭の配合率を決定してコークスを製造するコークスの製造方法の実施形態を説明する。
【0084】
本実施形態に係るコークスの製造方法では成型炭に配合する非微粘結炭として、JIS M 8801:2008に規定のギーセラー最高流動度MFが20ddpm以下の石炭を選定した。まず、選定された非微粘結炭について、非微粘結炭10質量部に対してN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを1質量部添加してギーセラー最高流動度CATMFを測定する。
【0085】
次に、非微粘結炭以外に成型炭に用いる石炭の種類と配合率、および成型炭に配合する粉炭中の石炭の種類と配合率を決定し、決められた配合率(Wncc)で非微粘結炭が配合された成型炭を製造する。製造された成型炭を粉化させずに所定の配合率(Wbq)で粉炭に配合した配合炭を乾留して製造されるコークスのコークス強度(DIbase)を乾留試験等によって求める。
【0086】
さらに、製造された成型炭の強度(Sbq)を、成型炭が製造されてからコークス炉に装入されるまでの過程での衝撃力により粉化した粉化率として求めれば、上記(3)式を用いて、その条件で製造されるコークスのコークス強度を推定できる。そして、推定されたコークス強度が目標とするコークス強度以上になるように、上記5つのパラメータを調整する。例えば、推定されたコークス強度が目標とするコークス強度よりも小さければ、成型炭中のバインダーを増量するなどの方法で成型炭の強度(Sbq)を上げる。これにより、製造されるコークスのコークス強度を向上させることができる。なお、目標とするコークス強度は、予め定められたコークス強度の一例である。
【0087】
また、製造されるコークスのコークス強度を調整するために、成型炭中の非微粘結炭の配合率を調整してもよい。推定されたコークス強度が目標とするコークス強度よりも高ければ、安価な非微粘結炭の配合率を上げることで、目標とするコークス強度を維持しながら、コークス製造に係るコストを削減できる。また、推定されたコークス強度が目標とするコークス強度よりも低い場合には、非微粘結炭の配合率を低下させてもよい。
【0088】
なお、選定された非微粘結炭の成型炭中の配合率を変えると、粉化していない状態の成型炭と粉状の石炭を含む配合炭を乾留して製造されるコークス強度(DIbase)が変わることがある。この場合には、非微粘結炭の配合率を変更した配合炭を用いてコークス製造試験を行って、当該コークス強度(DIbase)と成型炭に配合する非微粘結炭の配合率(Wncc)の相関関係を予め把握しておけば、コークス強度(DIbase)の変化も考慮した上でコークス強度を推定できるようになる。これにより、目標とするコークス強度を満足しつつ、粘結性の低い劣質な非微粘結炭の使用量の最大化を達成することができ、コストダウンに寄与できるとともに石炭資源の有効利用にも寄与できる。
【0089】
また、logCATMFが3.0以下の非微粘結炭の成型炭中の配合率が、logCATMFが3.0以下の非微粘結炭の粉状の石炭中の配合率よりも高くなるように配合炭を調製し、調整された配合炭を乾留してコークスを製造することが好ましい。非微粘結炭のlogCATMFは、非微粘結炭10質量部に対してN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン1質量部を添加して測定されるJIS M 8801:2008に規定のギーセラー最高流動度MFの常用対数値である。
【0090】
図1、
図4に示すように、logCATMFが3.0以下の非微粘結炭は、成型炭に含まれる場合にはコークス強度を低下させず、粉炭に含まれる場合にはコークス強度を低下させる。このため、logCATMFが3.0以下の非微粘結炭は、なるべく多く成型炭に配合することが好ましく、当該非微粘結炭の成型炭中の配合率を、粉炭中の配合率より高めることが好ましい。これにより、より高強度のコークスの製造が実現できるようになる。
【0091】
なお、上記説明では、実験結果をもとに、強度低下に対する非微粘結炭の性状と成型炭の粉化の影響を線形の関係に基づいて推定したが、線形でない相関関係を用いてもよい。また、必要に応じて一部の変数を近似的に求めたり、影響度の小さい変数を省略したり、式の形を変形してもよい。