(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014977
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196517
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2020178334の分割
【原出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮司
(57)【要約】
【課題】主弁体に形成された副弁ポートと副弁体との間のポート絞り部により冷媒の小流量制御域での流量制御を行う電動弁において、副弁室内での冷媒の状態を安定化し、ポート絞り部の冷媒通過音の音圧を低減して、電動弁の騒音や振動の発生を抑制する。
【解決手段】副弁体4にて副弁室3R内に挿通されるガイド用ボス部41を設ける。副弁室3Rの内周とガイド用ボス41の外周とのクリアランスにより絞り通路S1を形成する。主弁室1R内に流入した冷媒を、連通路3bから絞り通路S1を通って副弁室3Rに流す。主弁室1R内の冷媒が、気相の冷媒に液相の冷媒が混入した状態の冷媒であっても、冷媒を絞り通路S1を通すことで安定化する。そして、副弁室3Rからポート絞り部Pを通過させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体の主弁室内に設けられて該主弁室に開口する主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁室内で該主弁体に形成された副弁ポートの軸線方向に移動して該副弁ポートの開度を制御する副弁体と、を備え、前記主弁室から前記副弁室に連通する連通路が形成され、前記主弁体で前記主弁ポートを閉として、前記連通路を介して前記副弁室に流入する流体を、前記副弁体のニードル弁と前記副弁ポートとの隙間のポート絞り部で絞る小流量制御域を有する電動弁において、
前記連通路から前記ポート絞り部までの間に、前記副弁室内での流体の状態を安定化する安定化構造を備えたことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記副弁室の内周と、該弁室に内挿される前記副弁体の外周とのクリアランスからなる絞り通路により前記安定化構造を構成していることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記副弁体は前記副弁室内に挿通されるガイド用ボス部を備え、前記副弁室の内周と前記ガイド用ボスの外周とのクリアランスにより前記絞り通路を構成していることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記副弁体は前記副弁室内に挿通されるフランジ部と、前記連通路に開口する拡大空間と、を備え、前記副弁室の内周と前記フランジ部の外周とのクリアランスからなる絞り通路と、前記拡大空間とにより、前記安定化構造を構成していることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項5】
前記フランジ部に、前記拡大空間から前記ポート絞り部側まで前記軸線方向に貫通する透孔が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電動弁。
【請求項6】
前記連通路の開口面積[A]と、前記絞り通路の開口面積[B]と、前記ポート絞り部の開口面積[C]と、の関係が、
A>B>C
となっていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項7】
前記連通路の開口面積[A]と、前記絞り通路の開口面積[B]と、前記ポート絞り部の開口面積[C]と、前記透孔の開口面積[D]と、の関係が、
A>B+D>C
となっていることを特徴とする請求項5に記載の電動弁。
【請求項8】
前記主弁体に前記連通路が形成され、前記ポート絞り部から前記連通路までの高さが、前記副弁室の半径よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の冷凍サイクルに設けられる電動弁として、小流量制御域と大流量域とで流量制御する電動弁がある。このような電動弁は、例えば特開2020-106086号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
図9はこの従来の電動弁の要部拡大断面図である。この従来の電動弁では、主弁体aと副弁体bとを備え、副弁体bの連通路b3から主弁体aの副弁室a1へ冷媒を流入させ、副弁体bのニードル弁b2と副弁ポートa2との隙間であるポート絞り部Pで冷媒を絞って小流量制御を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電動弁では、連通路b3に流入する冷媒が気相に液相が混入した場合等、冷媒の状態が不安定である場合、冷媒が安定しないままポート絞り部Pに流入する。このため、ポート絞り部Pの冷媒通過音が増大するという問題がある。
【0006】
本発明は、主弁体で主弁ポートを全閉状態とし、この主弁体に形成された副弁ポートと副弁体との間のポート絞り部により冷媒の小流量制御域での流量制御を行う電動弁において、副弁室内での冷媒の状態を安定化し、ポート絞り部の冷媒通過音の音圧を低減して、電動弁の騒音や振動の発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動弁は、弁本体の主弁室内に設けられて該主弁室に開口する主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁室内で該主弁体に形成された副弁ポートの軸線方向に移動して該副弁ポートの開度を制御する副弁体と、を備え、前記主弁室から前記副弁室に連通する連通路が形成され、前記主弁体で前記主弁ポートを閉として、前記連通路を介して前記副弁室に流入する流体を、前記副弁体のニードル弁と前記副弁ポートとの隙間のポート絞り部で絞る小流量制御域を有する電動弁において、前記連通路から前記ポート絞り部までの間に、前記副弁室内での流体の状態を安定化する安定化構造を備えたことを特徴とする。
【0008】
この際、前記副弁室の内周と、該副弁室に内挿される前記副弁体の外周とのクリアランスからなる絞り通路により前記安定化構造を構成していることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0009】
また、前記副弁体は前記副弁室内に挿通されるガイド用ボス部を備え、前記副弁室の内周と前記ガイド用ボスの外周とのクリアランスにより前記絞り通路を構成していることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0010】
また、前記副弁体は前記副弁室内に挿通されるフランジ部と、前記連通路に開口する拡
大空間と、を備え、前記副弁室の内周と前記フランジ部の外周とのクリアランスからなる絞り通路と、前記拡大空間とにより、前記安定化構造を構成していることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0011】
また、前記フランジ部に、前記拡大空間から前記ポート絞り部側まで前記軸線方向に貫通する透孔が形成されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0012】
また、前記連通路の開口面積[A]と、前記絞り通路の開口面積[B]と、前記ポート絞り部の開口面積[C]と、の関係が、
A>B>C
となっていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0013】
また、前記連通路の開口面積[A]と、前記絞り通路の開口面積[B]と、前記ポート絞り部の開口面積[C]と、前記透孔の開口面積[D]と、の関係が、
A>B+D>C
となっていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0014】
また、前記主弁体に前記連通路が形成され、前記ポート絞り部から前記連通路までの高さが、前記副弁室の半径よりも大きいことを特徴とする電動弁が好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電動弁によれば、気相の冷媒に液相の冷媒が混入した状態の冷媒であっても、副弁室内での冷媒の状態が安定化し、副弁室からポート絞り部(副弁ポート)を通過する前の冷媒の状態が安定化する。したがって、ニードル弁と副弁ポートとの隙間であるポート絞り部の冷媒通過音の音圧が低減し、電動弁の騒音や振動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の縦断面図である。
【
図2】第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大断面図である。
【
図3】第1実施形態の電動弁の大流量域状態の要部拡大断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大断面図である。
【
図5】第2実施形態の電動弁の大流量域状態の要部拡大断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大断面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の電動弁の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の縦断面図、
図2は同電動弁の小流量制御域状態(副弁下端位置)の要部拡大断面図、
図3は同電動弁の大流量域状態(副弁上端位置)の要部拡大断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。この電動弁100は、弁ハウジング1と、ガイド部材2と、主弁体3と、副弁体4と、駆動部5と、を備えている。
【0018】
弁ハウジング1は例えば、黄銅、ステンレス等で略円筒形状に形成されており、その内側に主弁室1Rを有している。弁ハウジング1の外周片側には主弁室1Rに導通される第1継手管11が接続されるとともに、下端から下方に延びる筒状部に第2継手管12が接続されている。また、弁ハウジング1の第2継手管12の主弁室1R側には主弁座13が形成され、この主弁座13の内側は主弁ポート13aとなっている。主弁ポート13aは軸線Lを中心とする円柱形状の孔であり、第2継手管12は主弁ポート13aを介して主弁室1Rに導通される。なお、本実施形態では、主弁座13は、弁ハウジング1に一体的に形成されているが、主弁ポートを有する弁座部材を弁ハウジングとは別体に設け、弁座部材を弁ハウジングに組み付ける形態としてもよい。
【0019】
弁ハウジング1の上端の開口部には、ガイド部材2が取り付けられている。ガイド部材2は、弁ハウジング1の内周面内に嵌合される嵌合部21と、嵌合部21の上方に位置する略円柱状のガイド部22と、ガイド部22の上部に延設されたホルダ部23と、嵌合部21に設けられ、嵌合部21の外周に突出する金属板からなるリング状の固定金具24とを有している。嵌合部21、上部ガイド部22及びホルダ部23は樹脂製の一体品として構成されており、固定金具24はインサート成形により樹脂製の嵌合部21と共に一体に設けられている。なお、ガイド部材2の嵌合部21を弁ハウジング1に対して圧入してもよい。
【0020】
ガイド部材2は、嵌合部21により弁ハウジング1に組み付けられ、固定金具24を介して弁ハウジング1の上端部に溶接により固定されている。また、ガイド部材2において、嵌合部21とガイド部22の内側には軸線Lと同軸の円筒形状のガイド孔2Aが形成されるとともに、ホルダ部23の中心には、ガイド孔2Aと同軸の雌ねじ部23aとそのねじ孔が形成されている。そして、ガイド孔2A内には主弁体3が配設されている。
【0021】
主弁体3は、主弁座13に対して着座及び離座する主弁部31と、主弁体3の側壁であって副弁体4を保持する保持部32とで構成されている。主弁部31の内側には円柱状の開口3Aが形成されるとともに、保持部32の内側には円柱状の副弁室3Rが形成され、この副弁室3Rの内周面は副弁ガイド孔3Bとなっている。そして、主弁部31と保持部32との間には、軸線Lを中心として副弁室3Rから開口3A側に開口する円柱状の副弁ポート3aが形成されている。
【0022】
主弁体3の保持部32の側面には、軸線Lと交差する方向で主弁室1Rから副弁室3Rに連通する連通路3bが形成されている。この実施形態では、連通路3bは、軸線L周りに回転対象な位置に放射状に複数本(例えば4本)形成されている。また、主弁体3は、保持部32の上端部にリテーナ34を有するとともに、リテーナ34とガイド部材2のガイド孔2Aの上端部との間に主弁ばね35を有しており、この主弁ばね35により主弁体3は主弁座13の方向(閉方向)に付勢されている。なお、主弁部31の開口3Aの内側に消音部材36が配設されている。なお、連通路3bは、回転対象な位置に放射状に複数本形成される形態に限らず、連通路3bの数を一個としたり、不等間隔に複数本形成してもよい。
【0023】
副弁体4は、ロータ軸51の下端部に設けられている。また、副弁体4は、ロータ軸に一体に形成されている。この副弁体4はガイド用ボス部41とニードル弁42とで構成されている。また、副弁体4のニードル弁42は、その先端が副弁ポート3a対して軸線L方向に挿通されるものであり、ニードル弁42と副弁ポート3aとの隙間であるポート絞り部Pを小流量の冷媒が流れることにより小流量制御が行われる。ガイド用ボス部41の上端には、潤滑性樹脂からなる円環状のワッシャ43が配設され、ガイド用ボス部41は、副弁ガイド孔3B内に挿通されている。そして、このガイド用ボス部41の外周面と副弁ガイド孔3Bの内周面とのクリアランスが「安定化構造」としての絞り通路S1を構成している。なお、副弁体4と、ロータ軸51とを別体にそれぞれ形成し、これらを組み付けてもよい。
【0024】
弁ハウジング1の上端にはケース14が溶接等によって気密に固定され、このケース14の内外に駆動部5が構成されている。駆動部5は、ステッピングモータ5Aと、ステッピングモータ5Aの回転により副弁体4を進退させるねじ送り機構5Bと、ステッピングモータ5Aの回転を規制するストッパ機構5Cと、を備えている。
【0025】
ステッピングモータ5Aは、ロータ軸51と、ケース14の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ52と、ケース14の外周においてマグネットロータ52に対して対向配置されたステータコイル53と、その他、図示しないヨークや外装部材等により構成されている。ロータ軸51はブッシュを介してマグネットロータ52の中心に取り付けられ、このロータ軸51のガイド部材2側の外周には雄ねじ部51aが形成されている。この雄ねじ部51aはガイド部材2の雌ねじ部23aに螺合されており、これにより、ガイド部材2はロータ軸51を軸線L上に支持している。そして、ガイド部材2の雌ねじ部23aとロータ軸51の雄ねじ部51aはねじ送り機構5Bを構成している。なお、ケース14の内側天井部には回転ストッパ機構5Cを保持する円筒部14aが設けられ、この円筒部14a内には、ロータ軸51の上端をガイドするガイド部材54が配設されている。
【0026】
以上の構成により、ステッピングモータ5Aが駆動されるとマグネットロータ52及びロータ軸51が回転し、雄ねじ部51aと雌ねじ部23aとのねじ送り機構5Bにより、マグネットロータ52と共にロータ軸51が軸線L方向に移動する。そして、副弁体4が軸線L方向に進退移動して副弁体4のニードル弁42が副弁ポート3aに対して近接又は離間する。また、副弁体4が上昇するとき、ワッシャ43が主弁体3のリテーナ34に係合し(副弁上端位置)、主弁体3は副弁体4と共に移動して、主弁体3の主弁部31が主弁座13から離座する。これにより、主弁ポート13aが全開となって大流量域状態となる(なお、主弁体3が主弁座13から離座した直後も、主弁ポート13aが全開となる大流量域状態である後述の
図3と同じ状態となる)。なお、マグネットロータ52には突起部52aが形成されており、マグネットロータ52の回転に伴って突起部52aが回転ストッパ機構5Cを作動させ、ロータ軸51(及びマグネットロータ52)の最下端位置及び最上端位置が規制される。
【0027】
図1の小流量制御域状態では、主弁体3は主弁座13に着座した状態で主弁ポート13aが弁閉となり、副弁体4のニードル弁42により副弁ポート3aの開度(ポート絞り部Pの開口面積)が制御され、小流量の制御が行われる。このとき、第1継手管11から主弁室1R内に流入した冷媒は、連通路3bから絞り通路S1を通って副弁室3Rに流れる。このように、冷媒は絞り通路S1を介して副弁室3Rに流入するので、仮に主弁室1R内の冷媒が、気相の冷媒に液相の冷媒が混入した状態の冷媒であっても、この冷媒は絞り通路S1を通ることで安定化し、副弁室3Rからポート絞り部Pを通過する前の冷媒の状態が安定化する。したがって、ポート絞り部Pでの冷媒通過音の音圧が低減され、この電動弁100の騒音や振動の発生を抑制することができる。
【0028】
ここで、
図9に示す従来の電動弁では、副弁ポートa2の上縁位置から連通路b3の底部までの高さ[H1]が小さいため、連通路b3からポート絞り部Pまでの冷媒が流れる距離が短い。これに対して本実施形態では、
図2に示すように、副弁ポート3aの上縁位置から連通路3bの底部までの高さ[H3]は、前記従来の電動弁における前記高さ[H1]より十分に高く、すなわち、この高さ[H3]は副弁室3aの内径(ガイド孔3Bの内径)の半径よりも大きくなっている。このように、副弁ポート3aの上縁位置から連通路3bの底部までの高さ[H3]が十分長いので、冷媒の安定化の効果が高くなる。なお、
図2は電動弁100の小流量制御域状態での副弁体4の下端位置を示しており、この状態で、副弁ポート3aから絞り通路S1の下端までの高さ[H2]は、副弁ポート3aの上縁位置から連通路3bの底部までの高さ[H3]よりは低くなっている。また、
図3に示す大流量域状態で副弁体4の上端位置での副弁ポート3aの上縁位置から絞り通路S1の下端までの高さ[H4]も副弁ポート3aの上縁位置から連通路3bの底部までの高さ[H3]よりは低くなっている。これにより、絞り通路S1を常時確保できる。
【0029】
また、連通路3bの開口面積[A]と、絞り通路S1の開口面積[B]と、ポート絞り部Pの開口面積[C]と、の関係は、
A>B>C
となっている。これにより、冷媒状態の安定化効果が高まる。なお、連通路3bを複数設けた形態の場合、複数の連通路3bの開口面積の合計とされる。また、本実施の形態では、ポート絞り部Pの開口面積は、副弁ポート3aにニードル弁42が挿通されていない副弁ポート3aの内径での開口面積Cにて、上記の関係を有するように設定されているが、副弁ポート3a内にニードル弁42が挿通された状態で、副弁ポート3aとニードル弁42との間の間隙の開口面積をCとして、上記の関係を有するように設定してもよい。
【0030】
図4は本発明の第2実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大断面図、
図5は第2実施形態の電動弁の大流量域状態の要部拡大断面図である。なお、以下の第2乃至第5実施形態において、図示する要部以外のその他の部分は第1実施形態の
図1と同一である。また、以下の各実施形態において第1実施形態と同様な部材、同様な要素には同じ符号を付記して詳細な説明は省略する。この第2実施形態で第1実施形態と異なる点は、副弁体4′の構成である。
【0031】
この第2実施形態における副弁体4′は、副弁室3R内に挿通される第1実施形態と同様なガイド用ボス部41′と、このガイド用ボス部41′から副弁ポート3a側に離間した位置に形成されたフランジ部43′とを備えている。さらに、ガイド用ボス部41′とフランジ部43′との間の空間である拡大空間4a′を備えている。フランジ部43′は円盤状であり、その外周面と副弁ガイド孔3Bの内周面とのクリアランスにより絞り通路S2が形成されている。また、拡大空間4a′は連通路3bに開口している。そして、この絞り通路S2と拡大空間4a′とが「安定化構造」構成している。そして、第1継手管11から主弁室1R内に流入した冷媒は、連通路3bから拡大空間4a′に流出し、さらに絞り通路S2を通って副弁室3Rに流れる。このように、冷媒は拡大空間4a′と絞り通路S2を介して副弁室3Rに流入するので、主弁室1R内の冷媒中の気相と液相の比率の変動により液相の比率が増加した場合であっても、拡大空間内4a′内で冷媒中の気相と液相が均一化されるので、副弁室3Rからポート絞り部S(副弁ポート)を通過する前の冷媒の状態がより安定化する。したがって、ポート絞り部Pでの冷媒通過音の音圧が低減され、この電動弁100の騒音や振動の発生を抑制することができる。また、拡大空間4a′に流出した流体は、流速が減速されるので、壁面に衝突する際に発生する気泡の消滅に起因する騒音や振動の発生も抑制することもできる。なお、
図5に示す大流量域状態で副弁体4′の上端位置での副弁ポート3aの上縁位置から絞り通路S2の下端までの高さも副弁ポート3aの上縁位置から連通路3bの底部までの高さよりは低くなっている。これにより、絞り通路S2を常時確保できる。
【0032】
また、連通路3bの開口面積[A]と、絞り通路S2の開口面積[B]と、ポート絞り部Pの開口面積[C]と、の関係は、
A>B>C
となっている。これにより、冷媒状態の安定化効果が高まる。なお、開口面積Aと開口面積Cの設定については第1実施形態の場合と同様に設定できる。
【0033】
図6は第3実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大断面図である。この第3実
施形態では、連通路3bの副弁室3R側に拡大空間3cを形成したものである。この第3実施形態でも、第2実施形態と同様であり、冷媒は、連通路3bから拡大空間3cに流出し、さらに絞り通路S1を通って副弁室3Rに流れるので、主弁室1R内の冷媒中の気相と液相の比率の変動により液相の比率が増加した場合であっても、拡大空間内3c内で冷媒中の気相と液相が均一化されるので、副弁室3Rからポート絞り部P(副弁ポート)を通過する前の冷媒の状態がより安定化する。したがって、ポート絞り部Pでの冷媒通過音の音圧が低減され、この電動弁100の騒音や振動の発生を抑制することができる。また、拡大空間3cに流出した流体は、流速が減速されるので、壁面に衝突する際に発生する気泡の消滅に起因する騒音や振動の発生も抑制することもできる。
【0034】
図7は第4実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大断面図である。この第4実施形態では、副弁体4″のガイド用ボス部41″において、連通路3bと向き合う部分に拡大空間44″を設けたものである。この拡大空間44″は、ガイド用ボス部41″の外周面から軸線Lに向けて穿設された孔により形成されている。この孔の内径は連通路3bの内径よりも十分大きな内径とされる。すなわち、この拡大空間44″は全周に設けたものではない。この第4実施形態でも、第2実施形態と同様に、冷媒は、連通路3bから拡大空間44″に流出し、さらに絞り通路S1を通って副弁室3Rに流れるので、主弁室1R内の冷媒中の気相と液相の比率の変動により液相の比率が増加した場合であっても、拡大空間内44″内で冷媒中の気相と液相が均一化されるので、副弁室3Rからポート絞り部P(副弁ポート)を通過する前の冷媒の状態がより安定化する。たがって、ポート絞り部Pでの冷媒通過音の音圧が低減され、この電動弁100の騒音や振動の発生を抑制することができる。また、拡大空間44″に流出した流体は、流速が減速されるので、壁面に衝突する際に発生する気泡の消滅に起因する騒音や振動の発生も抑制することもできる。
【0035】
図8は第5実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大断面図である。この第5実施形態では、第2実施形態と同様な副弁体4′のフランジ部43′に、拡大空間4aからポート絞り部P側まで軸線L方向に貫通する透孔45′を形成したものである。そして、この第5実施形態では、冷媒は、連通路3bから拡大空間4aに流出する。そして、冷媒は、絞り通路S2と、透孔45′を通って副弁室3Rに流れる。このため、主弁室1R内の冷媒中の気相と液相の比率の変動により液相の比率が増加した場合であっても、拡大空間内4a内で冷媒中の気相と液相が均一化されるので、副弁室3Rからポート絞り部Pを通過する前の冷媒の状態がより安定化する。したがって、ポート絞り部Pでの冷媒通過音の音圧が低減され、この電動弁100の騒音や振動の発生を抑制することができる。また、拡大空間4aに流出した流体は、流速が減速されるので、壁面に衝突する際に発生する気泡の消滅に起因する騒音や振動の発生も抑制することもできる。
【0036】
また、連通路3bの開口面積[A]と、絞り通路S2の開口面積[B]と、ポート絞り部の開口面積[C]と、透孔45′の開口面積[D]と、の関係が、
A>B+D>C
となっている。これにより、冷媒状態の安定化効果が高まる。なお、開口面積Aと開口面積Cの設定については第1実施形態の場合と同様に設定できる。
【0037】
なお、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態では、それぞれの大流量域状態の図示は省略したが、大流量域状態においても絞り通路が常時確保できる点は、第1実施形態、第2実施形態と同様である。
【0038】
また、本発明の実施形態では、主弁体に連通路を設けたものとしたが、主弁体に連通路を設けずに、例えばガイド用ボス部にDカットを設け、主弁体の内周面(副弁ガイド孔3B)とDカットとで連通路を形成することもできる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述し、その他の実施形態についても詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 弁ハウジング
1R 主弁室
11 第1継手管
12 第2継手管
13 主弁座
13a 主弁ポート
L 軸線
2 ガイド部材
2A ガイド孔
22 ガイド部
23 ホルダ部
23a 雌ねじ部
3 主弁体
31 主弁部
32 保持部
3a 副弁ポート
3b 連通路
3B 副弁ガイド孔
3R 副弁室
4 副弁体
41 ガイド用ボス部
42 ニードル弁
5 駆動部
5A ステッピングモータ
5B ねじ送り機構
5C ストッパ機構
51 ロータ軸
51a 雄ねじ部
52 マグネットロータ
53 ステータコイル
4′ 副弁体
41′ ガイド用ボス部
43′ フランジ部
4a′ 拡大空間
4″ 副弁体
41″ ガイド用ボス部
44″ 拡大空間
3c 拡大空間
100 電動弁
【手続補正書】
【提出日】2023-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の電動弁は、主弁室および主弁ポートを備える弁本体と、前記主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁ポートの開度を変更する副弁体と、を備え、前記主弁体は、前記副弁体に対して軸線方向に相対的に移動可能に連結され、一方の開口が前記主弁室に開口する連通路を備え、前記連通路の他方の開口から前記副弁ポートまでの流路により副弁室が形成され、前記主弁体で前記主弁ポートを閉として、前記主弁室から前記連通路を経由して前記副弁ポートへ流入する流体を、前記副弁体のニードル弁と前記副弁ポートとの隙間のポート絞り部で絞る小流量制御域を有する電動弁において、前記連通路から前記副弁ポートまでの間に、前記副弁室内での流体の状態を安定化する安定化構造を備え、前記副弁室の前記連通路側に開口する拡大空間と、前記拡大空間と前記副弁ポートを連通し、前記軸線方向から見た断面積が前記拡大空間を前記軸線方向から見た断面積より小さい絞り通路と、が前記安定化構造を構成し、前記副弁体の前記ニードル弁と前記拡大空間の間には、前記軸線方向と交差する方向に延在する円盤状部が設けられ、前記円盤状部には、前記ニードル弁に対して径方向外側の位置で前記軸線方向に貫通する透孔が設けられていることを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
この際、前記ニードル弁は、前記副弁ポート内に挿通された状態で、前記副弁ポートの内壁と対向する円柱部を備えることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また、前記絞り通路は、前記副弁室の内周と、該副弁室に内挿される前記副弁体の外周とのクリアランスからなることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、前記絞り通路は、前記副弁室の内周と前記円盤状部の外周とのクリアランスからなることを特徴とする電動弁が好ましい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
また、前記ポート絞り部から前記連通路までの高さが、前記副弁室の半径よりも大きいことを特徴とする電動弁が好ましい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁室および主弁ポートを備える弁本体と、前記主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁ポートの開度を変更する副弁体と、を備え、
前記主弁体は、前記副弁体に対して軸線方向に相対的に移動可能に連結され、一方の開口が前記主弁室に開口する連通路を備え、
前記連通路の他方の開口から前記副弁ポートまでの流路により副弁室が形成され、
前記主弁体で前記主弁ポートを閉として、前記主弁室から前記連通路を経由して前記副弁ポートへ流入する流体を、前記副弁体のニードル弁と前記副弁ポートとの隙間のポート絞り部で絞る小流量制御域を有する電動弁において、
前記連通路から前記副弁ポートまでの間に、前記副弁室内での流体の状態を安定化する安定化構造を備え、
前記副弁室の前記連通路側に開口する拡大空間と、前記拡大空間と前記副弁ポートを連通し、前記軸線方向から見た断面積が前記拡大空間を前記軸線方向から見た断面積より小さい絞り通路と、が前記安定化構造を構成し、
前記副弁体の前記ニードル弁と前記拡大空間の間には、前記軸線方向と交差する方向に延在する円盤状部が設けられ、
前記円盤状部には、前記ニードル弁に対して径方向外側の位置で前記軸線方向に貫通する透孔が設けられていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記ニードル弁は、前記副弁ポート内に挿通された状態で、前記副弁ポートの内壁と対向する円柱部を備えることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記絞り通路は、前記副弁室の内周と、該副弁室に内挿される前記副弁体の外周とのクリアランスからなることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
前記絞り通路は、前記副弁室の内周と前記円盤状部の外周とのクリアランスからなることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項5】
前記連通路の開口面積[A]と、前記絞り通路の開口面積[B]と、前記ポート絞り部の開口面積[C]と、の関係が、
A>B>C
となっていることを特徴とする請求項3または4に記載の電動弁。
【請求項6】
前記連通路の開口面積[A]と、前記絞り通路の開口面積[B]と、前記ポート絞り部の開口面積[C]と、前記透孔の開口面積[D]と、の関係が、
A>B+D>C
となっていることを特徴とする請求項3または4に記載の電動弁。
【請求項7】
前記ポート絞り部から前記連通路までの高さが、前記副弁室の半径よりも大きいことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の電動弁。