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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149781
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】配管支持部材
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/08 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
F16L3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135274
(22)【出願日】2024-08-14
(62)【分割の表示】P 2023562115の分割
【原出願日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2021188611
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】清水 明
(57)【要約】
【課題】施工時の作業効率が良く、作業者の技量によらずに均質に配管を適切に支持することができる配管支持部材を提供する。
【解決手段】構造体(S)に固定されたベース金具(70)に連結されて配管(P)を支持する配管支持部材(1)は、配管(P)を保持する保持部(11)と、第一ボルト(B1)の締結によってベース金具(70)に固定されるベース固定部(13)と、第一ボルト(B1)とは別の第二ボルト(B2)の締結によって保持部(11)に締め付け力を作用させる締付作用部(16)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体に固定されたベース金具に連結されて配管を支持する配管支持部材であって、
前記配管の外周面を包囲して当該配管を保持する保持部と、
前記保持部から互いに対向するように延出し、第一ボルトの締結によって前記ベース金具に固定されるベース固定部と、
前記保持部から互いに対向するように延出し、前記第一ボルトとは別の第二ボルトの締結によって前記保持部に締め付け力を作用させる締付作用部と、を備える配管支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建築物に設置される空調機器では、例えば屋外に設置された室外機から屋内に設置された室内機に亘って、冷媒配管が配設される場合がある。この場合、例えば暖房運転時に、冷媒配管が熱膨張によって軸方向に伸長し、この伸長量分の負荷が冷媒配管の端部側の屈曲箇所(いわゆるエルボ部)にかかる虞がある。特に冷媒配管が上下方向に配設される場合には、当該冷媒配管の自重による負荷も加わるため、上記屈曲箇所に大きな負荷がかかる虞がある。このような懸念に対して、構造体に固定されたベース金具に連結される配管支持部材を用いて冷媒配管の軸方向の一部を固定し、その固定箇所における軸方向の移動を防ぐことが行われている。熱膨張に伴う配管部材の伸長量を、この固定箇所を中心として軸方向の両側に分散させることで、最下端側の屈曲箇所への負荷を軽減するのである。
【0003】
配管支持部材の一例が、特開2018-25290号公報(特許文献1)に開示されている。この配管支持部材は、スリット状の係合孔73を有する一対のクランプ部材71を備えており、配管部材Pの外周面に固定された装着部材1の鍔部31に係合孔73を係止させて、配管部材Pを支持する。なお、配管部材Pに対する装着部材1の固定は、ロウ付け等の溶接手段によって行われている。
【0004】
しかし、ロウ付け等の溶接施工はある程度の熟練が必要で、作業者の技量に応じて施工品質にバラツキが生じる可能性がある。また、建築物には複数の配管部材Pが配設されることが一般的で、施工対象の建築物全体で、配管部材Pへの装着部材1の固定箇所数が多くなる。それらの全てを溶接手段で行うのは、多大な労力を要し、作業効率が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-25290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
施工時の作業効率が良く、作業者の技量によらずに均質に配管を適切に支持することができる配管支持部材の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る配管支持部材は、
構造体に固定されたベース金具に連結されて配管を支持する配管支持部材であって、
前記配管の外周面を包囲して当該配管を保持する保持部と、
前記保持部から互いに対向するように延出し、第一ボルトの締結によって前記ベース金具に固定されるベース固定部と、
前記保持部から互いに対向するように延出し、前記第一ボルトとは別の第二ボルトの締結によって前記保持部に締め付け力を作用させる締付作用部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、ベース金具に対してベース固定部を固定するのに伴い、保持部で配管の外周面を包囲して当該配管を直接保持することができる。例えば鍔部を有する部材を配管に溶接して介在させる必要がなく、ボルト操作だけで施工することができて作業効率が良い。また、ボルト操作だけであれば作業者の技量のバラツキがほとんどないので、施工の均質化を図ることができる。さらに、ベース金具に固定されるベース固定部とは別に締付作用部を備えるので、第一ボルトの締結に伴う保持部での配管の通常の保持に加え、第二ボルトの締結によって保持部に追加の締め付け力を作用させることができる。これにより、保持部の内面による面圧を高めて、配管を適切に支持することができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
一態様として、
前記締付作用部は、前記保持部と一対の前記締付作用部との2つの境界部分が互いに離間した状態で前記保持部に締め付け力を作用させることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、一対の締付作用部どうしの間に一定の締め代を残しながら第二ボルトを締結できるので、保持部に対して十分な締め付け力を作用させることができる。よって、安定的に配管を支持することができる。
【0012】
一態様として、
前記締付作用部が、前記第二ボルトが締結される締付本体部を有するとともに、前記締付本体部における前記第二ボルトによる締結位置に対して前記保持部とは反対側に、前記第二ボルトによる締結時に互いに当接して前記締付本体部どうしの間に一定距離を保たせる近接規制部を有することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第二ボルトを締結したとき、近接規制部が支点となって、一定距離を隔てて対向する締付本体部どうしをより強固に挟持することができ、それに伴い、保持部に対してより大きな締め付け力を作用させることができる。これにより、保持部の内面による面圧をさらに高めて、配管を強固に支持することができる。
【0014】
一態様として、
前記近接規制部が、前記締付本体部の先端を屈曲させた先端屈曲部で構成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、締付本体部の先端を屈曲させるだけの簡単な構造で、締付本体部どうしの間に一定距離を保たせる近接規制部を適切に構成できる。
【0016】
一態様として、
一対の前記締付作用部を構成するそれぞれの前記先端屈曲部が、互いに交差する状態で当接することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、一対の締付作用部に、第二ボルトの締結による締め付け力を均等に作用させることができる。これにより、締付作用部の変形や偏りがほとんどない状態で、安定的に配管を支持することができる。
【0018】
一態様として、
前記保持部と前記ベース固定部と前記締付作用部とが一体的に形成されているとともに、前記ベース固定部と前記締付作用部との間に、前記第二ボルトの締結による締め付け力が前記ベース固定部側へ伝わりにくくするための切欠部が設けられていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、例えば1枚の金属板から打ち抜いて屈曲形成することにより、配管支持部材を簡単に形成することができる。また、ベース固定部と締付作用部との間に設けられた切欠部により、第二ボルトの締結による締め付け力を適切に保持部側へと向かわせることができる。よって、配管を強固に支持することができる。
【0020】
一態様として、
前記締付作用部が、前記ベース固定部の上方及び下方の少なくとも一方に隣接して設けられ、
前記ベース固定部が前記ベース金具に固定された状態で、前記締付作用部が前記ベース金具に対して当接することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、ベース固定部の上方及び下方の少なくとも一方に隣接して設けられる締付作用部が、ベース金具に当接して当該ベース金具に対する強度受けとして機能する。このため、配管を安定的に支持することができる。
【0022】
一態様として、
前記第一ボルトによる締結前に前記ベース金具に対して前記ベース固定部を仮止めするための固定補助部材をさらに備えることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、作業者は、固定補助部材によりベース金具に対してベース固定部を仮止めした状態で、両手が空いた状態で第一ボルトによる締結操作を行うことができる。
よって、施工性を向上させることができる。
【0024】
一態様として、
前記固定補助部材は、樹脂製であり、前記ベース金具と前記ベース固定部とが直接接触しないようにするためのスペーサを兼ねていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、例えば射出成形等によって比較的簡単に、仮止めのための固定補助部材を形成することができる。また、ベース金具とベース固定部との間に熱伝導率の低い樹脂製の固定補助部材が介在することになるため、ベース金具の表面で結露するのを抑制することができる。
【0026】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態の配管支持部材を用いた配管固定構造の斜視図
図2】配管支持部材の分解斜視図
図3】配管支持部材の使用方法を示す斜視図
図4】配管固定構造の正面図
図5】配管固定構造の平面図
図6】配管固定構造の側面図
図7】第2実施形態の配管支持部材を用いた配管固定構造の斜視図
図8】配管固定構造の側面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
配管支持部材の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の配管支持部材1は、図1に示すように、構造体Sに固定されたベース金具70に連結されて配管Pを支持するためのものである。
【0029】
なお、以下の説明において、各部材の形状や位置関係等を表すのに「軸方向」、「周方向」、及び「径方向」の用語を用いることがあるが、これらは、配管支持部材1による支持対象物である配管Pを基準として定義するものとする。すなわち、「軸方向」は配管Pの軸芯方向(長手方向)を表し、「周方向」は配管Pの周囲を周回する方向を表し、「径方向」は配管Pの軸芯から放射状に延びる方向を表す。配管支持部材1の各部の説明におけるこれらの各方向についての言及は、特に明記しない限り、配管Pを実際に保持した状態での方向を意図しているものとする。
【0030】
本実施形態の配管支持部材1は、例えばビル等の建築物の屋上に設置された空調機器の室外機から屋内に設置された複数の室内機に亘って配設される配管Pに用いられる。配管Pとしては、例えば銅製の冷媒配管が例示される。
【0031】
図1に、本実施形態の配管支持部材1を用いた、縦方向(上下方向)に配設された配管Pにおける所定箇所を構造体Sに対して固定する配管固定構造の一例を示す。この配管固定構造は、配管Pがその固定箇所において構造体Sに対して軸方向に相対移動するのを抑止するために用いられる。なお、構造体Sは、例えば建築物の躯体や外壁等である。
【0032】
構造体Sに、ベース金具70が固定されている。なお、ベース金具70は、構造体Sに直接固定されていても良いし、他の部材(例えばブラケット等の介在部材)を介して間接的に固定されていても良い。ベース金具70は、金属製であり、例えば熱間圧延軟鋼板等を用いて構成されている。図1及び図2に示すように、ベース金具70は、屈曲板状に形成されている。ベース金具70は、構造体S(又は介在部材)に面接触状態に当て付け可能な取付基部71と、この取付基部71に交差(本例では直交)する状態で延設される連結部72とを備えている。取付基部71及び連結部72には、それぞれボルトBが挿通される挿通孔71a,72aが形成されている。
【0033】
配管支持部材1は、ベース金具70に連結されて配管Pを支持する。配管支持部材1は、上下方向に沿って配設される配管Pを、軸方向(上下方向)の1箇所で支持する。図1及び図2に示すように、配管支持部材1は、拘束部材10と固定補助部材30とを備えている。本実施形態では、配管支持部材1は、1つの拘束部材10と、2つの固定補助部材30とを備えている。固定補助部材30は、拘束部材10に対して着脱自在に取り付けられている。
【0034】
配管支持部材1(具体的には、配管支持部材1を構成する拘束部材10)は、保持部11と、ベース固定部13と、締付作用部16とを備えている。これらは、一体的に形成されている。拘束部材10は、金属製であり、例えば熱間圧延軟鋼板等を用いて構成されている。
【0035】
保持部11は、配管Pを保持するための部位である。保持部11は、完全には閉じていない略円筒状に形成されている。保持部11の内径は、配管Pの外径に等しいか略等しく設定されている。図3に示すように、使用前の状態において、保持部11は、軸方向に見て真円に沿う形状となっている訳ではなく、ある程度拡開している(開き姿勢)。この拡開した間口から配管Pに対して径方向外側から保持部11を取り付けることができる。その後、拡開した保持部11を閉じるように外力を加えて閉じ姿勢に変形させ、さらには後述するように第一ボルトB1及び第二ボルトB2を締結することで、保持部11は、配管Pの外周面を包囲して当該配管Pを保持する。
【0036】
図1及び図2に示すように、保持部11には貫通穴11aが形成されている。貫通穴11aは、保持部11におけるベース固定部13及び締付作用部16とは反対側の部分に形成されている。本実施形態では、複数の貫通穴11aが軸方向に沿って(上下に並んで)形成されている。貫通穴11aは、拘束部材10(具体的には、拘束部材10を構成する保持部11)の曲げ強度の大きさを調整するための曲げ強度調整部12として機能する。
【0037】
ベース固定部13は、ベース金具70に固定される部位である。ベース固定部13は、保持部11から互いに対向するように延出する一対の板部で構成されている。本実施形態では、完全には閉じていない略円筒状の保持部11の周方向の両端部から、ベース固定部13を構成する一対の板部がそれぞれ径方向に延出している。ベース固定部13は、細長の矩形状に形成されている。ベース固定部13には、ボルトB(具体的には、第一ボルトB1)が挿通される挿通孔13aが形成されている。ベース固定部13は、第一ボルトB1の締結によってベース金具70に固定される。ベース固定部13の2つの挿通孔13aとベース金具70の挿通孔72aとに第一ボルトB1の軸部が挿通され、反対側でナットNに螺合して締結されることで、ベース固定部13がベース金具70に固定される。
【0038】
また、ベース固定部13を構成する一対の板部の上下の側縁13bには、当該ベース固定部13の中心線側に向かって窪む係止凹部14がそれぞれ形成されている。この係止凹部14には、固定補助部材30の係止爪部35が係止される(図4を参照)。
【0039】
締付作用部16は、保持部11に締め付け力を作用させるための部位である。締付作用部16は、保持部11から互いに対向するように延出する一対の板部で構成されている。本実施形態では、完全には閉じていない略円筒状の保持部11の周方向の両端部から、締付作用部16を構成する一対の板部がそれぞれ径方向に延出している。保持部11からの締付作用部16の延出長さは、ベース固定部13の延出長さよりも短い。そして、本実施形態では、2つの締付作用部16が、ベース固定部13を挟んで上下に分かれて設けられている。
【0040】
締付作用部16は、締付本体部17と先端屈曲部18とを有する。締付本体部17は、締付作用部16の主要部分である。本実施形態では、締付本体部17は、略正方形状に形成されている。締付本体部17には、ボルトB(具体的には、第一ボルトB1とは別の第二ボルトB2)が挿通される挿通孔17aが形成されている。締付本体部17は、締付作用部16における、第二ボルトB2が締結される部位となる。本実施形態では、第二ボルトB2は、第一ボルトB1よりも保持部11に近い位置で締結される。
【0041】
締付本体部17の挿通孔17aに第二ボルトB2の軸部が挿通され、反対側でナットNに螺合して締結されることで、保持部11に締め付け力を作用させることができる。これにより、保持部11の内面による面圧を高めて、配管Pを適切に支持することができる。例えばロウ付け等の溶接加工が不要であり、ボルトB(第一ボルトB1,第二ボルトB2)の締付操作だけで施工することができるため、作業効率が良い。ボルト操作を電動ドリルで行うこともでき、その場合には作業効率を大幅に向上させることができる。しかも、保持部11による面圧で配管Pを保持するので、配管Pが酸化したり変形(例えば食い込みによる窪みが発生)したりすることがなく、信頼性が高い。
【0042】
先端屈曲部18は、締付本体部17における保持部11とは反対側の先端部を屈曲させた部位である。先端屈曲部18は、締付本体部17に対して略直角に屈曲されている。互いに対向する締付本体部17から、先端屈曲部18が互いに向かい合うように屈曲され、それらの先端屈曲部18は互いに重なり合っている。そして、一方の先端屈曲部18の先端が、第二ボルトB2による締結時に、他方の先端屈曲部18から連続する締付本体部17に対して当接するように構成されている。
【0043】
このように、先端屈曲部18は、締付本体部17における第二ボルトB2による締結位置(すなわち、挿通孔17aの位置)に対して保持部11とは反対側に設けられており、第二ボルトB2による締結時に互いに当接する。この当接により、先端屈曲部18は、第二ボルトB2による締結時に、締付本体部17どうしの間に一定距離を保たせるように作用する。これにより、第二ボルトB2を締結したとき、先端屈曲部18と締付本体部17との接点が支点となって、一定距離を隔てて対向する締付本体部17どうしをより強固に挟持することができ、それに伴い、保持部11に対してより大きな締め付け力を作用させることができる。こうして、保持部11の内面による面圧をさらに高めて、配管Pを強固に支持することができる。
【0044】
本実施形態では、先端屈曲部18が、第二ボルトB2による締結時に互いに当接して締付本体部17どうしの間に一定距離を保たせる近接規制部19として機能する。
【0045】
本実施形態では、このような先端屈曲部18(近接規制部19)を備えることで、対向する一対の締付作用部16は、それぞれの根元部分(保持部11との境界部分)どうしが互いに離間した状態で保持部11に締め付け力を作用させる。一対の締付作用部16の根元部分どうしは、第二ボルトB2を完全締結した状態で、互いに離間している。一対の締付作用部16の根元部分どうしの離間幅は、ベース金具70の板厚以上であることが好ましく、板厚の1.5倍以上であることがより好ましく、1.8倍以上であることがさらに好ましい。
【0046】
図4に示すように、ベース固定部13を挟んで上下に分かれて設けられている2つの締付作用部16は、ベース固定部13がベース金具70に固定された状態で、ベース金具70に対して上下から当接する。本実施形態では、ベース金具70の連結部72に対して、締付作用部16を構成する先端屈曲部18が交差(本例では直交)する状態で上下から当接する。このような構成とすることで、2つの締付作用部16(先端屈曲部18)が、ベース金具70に対する強度受けとして機能するため、配管Pを安定的に支持することができる。
【0047】
本実施形態では、ベース固定部13と2つの締付作用部16とのそれぞれの間に、切欠部21が設けられている。この切欠部21は、ベース固定部13の上下の側縁13bから連続して、径方向に沿って延びるように形成されている。このような切欠部21を設けることで、ベース固定部13と2つの締付作用部16とを縁切りすることができ、第二ボルトB2の締結によって発揮される締付作用部16の締め付け力を、ベース固定部13側へは伝わりにくくすることができる。言い換えれば、第二ボルトB2の締結によって発揮される締付作用部16の締め付け力を適切に保持部11側へと向かわせることができる。よって、配管Pをさらに強固に支持することができる。
【0048】
図2及び図3に示すように、本実施形態の配管支持部材1は、拘束部材10に対して着脱自在な固定補助部材30を備えている。固定補助部材30は、本体部31と、側壁部33と、押さえ突起34と、係止爪部35と、第一延出部37と、第二延出部38と、係合爪部39とを備えている。これらは、一体的に形成されている。固定補助部材30は、樹脂製であり、例えばポリプロピレンやポリアセタール等を用いて構成されている。
【0049】
本体部31は、拘束部材10のベース固定部13に沿う平板状に形成されている。また、本体部31は、矩形状に形成されている。本体部31には、ボルトB(具体的には、第一ボルトB1)が挿通される挿通孔31aが形成されている。本体部31は、固定補助部材30が拘束部材10に装着された状態(以下、単に「装着状態」と言う。)で、ベース固定部13を構成する一対の板体のそれぞれの内面に沿って配置される。
【0050】
側壁部33は、矩形状の本体部31の3辺に沿って、本体部31から垂直に立ち上がるように形成されている。側壁部33は、第一部分33Aと、この第一部分33Aの両端部からそれぞれ延びる第二部分33B及び第三部分33Cとを有する。第一部分33Aは、装着状態で、ベース固定部13の保持部11とは反対側の端縁13cに当接する。第二部分33B及び第三部分33Cは、装着状態で、ベース固定部13の上下の側縁13bに当接する。
【0051】
押さえ突起34は、側壁部33の第一部分33A、第二部分33B、及び第三部分33Cのそれぞれの中央部に形成されている。押さえ突起34は、本体部31から、拘束部材10のベース固定部13の板厚分だけ離間した位置において、中心側に向かって突出するように形成されている。押さえ突起34は、装着状態で、ベース固定部13を構成する一対の板体のそれぞれの外面に当接する。これにより、装着状態で、本体部31と押さえ突起34とが協働して、ベース固定部13を構成する一対の板体を内外両側から押さえることになる。
【0052】
係止爪部35は、側壁部33の第二部分33B及び第三部分33Cから連続して延びるように形成されている。係止爪部35は、装着状態で、ベース固定部13を構成する一対の板部の上下の側縁13bに形成された係止凹部14に係止する(図4を参照)。これにより、拘束部材10に装着された固定補助部材30の抜け止めを図ることができる。本実施形態では、ベース固定部13の係止凹部14と固定補助部材30の係止爪部35とが協働して、拘束部材10に装着された固定補助部材30の離脱を防止する抜け止め部41として機能する。
【0053】
第一延出部37は、側壁部33の第二部分33Bから外方に向かって延出している。第二延出部38は、側壁部33の第三部分33Cから外方に向かって延出している。第一延出部37が延出する向きと第二延出部38が延出する向きとは互いに逆向きである。係合爪部39は、第二延出部38の先端部に、当該第二延出部38に対して交差(本例では直交)する状態で設けられている。
【0054】
本実施形態では、ベース固定部13を構成する一対の板体に対して、同一形状の固定補助部材30がそれぞれ装着されている。そして、拘束部材10が閉じ姿勢とされると、図4図6に示すように、一方の固定補助部材30の係合爪部39が他方の固定補助部材30の第一延出部37に係合するとともに、一方の固定補助部材30の第一延出部37に他方の固定補助部材30の係合爪部39が係合する。これにより、作業者が手を放しても、拘束部材10が閉じ姿勢がそのまま保持される状態となる。本実施形態では、2つの固定補助部材30に分かれて設けられた第一延出部37と係合爪部39とが協働して、拘束部材10の閉じ姿勢を保持する閉じ姿勢保持部42として機能する。
【0055】
このように、固定補助部材30は、まず第1に、第一ボルトB1による締結前にベース金具70に対してベース固定部13を仮止めするために用いられる。このため、作業者は、両手が空いた状態で第一ボルトB1による締結操作を行うことができ、施工性に優れる。
【0056】
また、固定補助部材30は、第一ボルトB1の締結後も装着状態を維持することになり、ベース金具70の連結部72と、その両側のベース固定部13を構成する一対の板体とのそれぞれの間に、固定補助部材30の本体部31が介在することになる。固定補助部材30は、第2に、ベース金具70とベース固定部13とが直接接触しないようにするためのスペーサとして用いられる。ベース固定部13を構成する一対の板体どうしの離間幅を確保することで、ひいては締付作用部16の一対の締付本体部17どうしの離間幅を確保して、第二ボルトB2の締結による締付作用部16の締め付け代を確保している。
【0057】
さらに本実施形態では、ベース金具70とベース固定部13との間に介在される固定補助部材30が熱伝導率の低い樹脂製であるので、ベース固定部13からベース金具70への伝熱が大幅に抑制される。固定補助部材30は、第3に、ベース固定部13からベース金具70への伝熱を抑制する断熱材として用いられる。本実施形態のように配管Pが冷媒配管である場合、配管P内を流通する冷媒の熱(例えば冷熱)が、配管Pを介して金属製の拘束部材10に伝わり得る。この場合であっても、固定補助部材30が断熱材として機能して、その冷熱がベース金具70に伝わるのを抑制することができる。その結果、ベース金具70の表面で結露するのを抑制することができる。
【0058】
〔第2実施形態〕
配管支持部材の第2実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の配管支持部材1は、締付作用部16の具体的形状及び近接規制部19として機能する先端屈曲部18の具体的形状が第1実施形態とは異なっている。以下、本実施形態の配管支持部材1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
図7に示すように、本実施形態の締付作用部16を構成する締付本体部17は、略台形状に形成されている。本実施形態では、保持部11の周方向の一方端から延びる上下2つの締付本体部17(図7の例において手前側に位置する締付本体部17)は、いずれも、下底よりも上辺の方が長い逆台形状に形成されている。一方、保持部11の周方向の他方端から延びる上下2つの締付本体部17(図7の例において奥側に位置する締付本体部17)は、いずれも、上底よりも下辺の方が長い正台形状に形成されている。これにより、上方側及び下方側のそれぞれにおいて、正台形状の締付本体部17と逆台形状の締付本体部17とが対向配置されている。
【0060】
締付本体部17の中央部には、外側に向かって隆起する隆起部17Bが形成されている。隆起部17Bは、円形状に形成されている。隆起部17Bは、円形リブとして機能し、締付本体部17の強度を向上させている。本実施形態では、この隆起部17Bの中央部に、第二ボルトB2が挿通される挿通孔17aが形成されている。
【0061】
図7及び図8に示すように、締付本体部17における保持部11とは反対側の先端部を屈曲させた先端屈曲部18は、互いに交差する状態で当接している。本実施形態では、先端屈曲部18は、その上下方向の中央領域に略矩形状の切欠凹部18aを有している。対向する一対の締付作用部16の先端屈曲部18は、それぞれの切欠凹部18aどうしが向かい合う状態で、互いに交差して当接している。このような構成とすることで、一対の締付作用部16に、第二ボルトB2の締結による締め付け力を均等に作用させることができる。これにより、円形状の隆起部17Bを形成したことにより締付本体部17自体の強度アップが図られていることと相俟って、締付作用部16の変形や偏りがほとんどない状態で安定的に配管Pを支持することができる。
【0062】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の各実施形態では、締付作用部16が締付本体部17と先端屈曲部18とを備え、先端屈曲部18が近接規制部19として機能する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば締付本体部17の一部が突起を有するように形成され、当該突起が近接規制部19として機能するように構成されても良い。この場合において、近接規制部19の一例としての突起は、例えば絞り加工等によって締付本体部17と一体的に形成されていても良いし、締付本体部17とは別体に形成されて締付本体部17に固定されていても良い。
【0063】
(2)上記の各実施形態では、締付作用部16が近接規制部19を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、締付作用部16が近接規制部19を有さなくても良い。この場合、締付作用部16は、少なくとも保持部11と一対の締付作用部16との2つの境界部分において所定間隔を隔てて対向配置された、一対の締付本体部17で構成することができる。
【0064】
(3)上記の各実施形態では、ベース固定部13と2つの締付作用部16とのそれぞれの間に切欠部21が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、切欠部21が設けられなくても良い。また、切欠部21に代えて、第二ボルトB2の締結によって発揮される締付作用部16の締め付け力をベース固定部13側へは伝わりにくくする手段(締付力伝達低減手段)として、例えば単なる切り込みや易変形部等が設けられても良い。
【0065】
(4)上記の各実施形態では、ベース固定部13がベース金具70に固定された状態で、2つの締付作用部16がベース金具70に対して上下から常時当接する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、締付作用部16とベース金具70とが必ずしも常時当接しなくても良い。この場合、例えば締付作用部16とベース金具70とが多少の隙間を隔てて配置され、上方又は下方に僅かに傾いたときに締付作用部16がベース金具70に直ちに当接するような構成でも良い。
【0066】
(5)上記の各実施形態では、保持部11が半開きの略円筒状に一体的に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、保持部11が一対の半円筒状の半割体で構成されても良い。これら一対の半割体は、枢支部で開閉自在に連結された蝶番式に構成されても良いし、係止部と被係止部とを有する組式に構成されても良い。
【0067】
(6)上記の各実施形態において、保持部11に、保持状態での配管Pの軸方向のずれを防止するための手段が設けられても良い。ずれ防止手段は、例えば保持部11の内面から突出形成された係止突起で構成されても良いし、保持部11の内面に対する粗面化処理(例えばサンドブラスト処理)によって実現されても良い。
【0068】
(7)上記の各実施形態では、固定補助部材30が樹脂で構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、固定補助部材30が例えば金属で構成されても良い。
【0069】
(8)上記の各実施形態では、配管支持部材1が、拘束部材10と、その拘束部材10に対して着脱自在な固定補助部材30とを備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、配管支持部材1が、固定補助部材30を備えずに拘束部材10だけで構成されても良い。この場合において、上記の実施形態の固定補助部材30に備えられている閉じ姿勢保持部42と同等の機能を有する部位が、拘束部材10に一体的に設けられていても良い。
【0070】
(9)上述した各実施形態(上記の各実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 配管支持部材
11 保持部
13 ベース固定部
16 締付作用部
17 締付本体部
18 先端屈曲部
19 近接規制部
21 切欠部
30 固定補助部材
70 ベース金具
S 構造体
P 配管
B1 第一ボルト
B2 第二ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8