(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149787
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】インフルエンザを治療及び/又は予防するための組成物、飲食品、飼料
(51)【国際特許分類】
A61K 31/203 20060101AFI20241010BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20241010BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20241010BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20241010BHJP
A23L 33/155 20160101ALI20241010BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20241010BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20241010BHJP
A23K 20/174 20160101ALI20241010BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20241010BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
A61K31/203
A61K35/747
A61P31/16
A61P43/00 121
A61K31/015
A23L33/155
A23L33/135
A23K10/16
A23K20/174
A61K31/203 ZNA
C12N1/20 E ZNA
C12N15/09 Z
C12N1/20 E
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135412
(22)【出願日】2024-08-14
(62)【分割の表示】P 2019222315の分割
【原出願日】2019-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】里見 翔平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 重▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】サンディープ クマール グプタ
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ハイザー
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、安全性だけでなく、予防効果や治療効果に優れたインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物、飲食品、飼料を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、レチノイド化合物を有効成分として含有することを特徴とするインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチノイド化合物及び乳酸菌を有効成分として含有し、前記レチノイド化合物の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下であることを特徴とする、インフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
【請求項2】
前記乳酸菌の含有量に対する前記レチノイド化合物の含有量が、乳酸菌1010個あたり100μg~500μgであることを特徴とする、請求項1に記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
【請求項3】
前記レチノイド化合物が、ビタミンA又はビタミンA誘導体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
【請求項4】
前記レチノイド化合物が、プロビタミンAであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
【請求項5】
前記プロビタミンAが、βカロテンであることを特徴とする、請求項4に記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
【請求項6】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・ブレビス KB290株(受託番号NITE P-1537)であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
【請求項7】
前記乳酸菌が、死菌であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の組成物を含有する、インフルエンザを予防及び/又は治療するための飲食品及び/又は飼料。
【請求項9】
レチノイド化合物及び乳酸菌を有効成分として含有し、前記レチノイド化合物の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下であることを特徴とする、ウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
【請求項10】
前記ウイルス感染によるサイトカイン産生の調整が、TNF-α、IL-6、IL-10、CXCL1、CXCL10、CCL2及びCCL5からなる群から選択される少なくとも一つのサイトカインの産生抑制であることを特徴とする、請求項9に記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
【請求項11】
前記乳酸菌の含有量に対する前記レチノイド化合物の含有量が、乳酸菌1010個あたり100μg~500μgであることを特徴とする、請求項9又は10に記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
【請求項12】
前記レチノイド化合物が、ビタミンA又はビタミンA誘導体であることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
【請求項13】
前記レチノイド化合物が、プロビタミンAであることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
【請求項14】
前記プロビタミンAが、βカロテンであることを特徴とする、請求項13に記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
【請求項15】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・ブレビス KB290株(受託番号NITE P-1537)であることを特徴とする、請求項9~14のいずれか一項に記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
【請求項16】
前記乳酸菌が、死菌であることを特徴とする、請求項9~15のいずれか一項に記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
【請求項17】
請求項9~16のいずれかに記載の組成物を含有するウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための飲食品及び/又は飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチノイド化合物、又はレチノイド化合物及び乳酸菌を有効成分とするインフルエンザを治療及び/又は予防するための組成物、飲食品、飼料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、インフルエンザウイルス感染症の略称である。インフルエンザウイルスは感染力が非常に強く、人の集団におけるインフルエンザの発生率が高く、定期的に大規模な罹患率及び死亡率をもたらす。インフルエンザは風邪症候群と異なり、比較的急速に出現する高熱、悪塞、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛の発症を特徴とし、咽頭痛、鼻汁、咳などの上気道炎症状を伴う。さらに、合併症としては、気管支炎、肺炎、インフルエンザ脳症などがあり、死亡することもある。特に、慢性の心疾患、肺疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、代謝性疾患などの基礎疾患を有する人や体力のない高齢者、幼児などでは重症化しやすいため脅威となっている。
【0003】
インフルエンザの予防方法としては、主にインフルエンザワクチンの接種である。また、インフルエンザの治療薬としては、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、ラニナミビルなどが使用されている。しかしながら、これらのワクチン、治療薬は、深刻な副作用を生じることがある。一方で、安全性が高い天然物質では、治療効果が得られないことも報告されている(非特許文献1)。そこで、高い安全性だけでなく、十分な予防効果、治療効果を奏する新たな組成物の開発が所望されている。
【0004】
これまでに、高い安全性が示されている乳酸菌を有効成分とするインフルエンザ感染症の予防薬、治療薬が報告されている。例えば、特許文献1には、ラクトバチルス・アシドフィラスCL-92株などを有効成分として含有するインフルエンザの予防剤、治療剤が開示されている。また、非特許文献2には、乳酸菌の経口摂取により、インフルエンザウイルス感染による体重減少が抑制されることについて開示されている。さらに、特許文献2には、ラクトバチルス属乳酸菌による乳酸菌産生物が、抗インフルエンザ薬による獲得免疫機能の低下を抑制することについて開示されている。
【0005】
ところで、乳酸菌のインフルエンザウイルスなどの感染症に対する防御機構については、免疫機構の調整作用が働いていると考えられる。例えば、特許文献3には、乳酸菌を有効成分とする自然免疫活性化剤が記載されている。これは、経口摂取された乳酸菌が、腸管内でパイエル板に取り込まれ、マクロファージや樹状細胞等に貪食されることにより、免疫細胞が活性化し、自然免疫が賦活化すると考えられる。また、非特許文献3には、乳酸菌がTLRに認識されることが記載されている。これにより、乳酸菌はTLRシグナルを介してマクロファージや樹状細胞の機能を調整すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-72113号
【特許文献2】特開2018-27904号
【特許文献3】国際公開第2018/034203号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cui, D. et al., High-level dietary vitamin A enhances T-helper type 2 cytokine production and secretory immunoglobulin a response to influenza A virus infection in BALB/c mice, The Journal of nutrition, 2000, 130(5), 1132-1139
【非特許文献2】Waki, N. et al., Oral administration of lactobacillus brevis KB290 to mice alleviates clinical symptoms following influenza virus infection, Letters in applied microbiology, 2014, 58(1), 87-93
【非特許文献3】Takagi A. et al., Lipoteichoic acids from lactobacillus strains elicit strong tumor necrosis factor alpha-inducing activities in macrophages through Toll-like receptor 2, Clinical and diagnostic laboratory immunology, 2003, 10(2), 259-266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまで、インフルエンザを予防、治療するため様々な有効成分を含有する組成物が開発されてきたが、十分な安全性、予防効果、治療効果を有するものは得られていない。そのため、高い安全性だけでなく、予防効果、治療効果の優れた組成物が望まれている。
したがって、本発明の課題は、安全性だけでなく、予防効果や治療効果に優れたインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物、飲食品、飼料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、レチノイド化合物、又はレチノイド化合物及び乳酸菌を有効成分とする組成物を摂取することによって、インフルエンザを予防、治療することができるという知見に至り、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1]レチノイド化合物を有効成分として含有することを特徴とする、インフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
この組成物によれば、安全で有効なインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供することができる。
[2]更に、乳酸菌を有効成分として含有することを特徴とする、[1]に記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
この組成物によれば、優れた安全性、有効性を示すインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供することができる。
[3]前記乳酸菌の含有量に対する前記レチノイド化合物の含有量が、乳酸菌1010個あたり100μg~500μgであることを特徴とする、[2]に記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
この組成物によれば、より優れた安全性、有効性を示すインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供することができる。
[4]前記レチノイド化合物が、ビタミンA又はビタミンA誘導体であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
この組成物によれば、入手が容易なビタミンA、ビタミンA誘導体を採用することにより、インフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を簡便に調製することができる。
[5]前記レチノイド化合物が、プロビタミンAであることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
この組成物によれば、より優れた安全性、有効性を示すインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供することができる。
[6]前記プロビタミンAが、βカロテンであることを特徴とする、[5]に記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
この組成物によれば、入手が容易なβカロテンを採用することにより、インフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を簡便に調製することができる。
[7]前記乳酸菌が、ラクトバチルス・ブレビス KB290株(受託番号NITE P−1537)であることを特徴とする、[2]~[6]のいずれかに記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
この組成物によれば、より優れた安全性、有効性を示すインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供することができる。
[8]前記乳酸菌が、死菌であることを特徴とする、[2]~[7]のいずれかに記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
この組成物によれば、更に優れた安全性、有効性を示すインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供することができる。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の組成物を含有するインフルエンザを予防及び/又は治療するための飲食品及び/又は飼料。
この飲食品、飼料によれば、安全で有効なインフルエンザを予防及び/又は治療するための飲食品、飼料を提供することができる。
【0011】
また、レチノイド化合物、又はレチノイド化合物及び乳酸菌を用いた場合、サイトカインの産生量の変化が認められることから、本発明においては、サイトカインの産生を調節するレチノイド化合物、又はレチノイド化合物及び乳酸菌を含有する組成物を提供するという課題もある。
そして、レチノイド化合物、又はレチノイド化合物及び乳酸菌を含有する組成物は、TNF-α、IL-6、IL-10、CXCL1、CXCL10、CCL2、CCL5の産生を抑制させることができるという知見に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[10]~[19]を提供する。
[10]レチノイド化合物を有効成分として含有することを特徴とする、ウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
この組成物によれば、安全で有効なウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物を提供することができる。
[11]更に、乳酸菌を有効成分として含有することを特徴とする、[10]に記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
この組成物によれば、優れた安全性、有効性を示すウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物を提供することができる。
[12]前記ウイルス感染によるサイトカイン産生の調整が、TNF-α、IL-6、IL-10、CXCL1、CXCL10、CCL2及びCCL5からなる群から選択される少なくとも一つのサイトカインの産生抑制であることを特徴とする、[10]又は[11]に記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
この組成物によれば、安全で有効なTNF-α、IL-6、IL-10、CXCL1、CXCL10、CCL2、CCL5のウイルス感染によるサイトカインの産生を抑制するための組成物を提供することができる。
[13]前記乳酸菌の含有量に対する前記レチノイド化合物の含有量が、乳酸菌1010個あたり100μg~500μgであることを特徴とする、[11]又は[12]に記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
この組成物によれば、より優れた安全性、有効性を示すウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物を提供することができる。
[14]前記レチノイド化合物が、ビタミンA又はビタミンA誘導体であることを特徴とする、[10]~[13]のいずれかに記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
この組成物によれば、入手が容易なビタミンA、ビタミンA誘導体を採用することにより、ウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物を簡便に調製することができる。
[15]前記レチノイド化合物が、プロビタミンAであることを特徴とする、[10]~[13]のいずれかに記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
この組成物によれば、より優れた安全性、有効性を示すインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供することができる。
[16]前記プロビタミンAが、βカロテンであることを特徴とする、[15]に記載のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物。
この組成物によれば、入手が容易なβカロテンを採用することにより、インフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を簡便に調製することができる。
[17]前記乳酸菌が、ラクトバチルス・ブレビス KB290株(受託番号NITE P−1537)であることを特徴とする、[11]~[16]のいずれかに記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
この組成物によれば、より優れた安全性、有効性を示すウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物を提供することができる。
[18]前記乳酸菌が、死菌であることを特徴とする、[11]~[17]のいずれかに記載のウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物。
この組成物によれば、更に優れた安全性、有効性を示すウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物を提供することができる。
[19][10]~[18]のいずれかに記載の組成物を含有するウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための飲食品及び/又は飼料。
この飲食品、飼料によれば、安全で有効なウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための飲食品、飼料を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安全で有効なインフルエンザを予防及び/又は治療するための新規の組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】マウスの体重変化について示す図である。(A)インフルエンザウイルス感染による体重の経時変化を示す。(B)レチノイン酸の摂取時におけるインフルエンザウイルス感染による体重の経時変化を示す。(C)ラクトバチルス・ブレビス KB290株の摂取時におけるインフルエンザウイルス感染による体重の経時変化を示す。(D)レチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株の摂取時におけるインフルエンザウイルス感染による体重の経時変化を示す。(E)インフルエンザウイルス感染処理を行わなかったマウスの体重の経時変化を示す。(F)前記(A)~(E)を重ね合わせた図である。
【
図2】インフルエンザウイルス感染によるウイルス力価について示す図である。
【
図3】インフルエンザウイルス感染によるウイルスのRNA量について示す図である。(A)ヘマグルチニンのRNA発現量の経時変化を示す。(B)ノイラミニダーゼのRNA発現量の経時変化を示す。(C)RNAポリメラーゼαサブユニットのRNA発現量の経時変化を示す。(D)M1タンパク質のRNA発現量の経時変化を示す。(E)M2タンパク質のRNA発現量の経時変化を示す。(F)NS1タンパク質のRNAの発現量の経時変化を示す。(G)NS2タンパク質のRNA発現量の経時変化を示す。
【
図4】インフルエンザウイルス感染により誘導されるサイトカイン産生に対するレチノイン酸の作用について示す図である。(A)TNF-α濃度の経時変化を示す。(B)IL-1β濃度の経時変化を示す。(C)IL-6濃度の経時変化を示す。(D)IL-10濃度の経時変化を示す。(E)IL-33濃度の経時変化を示す。(F)CXCL1濃度の経時変化を示す。(G)CXCL10濃度の経時変化を示す。(H)CCL2濃度の経時変化を示す。(I)CCL5濃度の経時変化を示す。
【
図5】インフルエンザウイルス感染により誘導されるサイトカイン産生に対するラクトバチルス・ブレビス KB290株の作用について示す図である。(A)IFN-α濃度の経時変化を示す。(B)IFN-β濃度の経時変化を示す。(C)IL-1β濃度の経時変化を示す。(D)IL-6濃度の経時変化を示す。(E)IL-10濃度の経時変化を示す。(F)CCL5濃度の経時変化を示す。
【
図6】インフルエンザウイルス感染により誘導されるサイトカイン産生に対するレチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株の作用について示す図である。(A)TNF-α濃度の経時変化を示す。(B)IL-1β濃度の経時変化を示す。(C)IL-6濃度の経時変化を示す。(D)IL-10濃度の経時変化を示す。(E)IL-33濃度の経時変化を示す。(F)CXCL1濃度の経時変化を示す。(G)CXCL10濃度の経時変化を示す。(H)CCL2濃度の経時変化を示す。(I)CCL5濃度の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物、飲食品、飼料について説明する。
【0016】
[インフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物]
本発明のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物は、レチノイド化合物、又はレチノイド化合物及び乳酸菌を有効成分とすることを特徴とするものである。
まず、本発明で用いる有効成分について、詳細に説明する。
【0017】
(レチノイド化合物)
レチノイド化合物は、ビタミンA及び化学構造や生理機能が類似した化合物の一群である。また、ビタミンAは、レチノール(ビタミンA1)及び3-デヒドロレチノール(ビタミンA2)を含む。
ビタミンAと化学構造が類似した化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、式(I)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0018】
【0019】
ビタミンAと同様の基本骨格を有し、類似の生理活性を奏するビタミンA誘導体としては、レチノイン酸、レチナール、レチノイン酸エステル、レチノイン酸アミド、3-デヒドロレチナール、3-デヒドロレチノイン酸、3-デヒドロレチノイン酸エステル、及び3-デヒドロレチノイン酸アミドなどが挙げられる。
【0020】
本発明で用いるレチノイド化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、ビタミンAやレチノール、レチノイン酸、レチナール、レチノイン酸エステルなどのビタミンA誘導体などが挙げられる。
前記レチノイド化合物は、天然物由来であっても化学合成されたものであってもよい。また、レチノイド化合物は、オールトランス体、シス-トランス異性体などのあらゆる幾何異性体であってもよいし、生体内においてビタミンA、ビタミンA誘導体に変換されるプロビタミンAの形態であってもよい。
【0021】
レチノールの具体例としては、例えば、オールトランス-レチノール、9-シス-レチノール、11-シス-レチノール、13-シス-レチノール、3,4-ジデヒドロ-レチノール、3,4-ジデヒドロ-9-シス-レチノール、3,4-ジデヒドロ-11-シス-レチノール、3,4-ジデヒドロ-13-シス-レチノールなどが挙げられる。
【0022】
レチノイン酸の具体例としては、例えば、オールトランス-レチノイン酸、9-シスレチノイン酸、11-シスレチノイン酸、13-シスレチノイン酸、3-デヒドロレチノイン酸などが挙げられる。
【0023】
レチナールの具体例としては、例えば、オールトランス-レチナール、9-シスレチナール、11-シスレチナール、13-シスレチナール、3,4-デヒドロレチナール、13-エチルレチナール、9-dm-レチナール、3-ヒドロキシレチナール、4-ヒドロキシレチナール、ナフチルレチナール、3,7,11-トリメチル-ドデカ-2,4,6,8,10ペンタエナール、3,7ジメチル-デカ-2,4,6,8-テトラエナール、3,7-ジメチル-オクタ-2,4,6-トリエナールなどが挙げられる。
【0024】
レチノイン酸エステルの具体例としては、例えば、パルミチン酸レチニル、蟻酸レチニル、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、酪酸レチニル、吉草酸レチニル、イソ吉草酸レチニル、ヘキサン酸レチニル、ヘプタン酸レチニル、オクタン酸レチニル、ノナン酸レチニル、デカン酸レチニル、ウンデカン酸レチニル、ラウリン酸レチニル、トリデカン酸レチニル、ミリスチン酸レチニル、ペンタデカン酸レチニル、ヘプタデカン酸レチニル、ステアリン酸レチニル、イソステアリン酸レチニル、ノナデカン酸レチニル、アラキドン酸レチニル、ベヘン酸レチニル、リノール酸レチニル、オレイン酸レチニルなどが挙げられる。
【0025】
天然物由来のプロビタミンAの具体例としては、例えば、αカロテン、βカロテン、γカロテン、βクリプトキサンチン、エキネノンなどが挙げられる。
入手のしやすさ、安全性の観点から、レチノイド化合物は、ビタミンA、レチノイン酸、オールトランス-レチナール、βカロテンが好ましい。特に好ましくは、ビタミンA、レチノイン酸である。
また、これらのレチノイド化合物は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0026】
組成物におけるレチノイド化合物の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、0.01質量%以上20質量%以下である。下限値としては、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは1.0質量%以上であり、特に好ましくは3.0質量%以上である。一方、上限値としては、好ましくは115.0質量%以下であり、より好ましくは10.0質量%以下であり、更に好ましくは7.5質量%以下であり、特に好ましくは5.0質量%以下である。
組成物におけるレチノイド化合物の含有量を上記範囲とすることにより、インフルエンザに対する予防効果、治療効果に優れたインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供するという本発明の効果がより発揮される。
【0027】
(乳酸菌)
本発明で用いる乳酸菌は、インフルエンザに対して予防効果、治療効果を奏する乳酸菌株であれば、特に限定されるものではない。
乳酸菌の具体例としては、例えば、ラクトバチルス・ブレビス KB290株、ラクトバチルス・ブレビス NC-4株、ラクトバチルス・ブレビス SAM2447株、ラクトバチルス・ブレビス IFO-12005株、ラクトバチルス・ブレビス CD2株、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1871株、ラクトバチルス・ブレビス ATCC14869株、ラクトバチルス・ブレビス JCM1559株、ラクトバチルス・ブレビス NBRC12005株、ラクトバチルス・ブレビス 1059T株、ラクトバチルス・ブレビス 1170株、ラクトバチルス・ブレビス NTM003株、ラクトバチルス・ブレビス 1059T株、ラクトバチルス・ブレビス 1170株などが挙げられる。
安全性、有効性の観点から、乳酸菌は、ラクトバチルス・ブレビス KB290株が好ましい。ラクトバチルス・ブレビス KB290株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に2013年2月13日に寄託(受託番号NITE P-1537)されたものである。
また、これらの乳酸菌は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0028】
乳酸菌における形態は、インフルエンザに対して予防効果、治療効果を奏する乳酸菌株であれば、特に限定されるものではなく、例えば、菌体、菌体の培養物、粉末化した菌体、菌体の破砕物、菌体の抽出物などが挙げられる。
また、乳酸菌は、生菌、死菌、生菌と死菌の混合物でもよい。死菌の調製方法としては、例えば、加熱処理、超高温加熱処理、加圧処理法、高圧蒸気処理、乾熱処理などが挙げられる。
品質管理の観点から、乳酸菌の形態は、死菌が好ましい。
【0029】
組成物における乳酸菌の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、組成物1gあたり0.001×1010個以上1000×1010個以下である。下限値としては、好ましくは組成物1gあたり0.01×1010個以上であり、より好ましくは組成物1gあたり0.1×1010個以上であり、更に好ましくは組成物1gあたり0.5×1010個以上であり、特に好ましくは組成物1gあたり1×1010個以上である。一方、上限値としては、好ましくは組成物1gあたり500×1010個以下であり、より好ましくは組成物1gあたり100×1010個以下であり、更に好ましくは組成物1gあたり50×1010個以下であり、特に好ましくは組成物1gあたり10×1010個以下である。
組成物における乳酸菌の含有量を上記範囲とすることにより、インフルエンザに対する予防効果、治療効果に優れたインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供するという本発明の効果がより発揮される。
【0030】
組成物における乳酸菌の含有量に対するレチノイド化合物の含有量の比は、特に限定されるものではなく、例えば、乳酸菌1010個あたり1μg以上100g以下である。下限値としては、好ましくは乳酸菌1010個あたり10μg以上であり、より好ましくは乳酸菌1010個あたり50μg以上であり、更に好ましくは乳酸菌1010個あたり100μg以上であり、特に好ましくは乳酸菌1010個あたり200μg以上である。一方、上限値としては、好ましくは乳酸菌1010個あたり1g以下であり、より好ましくは乳酸菌1010個あたり10mg以下であり、更に好ましくは乳酸菌1010個あたり1mg以下であり、特に好ましくは乳酸菌1010個あたり500μg以下であり、最も好ましくは400μg以下である。
組成物における乳酸菌の含有量に対するレチノイド化合物の含有量の比を上記範囲とすることにより、インフルエンザに対する予防効果、治療効果に優れたインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物を提供するという本発明の効果が更に発揮される。
【0031】
次に、本発明の組成物に含有し得る成分について、詳細に説明する。
本発明のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物は、レチノイド化合物、乳酸菌のインフルエンザに対する作用が損なわれない限り、他の有効成分、添加剤など任意の成分を含有してもよい。
【0032】
(その他の有効成分)
本発明の組成物に含有するレチノイド化合物、乳酸菌以外の有効成分は、特に限定されるものではない。
その他の有効成分の具体例としては、例えば、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、ラニナミビル、バロキサビルマルボキシルなどの抗インフルエンザ薬、A/H1N1型、A/H3N2型、A/H5N1型、B型などのインフルエンザウイルス抗原、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)などの菌類、解熱剤、鎮痛剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、鎮咳剤、去痰剤などの対症療法薬が挙げられる。
また、これらの有効成分は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0033】
(添加剤)
本発明の組成物に含有する添加剤は、特に限定されるものではなく、例えば、薬学的に許容される基剤、担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤などが挙げられる。
また、これらの添加剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0034】
薬学的に許容される基剤は、特に限定されるものではなく、例えば、水、エタノールのような極性溶媒、油性基剤などが挙げられる。
【0035】
担体、賦形剤は、特に限定されるものではなく、例えば、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロースなどが挙げられる。
【0036】
結合剤は、特に限定されるものではなく、例えば、デンプン、ゼラチン、シロップ、トラガントゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0037】
崩壊剤は、特に限定されるものではなく、例えば、デンプン、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどが挙げられる。
【0038】
滑沢剤は、特に限定されるものではなく、例えば、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、タルク、マクロゴールなどが挙げられる。
【0039】
着色剤は、特に限定されるものではなく、例えば、コチニール、カルミン、クルクミン、リボフラビン、アンナット、酸化チタン、酸化鉄、タルク、焼成シリカ、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0040】
pH調節剤は、特に限定されるものではなく、例えば、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、炭酸カリウム、乳酸などが挙げられる。
【0041】
緩衝剤は、特に限定されるものではなく、例えば、リン酸塩、アルギニン、ヒスチジンなどが挙げられる。
【0042】
安定化剤は、特に限定されるものではなく、例えば、アルギニン、ポリソルベート80、マクロゴール4000などが挙げられる。
【0043】
保存剤は、特に限定されるものではなく、例えば、安息香酸、フェノキシエタノール、チメロサールなどが挙げられる。
【0044】
その他の添加剤としては、溶解補助剤、界面活性剤、乳化剤、抗酸化剤、光沢化剤、発泡剤、防湿剤、防腐剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着香剤、香料、芳香剤、崩壊補助剤などが挙げられる。
また、これらの添加剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0045】
以上の特徴により、本発明のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物は、安全で効果的にインフルエンザを予防、治療することができる。
【0046】
[組成物の用途及び形態]
本発明のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物の形態、及び用途について、詳細に説明する。
本発明の組成物の用途は、特に限定されるものではなく、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品、飼料などに配合される。
また、本発明の組成物を含有する医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品、飼料などは、ヒト又は非ヒト動物用として使用する。非ヒト動物は、特に制限されるものではないが、例えば、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などであり、好ましくは、ニワトリ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなどが挙げられる。
【0047】
(医薬品、医薬部外品、化粧品)
本発明の組成物を含有する医薬品、医薬部外品、化粧品の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、経口投与形態として、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠、チュアブル錠などの錠剤、トローチ剤、丸剤、散剤、ソフトカプセルを含むカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、ドライシロップを含むシロップ剤、エリキシル剤などの液剤など、及び非経口投与形態として、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射などの注射剤、経皮投与、経鼻投与、経肺投与、経腸投与、口腔内投与、経粘膜投与などのための経皮吸収テープ、エアゾール剤、坐剤などが挙げられる。
利便性、汎用性の観点から、医薬品、医薬部外品、化粧品の形態は、経口投与形態が好ましい。
【0048】
本発明の組成物を含有する医薬品、医薬部外品、化粧品の投与量は、特に限定されるものではなく、例えば、レチノイド化合物が1日あたり1μg/kg(体重)以上50mg/kg(体重)以下、乳酸菌が1日あたり0.0001×1010個/kg(体重)以上1000×1010個/kg(体重)以下である。レチノイド化合物の下限値としては、好ましくは1日あたり10μg/kg(体重)以上であり、より好ましくは1日あたり50μg/kg(体重)以上であり、更に好ましくは1日あたり100μg/kg(体重)以上であり、特に好ましくは1日あたり500μg/kg(体重)以上である。一方、レチノイド化合物の上限値としては、好ましくは1日あたり25mg/kg(体重)以下であり、より好ましくは1日あたり10mg/kg(体重)以下であり、更に好ましくは1日あたり5mg/kg(体重)以下であり、特に好ましくは1日あたり1mg/kg(体重)以下である。また、乳酸菌の下限値としては、好ましくは1日あたり0.0005×1010個/kg(体重)以上であり、より好ましくは1日あたり0.001×1010個/kg(体重)以上であり、更に好ましくは1日あたり0.005×1010個/kg(体重)以上であり、特に好ましくは1日あたり0.01×1010個/kg(体重)以上である。一方、乳酸菌の上限値としては、好ましくは1日あたり500×1010個/kg(体重)以下であり、より好ましくは1日あたり100×1010個/kg(体重)以下であり、更に好ましくは1日あたり50×1010個/kg(体重)以下であり、特に好ましくは1日あたり10×1010個/kg(体重)以下である。
【0049】
本発明の組成物を含有する医薬品、医薬部外品、化粧品の投与回数は、特に限定されるものではなく、例えば、1日1回、1日2回、1日3回などでもよい。
本発明の組成物を含有する医薬品、医薬部外品、化粧品の投与期間は、特に限定されるものではなく、例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間などでもよい。特に、本発明の組成物をインフルエンザの予防目的で使用する場合は、投与期間を定めずに継続して用いてもよい。また、投与期間中の投与は、特に限定されるものではなく、例えば、連日投与でもよいし、1日おき、2日おき、3日おきなどでもよい。
【0050】
(飲食品、飼料)
本発明の組成物を含有する飲食品、飼料の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、加工食品、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品など)、サプリメント、病者向け食品(病院食、病人食、介護食など)、菓子、油脂類、乳製品、レトルト食品、レンジ食品、冷凍食品、調味料、健康補助食品、飲料、栄養ドリンクなどが挙げられる。
【0051】
本発明の組成物を含有する飲食品、飼料の形状や性状は、特に限定されるものではなく、例えば、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状などが挙げられる。特に、健康食品やサプリメントとして使用する場合は、継続的で簡便な摂取ができるように、顆粒、カプセル、錠剤、チュアブル剤、飲料パウダー、ドリンク剤、スムージー、ゼリー、グミなどの形態にすることが好ましい。
【0052】
本発明の組成物を含有する飲食品、飼料は、インフルエンザに対して有益な作用をもたらす可能性があることの表示を付してもよい。なお、これらの表示は、公知の方法で容器包装手段に付すことができ、これによって、本発明の組成物を含有する飲食品、飼料は、インフルエンザの改善のために用いられるものであることが明示されるので、通常の飲食品、飼料との区別が明確となる。
【0053】
本発明の組成物を含有する飲食品、飼料の摂取量は、特に限定されるものではなく、例えば、レチノイド化合物が1日あたり1μg/kg(体重)以上50mg/kg(体重)以下、乳酸菌が1日あたり0.0001×1010個/kg(体重)以上1000×1010個/kg(体重)以下である。レチノイド化合物の下限値としては、好ましくは1日あたり10μg/kg(体重)以上であり、より好ましくは1日あたり50μg/kg(体重)以上であり、更に好ましくは1日あたり100μg/kg(体重)以上であり、特に好ましくは1日あたり500μg/kg(体重)以上である。一方、レチノイド化合物の上限値としては、好ましくは1日あたり25mg/kg(体重)以下であり、より好ましくは1日あたり10mg/kg(体重)以下であり、更に好ましくは1日あたり5mg/kg(体重)以下であり、特に好ましくは1日あたり1mg/kg(体重)以下である。また、乳酸菌の下限値としては、好ましくは1日あたり0.0005×1010個/kg(体重)以上であり、より好ましくは1日あたり0.001×1010個/kg(体重)以上であり、更に好ましくは1日あたり0.005×1010個/kg(体重)以上であり、特に好ましくは1日あたり0.01×1010個/kg(体重)以上である。一方、乳酸菌の上限値としては、好ましくは1日あたり500×1010個/kg(体重)以下であり、より好ましくは1日あたり100×1010個/kg(体重)以下であり、更に好ましくは1日あたり50×1010個/kg(体重)以下であり、特に好ましくは1日あたり10×1010個/kg(体重)以下である。
なお、非ヒト動物の種類により、摂取量を変更することができる。
【0054】
本発明の組成物を含有する飲食品、飼料の摂取回数は、特に限定されるものではなく、例えば、1日1回、1日2回、1日3回などでもよい。
本発明の組成物を含有する飲食品、飼料の摂取期間は、特に限定されるものではなく、例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間などでもよい。特に、本発明の組成物をインフルエンザの予防目的で使用する場合は、摂取期間を定めずに継続して用いてもよい。また、摂取期間中の投与は、特に限定されるものではなく、例えば、連日摂取でもよいし、1日おきの摂取、2日おきの摂取、3日おきの摂取などでもよい。
なお、非ヒト動物の種類により、摂取期間や摂取間隔を変更することができる。
【0055】
以上の特徴により、本発明のインフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物は、安全で効果的にインフルエンザを予防、治療することができる。
【0056】
[ウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物]
ウイルス感染によるサイトカインの産生を調整するための組成物は、インフルエンザを予防及び/又は治療するための組成物と同様の組成成分、用途、形態とすることができる。
【0057】
産生を調整するサイトカインは、特に限定されるものではない。サイトカインの具体例としては、例えば、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TGFβ、G-CSF、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-18、IL-33、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL10、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8などのサイトカインが挙げられる。
【0058】
サイトカイン産生の調整は、特に限定されるものではなく、例えば、ウイルス感染後の任意の時点におけるサイトカイン産生量を、促進又は抑制するものである。
【0059】
感染するウイルスは、特に限定されるものではなく、例えば、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどのRNAウイルス、B型肝炎ウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなどのDNAウイルスなどが挙げられる。
【0060】
以上の特徴により、サイトカインの産生を調整するための組成物は、安全で効果的にサイトカインの産生量を調節することができるので、ウイルス感染に対する予防、治療に資する。
【実施例0061】
[実施例1:本発明のインフルエンザに対する作用]
(マウスの飼育)
普通固形飼料(Prolab RMH 1800,LabDiet,USA)及び滅菌水で飼育した7~8週齢の雌性BALB/cマウス(AgResearch Ruakura Small Animal Facility,Palmerston North,New Zealand)を用いた。飼育環境は、プラスチックケージ1個あたりマウスが3〜4匹になるように収容し、12時間の明/暗サイクル、室温21℃、湿度50%に管理した。
マウスは、インフルエンザウイルス感染未処置群(以下、「未処置群」とする。)と、インフルエンザウイルス感染処置を行う対照群(以下、「対照群」とする。)、インフルエンザウイルス感染処置前にレチノイン酸を投与した群(以下、「RA投与群」とする。)、インフルエンザウイルス感染処置前にラクトバチルス・ブレビス KB290株を投与した群(以下、「KB投与群」とする。)、インフルエンザウイルス感染処置前にレチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株を投与した群(以下、「RA+KB投与群」とする。)の5群に各群30匹ずつ群分けした。
【0062】
(試験食品の投与方法)
未処置群の試験食品は、185μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、15μLのキャノーラ油の混合物とした。
RA投与群の試験食品は、185μLのPBS、300μgのレチノイン酸を含有する15μLのキャノーラ油の混合物とした。
KB投与群の試験食品は、1010個のラクトバチルス・ブレビス KB290株を含有する185μLのPBS、15μLのキャノーラ油の混合物とした。
RA+KB投与群の試験食品は、1010個のラクトバチルス・ブレビス KB290株を含有する185μLのPBS、300μgのレチノイン酸を含有する15μLのキャノーラ油の混合物とした。
試験食品に配合するレチノイド化合物はレチノイン酸(Sigma-Aldrich Co.LLC.,USA)、ラクトバチルス・ブレビス KB290株はカゴメ株式会社小牧工場で製造された凍結乾燥された菌液、キャノーラ油(Palm’s canola oil,Countdown,New Zealand)を使用した。
【0063】
レチノイン酸、ラクトバチルス・ブレビス KB290株の投与は、インフルエンザウイルス感染処置前の14日間に渡り、1日あたり200μLの試験食品を16ゲージのポリウレタン給餌チューブ(Instech Laboratories Inc.,USA)を用いて、1日1回強制的に行った。
試験食品の投与は、インフルエンザウイルス感染処置前の14日間に渡り、1日あたり200μLの試験食品を16ゲージのポリウレタン給餌チューブ(Instech Laboratories Inc.,USA)を用いて、1日1回強制的に行った。
【0064】
(インフルエンザウイルスの感染方法)
マウスの感染処置に用いたインフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)である。鼻腔内感染に用いるインフルエンザウイルス溶液は、0.5×LD50用量となるようにPBSで調製した。
インフルエンザウイルスの感染方法は、試験食品を14日間投与した翌日にマウスを麻酔処理した後に、インフルエンザウイルス溶液を鼻腔内に投与することにより行った。
【0065】
(体重の測定)
マウスの体重について、試験食品を投与した14日間は1日おきに1回、インフルエンザウイルスの感染処置日は1回、インフルエンザウイルスの感染処置後14日間は毎日1回、電子秤(製品番号6971956,Sartorius A.G.,Germany)を用いて測定した。
【0066】
図1(A)~(E)は、インフルエンザウイルスの感染処置日を0日、試験食品の投与期間を-1日から-14日、感染処置後の期間を1日から14日として、測定した体重の実測値、及び各群の平均値に基づく予測曲線を経時的に示したものである。また、
図1(F)は、各群の予測曲線について、84%のパラメトリックブートストラップ信頼区間を算出したものである。84%の信頼区間の幅は、群間に差がないときに5%の偽陽性率が存在するように設定した。
【0067】
(ウイルス力価の測定)
ウイルス力価の測定には、インフルエンザウイルス感染処置後3日目に、各群10匹のマウスを頸椎脱臼により安楽死させた後に、速やかに摘出した肺をタンパク質分解阻害剤(Sigma-Aldrich Co.LLC.,USA)、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies New Zealand Ltd.,Auckland New Zealand)存在下で撹拌粉砕機器(TissueLyser II,Qiagen N.V.,Germany)を用いてホモジネート処理し、4℃、15,000×gの条件で30分間遠心分離した上清を用いた。肺組織ホモジネートの上清分画に含まれるインフルエンザウイルスの力価は、MDCK細胞を用いたニワトリ赤血球凝集試験を行い、50%組織培養細胞感染率(TCID50)として算出した。
【0068】
図2は、インフルエンザウイルス感染処置後3日目の肺組織におけるウイルス力価をlog
10(TCID
50)で示したものである。なお、値は平均±標準誤差で表し、P値が0.05未満である場合に統計的有意差があると判定して「*」を付した。
【0069】
(ウイルスRNA量の測定)
ウイルスRNA量の測定には、インフルエンザウイルス感染処置後3、7、14日目に、それぞれ各群10匹のマウスを頸椎脱臼により安楽死させた後に、速やかに摘出した肺をタンパク質分解阻害剤(Sigma-Aldrich Co.LLC.,USA)、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies New Zealand Ltd.,Auckland New Zealand)存在下で撹拌粉砕機器(TissueLyser II,Qiagen N.V.,Germany)を用いて処理したホモジネートを用いた。RNAは、RNA調製キット(RNeasy,Qiagen N.V.,Germany)を用いて、ホモジネートから調製した。
【0070】
RNA試料は、ハイブリダイゼーションキット(PlexSet Reagent,NanoString Technologies Inc.,USA)を用いて表1に記載の表1の7つのマウス参照遺伝子、及び表2のインフルエンザA型ウイルス(IAV)遺伝子を蛍光標識した。蛍光標識された遺伝子は、蛍光測定装置(nCounter Analysis System Technologies Inc.,USA)を用いて、単一分子数として定量した。
【0071】
【0072】
【0073】
図3は、インフルエンザウイルス感染処置後3日目(白色)、7日目(灰色)、14日目(黒色)の肺組織における7つのウイルス遺伝子の発現をRNA数で示したものである。なお、値は平均±標準誤差で表し、未処置群と比較してP値が0.05未満である場合に統計的有意差があると判定して「*」を付した。
【0074】
(結果1:試験食品の体重に対する作用)
図1に示すように、インフルエンザウイルス感染後10日目にかけて体重が減少した(
図1(A))。一方、RA投与群、KB投与群でもインフルエンザウイルス感染による体重減少を認めるが、対照群と比較して改善した(
図1(B)、
図1(C))。さらに、RA+KB投与群では、未処置群と同等にまで体重減少が改善された(
図1(D)、(E))。
【0075】
したがって、レチノイン酸、ラクトバチルス・ブレビス KB290株の摂取は、インフルエンザウイルス感染による体重減少を改善することが認められた。
また、インフルエンザウイルス感染による体重減少の改善効果は、ラクトバチルス・ブレビス KB290株の摂取、レチノイン酸の摂取、レチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株の摂取の順に増強することが示された。
【0076】
(結果2:試験食品のウイルス力価に対する作用)
図2に示すように、インフルエンザウイルス感染により、肺組織ではウイルス力価が顕著に増加した。一方、RA投与群、KB投与群、RA+KB投与群では、ウイルス力価が対照群と比較して顕著に低下した。特に、RA+KB投与群では、対照群に対して有意差をもって低下した。
【0077】
したがって、レチノイン酸、ラクトバチルス・ブレビス KB290株の摂取は、インフルエンザウイルス感染によるウイルス力価の増加を抑制することが示された。
また、インフルエンザウイルス感染によるウイルス力価に対する抑制効果は、レチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株を併用することで顕著に発揮されることがわかった。
【0078】
(結果3:試験食品のウイルスRNA量に対する作用)
図3(A)~(G)に示すように、インフルエンザウイルス感染により、感染後3日目~7日目にかけて、HA、NA、PA、M1、M2、NS1、NS2のRNA量が増加し、感染後14日目に低下した。これら全てのインフルエンザウイルスRNA量の増加において、RA+KB投与群は、対照群、RA投与群、KB投与群と比較して顕著に抑制した。
【0079】
したがって、レチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株の摂取は、肺におけるインフルエンザウイルスのRNA量を顕著に抑制することが示された。
【0080】
以上の結果1~3で示されたように、本発明の組成物は、インフルエンザウイルス感染による体重減少を改善すること、ウイルス力価の増加を抑制すること、及びレチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株を併用することで肺におけるインフルエンザウイルスの増殖を顕著に抑制することから、レチノイド化合物、乳酸菌を含有する組成物は、インフルエンザの予防や治療に有効であると認められる。
【0081】
[実施例2:本発明のウイルス感染により誘導されるサイトカイン産生に対する作用]
マウスの飼育、試験食品の投与方法は、実施例1と同様に行った。
【0082】
(サイトカインの測定)
サイトカインの測定には、インフルエンザウイルス感染処置後3、7、14日目に、それぞれ各群10匹のマウスを頸椎脱臼により安楽死させた後に、速やかに摘出した肺をタンパク質分解阻害剤(Sigma-Aldrich Co.LLC.,USA)、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies New Zealand Ltd.,Auckland New Zealand)存在下で撹拌粉砕機器(TissueLyser II,Qiagen N.V.,Germany)を用いてホモジネート処理し、4℃、15,000×gの条件で30分間遠心分離した上清を用いた。肺組織ホモジネートの上清分画に含まれるTNF-α、IFN-α、IFN-β、IL-1β、IL-6、IL-10、IL-33、CXCL1、CXCL10、CCL2、CCL5は、ビーズアッセイキット(LEGENDplex,BioLegend Inc.,USA)を用いたフローサイトメトリーにより定量した。サイトカイン濃度は、肺組織の総タンパク質量に対するサイトカイン質量として算出した。
【0083】
図4~6は、それぞれRA投与群、KB投与群、RA+KB投与群におけるインフルエンザウイルス感染処置後3日目(白色)、7日目(灰色)、14日目(黒色)の肺組織におけるサイトカイン濃度を示したものである。なお、値は平均±標準誤差で表した。
【0084】
(結果4:レチノイン酸のサイトカイン産生に対する作用)
図4(A)、(C)、(D)、(F)、(G)、(H)、(I)に示すように、対照群とRA投与群を比較すると、レチノイン酸は、インフルエンザウイルス感染後3日目におけるTNF-α、IL-6、CXCL1、CCL2、CCL5、及び7日目におけるTNF-α、IL-6、IL-10、CXCL1、CXCL10、CCL2、CCL5の産生増大を抑制した。
【0085】
したがって、レチノイン酸の摂取は、インフルエンザウイルス感染後3日目までのTNF-α、IL-6、CXCL1、CCL2、CCL5、及び7日目までのTNF-α、IL-6、IL-10、CXCL1、CXCL10、CCL2、CCL5の産生を抑制することが明らかとなった。レチノイン酸の摂取によりサイトカインの産生が抑制されたことから、レチノイン酸は、サイトカインの産生を増大させる原因となるウイルスが肺に侵入することを抑えている可能性が推察される。
【0086】
(結果5:ラクトバチルス・ブレビス KB290株のサイトカイン産生に対する作用)
図5(D)に示すように、対照群とKB投与群を比較すると、ラクトバチルス・ブレビス KB290株は、インフルエンザウイルス感染後3日目、7日目におけるIL-6の産生増大を抑制した。
一方、
図5(A)、(B)、(C)、(E)に示すように、対照群とKB投与群を比較すると、ラクトバチルス・ブレビス KB290株は、インフルエンザウイルス感染後3日目におけるIFN-α、IFN-β、IL-1β、IL-10の産生量を促進した。
【0087】
したがって、ラクトバチルス・ブレビス KB290株の摂取は、インフルエンザウイルス感染後7日目までのIL-6の産生を抑制し、感染後3日目におけるIFN-α、IFN-β、IL-1β、IL-10の産生を促進することが明らかとなった。レチノイン酸の摂取により抑制されたサイトカインの多くがラクトバチルス・ブレビス KB290株の摂取で産生が促進されていることから、ラクトバチルス・ブレビス KB290株は、レチノイン酸と異なる機構でインフルエンザの改善に寄与していると推察される。
【0088】
(結果6:レチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株のサイトカイン産生に対する作用)
図6(A)、(C)、(F)、(G)、(H)、(I)に示すように、対照群とRA+KB投与群を比較すると、レチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株は、インフルエンザウイルス感染後3日目、7日目におけるTNF-α、IL-6、CXCL1、CXCL10、CCL2、CCL5の産生増大を抑制した。また、
図6(D)に示すように、対照群とRA+KB投与群を比較すると、レチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株は、インフルエンザウイルス感染後7日目におけるIL-10の産生増大を抑制した。
【0089】
したがって、レチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株の摂取は、インフルエンザウイルス感染後7日目までのTNF-α、IL-6、CXCL1、CXCL10、CCL2、CCL5の産生、感染後7日目におけるIL-10の産生を抑制することが明らかとなった。また、レチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株を併用した場合、それぞれを単独で摂取するよりも3日目、7日目で顕著に産生抑制が確認されたサイトカインが複数あった。したがって、レチノイン酸及びラクトバチルス・ブレビス KB290株を併用することにより、インフルエンザウイルスの感染がより強力に抑制されると推察される。
【0090】
以上の結果4~6で示されたように、本発明の組成物は、ウイルス感染によるサイトカイン産生量を調整することができるので、レチノイド化合物、乳酸菌を含有する組成物は、免疫機構の最適化によりインフルエンザウイルスなどのウイルスによる感染症の予防や治療に有効であると認められる。
本発明によって、インフルエンザを安全に予防や治療をすることができる。これにより、人や家畜等の集団におけるインフルエンザウイルス感染の大規模な拡大を抑制することができる。