(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149801
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】炭化装置
(51)【国際特許分類】
C10B 49/04 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
C10B49/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135753
(22)【出願日】2024-08-15
(62)【分割の表示】P 2020081593の分割
【原出願日】2020-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】506056882
【氏名又は名称】エスケイ工業有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】古川 承元
(57)【要約】
【課題】においの発生を抑えることができる炭化装置及び炭化方法を提供する
【解決手段】
本発明の一観点に係る炭化装置は、燃焼物質を搬送する燃焼物質搬送部と、燃焼物質を燃焼させる燃焼部と、を備えた炭化装置であって、燃焼部は、燃焼物質搬送部を覆う外壁部材と、外壁部材内部かつ外壁部材内部の燃焼物質搬送部より上方に設けられた金属製網材と、を備えるものである。また、本発明の他の一観点に係る炭化装置は、燃焼物質を燃焼部に搬送するステップ、燃焼部において燃焼した燃焼物質を、金属製網材を通して外部に放出するステップを備えるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼物質を搬送する燃焼物質搬送部と、
前記燃焼物質を燃焼させる燃焼部と、を備えた炭化装置であって、
前記燃焼部は、前記燃焼物質搬送部を覆う外壁部材と、前記外壁部材内部かつ前記外壁部材内部の燃焼物質搬送部より上方に設けられた金属製網材と、を備える炭化装置。
【請求項2】
前記金属製網材は、直径0.5mm以上3mm以下の径のステンレス線を、3mm以上10mm以下の間隙で交差して組み合わせたものである請求項1記載の炭化装置。
【請求項3】
前記金属製網材は、前記燃焼物質搬送部の上端から30cm以上100cm以下の距離を開けて配置される請求項1記載の炭化装置。
【請求項4】
燃焼物質を燃焼部に搬送するステップ、
前記燃焼部において燃焼した前記燃焼物質を、金属製網材を通して外部に放出するステップを備える炭化装置の煙低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化装置に関し、より具体的には発生するにおいを抑える構造を備えた炭化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
稲作のもみすり工程において大量に生ずるもみ殻は、燃焼時に窒素・硫黄酸化物を含まないため環境にやさしく、また燃焼させても大気中の二酸化炭素総量に影響を与えない、いわゆるカーボンニュートラルであるという特性を備えている。
【0003】
更に、もみ殻は炭化させることでもみ殻炭となり、土質改良剤、肥料、家畜の糞尿の消臭剤、バイオマス燃料等の各種の用途に用いることが可能である。
【0004】
そして、上記もみ殻を効率的に炭化させようとする技術として、例えば下記特許文献1、2が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017- 71712号公報
【特許文献2】特開2019-183167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術ではもみ殻等の燃焼物質が燃焼する際に発生するにおいを抑える点において課題が残る。具体的には、炭を発生させるために燃焼する際、煙とにおいが発生するが、このにおいは強く、使用者にとって負担が大きいといった課題がある。
【0007】
また、上記特許文献2においては、上記特許文献1に比して大きく改善されているものの、上記特許文献1と同様、においをより確実に抑えるには課題が残ってしまっている。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、においの発生を十分に抑えることができる炭化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る炭化装置は、燃焼物質を搬送する燃焼物質搬送部と、燃焼物質を燃焼させる燃焼部と、を備えた炭化装置であって、燃焼部は、燃焼物質搬送部を覆う外壁部材と、外壁部材内部かつ外壁部材内部の燃焼物質搬送部より上方に設けられた金属製網材と、を備えるものである。
【0010】
また、本観点において、金属製網材は、限定されるわけではないが、直径0.5mm以上3mm以下の径のステンレス線を、3mm以上10mm以下の間隙で交差して組み合わせたものであることが好ましい。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、金属製網材は、前記燃焼物質搬送部の上端から30cm以上100cm以下の距離を開けて配置されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の一観点に係る炭化装置は、燃焼物質を燃焼部に搬送するステップ、燃焼部において燃焼した燃焼物質を、金属製網材を通して外部に放出するステップを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によって、においの発生を十分に抑えることができる炭化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】実施形態に係る炭化装置の概略断面図である。
【
図3】実施形態に係る炭化装置の金属製網材の概略斜視図である。
【
図4】実施形態に係る炭化装置の他の例の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載された例示にのみ限定されるわけではない。
【0016】
(炭化装置)
図1は、本実施形態に係る炭化装置(以下「本装置」という。)1の概略断面を示す図である。本図で示すように、本装置1は、燃焼物質を搬送する燃焼物質搬送部2と、燃焼物質を燃焼させる燃焼部3と、を備えている。また、燃焼部3における断面の例について
図2に示しておく。本図は、燃料搬送部2の回転軸の延伸方向に対して垂直な面における断面図である。
【0017】
そして、本装置1の燃焼部3は、更に、燃焼物質搬送部2を覆う外壁部材31と、外壁部材31の内部に、燃焼物質搬送部2より上方に設けられた金属製網材32と、を有する。
【0018】
また、本装置1では、更に、外壁部材31及び金属製網材32の上方に、外壁部材31と間隙Gを設けて取り付けられる屋根部材33と、を備える。また、燃焼部3及び燃焼物質搬送部2は、地表から支持するための支持脚4を備えている。なお、屋根部材33と外壁部材31の間の間隙Gは、後述の記載から明らかであるが、燃焼した煙等を排出させるために形成されるものである。
【0019】
本装置1の燃焼物質搬送部2は、燃焼物質を少なくとも一方向に搬送させるための部材である。燃焼物質搬送部2は、限定されるわけではないが、例えば回転軸21とこの回転軸21の周囲に配置される螺旋状の羽根部材22と、この回転軸21及び羽部材22を覆うカバー23と、を備えて構成されていることが好ましい。また、回転軸21は、モーター等の回転機構(図示省略)に接続されており、回転可能となっている。このようにすることで、本装置1の燃焼物質搬送部2は、羽根部材22の間隙に燃焼物質を投入し、回転軸21及び羽根部材22を回転させることで燃焼物質を効率的に攪拌しながら所望の方向に安定的に搬送させることができる。もちろん、カバー23には、一方の端近傍に燃焼物質を投入させるための投入口24を設けておくことが好ましく、他方には燃焼して炭化した燃焼物質(炭)を排出させるための排出口25が設けられていることが好ましい。また、後述の記載から明らかであるが、燃焼物質搬送部2の燃焼部3内の位置においてはカバー23に上面が外される等の加工が加えられている。
【0020】
また、本装置1における燃焼物質としては、燃焼物質搬送部2に投入して搬送しつつ燃焼させて炭化できるものであれば特に限定されるわけではないが、もみ殻であることが好ましい一例である。
【0021】
また、燃焼物質搬送部2では、燃焼部3の前段かつ近傍において、燃焼物質に着火させるための着火口を備えていることも好ましい。使用者はこの着火口において着火装置を用いて燃焼物質に着火し、燃焼を開始させることができる。もちろん、燃焼部3において燃焼物質を十分に燃焼させることができる限りにおいて、この構造に限定されるわけではない。
【0022】
また、もみ殻に着火させるために用いられる着火装置としては、限定されるわけではないが、いわゆるバーナーであることが好ましい。バーナーは、気体又は霧状の燃料を噴出するとともにこれを燃焼させて、対象物に着火し、燃焼させるための装置である。本実施形態では、この着火装置を用いてもみ殻に着火させることで後述のブロワー等によって供給される空気によって、もみ殻を炭となる程度に燃焼させることができる。
【0023】
また、本装置1の燃焼部3は、上記の記載からも明らかであるが、燃焼物質搬送部2によって搬送される燃焼物質を燃焼させるための部であり、上述の通り外壁部材31、金属製網材32、屋根部材33、を備えている。
【0024】
燃焼部3における外壁部材31は、燃焼部3の主要な骨格をなす重要な部材である。具体的には、空気の流れを制御して燃焼効率を高めるとともに、不必要に煙が外部に漏れ出ないよう覆うための部材である。
【0025】
具体的に、燃焼部3における外壁部材31は、燃焼物質搬送部2の途中経路部分を覆うように構成されている。すなわち、燃焼物質は、この燃焼部の内部において燃焼させられ、炭化したのち、燃焼物質搬送部2により燃焼部3外に排出される。更に具体的に外壁部材31は、燃焼物質搬送部の上側の空間を覆うように形成され、燃焼のための燃焼空間Sを形成する。
【0026】
また、燃焼部3内において燃料搬送部2のカバー23の少なくとも一部、例えば上面部分は外されている。カバー23を外すことにより、燃焼により生ずる二酸化炭素や煙などを燃焼部3内に排出させることができる。一方、燃焼搬送部3の回転軸21及び羽根部材22の下方には、もみ殻よりも小さい小孔が多数形成された多孔板26が配置されていることが好ましい。このようにすることで、後述するように、もみ殻をこぼすことなく、かつ、下方から空気を供給することが可能となる。この場合において小孔の大きさは、燃焼物質であるもみ殻がこぼれてしまわないよう、燃焼物質の大きさよりも十分に小さい一方、空気を十分に通すことができる程度の大きさ、数で設けておくことが好ましい。また、外壁部材31は、燃料搬送部2全体を覆う構成としておくこととしてもよいが、燃料搬送部2のカバーの一部を外しておくことが好ましい。すなわち、燃焼部3において、燃料搬送部2を覆うという意味は、上記燃料搬送部に接続される空間を覆うという意味を含む。
【0027】
また、燃焼部3内の燃料搬送部3の下方には、空気を導入するための空気導入路34及びこれに接続されるブロワー35が設けられていることが好ましい。これらを設けることで、十分に燃焼させるための酸素を燃焼物質に供給するとともに、燃焼対象物質を空気の流れにより撹拌し、更に、多孔板の下に燃焼物質がこぼれてしまわないようにすることができる。具体的には、空気は、空気導入路34を介し、多孔板26の小孔を介して燃焼物質に対し供給される。
【0028】
なお、燃焼部3の外壁部材31においては、内面壁に断熱材36を配置しておくことも好ましい。断熱材を配置しておくことで、外部に熱を逃さずより効率の良い燃焼を達成することができる。
【0029】
また、燃焼部3には、外壁部材31の内部かつ外壁部材31内部の燃焼物質搬送部より上方に設けられた金属製網材32と、を備える。本装置1では、後述の記載から明らかとなるが、この金属製網材32によって燃焼した燃焼物質から発生するにおいのもととなる物質を改めて燃焼させることによってにおいを大幅に削減させることができる。本実施形態における金属製網材の概略について
図3に示しておく。
【0030】
また、燃焼部3の上記金属製網材32は、金属製となっており、金属製とすることで、燃焼物質を燃焼させた際の熱により加熱することが可能となる。加熱することにより、煙を再び燃焼させることができる。なお、金属としては、燃焼物質を燃焼させた際発生する熱に十分耐えうるものであるとともに、この熱により加熱することが可能である限りにおいて限定されるわけではないが、例えば鉄及び鉄を含む合金、例えばステンレス等であることが好ましい。ステンレスを用いることで錆にも強く、上記燃焼物質を燃焼させた際に発生する熱にも十分に耐えることができる。
【0031】
また、燃焼部3の金属製網材32は、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、直径0.5mm以上3mm以下の径の線材を、3mm以上10mm以下の間隙で交差して組み合わせたものであることが好ましい。直径を太くすると、網自体の重量が大きくなるだけでなく、熱の利用効率が下がってしまう虞がある一方、線材が細すぎるとその強度が低下してしまうといった課題がある。また、線材の間隙を小さくすると煙等が通過しにくくなり排出がうまくいかなくなってしまう一方、広すぎるとにおいを十分に燃焼させることが難しくなるといった課題がある。そのため、線材の太さ及び間隙は上記の範囲としておくことが好ましい。
【0032】
また、燃焼部3の金属製網材32は、燃焼物質搬送部の上端から30cm以上100cm以下の距離をあけて配置されるものであることが好ましい。燃焼物質搬送部から遠すぎると熱が十分に伝わらず煙を十分に燃焼させることが難しい一方、近すぎると煙が十分に燃焼する前に通過してしまい煙の量を低減させにくくしてしまうため、上記の範囲とすることで煙量を効率的に提言することが可能となる。
【0033】
また、燃焼部3の金属製網材32は、外壁部材31内部において固定されていてもよいが、外壁部材31内部に突起を設けて、この突起により支持される一方、不使用時には取り外し可能となるようにしてもよい。このようにすることで、金属製網材32のメンテナンスが容易にできるといった利点がある。
【0034】
本装置1では、金属製網材32を設けることで、燃焼物質が燃焼する際に発生するにおいを十分に削減できる効果がある。具体的に説明すると、燃焼物質が外壁部材31内において燃焼すると熱が発生する。そしてこの熱が金属製網材32に伝わり、金属製網材32が加熱される。この加熱温度は600℃から900℃位まで上昇するため、においの元となっている未燃焼の有機物がこの金属製網材32を通過する際、燃焼され、分解する。これによりにおいを大幅に削減することができるのである。
【0035】
また、本装置1では、外壁部材32の上方に、外壁部材31と間隙Gを設けて取り付けられる外壁部材用の屋根部材33を備える。本装置1では、上記の外壁部材31内部において効率よく燃焼された燃焼物質を更に屋根部材33で再度外壁部材31内に戻し、再び燃焼を行わせることができる。そのため、本装置1において、屋根部材33は、天井が凸型であることが好ましい。
【0036】
なお、本装置1では、屋根部材33を設けることで外部から塵やゴミ等が燃焼空間Sに入ってこないようにすることができるものであるが、この屋根部材33については不要な場合設けなくてもよい。この場合のイメージを
図4に示しておく。屋根部材33を設けない場合でも、本装置の効果は十分に達成可能である。
【0037】
(炭化方法)
ここで、本装置による燃焼によって発生する煙の流れについて説明する。
【0038】
使用者は、まず、燃焼物質であるもみ殻を投入口24に投入し、回転装置を駆動させることにより回転軸21及びこれに固定される羽根部材22を回転させる。これが回転すると、投入されたもみ殻は燃焼部3側に搬送されることになる。
【0039】
また、これと同時に、使用者は、ブロワー35を駆動し、空気導入路34に対して空気を供給する。この供給された空気は多板孔26の多数の小孔を介して燃焼物質側に供給される。
【0040】
また、燃焼物質は、上記の通り、着火装置によって着火し、燃焼が開始される。
【0041】
燃焼部内における燃焼物質搬送部において燃焼された燃焼物質は煙を発生させつつ炭化する。一方、煙は上昇し、金属製網材32を通過する。金属製網材32は、燃焼によって加熱され、およそ800度程度となる。そのため、燃焼物質により発生したにおい物質はこの金属製網材32の熱によって再び燃焼し、無臭化する。
【0042】
なお、金属製網材32を通過した気流は外壁部材31と屋根部材33の間隙Gから排出される。なお、外壁部材31を出て上昇する煙は再び外壁部材用の屋根部材33によって外壁部材31内に戻される。すなわち、外壁部材31内において何重にも煙は撹拌され、その内部の熱によって燃焼、回収されることで、装置外に煙やにおいが排出されるおそれは格段に低くなり、極めてにおいの少ない空気の流れが間隙Gから排出されることになる。
【0043】
以上、本発明によって、においの発生を抑えることができる炭化装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本装置は、炭化装置として産業上の利用可能性がある。