(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149814
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】海面処分場護岸の遮水構造
(51)【国際特許分類】
E02B 3/12 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
E02B3/12
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024137536
(22)【出願日】2024-08-19
(62)【分割の表示】P 2020183350の分割
【原出願日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2020009191
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】石田 正利
(72)【発明者】
【氏名】池谷 典尚
(72)【発明者】
【氏名】和木 多克
(57)【要約】
【課題】 海面処分場のための管理型護岸の鉛直遮水構造の遮水シートの分断部、構造物定着部におけるシート端部の遮水性を確保する。
【解決手段】 海面処分場護岸を区画する護岸構造物の埋立域側の鋼製矢板6の側面に付設される外面遮水工27の遮水シート20が分断施工された部位での遮水シート20の端部の遮水を図るため、鋼製矢板6が分断されて付設された部位の遮水シート20の端部に分岐遮水シート25を付加接合する。分岐遮水シート25の表面を経由させて遮水シート20の端部の浸透路長を延長させる。あわせて遮水シート20の端部と分岐遮水シート25とを含む空間を鋼製矢板6とカバー31部材とで区画し、空間内にアスファルトマスチックを充填固化させて遮水ブロックを形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海面処分場護岸を区画するように造成された護岸構造物の埋立域側を構成する鋼製矢板の前記埋立域側面に付設される外面遮水工の遮水シートが分断して施工された部位での前記遮水シートの端部の遮水を図る海面処分場護岸の遮水構造であって、
前記鋼製矢板が分断されて付設された部位の遮水シート端部に分岐遮水シートを付加接合して前記分岐遮水シートの表面を経由させて前記遮水シート端部の浸透路長を延長させるとともに、前記分断された遮水シート端部と前記分岐遮水シートとを含む空間を前記鋼製矢板とカバー部材とで区画して、該空間に不透水性遮水材を充填固化させた遮水ブロックを形成してなる、
ことを特徴とする海面処分場護岸の遮水構造。
【請求項2】
海面処分場護岸を区画するように造成された護岸構造物の埋立域側を構成する鋼製矢板の前記埋立域側面に付設される外面遮水工の遮水シートが前記護岸構造物表面に定着された部位での前記遮水シートの端部の遮水を図る海面処分場護岸の遮水構造であって、
前記鋼製矢板に付設され、前記護岸構造物表面に固定される前記遮水シートの端部に分岐遮水シートを付加接合して前記分岐遮水シートの表面を経由させて前記遮水シート端部の浸透路長を延長させるとともに、前記護岸構造物表面に固定される前記遮水シート端部と前記分岐遮水シートとを含む空間を前記鋼製矢板とカバー部材とで区画して、該空間に不透水性遮水材を充填固化させた遮水ブロックを形成してなる、
ことを特徴とする海面処分場護岸の遮水構造。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記鋼製矢板に設けられた締着手段によって前記遮水シート端部を押さえるようにして前記鋼製矢板と連結された請求項1に記載の海面処分場護岸の遮水構造。
【請求項4】
前記カバー部材は、一端が前記護岸構造物に固定連結され、他端で前記遮水シート端部を押さえる請求項2に記載の海面処分場護岸の遮水構造。
【請求項5】
前記外面遮水工は、前記遮水シートと、その両面を挟む保護マットとの積層シートからなる請求項1または請求項2に記載の海面処分場護岸の遮水構造。
【請求項6】
前記不透水性遮水材は、前記空間に充填されて冷固したアスファルトマスチックである請求項1または請求項2に記載の海面処分場護岸の遮水構造。
【請求項7】
前記不透水性遮水材は、所定の遮水性能を有する、アスファルト系材料、コンクリート系材料、土質系材料、ケミカル系材料から選択された請求項1または請求項2記載の海面処分場護岸の遮水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海面処分場護岸の遮水構造に係り、特に海面処分場等を建設する際に埋立域を囲むために構築される遮水護岸に設けられる遮水シートの護岸基部及び鉛直遮水工における遮水シート接合部、遮水護岸構造への定着部での遮水を確実に行えるようにした海面処分場護岸の遮水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般廃棄物及び産業廃棄物の海面最終処分場は、遮水護岸を構築するために、連結部分を遮水構造とした複数のケーソンやセル等の護岸構造物によって区画して建設されている。これらの埋立域側では供用後の護岸構造物及び基礎地盤により囲まれた管理型廃棄物最終処分場から周辺海域及び周辺陸域への廃棄物や保有水の浸出防止を図るために、遮水シート等による各種の遮水構造が施工されている。
【0003】
これらの遮水構造については、「一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令(以下、基準省令)」(非特許文献1)にその基本構造が明示されている。
図8は、固化処理土59を裏埋め土として用いた遮水護岸50によって海面が区画され、建設された海面処分場の一例において、廃棄物58による埋立が完了した状態を示した概略断面図である。この海面処分場となる埋立域62は、遮水護岸の前面側のケーソン式混成堤護岸と背面側の鋼製矢板56とによって区画された内部が固化処理土59によって裏埋めされて遮水護岸50で区画されている。
【0004】
ケーソン式混成堤護岸は、深層混合処理土層52上に構築された捨石マウンド53上にケーソン64が設置され、捨石マウンド53の埋立域62側の法面に沿って、遮水シート71からなる表面遮水工70が形成されている。表面遮水工70の上には、表面遮水工70全体を覆うように、上部被覆層としての押え捨石57が構築されている。
【0005】
一方、背面側の鋼製矢板56の外面側(埋立域62側)の表面全面にわたり、表面遮水工70と同様の構成からなる遮水シート71からなる外面遮水工75が施され、その背後(内陸側)の埋立域62は搬入された廃棄物58で埋め立てられる。
【0006】
このように、鋼製矢板56は不透水性壁体としての機能が求められており、さらに経年劣化による構造性能の低下を防止するために、鋼製矢板56の外面側(埋立域62側)の表面全面にわたり、外面遮水工75が付設される。外面遮水工75には積層シート構造からなる遮水シート71が使用されている。
【0007】
ところで、この鋼製矢板56の外面遮水工75において、鋼製矢板56の建て込みと、鋼製矢板56の表面に遮水シート71を取り付ける作業とは、冬季に行わず年度を跨いで工事が行われる。このとき各工区間(たとえば、当該年度工区と、次年度工区との間)の工区境において、工事休止期間の間、ケーソン64に定着される遮水シートの端部71a(
図9,10)を海中の全水深において安定した状態にしておく必要がある。また、工区境において、遮水シート71が連続しない分断部15が生じるため、工区境において分断された遮水シート71の端部71bでの遮水性を確保する必要がある。
【0008】
このような遮水シートの分断部でのシート端部での遮水性を確保するためにシート接続構造体が提案されている(特許文献1)。このシート接続構造体に設けられる遮水シートの接合部において、接合される遮水シートのそれぞれの端部を覆うように、連結体の枠体をシート端部に被せ、その内部にアスファルト混合物等の遮水材を充填するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】環境庁 法令・告示・通達、“一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令”、[online]、最終更新:平成29年6月9日公布改正、環境省、[令和2年3月6日検索]、インターネット<URL:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=352M50000102001&openerCode=1>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、特許文献1に開示されたシート接続構造体では、遮水シートの接合部において、それぞれの遮水シートの端部での遮水性能は保持することが可能となるが、それぞれの遮水シートを接合する工程を含む場合において、分断された箇所での遮水シート端部を安定した状態で保持する点や、その状態での遮水性を確保する点については考慮されていない。
【0012】
また、鉛直遮水工75では、
図9,10に示したように、ケーソン64などの構造物への定着部となる遮水シート71のシート端部71aや、遮水シート71の接合部でのシート端部71bでの遮水を、その深度方向の全高にわたって確実に行う必要がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消するために、アスファルトマスチック遮水部内に定着された遮水シート各部の端部とアスファルトマスチックとの間において、十分な浸透路長を確保することで、遮水シートの根固め部でのシート端部、構造物への定着部でのシート端部、遮水シート分断部におけるシート端部において、十分な遮水性を確保できるようにした海面処分場護岸の遮水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の海面処分場護岸の遮水構造は、海面処分場護岸を区画するように造成された護岸構造物の埋立域側を構成する鋼製矢板の前記埋立域側面に付設される外面遮水工の遮水シートが分断して施工された部位での前記遮水シートの端部の遮水を図る海面処分場護岸の遮水構造であって、前記鋼製矢板が分断されて付設された部位の遮水シート端部に分岐遮水シートを付加接合して前記分岐遮水シートの表面を経由させて前記遮水シート端部の浸透路長を延長させるとともに、前記分断された遮水シート端部と前記分岐遮水シートとを含む空間を前記鋼製矢板とカバー部材とで区画して、該空間に不透水性遮水材料を充填固化させた遮水ブロックを形成してなることを特徴とする。
【0015】
他の発明としての海面処分場護岸の遮水構造は、海面処分場護岸を区画するように造成された護岸構造物の埋立域側を構成する鋼製矢板の前記埋立域側面に付設される外面遮水工の遮水シートが前記護岸構造物表面に定着された部位での前記遮水シートの端部の遮水を図る海面処分場護岸の遮水構造であって、前記鋼製矢板に付設され、前記護岸構造物表面に固定される前記遮水シートの端部に分岐遮水シートを付加接合して前記分岐遮水シートの表面を経由させて前記遮水シート端部の浸透路長を延長させるとともに、前記護岸構造物表面に固定される前記遮水シート端部と前記分岐遮水シートとを含む空間を前記鋼製矢板とカバー部材とで区画して、該空間に不透水性遮水材料を充填固化させた遮水ブロックを形成してなることを特徴とする。
【0016】
前記カバー部材は、前記鋼製矢板に設けられた締着手段によって前記遮水シート端部を押さえるようにして前記鋼製矢板と連結されたことが好ましい。
【0017】
前記カバー部材は、一端が前記護岸構造物に固定連結され、他端で前記遮水シート端部を押さえることが好ましい。
【0018】
前記外面遮水工は、前記遮水シートと、その両面を挟む保護マットとの積層シートからなることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の海面処分場護岸の遮水構造を、海面処分場(一例として
図9)のケーソン式混成堤護岸に適用した一実施形態を示した部分平面図。
【
図2】
図1に示した遮水シート分断部(II)での遮水シート端部の遮水構造の一実施形態を拡大して示した部分平面図。
【
図3】
図2に示した分岐遮水シートの変形例を示した部分平面図。
【
図4】遮水シート端部の遮水構造の他の実施形態を示した部分平面図。
【
図5】
図1に示したケーソン側定着部(V)での遮水シート端部の遮水構造の一実施形態を拡大して示した部分平面図。
【
図6】遮水シート端部の遮水構造の他の実施形態を示した部分平面図。
【
図7】遮水シート端部の遮水構造のさらに他の実施形態を示した部分平面図。
【
図8】従来の海面処分場護岸の遮水構造の一例の全体構造を示した側断面図。
【
図9】従来の海面処分場護岸の鉛直遮水工におけるケーソンと鋼製矢板の設置状態、ケーソン側定着部、遮水シート分断部の位置例を示した部分平面図。
【
図10】
図9に示したケーソンと鋼製矢板の設置状態、ケーソン側定着部、遮水シート分断部の位置例を示した部分正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の海面処分場護岸の遮水構造の実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0021】
[鉛直遮水工における遮水構造の構成]
図1は、本発明の海面処分場護岸の遮水構造を、
図8,9に例示した海面処分場と同程度の規模の海面処分場の遮水護岸の鋼製矢板の外面遮水工(以下、単に外面遮水工と記す。)27(71)として取り付けられた遮水シート20の分断部15と、遮水護岸としてのケーソン側定着部4Aに適用した実施形態を示している。
【0022】
図1及び補足的に
図8,9に示したように、海面処分場となる埋立域11(62)を区画する遮水護岸1の前面側(海洋側)の構造物として、ケーソン4(64)が深層混合処理土層52上に造成された捨石マウンド53上に設置されている。ケーソン4(64)は、内部に中詰め砂(図示せず)が充填された公知の鉄筋コンクリート製函体からなり、複数の同形のケーソン4を列状(
図1ではL字形状)に捨石マウンド53(
図8)上に設置され、沿岸水域に所定面積、広さからなる埋立域11(62)を区画する遮水護岸1の前面側の構造物として機能する。
【0023】
一方、遮水護岸1の背面側の構造物として、背面に固化処理土9(59)が裏埋めされたケーソン4から所定の離れを確保した位置に鋼製矢板6(56)が、不透水性壁体を構成するように建て込まれている。鋼製矢板6(56)の頂部付近は、前面側のケーソン4(64)を控え工としたタイロッドTに保持されている。鋼製矢板6の外側面(埋立域11(62)側)の表面には、その全面を覆うように、外面遮水工27(71)が設けられている。
【0024】
(遮水シート分断部におけるシート端部の遮水構造の構成)
外面遮水工27(71)の積層遮水シート20は、
図1に示したように、施工される各工区において施工期間が異なるため、各工区の工区境(以下、分断部15と記す。)において、分断された状態で鋼製矢板6(56)に取り付けられる。以下、この分断部15における本発明の遮水シートのシート端部の遮水構造の構成について説明する。以下、かっこ内符号の記載を略す。
【0025】
図2は、外面遮水工27の分断部15(
図1-II)における本発明の遮水構造の一実施形態を示した拡大図である。同図には、鋼製矢板6の外側面に沿って取り付けられ、工区境において分断された積層遮水シート20の端部を平面視した状態が示されている。3層からなる積層遮水シート20の端部は、同図に示したように、片面の保護シート22を除いた保護シート22と遮水シート21の2層構成の遮水シートが鋼製矢板6の表面に取り付けられている。さらに鋼製矢板6の屈曲部から分岐した形状で側方に延長する遮水シート25(以下、分岐遮水シート25と記す。)が付加して接合されている。この分岐遮水シート25は、遮水シート21と同等の厚さ、仕様を有する保護シート22、遮水シート21の2層構成の遮水シートで、遮水シート21と鋼製矢板6の屈曲部で枝分かれするように、その根元部が遮水シート21の表面に溶着接合され、分断部15内の所定範囲まで延設され、これにより分断部15内において十分な浸透路長が確保される。
【0026】
分岐遮水シート25は、
図2に示したように、隣接工区で施工された遮水シート21に取り付けられた分岐遮水シート25と、分断部15(隣接工区との工区境)において、分断部15に関して略対称な一直線状をなして配置されている。さらに、同図に示したように、遮水シート端部21aと分岐遮水シート25とが配置された鋼製矢板6の埋立域11(
図1)側がカバープレート31で覆われ、所定容積の空間(以下、分断部空間38と記す。)が形成されている。
【0027】
カバープレート31は、
図2に示したように、プレート本体31aの両側がクランク状に屈曲したフランジ部31bが形成された加工鋼板で、溶接等によってあらじめ頭部が鋼製矢板6側の所定位置に取り付けられたボルト32の位置をガイドとしてカバープレート31で分断部15を覆い、フランジ部31bの貫通孔から現れたボルト32をナット締めしてカバープレート31を所定位置に取り付けることができる。
【0028】
さらに、
図2に示したように、鋼製矢板6とカバープレート31とで囲まれた分断部空間38内は、溶融状態で充填され、冷固した不透水性遮水材としてのアスファルトマスチックAsで満たされ、遮水シート端部21a、分岐遮水シート25とはアスファルトマスチックAsに密着した状態で完全に埋没している。これにより、分断部15に位置する隣接した工区の各遮水シート端部の浸透路長は十分に確保され、分断部15での遮水シートの遮水性が確保される。
【0029】
図3(a)~(d)は、
図2に示した分岐遮水シート25の変形例を示した部分拡大図である。
図2に示した分岐遮水シート25は、遮水シート21の表面から直線状に延びた形状をなすが、分岐遮水シート25による遮水シート端部21aにおける浸透路長の延長、すなわち遮水性能の向上を図るために、各種の変形例を採用することができる。たとえば
図3(a)は、分岐遮水シート25の先端部分にフランジ25aを設けて全体がT字形状となるようにした例である。分岐遮水シート25の先端部分にフランジ25aに相当するシート片を溶着あるいは一体成形して先端形状をT字形状やL字形状することで、分岐遮水シート25の先端部分での浸透路長を延長することができる。
図3(b)は、分岐遮水シート25の先端部分に樹脂製の丸棒状体25bを一体成形した変形例を示している。
図3(c)、(d)は、シート長が短い第2,3の分岐遮水シート25B,25Cを遮水シート21に複数箇所設けた例を示している。これらの例では第1の分岐遮水シート25Aに沿った浸透路長に第2,3の分岐遮水シート25B,25Cの浸透路長が加算されるので、より十分な浸透路長が確保できる。
【0030】
図4は、海面処分場護岸の遮水構造の他の実施形態を示している。同図に示したように、この実施形態では、カバー部材としてのカバープレート35と鋼製矢板6とを連結固定する2本の長尺の連結ボルト32が分断部空間38内の鋼製矢板6の内側表面に溶接されている。この締着手段としての連結ボルト32の先端を平板状のカバープレート35の連結孔(図示せず)に挿通することで、カバープレート35の位置決め固定を簡単で、精度よく行うことができる。なお、カバープレート35の両端部35aで分断部15に両側から延びる遮水シート21を確実に押圧して保持できる。
【0031】
(ケーソン側定着部におけるシート端部の遮水構造の構成)
図5は、
図1に示した鋼製矢板6の外面遮水工27のケーソン4における定着部(以下、ケーソン側定着部4Aと記す。)での遮水シート端部21aの遮水構造の一実施形態を示している。ケーソン側定着部4Aにおいても、遮水シート端部21aをケーソン表面4aに確実に密着させて遮水シート端部21aの浸透路長を十分確保する必要がある。そのために遮水シート端部21aをケーソン表面4aに定着する部分に定着部空間40を確保し、遮水シート側から定着部空間40に延びる分岐遮水シート25を設けることで浸透路長を延長させている。このとき定着部空間40の一面は、カバー部材としてのカバープレート41で覆われている。カバープレート41は、端部にフランジ41aを有するL字形をなし、このフランジ41a位置でアンカーボルト42によってケーソン表面4aに固定保持されている。カバープレート41の他端は、遮水シート端部21aを挟み込んで鋼製矢板6側に密着するようにしてボルト43で鋼製矢板6に締着されている。このときボルト42,43の取り付け位置には、ゴムパッキン44等が取り付けられ、水密性の向上が図られている。さらに、定着部空間40内には溶融状態のアスファルトマスチックAsが充填され、遮水シート端部21aのケーソン側定着部4Aでの確実な遮水構造が形成されている。
【0032】
図6は、ケーソン側定着部4Aにおいて、遮水シート端部21aの定着端を定着部空間40内に位置させた他の実施形態を示している。同図に示したように、この実施形態において、定着部空間40は鋼製矢板6と鋼製矢板6の開放側を覆うカバー部材としてのカバープレート45とで区画されている。カバープレート45は、平面視して屈曲部が直角をなす略Z字形状断面からなり、プレート両端の各屈曲部にはリブプレート45aが、長手方向(深さ方向)に所定間隔をあけて取り付けられ、屈曲部の直角形状が保持されている。カバープレート45の根元部45bは、アンカーボルト46によってケーソン表面4aに固定保持されている。一般部から定着部空間40まで延設された遮水シート端部21aは、定着部空間40内の鋼製矢板6の内のり表面に沿ってケーソン表面4aまで延設され、アンカーピン47によってケーソン表面4aに定着されている。またケーソン表面4aに沿ったシート端部21a付近には浸透路長を延長するための分岐遮水シート25が溶着されている。また、定着部空間40内にもアスファルトマスチックAsが充填され、冷固した状態でされ、遮水シート端部21aのケーソン側定着部4Aでの確実な遮水ブロックが形成されている。
【0033】
図7は、ケーソン側定着部4Aにおいて、遮水シート端部21aの定着端を、定着端カバーとしての鋼製矢板6Cとケーソン表面4aとで囲まれた定着部空間40内に位置させた他の実施形態を示している。定着部空間40は、同図に示したように、ケーソン表面4aと、図示しない固定金物でケーソン表面4aにケーソンの高さ方向に沿って固定された鋼製矢板6Cで区画されている。なお、ケーソン表面4aと鋼製矢板6Cの端部との間には密着性を高めるためのアスファルトブロック48が挟在され、ケーソン表面4aと鋼製矢板6Cとの隙間が閉塞されて遮水性が保持されている。
【0034】
一方、一般部から定着部空間40まで延設された遮水シート端部21aは、さらに隙間調整プレート49の表面とケーソン表面4aとに沿って張設され、先端部分が鋼製矢板6Cの一端から定着部空間40内に導かれている。隙間調整プレート49の根元部49aは、アンカーボルト46によってケーソン表面4aに固定保持されている。遮水シート端部21aは定着部空間40内において、ケーソン表面4aに沿って延設されるとともに、鋼製矢板6Cの内側表面に沿って所定長だけ延設されている。また、鋼製矢板6Cの端部位置には、浸透路長を延長するための分岐遮水シート25が遮水シート端部21aの表面に溶着されている。また、定着部空間40内にもアスファルトマスチックAsが充填され、冷固した状態で、遮水シート端部21aのケーソン側定着部4Aでの確実な遮水ブロックが形成されている。
【0035】
以上で説明したように、本発明の各実施形態では、各基部のアスファルトマスチック層の遮水シート20上の所定位置に設置された仕切型枠材としての押さえコンクリートブロック33で区画された空間、遮水シート20の上面と立ち上がり遮水シート21の側面とで囲まれた空間、及び分断部空間38、定着部空間40あるいは遮水シート21の端部21aと分岐遮水シート25の側面とに囲まれた空間に溶融状態のアスファルトマスチックが密に充填され、粘弾性体しての機能を保持して冷固することで、各部での遮水性が確保される。なお、不透水性の充填遮水材としてのアスファルトマスチックに代えて、ハンドリング性、使用時における遮水性等が同等に期待できる各種のアスファルト系材料の他、コンクリート系材料、土質系材料、ケミカル系材料等を使用することもできる。
【0036】
以上の説明において、本発明は種々の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 海面処分場
2 混合処理土層
3 捨石マウンド
4 ケーソン
4A ケーソン側定着部
6,6C 鋼製矢板
10 表面遮水工
11 埋立域
15 基盤面遮水工
20 遮水シート
22 保護シート
25 分岐遮水シート
27 外面遮水工
38 分断部空間
31,35,41,45 カバープレート
40 定着部空間
As アスファルトマスチック