(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149825
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241010BHJP
C08K 5/136 20060101ALI20241010BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20241010BHJP
C08K 5/095 20060101ALI20241010BHJP
C08K 5/03 20060101ALI20241010BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241010BHJP
C08L 33/16 20060101ALI20241010BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20241010BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/136
C08K5/3492
C08K5/095
C08K5/03
C08L63/00 Z
C08L33/16
C08K3/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024137851
(22)【出願日】2024-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋山 晃一
(57)【要約】
【課題】難燃性に優れるとともに樹脂物性の低下が抑制された熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)および難燃助剤(C)を含み、前記難燃助剤(C)が、三酸化アンチモン(C1)と三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)とを含む熱可塑性樹脂組成物である。三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)は、金属酸化物、金属水酸化物および粘土鉱物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)および難燃助剤(C)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記難燃助剤(C)が、三酸化アンチモン(C1)と、三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)とを含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)が、金属酸化物、金属水酸化物および粘土鉱物から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記三酸化アンチモン(C1)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の0.1~30重量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の0.1~30重量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)の含有量が、前記難燃助剤(C)の5~90重量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン樹脂やABS樹脂などの熱可塑性樹脂の難燃性を高めるために、臭素系難燃剤が使用されている。また、難燃助剤を併用することにより、難燃性を維持したまま、臭素系難燃剤の使用量を低減できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、特許文献1の樹脂組成物は、用途によっては樹脂物性の低下を十分に抑制できているとは言えないという問題があった。本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、高い難燃性を有するとともに樹脂物性への影響がより低減された熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、以下に示される実施形態を含む。
[1]熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)および難燃助剤(C)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記難燃助剤(C)が、三酸化アンチモン(C1)と、三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)とを含む熱可塑性樹脂組成物。
[2]前記三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)が、金属酸化物、金属水酸化物および粘土鉱物から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]前記三酸化アンチモン(C1)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の0.1~30重量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]前記三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の0.1~30重量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]前記三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)の含有量が、前記難燃助剤(C)の5~90重量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、難燃剤に優れるとともに樹脂物性の低下が抑制された熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0008】
熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)および難燃助剤(C)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記難燃助剤(C)は、三酸化アンチモン(C1)と、三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)とを含有する。以下、各成分について説明する。
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂(A)としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。前記熱可塑性樹脂(A)は、単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0010】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン、オレフィンと他の単量体との共重合体などのポリオレフィン骨格重合物が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。オレフィンと他の単量体との共重合体としては、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体、プロピレン-α-オレフィングラフト共重合体などが挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
ポリエステル系樹脂としては、カルボキシル基含有化合物とジオール化合物との重縮合物が挙げられる。カルボキシル基含有化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。カルボキシル基含有化合物とジオール化合物との重縮合物の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなどが挙げられる。
【0012】
また、ポリエステル系樹脂としては、ヒドロキシカルボン酸およびラクトンから選択される少なくとも1種の化合物の重縮合物が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などが挙げられる。ラクトンとしては、例えば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどが挙げられる。ヒドロキシカルボン酸およびとラクトンから選択される少なくとも1種の化合物の重縮合物の具体例としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸などが挙げられる。
【0013】
ビニル系樹脂としては、ビニル基含有化合物の重合物が挙げられる。ビニル基含有化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルトリ(2-メトキシエトキシ)シランなどのビニルシラン化合物などが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレンの他、スチレンと他の単量体との共重合体などが挙げられる。このような他の単量体としては、例えば、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、アルキルスチレン、ジアルキルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン、p-(N,N-ジエチルアミノエチル)スチレン、p-(N,N-ジエチルアミノメチル)スチレンなどが挙げられる。これらの他の単量体は、1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0015】
ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレンの他、スチレンと他の単量体との共重合体などが挙げられる。このような他の単量体としては、例えば、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、アルキルスチレン、ジアルキルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン、p-(N,N-ジエチルアミノエチル)スチレン、p-(N,N-ジエチルアミノメチル)スチレン、アクリロニトリル、ブタジエン、などが挙げられる。これらの他の単量体は、1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。またゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS) 、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS)、アクリロニトリル・エチレン・プロピレンゴム共重合体(AES)、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合体(ACS)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)などが挙げられる。スチレンと他の単量体との共重合体の例としては、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS)、スチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA)、スチレン-無水マレイン酸-メタクリル酸メチル共重合体(SMM)などが挙げられる。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、メタクリルとアクリルの総称であり、これと類似の表現(分子内に1つのカルボキシル基又はその酸無水物基を有する単量体である「(メタ)アクリル酸」、分子内に1つのカルボキシル基又はその酸無水物基を有する化合物と1つの水酸基を有する化合物との縮合物である「(メタ)アクリル酸エステル」、「(メタ)アクリレート」または「(メタ)アクリロイル基」など)についても同様である。
【0017】
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の重合物などが挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、γ-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロピオキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロピオキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシオクタデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0018】
ポリアミド系樹脂としては、 例えば多塩基酸と多価アミンとの重縮合物が挙げられる。前記多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。
【0019】
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、などの脂肪族ポリアミン、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミンなどの脂環族ポリアミン、キシリレンジアミンなどの芳香脂肪族ポリアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0020】
ポリアミド系樹脂は、多塩基酸と多価アミンに加えて、モノカルボン酸、一級モノアミン、二級モノアミンなどを用いた重縮合物であってもよい。モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタンブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが挙げられる。一級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミンなどが挙げられる。二級モノアミンとしては、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどが挙げられる。
【0021】
また、ポリアミド系樹脂としては、ラクタム化合物の開環重合物も使用できる。ラクタム化合物としては、例えば、ε-カプロラクタム、ラウロラクタム、カプリルラクタム、2-ピロリドン、2―ピぺリドンなどが挙げられる。
【0022】
ポリアミド系樹脂の具体例としては、ポリアミド-6(6ナイロン)、ポリアミド-6,6(66ナイロン)、ポリアミド-11、ポリアミド-12、ポリフタルアミド、ポリアミド-4,T、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド66/6I、ポリアミド4T、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6I/6T、ポリアミド9T、ポリアミド10などが挙げられる。
【0023】
フッ素系樹脂としては、フッ素原子を有する不飽和炭化水素の重合物が挙げられる。フッ素原子を有する不飽和炭化水素としては、例えばフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどが挙げられる。フッ素樹脂の具体例としては、例えば、四フッ化エチレン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合、四フッ化エチレンエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0024】
熱可塑性樹脂(A)の含有量は、難燃性、引張特性、伸び特性、耐衝撃性、曲げ強さ、曲げ弾性率および流動性をさらに高める観点から、熱可塑性樹脂組成物全体の30~95重量%であることが好ましく35~90重量%であることがより好ましく、35~88重量%であることがさらに好ましく40~88重量%であることが特に好ましい。
【0025】
本発明の臭素系難燃剤(B)としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)などのポリブロモビスフェノール化合物の2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピルエーテル;テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)などのポリブロモビスフェノール化合物の2,3-ジブロモプロピルエーテル;トリス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)イソシアヌレート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの2,3-ジブロモプロピル基含有イソシアヌレート;トリス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)シアヌレート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)シアヌレートおよびビス-2,3-ジブロモプロピルフタレートなどの2,3-ジブロモプロピル基含有シアヌレート;ビストリブロモネオペンチルマレート、ビストリブロモネオペンチルフマレート、ビストリブロモネオペンチルアジペート、ビストリブロモネオペンチルフタレート、ビストリブロモネオペンチルテレフタレート、トリストリブロモネオペンチルピロメリテート、テトラブロモビスフェノールA、ペンタブロモトルエン、ポリブロモジフェニルエーテル、ポリブロモジフェニルエタン、デカブロモジフェニルエタン、ビスポリブロモフェノキシエタン、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ポリブロモフェニルインダン、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、エチレンビステトラブロモフタルイミド、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ヘキサブロモベンゼン、1,2-ビストリブロモフェノキシエタン、1,2-ビスペンタブロモフェノキシエタン、トリスポリブロモフェノキシトリアジン、テトラブロモビスフェノールA-エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールA-エポキシオリゴマー末端トリブロモフェノール付加物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA-カーボネートオリゴマー、臭素化ポリスチレン、ポリ-ポリブロモスチレン、トリブロモフェノール重縮合物、ポリ臭素化フェニレンオキサイド、ビス-2,3-ジブロモプロピルテレフタレート、トリス-2,3-ジブロモプロピルピロメリテートなどの芳香族臭素含有化合物、などが挙げられる。前記臭素系難燃剤(B)は、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
熱可塑性樹脂組成物の難燃性及び耐熱性がより優れる観点から、臭素系難燃剤(B)は、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、デカブロモジフェニルエタン、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、トリブロモフェノール重縮合物、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)およびポリペンタブロモベンジルアクリレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0027】
臭素系難燃剤(B)は、難燃性をさらに高める観点から、熱可塑性樹脂組成物全体の1~55重量%であることが好ましく、3~50重量%であることがより好ましく、3~40重量%であることがさらに好ましく、5~30重量%であることが特に好ましい。
【0028】
本発明の臭素系難燃剤(B)は、難燃性をさらに高める観点から、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して1~65重量部であることが好ましく、3~60重量部であることがより好ましく、3~55重量部であることがさらに好ましく、5~50重量部であることが特に好ましい。
【0029】
本発明の難燃助剤(C)は、三酸化アンチモン(C1)および三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)を含む。
【0030】
難燃助剤(C)は、難燃性をさらに高める観点から、熱可塑性樹脂組成物全体の1~30重量%であることが好ましく、1~25重量%であることがより好ましく、1~20重量%であることがさらに好ましく、1~15重量%であることが特に好ましい。
【0031】
前記三酸化アンチモンとしては、特に限定されず、公知の方法で製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0032】
三酸化アンチモン(C1)は、さらに難燃性を高め、樹脂物性の低下を抑制する観点から、熱可塑性樹脂組成物全体の0.1~10重量%であることが好ましく、0.3~9重量%であることがより好ましく、0.3~8重量%であることがさらに好ましく、0.5~7重量%であることが特に好ましい。
【0033】
三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物および粘土鉱物などが挙げられる。
【0034】
前記金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム二酸化ケイ素、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムなどが挙げられ、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
前記金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛および水酸化カルシウム、ベーマイトなどが挙げられ、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
前記粘土鉱物としては、例えば、ベントナイト、カオリナイト、モンモリロナイト、セリサイト、イライト、グローコナイト、クロライト、タルク、ゼオライト、カオリン、サポナイト、ヘクトライト、天然クレイ、海泥、活性白土、火山土、流紋岩末、パイロフィライト、蛇紋石、バーミキュライト、雲母、緑泥石、セピオライト、カーロスターナイト、バイデライト、ディッカナイト、ハロイナイト、シリカ、クレー、マイカなどが挙げられる。
【0037】
三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)は、さらに難燃性を高め、樹脂物性の低下を抑制する観点から、熱可塑性樹脂組成物全体の0.1~10重量%であることが好ましく、0.3~9重量%であることがより好ましく、0.3~8重量%であることがさらに好ましく、0.5~7重量%であることが特に好ましい。
【0038】
難燃助剤(C)は、さらに難燃性を高めることと、樹脂物性の低下を抑制する観点から、本発明の熱可塑性樹脂(A)100重量部の1~33重量部であることが好ましく、1~30重量部であることがより好ましく、1~27重量部であることがさらに好ましく、1~25重量部であることが特に好ましい。
【0039】
難燃助剤(C)は、さらに難燃性を高めることと、樹脂物性の低下を抑制する観点から、臭素系難燃剤(B)100重量部の4~80重量部であることが好ましく、6~75重量部であることがより好ましく、8~70重量部であることがさらに好ましく、10~65重量部であることが特に好ましい。
【0040】
三酸化アンチモン(C1)は、さらに難燃性を高め、樹脂物性の低下を抑制する観点から、本発明の熱可塑性樹脂(A)100重量部の0.4~20重量部であることが好ましく、0.6~17重量部であることがより好ましく、0.8~17重量部であることがさらに好ましく、1~15重量部であることが特に好ましい。
【0041】
三酸化アンチモン(C1)は、さらに難燃性を高め、樹脂物性の低下を抑制する観点から、本発明の臭素系難燃剤(B)100重量部の1~50重量部であることが好ましく、2~45重量部であることがより好ましく、4~40重量部であることがさらに好ましく、5~35重量部であることが特に好ましい。
【0042】
三酸化アンチモン(C1)は、さらに難燃性を高め、樹脂物性の低下を抑制する観点から、本発明の難燃助剤(C)100重量部の10~85重量部であることが好ましく、15~80重量部であることがより好ましく、15~75重量部であることがさらに好ましく、20~70重量部であることが特に好ましい。
【0043】
三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)は、さらに難燃性を高め、樹脂物性の低下を抑制する観点から、本発明の熱可塑性樹脂(A)100重量部の0.4~20重量部であることが好ましく、0.6~17重量部であることがより好ましく、0.8~17重量部であることがさらに好ましく、1~15重量部であることが特に好ましい。
【0044】
三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)は、さらに難燃性を高め、樹脂物性の低下を抑制する観点から、本発明の臭素系難燃剤(B)100重量部の1~50重量部であることが好ましく、2~45重量部であることがより好ましく、4~45重量部であることがさらに好ましく、5~40重量部であることが特に好ましい。
【0045】
三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)は、さらに難燃性を高め、樹脂物性の低下を抑制する観点から、本発明の難燃助剤(C)100重量部の10~85重量部であることが好ましく、15~80重量部であることがより好ましく、15~75重量部であることがさらに好ましく、20~70重量部であることが特に好ましい。
【0046】
三酸化アンチモン以外の無機化合物(C2)は、さらに樹脂物性の低下を抑制する観点から、三酸化アンチモン(C1)100重量部に対して、20~280重量部であることが好ましく、30~270重量部であることがより好ましく、40~260重量部であることがさらに好ましく、50~250重量部であることが特に好ましい。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、光安定剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、無機粒子、顔料、着色剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、紫外線安定化剤、重金属不活性剤、耐衝撃改良剤、滑剤、滴下防止剤、結晶核剤、帯電防止剤、相溶化剤、防雲剤、加水分解防止剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、無機繊維などの公知の添加剤を配合することができる。このような添加剤を使用する場合は、熱可塑性樹脂組成物全体に対して、40質量%以下であることが好ましい。
【0048】
本発明の難燃性可塑性組成物は、例えば、熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、難燃助剤(C)および、必要によりその他の化合物を混合し、従来公知の2軸押出混練機を用いて、例えば150~350℃で混練することにより得ることができる。
【0049】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を製造する場合において、熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、難燃助剤(C)および必要に応じて添加される各種添加剤を加熱混練する際の、加熱温度、混練時間および溶融混練手段については、特に制限されない。
【0050】
加熱温度は、熱可塑性樹脂が溶融する温度(ガラス転移温度または融点)以上であればよいが、難燃剤などの影響による樹脂の分解・劣化ができる限り抑制される温度が好ましい。
【0051】
混練時間は、単位時間あたりの押出量、混練装置の種類などによって異なるが、例えば、熱可塑性樹脂組成物と添加剤とが均一に混合できる時間を設定することができる。
【0052】
混練手段としては、例えば、単軸スクリュー、二軸スクリューなどのスクリュー型の押出機などが挙げられる。
【実施例0053】
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0054】
以下に、熱可塑性樹脂組成物を製造するための原料の詳細について説明する。
<使用原料>
[熱可塑性樹脂(A)]
(A-1)ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、商品名:トヨラック300325、東レ社製)
(A-2)HIPS(耐衝撃性ポリスチレン、商品名:トーヨースチロールH700、東洋スチレン社製)
(A-3)PP(ポリプロピレン、商品名:ノバテックBC3AD、日本ポリプロ社製)
(A-4)PBT(ポリブチレンテレフタレート、商品名:トレコン1401 X06、東レ社製)
(A-5)PA6(6ナイロン、商品名:アミランCM1026、東レ社製)
(A-6)PA66(66ナイロン、商品名:アミランCM3001―N、東レ社製)
【0055】
[臭素系難燃剤(B)]
(B-1)トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン(商品名:ピロガードSR-245、第一工業製薬社製)
(B-2)デカブロモジフェニルエタン(商品名:SAYTEX8010、アルベマール社製)
(B-3)臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:SR―T9000、阪本薬品工業社製)
(B-4)臭素化ポリスチレン(商品名:SAYTEXHP-7100、アルベマール社製)
(B-5) トリブロモフェノール重縮合物(商品名:ピロガードSR-460B、第一工業製薬社製)
(B-6)エチレンビス (テトラブロモフタルイミド)(商品名:SAYTEXBT-93W、アルベマール社製)
(B-7)ポリペンタブロモベンジルアクリレート(商品名:FR-1025、ICL社製)
【0056】
[無機化合物(C)]
(C1-1)三酸化アンチモン
(C2-1)タルク
(C2-2)ベントナイト
(C2-3)活性白土
(C2-4)ゼオライト
(C2―5)マイカ
(C2-6)カオリン
(C2-7)ベーマイト
(C2-8)水酸化アルミニウム
(C-1)~(C-8):表1に記載の割合で混合したものを使用した。
(C―9)SX-7100(三酸化アンチモン、タルク、ベントナイトおよびベーマイトの混合物、三酸化アンチモンの含有量50重量%、第一工業製薬社製)
(C-10)SA-700P(三酸化アンチモン、タルク、ベントナイトおよびベーマイトの混合物、三酸化アンチモンの含有量50重量%、Guangzhou Synthetic Chemical Sci & Tech.社製)
【0057】
【0058】
[その他の成分]
(D-1)ガラス繊維(商品名:ECS03-631K、セントラル硝子社製)
(D-2)ポリテトラフルオロエチレン(商品名:フルオンCD-145E、AGC社製)
(D-3)安定剤(商品名:IRGANOX B225、BASF社製)
【0059】
<難燃性熱可塑性樹脂組成物の評価>
各実施例における原料の配合量(重量基準)、配合量の比率、および評価結果を後掲の表に示す。
【0060】
[評価方法]
(熱可塑性樹脂組成物の評価用成形体の作製)
表2~表5に示す配合量に従い、熱可塑性樹脂(A)、臭素系難燃剤(B)、難燃助剤(C)、および、必要によりその他の化合物を二軸押出機に投入し、表2~表5に記載の条件で混練した。得られた混合物をペレット状にカットした後、射出成型機に投入して、表2~表5に記載の条件で、各金型を用いて射出成形することにより、試験片を得た。
【0061】
(難燃性)
金型(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ1.6mm)に射出成形することにより得られた試験片を用いて、UL規格のUL94V(プラスチック材料の難燃性)に従って測定した。
【0062】
(引張特性、伸び特性)
金型(JIS K 7139に準拠したタイプA1サイズ)に射出成形することにより得られた試験片を用いて、JIS K 7161に準じて、オートグラフ万能試験機(商品名:島津精密万能試験機 オートグラフ、島津製作所社製)を用いて引っ張り試験(引張速度:200mm/分)を行い、試験片が破断した際の強度(引張特性)と伸び(伸び特性)を測定した。なお、伸び特性の評価結果における「NB」は、試験片が破断せず測定できなかったことを示す。
【0063】
(耐衝撃性)
金型(長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)に射出成形することにより得られた試験片を用いて、JIS K 7110に準じて、アイゾット衝撃試験機(東洋精機製作所製社製)を用いて、各成形体の衝撃強度を測定した。
【0064】
(曲げ強さ、曲げ弾性率)
金型(長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)に射出成形することにより得られた試験片を用いて、JIS K 7171に準じて、オートグラフ万能試験機(商品名:島津精密万能試験機 オートグラフ、島津製作所社製)を用いて、試験速度20mm/min、支点間距離64mmにて測定し、曲げ強度(MPa)および曲げ弾性率(MPa)を測定した。
【0065】
(液流れ性)
JIS K 7210に準拠して、メルトフローインデックステスター(型式:120-FWP、安田精機製作所製)を使用して測定した。表2~表5に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて測定した。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
表2~表5より、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、燃焼性、引張特性、伸び特性、耐衝撃性、曲げ強さ、曲げ弾性率、液流れ性に優れることがわかる。
【0071】
(参考例1)
ポリ塩化ビニル(商品名:TK―1000、信越化学社製)100重量部、難燃助剤(C-1)10.6重量部、その他の成分(D-3)0.5重量部、、トリメリット酸トリオクチル(商品名:トリメリット酸トリオクチル、三菱ガストレーディング社製)61.7重量部および安定剤(商品名:アデカスタブ593、ADEKA社製)3.5部を二軸押出機に投入し、180℃で混練した後、ストランドカッターを用いて切断することによりペレットを得た。得られたペレットを射出成型機に投入し、180℃に加熱した後、成形体(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ1.6mm)を得た。得られた成形体の難燃性はV-0であった。
【0072】
(参考例2)
難燃助剤(C-1)の使用量を23.7重量部に変更した以外は、参考例1と同様の操作を行い、成形体(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ1.6mm)を得た。得られた成形体の難燃性はV-0であった。
【0073】
(参考例3)
難燃助剤(C-1)に代えて、難燃助剤(C-9)10.6重量部を用いた以外は、参考例1と同様の操作を行い、成形体(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ1.6mm)を得た。得られた成形体の難燃性はV-0であった。
【0074】
なお、本明細書において、例えば「XX~YY」という記載は「XX以上YY以下」を意味する。