(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149829
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】カビ取り剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 59/08 20060101AFI20241010BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A01N59/08 A
A01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024138533
(22)【出願日】2024-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】390039712
【氏名又は名称】株式会社リンレイ
(71)【出願人】
【識別番号】523390596
【氏名又は名称】株式会社タフリーインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 茂希
(57)【要約】
【課題】噴霧用容器に入れて対象面に向けて噴霧したときに、対象面に対して良好な密着性を示し、かつ、対象面に付着せずに該面から跳ね返る飛沫、及び、噴霧口からの液だれの発生を抑制することができるカビ取り剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)粘土鉱物、(B)次亜塩素酸塩、(C)アルカリ剤、及び(D)キレート剤、を含む、カビ取り剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粘土鉱物、(B)次亜塩素酸塩、(C)アルカリ剤、及び(D)キレート剤、を含む、カビ取り剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカビ取り剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸塩を含む組成物は、次亜塩素酸塩から遊離される次亜塩素酸が強力な塩素系漂白剤となり、浴室、浴槽、台所、トイレ、配水管等のいわゆる水回りで発生するカビ汚れを除去及び漂白できるカビ取り剤組成物として用いられている。カビ取り剤組成物は、噴霧用容器に封入して、広範囲に噴霧することができる。
【0003】
特許文献1には、次亜塩素酸アルカリ金属塩を含有する液体漂白剤組成物、及び、該組成物を、トリガー式スプレーを具備する容器に充填してなるスプレー容器入り液体漂白剤物品が開示されている。特許文献2には、次亜塩素酸アルカリ金属塩を含有する漂白剤組成物を、噴霧手段を備えた容器に充填してなるスプレー式漂白剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-235723号公報
【特許文献2】特開2009-030035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カビ取り剤組成物をスプレー等の噴霧用容器に入れて、カビ汚れが存在する対象面に向けて噴霧した後に、カビ取り剤組成物が対象面に対して良好な密着性を示す必要がある。また、対象面に付着することなく、該面から飛沫が跳ね返ってくることがあり、また、対象面に向けて噴霧されずに噴霧口から液だれを生じることもある。これらの飛沫及び液だれは、例えば、スプレーを保持する手及び指等の人体と接触することで肌荒れを引き起こしたり、汚れを有しない床、フローリング、及びマット等に付着して意図しない漂白を引き起こしたりする。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、噴霧用容器に入れて対象面に向けて噴霧したときに、対象面に対して良好な密着性を示し、かつ、対象面に付着せずに該面から跳ね返る飛沫、及び、噴霧口からの液だれの発生を抑制することができるカビ取り剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のものを含む。
(1) (A)粘土鉱物、(B)次亜塩素酸塩、(C)アルカリ剤、及び(D)キレート剤、を含む、カビ取り剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、噴霧用容器に入れて対象面に向けて噴霧したときに、対象面に対して良好な密着性を示し、かつ、対象面に付着せずに該面から跳ね返る飛沫、及び、噴霧口からの液だれの発生を抑制することができるカビ取り剤組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態におけるカビ取り剤組成物を含む噴霧用容器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態(以下、本実施形態とも表す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0011】
本実施形態におけるカビ取り剤組成物は、(A)粘土鉱物〔以下、(A)成分ともいう。〕、(B)次亜塩素酸塩〔以下、(B)成分ともいう。〕、(C)アルカリ剤〔以下、(C)成分ともいう。〕、及び(D)キレート剤〔以下、(D)成分ともいう。〕、を含む。
【0012】
以下に、本実施形態のカビ取り剤組成物を噴霧することができる噴霧用容器の概要について簡単に説明する。
本明細書において「対象面」とは、カビ汚れが存在する面、及び、該面がカビ取り剤組成物によりカビ汚れが除去された面のことを示す。
【0013】
図1は、本実施形態におけるカビ取り剤組成物を含む噴霧用容器の一例を示す概略図である。
図1に示すように、噴霧用容器10は、収納用容器20と噴霧用装置30とを備える。収納用容器20は、本実施形態におけるカビ取り剤組成物を収納することができる。噴霧用装置30は、トリガー31、ピストン32、シリンダー33、及びノズル34を備える。ノズル34は、噴霧口34aを有する。
【0014】
噴霧用容器10は、噴霧用装置30により、収納用容器20に収納されたカビ取り剤組成物を噴霧用容器10外に噴霧することができる。具体的には、トリガー31をピストン32の方向に引くことで、ピストン32及びシリンダー33が作動し、収納用容器20に収納された該組成物が、噴霧用装置30に吸い上げられる。吸い上げられた該組成物は、ノズル34の噴霧口34aから噴霧される。
【0015】
本実施形態におけるカビ取り剤組成物は、チキソトロピー性を有する。チキソトロピー性とは、剪断応力を受けると流動性が増し(粘性が低下し)、該剪断応力が取り除かれると元に戻る(粘性が上昇する)性質のことをいう。チキソトロピー性を有するカビ取り剤組成物は、粘性が低下しているときにゾル状又は液状であり、粘性が上昇しているときにゲル状又は固体状である。本明細書において、ゾル状とは低粘度のコロイドが分散している状態のことを示し、ゲル状とは高粘度のコロイドが分散している状態のことを示す。
【0016】
例えば、チキソトロピー性を有するカビ取り剤組成物を収納用容器20に収納して噴霧用容器10に用いた場合、静置時には該組成物がゲル状又は固体状であっても、噴霧前に噴霧用容器10を振動させることにより、又は、噴霧時に該組成物が噴霧用装置30に吸い上げられることにより、該組成物の流動性が増しゾル状又は液状になることで、対象面に噴霧することができる。対象面に噴霧された該組成物は、剪断応力が取り除かれることで、再度粘性が上昇し、ゲル状又は固体状になることで対象面に付着して、良好な密着性を示す。
【0017】
本実施形態におけるカビ取り剤組成物がチキソトロピー性を有することで、対象面に付着した該組成物は、粘性が再度上昇することで、ゲル状又は固体状になる。そのため、カビ取り剤組成物は対象面に対して良好な密着性を示し、対象面に付着した状態を維持することができ、跳ね返る飛沫の発生を抑制することができる。また、噴霧後にノズル34の噴霧口34aに残存する該組成物は、粘性が再度上昇し、ゲル状又は固体状になるため、液だれの発生も抑制することができる。
【0018】
[カビ取り剤組成物]
<(A)成分>
カビ取り剤組成物は、(A)成分である粘土鉱物を含有する。(A)成分の粘土鉱物は、カビ取り剤組成物中で均一に分散させることによりチキソトロピー性を与えることができる。本明細書において粘土鉱物とは、ケイ酸塩を含む層と、金属を中心とした層と、が積層された層状ケイ酸塩鉱物のことを示す。層状ケイ酸塩鉱物は一部又は全部が結晶性であってもよく、一部又は全部が非晶性であってもよい。(A)成分の粘土鉱物は、天然粘土鉱物であってもよく、合成粘土鉱物であってもよい。
【0019】
(A)成分の粘土鉱物としては、例えば、ベントナイト、サポナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、ソーコナイト、ノントロナイト、スチーブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物;カオリナイト、ハロサイト、ディッカナイト、ナクライト等のカオリン系粘土鉱物;タルク系粘土鉱物;バーミキュライト系粘土鉱物等;マスコバイト、フロゴバイト等のマイカ系粘土鉱物等の天然粘土鉱物、及びLAPONITE(登録商標、BYK社製、合成クレイ、化学式:Na+
0.7[(Si8Mg5.5Li0.3)O20(OH)4]-0.7)、ベンゲル(登録商標、ホージュン社製)、ルーセンタイト(登録商標、片倉コープアグリ社製)、クニピア(登録商標、クニミネ工業社製)、ベンクレイ(登録商標、水澤化学工業社製)、ビーガム(登録商標、バンダービルト社製)等の合成粘土鉱物等が挙げられる。カビ取り剤組成物に用いられる(A)成分は、上記粘土鉱物を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(A)成分の粘土鉱物は、カビ取り剤組成物の粘性及びチキソトロピー性を調整しやすく、優れた品質安定性を示す観点から、合成粘土鉱物を含むことが好ましく、LAPONITEを含むことがより好ましい。なお、合成粘土鉱物は、上記の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0020】
カビ取り剤組成物中における(A)成分の含有量は、カビ取り剤組成物が対象面に対してより密着性を示し、飛沫及び液だれの発生をより抑制できる観点から、カビ取り剤組成物全体を100質量%として、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上5.0質量%未満であることが更に好ましく、1.2質量%以上4.0質量%以下であることが特に好ましい。(A)成分の含有量は、カビ取り剤組成物が対象面に対してより密着性を示す観点から、1.6質量%以上であってもよく、2.5質量%以上であってもよい。
【0021】
<(B)成分>
カビ取り剤組成物は、(B)成分である次亜塩素酸塩を含有する。(B)成分の次亜塩素酸塩は、カビ取り剤組成物中で次亜塩素酸を遊離することにより、カビ汚れを除去する漂白性及び洗浄性をカビ取り剤組成物に与えることができる。
【0022】
(B)成分の次亜塩素酸塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸アルカリ金属塩;次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。カビ取り剤組成物に用いられる(B)成分は、上記次亜塩素酸塩を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(B)成分の次亜塩素酸塩は、カビ取り剤組成物に漂白性及び洗浄性をより与える観点から、次亜塩素酸アルカリ金属塩を含むことが好ましく、次亜塩素酸ナトリウムを含むことがより好ましい。
【0023】
カビ取り剤組成物中における(B)成分の含有量は、カビ取り剤組成物に漂白性及び洗浄性をより与える観点から、カビ取り剤組成物全体を100質量%として、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下であることが更に好ましく、2.0質量%以上3.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0024】
<(C)成分>
カビ取り剤組成物は、(C)成分であるアルカリ剤を含有する。(C)成分のアルカリ剤は、カビ取り剤組成物をアルカリ性にして、次亜塩素酸塩を安定にすることができる。20℃におけるカビ取り剤組成物のpHは、次亜塩素酸塩をより安定できる観点から、9.0以上が好ましく、11.0以上がより好ましく、12.0以上が更に好ましく、13.5以下が好ましく、13.3以下がより好ましく、13.0以下が更に好ましい。
【0025】
(C)成分のアルカリ剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩等が挙げられる。カビ取り剤組成物に用いられる(C)成分は、上記アルカリ剤を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(C)成分のアルカリ剤は、入手容易性及び次亜塩素酸塩の安定性の観点から、アルカリ金属の水酸化物を含むことが好ましく、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0026】
カビ取り剤組成物中における(C)成分の含有量は、次亜塩素酸塩をより安定にできる観点から、カビ取り剤組成物全体を100質量%として、0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上1質量%以下を含むことがより好ましい。
【0027】
<(D)成分>
カビ取り組成物は、(D)成分であるキレート剤を含有する。(D)成分のキレート剤は、(A)成分に含まれるような重金属存在下でも次亜塩素酸塩の分解を抑制し、次亜塩素酸塩を安定させることができる。
【0028】
(D)成分のキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のアミノカルボン酸系キレート剤;ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ヒドロキシエチルイミノニ二酢酸(HIDA)等のヒドロキシカルボン酸系キレート剤;ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、アミノトリスメチレンホスホン酸(ATMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)等のホスホン酸系キレート剤等、及びこれらの塩が挙げられる。上記塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。カビ取り剤組成物に用いられる(D)成分は、上記キレート剤を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(D)成分のキレート剤は、入手が容易であり、かつ、次亜塩素酸塩を安定させる観点から、ホスホン酸系キレート剤又はその塩を含むことが好ましく、PBTC又はその塩を含むことがより好ましい。
【0029】
カビ取り剤組成物中における(D)成分の含有量は、重金属存在下でも次亜塩素酸塩をより安定させる観点から、カビ取り剤組成物全体を100質量%として、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上2質量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
<その他成分>
カビ取り剤組成物は、上記(A)~(D)成分の他に、界面活性剤、香料、色素、pH調整剤、可溶化剤、浸透剤、懸濁化剤、(A)成分以外の増粘剤、抗菌剤、酸性物質、及びアルコール類等を含むことができる。
【0031】
界面活性剤を混合することにより、カビ取り剤組成物は、対象面に対してより密着性を示し、跳ね返り飛沫をより抑制することができる。また、界面活性剤が混合されたカビ取り剤組成物は、粘性の増加及び表面張力の低下により、対象面に付着する時間をより長くできる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0032】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、デシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩;ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩;ヘキサンスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩;デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラルリルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪族カルボン酸塩等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、メチルアミンクロライド、ジメチルアミンクロライド、トリメチルアミンクロライド等のアルキルアミン塩;テトラアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩;ジアルキル型4級アンモニウム塩;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等のトリアルキル型4級アンモニウム塩等が挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル等のエーテル系界面活性剤;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンポリオール脂肪酸エステル等のエステル系界面活性剤等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、トリメチル酢酸ベタイン、トリメチルカルボキシメチルベタイン等のアルキルベタイン;ラウリン酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタイン;ヤシ油ジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
カビ取り剤組成物は、上記界面活性剤を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。カビ取り剤組成物に含まれる界面活性剤は、対象面に対してより密着性を示し、跳ね返り飛沫をより抑制できる観点から、両性界面活性剤を含むことが好ましく、アルキルアミンオキサイドを含むことがより好ましく、ラウリルジメチルアミンオキサイドを含むことが更に好ましい。
【0033】
カビ取り剤組成物中における界面活性剤の含有量は、対象面に対してより密着性を示し、跳ね返り飛沫をより抑制できる観点から、0.001質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.3質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以上0.1質量%以下であることが更に好ましい。
【0034】
香料を混合することにより、カビ取り剤組成物は発香することができる。カビ取り剤組成物が発香することにより、次亜塩素酸塩が生じる不快な匂いを抑制したり、カビ取り剤組成物が対象面に残存していないことを確認できたりすることができる。
【0035】
香料としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等の炭化水素系化合物;ゲラニオール等のアルコール系化合物;アニソール、クレゾール等のフェノール系化合物;シトラール等のアルデヒド系化合物;アセタール系化合物;カルボン、プレゴン等のケトン系化合物;ゲラン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、バニリン酸、安息香酸等の酸系化合物;ペンタリド、ハバノリド等のラクトン系化合物;ギ酸エチル、ギ酸ヘキシル等のエステル系化合物;アントラニル酸メチル、メバントラール等の含窒素系化合物;チアゾール、リモネンチオール等の含硫黄系化合物等の合成系香料、及びイランイランオイル、オレンジオイル、カモミルオイル等の天然系香料等が挙げられる。カビ取り剤組成物に用いられる香料は、上記香料を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本実施形態のカビ取り剤組成物の残部は水であり、保存安定性の観点から、水中に微量に存在する金属イオン等が除去されたイオン交換水及び蒸留水が好ましい。本実施形態の組成物中における水の含有量は、カビ取り剤組成物全体を100質量%として、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0037】
[カビ取り剤組成物の製造方法]
カビ取り剤組成物の製造方法は、特に制限されない。カビ取り剤組成物は、例えば、(A)成分である粘土鉱物、(B)成分である次亜塩素酸塩、(C)成分であるアルカリ剤、及び(D)成分であるキレート剤、並びに必要に応じてその他の成分を添加し、さらに水を加えることによって得ることができる。各成分の添加順序は特に制限されない。本実施形態においてカビ取り剤組成物は、粘土鉱物が均一に分散してコロイドを形成していることが好ましい。
【0038】
[カビ取り剤組成物の使用方法]
本実施形態におけるカビ取り剤組成物は、これを液状、霧状、及び泡状の少なくとも1つ以上の状態で噴霧できる容器に収納して使用することが好ましい。本実施形態のカビ取り剤組成物を、上記の状態で噴霧できる容器に収納して使用することで、対象面に存在するカビ汚れに対して適度な広がりを持って付着し、かつ、対象面を均一に覆うことができる。本実施形態におけるカビ取り剤組成物によれば、上記容器に収納して使用したとき、対象面に良好な密着性を示し、対象面から跳ね返る飛沫、及び液だれを効果的に抑制することができる。したがって、浴室、浴槽、台所、トイレ、配水管、玄関、ベランダ等に好適に使用することができる。本実施形態のカビ取り剤組成物は保存安定性に優れており、上記容器に収容した状態で長期間保存しても、容器の膨張を生じにくい。
【0039】
本実施形態におけるカビ取り剤組成物は、カビ取り剤組成物を対象面に噴霧する工程、カビ取り剤組成物が対象面に塗布された状態を維持する工程、カビ取り剤組成物を水で流す工程をこの順に含む洗浄方法に使用することができる。
【0040】
カビ取り剤組成物を対象面に噴霧する工程では、例えば、カビ取り剤組成物をスプレーに入れて噴霧する方法等を用いることができる。上記スプレーとしては、例えば、手動ポンプ式、電動ポンプ式、高圧ガス式、空気圧式、蓄圧式、ベンチュリ式、
図1に示すようなトリガー式等を用いることができる。カビ取り剤組成物を対象面に噴霧する工程の前に、カビ取り剤組成物の粘性を低下させるため、スプレーを振動させてもよい。
【0041】
カビ取り剤組成物を水で洗い流す工程において、その終了時点は、泡が視認できない時点、又は香りを認識できない時点等とすることができる。
【0042】
本実施形態において、カビ取り剤組成物を洗浄対象に噴霧する工程の後に、噴霧したカビ取り剤組成物を塗り広げる工程を有していてもよい。上記塗り広げる工程としては、例えば、刷毛、ヘラ等を用いることができる。
【実施例0043】
以下、実施例を挙げて本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0044】
以下に示す成分と残部に水とをそれぞれ混合して、実験例1~3のカビ取り剤組成物を調製した。
【0045】
(実験例1)
LAPONITE(BYK社製):3質量%
次亜塩素酸ナトリウム(日本軽金属社製):2.5質量%
水酸化ナトリウム(日星産業社製):0.5質量%
キレストPH-435(2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸五ナトリウム塩、キレスト社製):0.8質量%
【0046】
(実験例2)
LAPONITE(BYK社製):1.45質量%
次亜塩素酸ナトリウム(日本軽金属社製):2.5質量%
水酸化ナトリウム(日星産業社製):0.5質量%
キレストPH-435(2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸五ナトリウム塩、キレスト社製):0.8質量%
【0047】
(実験例3)
LAPONITE(BYK社製):2.2質量%
次亜塩素酸ナトリウム(日本軽金属社製):2.5質量%
水酸化ナトリウム(日星産業社製):0.5質量%
キレストPH-435(2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸五ナトリウム塩、キレスト社製):0.8質量%
アンヒトール20N(ラウリルジメチルアミンオキサイド、花王社製):0.035質量%
【0048】
実験例1~3のカビ取り剤組成物を、トリガー式スプレーに収納して、液だれ確認試験及び噴霧時飛沫試験を行った。
【0049】
〔液だれ確認試験〕
トリガー式スプレーを軽く振り、対象面に対して垂直になるように水平面に置き、トリガーを10回連続で引いて、カビ取り剤組成物を対象面に噴霧した。噴霧後、噴霧口からの液だれについて、以下に示す基準で評価した。
A:液だれがなかった
B:僅かに液だれを生じた
C:相当な液だれを生じた
【0050】
〔噴霧時飛沫試験〕
直径270mmの黒色画用紙の中央に直径25mmの穴を開け、該穴に、カビ取り剤組成物を噴霧できるように、トリガー式スプレーのノズルを挿入した。この際、トリガー式スプレーを、トリガー式スプレーのノズルから対象面までの距離が100mmとなるように配置した。対象面は、水平面に対して垂直である。そして、トリガーを5回連続で引き、5回目のトリガーを引いた状態で10秒間静止して、トリガーを離した。噴霧したカビ取り剤組成物が跳ね返って飛沫となる場合、対象面側の黒色画用紙を漂白して、白色になった。対象面側の黒色画用紙の白色跡を以下のように確認して、飛沫について評価した。
A:直径1.0mm未満の白色跡を僅かに確認した
B:直径1.0mm以上2.5mm未満の白色跡を僅かに確認した
C:直径2.5mm以上の白色跡又は多数の白色跡を確認した
【0051】
表1に、実験例1~3の組成、及び、試験の結果を示した。
【0052】
【0053】
表1の結果から、実験例1~3のカビ取り剤組成物は、液だれがほとんどなく、飛沫も白色跡を僅かに確認されたのみであり、良好であった。その中でも、特に実験例2及び3のカビ取り剤組成物は、液だれが確認されず、直径1.0mm以下の白色跡を僅かに確認したのみであったため、特に良好であった。
【0054】
〔容器膨張試験〕
実験例1のカビ取り剤組成物を横幅99.12mm、奥行き48.38mmの容器を備えるトリガー式スプレーに収納した。該トリガー式スプレーを5つ用意して、113日間静置し、各日の容器の横幅及び奥行きを計測して、5つのサンプルの横幅及び奥行きを平均した。実験例1のカビ取り剤組成物を収納した容器の横幅及び奥行きは、113日間静置後も変化がほぼなかった。実験例1のカビ取り剤組成物は、保存安定性が良好であった。
【0055】
〔密着性試験〕
実験例1~3のカビ取り剤組成物をトリガー式スプレーに収納し、カビ取り剤組成物を100mm離れた位置からガラス製の対象面に噴霧した。噴霧後、25℃の環境下で、カビ取り剤組成物が最初に対象面に付着した位置から垂れている時間及び付着している位置から変化しなかった時間で密着性を評価した。付着している位置は、垂れて付着した位置及び垂れずに最初に付着した位置を含む。実験例1のカビ取り剤組成物は、最初に付着した位置で密着し、その後も1分間以上、位置が変化しなかった。実験例1のカビ取り剤組成物は、対象面への密着性が良好であった。実験例2のカビ取り剤組成物は、噴霧直後から約3秒間の間、最初に付着した位置から垂れていた。その後、実験例2のカビ取り剤組成物は、垂れた位置で密着し、1分間以上位置が変化せず、良好な密着性を示した。実験例3のカビ取り剤組成物は、噴霧直後から極短時間、最初に付着した位置からわずかに垂れていた。その後、実験例3のカビ取り剤組成物は、わずかに垂れた位置で密着し、1分間以上位置が変化せず、良好な密着性を示した。なお、噴霧直後からカビ取り剤組成物が最初に対象面に付着した位置から垂れていた時間は、実験例3の方が実験例2よりも短く、実験例3のカビ取り剤組成物が実験例2のカビ取り剤組成物よりも良好な密着性を示した。
【0056】
今回開示された実施の形態及び実施例は全て点の例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。