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  • 特開-還元用焼成ペレットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149831
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】還元用焼成ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/16 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
C22B1/16 N
C22B1/16 K
C22B1/16 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024138920
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2021103827の分割
【原出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹原 健太
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆英
(72)【発明者】
【氏名】岩見 友司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 頌平
(72)【発明者】
【氏名】守田 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】堀田 謙弥
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】井川 大輔
(57)【要約】
【課題】固体還元炉で用いる焼成ペレットの製造に当たり、所定量のM.Feと高粘性のスラグ成分を含有させることで、低融点スラグどうしの接触機会を減らして、融着を阻止することでクラスタリングの防止に有効な焼成ペレットの製造方法を提案する。
【解決手段】トータルFe(T.Fe)に対する高粘性のスラグ成分(Al+MgO+SiO)の割合が、式;(Al+MgO+SiO)/T.Fe≧0.07を満たす還元用焼成ペレットの製造に当たり、M.Feを4質量%以上24質量%以下含有する混合原料を用い、その混合原料を造粒して焼成する方法。ただし、Al:焼成ペレット中のAlの成分濃度(質量%)、MgO:焼成ペレット中のMgOの成分濃度(質量%)、SiO:焼成ペレット中のSiOの成分濃度(質量%)、T.Fe:焼成ペレット中のT.Feの成分濃度(質量%)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トータルFe(T.Fe)に対する高粘性のスラグ成分(Al+MgO+SiO)の割合が下記(1)式を満たす還元用焼成ペレットの製造に当たり、M.Feを4質量%以上24質量%以下含有する混合原料を用い、その混合原料を造粒して焼成することを特徴とする還元用焼成ペレットの製造方法。

(Al+MgO+SiO)/T.Fe≧0.07 ・・・(1)
ただし、Al: 焼成ペレット中のAlの成分濃度(質量%)
MgO: 焼成ペレット中のMgOの成分濃度(質量%)
SiO: 焼成ペレット中のSiOの成分濃度(質量%)
T.Fe: 焼成ペレット中のT.Feの成分濃度(質量%)
【請求項2】
トータルFe(T.Fe)に対する高粘性のスラグ成分(Al+MgO+SiO)の割合が下記(2)式を満たすものであることを特徴とする請求項1に記載の還元用焼成ペレットの製造方法。

(Al+MgO+SiO)/T.Fe≧0.12 ・・・(2)
ただし、Al: 焼成ペレット中のAlの成分濃度(質量%)
MgO: 焼成ペレット中のMgOの成分濃度(質量%)
SiO: 焼成ペレット中のSiOの成分濃度(質量%)
T.Fe: 焼成ペレット中のT.Feの成分濃度(質量%)
【請求項3】
前記混合原料は、固体還元炉で還元された粒径3mm以下の還元鉄であることを特徴とする請求項1または2に記載の還元用焼成ペレットの製造方法。
【請求項4】
前記還元鉄は、M.Feを78質量%以上含むことを特徴とする請求項3に記載の還元用焼成ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体還元炉に用いて有効な還元用焼成ペレットとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、COの増加による地球温暖化を避けるためにその排出量を削減するための各種の技術開発が行なわれている。
【0003】
このような背景の下、製鉄業の分野においても、水素ベースの還元プロセスである固体還元炉による製鉄方法が脚光を浴びており、この方法に用いられる焼成ペレットについての研究が進められている。ところで、前記固体還元炉では、装入原料(焼成ペレット)が炉内の高温領域を通過する際に、該焼成ペレット中のヘマタイト相が還元されてマグネタイト相に変化するときに体積膨張を伴い、粉化現象を起こす他、金属鉄どうしの接触・融着の他、低融点スラグどうしの接触、融着を招くことが知られている。その結果として、炉内ではクラスタリングが生じたり、炉内のペレットが動かなくなって炉底部から取り出せなくなる棚吊現象を招くことが知られている。とくに、水素ベースでの還元を行う固体還元炉においては、このクラスタリングは解決すべき非常に大きな課題である。
【0004】
このような背景の下、従来、前述した固体還元炉内で観察されるクラスタリングの防止を目的とした幾つかの先行技術が提案されている。例えば、特許文献1では、Ca(OH)やMg(OH)をペレット表面に被覆する方法を提案しており、特許文献2では、焼成塊成鉱(ペレット)の表面を粉粒状個体燃料で被覆することで還元粉化を防止すること、並びにふくれの少ない焼成ペレットを得る方法を提案し、そして、特許文献3では焼成ペレットの表面をセメント配合鉄鉱石で被覆することで固体還元炉内でのクラスタリングの発生を防止すると共に熱ロスの低減ならびに操業効率の向上を図ることとしており、さらに、特許文献4ではCaxFeyOz(1<y/x≦2;1≦z)からなるカルシウム鉄化合物を含有する物質を被覆する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59-10411号公報
【特許文献2】特開昭62-37325号公報
【特許文献3】特開昭63-262426号公報
【特許文献4】特開2017-119910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記各従来技術(特許文献1-4)は、そのいずれもがシャフト炉等の固体還元炉内の高温域(500~600℃)付近で観察されるクラスタリングの原因となる還元後の金属鉄どうしの接触を、主として非金属成分を介在させることで低減させる方法である。しかし、発明者らの研究によると、前述した従来技術のクラスタリング防止方法は不十分であることに加え、例えば非金属成分の被覆工程を別に採用する必要がありコスト高になる他、専用の設備の追加が必要となるなどの課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、固体還元炉で用いる焼成ペレットの製造に当たり、所定量のM.Feを含有すると共に高粘性のスラグ成分をも含有させることで、低融点スラグどうしの接触機会を減らして、融着を阻止することでクラスタリングの防止に有効な焼成ペレットの製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、従来技術が抱えている前述した課題を解決できると共に、前記目的を実現するために開発した技術であって、トータルFe(T.Fe)に対する高粘性のスラグ成分(Al+MgO+SiO)の割合が下記(1)式を満たす還元用焼成ペレットの製造に当たり、M.Feを4質量%以上24質量%以下含有する混合原料を用い、その混合原料を造粒して焼成することを特徴とする還元用焼成ペレットの製造方法を提案する。

(Al+MgO+SiO)/T.Fe≧0.07 ・・・(1)
ただし、Al: 焼成ペレット中のAlの成分濃度(質量%)
MgO: 焼成ペレット中のMgOの成分濃度(質量%)
SiO: 焼成ペレット中のSiOの成分濃度(質量%)
T.Fe: 焼成ペレット中のT.Feの成分濃度(質量%)
【0009】
なお、本発明において前記還元用焼成ペレットの製造方法については、
(a)トータルFe(T.Fe)に対する高粘性のスラグ成分(Al+MgO+SiO)の割合が下記(2)式を満たすようにしたものであること、

(Al+MgO+SiO)/T.Fe≧0.12 ・・・(2)
ただし、Al: 焼成ペレット中のAlの成分濃度(質量%)
MgO: 焼成ペレット中のMgOの成分濃度(質量%)
SiO: 焼成ペレット中のSiOの成分濃度(質量%)
T.Fe: 焼成ペレット中のT.Feの成分濃度(質量%)
(b)気孔率が20%以上であること、
(e)前記混合原料は、固体還元炉で還元された粒径3mm以下の還元鉄であること、
(f)前記還元鉄はM.Feを78質量%以上含むこと、
がより好ましい実施形態を提供できるものと考えられる。
【発明の効果】
【0010】
前述した構成に係る本発明の還元用焼成ペレットの製造方法によれば、M.Feを含有させることおよびトータル鉄に対して高粘性のスラグ成分(Al、MgO、SiO)を相対的に多く含有させることで、固体還元炉内での還元中におけるFeOによる低融点のスラグの発生とその流動性を低下させることができる。その結果、こうしたスラグが介在することによるペレットどうしの接触、融着の機会を防止することができるようになり、ひいては課題である還元炉内での前述したクラスタリングを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】配合する鉄含有原料であるオーストラリア産鉄鉱石についての、(Al+MgO+SiO)/T.FeとLOIとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において用いる固体還元炉としては、水素ガスなどを還元ガスとして用い、還元用焼成ペレットをその炉内に装入し、これを還元率にして90%以上のFeにまで還元するための炉である。この固体還元炉の操業においては、炉内に装入する原料、すなわち焼成ペレットの性状の如何が重要である。
【0013】
その焼成ペレットとしては、前述した固体還元炉内の高温領域(500~800℃)におけるペレットどうしの接触、互いの融着によるクラスタリングの防止を図ることができるかどうかが何よりも重要である。こうした要請に対し、本発明では、金属鉄(M.Fe)の他、鉄鉱石のような鉄酸化物や硫化鉄、製鉄ダストのような鉄含有原料と、高粘性のスラグ成分との関係について検討した。その結果、諸原料の炉内での流動性の観点から、とりわけ高粘性のスラグ成分との関係を適正に管理することが好ましいことが判明した。即ち、炉内では、常に高粘性のスラグが生じるようにすることで、高温域での好ましくない流動を抑え、このことにより、スラグどうしの融着を防止して、クラスタリングの阻止を図ることができるのである。
【0014】
前述したように、本発明では、鉄含有原料や配合する副原料に対し、高粘性のスラグ成分が一定の割合で含まれるようにしたものにすることが有効であることが分かった。
【0015】
その高粘性のスラグとなりうる成分として、とくに(Al、MgO、SiO)に着目し、その合計量がトータル鉄(T・Fe)に対し、所定の割合を維持するとき、前記炉内で生成するスラグどうしの融着を効果的に防止できるようになるのである。
【0016】
それは、還元用焼成ペレットとしての成分組成が、鉄含有原料中のトータル鉄(T・Fe)に対して、前記高粘性のスラグ成分(Al+MgO+SiO)を一定の割合で含有させること、即ち、下記(1)式を満たす関係にある焼成ペレットとすることである。

(Al+MgO+SiO)/T.Fe≧0.07 ・・・(1)
【0017】
上記(1)式において、Alは前記還元用焼成ペレットのAlの成分濃度(質量%)であり、MgOは前記還元用焼成ペレットのMgOの成分濃度(質量%)であり、SiOは前記還元用焼成ペレットのMgOの成分濃度(質量%)であり、T.Feは前記還元用焼成ペレットのトータルFe濃度(質量%)である。
【0018】
本発明において、炉内高温域におけるスラグどうしの接触、融着を防ぐという観点からは、前述した高粘性のスラグ成分(Al+MgO+SiO)とトータル鉄(T.Fe)とのより好ましい関係は、高粘性のスラグ成分量がより多く含まれることとなる下記(2)式に示すとおりである。

(Al+MgO+SiO)/T.Fe≧0.12 ・・・(2)
【0019】
上記(2)式において、Alは前記還元用焼成ペレットのAlの成分濃度(質量%)であり、MgOは前記還元用焼成ペレットのMgOの成分濃度(質量%)であり、SiOは前記還元用焼成ペレットのMgOの成分濃度(質量%)であり、T.Feは前記還元用焼成ペレットのトータルFe濃度(質量%)である。
【0020】
なお、本発明において、鉄含有原料中のトータルFe(T.Fe)とは、金属鉄(M.Fe)の他、鉄化合物(酸化鉄、硫化鉄、カルシウムフェライト等)からなる鉄分濃度の合計値であり、一方、高粘性のスラグ成分とは鉄鉱石や製鉄ダスト等の含鉄原料の他、副原料(石灰石、生石灰、ドロマイト等)、バインダー(ベントナイト等)に含まれるAl濃度、MgO濃度、SiO濃度の合計値である。
【0021】
前記Al濃度、MgO濃度、SiO濃度は、蛍光X線などの元素分析によりAl濃度、Mg濃度、Si濃度を測定し、それぞれに分子量/原子量を掛けて求めることができる。具体的には、たとえば、Al濃度は、蛍光X線などの元素分析により測定されたAl濃度に、Al分子量/Al原子量=101.96/26.98=3.779を掛けて求めることができる。
【0022】
次に、本発明に係る還元用焼成ペレットについては、このペレットの気孔率の管理もまた重要である。即ち、該還元用焼成ペレットを多孔質(20%以上、望ましくは30%以上)にすることで、ペレットどうしの接触点数の減少を図ることができ、このことにより金属鉄どうしの接触を低減させて、互いの融着を阻止し、ひいては前述のクラスタリングの防止に資することができるようになるからである。この点、気孔率が20%未満では融着防止に有効ではない。なお、上限は、強度の観点から60%程度である。
【0023】
次に、本発明に係る焼成ペレットの製造方法について説明する。本発明に係る還元用焼成ペレットの製造に当たっては、得られる焼成ペレットについての高粘性のスラグ成分(Al+MgO+SiO)とトータル鉄(T.Fe)との上述した関係を実現するために、例えば、もともと上述したような関係の成分組成を有する鉄鉱石の1種または複数種の鉄鉱石を配合して使用することで、前述した関係を示すこととなる2種以上の鉄鉱石等を選択使用する配合が考えられる。例えば、オーストラリア産鉄鉱石のうち、図1に示すような鉄鉱石(銘柄)の1つ以上を配合しかつ必要に応じてベントナイトや生石灰等のバインダーや副原料を加えた上で造粒することである。
【0024】
前述した焼成ペレットを固体還元炉に装入して還元する上では、望ましくは炉内の高温還元雰囲気において、前記クラスタリングを招かない性状のものにする。例えば、LOI(Loss on Ignition:強熱減量)の値が5%以上となるように、図1に示すような鉄鉱石(A~Z)のうちからその幾つかを選択使用(配合)してLOI≧5%を満たすようにすれば、クラスタリングをより効果的に低減することができる。その理由は、LOIがペレットの焼成工程で解離・気化してペレットの外に散逸する際に、ペレット内に残った鉱物相の体積が収縮し、鉱物相と鉱物相の間に空隙を生じるためである。
【0025】
また、本発明に係る製造方法においては、前述した鉄含有原料としてのLOI≧5%を実現するために、使用する鉄鉱石等については、予めこれを脱結晶水処理等の事前処理を施すことにより、LOI≦2%にすることが好ましい。その理由は、原料鉄鉱石等の鉄含有原料の多くが多くの結晶水を含んでいるため、造粒時に該結晶水に起因して発生する水蒸気によってペレットが破裂することが多く、そのため昇温をゆっくりせざるを得なくなるからである。
【0026】
なお、前記脱結晶水のための事前処理に当たっては、前記LOIの評価はロータリーキルン等の造粒機の出側(排出位置)での測定値を用いて管理することが望ましい。
【0027】
(実施例)
〈例1〉
この実施例(比較例を含む)は、還元用焼成ペレットのT.Feと高粘性のスラグ成分(Al+MgO+SiO)との関係が固体還元炉内でのクラスタリングにどのような影響を及ぼすのかを明らかにするものである。
【0028】
実施に当たって使用した鉄含有原料すなわち鉄鉱石については、主として図1に示すオーストラリア産鉄鉱石(A~Z)の一種以上、及び必要に応じて副原料と試薬(市販のAl試薬など)を用いた配合を行った。その配合例を表1に示す。
【0029】
前述したオーストラリア産原料の一種以上(図1に例示する)(A~Z)を含む全原料をボールミルで粉砕し、次いでペレタイザーで水分を加えながら9~16mmの大きさのものに造粒した。得られた造粒後のペレットを乾燥機に入れて110℃‐24hrの乾燥処理を行い、その後、電気炉に装入し、7℃/min.で昇温し、1250℃に10時間保持した後、7℃/min.の速度で冷却した。得られた表1に示す各焼成ペレットについては、気孔率とクラスタリング指数とを使って評価した。
【0030】
(クラスタリング評価試験)
100φの縦型円筒炉に試料を500g装入し、N雰囲気中で1000℃まで昇温し、1000℃になったら還元ガス24L/min、H:N=20:80(vol%)、荷重1kg/cmで3時間保持した後、N雰囲気中で冷却し、還元鉄を製造した。その後、焼成ペレット単体の最大サイズである16mmで篩った後、重量を測定し(Wa(g))、篩上をI型試験機〔円筒形容器(132mmφ×700mL)〕に入れ、回転速度30rpmで5分間回転させた後、16mmで篩った量Wb(g)を評価した。
【0031】
(気孔率)
焼成ペレットの気孔率は、見掛け密度の測定後、真密度を測定することで評価したところ、(Al+MgO+SiO)/T.Feが0.07以上の実施例1~5は、いずれもクラスタリング指数が7未満で良好な性状の焼成ペレットであることが確かめられた。
【0032】
【表1】
【0033】
なお、下記表2は、表1の実施例1、2で得られた焼成ペレットの成分組成を示すものである。
【0034】
【表2】
【0035】
〈例2〉
次に、前記表1に示した実施例5のサンプルを脱結晶水のための事前処理を施すことで、造粒時に破損しないで造粒焼成できるかどうかを評価する試験を行った。なお、昇温速度は200℃/minとした。
【0036】
その結果、脱結晶水処理によって結晶水が抜けるか否かより、例えば脱結晶水鉱石中には多数の気孔が残存していると破裂を招き、一方で十分な脱結晶水処理ができた場合は破裂することなく、しかも処理前の鉱石のLOIが十分高ければ、脱結晶水処理後の鉱石LOIが低くなっても品質としては良いものの作成が可能であることが分かった。
【0037】
【表3】
【0038】
〈例3〉
例1(クラスタリング評価試験)の比較例2と同じ方法で得られた還元鉄(Waを測定した時点のサンプル)を粉砕し、粒径3mm以下としたものを比較例2の焼成前の原料と混合し、それを用いて例1の方法で焼成ペレットを製造した。製造した焼成ペレットについてペレット(圧壊)強度を測定した。その結果を表4に示す。なお、表4中の「M.Fe」は、還元鉄に含まれるM.Feに由来するものであり、実施例10~12はM.Fe=78mass%の還元鉄を用いたものであり、実施例13はM.Fe=80mass%の還元鉄を用いたものである。その結果、M.Feを原料に混合することで、ペレット強度が向上することが分かった。クラスタリングは粉が増加することで促進されてしまうため、焼成ペレット強度が向上することでクラスタリングの抑制が可能である。また、M.Feを原料に配合することで焼成ペレットの強度が向上するのは、該焼成ペレットの焼成時に、還元鉄粉が酸化して発熱するために、隣接している粒子同士の接着が促進されるためだと考えらえる。なお、実施例13については、例1(クラスタリング評価試験)の実施例1と同じ方法で得られた還元鉄(Waを測定した時点のサンプル)を粉砕し、粒径3mm以下としたものを実施例1の焼成前の原料と混合し、それを用いて実施例1の方法で焼成ペレットを製造した例であり、高い強度が得られている。
【0039】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る固体還元焼成ペレットの製造方法については、主として水素ベースの直接還元プロセスに適用するために開発した技術であるが、もちろん高炉等で用いる原料としても使用が可能である。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-09-02
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、固体還元炉に用いて有効な還元用焼成ペレットの製造方法に関する。