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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149842
(43)【公開日】2024-10-21
(54)【発明の名称】放熱部材の固定構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20241011BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H05K7/20 A
H05K1/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056053
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土居 弘宜
(72)【発明者】
【氏名】河野 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 玲二
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 広幹
【テーマコード(参考)】
5E322
5E338
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB01
5E322AB08
5E322EA11
5E322FA04
5E338AA02
5E338AA18
5E338BB04
5E338BB13
5E338BB75
5E338EE02
(57)【要約】
【課題】放熱シートに対する絶縁シートの位置のばらつきを抑制する。
【解決手段】プリント基板(10)と放熱部材(20)との間に、絶縁シート(30)を設け、放熱部材(20)に、凸部(24)を形成し、絶縁シート(30)に、貫通孔(31)を形成し、第1放熱部材(20)の凸部(24)を、前記絶縁シート(30)の貫通孔(31)に貫通させ、その先端をプリント基板(10)に当接させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電路(11)がプリントによって形成されたプリント基板(10)に第1放熱部材(20)を固定した固定構造であって、
前記プリント基板(10)と前記第1放熱部材(20)との間には、絶縁シート(30)が設けられ、
前記第1放熱部材(20)には、凸部(24)が形成され、
前記絶縁シート(30)には、貫通孔(31)が形成され、
前記第1放熱部材(20)の凸部(24)が、前記絶縁シート(30)の貫通孔(31)を貫通し、その先端を前記プリント基板(10)に当接させていることを特徴とする放熱部材の固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の放熱部材の固定構造において 、
前記プリント基板(10)には、取付孔(12)が貫通形成され、
前記第1放熱部材(20)の凸部(24)の先端面には、締結孔(25)が形成され、
前記プリント基板(10)の取付孔(12)及び前記第1放熱部材(20)の締結孔(25)には、締結部材(61)が挿入されて前記プリント基板(10)及び前記第1放熱部材(20)を締結していることを特徴とする放熱部材の固定構造。
【請求項3】
請求項1に記載の放熱部材の固定構造において、
前記プリント基板(10)における前記第1放熱部材(20)の凸部(24)の当接領域には、前記導電路(11)のうち、当該プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼす電流が流れる部分が形成されていないことを特徴とする放熱部材の固定構造。
【請求項4】
請求項1に記載の放熱部材の固定構造において、
前記プリント基板(10)には、前記導電路(11)に電気的に接続され、発熱する電子部品(60)が実装され、
前記導電路(11)のうち、前記電子部品(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている部分(11a)が、前記絶縁シート(30)と接触することを特徴とする放熱部材の固定構造。
【請求項5】
請求項1に記載の放熱部材の固定構造において、
前記絶縁シート(30)の外周部が、前記第1放熱部材(20)の外周端よりも外側に張り出していることを特徴とする放熱部材の固定構造。
【請求項6】
請求項1に記載の放熱部材の固定構造において、
前記絶縁シート(30)は、厚さ方向に圧縮された状態で、前記プリント基板(10)及び前記第1放熱部材(20)に当接していることを特徴とする放熱部材の固定構造。
【請求項7】
請求項1に記載の放熱部材の固定構造において、
前記絶縁シート(30)は、前記第1放熱部材(20)に接着剤により接着されていることを特徴とする放熱部材の固定構造。
【請求項8】
請求項1に記載の放熱部材の固定構造において、
前記第1放熱部材(20)のプリント基板(10)側とは反対の面には、第2放熱部材(40,50)が当接していることを特徴とする放熱部材の固定構造。
【請求項9】
請求項8に記載の放熱部材の固定構造において、
前記第1放熱部材(20)には、第1挿入孔(23)が形成され、
前記第2放熱部材(40,50)には、第2挿入孔(41,53)が形成され、
前記第1放熱部材(20)の第1挿入孔(23)及び前記第2放熱部材(40,50)の第2挿入孔(41,53)には、挿入部材(62)が挿入されて前記第1放熱部材(20)及び第2放熱部材(40,50)を締結していることを特徴とする放熱部材の固定構造。
【請求項10】
請求項4に記載の放熱部材の固定構造において、
前記プリント基板(10)には、前記電子部品(60)が所定方向に間隔を空けて複数実装され、各前記電子部品(60)における前記第1放熱部材(20)と厚さ方向に重なる領域の前記所定方向(D)の幅(W2)は、当該電子部品(60)の前記所定方向(D)の幅(W1)の1/2以上であることを特徴とする放熱部材の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電路がプリントによって形成されたプリント基板に放熱部材を固定した固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導電路がプリントによって形成されたプリント基板に放熱部材を固定した固定構造が開示されている。この固定構造では、プリント基板と放熱部材との間に、絶縁シートを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6115464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、放熱部材に対する絶縁シートの位置決め方法は何ら開示されていない。仮に、放熱部材に対して絶縁シートを目視で位置決めすると、放熱シートに対する絶縁シートの位置にばらつきが生じる。
【0005】
本開示の目的は、放熱シートに対する絶縁シートの位置のばらつきを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、導電路(11)がプリントによって形成されたプリント基板(10)に第1放熱部材(20)を固定した固定構造であって、前記プリント基板(10)と前記第1放熱部材(20)との間には、絶縁シート(30)が設けられ、前記第1放熱部材(20)には、凸部(24)が形成され、前記絶縁シート(30)には、貫通孔(31)が形成され、前記第1放熱部材(20)の凸部(24)が、前記絶縁シート(30)の貫通孔(31)を貫通し、その先端を前記プリント基板(10)に当接させていることを特徴とする。
【0007】
第1の態様では、第1放熱部材(20)の凸部(24)を、絶縁シート(30)の貫通孔(31)に挿入することにより、絶縁シート(30)を第1放熱部材(20)に対して絶縁シート(30)の表面に沿う方向に位置決めできる。したがって、第1放熱部材(20)に対する絶縁シート(30)の位置のばらつきを抑制できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記プリント基板(10)には、取付孔(12)が貫通形成され、前記第1放熱部材(20)の凸部(24)の先端面には、締結孔(25)が形成され、前記プリント基板(10)の取付孔(12)及び前記第1放熱部材(20)の締結孔(25)には、締結部材(61)が挿入されて前記プリント基板(10)及び前記第1放熱部材(20)を締結していることを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、プリント基板(10)及び第1放熱部材(20)を締結によって容易に互いに固定できる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記プリント基板(10)における前記第1放熱部材(20)の凸部(24)の当接領域には、前記導電路(11)のうち、当該プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼす電流が流れる部分が形成されていないことを特徴とする。
【0011】
第3の態様では、プリント基板(10)の導電路(11)のうち、プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼす電流が流れる部分と、第1放熱部材(20)との絶縁を確保できる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記プリント基板(10)には、前記導電路(11)に電気的に接続され、発熱する電子部品(60)が実装され、前記導電路(11)のうち、前記電子部品(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている部分(11a)が、前記絶縁シート(30)と接触することを特徴とする。
【0013】
第4の態様では、電子部品(60)の熱を導電路(11)を介して絶縁シート(30)に伝導させることができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記絶縁シート(30)の外周部が、前記第1放熱部材(20)の外周端よりも外側に張り出していることを特徴とする。
【0015】
第5の態様では、プリント基板(10)の導電路(11)と、第1放熱部材(20)の外周端との絶縁をより確実に確保できる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記絶縁シート(30)は、厚さ方向に圧縮された状態で、前記プリント基板(10)及び前記第1放熱部材(20)に当接していることを特徴とする。
【0017】
第6の態様では、絶縁シート(30)が、その復元力によりプリント基板(10)及び第1放熱部材(20)に密着するので、プリント基板(10)の熱を絶縁シート(30)を介して第1放熱部材(20)に確実に伝導させることができる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記絶縁シート(30)は、前記第1放熱部材(20)に接着剤により接着されていることを特徴とする。
【0019】
第7の態様では、絶縁シート(30)を第1放熱部材(20)に接着剤により固定するので、絶縁シート(30)の剥がれによりプリント基板(10)の導電路(11)と第1放熱部材(20)との間に電流が流れるのを防止できる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1~第7のいずれか1つの態様において、前記第1放熱部材(20)のプリント基板(10)側とは反対の面には、第2放熱部材(40,50)が当接していることを特徴とする。
【0021】
第8の態様では、プリント基板(10)の熱を第1放熱部材(20)だけでなく第2放熱部材(40,50)にも伝導させて放散させることができるので、プリント基板(10)の熱をより効率良く放散できる。
【0022】
本開示の第9の態様は、第8の態様において、前記第1放熱部材(20)には、第1挿入孔(23)が形成され、前記第2放熱部材(40,50)には、第2挿入孔(41,53)が形成され、前記第1放熱部材(20)の第1挿入孔(23)及び前記第2放熱部材(40,50)の第2挿入孔(41,53)には、挿入部材(62)が挿入されて前記第1放熱部材(20)及び第2放熱部材(40,50)を締結していることを特徴とする。
【0023】
第9の態様では、第1放熱部材(20)及び第2放熱部材(40,50)を締結によって容易に互いに固定できる。
【0024】
本開示の第10の態様は、第4の態様において、前記プリント基板(10)には、前記電子部品(60)が所定方向に間隔を空けて複数実装され、各前記電子部品(60)における前記第1放熱部材(20)と厚さ方向に重なる領域の前記所定方向(D)の幅(W2)は、当該電子部品(60)の前記所定方向(D)の幅(W1)の1/2以上であることを特徴とする。
【0025】
第10の態様では、プリント基板(10)を上方に向け、第1放熱部材(20)を他の部材又は台の上に載置した状態で、電子部品(60)を、その1/2以上の幅の領域で第1放熱部材(20)によって下方から支持できるので、プリント基板(10)の撓みにより電子部品(60)と導電路(11)とを接続する接続部(13)が損傷するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態1に係る放熱部材の固定構造が適用された回路構成体を示す分解斜視図である。
図2図2は、絶縁シート、放熱部材、取付板、及びヒートシンクを組み付けた状態における図1相当図である。
図3図3は、実施形態1に係る放熱部材の固定構造が適用された回路構成体の斜視図である。
図4図4は、図3のIV-IV線における断面図である。
図5図5は、図3のV-V線における断面図である。
図6図6は、実施形態1の変形例の図5相当図である。
図7図7は、実施形態2の図1相当図である。
図8図8は、実施形態2の図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0028】
(実施形態1)
図1~5は、本発明の実施形態1に係る放熱部材の固定構造が適用された回路構成体(1)を示す。この回路構成体(1)は、プリント基板(10)と、第1放熱部材としての放熱部材(20)と、絶縁シート(30)と、第2放熱部材としての取付板(40)と、ヒートシンク(50)とを備える。
【0029】
プリント基板(10)は、矩形状に形成されている。プリント基板(10)の一方の面には、発熱する3つの電子部品としてのリアクタ(60)が所定方向(図1における横方向)(D)に略等しい間隔を空けて実装されている。プリント基板(10)の両面には、導電路(11)がプリントによって形成されている。プリント基板(10)における前記リアクタ実装領域に前記所定方向(D)に挟まれた領域には、導電路(11)が形成されていない導電路非形成領域(10a)が設けられている。また、プリント基板(10)のこれら導電路非形成領域(10a)には、取付孔(12)が貫通形成されている。プリント基板(10)には、リード挿通孔(図示せず)が貫通形成されている。リアクタ(60)のリード線(図示せず)は、前記リード挿通孔(図示せず)に挿通され、図5に示すように、リアクタ(60)の実装面の反対側の面の導電路(11)に半田(13)によって接続されている。なお、リアクタ(60)は、半田付けに限らず、プレスフィットコネクタによって導電路(11)に電気的に接続してもよい。3つのリアクタ(60)には、交流電源(図示せず)から交流電流が入力される。3つのリアクタ(60)は、アクティブフィルタの一部を構成する。
【0030】
放熱部材(20)は、長板状の長板部(21)を有している。長板部(21)の一方の面における長手方向両端部近傍には、幅方向全体に亘って断面コ字状の凹溝部(22)が形成されている。各凹溝部(22)の底面には、第1挿入孔としての放熱部材側挿入孔(23)が貫通形成されている。また、長板部(21)の凹溝部(22)形成面における両凹溝部(22)よりも若干長手方向内側には、幅方向全体に亘って凸条部(24)が一体に突設されている。各凸条部(24)の先端面における長板部(21)の幅方向中央部には、締結孔(25)が形成されている。放熱部材(20)は、アルミニウム、銅等の金属、窒化アルミニウム等のセラミックス、又はグラファイトからなる。放熱部材(20)の材料としてアルミニウムを採用した場合には、加工、及び材料の入手が容易になり、放熱部材(20)をさびにくくするとともに軽量化できる。放熱部材(20)の材料として銅を採用した場合には、加工、及び材料の入手が容易になる。また、銅は熱伝導率が高いので、効率のよい放熱が可能になる。放熱部材(20)は、鋳造、押出成形、又は切削加工によって一体に製造される。放熱部材(20)を一体物としたので、複数の部材で構成する場合に比べ、部材費及び加工費を削減できる。また、凸条部(24)を長板部(21)に溶接する場合に比べ、凸条部(24)の強度を高めることができる。
【0031】
各リアクタ(60)における放熱部材(20)と厚さ方向に重なる領域の前記所定方向(D)の幅(W1)は、リアクタ(60)の前記所定方向(D)の幅(W2)の1/2になっている。
【0032】
絶縁シート(30)は、長方形状に形成されている。絶縁シート(30)には、短手方向に長い長方形状の2つの貫通孔(31)が長手方向に間隔を空けて形成されている。絶縁シート(30)は、シリコーン系樹脂、又はアクリル系樹脂からなる。
【0033】
絶縁シート(30)は、プリント基板(10)と放熱部材(20)との間に設けられている。絶縁シート(30)は、プリント基板(10)におけるリアクタ(60)の実装面の反対側の面に対向している。絶縁シート(30)には、プリント基板(10)の導電路(11)のうち、リアクタ(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている部分(11a)が接触している。ここで、他の電子部品には、ジャンパ及びスルーホールは含まれず、抵抗器、コンデンサ、及びコイル等の受動部品、及びトランジスタ等の能動部品が含まれる。つまり、絶縁シート(30)が当接する導電路(11)とリアクタ(60)との間に、抵抗器、コンデンサ、及びコイル等の受動部品、及びトランジスタ等の能動部品は介在させないが、ジャンパ及びスルーホールは介在させてもよい。3つのリアクタ(60)には、交流電源(図示せず)から共通の相の交流電流が入力され、3つのリアクタ(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている部分(11a)が共通となるようにしてもよい。また、3つのリアクタ(60)には、交流電源(図示せず)から互いに異なる相の交流電流が入力され、3つのリアクタ(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている3つの部分(11a)が互いに分離しているようにしてもよい。
【0034】
放熱部材(20)は、本発明の実施形態1に係る固定構造が適用されて、プリント基板(10)に固定されている。放熱部材(20)の両凸条部(24)が、絶縁シート(30)の両貫通孔(31)を貫通している。両凸条部(24)は、その先端を、プリント基板(10)におけるリアクタ(60)の実装面の反対側の面に当接させている。プリント基板(10)における放熱部材(20)の凸条部(24)の当接領域は、導電路非形成領域(10a)である。また、プリント基板(10)の取付孔(12)及び放熱部材(20)の締結孔(25)には、締結部材としての第1ビス(61)が挿入されてプリント基板(10)及び放熱部材(20)を締結している。絶縁シート(30)は、放熱部材(20)に接着剤により接着されている。
【0035】
絶縁シート(30)の外周部は、全周に亘って放熱部材(20)の外周端よりも外側に張り出している。また、絶縁シート(30)は、厚さ方向に圧縮された状態で、プリント基板(10)及び放熱部材(20)に当接している。
【0036】
取付板(40)は、矩形状に形成されている。取付板(40)には、1対の第2挿入孔としての第1の取付板側挿入孔(41)が、所定の第1方向(図1における横方向)に間隔を空けて貫通形成されている。また、取付板(40)には、2対の第2の取付板側挿入孔(42)が、前記第1方向に間隔を空けて貫通形成されている。各対を構成する2つの第2の取付板側挿入孔(42)は、前記第1方向に対して直角な第2方向に間隔を空けて貫通形成されている。2対の第2の取付板側挿入孔(42)の間には、矩形状の第1開口部(43)が形成されている。取付板(40)は、鉄で構成されているが、他の金属で構成してもよい。
【0037】
取付板(40)の第1開口部(43)の形成されていない領域が、放熱部材(20)における凸条部(24)形成面の反対側の面(プリント基板(10)側とは反対の面)に当接している。
【0038】
ヒートシンク(50)は、矩形板状の主板部(51)と、当該主板部(51)の一方の面に垂直に突設された互いに平行な複数の突出板部(52)とを有している。主板部(51)の他方の面(突出板部(52)の設けられていない面)には、1対の第1のヒートシンク側挿入孔(53)と、2対の第2のヒートシンク側挿入孔(54)とが、第1の取付板側挿入孔(41)及び第2の取付板側挿入孔(42)に対応して形成されている。ヒートシンク(50)は、鉄で構成されているが、他の金属で構成してもよい。
【0039】
放熱部材(20)の両放熱部材側挿入孔(23)、取付板(40)の第1の取付板側挿入孔(41)及びヒートシンク(50)の第1のヒートシンク側挿入孔(53)には、挿入部材としての第2ビス(62)が挿入されて放熱部材(20)、取付板(40)及びヒートシンク(50)を締結している。この状態で、前記第1方向は、前記所定方向(D)と一致している。
【0040】
ヒートシンク(50)の主板部(51)における突出板部(52)突設面の反対側の面が、取付板(40)の反放熱部材(20)側の面に当接している。取付板(40)の第2の取付板側挿入孔(42)及びヒートシンク(50)の第2のヒートシンク側挿入孔(54)には、第3ビス(63)が挿入されて取付板(40)及びヒートシンク(50)を締結している。
【0041】
ヒートシンク(50)の主板部(51)における突出板部(52)突設面の反対側の面の一部が、取付板(40)の第1開口部(43)から露出している。
【0042】
上述のように構成された回路構成体(1)では、リアクタ(60)で発生した熱が、導電路(11)のうち、リアクタ(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている部分(11a)を介して絶縁シート(30)に伝導する。そして、絶縁シート(30)に伝導した熱を、取付板(40)を介してヒートシンク(50)から放散させることができる。
【0043】
したがって、本実施形態1によれば、回路構成体(1)を組み付ける際、放熱部材(20)の2つの凸条部(24)を、絶縁シート(30)の2つの貫通孔(31)に挿入するだけで、絶縁シート(30)を放熱部材(20)に対して絶縁シート(30)の表面に沿う方向に位置決めできる。したがって、位置決め作業が容易になるとともに、放熱部材(20)に対する絶縁シート(30)の位置のばらつきが抑制される。
【0044】
また、放熱部材(20)の凸条部(24)の先端を、プリント基板(10)の一方の面に当接させることにより、放熱部材(20)をプリント基板(10)に対してプリント基板(10)の厚さ方向に位置決めできる。したがって、位置決め作業が容易になるとともに、プリント基板(10)に対する放熱部材(20)の位置のばらつきが抑制される。
【0045】
また、放熱部材(20)の凸条部(24)の先端を、プリント基板(10)の一方の面に当接させ、かつプリント基板(10)の取付孔(12)及び放熱部材(20)の締結孔(25)を対応させた状態で、これら取付孔(12)及び締結孔(25)に第1ビス(61)を挿入することにより、プリント基板(10)及び放熱部材(20)を締結により容易に互いに固定できる。
【0046】
また、プリント基板(10)における放熱部材(20)の凸条部(24)の当接領域は、導電路非形成領域(10a)である。つまり、プリント基板(10)における放熱部材(20)の凸条部(24)の当接領域には、導電路(11)が形成されていない。したがって、プリント基板(10)の導電路(11)のうち、プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼす電流が流れる部分と、放熱部材(20)との絶縁を確保できる。
【0047】
なお、プリント基板(10)における放熱部材(20)の凸条部(24)の当接領域に、導電路(11)のうち、プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼさない電流が流れる部分が形成されていてもよい。プリント基板(10)における放熱部材(20)の凸条部(24)の当接領域に、導電路(11)のうち、プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼす電流が流れる部分が形成されていなければ、当該部分と、放熱部材(20)との絶縁を確保できる。
【0048】
また、絶縁シート(30)の外周部を、全周に亘って放熱部材(20)の外周端よりも外側に張り出すように形成しているので、張り出すように形成しない場合に比べ、プリント基板(10)の導電路(11)と、放熱部材(20)の外周端との絶縁をより確実に確保できる。
【0049】
また、絶縁シート(30)を、厚さ方向に圧縮された状態で、プリント基板(10)及び放熱部材(20)に当接させているので、絶縁シート(30)を、その復元力によりプリント基板(10)及び放熱部材(20)に密着させることができる。したがって、プリント基板(10)の熱を絶縁シート(30)を介して放熱部材(20)に確実に伝導させることができる。
【0050】
また、絶縁シート(30)を放熱部材(20)に接着剤により固定しているので、絶縁シート(30)の剥がれによりプリント基板(10)の導電路(11)と放熱部材(20)との間に電流が流れるのを防止できる。
【0051】
また、放熱部材(20)のプリント基板(10)側とは反対の面に、取付板(40)が当接しているので、プリント基板(10)の熱を放熱部材(20)だけでなく取付板(40)にも伝導させて放散させることができる。したがって、プリント基板(10)の熱をより効率良く放散できる。
【0052】
また、放熱部材(20)のプリント基板(10)側とは反対の面に、取付板(40)を当接させ、かつ放熱部材(20)の放熱部材側挿入孔(23)、取付板(40)の第1の取付板側挿入孔(41)、及びヒートシンク(50)の第1のヒートシンク側挿入口(53)を対応させた状態で、これら放熱部材側挿入孔(23)、第1の取付板側挿入孔(41)、及び第1のヒートシンク側挿入口(53)に第2ビス(62)を挿入することにより、放熱部材(20)、取付板(40)及びヒートシンク(50)を締結により容易に互いに固定できる。
【0053】
また、ヒートシンク(50)の主板部(51)を取付板(40)の反放熱部材(20)側の面に当接させ、かつ取付板(40)の第2の取付板側挿入孔(42)及びヒートシンク(50)の第2のヒートシンク側挿入孔(54)を対応させた状態で、これら第2の取付板側挿入孔(42)及び第2のヒートシンク側挿入孔(54)に第3ビス(63)を挿入することにより、取付板(40)及びヒートシンク(50)を締結により容易に互いに固定できる。
【0054】
また、各リアクタ(60)における放熱部材(20)と厚さ方向に重なる領域の前記所定方向(D)の幅(W1)は、リアクタ(60)の前記所定方向(D)の幅(W2)の1/2になっているので、プリント基板(10)のリアクタ(60)実装面を上方に向け、回路構成体(1)を他の部材又は台の上に載置した状態で、リアクタ(60)を、その1/2以上の幅の領域で放熱部材(20)によって下方から支持できる。したがって、プリント基板(10)の撓みによりリアクタ(60)と導電路(11)とを接続する接続部としての半田(13)が損傷するのを抑制できる。
【0055】
(実施形態1の変形例)
図6は、実施形態1の変形例の図5相当図である。本変形例では、プリント基板(10)にスルーホール(10b)が形成されている。また、リアクタ(60)の端子(図示せず)が、リアクタ(60)の実装面の導電路(11)に半田(13)によって接続されている。リアクタ(60)の実装面の導電路(11)と、リアクタ(60)の実装面の反対側の面の導電路(11)とが、スルーホール(10b)内壁の銅メッキを介して接続されている。
【0056】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0057】
(実施形態2)
図7及び図8は、本発明の実施形態2に係る放熱部材の固定構造が適用された回路構成体(1)を示す。本実施形態2では、取付板(40)に、第1方向に長い長方形状の第2開口部(44)が、第1開口部(43)との間に間隔を空けて形成されている。また、取付板(40)に第1の取付板側挿入孔(41)が形成されていない。そして、第2開口部(44)から露出するヒートシンク(50)の主板部(51)が、放熱部材(20)における凸条部(24)形成面の反対側の面(プリント基板(10)側とは反対の面に)に当接している。放熱部材(20)は、第2開口部(44)の内側に位置している。
【0058】
本実施形態2では、ヒートシンク(50)が、第2放熱部材を構成する。
【0059】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
なお、上記実施形態1,2及び実施形態1の変形例では、電子部品としてリアクタ(60)を設けたが、リアクタ(60)に代えて、リアクタ以外の発熱する電子部品を設けてもよい。また、発熱する電子部品の個数は、3つに限られない。また、所定方向(D)に間隔を空けて複数実装する電子部品の種類は、互いに異なっていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態1,2及び実施形態1の変形例では、放熱部材(20)に凸条部(24)を2つ形成したが、1つ、又は3つ以上形成してもよい。また、2つの凸条部(24)に代えて、他の形状の凸部を形成してもよい。凸部の断面が円形の場合には、凸部を複数形成することにより、放熱部材(20)に対して絶縁シート(30)が回転するのを規制できる。
【0062】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示は、導電路がプリントによって形成されたプリント基板に放熱部材を固定した固定構造として有用である。
【符号の説明】
【0064】
10 プリント基板
11 導電路
11a 部分
12 取付孔
13 半田(接続部)
20 放熱部材(第1放熱部材)
23 放熱部材側挿入孔(第1挿入孔)
24 凸条部(凸部)
25 締結孔
30 絶縁シート
31 貫通孔
40 取付板(第2放熱部材)
41 第1の取付板側挿入孔(第2挿入孔)
50 ヒートシンク(第2放熱部材)
53 第1のヒートシンク側挿入孔(第2挿入孔)
60 リアクタ(電子部品)
61 第1ビス(締結部材)
62 第2ビス(挿入部材)
D 所定方向
W1、W2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電路がプリントによって形成されたプリント基板に放熱部材を固定した固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導電路がプリントによって形成されたプリント基板に放熱部材を固定した固定構造が開示されている。この固定構造では、プリント基板と放熱部材との間に、絶縁シートを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6115464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、放熱部材に対する絶縁シートの位置決め方法は何ら開示されていない。仮に、放熱部材に対して絶縁シートを目視で位置決めすると、放熱部材に対する絶縁シートの位置にばらつきが生じる。
【0005】
本開示の目的は、放熱部材に対する絶縁シートの位置のばらつきを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、導電路(11)がプリントによって形成されたプリント基板(10)に第1放熱部材(20)を固定した固定構造であって、前記プリント基板(10)と前記第1放熱部材(20)との間には、絶縁シート(30)が設けられ、前記第1放熱部材(20)には、凸部(24)が形成され、前記絶縁シート(30)には、貫通孔(31)が形成され、前記第1放熱部材(20)の凸部(24)が、前記絶縁シート(30)の貫通孔(31)を貫通し、その先端を前記プリント基板(10)に当接させていることを特徴とする。
【0007】
第1の態様では、第1放熱部材(20)の凸部(24)を、絶縁シート(30)の貫通孔(31)に挿入することにより、絶縁シート(30)を第1放熱部材(20)に対して絶縁シート(30)の表面に沿う方向に位置決めできる。したがって、第1放熱部材(20)に対する絶縁シート(30)の位置のばらつきを抑制できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記プリント基板(10)には、取付孔(12)が貫通形成され、前記第1放熱部材(20)の凸部(24)の先端面には、締結孔(25)が形成され、前記プリント基板(10)の取付孔(12)及び前記第1放熱部材(20)の締結孔(25)には、締結部材(61)が挿入されて前記プリント基板(10)及び前記第1放熱部材(20)を締結していることを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、プリント基板(10)及び第1放熱部材(20)を締結によって容易に互いに固定できる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記プリント基板(10)における前記第1放熱部材(20)の凸部(24)の当接領域には、前記導電路(11)のうち、当該プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼす電流が流れる部分が形成されていないことを特徴とする。
【0011】
第3の態様では、プリント基板(10)の導電路(11)のうち、プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼす電流が流れる部分と、第1放熱部材(20)との絶縁を確保できる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記プリント基板(10)には、前記導電路(11)に電気的に接続され、発熱する電子部品(60)が実装され、前記導電路(11)のうち、前記電子部品(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている部分(11a)が、前記絶縁シート(30)と接触することを特徴とする。
【0013】
第4の態様では、電子部品(60)の熱を導電路(11)を介して絶縁シート(30)に伝導させることができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記絶縁シート(30)の外周部が、前記第1放熱部材(20)の外周端よりも外側に張り出していることを特徴とする。
【0015】
第5の態様では、プリント基板(10)の導電路(11)と、第1放熱部材(20)の外周端との絶縁をより確実に確保できる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記絶縁シート(30)は、厚さ方向に圧縮された状態で、前記プリント基板(10)及び前記第1放熱部材(20)に当接していることを特徴とする。
【0017】
第6の態様では、絶縁シート(30)が、その復元力によりプリント基板(10)及び第1放熱部材(20)に密着するので、プリント基板(10)の熱を絶縁シート(30)を介して第1放熱部材(20)に確実に伝導させることができる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記絶縁シート(30)は、前記第1放熱部材(20)に接着剤により接着されていることを特徴とする。
【0019】
第7の態様では、絶縁シート(30)を第1放熱部材(20)に接着剤により固定するので、絶縁シート(30)の剥がれによりプリント基板(10)の導電路(11)と第1放熱部材(20)との間に電流が流れるのを防止できる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1~第7のいずれか1つの態様において、前記第1放熱部材(20)のプリント基板(10)側とは反対の面には、第2放熱部材(40,50)が当接していることを特徴とする。
【0021】
第8の態様では、プリント基板(10)の熱を第1放熱部材(20)だけでなく第2放熱部材(40,50)にも伝導させて放散させることができるので、プリント基板(10)の熱をより効率良く放散できる。
【0022】
本開示の第9の態様は、第8の態様において、前記第1放熱部材(20)には、第1挿入孔(23)が形成され、前記第2放熱部材(40,50)には、第2挿入孔(41,53)が形成され、前記第1放熱部材(20)の第1挿入孔(23)及び前記第2放熱部材(40,50)の第2挿入孔(41,53)には、挿入部材(62)が挿入されて前記第1放熱部材(20)及び第2放熱部材(40,50)を締結していることを特徴とする。
【0023】
第9の態様では、第1放熱部材(20)及び第2放熱部材(40,50)を締結によって容易に互いに固定できる。
【0024】
本開示の第10の態様は、第4の態様において、前記プリント基板(10)には、前記電子部品(60)が所定方向に間隔を空けて複数実装され、各前記電子部品(60)における前記第1放熱部材(20)と厚さ方向に重なる領域の前記所定方向(D)の幅(W2)は、当該電子部品(60)の前記所定方向(D)の幅(W1)の1/2以上であることを特徴とする。
【0025】
第10の態様では、プリント基板(10)を上方に向け、第1放熱部材(20)を他の部材又は台の上に載置した状態で、電子部品(60)を、その1/2以上の幅の領域で第1放熱部材(20)によって下方から支持できるので、プリント基板(10)の撓みにより電子部品(60)と導電路(11)とを接続する接続部(13)が損傷するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態1に係る放熱部材の固定構造が適用された回路構成体を示す分解斜視図である。
図2図2は、絶縁シート、放熱部材、取付板、及びヒートシンクを組み付けた状態における図1相当図である。
図3図3は、実施形態1に係る放熱部材の固定構造が適用された回路構成体の斜視図である。
図4図4は、図3のIV-IV線における断面図である。
図5図5は、図3のV-V線における断面図である。
図6図6は、実施形態1の変形例の図5相当図である。
図7図7は、実施形態2の図1相当図である。
図8図8は、実施形態2の図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0028】
(実施形態1)
図1~5は、本発明の実施形態1に係る放熱部材の固定構造が適用された回路構成体(1)を示す。この回路構成体(1)は、プリント基板(10)と、第1放熱部材としての放熱部材(20)と、絶縁シート(30)と、第2放熱部材としての取付板(40)と、ヒートシンク(50)とを備える。
【0029】
プリント基板(10)は、矩形状に形成されている。プリント基板(10)の一方の面には、発熱する3つの電子部品としてのリアクタ(60)が所定方向(図1における横方向)(D)に略等しい間隔を空けて実装されている。プリント基板(10)の両面には、導電路(11)がプリントによって形成されている。プリント基板(10)における前記リアクタ実装領域に前記所定方向(D)に挟まれた領域には、導電路(11)が形成されていない導電路非形成領域(10a)が設けられている。また、プリント基板(10)のこれら導電路非形成領域(10a)には、取付孔(12)が貫通形成されている。プリント基板(10)には、リード挿通孔(図示せず)が貫通形成されている。リアクタ(60)のリード線(図示せず)は、前記リード挿通孔(図示せず)に挿通され、図5に示すように、リアクタ(60)の実装面の反対側の面の導電路(11)に半田(13)によって接続されている。なお、リアクタ(60)は、半田付けに限らず、プレスフィットコネクタによって導電路(11)に電気的に接続してもよい。3つのリアクタ(60)には、交流電源(図示せず)から交流電流が入力される。3つのリアクタ(60)は、アクティブフィルタの一部を構成する。
【0030】
放熱部材(20)は、長板状の長板部(21)を有している。長板部(21)の一方の面における長手方向両端部近傍には、幅方向全体に亘って断面コ字状の凹溝部(22)が形成されている。各凹溝部(22)の底面には、第1挿入孔としての放熱部材側挿入孔(23)が貫通形成されている。また、長板部(21)の凹溝部(22)形成面における両凹溝部(22)よりも若干長手方向内側には、幅方向全体に亘って凸条部(24)が一体に突設されている。各凸条部(24)の先端面における長板部(21)の幅方向中央部には、締結孔(25)が形成されている。放熱部材(20)は、アルミニウム、銅等の金属、窒化アルミニウム等のセラミックス、又はグラファイトからなる。放熱部材(20)の材料としてアルミニウムを採用した場合には、加工、及び材料の入手が容易になり、放熱部材(20)をさびにくくするとともに軽量化できる。放熱部材(20)の材料として銅を採用した場合には、加工、及び材料の入手が容易になる。また、銅は熱伝導率が高いので、効率のよい放熱が可能になる。放熱部材(20)は、鋳造、押出成形、又は切削加工によって一体に製造される。放熱部材(20)を一体物としたので、複数の部材で構成する場合に比べ、部材費及び加工費を削減できる。また、凸条部(24)を長板部(21)に溶接する場合に比べ、凸条部(24)の強度を高めることができる。
【0031】
各リアクタ(60)における放熱部材(20)と厚さ方向に重なる領域の前記所定方向(D)の幅(W1)は、リアクタ(60)の前記所定方向(D)の幅(W2)の1/2になっている。
【0032】
絶縁シート(30)は、長方形状に形成されている。絶縁シート(30)には、短手方向に長い長方形状の2つの貫通孔(31)が長手方向に間隔を空けて形成されている。絶縁シート(30)は、シリコーン系樹脂、又はアクリル系樹脂からなる。
【0033】
絶縁シート(30)は、プリント基板(10)と放熱部材(20)との間に設けられている。絶縁シート(30)は、プリント基板(10)におけるリアクタ(60)の実装面の反対側の面に対向している。絶縁シート(30)には、プリント基板(10)の導電路(11)のうち、リアクタ(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている部分(11a)が接触している。ここで、他の電子部品には、ジャンパ及びスルーホールは含まれず、抵抗器、コンデンサ、及びコイル等の受動部品、及びトランジスタ等の能動部品が含まれる。つまり、絶縁シート(30)が当接する導電路(11)とリアクタ(60)との間に、抵抗器、コンデンサ、及びコイル等の受動部品、及びトランジスタ等の能動部品は介在させないが、ジャンパ及びスルーホールは介在させてもよい。3つのリアクタ(60)には、交流電源(図示せず)から共通の相の交流電流が入力され、3つのリアクタ(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている部分(11a)が共通となるようにしてもよい。また、3つのリアクタ(60)には、交流電源(図示せず)から互いに異なる相の交流電流が入力され、3つのリアクタ(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている3つの部分(11a)が互いに分離しているようにしてもよい。
【0034】
放熱部材(20)は、本発明の実施形態1に係る固定構造が適用されて、プリント基板(10)に固定されている。放熱部材(20)の両凸条部(24)が、絶縁シート(30)の両貫通孔(31)を貫通している。両凸条部(24)は、その先端を、プリント基板(10)におけるリアクタ(60)の実装面の反対側の面に当接させている。プリント基板(10)における放熱部材(20)の凸条部(24)の当接領域は、導電路非形成領域(10a)である。また、プリント基板(10)の取付孔(12)及び放熱部材(20)の締結孔(25)には、締結部材としての第1ビス(61)が挿入されてプリント基板(10)及び放熱部材(20)を締結している。絶縁シート(30)は、放熱部材(20)に接着剤により接着されている。
【0035】
絶縁シート(30)の外周部は、全周に亘って放熱部材(20)の外周端よりも外側に張り出している。また、絶縁シート(30)は、厚さ方向に圧縮された状態で、プリント基板(10)及び放熱部材(20)に当接している。
【0036】
取付板(40)は、矩形状に形成されている。取付板(40)には、1対の第2挿入孔としての第1の取付板側挿入孔(41)が、所定の第1方向(図1における横方向)に間隔を空けて貫通形成されている。また、取付板(40)には、2対の第2の取付板側挿入孔(42)が、前記第1方向に間隔を空けて貫通形成されている。各対を構成する2つの第2の取付板側挿入孔(42)は、前記第1方向に対して直角な第2方向に間隔を空けて貫通形成されている。2対の第2の取付板側挿入孔(42)の間には、矩形状の第1開口部(43)が形成されている。取付板(40)は、鉄で構成されているが、他の金属で構成してもよい。
【0037】
取付板(40)の第1開口部(43)の形成されていない領域が、放熱部材(20)における凸条部(24)形成面の反対側の面(プリント基板(10)側とは反対の面)に当接している。
【0038】
ヒートシンク(50)は、矩形板状の主板部(51)と、当該主板部(51)の一方の面に垂直に突設された互いに平行な複数の突出板部(52)とを有している。主板部(51)の他方の面(突出板部(52)の設けられていない面)には、1対の第1のヒートシンク側挿入孔(53)と、2対の第2のヒートシンク側挿入孔(54)とが、第1の取付板側挿入孔(41)及び第2の取付板側挿入孔(42)に対応して形成されている。ヒートシンク(50)は、鉄で構成されているが、他の金属で構成してもよい。
【0039】
放熱部材(20)の両放熱部材側挿入孔(23)、取付板(40)の第1の取付板側挿入孔(41)及びヒートシンク(50)の第1のヒートシンク側挿入孔(53)には、挿入部材としての第2ビス(62)が挿入されて放熱部材(20)、取付板(40)及びヒートシンク(50)を締結している。この状態で、前記第1方向は、前記所定方向(D)と一致している。
【0040】
ヒートシンク(50)の主板部(51)における突出板部(52)突設面の反対側の面が、取付板(40)の反放熱部材(20)側の面に当接している。取付板(40)の第2の取付板側挿入孔(42)及びヒートシンク(50)の第2のヒートシンク側挿入孔(54)には、第3ビス(63)が挿入されて取付板(40)及びヒートシンク(50)を締結している。
【0041】
ヒートシンク(50)の主板部(51)における突出板部(52)突設面の反対側の面の一部が、取付板(40)の第1開口部(43)から露出している。
【0042】
上述のように構成された回路構成体(1)では、リアクタ(60)で発生した熱が、導電路(11)のうち、リアクタ(60)と他の電子部品を介さずに電気的に接続されている部分(11a)を介して絶縁シート(30)に伝導する。そして、絶縁シート(30)に伝導した熱を、取付板(40)を介してヒートシンク(50)から放散させることができる。
【0043】
したがって、本実施形態1によれば、回路構成体(1)を組み付ける際、放熱部材(20)の2つの凸条部(24)を、絶縁シート(30)の2つの貫通孔(31)に挿入するだけで、絶縁シート(30)を放熱部材(20)に対して絶縁シート(30)の表面に沿う方向に位置決めできる。したがって、位置決め作業が容易になるとともに、放熱部材(20)に対する絶縁シート(30)の位置のばらつきが抑制される。
【0044】
また、放熱部材(20)の凸条部(24)の先端を、プリント基板(10)の一方の面に当接させることにより、放熱部材(20)をプリント基板(10)に対してプリント基板(10)の厚さ方向に位置決めできる。したがって、位置決め作業が容易になるとともに、プリント基板(10)に対する放熱部材(20)の位置のばらつきが抑制される。
【0045】
また、放熱部材(20)の凸条部(24)の先端を、プリント基板(10)の一方の面に当接させ、かつプリント基板(10)の取付孔(12)及び放熱部材(20)の締結孔(25)を対応させた状態で、これら取付孔(12)及び締結孔(25)に第1ビス(61)を挿入することにより、プリント基板(10)及び放熱部材(20)を締結により容易に互いに固定できる。
【0046】
また、プリント基板(10)における放熱部材(20)の凸条部(24)の当接領域は、導電路非形成領域(10a)である。つまり、プリント基板(10)における放熱部材(20)の凸条部(24)の当接領域には、導電路(11)が形成されていない。したがって、プリント基板(10)の導電路(11)のうち、プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼす電流が流れる部分と、放熱部材(20)との絶縁を確保できる。
【0047】
なお、プリント基板(10)における放熱部材(20)の凸条部(24)の当接領域に、導電路(11)のうち、プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼさない電流が流れる部分が形成されていてもよい。プリント基板(10)における放熱部材(20)の凸条部(24)の当接領域に、導電路(11)のうち、プリント基板(10)の電子回路としての機能に影響を及ぼす電流が流れる部分が形成されていなければ、当該部分と、放熱部材(20)との絶縁を確保できる。
【0048】
また、絶縁シート(30)の外周部を、全周に亘って放熱部材(20)の外周端よりも外側に張り出すように形成しているので、張り出すように形成しない場合に比べ、プリント基板(10)の導電路(11)と、放熱部材(20)の外周端との絶縁をより確実に確保できる。
【0049】
また、絶縁シート(30)を、厚さ方向に圧縮された状態で、プリント基板(10)及び放熱部材(20)に当接させているので、絶縁シート(30)を、その復元力によりプリント基板(10)及び放熱部材(20)に密着させることができる。したがって、プリント基板(10)の熱を絶縁シート(30)を介して放熱部材(20)に確実に伝導させることができる。
【0050】
また、絶縁シート(30)を放熱部材(20)に接着剤により固定しているので、絶縁シート(30)の剥がれによりプリント基板(10)の導電路(11)と放熱部材(20)との間に電流が流れるのを防止できる。
【0051】
また、放熱部材(20)のプリント基板(10)側とは反対の面に、取付板(40)が当接しているので、プリント基板(10)の熱を放熱部材(20)だけでなく取付板(40)にも伝導させて放散させることができる。したがって、プリント基板(10)の熱をより効率良く放散できる。
【0052】
また、放熱部材(20)のプリント基板(10)側とは反対の面に、取付板(40)を当接させ、かつ放熱部材(20)の放熱部材側挿入孔(23)、取付板(40)の第1の取付板側挿入孔(41)、及びヒートシンク(50)の第1のヒートシンク側挿入口(53)を対応させた状態で、これら放熱部材側挿入孔(23)、第1の取付板側挿入孔(41)、及び第1のヒートシンク側挿入口(53)に第2ビス(62)を挿入することにより、放熱部材(20)、取付板(40)及びヒートシンク(50)を締結により容易に互いに固定できる。
【0053】
また、ヒートシンク(50)の主板部(51)を取付板(40)の反放熱部材(20)側の面に当接させ、かつ取付板(40)の第2の取付板側挿入孔(42)及びヒートシンク(50)の第2のヒートシンク側挿入孔(54)を対応させた状態で、これら第2の取付板側挿入孔(42)及び第2のヒートシンク側挿入孔(54)に第3ビス(63)を挿入することにより、取付板(40)及びヒートシンク(50)を締結により容易に互いに固定できる。
【0054】
また、各リアクタ(60)における放熱部材(20)と厚さ方向に重なる領域の前記所定方向(D)の幅(W1)は、リアクタ(60)の前記所定方向(D)の幅(W2)の1/2になっているので、プリント基板(10)のリアクタ(60)実装面を上方に向け、回路構成体(1)を他の部材又は台の上に載置した状態で、リアクタ(60)を、その1/2以上の幅の領域で放熱部材(20)によって下方から支持できる。したがって、プリント基板(10)の撓みによりリアクタ(60)と導電路(11)とを接続する接続部としての半田(13)が損傷するのを抑制できる。
【0055】
(実施形態1の変形例)
図6は、実施形態1の変形例の図5相当図である。本変形例では、プリント基板(10)にスルーホール(10b)が形成されている。また、リアクタ(60)の端子(図示せず)が、リアクタ(60)の実装面の導電路(11)に半田(13)によって接続されている。リアクタ(60)の実装面の導電路(11)と、リアクタ(60)の実装面の反対側の面の導電路(11)とが、スルーホール(10b)内壁の銅メッキを介して接続されている。
【0056】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0057】
(実施形態2)
図7及び図8は、本発明の実施形態2に係る放熱部材の固定構造が適用された回路構成体(1)を示す。本実施形態2では、取付板(40)に、第1方向に長い長方形状の第2開口部(44)が、第1開口部(43)との間に間隔を空けて形成されている。また、取付板(40)に第1の取付板側挿入孔(41)が形成されていない。そして、第2開口部(44)から露出するヒートシンク(50)の主板部(51)が、放熱部材(20)における凸条部(24)形成面の反対側の面(プリント基板(10)側とは反対の面に)に当接している。放熱部材(20)は、第2開口部(44)の内側に位置している。
【0058】
本実施形態2では、ヒートシンク(50)が、第2放熱部材を構成する。
【0059】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
なお、上記実施形態1,2及び実施形態1の変形例では、電子部品としてリアクタ(60)を設けたが、リアクタ(60)に代えて、リアクタ以外の発熱する電子部品を設けてもよい。また、発熱する電子部品の個数は、3つに限られない。また、所定方向(D)に間隔を空けて複数実装する電子部品の種類は、互いに異なっていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態1,2及び実施形態1の変形例では、放熱部材(20)に凸条部(24)を2つ形成したが、1つ、又は3つ以上形成してもよい。また、2つの凸条部(24)に代えて、他の形状の凸部を形成してもよい。凸部の断面が円形の場合には、凸部を複数形成することにより、放熱部材(20)に対して絶縁シート(30)が回転するのを規制できる。
【0062】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示は、導電路がプリントによって形成されたプリント基板に放熱部材を固定した固定構造として有用である。
【符号の説明】
【0064】
10 プリント基板
11 導電路
11a 部分
12 取付孔
13 半田(接続部)
20 放熱部材(第1放熱部材)
23 放熱部材側挿入孔(第1挿入孔)
24 凸条部(凸部)
25 締結孔
30 絶縁シート
31 貫通孔
40 取付板(第2放熱部材)
41 第1の取付板側挿入孔(第2挿入孔)
50 ヒートシンク(第2放熱部材)
53 第1のヒートシンク側挿入孔(第2挿入孔)
60 リアクタ(電子部品)
61 第1ビス(締結部材)
62 第2ビス(挿入部材)
D 所定方向
W1、W2 幅