(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149924
(43)【公開日】2024-10-22
(54)【発明の名称】廃棄物処理装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/45 20220101AFI20241015BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B09B3/45 ZAB
B09B5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063112
(22)【出願日】2023-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】712001243
【氏名又は名称】辻坂 宏
(72)【発明者】
【氏名】辻坂英雄
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004AA04
4D004AA10
4D004AB03
4D004BA03
4D004CA12
4D004CA15
4D004CA22
4D004CA47
4D004CB04
4D004CB28
4D004CB42
4D004CC03
(57)【要約】
【課題】蒸気で処理するごみ処理装置において、処理容器の攪拌用のシャフトの回転が廃棄物によって止まるのを防ぐのと、処理物の効率的な固液分離を実現して実用性を高める。
【解決手段】
処理容器の攪拌翼と処理容器の内周の間の隙間を従来に比し大きくする、攪拌のシャフトの軸心を処理容器の軸心より上方にずらす、処理容器の上部に処理物の投入口を2つ以上設ける等を採用することで攪拌用のシャフトの回転を妨げられにくくする。前記の構造に伴い生ずる攪拌された廃棄物と撹拌されなかった廃棄物は、取り出し口をそれぞれ設けて分けて回収する。処理容器の底部あるいは下方に排水口を設ける。主に排気管と排水管に仕切りとろ材を設けろ過する。攪拌用のシャフトを水蒸気処理工程のみならず廃棄や排水の際にも用いて、効率よく蒸気や水分を除去する。処理に使う蒸気をろ材の洗浄にも用いる。気液移送ポンプも用いて固液分離を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を処理する処理容器と処理容器に対して水蒸気を供給する蒸気供給部材と処理容器内の圧力を低減させる減圧部材と、処理容器には処理容器内の物を攪拌する、主にシャフトと撹拌翼とシャフトを駆動させるモーターから成る攪拌機構を備える廃棄物処理装置であって、処理容器内に投入された廃棄物のうち、シャフトの回転に伴い形成される撹拌翼(羽)の回転体内にあって攪拌された廃棄物と、前記回転体外に移動し、攪拌処理されなかった廃棄物をそれぞれ別個に取り出し口が設けられており、分けて取り出す構造で有ることを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項2】
撹拌翼(羽)の形成する回転体内に留まり攪拌された廃棄物の取り出し口が処理容器の端(側面)で、おおよそシャフトの回転に伴い撹拌翼が形成する回転体の下端(シャフトの真下に撹拌翼が位置した時の撹拌翼の先端)の高さに設けられており、撹拌翼の形成する回転体の範囲より下に移動し攪拌されなかった廃棄物の取り出し口は前記攪拌された廃棄物の取り出し口より下方に別個に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
以下の構成(1)または(2)の少なくとも1つを備える請求項1または請求項2に記載の廃棄物処理装置。
(1)水平方向に延びる攪拌のシャフトの中心軸と水平方向に長い略円筒形の処理容器の中心軸が同心ではなく、シャフトの中心軸の方が上方の位置に有る構造。
(2)シャフトの回転に伴い撹拌翼(羽)の形成する回転体の直径は処理容器の内周の径より2cm以上短い構造である。
【請求項4】
処理容器への材料投入口(材料供給口)は処理容器の上端(頂部)に2つ以上、攪拌用のシャフトを回転させずとも材料が均等に入るように一定の間隔を開けて設けられている構造で有ることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の廃棄物処理装置。
【請求項5】
処理容器内が高圧時に処理容器内の蒸気を排出する排気管及び排気口と、攪拌処理された廃棄物を取り出す処理物の取り出し口とは別に、処理容器内が大気圧程度の圧力になったら、処理容器内で凝縮した廃水を排出する排水管及び排水口が処理容器の下部或いは下方に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の廃棄物処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の排気管及び排水管の少なくとも1つには仕切りが設けられており、排気管、排水管、処理容器の下部或いは下方のいずれかの少なくとも1つの位置にろ材が設けられている構造で有ることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の廃棄物処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の排気管と排水管の少なくとも一方にろ材が設けられている構造の場合で、ろ材が取り付けられた管上で当該ろ材とそれより処理容器の外方(下流)に配置されたバルブの間の位置に、蒸気を供給する配管が接続している構造で有ることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の廃棄物処理装置。
【請求項8】
処理容器の内周に水平方向に処理容器の端から蒸気を供給することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の廃棄物処理装置。
【請求項9】
処理容器の外に気液移送ポンプが設けられており、処理容器と気液移送ポンプが排水管を介して接続している構造で有ることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の廃棄物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には有機物を含む都市ごみ等の廃棄物を水熱処理する装置が記載されているが、処理容器内の廃棄物を加水分解させるには水蒸気に曝す必要があるため、処理容器内に投入された内容物を攪拌する必要があり、特許文献1のようにシャフトとそれに接続された撹拌翼(羽)が処理容器に組付けられたものを一般的に用いるが、処理容器に投入された内容物をすべて撹拌しようと思うと、攪拌翼の先端と前記内周(内壁)の間の隙間は出来るだけ狭くする必要がある。しかしながら都市ごみを扱おうとする場合、廃棄物の中に缶や陶磁器などの無機物が混入していることも珍しくないので、攪拌する際に、とりわけ処理容器の底部で前記隙間に異物が挟まりシャフトの回転が止まるという問題が往々にして発生する。その場合にシャフトを駆動するモーターの馬力を上げて無理にシャフトを回そうとすると、処理容器の内周に傷が付く、シャフトや攪拌翼が損傷する等の不具合が発生する。機械を保護するために一定以上の負荷が掛かると、材料を投入するのを停止する仕組みにすれば1バッチ当たりの処理量が減り実用性に乏しくなる。そのため処理容器に投入する前に廃棄物の破砕や選別を徹底するか、処理する廃棄物の種類を限定する必要が生じる。
【0003】
基本的には蒸気を入れて攪拌し始めると、投入材料の含水率が上がって材料の滑りが良くなったり、加水分解が進んで植物系や動物系廃棄物は脆くなったりするのでシャフトの回転が止まりにくくなる。しかしながらその前工程として材料を処理容器内に投入する際は、処理容器の中央上部から投入し、シャフトを回転させて撹拌翼で材料を処理容器の端へと送り込む方法では、廃棄物の材質、形状、大きさ等によってシャフトの回転のしやすさが左右されやすく、シャフトの回転が妨げられる場合がより多い。
【0004】
特許文献1を含めて一般的に水熱処理が終わり処理容器の圧力を大気圧程度まで下げるために蒸気を抜く時は、処理物の一部が舞い上がって排気管が詰まるのを防ぐため基本的にシャフトを回転させないが、シャフトを回転させながら蒸気を抜いた方が効率よく処理物の含水率が下げられる。
【0005】
特許文献1の記載では減圧ポンプで大気圧以下に減圧するようだが、減圧するために水蒸気を吸い出す時に、微細化した生成物の粉末や、加水分解しきれなかった未分解の物が排ガスラインの方に吸い寄せられて、排ガスラインが塞がってしまうのではないかと考えられる。
【0006】
特許文献1では水熱処理した生成物を真空乾燥させて燃料として利用する場合を想定しているが、脱水した程度の物を燃料として利用する場合も有ると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
少々異物が混入しても、攪拌用のシャフトの回転が止まらない機械の構造
【0009】
処理物(生成物)を効率よく固液分離をする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記シャフトの回転の妨げの課題を解決するために、本開示に掛かる廃棄物処理装置はシャフトの回転に伴い撹拌翼の形成する回転体の直径を処理容器の内径より例えば2~6cm程度小さくすることで処理容器の内周と撹拌翼(羽)の先端の隙間を大きくする。或いは水平方向に長い略円柱形の処理容器の中心軸よりシャフトの中心軸を例えば数cm~20cm程度上方にずらし処理容器の底部一帯でとりわけ処理容器の内周と撹拌翼(羽)の先端の隙間を大きくする。
【0011】
処理物(生成物)の取り出し口とは別に処理容器の底部に沈下した無機物等の取り出し口を設ける。
【0012】
材料供給口は複数設ける。例えば処理容器を垂直方向に4等分する3本の線のうち中央の線を除く2本の線の延長線上で処理容器の上端(頂部)に設ける。
【0013】
前記の効率良い固液分離を実現するために、本開示に掛かる廃棄物処理装置は蒸気の排出口(排気口)を処理容器の上部に設ける他に、廃液の排出口(排水口)を処理容器の下部或いは下方に設ける。
【0014】
排気口及び排水口に例えばパンチングメタル或いはメッシュ(金網)等の仕切りを2枚ずつ設けて、その間に例えば軽石のような多孔質のものか、丸い小石又は金属球等をろ材(フィルター材)としてそれぞれ設ける。
【0015】
処理容器の排水口の先には気液移送ポンプを設けて、処理容器内の蒸気を排気口から抜いた後、一部残存する蒸気や凝縮した廃水を排出できるようにする。
【0016】
排気管の排気口付近と排水管の排水口付近にそれぞれ、処理容器に近い側からろ材、蒸気供給管、バルブの順に配置し、処理容器に蒸気を注入する際に、当該位置にある蒸気供給管からそれぞれ蒸気を注入できるようにする。
【発明の効果】
【0017】
前記シャフトの回転が妨げられる課題を解決するために、本開示に掛かる廃棄物処理装置は処理容器の内周と撹拌翼(羽)の先端との隙間を従来に比べ大きくしてあるので、廃棄物が挟まり処理容器の内周が傷つくリスクは低減する。
【0018】
シャフトの軸を処理容器の軸より上方にずらし処理容器の底に攪拌翼が届かないスペースを設けて、金属等の固い材質の無機物等を撹拌翼の回転体内に留まらせず処理容器の底に移動させることで、シャフトの回転が妨げられるのを回避することができる。
【0019】
処理容器の上端(頂部)で、処理容器を垂直方向に4等分する3つの線のうち2等分線でもある中央の線を除く、2線の延長線上に材料投入口を設けることで、材料が投入口から落下させるだけで処理容器の両端にも中心にも等しく分散するようにして、シャフトを回転させることなく、材料の投入を完結させられれば、材料投入時にシャフトの回転が止まるリスクを無くすことができる。
【0020】
前記、効率の良い排水の方法に関しては、排水口を処理容器の下部或いは下方に設けることで処理容器の上部の排気口から大気圧程度に下がるまで蒸気を排出した後もなお処理容器内に残る蒸気や処理容器内で凝縮した廃水や、廃棄物から抜けた水分を排出することができる。
【0021】
本開示に掛かる廃棄物処理装置では、排気口にパンチングメタル或いは金網等の仕切りを設けることで蒸気を抜いて、処理容器内の圧力を大気圧程度まで下げる場合に、シャフトを回転させながら下げても未分解の廃棄物、例えば分解しきれなかった布等が舞い上がって、排気口の方へ吸い寄せられ、排気口を塞いだり詰まらせたりするのを防ぐことができ、排気の際にシャフトを回転させない従来のやり方と比べて処理容器内の蒸気を効率よく追い出すことができる。更に前記ろ材を設ければ、ろ材の目の粗さに応じて生成物の排出蒸気への流出も防ぐことができる。
【0022】
本開示に掛かる廃棄物処理装置では、排水口にろ材を設けることで排水する際に固液分離が可能となる。
【0023】
本開示に掛かる廃棄物処理装置では、排気口のバルブ又は排水口のバルブと、各々のろ材等の間に蒸気の供給口をそれぞれ設ければ、廃棄物処理装置に蒸気を注入する際についでに、当該供給口から蒸気を供することで各々のろ材を逆洗することもできる。
【0024】
処理容器内の廃水を気液移送ポンプで引けば、ポンプの吸引力とシャフトの回転で効率よく固液分離させることができる。
【0025】
廃棄物を水熱処理する前に、廃棄物を処理容器に投入した時点で、廃棄物に含まれる余分な水分を除去することも、排水口と気液移送ポンプが有れば可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る処理容器の正面の断面を概略的に示す図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係る処理容器の側面の断面を概略的に示す図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係る処理容器の端(側面)を概略的に示す図である。
【
図4】本開示の第1の実施形態に係る処理容器の排気管と排水管の構成を概略的に示す図である。
【
図5】本開示の第2の実施形態に係る処理容器の正面の断面を概略的に示す図である。
【
図6】本開示の第3の実施形態に係る処理容器正面の断面を概略的に示す図である。
【
図7】本開示の第3の実施形態に係る処理容器の端(側面)を概略的に示す図である。
【
図8】本開示の第4の実施形態に係る処理容器を側面方向から概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施の形態による廃棄物処理装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0028】
<第1実施形態>
(構成)
図1を参照して本開示の第1実施形態に係る廃棄物処理装置1の構成について説明する。 廃棄物処理装置1はバッチ式で廃棄物Wを処理する装置であって、処理容器2と例えばボイラユニットからなる蒸気供給装置5と例えばコンデンサーからなる排ガス(とりわけ水蒸気)処理装置7を備える。廃棄物Wは食品残渣やプラスチック包装容器等を含む都市ごみである。
【0029】
廃棄物処理装置1には受入ホッパー9と投入設備10が設けられてもよい。受入ホッパー9は廃棄物Wを収集した車両又はプラント等から廃棄物Wを受け入れるものである。投入設備10は受入ホッパー9と処理容器2とを接続しており、受入ホッパー9に受け入れられた廃棄物Wを処理容器2にまで運ぶものである。このような投入設備10は例えばベルトコンベアである。
【0030】
処理容器2は高温・高圧状態(例えば、300度・30気圧)に十分耐えることのできる耐圧性を有するように構成されている。処理容器2は上下方向とは垂直な水平方向に沿って長く延びるように構成されている。処理容器2には廃棄物投入口11、排気口(蒸気排出口)12及び処理物(生成物)排出口19が設けられている。廃棄物投入口11は投入設備10と接続されており、投入設備10によって運ばれる廃棄物Wが廃棄物投入口11を経由して処理容器2内に向かって通過するようになっている。排気口12は処理容器2内の蒸気(以下、排出蒸気S1と記載する)が処理容器2外に排出されるようになっている。処理物排出口19は処理容器2内の固形状の内容物が処理容器2外に排出されるようになっている。固形状の内容物とは、例えば廃棄物Wを処理容器2内で加水分解や脱水のような所定の処理をした後に生成される処理物(生成物)W1である。また廃棄物投入口11、排気口12、排水口13、処理物排出口 19、蒸気投入口18及び無機物等排出口16等の付近には、処理容器2内で廃棄物の水熱処理が行われる際に処理容器2の内部の温度や圧力に耐えられるように、シール部材付きのバルブ(不図示)がそれぞれ設けられ密閉構造となっている。シール部材(不図示)はシャフト3が貫通する処理容器2の貫通穴とシャフト3のはめあい部分にも存在する。処理容器2は圧力容器なので圧力計24と温度計25も備える。
【0031】
また処理容器2内には処理容器2内の内容物(廃棄物W)の撹拌用に長手方向に延在する水平回動軸である シャフト3とこの水平回動軸から張り出す 撹拌翼(羽)4が設けられている。処理容器2外に設けられているシャフト3に連結する駆動モーターMにより駆動され、処理容器2内において廃棄物Wが攪拌され加水分解処理(亜臨界水による水熱処理)される。
【0032】
図2に示す通り略円筒形の処理容器の軸心17とシャフト3の軸心(不図示)は同心でなくても良い。その場合はシャフト3の軸心の方が上にあり、処理容器の底部26では処理容器2の内周と撹拌翼4の先端との隙間を例えば5~30cm程度空けて、処理容器の底部26に堆積した廃棄物Wは撹拌翼4の先端が届かないので攪拌されない構造にする。処理容器2の内周と撹拌翼4の先端との隙間についてはシャフト3と同じ高さの位置(例えばZ軸方向の端)では例えば2~10cm程度、処理容器2の上部においては例えば1~5cm程度空けても良い。前記隙間の大きさは処理容器の大きさや、廃棄物投入口11や処理物排出口 19の大きさ、前工程での選別の有無や、選別の程度、扱う処理物の種類も勘案して決める。
【0033】
図1、
図3に示す通り、処理物(生成物)排出口19は処理容器の端(側面)23に設ける。処理物(生成物)排出口19の下端が、撹拌翼4がシャフト3の真下に在る時の撹拌翼4の先端辺りの高さと同じぐらいの高さになるようにし、攪拌処理された廃棄物だけが処理物(生成物)排出口19から排出されるようにする。
【0034】
廃棄物処理装置1には排気口12に接続され処理容器2から排出される排ガス(つまりは、排出蒸気S1)が流通する排気管8が設けられる。排ガス処理装置7と排気口12は排気管8とを介して接続している。排気管8を流通する排出蒸気S1は、排ガス処理装置7によって凝縮や冷却液化など所定の処理が行われる。排気口12は処理容器2の上部に設ける。
【0035】
廃棄物処理装置1には排水口13に接続され処理容器2から排出される廃水S2が流通する排水管14を設ける。排水管14は気液移送ポンプ15と排水口13を接続している。排気口12から大気圧程度の圧力まで蒸気を抜いてもなお処理容器2に残存する蒸気と処理容器2内で凝縮した廃水S2を気液移送ポンプ15で排水管14を通じて排出する。
【0036】
排水口13の取り付け位置は
図1,3に示す通り、処理物(生成物)排出口19と同じぐらいの高さで処理物(生成物)排出口19が取り付けられていない方の端(側面)23に取り付けることも考えられる。主に撹拌翼4の形成する回転体内で攪拌された処理物(生成物)に含まれる水分のみをバッチ毎に抜き取り、処理容器の底部26に堆積した攪拌されず未分解の廃棄物や、ガラス片、金属片、陶磁器片、プラスチック片等の内処理容器の底部26に沈んだものに含まれる水分はバッチ毎に抜き取らないようにする。バッチ毎に抜き取らないことで底部の堆積物の含水率を上げて、沼のような状態を維持し出来るだけ緩衝材の役割を担わせたり、バッチ毎の廃水の量を減らしたり出来れば理想的である。
【0037】
図4に示す通り、排気管8と排水管14上のそれぞれ排気口12又と排水口13の付近には、ろ材21が2枚の仕切り20によって区切られた空間に収められている構造にしても良い。ろ材21は例えば金属球、丸石或いは軽石のような多孔質の物が考えられる。仕切り20は排出蒸気S1や廃水S2を通過させるために、例えばパンチングメタルのような穴が開いた板状のものやメッシュ(金網)を用いることが考えられる。排気管8と排水管14の仕切り20やろ材21の外側(下流の位置)にはバルブ22が取り付けられていて、処理容器2外との接続度合をコントロールできる。バルブ22の内側(処理容器2に近い側)でバルブ22とろ材21の間に蒸気供給管6(
図3に図示、
図1、
図2には不図示)を設けても良い。廃棄物Wを処理容器2で処理する時に、ろ材21を逆洗しつつ蒸気Sを供給することもできる。廃棄物Wの構成等によってろ材21や仕切り20の要否や目の粗さ等材質を決める。
【0038】
図1で示す通り、蒸気供給装置5で製造された蒸気Sは蒸気供給管6を通じて蒸気投入口 18から入る。従来蒸気投入口18は処理容器2の上端(頂部)に設け上から下に垂直方向に蒸気(水蒸気S)を注入するが、
図3に示す通り、排気口12と排水口13の付近に設けて水平方向に投入しても良い。蒸気供給装置5で作り出した蒸気を処理容器2に供給するので通常蒸気供給装置5の圧力の方が高く、処理容器2の圧力が等圧程度に近づくまで蒸気供給バルブ(不図示)を大きく開けたまま放置しなければ、ろ材21や仕切り20も設けられていることも有り、廃棄物Wが逆流する可能性は低く、等圧に近づいたら、万が一にも逆流させないように処理容器2の上端(頂部)の蒸気投入口 18から入れるなど使い分けることもできる。
【0039】
攪拌されず処理容器の底部26に堆積した無機物等W2は処理容器の底部26に設けられた無機物等排出口16から排出する。上述の通り無機物等W2は攪拌されず未分解の有機物と、缶、ガラス、陶器や団子になったプラスチック片等で処理容器の底部26に沈んだもので有る。撹拌翼4の回転体外であり、シャフト3の回転で撹拌翼4を用いて無機物等W2を寄せ集めて排出することができないため、無機物等排出口16は複数(
図1には1つのみ図示)設けられても良い。
【0040】
図1に示す通り処理容器2の上部には廃棄物投入口11を2つ以上設ける。例えば処理容器2を垂直方向に4等分する3つの線のうち中央の線を除く2の延長線上で処理容器2の上端(頂部)に廃棄物投入口11を設ける。
【0041】
(動作)
本開示の第1実施形態に係る廃棄物処理装置1の動作について説明する。
【0042】
図1に示すように、受入ホッパー9に受け入れられた廃棄物Wは受入ホッパー9内を下方に向かって案内され投入設備10に落下する。そして廃棄物Wは投入設備10によって廃棄物投入口11まで運ばれて、廃棄物投入口11から処理容器2内に投入される。廃棄物Wの投入時廃棄物Wは落とし入れるだけでシャフト3を回動させないのが理想的である。
【0043】
処理容器2内への廃棄物Wの投入が終了すると、廃棄物投入口11は閉鎖され、蒸気供給装置5が処理容器2に対して高熱の水蒸気Sを供給する。このとき排気口12、排水口13、処理物排出口19及び無機物等排出口16もバルブで閉鎖されている。高熱の水蒸気Sによって処理容器2の内部の温度と圧力が上がり、シャフト3を回動させ攪拌することで、廃棄物Wの加水分解が行われる。含水率が上がるのでシャフト3の回動が妨げられるリスクは減る。尚蒸気供給装置5によって処理容器2に供給された高熱の水蒸気Sは処理容器2の内部と熱交換した後に、排出蒸気S1として排気口12より処理容器2外に排出される。大気圧程度まで処理容器2内の圧力が下がったら、排水口13より廃水S2を排出する。その後、処理物(生成物)排出口 19から 処理物(生成物) W1を取り出す。バッチ毎でなくて良いが、定期的に無機物等排出口16を開け堆積した無機物等 W2を少しずつ入れ替える。
【0044】
尚材料投入時に、廃棄物Wが稲わらやシュレッダーの紙屑などのふわふわしたもののみで有り、たくさん入るようにシャフト3を回転させながら処理容器2に投入したい場合は、回転させることも可能だが、処理容器の底部26が未分解の有機物等で満たされておらず空の場合は、処理容器の底部26で稲わら等が圧縮されて固まり、従来の処理容器のようにシャフト3の回転を妨げる原因になることが有るので留意する必要がある。
【0045】
更に言えば廃棄物Wに含まれるプラスチックの割合が高い場合や、厚みのあるプラスチック片の場合にも、処理容器の底部26が未分解の有機物等であらかじめ埋まっていない場合は、材料投入後、却って蒸気で攪拌処理している最中に蒸気Sでその表面だけ熱せられ中は固いプラスチック片同士がくっついて次第に重くなり処理容器の底部26に落ち、転がされてやがて団子になり撹拌を妨げるという事態が発生する。とりわけ処理容器の底部26に例えば無機物等排出口16のような何らかの取り出し口等の竪穴が設けられている場合はその窪みにプラスチックの団子がはまり肥大化しこの不具合が生じやすい。よって処理容器の底部26は未分解の有機物等で埋まっていて、含水率が高く沼のようになっている方が、プラスチックの割合も下がり、よりシャフト3の回転が止まるリスクが下がる。
【0046】
<第2実施形態>
(構成)
図5を参照しながら、実施例1との相違点を中心に記述すると、排水口13の位置が処理容器の底部26に設けられ、処理容器の底部26にろ材21が敷かれている。
図4に記載の排水口13に設けられたろ材21だけではろ過が間に合わない場合は、本実施形態を採用しても良い。
【0047】
本実施例の場合は実施例1と比べると処理容器の底部26の廃水S2も排出することになるが、ろ材21でかさ上げして処理容器の底部26に収まる無機物等W2の量を制御することで廃水S2の量を調整することも可能である。
【0048】
攪拌されず処理容器2の底面に堆積した無機物等W2は処理容器の底部26、或いは端部(側面)23あるいは両方の位置に設けられた無機物等排出口16から排出する。
【0049】
本実施例の場合でも排水管14にろ材21を設けた場合は蒸気供給管6を
図3のように排水管14に接続し(
図5には不図示)下から蒸気を供給しても良い。
【0050】
<第3実施形態>
(構成)
本実施例の場合は実施例1との相違を中心にして述べると、
図6で示す通り処理容器2の内周と撹拌翼4の先端との隙間を空ける場合で、処理容器2の内周に張り付いた処理物を蒸気の噴射で剥がれるようにしたい場合は
図6、
図7に示す通り処理容器2の両端の少なくとも一方から、水平方向に蒸気Sを注入しても良い。処理容器の端(側面)の内周付近29(例えばZ軸方向の端)に蒸気投入口18を設ける。上述の通り蒸気供給装置5で作り出した蒸気Sを処理容器2に供給するので、通常蒸気供給装置5の圧力の方が高く、処理容器2の圧力が等圧に近づくまで、蒸気供給バルブ(不図示)を開いたままで放置しなければ、廃棄物Wや処理物(生成物)W1が逆流する可能性は低いと考えられる。圧力差のあるうちは端(側面)23の方から蒸気Sを入れ、圧力差が少なくなったら処理容器2の上部の蒸気投入口 18からのみ蒸気Sを入れるなど使い分けることもできる。
【0051】
<第4実施形態>
(構成)
本実施例の場合は実施例1との相違を中心にして述べると、
図8ではシャフトの軸心と処理容器の軸心が従来のように同心であることを表現している。処理容器2の直下に実施例1と同等の圧力に耐えられるよう円筒形の別の容器(収容容器27)を接続させ、更には処理容器2の底に穴(
図8には不図示)を開け、無機物等W2は収容容器27に落下するようにする。ろ材21を収容容器27に収めることも可能で、その場合はろ材の投入口28を収容容器27に設ける。廃水口13は収容容器27に設けて排水する。処理容器2の内周と撹拌翼4の先端との隙間も従来のように数ミリ程度にすれば、処理容器2の中の物をバッチ毎に全て入れ替えることも可能である。ろ材の投入口28の開閉もシール部材の付いたバルブで行う。
【0052】
廃棄物Wの一部がシャフト3の回転の妨げるになるのを防ぐため、攪拌翼(羽)4の範囲外に無機物等W2を移動させるが、その場所を処理容器2内ではなく、処理容器2外に確保しようとすると本実施例のような構造になる。
【0053】
最後に第2実施形態においても処理容器の底部26にろ材21を敷くときは処理容器2の横腹にろ材の投入口28(
図5には不図示)を設けても良いし、第1実施形態、第3実施形態において排水口13を第2実施形態のように処理容器の底部26に設ける場合も有りうる。第1~3実施形態において処理容器2の内周と撹拌翼4の先端との隙間だけ広めに開けるのと、
図2のようにシャフト4の軸心と処理容器の軸心を違えるのは、どちらか一方のみを採用しても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 廃棄物処理装置
2 処理容器
3 シャフト
4 撹拌翼(羽)
5 蒸気供給装置
6 蒸気供給管
7 排ガス処理装置
8 排気管
9 受け入れホッパー
10 投入設備
11 廃棄物投入口
12 排気口(蒸気排出口)
13 排水口
14 排水管
15 気液移送ポンプ
16 無機物等排出口
17 処理容器の軸心
18 蒸気投入口
19 処理物(生成物)排出口
20 仕切り
21 ろ材
22 バルブ
23 処理容器の端(側面)
24 圧力計
25 温度計
26 処理容器の底部
27 収容容器
28 ろ材の投入口
29 処理容器の端(側面)の内周付近
W 廃棄物
W1 処理物(生成物)
W2 無機物等
S 蒸気(水蒸気)
S1 排出蒸気
S2 廃水
M モーター