特開 2024-149928 半月板制動装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024149928

(43)【公開日】2024-10-23

(54)【発明の名称】半月板制動装置

(51)【国際特許分類】

   A61B 17/68 20060101AFI20241016BHJP

   A61B 17/86 20060101ALI20241016BHJP

【ＦＩ】

A61B17/68

A61B17/86

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021139024

(22)【出願日】2021-08-27

(71)【出願人】

【識別番号】521380915

【氏名又は名称】秋山 武徳

(74)【代理人】

【識別番号】240000693

【弁護士】

【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所

(72)【発明者】

【氏名】秋山 武徳

【テーマコード（参考）】

4C160

【Ｆターム（参考）】

4C160LL28

4C160LL29

4C160LL70

(57)【要約】

【課題】脛骨辺縁から逸脱した半月板を容易に且つ確実に整復することができる構造簡単な半月板制動装置を提供する。
【解決手段】脛骨に取り付けられる基体部１と、基体部材１に支持され、脛骨辺縁から逸脱した半月板の外縁と冠状靱帯との何れか一方又は両方に当接する当接部２とを備える。基体部材１は、当接部材２を半月板の整復方向へ移動させると共に、半月板を所定位置で制動する当接作動部１３を備える。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

脛骨に取り付けられる基体部と、該基体部に支持され、前記脛骨辺縁から逸脱した半月板の外縁と冠状靱帯との何れか一方又は両方に当接する当接部とを備え、
前記基体部は、前記当接部を前記半月板の整復方向へ移動させると共に、前記半月板を所定位置で制動する当接作動部を備えることを特徴とする半月板制動装置。

【請求項2】

前記基体部は、棒状に形成されており、
前記当接作動部は、前記基体部の外周面に形成された螺条と、前記基体部の一端部に設けられて前記当接部を抜け止め状態に係止する係止部とによって構成され、
前記当接部は、前記基体部の前記係止部に係止され、前記基体部の脛骨への螺入深さに応じて半月板を押圧することを特徴とする請求項１記載の半月板制動装置。

【請求項3】

前記基体部は、その軸線方向に沿って中空部を備えた管状に形成されており、
前記基体部の前記中空部に、脛骨への穿入方向を規定しつつ案内する案内部材が挿通されることを特徴とする請求項１又は２記載の半月板修復支援装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、脛骨辺縁からの半月板の逸脱を予防したり、脛骨辺縁から逸脱した半月板を整復し、整復状態で制動するために用いる半月板制動装置に関する。

【背景技術】

【0002】

膝の傷害として、脛骨縁辺からの半月板の逸脱が挙げられる。半月板の逸脱は、半月板の断裂及び変性が原因となって発症する。半月板の逸脱が生じると、半月板による膝関節での緩衝作用が低くなり、不安定性が増す。これによって、膝関節における大腿骨と脛骨との接触に伴う軟骨の損傷が生じ、変形性関節症や骨壊死症等を発症して歩行が困難となるおそれがある。

【0003】

逸脱した半月板断裂部に対する修復法として、実質部の断裂では半月板断裂端を縫合する方法、脛骨付着部の断裂では骨孔やアンカーを利用して半月板を修復する方法が一般的であるが、逸脱した半月板を整復するのは困難と考えられている。そのために、脛骨近位に挿入したアンカーに締結された縫合糸によって逸脱した半月板を整復する方法が知られている（例えば、下記特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特表２０１９－５２３９００号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかし、逸脱した半月板に対するアンカー固定は手術手技が複雑で難しく、また縫合糸の耐久性は比較的低く、アンカーでは点での固定のために、半月板の逸脱を整復することや整復状態を確実に維持することは困難である。このため、半月板の逸脱を整復するために、複数本のアンカーによる固定が必要とされており、アンカーを打ち込んで半月板を固定するために、かなりの手間と時間を要する不都合がある。そのために、よりシンプルな、逸脱を強固に整復し、それを維持できる手術手技が求められている。

【0006】

上記従来の不都合に鑑み、本発明は、脛骨辺縁から逸脱した半月板を短時間に且つ確実に整復状態を維持することができる構造簡単な半月板制動装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

かかる目的を達成するために、本発明の半月板制動装置は、脛骨に取り付けられる基体部と、該基体部に支持され、前記脛骨辺縁から逸脱した半月板の外縁と冠状靱帯との何れか一方又は両方に当接する当接部とを備え、前記基体部は、前記当接部を前記半月板の整復方向へ移動させると共に、前記半月板を所定位置で制動する当接作動部を備えることを特徴とする。

【0008】

なお、前記基体部は、脛骨に固定されるプレートに設けてもよい。この場合にはプレートを介して脛骨に取り付けられた状態となり、本発明の上記構成に含まれる。当接部は、例えば金属等の硬質材料、または吸収性体内固定用材料等によって形成されていることが好ましい。更に、当接部は、半月板に当接したとき進退不能な状態であってもよいが、所定の弾発力をもって半月板に当接してもよい。

【0009】

また、本発明において、前記基体部は、棒状に形成されており、前記当接作動部は、前記基体部の外周面に形成された螺条と、前記基体部の一端部に設けられて前記当接部を抜け止め状態に係止する係止部とによって構成され、前記当接部は、前記基体部の前記係止部に係止され、前記基体部の脛骨への螺入深さに応じて半月板を押圧することを特徴とする。

【0010】

また、前記基体部は、その軸線方向に沿って中空部を備えた管状に形成されており、前記基体部の前記中空部に、脛骨への穿入方向を規定しつつ案内する案内部材が挿通されることが好ましい。

【発明の効果】

【0011】

本発明によれば、先ず、基体部を脛骨に取り付け、次いで、当接部を半月板や冠状靱帯に当接させ、更に、当接作動部の作動によって当接部を半月板の整復方向へ移動させることにより、半月板を所定位置に戻した状態で制動することができる。

【0012】

このように、脛骨辺縁から逸脱した半月板を短時間に整復することができ、整復した状態を維持することができる。しかも、基体部と当接部と当接作動部とによって構造も簡単とすることができる。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】半月板制動装置を示す説明的側面図。

【図2】図１のII－II線断面説明図。

【図3】半月板制動装置を用いた半月板の整復方法を模式的に示す説明図であって、図３Ａは第１工程を示し、図３Ｂは第２工程を示し、図３Ｃは第３工程を示す。

【発明を実施するための形態】

【0014】

本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の半月板制動装置は、図１に示すように、棒状の基体部材１（本発明における基体部に相当する）と、板状の当接部材２（本発明における当接部に相当する）とによって構成されている。

【0015】

基体部材１は、本体部１０と、本体部１０の一端（先端）に設けられたテーパ部１１と、本体部１０の他端（基端）に設けられて本体部１０よりも大径の大径部１２とを備えている。

【0016】

更に、本体部１０の外周面には、螺条１３が形成されており、大径部１２には、図２に一部を示すように、回転工具等を連結する連結部１４が形成されている。これにより、基体部材１は、その回転によって、後述するように脛骨に螺入することができるようになっている。

【0017】

また、図２に示すように、基体部材１は、その軸線に沿う全長にわたって貫通する中空部１５を備え、これによって管状に形成されている。

【0018】

図１及び図２に示すように、当接部材２は、孔部２０を備えている。当接部材２の孔部２０の内径は、基体部材１の本体部１０の外径より大きく基体部材１の大径部１２よりも小さい。これにより、当接部材２は、基体部材１の本体部１０を挿通させて長手方向に沿って自由に移動可能とされ、基体部材１の大径部１２に係止して抜け止めされる。

【0019】

即ち、本実施形態においては、基体部材１は所謂スクリュー形状を有するものが採用されており、当接部材２は環状であり、所謂ワッシャー形状を有するものが採用されている。

【0020】

なお、後述するが、基体部材１の本体部１０の螺条１３と大径部１２とは、当接部材２の移動と制動とを行う本発明の当接作動部として機能するものである。また、大径部１２は、本発明における係止部に相当するものである。

【0021】

次に、上記構成の半月板制動装置を使用した半月板の整復方法について説明する。

【0022】

図３Ａに示すように、膝関節の半月板４０が脛骨４１の縁辺から外側に逸脱している状態であるとき、先ず、脛骨４１に案内部材であるガイドワイヤ３を刺入する。

【0023】

次いで、半月板制動装置の基体部材１の中空部１５（図２参照）に、ガイドワイヤ３を通すことにより、図３Ｂに示すように、ガイドワイヤ３に沿って基体部材１を案内させ、基体部材１の大径部１２に回転工具等（図示省略）を連結して基体部材１を回転させる。

【0024】

これにより、基体部材１が脛骨４１に螺入され、それに伴い基体部材１の大径部１２に係止された当接部材２が逸脱した状態の半月板４０の外縁に当接する。

【0025】

続いて、更に基体部材１を回転させ、当接部材２が半月板４０を整復方向に押し送りする。そして、半月板４０を膝関節の所定位置（正常位置）に戻ったとき、基体部材１の回転を止める。これにより、図３Ｃに示すように、脛骨４１への基体部材１の螺合状態が維持され、正常位置で半月板４０が制動される。

【0026】

半月板４０は、脛骨４１に螺合して固定状態となった基体部材１と、当接部材２の当接とによって逸脱方向への動きが規制される。よって、半月板４０を短時間に且つ確実に整復し、その整復状態を維持することができる。

【0027】

なお、本実施形態においては、当接部材２を半月板４０の外縁に当接させて半月板４０の整復を行う例を示したが、これに限らず、半月板４０の整復においては、当接部材２を冠状靱帯に当接してもよく、また、当接部材２を半月板４０の外縁と共に冠状靱帯に当接してもよい。

【0028】

また、本実施形態においては、基体部材１をスクリュー形状とし、当接部材２を環状のワッシャー形状としたが、本発明における基体部及び当接部は、本実施形態で示した形状に限るものではない。例えば、図示しないが、脛骨に固定するプレートを基体部とし、このプレートに当接部を設けてもよい。

【0029】

また、本実施形態においては、当接部材２をワッシャー形状としたが、これ以外に、図示しないが、当接部材２の一部に開放部を設けてＣ型に形成してもよい。これによれば、脛骨４１に固定した状態の本体部１０を脛骨４１から抜き取ることなく、当接部材２を基体部材１から取り外すことができ、当接部材２を交換する場合等に有利である。

【0030】

更に、図示しないが、当接部の形状は、フラットな形状のもの、あるいは脛骨の形状に合わせた軽くカーブした形状のものまで選択できる。さらに当接部の大きさは半月板の一部のみに当接する小さな形状のもの、あるいは半月板前方から後方まで広く当接する前後幅の広い形状のものが選択できる。脛骨の形状に合わせた形状で、前後幅の広い形状の当接部はより逸脱の強い半月板の整復固定に有利である。

【0031】

また、図示しないが、基体部材１においては、本体部１０に大径部１２を着脱自在に設けてもよい。これにより、脛骨４１に固定した状態の本体部１０から大径部１２を取り外すことで、当接部材２が環状のワッシャー形状であっても、本体部１０を脛骨４１から抜き取ることなく、当接部材２を基体部材１から取り外すことができ、当接部材２を交換する場合等に有利である。

【0032】

更に、本実施形態においては、当接部材２が半月板４０を制動するとき、当接部材２は、基体部材１の脛骨４１への螺着固定によって進退不能となるが、本発明においてはこれに限るものではなく、図示しないが、当接部が所定の弾発力をもって半月板や冠状靱帯に当接するように、当接部にテンションを付与する付勢手段を設けてもよい。

【0033】

また、本実施形態においては、単一の半月板制動装置を使用した半月板の整復方法について説明したが、半月板制動装置を複数用いて、半月板や冠状靱帯に対して複数個所に当接部を当接させて半月板の整復を行ってもよい。

【符号の説明】

【0034】

１…基体部材（基体部）、２…当接部材（当接部）、３…ガイドワイヤ（案内部材）、１２…大径部（当接作動部、係止部）、１３…螺条（当接作動部）、１５…中空部、４０…半月板、４１…脛骨。

【図1】

【図2】

【図3】