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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149932
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】通信装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20241016BHJP
   H04W 28/14 20090101ALI20241016BHJP
   H04W 72/0457 20230101ALI20241016BHJP
   H04W 76/15 20180101ALI20241016BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241016BHJP
   H04L 45/243 20220101ALI20241016BHJP
【FI】
H04W28/04 110
H04W28/14
H04W72/04 111
H04W76/15
H04W84/12
H04L45/243
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144568
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157200
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 茂孝
(74)【代理人】
【識別番号】100160783
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓広
(72)【発明者】
【氏名】留場 宏道
(72)【発明者】
【氏名】白川 淳
(72)【発明者】
【氏名】山田 良太
(72)【発明者】
【氏名】難波 秀夫
【テーマコード(参考)】
5K030
5K067
【Fターム(参考)】
5K030GA01
5K030HA08
5K030JL01
5K030LB06
5K067AA15
5K067AA23
5K067BB21
5K067DD11
5K067DD17
5K067DD24
5K067DD43
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE61
5K067EE72
5K067FF16
5K067HH22
5K067HH28
5K067JJ12
5K067JJ13
5K067JJ35
(57)【要約】
【課題】マルチリンクを構成する無線通信装置のパケット合成において、再送先リンクがDoze stateまたは前記再送先リンクを他のフレームが使用中である場合に、効率的なパケット合成が実施されない。
【解決手段】本発明の通信装置は、2つ以上のリンクを用いてフレームを送信する無線通信装置であって、前記通信装置は、MACレイヤにて前記各々のリンクの負荷状況に応じて、再送先リンクの候補を選出するマルチリンク制御部を備え、前記制御部は、前記再送先リンクの候補と再送方法を制御情報として生成するとともにPHYレイヤに伝達し、前記フレームに対する肯定応答を受信しなかった場合に、前記制御情報が指定する再送先リンクの候補以外での再送を許可しない。IEEE802.11標準において、マルチリンクデバイスでのパケット合成を可能とし、低遅延化と受信SNRの改善に寄与する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のリンクを用いてフレームを送信する通信装置であって、前記通信装置は、MACレイヤにて前記各々のリンクの負荷状況に応じて、再送先リンクの候補を選出する制御部を備え、前記制御部は、前記再送先リンクの候補と再送方法を制御情報として生成するとともにPHYレイヤに伝達し、前記通信装置は、PHYレイヤにてフレームを生成する送信部を備え、前記フレームに対する肯定応答を受信しなかった場合に、前記制御情報が指定する再送先リンクの候補以外での再送を許可せず、前記通信装置は、前記制御情報に従って、再送先リンクの候補で前記フレームを受信する受信部と、前記フレームをパケット合成し、復号する信号復調部と、を備える、通信装置。
【請求項2】
前記再送先リンクの候補は、前記再送方法としてARQによる再送を制限し、HARQによる再送を制限しない、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記各々のリンクが同一の負荷状況である場合、前記制御情報に再送先リンクの候補を含めず、再送方法を設定する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記各々のリンクにおいて、前記フレームに対する肯定応答を受信しなかった場合に、または、所定の時間内に受信しなかった場合、前記再送先リンクの候補を更新する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記各々のリンクにおける1つのリンクにおいて、前記フレームに対する肯定応答を複数回連続して受信しなかった場合に、また、所定の時間内に受信しなかった場合、前記リンクの次に低い負荷状況のリンクを前記再送先リンクの候補に含める、請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、送信側の前記各々のリンクにバッファされた最後のフレームと同一の識別子を含むフレームが、前記各々のリンクと別のリンクで後続してバッファ済である場合、前記同一の識別子を含むフレームに対する肯定応答を受信するまでの所定の時間だけ前記別のリンクにNAVを設定するための制御データを前記制御情報に付加する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信装置は、前記各々のリンクに再送用のアクセスカテゴリーを設定し、前記再送用のアクセスカテゴリーのフレームを最優先に送信する制御部を備える、請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記通信装置における前記制御部は、前記各々のリンクにおいてバッファのReorderingを実施することで、前記フレームを最優先に再送する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記再送先リンクで別のフレームが送信されている場合において、前記再送先リンクの候補が指定する別のリンクで前記フレームを再送する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項10】
2つ以上のリンクを用いてフレームを受信し、前記フレームを前記制御情報が指定するリンクに割り当て、復調・復号する信号復調部と、前記信号復調部は、前記フレームにHARQが設定されている場合に、前記フレームのパケット合成を実施する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項11】
2つ以上のリンクを用いてフレームを送信する通信方法であって、前記通信方法は、M
ACレイヤにて前記各々のリンクの負荷状況に応じて、再送先リンクの候補を選出するステップを備え、前記再送先リンクの候補と再送方法を制御情報として生成するとともにPHYレイヤに伝達し、前記通信方法は、PHYレイヤにてフレームを生成するステップを備え、前記フレームに対する肯定応答を受信しなかった場合に、前記制御情報が指定する再送先リンクの候補以外での再送を許可せず、前記通信方法は、前記制御情報に従って、再送先リンクの候補で前記フレームを受信するステップと、前記フレームをパケット合成し、復号するステップと、を備える、通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers Inc.)は、無線LAN(Local Area Network)通信の速度高速化、周波数利用効率化を実現するために無線LAN標準規格であるIEEE802.11の仕様更新に取り組んでいる。近年では、無線LANデバイスの急速な普及に伴って、遠隔医療やVR/ARといったリアルタイムアプリケーションとしての利用用途の拡大が見込まれており、IEEE802.11ax標準規格のさらなる低遅延化と通信容量の大容量化を実現するIEEE802.11beの標準化が進められている。
【0003】
IEEE802.11標準では、スループットの高速化技術として誤り制御が導入されている。誤り制御は、前方誤り訂正(Forward Error Correction:FEC)と自動再送要求(Automatic repeat request:ARQ)に大別される。前方誤り訂正は、誤り訂正符号を用いて伝送路で生じる誤りを受信側で訂正する方式であり、誤ったパケットに対する送信側への再送要求を不要とする。誤り訂正能力は、符号語に占める冗長ビットの割合を増やすことで向上するが、復号処理の増大や伝送効率の低下などとトレードオフの関係にある。一方、ARQは、受信側で適切に復号化されなかったパケットの再送を送信側に要求する方式である。復号時のパケット誤りは、受信側の媒体アクセス制御(Medium Access Control:MAC)で検出され、バッファに蓄積されることなく破棄される。パケットが正常に復号された場合は確認応答(Acknowledgement:ACK)が、パケット誤りが検出された場合には否定応答(Negative Acknowledgement:NACK)が送信側へと伝達される。パケットの再送処理は、送信側にNACKが伝達されるか一定期間内にACKが送信側へと伝達されない場合にARQによって実施される。前記したIEEE802.11標準での誤り制御に加え、IEEE802.11beの標準化活動では、前方誤り訂正符号とARQを組み合わせたハイブリッドARQ(Hybrid ARQ:HARQ)が検討されている。HARQは、再送時に同じパケットを送信し、受信側でパケット合成することで、受信信号の信号対雑音電力比(Signal to Noise power ratio:SNR)を改善させるチェイス合成と、再送時に冗長信号(パリティ信号)を新たに送信することで、受信側の誤り訂正復号能力を高めるインクリメンタルリダンダンシー(Incremental redundancy:IR)合成が検討されている。
【0004】
IEEE802.11n以降の標準規格では、MACレイヤのオーバーヘッド低減によるスループットの高速化技術として、無線フレームとACKにそれぞれアグリゲーションが導入されている。無線フレームのアグリゲーションは、A-MSDU(Aggregated MAC Service Data Unit)とA-MPDU(Aggregated MAC Protocol Data Unit)に大別される。ACKのアグリゲーションは、例えば、複数のMPDUに対する受信完了通知を実施可能であるブロックACK(Block Acknowledgement:BA)、複数のユーザに対する受信完了通知を実施可能であるマルチSTAブロックACK(Multi STA Block ACK:M-BA)が挙げられる。無線フレームのアグリゲーションは、1度に多くのパケットを送信可能とし、伝送効率を向上させる一方で、伝送誤りの可能性を高める。このことから、IEEE802.11ax以降の標準規格では、スループットの高速化に主要な要素技術として、無線フレームのアグリゲーションによる伝送効率の向上に加え、各々のMPDUに対する効率的な誤り制御が見込まれる。そこで、IEEE802.11beの標準化活動では、HARQによる時間ダイバーシチを得ることで、伝送品質の改善が検討されている。
【0005】
一方、使用周波数帯の観点では、欧州においてはETSI(European Telecommunications Standards Institute)が、米国においてはFCC(Federal Communications Commission)が6GHz帯(5.935~7.125GHz)をアンライセンスバンドとして使用できるように検討しており、その他の世界各国においても同様の検討が進んでいる。このことは、無線LANが2.4GHz帯、5GHzに追加して6GHz帯も使用可能となる見込みがでてきたということである。対象周波数拡大に対応するために、Wi-Fi AllianceはWi-Fi6の拡張版であるWi-Fi6E(登録商標)を策定し、6GHz帯使用するとしている。
【0006】
2.4GHz帯はカバレッジ(通信可能な範囲)が比較的広くとれる一方で、使用可能な帯域幅が比較的狭く、通信装置間の干渉の影響も大きくなる。一方で、5GHz帯、6GHz帯は通信帯域幅を広くとれる一方で、カバレッジは広く取れない。よって、様々なサービス・アプリケーションを無線LANで実現するためには、ユースケースに応じて使
用する周波数バンド(2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯など。もしくは各周波数バンドに含まれるチャネル、もしくはチャネルに含まれるサブチャネル)を適切に切り替えることが望ましい。しかし、従来の無線LAN通信装置においては、通信に用いる周波数バンドを切り替えるためには、一度現在の周波数バンドの接続を切断し、別の周波数バンドに接続する必要があった。
【0007】
以上より、IEEE802.11be標準化においては、通信装置が複数の周波数バンドを使用した、複数の接続(リンク)を維持することを可能とする、複数接続動作(Multi-link Operation:MLO)に関する議論が行われている(非特許文献2参照)。MLOの一例を挙げると、IEEE802.11be標準化では、2.4GHz帯の接続、5GHz帯の接続、6GHz帯の接続、前記全帯域の同時接続など、様々な周波数バンド、チャネル、サブチャネルの組み合わせが可能となる。MLOによれば、通信装置は、使用する無線リソースや通信に係る設定が異なる接続を複数維持することができる。すなわち、MLOを用いることで、通信装置は、異なる周波数バンドの接続を同時に維持することができるから、再接続動作を行うことなく、フレーム送受信する周波数バンドを変更することが可能となる。
【0008】
また、IEEE802.11be標準化では、2つ以上の複数のリンクを備えるマルチリンクデバイス(Multi-link Device: MLD)を用いた無線通信方式が議論されている。当該マルチリンクを使用してフレーム送信することで、単一端末-基地局間だけではなくシステム全体としてのスループットを増大させる大容量通信の実現が期待されている。また、マルチリンクを構成する各リンクを束ねた同時使用はせずに、独立して使用し、フレームの送受信が行ってもよい。例えば、混雑している無線チャネルを避けて空いているリンクを適宜選択してフレーム送信することで、送信時に生じる遅延、レイテンシを小さくして、低遅延(Low Latency)通信を実現できる可能性がある。これらマルチリンクによる大容量通信、低遅延通信の特徴は、当該各々のリンクの品質(無線通信装置間での電波干渉が少ない、受信信号強度が大きい、またはフレーム受信エラー率が小さいなど)が高まるほどマルチリンクの性能が向上する点にある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IEEE802.11-20/0472r2、May.2020
【非特許文献2】IEEE802.11-20/1060r1、October.2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
MLDにおいて、マルチリンクを管理するエンティティ(Multi-link Management Entity: MLME)は、全リンクのロード(負荷、load)を監視し、ロードバランスを実施するものの、既存の仕組みではMLDでHARQの効果を得られない可能性がある。IEEE802.11標準では、リンクにバッファされた最後のPPDUフレームを送信した後、当該フレームの後にバッファされたフレームの有無を示すフィールドが更新される。すなわち、MLDを構成するリンクで誤ったPPDUフレームを別のリンクで再送するとき、再送先リンクがDoze stateである場合に、HARQによるパケット合成は実施されない可能性がある(非特許文献1)。
【0011】
そこで、非特許文献1は、MLDを構成するリンクがバッファされた最後のPPDUフレームを送信した後に、当該リンクがDoze stateに移行しないように当該フレームと同一のTraffic ID(TID)を有するフレームの送信が完了するまで、当該フレームに含まれるバッファされたフレームの有無を示すフィールドを更新しない仕組みを提案している。一方、非特許文献2は、MLMEによる全リンク間の肯定応答の共有が検討されている。しかしながら、IEEE802.11標準において、非特許文献1および非特許文献2も、フレームの再送に関して、再送先リンクをAwake Stateとして事前に確保する方法など、MLDにおける効率的なパケット合成方法を提案するに至っていない。
【0012】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、その目的はIEEE802.11標準において、MLDにおける効率的なパケット合成を実現するものであって、低遅延通信ならびに受信SNRの改善に寄与する通信装置および通信方法を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するための本発明に係る通信装置および通信方法は、次の通りである。
【0014】
(1)2つ以上のリンクを用いてフレームを送信する通信装置であって、前記通信装置は、MACレイヤにて前記各々のリンクの負荷状況に応じて、再送先リンクの候補を選出する制御部を備え、前記制御部は、前記再送先リンクの候補と再送方法を制御情報として生成するとともにPHYレイヤに伝達し、前記通信装置は、PHYレイヤにてフレームを生成する送信部を備え、前記フレームに対する肯定応答を受信しなかった場合に、前記制御情報が指定する再送先リンクの候補以外での再送を許可せず、前記通信装置は、前記制御情報に従って、再送先リンクの候補で前記フレームを受信する受信部と、前記フレームをパケット合成し、復号する信号復調部と、を備える、通信装置。
【0015】
(2)前記再送先リンクの候補は、前記再送方法としてARQによる再送を制限し、HARQによる再送を制限しない、上記(1)に記載の通信装置。
【0016】
(3)前記制御部は、前記各々のリンクが同一の負荷状況である場合、前記制御情報に再送先リンクの候補を含めず、再送方法を設定する、上記(1)に記載の通信装置。
【0017】
(4)前記制御部は、前記各々のリンクにおいて、前記フレームに対する肯定応答を受信しなかった場合に、または、所定の時間内に受信しなかった場合、前記再送先リンクの候補を更新する、上記(1)に記載の通信装置。
【0018】
(5)前記制御部は、前記各々のリンクにおける1つのリンクにおいて、前記フレームに対する肯定応答を複数回連続して受信しなかった場合に、また、所定の時間内に受信しなかった場合、前記リンクの次に低い負荷状況のリンクを前記再送先リンクの候補に含める、上記(1)に記載の通信装置。
【0019】
(6)前記制御部は、送信側の前記各々のリンクにバッファされた最後のフレームと同一の識別子を含むフレームが、前記各々のリンクと別のリンクで後続してバッファ済である場合、前記同一の識別子を含むフレームに対する肯定応答を受信するまでの所定の時間だけ前記別のリンクにNAVを設定するための制御データを前記制御情報に付加する、上記(1)に記載の通信装置。
【0020】
(7)前記通信装置は、前記各々のリンクに再送用のアクセスカテゴリーを設定し、前記再送用のアクセスカテゴリーのフレームを最優先に送信する制御部を備える、上記(1)に記載の通信装置。
【0021】
(8)前記通信装置における前記制御部は、前記各々のリンクにおいてバッファのReorderingを実施することで、前記フレームを最優先に再送する、上記(1)に記
載の通信装置。
【0022】
(9)前記制御部は、前記再送先リンクで別のフレームが送信されている場合において、前記再送先リンクの候補が指定する別のリンクで前記フレームを再送する、上記(1)に記載の通信装置。
【0023】
(10)2つ以上のリンクを用いてフレームを受信し、前記フレームの再送を前記制御情報が指定するリンクに割り当て、復調・復号する信号復調部と、前記信号復調部は、前記フレームにHARQが設定されている場合に、前記フレームのパケット合成を実施する、上記(1)に記載の通信装置。
【0024】
(11)2つ以上のリンクを用いてフレームを送信する通信方法であって、前記通信方法は、MACレイヤにて前記各々のリンクの負荷状況に応じて、再送先リンクの候補を選出するステップを備え、前記再送先リンクの候補と再送方法を制御情報として生成するとともにPHYレイヤに伝達し、前記通信方法は、PHYレイヤにてフレームを生成するステップを備え、前記フレームに対する肯定応答を受信しなかった場合に、前記制御情報が指定する再送先リンクの候補以外での再送を許可せず、前記通信方法は、前記制御情報に従って、再送先リンクの候補で前記フレームを受信するステップと、前記フレームをパケット合成し、復号するステップと、を備える、通信方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、IEEE802.11標準にて、MLDでの効率的なパケット合成を実現するものであって、受信SNRの改善による低遅延通信の向上とユーザースループットの高速化と、マルチリンク通信の特徴である大容量通信、低遅延通信に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一態様に係る無線リソースの分割例を示す概要図である。
図2】本発明の一態様に係るフレーム構成の一例を示す図である。
図3】本発明の一態様に係るフレーム構成の一例を示す図である。
図4】本発明の一態様に係る通信の一例を示す図である。
図5】本発明の一態様に係る通信システムの一構成例を示す図である。
図6】本発明の一態様に係るフレーム送受信を示す図である。
図7】本発明の一態様に係る無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
図8】本発明の一態様に係る無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
図9】本発明の一態様に係る無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
図10】本発明の一態様に係る符号化方式の一例を示す概要図である。
図11】本発明の一態様に係る変調符号化方式の一例を示す概要図である。
図12】本発明の一態様に係るLDPC符号化処理のブロック長の一例を示す概要図である。
図13】本発明の一態様に係るフレームの再送方法の一例を示す概要図である。
図14】本発明の一態様に係るフレームの再送方法の一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施形態における通信システムは、基地局装置もしくはアクセスポイント装置(Access point: AP)と呼称され、端末装置もしくはステーション装置(Station: STA)を複数備える。また、アクセスポイント装置とステーション装置とで構成される通信システム、ネットワークを基本サービスセット(BSS: Basic service set、管理範囲、セル)と呼ぶ。また、本実施形態に係るステーション装置は、アクセスポイント装置の機能を備えることができる。同様に、本実施形態に係るアクセスポイント装置は、ステーション装置の機能を備えることができる。そのため、以下では、単に通信装置と述べた場合、該通信装置は、ステーション装置とアクセスポイント装置の両方を示すことができる。
【0028】
BSS内の基地局装置および端末装置は、それぞれCSMA/CA(Carrier sense multiple access with collision avoidance)に基づいて、通信を行なうものとする。本実施形態においては、基地局装置が複数の端末装置と通信を行なうインフラストラクチャモードを対象とするが、本実施形態の方法は、端末装置同士が通信を直接行なうアドホックモードでも実施可能である。アドホックモードでは、端末装置が、基地局装置の代わりとなりBSSを形成する。アドホックモードにおけるBSSを、IBSS(Independent Basic Service Set)とも呼称する。以下では、アドホックモードにおいてIBSSを形成する端末装置を、基地局装置とみなすこともできる。本実施形態の方法は、端末装置同士が通信を直接行なうWiFi Direct(登録商標)でも実施可能である。WiFi Directでは、端末装置が、基地局装置の代わりとなりGroupを形成する。以下では、WiFi DirectにおいてGroupを形成するGroup ownerの端末装置を、基地局装置とみなすこともできる。
【0029】
IEEE802.11システムでは、各装置は、共通のフレームフォーマットを持った複数のフレームタイプの送信フレームを送信することが可能である。送信フレームは、物理(Physical:PHY)層、媒体アクセス制御(Medium access control:MAC)層、論理リンク制御(Logical Link Control: LLC)層、でそれぞれ定義されている。それぞれ前記物理層はPHYレイヤ,前記MAC層はMACレイヤとも呼称される。
【0030】
PHYレイヤの送信フレームは、物理プロトコルデータユニット(PPDU: PHY protocol data unit、物理層フレーム)と呼ばれる。PPDUは、物理層での信号処理を行なうためのヘッダ情報等が含まれる物理層ヘッダ(PHYヘッダ)と、物理層で処理されるデータユニットである物理サービスデータユニット(PSDU: PHY service data unit、MACレイヤフレーム)等から構成される。PSDUは無線区間における再送単位となるMACプロトコルデータユニット(MPDU: MAC protocol data unit)が複数集約された集約MPDU(A-MPDU: Aggregated MPDU)で構成されることが可能である。
【0031】
PHYヘッダには、信号の検出・同期等に用いられるショートトレーニングフィールド(STF: Short training field)、データ復調のためのチャネル情報を取得するために用いられるロングトレーニングフィールド(LTF: Long training field)などの参照信号と、データ復調のための制御情報が含まれているシグナル(Signal:SIG)などの制御信号が含まれる。また、STFは、対応する規格に応じて、レガシーSTF(L-STF: Legacy-STF)や、高スループットSTF(HT-STF: High throughput-STF)や、超高スループットSTF(VHT-STF: Very high throughput-STF)や、高効率STF(HE-STF: High efficiency-STF)や、超高スループットSTF(EHT-STF:Extremely High Throughput-STF)等に分類され、LTFやSIGも同様にL-LTF、HT-LTF、VHT-LTF、HE-LTF、L-SIG、HT-SIG、VHT-SIG、HE-SIG、EHT-SIGに分類される。VHT-SIGは更にVHT-SIG-A1とVHT-SIG-A2とVHT-SIG-Bに分類される。同様に、HE-SIGは、HE-SIG-A1~4と、HE-SIG-Bに分類される。また、同一規格における技術更新を想定し、追加の制御情報が含まれているUniversal SIGNAL(U-SIG)フィールドが含まれることができる。
【0032】
さらに、PHYヘッダは当該送信フレームの送信元のBSSを識別する情報(以下、BSS識別情報とも呼称する)を含むことができる。BSSを識別する情報は、例えば、当該BSSのSSID(Service Set Identifier)や当該BSSの基地局装置のMACアドレスであることができる。また、BSSを識別する情報は、SSIDやMACアドレス以外の、BSSに固有な値(例えばBSS Color等)であることができる。
【0033】
PPDUは対応する規格に応じて変調される。例えば、IEEE802.11n規格であれば、直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal frequency division multiplexing)信号に変調される。
【0034】
MPDUはMACレイヤでの信号処理を行なうためのヘッダ情報等が含まれるMACレイヤヘッダ(MAC header)と、MACレイヤで処理されるデータユニットであるMACサービスデータユニット(MSDU: MAC service data unit)もしくはフレームボディ、ならびにフレームに誤りがないかをどうかをチェックするフレーム検査部(Frame check sequence:FCS)で構成されている。また、複数のMSDUは集約MSDU(A-MSDU: Aggregated MSDU)として集約されることも可能である。
【0035】
MACレイヤの送信フレームのフレームタイプは、装置間の接続状態などを管理するマネジメントフレーム、装置間の通信状態を管理するコントロールフレーム、および実際の送信データを含むデータフレームの3つに大きく分類され、それぞれは更に複数種類のサブフレームタイプに分類される。コントロールフレームには、受信完了通知(ACK: Acknowledge)フレーム、送信要求(RTS: Request to send)フレーム、受信準備完了(CTS: Clear to send)フレーム等が含まれる。マネジメントフレームには、ビーコン(Beacon)フレーム、プローブ要求(Probe request)フレーム、プローブ応答(Probe response)フレーム、認証(Authentication)フレーム、接続要求(Association request)フレーム、接続応答(Association response)フレーム等が含まれる。データフレームには、データ(Data)フレーム、ポーリング(CF-poll)フレーム等が含まれる。各装置は、MACヘッダに含まれるフレームコントロールフィールドの内容を読み取ることで、受信したフレームのフレームタイプおよびサブフレームタイプを把握することができる。
【0036】
なお、ACKには、Block ACKが含まれても良い。Block ACKは、複数のMPDUに対する受信完了通知を実施可能である。また、ACKには、複数の通信装置に対する受信完了通知を含むMulti STA Block ACKが含まれても良い。
【0037】
ビーコンフレームには、ビーコンが送信される周期(Beacon interval)やSSIDを記載するフィールド(Field)が含まれる。基地局装置は、ビーコンフレームを周期的にBSS内に報知することが可能であり、端末装置はビーコンフレームを受信することで、端末装置周辺の基地局装置を把握することが可能である。端末装置が基地局装置より報知されるビーコンフレームに基づいて基地局装置を把握することを受動的スキャニング(Passive scanning)と呼ぶ。一方、端末装置がプローブ要求フレームをBSS内に報知することで、基地局装置を探査することを能動的スキャニング(Active scanning)と呼ぶ。基地局装置は該プローブ要求フレームへの応答としてプローブ応答フレームを送信することが可能であり、該プローブ応答フレームの記載内容は、ビーコンフレームと同等である。
【0038】
端末装置は基地局装置を認識したあとに、該基地局装置に対して接続処理を行なう。接続処理は認証(Authentication)手続きと接続(Association)手続きに分類される。端末装置は接続を希望する基地局装置に対して、認証フレーム(認証要求)を送信する。基地局装置は、認証フレームを受信すると、該端末装置に対する認証の可否などを示すステータスコードを含んだ認証フレーム(認証応答)を該端末装置に送信する。端末装置は、該認証フレームに記載されたステータスコードを読み取ることで、自装置が該基地局装置に認証を許可されたか否かを判断することができる。なお、基地局装置と端末装置は認証フレームを複数回やり取りすることが可能である。
【0039】
端末装置は認証手続きに続いて、基地局装置に対して接続手続きを行なうために、接続
要求フレームを送信する。基地局装置は接続要求フレームを受信すると、該端末装置の接続を許可するか否かを判断し、その旨を通知するために、接続応答フレームを送信する。接続応答フレームには、接続処理の可否を示すステータスコードに加えて、端末装置を識別するためのアソシエーション識別番号(AID: Association identifier)が記載されている。基地局装置は接続許可を出した端末装置にそれぞれ異なるAIDを設定することで、複数の端末装置を管理することが可能となる。
【0040】
接続処理が行われたのち、基地局装置と端末装置は実際のデータ伝送を行なう。IEEE802.11システムでは、分散制御機構(DCF: Distributed Coordination Function)と集中制御機構(PCF: Point Coordination Function)、およびこれらが拡張された機構(拡張分散チャネルアクセス(EDCA: Enhanced distributed channel access)や、ハイブリッド制御機構(HCF: Hybrid coordination function)等)が定義されている。以下では、基地局装置が端末装置にDCFで信号を送信する場合を例にとって説明するが、端末装置から基地局装置にDCFで信号を送信する場合も同様である。
【0041】
DCFでは、基地局装置および端末装置は、通信に先立ち、自装置周辺の無線チャネルの使用状況を確認するキャリアセンス(CS: Carrier sense)を行なう。例えば、送信局である基地局装置は予め定められたクリアチャネル評価レベル(CCAレベル: Clear channel assessment level)よりも高い信号を該無線チャネルで受信した場合、該無線チャネルでの送信フレームの送信を延期する。以下では、該無線チャネルにおいて、CCAレベル以上の信号が検出される状態をビジー(Busy)状態、CCAレベル以上の信号が検出されない状態をアイドル(Idle)状態と呼ぶ。このように、各装置が実際に受信した信号の電力(受信電力レベル)に基づいて行なうCSを物理キャリアセンス(物理CS)と呼ぶ。なおCCAレベルをキャリアセンスレベル(CS level)、もしくはCCA閾値(CCA threshold:CCAT)とも呼ぶ。なお、基地局装置および端末装置は、CCAレベル以上の信号を検出した場合は、少なくともPHYレイヤの信号を復調する動作に入る。
【0042】
基地局装置は送信する送信フレームに種類に応じたフレーム間隔(IFS: Inter frame space)だけキャリアセンスを行ない、無線チャネルがビジー状態かアイドル状態かを判断する。基地局装置がキャリアセンスする期間は、これから基地局装置が送信する送信フレームのフレームタイプおよびサブフレームタイプによって異なる。IEEE802.11システムでは、期間の異なる複数のIFSが定義されており、最も高い優先度が与えられた送信フレームに用いられる短フレーム間隔(SIFS: Short IFS)、優先度が比較的高い送信フレームに用いられるポーリング用フレーム間隔(PCF IFS: PIFS)、最も優先度の低い送信フレームに用いられる分散制御用フレーム間隔(DCF IFS: DIFS)などがある。基地局装置がDCFでデータフレームを送信する場合、基地局装置はDIFSを用いる。
【0043】
基地局装置はDIFSだけ待機したあとで、フレームの衝突を防ぐためのランダムバックオフ時間だけ更に待機する。IEEE802.11システムにおいては、コンテンションウィンドウ(CW: Contention window)と呼ばれるランダムバックオフ時間が用いられる。CSMA/CAでは、ある送信局が送信した送信フレームは、他送信局からの干渉が無い状態で受信局に受信されることを前提としている。そのため、送信局同士が同じタイミングで送信フレームを送信してしまうと、フレーム同士が衝突してしまい、受信局は正しく受信することができない。そこで、各送信局が送信開始前に、ランダムに設定される時間だけ待機することで、フレームの衝突が回避される。基地局装置はキャリアセンスによって無線チャネルがアイドル状態であると判断すると、CWのカウントダウンを開始し、CWが0となって初めて送信権を獲得し、端末装置に送信フレームを送信できる。なお、CWのカウントダウン中に基地局装置がキャリアセンスによって無線チャネルをビジ
ー状態と判断した場合は、CWのカウントダウンを停止する。そして、無線チャネルがアイドル状態となった場合、先のIFSに続いて、基地局装置は残留するCWのカウントダウンを再開する。
【0044】
次に、フレーム受信の詳細について説明する。受信局である端末装置は、送信フレームを受信し、該送信フレームのPHYヘッダを読み取り、受信した送信フレームを復調する。そして、端末装置は復調した信号のMACヘッダを読み取ることで、該送信フレームが自装置宛てのものか否かを認識することができる。なお、端末装置は、PHYヘッダに記載の情報(例えばVHT-SIG-Aの記載されるグループ識別番号(GID: Group identifier, Group ID))に基づいて、該送信フレームの宛先を判断することも可能である。
【0045】
端末装置は、受信した送信フレームが自装置宛てのものと判断し、そして誤りなく送信フレームを復調できた場合、フレームを正しく受信できたことを示すACKフレームを送信局である基地局装置に送信しなければならない。ACKフレームは、SIFS期間の待機だけ(ランダムバックオフ時間は取られない)で送信される最も優先度の高い送信フレームの一つである。基地局装置は端末装置から送信されるACKフレームの受信をもって、一連の通信を終了する。なお、端末装置がフレームを正しく受信できなかった場合、端末装置はACKを送信しない。よって基地局装置は、フレーム送信後、一定期間(SIFS+ACKフレーム長)の間、受信局からのACKフレームを受信しなかった場合、通信は失敗したものとして、通信を終了する。このように、IEEE802.11システムの1回の通信(バーストとも呼ぶ)の終了は、ビーコンフレームなどの報知信号の送信の場合や、送信データを分割するフラグメンテーションが用いられる場合などの特別な場合を除き、必ずACKフレームの受信の有無で判断されることになる。
【0046】
端末装置は、受信した送信フレームが自装置宛てのものではないと判断した場合、PHYヘッダ等に記載されている該送信フレームの長さ(Length)に基づいて、ネットワークアロケーションベクタ(NAV: Network allocation vector)を設定する。端末装置は、NAVに設定された期間は通信を試行しない。つまり、端末装置は物理CSによって無線チャネルがビジー状態と判断した場合と同じ動作をNAVに設定された期間行なうことになるから、NAVによる通信制御は仮想キャリアセンス(仮想CS)とも呼ばれる。NAVは、PHYヘッダに記載の情報に基づいて設定される場合に加えて、隠れ端末問題を解消するために導入される送信要求(RTS: Request to send)フレームや、受信準備完了(CTS: Clear to send)フレームによっても設定される。
【0047】
各装置がキャリアセンスを行ない、自律的に送信権を獲得するDCFに対して、PCFは、ポイントコーディネータ(PC: Point coordinator)と呼ばれる制御局が、BSS内の各装置の送信権を制御する。一般に基地局装置がPCとなり、BSS内の端末装置の送信権を獲得することになる。
【0048】
PCFによる通信期間には、非競合期間(CFP: Contention free period)と競合期間(CP: Contention period)が含まれる。CPの間は、前述してきたDCFに基づいて通信が行われ、PCが送信権を制御するのはCFPの間となる。PCである基地局装置は、CFPの期間(CFP Max duration)などが記載されたビーコンフレームをPCFの通信に先立ちBSS内に報知する。なお、PCFの送信開始時に報知されるビーコンフレームの送信にはPIFSが用いられ、CWを待たずに送信される。該ビーコンフレームを受信した端末装置は、該ビーコンフレームに記載されたCFPの期間をNAVに設定する。以降、NAVが経過する、もしくはCFPの終了をBSS内に報知する信号(例えばCF-endを含んだデータフレーム)が受信されるまでは、端末装置はPCより送信される送信権獲得をシグナリングする信号(例えばCF-pollを含んだデータフレーム)を受信した場合のみ、送信権を獲得可能である。なお、CFPの期間内では、同一BSS内での
パケットの衝突は発生しないから、各端末装置はDCFで用いられるランダムバックオフ時間を取らない。
【0049】
無線媒体は複数のリソースユニット(Resource unit:RU)に分割されることができる。図1は無線媒体の分割状態の1例を示す概要図である。例えば、リソース分割例1では、無線通信装置は無線媒体である周波数リソース(サブキャリア)を9個のRUに分割することができる。同様に、リソース分割例2では、無線通信装置は無線媒体であるサブキャリアを5個のRUに分割することができる。当然ながら、図1に示すリソース分割例はあくまで1例であり、例えば、複数のRUはそれぞれ異なるサブキャリア数によって構成されることも可能である。また、RUとして分割される無線媒体には周波数リソースだけではなく空間リソースも含まれることができる。無線通信装置(例えばAP)は、各RUに異なる端末装置宛てのフレームを配置することで、複数の端末装置(例えば複数のSTA)に同時にフレームを送信することができる。APは、無線媒体の分割の状態を示す情報(Resource allocation information)を、共通制御情報として、自装置が送信するフレームのPHYヘッダに記載することができる。更に、APは、各STA宛てのフレームが配置されたRUを示す情報(resource unit assignment information)を固有制御情報として、自装置が送信するフレームのPHYヘッダに記載することができる。
【0050】
また、複数の端末装置(例えば複数のSTA)は、それぞれ割り当てられたRUにフレームを配置して送信することで、同時にフレームを送信することができる。複数のSTAは、APから送信されるトリガ情報を含んだフレーム(Trigger frame:TF)を受信した後、所定の期間待機したのち、フレーム送信を行なうことができる。各STAは、該TFに記載の情報に基づいて自装置に割り当てられたRUを把握することができる。また、各STAは、該TFを基準としたランダムアクセスによりRUを獲得することができる。
【0051】
APは、1つのSTAに複数のRUを同時に割り当てることができる。該複数のRUは、連続するサブキャリアで構成されることも出来るし、不連続のサブキャリアで構成されることも出来る。APは、1つのSTAに割り当てた複数のRUを用いて、1つのフレームを送信することが出来るし、複数のフレームをそれぞれ異なるRUに割り当てて送信することができる。該複数のフレームの少なくとも1つは、Resource allocation informationを送信する複数の端末装置に対する共通の制御情報を含むフレームであることができる。
【0052】
1つのSTAは、APより複数のRUを割り当てられることができる。STAは、割り当てられた複数のRUを用いて、1つのフレームを送信することができる。また、STAは割り当てられた複数のRUを用いて、複数のフレームをそれぞれ異なるRUに割り当てて送信することができる。該複数のフレームは、それぞれ異なるフレームタイプのフレームであることができる。
【0053】
APは、1つのSTAに複数のAIDを割り当てることができる。APは、1つのSTAに割り当てた複数のAIDに対して、それぞれRUを割り当てることができる。APは、1つのSTAに割り当てた複数のAIDに対して、それぞれ割り当てたRUを用いて、それぞれ異なるフレームを送信することができる。該異なるフレームは、それぞれ異なるフレームタイプのフレームであることができる。
【0054】
1つのSTAは、APより複数のAIDを割り当てられることができる。1つのSTAは割り当てられた複数のAIDに対して、それぞれRUを割り当てられることができる。1つのSTAは、自装置に割り当てられた複数のAIDにそれぞれ割り当てられたRUは、全て自装置に割り当てられたRUと認識し、該割り当てられた複数のRUを用いて、1つのフレームを送信することができる。また、1つのSTAは、該割り当てられた複数のRUを用いて、複数のフレームを送信することができる。このとき、該複数のフレームには、それぞれ割り当てられたRUに関連付けられたAIDを示す情報を記載して送信することができる。APは、1つのSTAに割り当てた複数のAIDに対して、それぞれ割り当てたRUを用いて、それぞれ異なるフレームを送信することができる。該異なるフレームは、異なるフレームタイプのフレームであることができる。
【0055】
以下では、基地局装置、端末装置を総称して、無線通信装置もしくは通信装置とも呼称する。また、ある無線通信装置が別の無線通信装置と通信を行う際にやりとりされる情報をデータ(data)とも呼称する。つまり、無線通信装置は、基地局装置及び端末装置を含む。
【0056】
無線通信装置は、PPDUを送信する機能と受信する機能のいずれか、または両方を備える。図2は、無線通信装置が送信するPPDUの構成の一例を示した図である。IEEE802.11a/b/g規格に対応するPPDUはL-STF、L-LTF、L-SIG及びDataフレーム(MAC Frame、MACフレーム、ペイロード、データ部、データ、情報ビット等)を含んだ構成である。IEEE802.11n規格に対応するPPDUはL-STF、L-LTF、L-SIG、HT-SIG、HT-STF、HT-LTF及びDataフレームを含んだ構成である。IEEE802.11ac規格に対応するPPDUはL-STF、L-LTF、L-SIG、VHT-SIG-A、VHT-STF、VHT-LTF、VHT-SIG-B及びMACフレームの一部あるいは全てを含んだ構成である。IEEE802.11ax標準におけるPPDUは、L-STF、L-LTF、L-SIG、L-SIGが時間的に繰り返されたRL-SIG、HE-SIG-A、HE-STF、HE-LTF、HE-SIG-B及びDataフレームの一部あるいは全てを含んだ構成である。IEEE802.11be標準で検討されているPPDUは、L-STF、L-LTF、L-SIG、RL-SIG、U-SIG、EHT-SIG、EHT-STF、EHT-LTF及びDataフレームの一部あるいは全てを含んだ構成である。
【0057】
図2中の点線で囲まれているL-STF、L-LTF及びL-SIGはIEEE802.11規格において共通に用いられる構成である(以下では、L-STF、L-LTF及びL-SIGをまとめてL-ヘッダとも呼称する)。例えばIEEE802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置は、IEEE802.11n/ac規格に対応するPPDU内のL-ヘッダを適切に受信することが可能である。IEEE802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置は、IEEE802.11n/ac規格に対応するPPDUを、IEEE802.11a/b/g規格に対応するPPDUとみなして受信することができる。
【0058】
ただし、IEEE802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置はL-ヘッダの後に続く、IEEE802.11n/ac規格に対応するPPDUを復調することができないため、送信アドレス(TA:Transmitter Address)や受信アドレス(RA:Receiver Address)やNAVの設定に用いられるDuration/IDフィールドに関する情報を復調することができない。
【0059】
IEEE802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置が適切にNAVを設定する(あるいは所定の期間受信動作を行う)ための方法として、IEEE802.11は、L-SIGにDuration情報を挿入する方法を規定している。L-SIG内の伝送速度に関する情報(RATE field、L-RATE field、L-RATE、L_DATARATE、L_DATARATE field)、伝送期間に関する情報(LENGTH field、L-LENGTH field、L-LENGTH)は、IEEE802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置が適切にNAVを設定するために使用される。
【0060】
図3は、L-SIGに挿入されるDuration情報の方法の一例を示す図である。図3においては、一例としてIEEE802.11ac規格に対応するPPDU構成を示しているが、PPDU構成はこれに限定されない。IEEE802.11n規格に対応のPPDU構成及びIEEE802.11ax規格に対応するPPDU構成でも良い。TXTIMEは、PPDUの長さに関する情報を備え、aPreambleLengthは、プリアンブル(L-STF+L-LTF)の長さに関する情報を備え、aPLCPHeaderLengthは、PLCPヘッダ(L-SIG)の長さに関する情報を備える。L_LENGTHは、IEEE802.11規格の互換性をとるために設定される仮想的な期間であるSignal Extension、L_RATEに関連するNops、1シンボル(symbol,OFDM symbol等)の期間に関する情報であるaSymbolLength、PLCP Service fieldが含むビット数を示すaPLCPServiceLength、畳みこみ符号のテールビット数を示すaPLCPConvolutionalTailLengthに基づいて算出される。無線通信装置は、L_LENGTHを算出し、L-SIGに挿入することができる。また、無線通信装置は、L-SIG Durationを算出することができる。L-SIG Durationは、L_LENGTHを含むPPDUと、その応答として宛先の無線通信装置より送信されることが期待されるACKとSIFSの期間を合計した期間に関する情報を示す。
【0061】
図4は、L-SIG TXOP Protectionにおける、L-SIG Durationの一例を示した図である。DATA(フレーム、ペイロード、データ等)は、MACフレームとPLCPヘッダの一部または両方から構成される。また、BAはBlock ACK、またはACKである。PPDUは、L-STF,L-LTF,L-SIGを含み、さらにDATA,BA、RTSあるいはCTSのいずれかまたはいずれか複数を含んで構成されることができる。図4に示す一例では、RTS/CTSを用いたL-SIG TXOP Protectionを示しているが、CTS-to-Selfを用いても良い。ここで、MAC Durationは、Duration/ID fieldの値によって示される期間である。また、InitiatorはL-SIG TXOP Protection期間の終了を通知するためにCF_Endフレームを送信することができる。
【0062】
続いて、無線通信装置が受信するフレームからBSSを識別する方法について説明する。無線通信装置が、受信するフレームからBSSを識別するためには、PPDUを送信する無線通信装置が当該PPDUにBSSを識別するための情報(BSS color,BSS識別情報、BSSに固有な値)を挿入することが好適であり、BSS colorを示す情報をHE-SIG-Aに記載することが可能である。
【0063】
無線通信装置は、L-SIGを複数回送信する(L-SIG Repetition)ことができる。例えば、受信側の無線通信装置は、複数回送信されるL-SIGをMRC(Maximum Ratio Combining)を用いて受信することで、L-SIGの復調精度が向上する。さらに無線通信装置は、MRCによりL-SIGを正しく受信完了した場合に、当該L-SIGを含むPPDUがIEEE802.11ax規格に対応するPPDUであると解釈することができる。
【0064】
無線通信装置は、PPDUの受信動作中も、当該PPDU以外のPPDUの一部(例えば、IEEE802.11により規定されるプリアンブル、L-STF、L-LTF、PLCPヘッダ等)の受信動作を行うことができる(二重受信動作とも呼称する)。無線通信装置は、PPDUの受信動作中に、当該PPDU以外のPPDUの一部を検出した場合に、宛先アドレスや、送信元アドレスや、PPDUあるいはDATA期間に関する情報の
一部または全部を更新することができる。
【0065】
ACK及びBAは、応答(応答フレーム)とも呼称されることができる。また、プローブ応答や、認証応答、接続応答を応答と呼称することができる。
【0066】
図5は、本実施形態に係る無線通信システムの一例を示した図である。無線通信システム3-1は、無線通信装置1-1及び無線通信装置2-1~2-3を備えている。なお、無線通信装置1-1を基地局装置1-1とも呼称し、無線通信装置2-1~2-3を端末装置2-1~3とも呼称する。また、無線通信装置2-1~2-3および端末装置2-1~2-3を、無線通信装置1-1に接続されている装置として、無線通信装置2Aおよび端末装置2Aとも呼称する。無線通信装置1-1及び無線通信装置2Aは、無線接続されており、お互いにPPDUの送受信を行うことができる状態にある。また、本実施形態に係る無線通信システムは、無線通信システム3-1の他に無線通信システム3-2を備えてもよい。無線通信システム3-2は、無線通信装置1-2及び無線通信装置2-4~6を備えている。なお、無線通信装置1-2を基地局装置1-2とも呼称し、無線通信装置2-4~6を端末装置2-4~6とも呼称する。また、無線通信装置2-4~6および端末装置2-4~6を、無線通信装置1-2に接続されている装置として、無線通信装置2Bおよび端末装置2Bとも呼称する。無線通信システム3-1、無線通信システム3-2は異なるBSSを形成するが、これはESS(Extended Service Set)が異なることを必ずしも意味していない。ESSは、LAN(Local Area Network)を形成するサービスセットを示している。つまり、同じESSに属する無線通信装置は、上位層から同一のネットワークに属しているとみなされることができる。また、BSSはDS(Distribution System)を介して結合されてESSを形成する。なお、無線通信システム3-1、3-2のそれぞれは、さらに複数の無線通信装置を備えることも可能である。
【0067】
図5において、以下の説明においては、無線通信装置2Aが送信する信号は、無線通信装置1-1および無線通信装置2Bには到達する一方で、無線通信装置1-2には到達しないものとする。つまり、無線通信装置2Aがあるチャネルを使って信号を送信すると、無線通信装置1-1と、無線通信装置2Bは、当該チャネルをビジー状態と判断する一方で、無線通信装置1-2は、当該チャネルをアイドル状態と判断する。また、無線通信装置2Bが送信する信号は、無線送信装置1-2および無線通信装置2Aには到達する一方で、無線通信装置1-1には到達しないものとする。つまり、無線通信装置2Bがあるチャネルを使って信号を送信すると、無線通信装置1-2と、無線通信装置2Aは、当該チャネルをビジー状態と判断する一方で、無線通信装置1-1は、当該チャネルをアイドル状態と判断する。
【0068】
MLD(Multi-link Device)は、マルチリンク通信可能である無線通信装置である。後述する本実施形態のアクセスポイント装置やステーション装置は、マルチリンク通信に対応するMLDである。前述した無線通信装置1-1、1-2、2A、2Bは、MLDであるとして説明するが、実際の運用では無線通信システム内の全ての無線通信装置がマルチリンク通信に対応していなくともよい。
【0069】
以下の実施形態では、無線通信装置1-1(基地局装置1-1)が送信し、無線通信装置2-1(端末装置2-1)が受信する場合を説明するが、本発明はこれに限らず、無線通信装置2-1(端末装置2-1)が送信し、無線通信装置1-1(基地局装置1-1)が受信する場合も含まれる。なお、無線通信装置1-1及び無線通信装置2-1の装置構成は、特に断らない限り、後述する図8図9の装置構成例と同様である。
【0070】
本実施形態のマルチリンクのセットアップの概要例を図6に示す。当該図中では、MLDに対応する無線通信装置の例として、MLD無線通信装置1-1とMLD無線通信装置
2-1を用いて示す。当該MLD無線通信装置1-1は、マルチリンクを確立するための手続き(マルチリンク確立要求10-1、マルチリンク確立応答10-2)を実施してマルチリンクを確立し、マルチリンクを維持することができる。ここで、マルチリンクを維持するということは、マルチリンクのための所定の設定に基づいてフレームの送受信を行うことができることを意味する。また、当該MLD無線通信装置1-1は、マルチリンクを維持しつつ、マルチリンクの設定を変更するための手続き(マルチリンク変更要求10-3、マルチリンク変更応答10-4)の他、当該マルチリンク変更要求10-3と当該マルチリンク変更応答10-4を用いてマルチリンクを解除するための手続きを実施し、マルチリンクを解除することもできる。
【0071】
当該図6中の当該MLD無線通信装置2-1は、initiator(マルチリンクイニシエータ)とも呼称し、当該MLD無線通信装置1-1に対してマルチリンク確立要求10-1を送信する。なお、マルチリンクイニシエータはMLD無線通信装置2-1ではなく、MLD無線通信装置1-1であってもよい。マルチリンク確立要求10-1には、自無線通信装置のマルチリンク能力情報(Capability情報)、マルチリンク動作モード情報などの制御情報を含めてもよい。マルチリンク測定情報(Measurement情報)は、自無線通信装置が使用可能な周波数バンド(もしくはチャネル、もしくはサブチャネル)の無線信号品質であって、マルチリンク確立要求10-1に含まれていてもよいし、別のフレームを用いてMLD無線通信装置1-1に報告されてもよい。当該無線信号品質は、例えば、受信電力レベル、SNR(Signal to Noise Ratio)などがあるが、これらに限られず信号品質の良し悪しやリンクの負荷状況の判断や指標に用いることができる値であればよい。当該の受信電力レベルやSNRの測定対象は、MLD無線通信装置2-1を構成する各サブアクセスポイント装置が送信するビーコン(Beacon)などのブロードキャストフレーム(報知フレーム)としてもよい。ブロードキャストフレームは、MLD無線通信装置1-1に接続する無線通信装置2Aにブロードキャストされるので、各無線通信装置2Aは同じフレームを対象として無線信号品質測定でき、各無線通信装置2Aの受信状況を相対的に比較してもよい。また、ビーコン以外にブロードキャスト、マルチキャストされるマネジメントフレームや、コントロールフレームを測定対象としてもよい。なお、当該マルチリンク測定情報の測定は、サブ無線通信装置(サブステーション装置)の受信部が独立に実施し、上位層処理部10001-1に伝達される。当該測定値は、サブ無線通信装置単位毎に扱ってもよいし、全サブステーションを統合して扱ってもよい。
【0072】
MLD無線通信装置1-1ならびにMLD無線通信装置2-1を構成するリンク数は、2つ以上の任意の数である。当該各々のリンクのキャリア周波数は、2.4GHz帯、5GHz帯の他に、6GHz帯、60GHz帯などに設定可能であるが、各国の法規制に応じて変化することもある。
【0073】
マルチリンク能力情報には、自無線通信装置が使用可能なチャネル情報(周波数、帯域幅など)、STR(Simultaneously Transmission and Reception)可否、フレーム同期可否、マルチリンクアグリゲーション可否、マルチリンクスイッチ可否、マルチリンクTXOP(最大値、最小値など)などの情報が含まれてよい。マルチリンク動作モード情報には、マルチリンクを構成する各リンクのチャネル情報(周波数、帯域幅など)、マルチリンクTXOP limit、マルチリンクアグリゲーション、マルチリンクスイッチ、フレーム同期、フレーム非同期、STR、非STR、応答フレーム方式(応答フレーム接続情報、応答フレームタイミング情報、など)、応答フレームパラメータ(フレーム長の閾値、応答フレーム送信期限時間、など)、などが含まれていてもよい。
【0074】
マルチリンク確立要求は、各々のリンクで独立して別々に送信してもよいし、もしくはマルチリンクを構成するリンクのうちの一つで送信してもよい。同様に、マルチリンク測定情報は、各々のリンクで独立して別々に送信してもよいし、もしくはマルチリンクを構
成するリンクのうちの一つで送信してもよい(マルチリンク確立要求にマルチリンク測定情報を含めない場合)。一つのリンクで送信する場合、マルチリンクのマネジメントのためのフレーム送受信を行うリンクとして、マルチリンク管理リンク(マルチリンクマネジメントリンク)とも呼ぶ。
【0075】
本実施形態に係るMLDの構成例を図7に示す。当該図中のマルチリンクに対応するアクセスポイント装置20000-1(以降、AP‐MLDとも呼称する)とマルチリンクに対応するステーション装置30000-1(以降、STA‐MLDとも呼称する)は、マルチリンクを構成する各々のリンクの周波数バンド(もしくはチャネル、もしくはサブチャネル)に対応した複数のサブ無線通信装置から構成される。当該AP‐MLDは、3つのサブ無線通信装置、この場合は3つのサブアクセスポイント装置(20000-2、200000-3、20000-4)から構成されている。同様に、当該STA‐MLDは、3つのサブ無線通信装置、この場合は3つのサブステーション装置(30000-2、300000-3、30000-4)から構成されている。なお、サブ無線通信装置(サブアクセスポイント装置、サブステーション装置など)は無線通信装置内の一部の回路で構成されてもよく、サブ無線通信部(サブアクセスポイント部、サブステーション部)と呼称してもよい。
【0076】
当該図7では、説明のために複数のサブ無線通信装置を論理的に別々のブロック(四角)で示している。物理的には、1つの無線通信装置から構成されてもよい。もしくは、物理的には、別々のサブ無線通信装置を構成してもよく、各々のサブアクセスポイント装置は、結線9-1や9-2により必要な情報を送受信し、各々のサブステーション装置は結線9-3や9-4により必要な情報を送受信する。この場合、当該別々のサブ無線通信装置は、MLMEで管理される。本実施形態の例では、主に前者の場合、つまり物理的に1つの無線通信装置10-1から構成され、当該無線通信装置10-1の構成は、図8図9を用いて後述する。
【0077】
なお、1つのAP‐MLDに含まれるサブアクセスポイント装置の数、一つのSTA‐MLDに含まれるサブステーション装置の数は、各々の無線通信装置が搭載する性能に応じて変わる。つまり、1つの無線通信システム内に位置する各々の無線通信装置が保有するサブ無線通信装置(サブアクセスポイント装置、サブステーション装置)の数は一致しなくてもよい。
【0078】
当該図7において、サブステーション装置30000-2は、サブアクセスポイント装置20000-2に接続(Association)し、リンク1を確立する。サブステーション装置30000-3は、サブアクセスポイント装置20000-3に接続(Association)し、リンク2を確立する。サブステーション装置30000-4は、サブアクセスポイント装置20000-4に接続(Association)し、リンク3を確立する。本実施形態の例では、マルチリンクを構成するリンク数は3つとするが、これには限られず2以上の任意の数である。また、リンク1のキャリア周波数は2.4GHz帯、リンク2のキャリア周波数は5GHz帯、リンク3のキャリア周波数は6GHz帯とする。しかし、当該各々のリンクが使用する周波数は、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯、60GHz帯、その他、無線通信システムがサポートする周波数バンド、チャネル、サブチャネルの中から任意に設定可能であり、各国の法規制に応じて変化することもある。
【0079】
図8は、無線通信装置1-1、1-2、2A及び2B、AP‐MLDおよびSTA‐MLD(以下では、まとめて無線通信装置10-1とも呼称する)の装置構成の一例を示した図である。無線通信装置10-1は、上位層部(上位層処理ステップ)10001-1と、自律分散制御部(自律分散制御ステップ)10002-1と、送信部(送信ステップ)10003-1と、受信部(受信ステップ)10004-1と、アンテナ部10005-1と、を含んだ構成である。
【0080】
上位層部10001-1は、自無線通信装置内で扱う情報(送信フレームに関わる情報やMIB(Management Information Base)など)および他無線通信装置から受信したフレームについて、物理層よりも上位の層、例えばMAC層やLLC層の情報処理を行う。マルチリンク制御部10001a-1は、上位層部10001-1に含まれる構成であってもよいが、別に独立していてもよい。
【0081】
上位層部10001-1は、MACレイヤにてマルチリンクを確立したリンクの負荷状況を測定し、マルチリンク制御部10001a-1では、当該測定結果に応じて再送先リンクの候補を選出する。当該再送先リンクの候補は、フレームに対する再送先リンクを指定する情報を含める。当該マルチリンク制御部10001a-1は、当該再送先リンクの候補または当該再送先リンクの候補に再送方法(ARQ/HARQ)を含めた制御情報を生成し、PHYレイヤへと伝達する。例えば、当該マルチリンク制御部10001a-1は、当該制御情報に再送先リンクの候補が設定されていない場合、ARQによるフレームの再送を実施し、当該制御情報にHARQが設定されている場合、当該再送先リンクの候補においてパケット合成を実施する。
【0082】
当該各々のリンクの負荷状況は、当該上位層部10001-1のMACレイヤにおけるチャネルの使用状況、各RUに対するフレームの割り当て状態(Resource allocation)、APの運用状況を示すBSS負荷情報(BSS load information)、BSS平均アクセス遅延(BSS average access delay)、BSSアクセスカテゴリー遅延(BSS Access Category Delay)に基づいて算出される値であってもよい。また、当該各々のリンクの負荷状況は、AP-MLDとマルチリンクを確立する全てのSTAまたはSTA‐MLDが通知する当該測定値であってもよい。なお、リンクの負荷状況は、当該測定値に代わって、負荷状況を段階的に反映した識別子であってもよい。
【0083】
上位層部10001-1は、MACレイヤへと伝達されたフレームからMPDUまたはMPDUを集約したA-MPDUフレームを生成する。当該マルチリンク制御部10001a-1は、当該フレームと当該各々のリンクにそれぞれTIDを割り当てるTID to link mappingを実施する。なお、当該各々のリンクには、複数のTIDを割り当てることができる。また、当該マルチリンク制御部10001a-1は、当該フレームをPHYレイヤに伝達し、PHYヘッダに当該制御情報を含めたPPDUを生成する。当該PHYヘッダには、同期検出のためのPLCPプリアンブル、受信信号強度に応じて変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)を定めるためのPLCPヘッダなどフレーム復号時に必要な情報が含まれているものとする。当該AP‐MLDにおける送信部10003-1は、当該PPDUと同一のTIDが割り当てられたリンクでフレームの送信を実施する。
【0084】
上位層部10001-1は、他のネットワークと接続され、自律分散制御部10002-1にフレームやトラフィックに関する情報を通知することができる。トラフィックに関する情報とは、例えば、ビーコンなどのマネジメントフレームに含まれる制御情報であってもよいし、自無線通信装置宛てに他の無線通信装置が報告する測定情報であってもよい。さらには、宛先を限定せず(自装置宛であってもよいし、他装置宛であってもよいし、ブロードキャスト、マルチキャストでもよい)、マネジメントフレームやコントロールフレームに含まれる制御情報であってもよい。
【0085】
図9は、自律分散制御部10002-1の装置構成の一例を示した図である。制御部10002-1は、CCA部(CCAステップ)10002a-1と、バックオフ部(バックオフステップ)10002b-1と、送信判断部(送信判断ステップ)10002c-1とを含んだ構成である。
【0086】
CCA部10002a-1は、受信部10004-1から通知される、無線リソースを介して受信する受信信号電力に関する情報と、受信信号に関する情報(復号後の情報を含む)のいずれか一方、または両方を用いて、当該無線リソースの状態判断(busyまたはidleの判断を含む)を行うことができる。CCA部10002a-1は、当該無線リソースの状態判断情報を、バックオフ部10002b-1及び送信判断部10002c-1に通知することができる。
【0087】
バックオフ部10002b-1は、無線リソースの状態判断情報を用いて、バックオフを行うことができる。バックオフ部10002b-1は、Contention Window(CW)を生成し、カウントダウン機能を有する。例えば、無線リソースの状態判断情報がidleを示す場合に、CWのカウントダウンを実行し、無線リソースの状態判断情報がbusyを示す場合に、CWのカウントダウンを停止することができる。バックオフ部10002b-1は、CWの値を送信判断部10002c-1に通知することができる。
【0088】
送信判断部10002c-1は、無線リソースの状態判断情報、またはCWの値のいずれか一方、あるいは両方を用いて送信判断を行う。例えば、無線リソースの状態判断情報がidleを示し、CWの値が0の時に送信判断情報を送信部10003-1に通知することができる。また、無線リソースの状態判断情報がidleを示す場合に送信判断情報を送信部10003-1に通知することができる。
【0089】
送信部10003-1は、物理層フレーム生成部(物理層フレーム生成ステップ)10003a-1と、無線送信部(無線送信ステップ)10003b-1とを含んだ構成である。物理層フレーム生成部10003a-1は、送信判断部10002c-1から通知される送信判断情報に基づき、物理層フレーム(以下、PPDUとも呼称する)を生成する機能を有する。物理層フレーム生成部10003a-1は、上位層から送られる送信フレームに対して誤り訂正符号化、変調、プレコーディングフィルタ乗算等を施す。物理層フレーム生成部10003a-1は、生成した物理層フレームを無線送信部10003b-1に通知する。
【0090】
物理層フレーム生成部10003a-1が生成するフレームには、制御情報が含まれる。該制御情報には、各無線通信装置宛てのデータが、どのRU(ここでRUには周波数リソースと空間リソースの両方を含む)に配置されているかを示す情報が含まれる。また、物理層フレーム生成部10003a-1が生成するフレームには、宛先端末である無線通信装置にフレーム送信を指示するトリガーフレームが含まれる。該トリガーフレームには、フレーム送信を指示された無線通信装置がフレームを送信する際に用いるRUを示す情報が含まれている。
【0091】
無線送信部10003b-1は、物理層フレーム生成部10003a-1が生成する物理層フレームを、無線周波数(RF: Radio Frequency)帯の信号に変換し、無線周波数信号を生成する。無線送信部10003b-1が行う処理には、デジタル・アナログ変換、フィルタリング、ベースバンド帯からRF帯への周波数変換等が含まれる。
【0092】
受信部10004-1は、無線受信部(無線受信ステップ)10004a-1と、信号復調部(信号復調ステップ)10004b-1を含んだ構成である。受信部10004-1は、アンテナ部10005-1が受信するRF帯の信号から受信信号電力に関する情報を生成する。受信部10004-1は、受信信号電力に関する情報と、受信信号に関する
情報をCCA部10002a-1に通知することができる。
【0093】
受信部10004-1は、無線受信部(無線受信ステップ)10004a-1と、信号復調部(信号復調ステップ)10004b-1を含んだ構成である。受信部10004-1は、アンテナ部10005-1が受信するRF帯の信号から受信信号電力に関する情報を生成する。受信部10004-1は、受信信号電力に関する情報と、受信信号に関する情報をCCA部10002a-1に通知することができる。
【0094】
無線受信部10004a-1は、アンテナ部10005-1が受信するRF帯の信号をベースバンド信号に変換し、物理層信号(例えば、物理層フレーム)を生成する機能を有する。無線受信部10004a-1が行う処理には、RF帯からベースバンド帯への周波数変換処理、フィルタリング、アナログ・デジタル変換が含まれる。
【0095】
信号復調部10004b-1は、無線受信部10004a-1が生成する物理層信号を復調する機能を有する。信号復調部10004b-1が行う処理には、チャネル等化、デマッピング、誤り訂正復号化等が含まれる。信号復調部10004b-1は、物理層信号から、例えば、物理層ヘッダが含む情報と、MACヘッダが含む情報と、送信フレームが含む情報とを取り出すことができる。信号復調部10004b-1は、取り出した情報を上位層部10001-1に通知することができる。なお、信号復調部10004b-1は、物理層ヘッダが含む情報と、MACヘッダが含む情報と、送信フレームが含む情報のいずれか、あるいは全てを取り出すことができる。
【0096】
アンテナ部10005-1は、無線送信部10003b-1が生成する無線周波数信号を、無線空間に送信する機能を有する。また、アンテナ部10005-1は、無線周波数信号を受信し、無線受信部10004a-1に渡す機能を有する。
【0097】
無線通信装置10-1は、送信するフレームのPHYヘッダやMACヘッダに、自無線通信装置が無線媒体を利用する期間を示す情報を記載することにより、自無線通信装置周辺の無線通信装置に当該期間だけNAVを設定させることができる。例えば、無線通信装置10-1は送信するフレームのDuration/IDフィールドまたはLengthフィールドに当該期間を示す情報を記載することができる。自無線通信装置周辺の無線通信装置に設定されたNAV期間を、無線通信装置10-1が獲得したTXOP期間(もしくは単にTXOP)と呼ぶこととする。そして、該TXOPを獲得した無線通信装置10-1を、TXOP獲得者(TXOP holder、TXOPホルダー)と呼ぶ。無線通信装置10-1がTXOPを獲得するために送信するフレームのフレームタイプは何かに限定されるものではなく、コントロールフレーム(例えばRTSフレームやCTS-to-selfフレーム)でも良いし、データフレームでも良い。
【0098】
TXOPホルダーである無線通信装置10-1は、該TXOPの間で、自無線通信装置以外の無線通信装置に対して、フレームを送信することができる。無線通信装置1-1がTXOPホルダーであった場合、該TXOPの期間内で、無線通信装置1-1は無線通信装置2Aに対してフレームを送信することができる。また、無線通信装置1-1は、該TXOP期間内で、無線通信装置2Aに対して、無線通信装置1-1宛てのフレーム送信を指示することができる。無線通信装置1-1は、該TXOP期間内で、無線通信装置2Aに対して、無線通信装置1-1宛てのフレーム送信を指示する情報を含むトリガーフレームを送信することができる。
【0099】
無線通信装置1-1は、フレーム送信を行なう可能性のある全通信帯域(例えばOperation bandwidth)に対してTXOPを確保してもよいし、実際にフレームを送信する通信帯域(例えばTransmission bandwidth)等の特定の通信帯域(Band)に対して確保してもよい。
【0100】
無線通信装置1-1が獲得したTXOPの期間内でフレーム送信の指示を行なう無線通信装置は、必ずしも自無線通信装置に接続されている無線通信装置には限定されない。例えば、無線通信装置は、自無線通信装置の周辺にいる無線通信装置にReassociationフレームなどのマネジメントフレームや、RTS/CTSフレーム等のコントロールフレームを送信させるために、自無線通信装置に接続されていない無線通信装置に、フレームの送信を指示することができる。
【0101】
さらに、DCFとは異なるデータ伝送方法であるEDCAにおけるTXOPについても説明する。IEEE802.11e規格はEDCAに関わるもので、映像伝送やVoIPなどの各種サービスのためのQoS(Quality of Service)保証の観点からTXOPについて規定されている。サービスは大きくは、VO(VOice)、VI(VIdeo)、BE(Best
Effort)、BK(BacK ground)の4つのアクセスカテゴリーに分類されている。一般的には、優先度の高い方からVO、VI、BE、BKの順番である。それぞれのアクセスカテゴリーでは、CWの最小値CWmin、最大値CWmax、IFSの一種であるAIFS(Arbitration IFS)、送信機会の上限値であるTXOP limitのパラメータがあり、優先度の高低差をつけるように値が設定される。例えば、音声伝送を目的とした優先度の一番高いVOのCWmin,CWmax、AIFSは、他のアクセスカテゴリーに比較して相対的に小さい値を設定することで、他のアクセスカテゴリーに優先したデータ伝送が可能となる。例えば、映像伝送のため送信データ量が比較的大きくなるVIでは、TXOP limitを大きく設定することで、他のアクセスカテゴリーよりも送信機会を長くとることが可能となる。このように、各種サービスに応じたQoS保証を目的として、各アクセスカテゴリーの4つのパラメータの値が調整される。
【0102】
本実施形態において、当該送信部の信号復調部10004b-1は、受信した信号に対して、物理レイヤにおいて、復号処理を行い、誤り検出を行うことができる。ここで復号処理は、受信した信号に適用されている誤り訂正符号に対する復号処理を含む。ここで、誤り検出は、受信した信号に予め付与されている誤り検出符号(例えば巡回冗長検査(CRC)符号)を用いた誤り検出や、もともと誤り検出機能を備える誤り訂正符号(例えば低密度パリティ検査符号(Low Density Parity Check:LDPC))による誤り検出を含む。物理レイヤにおける復号処理は、符号化ブロック毎に適用されることが可能である。
【0103】
上位層部10001-1は、信号復調部における物理レイヤの復号の結果をMACレイヤに転送する。MACレイヤでは、転送されてきた物理レイヤの復号結果から、MACレイヤの信号を復元する。そして、MACレイヤにおいて、誤り検出を行い、受信フレームの送信元のステーション装置が送信したMACレイヤの信号が正しく復元できたか否かを判断する。
【0104】
図10は本実施形態に係る物理層フレーム生成部10003a-1の誤り訂正符号化の一例を示す図である。図10に示すように、斜線の領域には、情報ビット(システマティックビット)系列、白抜きの領域には冗長(パリティ)ビット系列が配置される。情報ビットおよび冗長ビットはそれぞれ適切にビットインターリーバが適用されている。物理層フレーム生成部10003a-1は配置されたビット系列に対し、リダンダンシーバージョン(RV)の値に応じて決定される開始位置として、必要なビット数を読み出すことができる。ビット数を調整することで符号化率の柔軟な変更、すなわちパンクチャリングが可能となる。なお、図10においては、RVは全部で4通りが示されているが、本実施形態に係る誤り訂正符号化において、RVの選択肢は、特定の値に限定されるものではない。RVの位置については、ステーション装置間で共有されている必要がある。本実施形態に係る誤り訂正符号化の方法が図10の例に限定されないことは言うまでもなく、符号化率を変更可能であり、また受信側の復号処理が達成される方法であればよい。
【0105】
例えば、IEEE802.11標準の低密度パリティ検査符号を用いた誤り訂正符号化は、まず低密度なパリティ検査行列から生成行列を求め、当該生成行列と情報ビットの行列積から算出されるパリティビットを生成する。次に、当該情報ビット系列に当該パリティビットを付与し、符号語を構成する。すなわち、当該物理層フレーム生成部10003a-1は、少なくともMCSの符号化率が設定する当該パリティ検査行列のサイズに基づいて、誤り訂正符号化を施す所定の情報ビット長を算出する。なお、LDPC符号化に用いる情報ビット系列をLDCP情報ブロック、LDPC情報ブロックをLDPC符号化されて得られるビット系列をLDPC符号語ブロックとも呼ぶ。
【0106】
図11は、MCSと変調方式、符号化率との関連付けの一例を示している。例えばMCSが1のとき、変調方式はQPSKで符号化率は1/2であり、MCSが4のとき変調方式は16QAMで符号化率は3/4である。また、図12は符号化率とLDPC情報ブロック長、及びLDPC符号語ブロック長の関連付けの一例を示している。LDPC符号語ブロック長に符号化率を乗算するとLDPC情報ブロック長となる。例えば符号化率が1/2の場合、(LDPC情報ブロック長、LDPC符号語ブロック長)の候補は、(972、1944)、(648、1296)、(324、648)である。なお、LDPC情報ブロック長及びLDPC符号語ブロック長は、パリティ検査行列サイズにより決定される値であり、送信される情報ブロック長や符号語ブロック長とは異なる可能性がある。
【0107】
本実施形態において、ダウンリンク通信時のフレームの再送方法の一例を図13図14に示す。なお、当該両図中において、フレームに対応する肯定応答は省略されている。当該両図中において、AP‐MLDは、STA‐MLDと3つのリンクでマルチリンクを確立し、当該各々のリンクの負荷状況を測定する。当該各々のリンクについて、上位層部10001-1は、リンク1にTID1とTID3、リンク2と3にTID3を割り当てる。リンク1とリンク2にはそれぞれPPDU14とPPDU23に後続するフレームがバッファ済であって、リンク2にはPPDU22に対応する肯定応答が受信されずフレーム誤りが発生しているものとする。図13において、PPDU31は、リンク3にてバッファ済である最後のフレームを示す。一方、図14においては、リンク3のPPDU31には後続するPPDU32からPPDU33がバッファ済である。当該両図中では、マルチリンク制御部10001a-1は、上位層部10001-1で測定されたリンクの負荷状況に基づいて、最も負荷状況の低いリンク3を再送先リンクの候補として選出し、フレームの再送方法に関する制御情報を生成する。
【0108】
図13図14において、当該制御情報が再送先リンクの候補のみを含む場合のフレームの再送方法の概要を説明する。まず、図13において、AP‐MLDは、リンク3にてバッファ済である最後のフレームのPPDU31、リンク2にて当該PPDU31に後続する同TID3のPPDU22を、STA‐MLDへと送信する。当該AP-MLDは、当該制御情報が指定する再送先リンクの候補において、リンク2で誤ったPPDU22をARQで最優先に再送する。マルチリンク制御部10001a-1は、当該PPDU22の送信が完了するまでの時間、当該PPDU31に対し、当該フレームの後にバッファされたフレームの有無を示すフィールド(例えば、More dataフィールド)の更新を許可せず、再送先リンクの候補であるリンク3にNAVを設定するための制御データを当該制御情報に付加する。すなわち、当該制御情報に従えば、AP‐MLDは、リンク3においてPPDU31の送信完了直後にリンク2のPPDU22をARQで最優先に再送する。NAVの設定は、何かに限定するものではなく、RTS、CTS、または、CTS-to-selfであってもよい。次に、図14では、リンク3で当該PPDU22の再送を実施する際に、当該リンク3において当該PPDU22に先行してPPDU33がバッファ済みである場合の再送方法を示す。マルチリンク制御部10001a-1は、リンク3のバッファをReorderingすることで、当該PPDU33に先行して当該PPDU22を再送できるように並び替える。すなわち、当該制御情報に従えば、AP‐MLDは、再送先リンクの候補であるリンク3でPPDU22をARQで最優先に再送する。
【0109】
次に、図13図14において、当該制御情報が再送先リンクの候補と再送方法を含む場合のフレームの再送方法およびパケット合成方法の概要を説明する。当該制御情報に2つ以上の再送先リンクの候補が含まれる場合、当該各々のリンクにそれぞれARQ/HARQを設定してもよい。ただし、この場合、マルチリンク制御部10001a-1は、再送先リンクの候補において、ARQによるフレームの再送を制限し、HARQによるフレームの再送を制限しない。まず、図13において、AP-MLDは、当該制御情報が指定する再送先リンクの候補であるリンク3において、再送方法がARQである場合に最優先にPPDU22を再送し、再送方法がHARQである場合に最優先にPPDU22を再送するとともにパケット合成を実施する。マルチリンク制御部10001a-1は、当該PPDU22の送信が完了するまでの時間、当該PPDU31に対し、当該フレームの後にバッファされたフレームの有無を示すフィールド(More dataフィールド)の更新を許可せず、再送先リンクの候補であるリンク3にNAVを設定するための制御データを当該制御情報に付加する。再送方法がHARQである場合、当該制御情報にパケット合成方法に関わる情報(MCS,符号化率)を含めることで、初送時と異なる符号化率を用いてフレームを再送してもよい。NAVの設定は、何かに限定するものではなく、RTS、CTS、または、CTS-to-selfであってもよい。すなわち、当該制御情報に従えば、AP‐MLDは、リンク3において、PPDU31の送信完了直後にリンク2のPPDU22を、再送方法がARQである場合に最優先に再送し、再送方法がHARQである場合に最優先に再送するとともにパケット合成を実施する。次に、図14では、マルチリンク制御部10001a-1は、リンク3のバッファをReorderingすることで、当該PPDU33に先行して当該PPDU22を再送できるように並び替える。当該制御情報に従えば、AP‐MLDは、再送先リンクの候補であるリンク3で当該PPDU22を、再送方法がARQである場合に最優先に再送し、再送方法がHARQである場合に最優先に再送するとともにパケット合成を実施する。
【0110】
本実施形態に係る上位層部10001-1のリンクの負荷状況の測定方法を述べる。当該リンクの負荷状況の測定は、サブ無線通信装置(サブステーション装置)の受信部が独立して実施してもよいし、全サブステーションを統合する形で実施してもよい。当該各々のリンクの負荷状況の測定値は、特定の指標に限定されるものではなく、MLDを構成するリンクの負荷状況の判断に用いることができる値であればよい。例えば、リンクの負荷状況の測定値として、MACレイヤでは当該各々のリンクに割り振られたフレームのバッファサイズ、チャネルの使用状況、各RUに対するフレームの割り当て状態(Resource allocation)、APの運用状況を示すBSS負荷情報(BSS load information)、BSS平均アクセス遅延(BSS average access delay)、BSSアクセスカテゴリーアクセス遅延(BSS Access
Category Access Delay)などを、また、PHYレイヤではマルチリンクセットアップにおけるマルチリンク確立要求の際に、当該各々のリンクのキャリアセンス時間に占めるBusyの割合などを当該測定値として用いてもよい。また、当該複数のリンクの負荷状況は、所定の閾値に従ってリンクの負荷状況を段階的に反映する識別子(Busy,High,Middle,Low,Idle,Nullなど)であってもよい。
【0111】
当該上位層部10001-1が測定する当該各々のリンクの負荷状況に基づいて、マルチリンク制御部10001a-1が再送先リンクの候補を選出する方法について述べる。マルチリンク制御部10001a-1は、当該上位層部10001-1の測定結果に基づ
いて、リンクの負荷状況が最も低いリンクを選出するか、または、測定結果を昇順化したリストを作成し、上位2つ以上のリンクを再送先リンクとして選出する。また、当該各々のリンクの負荷状況が同一である場合、マルチリンク制御部10001a-1は、再送先リンクの候補を選出しない。MLDを構成する複数のリンクでフレーム誤りが発生した場合、当該各々のフレームに同一の再送先リンクを設定してもよい。また、マルチリンク確立応答10-2を受信していない空きリンクがある場合、当該上位層部10001-1は、マルチリンク確立要求10-1を送信することで、新たにリンクを確立するとともに、当該リンクの負荷状況が既存の負荷状況を下回る場合に、再送先リンクの候補に当該リンクを設定し、再送方法と合わせて制御情報を生成する。
【0112】
本実施形態に係るマルチリンク制御部10001a-1は、マルチリンクを確立したリンクまたは再送先リンクにおいて、所定の時間内にフレームに対応する肯定応答を受信しなかった場合、再送先リンクの候補を更新する。例えば、当該マルチリンク制御部10001a-1は、再送先リンクで別のフレームがバッファ済である場合に、当該再送先リンクの候補に含まれる次に低い負荷状況のリンクを再送先リンクとして設定してもよい。また、所定の時間内にフレームに対応する肯定応答を受信しなかった場合もしくはフレームに対する肯定応答を複数回連続して受信しなかった場合に、再送先リンクの候補の内、別のリンクを再送先リンクに設定する。例えば、当該再送先リンクの候補が2つ以上存在する場合、次にリンクの負荷状況が低いリンクを再送先リンクとして選出する。
【0113】
また、本実施形態に係るリンクの負荷状況は、トリガーフレームを用いて測定してもよい。例えば、図13または図14において、AP‐MLDは、STA‐MLDなどの無線通信装置とマルチリンクを確立した全ての無線通信装置に対してトリガーフレームを送信する。一方、トリガーフレームを受信したSTA‐MLDは、当該各々のリンクの負荷状況を測定し、当該測定結果をAP‐MLDに通知する。当該各々のリンクにおいて、所定の時間内に当該トリガーフレームに対応する測定結果を受信しなかった場合、または、当該トリガーフレームに対する測定結果を複数回連続して受信しなかった場合に、当該AP‐MLDは、当該リンクの負荷状況をBusyと判断し、再送先リンクの候補に設定しない。
【0114】
本実施形態に係る再送先リンクの候補におけるフレームの再送方法について、上位層部10001-1は、IEEE802.11e規格のEDCAのアクセスカテゴリーよりも優先順位の高い再送用のアクセスカテゴリーを設定してもよい。当該マルチリンク制御部10001a-1は、再送先リンクにおいて、再送専用のアクセスカテゴリー以外のフレームの送信を許可しない。
【0115】
本実施形態に係るSTA‐MLDは受信部10004-1において、AP‐MLDから送信されたフレームを受信する。当該STA‐MLDの信号復調部10004b-1は、受信した信号に対して、PHYレイヤにおいて、復号処理を行い、誤り検出を行うことができる。まず、信号復調部10004b-1は、受信した送信フレームであるPPDUのPHYヘッダを復号し、当該PHYヘッダにHARQが設定されている場合に、前記フレームのパケット合成を実施し、当該PPDUの符号語を復号する。当該復号結果は、上位層部10001-1におけるMACレイヤに転送される。当該MACレイヤは、転送されてきた前記復号結果から、MACレイヤのフレームを復元するとともに、誤り検出を行い、受信フレームの送信元のステーション装置が送信したMACレイヤのフレームを正しく復元できたか否かを判断する。誤り検出は、受信したフレームに付与されている誤り検出符号(例えば巡回冗長検査(CRC)符号)を用いた誤り検出や、もともと誤り検出機能を備える誤り訂正符号(例えば低密度パリティ検査符号(LDPC))による誤り検出を含む。ここで復号処理は、受信した信号に適用されている誤り訂正符号に対する復号処理を含む。PHYレイヤにおける復号処理は、符号化ブロック毎に適用されることが可能である。一方、受信したフレームのPHYヘッダにARQが設定されている場合、信号復調部10004b-1は、復号処理において前記フレームのパケット合成は実施せず、当該PPDUの符号語を復号し、復号結果を上位層部10001-1へ転送する。
【0116】
以上、本実施形態に係る通信装置は、MACレイヤの再送機能を維持しつつ、PHYレイヤとMACレイヤのオーバーヘッドを削減し、PHYレイヤにおける効果的なパケット合成を可能とすることで、通信品質ならびに伝送効率の改善に寄与できる。
【0117】
本発明に係る通信装置は、国や地域からの使用許可を必要としない、いわゆるアンライセンスバンド(unlicensed band)と呼ばれる周波数バンド(周波数スペクトラム)において通信を行うことができるが、使用可能な周波数バンドはこれに限定されない。本発明に係る通信装置は、例えば、国や地域から特定サービスへの使用許可が与えられているにも関わらず、周波数間の混信を防ぐ等の目的により、実際には使われていないホワイトバンドと呼ばれる周波数バンド(例えば、テレビ放送用として割り当てられたものの、地域によっては使われていない周波数バンド)や、複数の事業者で共用することが見込まれる共用スペクトラム(共用周波数バンド)においても、その効果を発揮することが可能である。
【0118】
本発明に係る無線通信装置で動作するプログラムは、本発明に関わる上記実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的にRAMに蓄積され、その後、各種ROMやHDDに格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光記録媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本発明の機能が実現される場合もある。
【0119】
また市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれる。また、上述した実施形態における通信装置の一部、または全部を典型的には集積回路であるLSIとして実現してもよい。通信装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部、または全部を集積してチップ化してもよい。各機能ブロックを集積回路化した場合に、それらを制御する集積回路制御部が付加される。
【0120】
また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
【0121】
なお、本願発明は上述の実施形態に限定されるものではない。本願発明の無線通信装置は、移動局装置への適用に限定されるものではなく、屋内外に設置される据え置き型、または非可動型の電子機器、たとえば、AV機器、キッチン機器、掃除・洗濯機器、空調機器、オフィス機器、自動販売機、その他生活機器などに適用出来ることは言うまでもない。
【0122】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の
範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、通信装置、および通信方法に用いて好適である。
【符号の説明】
【0124】
1-1、1-2、2-1~6、2A、2B 無線通信装置
3-1、3-2 管理範囲
10-1 無線通信装置
10001-1 上位層部
10001a-1 マルチリンク制御部
10002-1 制御部
10002a-1 CCA部
10002b-1 バックオフ部
10002c-1 送信判断部
10003-1 送信部
10003a-1 物理層フレーム生成部
10003b-1 無線送信部
10004-1 受信部
10004a-1 無線受信部
10004b-1 信号復調部
10005-1 アンテナ部
20000-1 アクセスポイント装置
20000-2、20000-3、20000-4 サブ無線通信装置(サブアクセスポイント装置)
30000-1 ステーション装置
30000-2、30000-3、30000-4 サブ無線通信装置(サブステーション装置)
10-1 マルチリンク確立要求
10-2 マルチリンク確立応答
10-3 マルチリンク変更要求
10-4 マルチリンク変更応答
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
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図14