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特開2024-149943アクチュエータ及びアクチュエータ駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149943
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】アクチュエータ及びアクチュエータ駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/04 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H02N2/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063133
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】510246781
【氏名又は名称】翔栄システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】蟻生 斉
(72)【発明者】
【氏名】ムックル チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA01
5H681BB09
5H681DD23
5H681EE22
5H681FF24
5H681FF30
(57)【要約】
【課題】様々な分野に広く適用可能なアクチュエータ及びアクチュエータ駆動方法を実現する。
【解決手段】磁性を有するプラットフォームを第1の電磁石の電磁力によって確実に保持しつつ圧電素子の伸長による駆動力で一方向に移動させ、その後に第1の電磁石の電磁力を解除すると同時に、ベース部材に固定された第2の電磁石の電磁力を発生させることでプラットフォームを固定しつつ前記圧電素子を収縮させて初期位置に戻すことを基本動作としている。この基本動作を繰り返すことで、前記ベース部材に対してプラットフォームを前記圧電素子の伸長量を移動単位として直線移動させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材上を直線運動または回転運動が自在に構成された磁性を有するプラットフォームと、
前記プラットフォームを保持/解除可能な第1の電磁着脱機構を具備した圧電素子駆動部と、
前記プラットフォームをベース部材に保持/解除可能に構成した第2の電磁着脱機構と、
前記圧電素子駆動部の駆動と、前記第1の電磁着脱機構および前記第2の電磁着脱機構の保持/解除のタイミングと、を制御する制御機構と、から成ることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記圧電素子駆動部は圧電素子の伸縮に応じて往復直線駆動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記プラットフォームの位置検出センサーを具備し、該位置検出センサーによる位置信号と連動して前記圧電素子駆動部の駆動と、前記第1の電磁着脱機構および前記第2の電磁着脱機構の保持/解除のタイミングと、を制御する制御機構を有することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記圧電素子駆動部の変位量を検出する変位センサーを具備し、該変位センサーによる変位信号と連動して前記前記圧電素子駆動部の駆動量を制御する制御機構を有することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
ベース部材上を直線運動または回転運動が自在に構成された磁性を有するプラットフォームと、
前記プラットフォームを保持/解除可能な第1の電磁着脱機構を具備した圧電素子駆動部と、
前記プラットフォームをベース部材に保持/解除可能に構成した第2の電磁着脱機構と、
前記圧電素子駆動部の駆動と、前記第1の電磁着脱機構および前記第2の電磁着脱機構の保持/解除のタイミングと、を制御する制御機構と、から成るアクチュエータにおいて、
前記第1の電磁着脱機構により前記プラットフォームを保持した状態で前記圧電素子駆動部を一定方向に直線運動する第1の工程と、
前記第1の工程に続いて前記第2の電磁着脱機構によりプラットフォームを保持した状態で前記第1の電磁着脱機構を解除することで前記圧電素子駆動部を反対方向に直線運動する第2の工程と、から成り、
前記第1の工程と前記第2の工程を繰り返すことで、前記プラットフォームを直線運動または回転運動させることを特徴とするアクチュエータ駆動方法。
【請求項6】
前記プラットフォーム位置を位置検出センサーで検出し、その位置信号と連動して前記第1の工程における圧電素子駆動部の変位量または変位速度を制御することを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ駆動方法。
【請求項7】
前記圧電素子駆動部の変位量を変位センサーで検出し、プラットフォームの目標位置に近づいた段階で、前記位置検出センサーによる位置制御方法から、該変位センサーによる位置制御方法に切り替えることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ及びアクチュエータ駆動方法にかかり、特に、高分解能、高安定性、低摩擦摩耗、大きな駆動力/保持力を有する精密リニアアクチュエータの開発に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インチワーム機構を用いて直線運動を発生させるアクチュエータに関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、歩行によって圧電アクチュエータを使用した歩行機構によって直線運動を発生させる技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6145674号公報
【特許文献2】特表2004-506526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の場合、圧電素子の運動は摩擦によりアクチュエータに伝達されるため、滑りが発生し、分解能が低下する。
また、摩擦面の摩耗が進み、長期間安定して稼働することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、様々な分野に広く適用可能なアクチュエータと、そのアクチュエータ駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、アクチュエータであって、
ベース部材上を直線運動または回転運動が自在に構成された磁性を有するプラットフォームと、
前記プラットフォームを保持/解除可能な第1の電磁着脱機構を具備した圧電素子駆動部と、
前記プラットフォームをベース部材に保持/解除可能に構成した第2の電磁着脱機構と、
前記圧電素子駆動部の駆動と、前記第1の電磁着脱機構および前記第2の電磁着脱機構の保持/解除のタイミングと、を制御する制御機構と、から成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記圧電素子駆動部は圧電素子の伸縮に応じて往復直線駆動するように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記プラットフォームの位置検出センサーを具備し、該位置検出センサーによる位置信号と連動して前記圧電素子駆動部の駆動と、前記第1の電磁着脱機構および前記第2の電磁着脱機構の保持/解除のタイミングと、を制御する制御機構を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のアクチュエータにおいて、
前記圧電素子駆動部の変位量を検出する変位センサーを具備し、該変位センサーによる変位信号と連動して前記前記圧電素子駆動部の駆動量を制御する制御機構を有することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、アクチュエータ駆動方法であって、
ベース部材上を直線運動または回転運動が自在に構成された磁性を有するプラットフォームと、
前記プラットフォームを保持/解除可能な第1の電磁着脱機構を具備した圧電素子駆動部と、
前記プラットフォームをベース部材に保持/解除可能に構成した第2の電磁着脱機構と、
前記圧電素子駆動部の駆動と、前記第1の電磁着脱機構および前記第2の電磁着脱機構の保持/解除のタイミングと、を制御する制御機構と、から成るアクチュエータにおいて、
前記第1の電磁着脱機構により前記プラットフォームを保持した状態で前記圧電素子駆動部を一定方向に直線運動する第1の工程と、
前記第1の工程に続いて前記第2の電磁着脱機構によりプラットフォームを保持した状態で前記第1の電磁着脱機構を解除することで前記圧電素子駆動部を反対方向に直線運動する第2の工程と、から成り、
前記第1の工程と前記第2の工程を繰り返すことで、前記プラットフォームを直線運動または回転運動させることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のアクチュエータ駆動方法において、
前記プラットフォーム位置を位置検出センサーで検出し、その位置信号と連動して前記第1の工程における圧電素子駆動部の変位量または変位速度を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のアクチュエータ駆動方法において、
前記圧電素子駆動部の変位量を変位センサーで検出し、プラットフォームの目標位置に近づいた段階で、前記位置検出センサーによる位置制御方法から、該変位センサーによる位置制御方法に切り替えることを特徴とする。
【0013】
本発明では、磁性を有するプラットフォームを第1の電磁石の電磁力によって確実に保持しつつ圧電素子の伸長による駆動力で一方向に移動させ、その後に第1の電磁石の電磁力を解除すると同時に、ベース部材に固定された第2の電磁石の電磁力を発生させることでプラットフォームを固定しつつ前記圧電素子を収縮させて初期位置に戻すことを基本動作としている。
この基本動作を繰り返すことで、前記ベース部材に対してプラットフォームを前記圧電素子の伸長量を移動単位として直線移動させることができる。
圧電素子の駆動力は電磁的な保持力によって確実にプラットフォームに伝達されるので、圧電素子の精密な伸長量に応じた移動量制御が可能となる。
また、伝達面間での摩耗が大幅に低減されるので、長期間安定した稼働が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、精密な位置決めと大きな推力およびストロークを有し、長期間に亘る稼働安定性が必要な技術分野に、広く適用可能なアクチュエータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係るXステージおよび電磁石の詳細図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータを示し、平面図(a)、正面図(b)、紙面右側から見た図(c)である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る左直線運動の工程図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る右直線運動の工程図である。
図5図3に係る圧電素子および電磁石の印加電圧に関するタイムチャートである。
図6】本発明に係る制御フローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態に係るアクチュエータを示し、平面図(a)、紙面下側から見た図(b)である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る双方向Xステージを示し、正面図(a)、図8(a)のA-A断面図(b)である。
図9】本発明の第3の実施形態に係るアクチュエータを示し、平面図(a)、紙面右側から見た図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および図2に第1の実施形態を示す。
図1は、フィードバック静電容量センサー2を備えたXステージ(圧電アクチュエータ)1を示す。圧電素子3の一端にエンドピース4が接着されており、屈曲部5で弾性変形可能なフレーム6内に圧電素子3の両端を接して組み込まれている。
フレーム6にねじ込まれたボルト7の押力により、エンドピース4を介して圧電素子3にプリロードがかかり、圧電素子3に電圧が印加されて伸長すると、その伸長量に応じてフレーム6に強力な押圧力が生じ、フレーム上端面6aが圧電素子3の伸長方向、すなわち紙面左方向に変位する。
また、圧電素子3の電圧が低下または解除されて圧電素子が収縮すると、これに応じてフレーム上端面6aは紙面右方向に戻る。
フレーム上端面6aの変位量は静電容量センサー2を使用して計測され、所望の変位量となるように制御することでナノメートルの分解能での変位制御が可能となっている。
さらに、フレーム上端面6aには電磁石8が固定されており、Xステージが変位すれば電磁石8も変位方向に変位する。電磁石8の電磁力は前記フレーム上端面6aと対抗面に作用し、磁性を有するとともに位置調整が可能なネジ9を介して電磁力が作用可能になっている。
【0017】
図2は第1の実施形態の全体図である。
2つのXステージ1aおよび1bがベース10に固定されている。
電磁石8a、8bは、Xステージ1aと1bにそれぞれ固定される。
プラットフォーム11は、紙面左右方向に直線移動自在にガイドレール12に取り付けられ、ガイドレール12はベース10に固定される。
プラットフォーム11はネジ9a、9bを介してそれぞれ電磁石8a、8bの電磁力による保持およびその解除が可能に構成されている。
2aと2bはXステージの変位を計測する静電容量センサーである。
13はプラットフォーム11の位置検出センサーとして使用されるリニアエンコーダであり、プラットフォーム11のリアルタイム位置を測定し、コントローラーに送信する。
これらのリニアエンコーダ、静電容量センサーによる詳細な位置制御フローは後述する。
【0018】
次に上記構成のアクチュエータを用いて、図2の紙面左方向にプラットフォーム11を直線運動させる工程について、図3を用いて順に説明する。
工程(1)では、電磁石8bに電圧を印加することで、磁性を有するプラットフォーム11を電磁力により保持する。
工程(2)では、電磁石8aに電圧を印加してプラットフォーム11を保持すると同時に電磁石8bの電圧を解除して保持を解除する。
工程(3)では、圧電素子3aに所望の電圧を印加し、その電圧量に応じた変位量だけ伸長させることで、Xステージ1aを圧電素子3aの伸長方向(紙面左方向)に変位させる。
このとき、電磁石8aはプラットフォーム11を保持しているので、Xステージ1aの変位量だけ左方向にプラットフォーム11を変位させることができる。
工程(4)では、電磁石8bを作動させて、プラットフォーム11の変位位置を保持する。
この状態で、電磁石8aと圧電素子3aの電圧を解除し、Xステージ1aを元の位置に戻す。このプロセスを繰り返すことで、圧電素子3aの伸長方向、すなわち左方向にプラットフォーム11を直線運動させることができる。
【0019】
上記工程(1)~工程(4)の電磁石8aおよび8b、圧電素子3aに印加される電圧の切り替えに関するタイムチャートを図5に示す。
Td1は工程(1)~工程(4)の1サイクル時間、Td2は電磁石8aの作動時間、Td3は電磁石8aが作動してから圧電素子3aが作動するまでの時間差、Td4は圧電素子3aの作動時間である。
電磁石8aと電磁石8bの作動タイミングを同時に切り替えることで、どちらかの電磁石でプラットフォーム11が保持される。また、電磁石8aの作動で一定の電磁力が確保されるまでの時間をTd3として設定すれば、電磁石8aとプラットフォーム11が滑ることなく、Xステージ1aの変位をより確実に伝達する効果が期待できる。
電磁石8aおよび8bに印加する電圧は必要な電磁力となるように適宜設定する。また、圧電素子に印加する電圧やその周波数によって、アクチュエータの運動速度や動作精度を変えることができる。
【0020】
図2の紙面右方向にプラットフォーム11を直線運動させる工程を、図4を用いて順に説明する。
工程(1)では、電磁石8aに電圧を印加することで、磁性を有するプラットフォーム11を電磁力により保持する。
工程(2)では、電磁石8bに電圧を印加してプラットフォーム11を保持すると同時に電磁石8aの電圧を解除して保持を解除する。
工程(3)では、圧電素子3bに所望の電圧を印加し、その電圧量に応じた変位量だけ伸長させることで、Xステージ1bを圧電素子3bの伸長方向(紙面右方向)に変位させる。
このとき、電磁石8bはプラットフォーム11を保持しているので、Xステージ1bの変位量だけ右方向にプラットフォーム11を変位させることができる。
工程(4)では、電磁石8aを作動させて、プラットフォーム11の変位位置を保持する。
この状態で、電磁石8bと圧電素子3bの電圧を解除し、Xステージ1bを元の位置に戻す。このプロセスを繰り返すことで、圧電素子3bの伸長方向、すなわち右方向にプラットフォーム11を直線運動させることができる。
【0021】
図4で説明した工程(1)~工程(4)電磁石8aおよび8b、圧電素子3bに印加される電圧の切り替えに関するタイムチャートは図5に準じて設定できるので、詳細説明は省略する。
【0022】
上記したアクチュエータ動作を基本にして、高分解能で位置制御する方法について、図6の制御フローチャートを用いて説明する。
【0023】
システムコントローラー14はリニアエンコーダ13からプラットフォーム11の現在位置信号をリニアエンコーダーアンプ15を経由して入力され、目標位置との差を算出してXステージ1aおよび1bの駆動信号をサーボコントローラー16に出力するとともに、電磁石8aおよび8bの着脱動作信号をXステージ1aおよび1bの駆動信号と同期して電磁石ドライバー17に出力する。
サーボコントローラー16の駆動信号がドライバー18に入力されることで、Xステージ1aまたは1bの圧電素子3aまたは3bに必要な電圧量とタイミングが制御される。
また、電磁石ドライバー17は前記の着脱動作信号を受けて、電磁石8aおよび8bに着脱動作のための電圧量とタイミングを制御する。目標位置から遠い場合には圧電素子の動作量を大きくしたり伸縮速度早めたりすれば、プラットフォームが目標位置に近づく時間を短縮できる。また、目標位置に近づいてから、圧電素子の動作量を小さくして伸縮速度を遅くすれば、目標位置に対するプラットフォームの位置決め精度を向上できる。
このようなプラットフォーム11の位置制御システムによって、リニアエンコーダ13の位置信号に基づいて目標位置までアクチュエータを高精度でクローズド制御することができる。
【0024】
位置制御精度をさらに高めるための制御フローを説明する。
リニアエンコーダ13の位置信号によりプラットフォーム11が目標位置に近づいてから、静電容量センサー2aまたは2bのXステージ変位信号による位置制御に切り替える。
具体的には、静電容量センサー2aまたは2bで検出したXステージ1aまたは1bの変位信号がサーボコントローラー16に入力され、この位置信号に基づいて目標位置までの駆動信号をドライバー18に出力し、その後のXステージ変位量を前記静電容量センサーで再度検出するクローズド制御を行う。たとえば、目標位置との差異が20μm程度の場合、静電容量センサーのもつ高検出精度によりナノメートルの高分解能で目標位置にプラットフォームを位置決めすることができる。
なお、システムコントローラー14の制御条件はPCから予め設定できるようになっている。
【0025】
図7に第2の実施形態として、上下運動できる回転ステージを示す。
このアクチュエータは、上下方向に駆動可能なアクチュエータであり、さらに電磁石による保持力が解除されても上下方向の停止位置を保持することが可能な利点を有している。
【0026】
ベース20上におねじ軸21の下端が固定されており、磁性を有する回転体22の中心に構成されためねじがおねじ軸21にねじ込まれて、上下動自在に構成されている。
Xステージ23aおよび23bは図1と同様な構成となっており、回転体22を中心にして内蔵されている圧電素子24aおよび24bの伸長方向が平行かつ逆向きに対抗配置され、サポート25を介してベース20上に固定されている。
Xステージ23aおよび23bのフレーム上端面23a-1、23b-1にはそれぞれ電磁石26aおよび26bが固定されており、それらの先端位置を微調整できるように磁性を有するネジ27aおよび27bが装着されている。
電磁石26aに電圧を印加して電磁力が発生するとネジ27aを介して回転体22を保持し、電圧が解除されると保持が解除できるように配置されている。
同様に、電磁石26bに電圧を印加して電磁力が発生するとネジ27bを介して回転体22を保持し、電圧が解除されると保持が解除できるように配置されている。
また、Xステージに装着された静電容量センサー28a、28bによって、Xステージの変位量を計測し、コントローラーに送信されるように構成されている。
【0027】
まず、電磁石26bに電圧を印加して回転体22を電磁力により保持する。
その後、電磁石26aに電圧を印加して回転体を保持すると同時に、電磁石26bの電圧を解除して保持を解除する。
この後、圧電素子24aに所望の電圧を印加して圧電素子24aを図7(a)の下方向に伸長させることで、Xステージ23aを変位させる。
このとき、電磁石26aの電磁力で回転体22を保持しているので、Xステージ23aの変位量に応じた時計回りの回転角だけ、回転体22を回転運動させることができる。
次に、電磁石26bに電圧を印加して回転体22を保持する。
この状態で、電磁石26aと圧電素子24aの電圧を解除し、Xステージ23aを元の位置に戻す。このプロセスを繰り返すことで、圧電素子24aの伸長方向に回転体22を時計回りに回転運動させることができる。
【0028】
第2の実施形態においても、第1の実施形態で説明したプラットフォームの駆動に関する工程図、圧電素子および電磁石の印加電圧に関するタイムチャートは同様に実施できる。
また、位置検出センサーを用いた高分解能を有する制御も同様に実施できる。
なお、電磁石26a、26bの電圧を解除しても、回転体22の自重はおねじ軸のおねじ部への水平分力とねじ部への静摩擦力に変換されるので、回転体22の上下位置は保持が可能となる。
【0029】
回転体22を半時計回りに回転運動させる場合は、Xステージ23aの変位方向とは逆向きの変位方向を発生するXステージ23bを作動させる。
圧電素子24bに所望の電圧を印加し、その電圧量に応じた変位量だけ図7(a)の上方向に伸長させることで、Xステージ23bを圧電素子24bの伸長方向に変位させる。
このように、コントローラーにより2つのXステージの圧電素子間の電圧を切り替えて、回転体22の回転運動方向の切り替えることができる。
【0030】
図8および図9に第3の実施形態を示す。
このアクチュエータは双方向に駆動可能な1つのXステージにて直線運動が可能なものであり、第1および第2の実施形態よりもアクチュエータを少ない構成要素で成立させることができるので、よりコンパクトなアクチュエータを提供できる利点がある。
【0031】
図8は双方向Xステージ30を示す。
双方向Xステージ30の移動部位31aは、四隅が肉薄形状となっている弾性変形部位31bによりフレーム31に平行ばね構造で支持されている。
また、移動部位31aの左右両端に圧電素子32aおよび32bが対抗配置されている。
プリロードねじ33a、33bはそれぞれ圧電素子32a、32bを移動部位31aに密着させるための押力を発生させるものである。
圧電素子32bに上昇電圧を印加して圧電素子32bを伸長させ、これと同期して圧電素子32aに下降電圧を印加して、圧電素子32bの伸長量よりもやや大きい収縮量となるように圧電素子32aを収縮させると、移動部位31aは圧電素子32bの伸長により紙面左方向に弾性変位する。
一方、圧電素子32aに上昇電圧を印加するのと同期して圧電素子32bに下降電圧を印加して、圧電素子32aの伸長量よりもやや大きい収縮量となるように圧電素子32bを収縮させると、移動部位31aは紙面右方向に弾性変位する。
なお、圧電素子への電圧コントローラーは第1の実施形態で説明した内容に準じて実施できる。
【0032】
図9は第3の実施形態の全体図である。磁性を有するプラットフォーム34が直線移動自在にガイドレール35に取り付けられており、該ガイドレール35はベース36に固定されている。
前記双方向Xステージ30はベース36に固定されている。
また、双方向Xステージ30の移動部位31aには電磁石37が固定されており、電磁石37に電圧を印加して電磁力が発生するとプラットフォーム34を保持し、電圧が解除されると保持が解除できるように配置されている。また、電磁石38はサポート39を介してベース36上に固定されており、電磁石38に電圧を印加して電磁力が発生するとプラットフォーム34を保持し、電圧が解除されると保持が解除できるように配置されている。
【0033】
まず、第3の実施形態のアクチュエータを紙面左方向に運動させる手順を説明する。
最初に、電磁石38に電圧を印加することで、プラットフォーム34を電磁力により保持する。
その後、電磁石37に電圧を印加してプラットフォーム34を保持すると同時に電磁石38の電圧を解除して保持を解除する。
次に、圧電素子32bに上昇電圧を印加して圧電素子32bを伸長させ、これと同期して圧電素子32aに下降電圧を印加して、圧電素子32bの伸長量よりもやや大きい収縮量となるように圧電素子32aを収縮させると、移動部位31aは圧電素子32bの伸長により紙面左方向に弾性変位する。
このとき、電磁石37はプラットフォーム34を保持しているので、双方向Xステージ30の変位量だけプラットフォーム34を変位させることができる。
次いで、電磁石38を作動させて、プラットフォーム34の変位位置を保持する。
この状態で、電磁石37と圧電素子32aの電圧を解除し、双方向Xステージ30を元の位置に戻す。このプロセスを繰り返すことで、圧電素子32bの伸長方向、すなわち紙面左方向にプラットフォーム34を直線運動させることができる。
【0034】
プラットフォーム34を紙面右方向に直線運動させる場合は、圧電素子32aに上昇電圧を印加するのと同期して圧電素子32bに下降電圧を印加して、圧電素子32aの伸長量よりもやや大きい収縮量となるように圧電素子32bを収縮させると、移動部位31aは紙面右方向に弾性変位する。上記した手順に基づきコントローラーにて圧電素子32a、32bの電圧制御を行うことで、プラットフォーム34の運動方向の前進と後退を切り替えることができる。
【0035】
第3の実施形態においても、第1の実施形態で説明したプラットフォームの駆動に関する工程図、圧電素子および電磁石の印加電圧に関するタイムチャートは同様に実施できる。
また、位置検出センサーを用いた高分解能を有する制御も同様に実施できる。
【0036】
以上のように、本発明によれば、精密な位置決めと大きな推力およびストロークを有し、長期間に亘る稼働安定性が必要な技術分野に、広く適用可能なアクチュエータを提供することが可能となる。
【0037】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
1、1a、1b Xステージ
2 静電容量センサー
3 圧電素子
8、8a、8b 電磁石
10 ベース
11 プラットフォーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9