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特開2024-149982データ送受信システム及びデータ送受信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149982
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】データ送受信システム及びデータ送受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20241016BHJP
   G01P 15/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
G01P15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063178
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】久保田 鉄也
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA05
5K033BA06
5K033CB03
5K033CB15
5K033EA04
(57)【要約】
【課題】データ送信部が、データ送信要求信号を検知せず、データがデータ受信部に送信されなかった場合に、データ受信部に送信するデータを補間するデータ送受信システムを提供する。
【解決手段】航法システム通信部31は、センサ通信部24に、加速度データ及び角速度データの送信要求信号を送信し、センサ通信部24は、送信要求信号を検知したときに航法システム通信部31に加速度データ及び角速度データを送信し、更に、センサ通信部24は、送信要求信号を検知せず送信要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の送信要求信号を検知したときに、加速度データ及び角速度データに補間処理を行った補間データを加速度データ及び角速度データとして航法システム通信部31に送信し、航法システム演算部32は、補間データを含む加速度データ及び角速度データを演算する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送信するデータ送信部(24)と、
前記データを受信するデータ受信部(31)と、
前記データ受信部(31)が受信した前記データを演算する演算部(32)と
を備え、
前記データ受信部(31)は、前記データ送信部(24)に、前記データの送信要求信号を送信し、
前記データ送信部(24)は、前記送信要求信号を検知したときに前記データ受信部(31)に前記データを送信し、
更に、前記データ送信部(24)は、前記送信要求信号を検知せず要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の前記送信要求信号を検知したときに、前記データに補間処理を行った補間データを前記データとして前記データ受信部(31)に送信し、前記演算部(32)は、前記補間データを含む前記データを演算するデータ送受信システム。
【請求項2】
前記データ送信部(24)は、運動体に設けられた慣性装置において前記運動体の運動状態を検出する検出装置に接続され、
前記演算部(32)は、前記運動体の運動状態を解析する解析装置である、請求項1に記載のデータ送受信システム。
【請求項3】
前記演算部(32)は、前記要求信号受信エラーが発生し、前記データ受信部(31)が前記データを受信しなかったときに、前記データ受信部(31)が前回受信した前記データを使用して演算し、
前記データ送信部(24)の前記補間処理は、次回の前記送信要求信号を検知したときの前記データに、前記要求信号受信エラーが発生したときの前記データと前記要求信号受信エラーが発生したときに対する直前の前記データとの差分を、加算する処理である、請求項1又は2に記載のデータ送受信システム。
【請求項4】
前記演算部(32)は、前記要求信号受信エラーが発生し、前記データ受信部(31)が前記データを受信しなかったときに、そのときの前記データを含めずに演算し、
前記データ送信部(24)の前記補間処理は、次回の前記送信要求信号を検知したときの前記データに、前記要求信号受信エラーが発生したときの前記データを加算する処理である、請求項1又は2に記載のデータ送受信システム。
【請求項5】
前記データ送信部(24)は、所定の周期毎に前記データを取得し、
前記要求信号受信エラーは、同一の前記周期の前記データに対して複数回の前記送信要求信号を受信した場合であって、
前記演算部(32)は、前記要求信号受信エラーが発生し、前記データ受信部(30)が前記データを受信しなかったときに、前記データ受信部(31)が前回受信した前記データを使用して演算し、
前記データ送信部(24)の前記補間処理は、次回の前記送信要求信号を検知したときの前記データに、該次回の前記送信要求信号を検知したときの前記データと前記要求信号受信エラーが発生したときの前記データとの差分を、加算する処理である、請求項1又は2に記載のデータ送受信システム。
【請求項6】
データを送信するデータ送信部(24)と、
前記データを受信するデータ受信部(31)と、
前記データ受信部(31)が受信した前記データを演算する演算部(32)と
を備えるデータ送受信システム(10)におけるデータ送受信方法であって、
前記データ受信部(31)が、前記データ送信部(24)に、前記データの送信要求信号を送信する工程と、
前記データ送信部(24)が、前記送信要求信号を検知したときに前記データ受信部(31)に前記データを送信する工程と、
前記データ送信部(24)が、前記送信要求信号を検知せず、要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の前記送信要求信号を検知したときに、前記データに補間処理を行った補間データを前記データとして前記データ受信部(31)に送信し、前記演算部(32)は、前記補間データを含む前記データを演算する工程と
を含む、データ送受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ送受信システム及びデータ送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデータ送受信システムとして、例えば特許文献1に記載されているようなデータ送受信システムが知られている。特許文献1に記載されたデータ送受信システムは、航空機や車両等の運動体に搭載された慣性装置のデータ送受信システムであって、データ送信要求信号である外部クロック信号を外部装置から慣性装置に送信し、慣性装置に設けられた慣性センサが検出した慣性データを、慣性装置が受信した外部クロック信号に同期したタイミングで外部機器に送信する。すなわち、慣性装置は慣性データのデータ送信部を構成し、外部機器は慣性データのデータ受信部を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-302247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような慣性装置のデータ送受信システムでは、何らかの理由でデータ送信部である慣性装置がデータ送信要求信号である外部クロック信号を検知せず、外部クロック信号に慣性装置が同期しなかった場合に、慣性データがデータ受信部である外部機器に送信されないため、それ以降の外部機器における慣性データの処理結果に誤差が発生するという問題点があった。
【0005】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、データ送信部が、データ送信要求信号を検知せず、データがデータ受信部に送信されなかった場合に、それ以降にデータ受信部に送信するデータを補間するデータ送受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明に係るデータ送受信システムは、データを送信するデータ送信部と、データを受信するデータ受信部と、データ受信部が受信したデータを演算する演算部とを備え、データ受信部は、データ送信部に、データの送信要求信号を送信し、データ送信部は、送信要求信号を検知したときにデータ受信部にデータを送信し、更に、データ送信部は、送信要求信号を検知せず要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の送信要求信号を検知したときに、データに補間処理を行った補間データをデータとしてデータ受信部に送信し、演算部は、補間データを含むデータを演算する。
【0007】
また、データ送信部は、運動体に設けられた慣性装置において運動体の運動状態を検出する検出装置に接続され、演算部は、運動体の運動状態を解析する解析装置であってもよい。
また、演算部は、要求信号受信エラーが発生し、データ受信部がデータを受信しなかったときに、データ受信部が前回受信したデータを使用して演算し、データ送信部の補間処理は、次回の送信要求信号を検知したときのデータに、要求信号受信エラーが発生したときのデータと要求信号受信エラーが発生したときに対する直前のデータとの差分を、加算する処理であってもよい。
また、演算部は、要求信号受信エラーが発生し、データ受信部がデータを受信しなかったときに、そのときのデータを含めずに演算し、データ送信部の補間処理は、次回の送信要求信号を検知したときのデータに、要求信号受信エラーが発生したときのデータを加算する処理であってもよい。
また、データ送信部は、所定の周期毎にデータを取得し、要求信号受信エラーは、同一の周期のデータに対して複数回の送信要求信号を受信した場合であって、演算部は、要求信号受信エラーが発生し、データ受信部がデータを受信しなかったときに、データ受信部が前回受信したデータを使用して演算し、データ送信部の補間処理は、次回の送信要求信号を検知したときのデータに、該次回の送信要求信号を検知したときのデータと要求信号受信エラーが発生したときのデータとの差分を、加算する処理であってもよい。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、この発明に係るデータ送受信方法は、データを送信するデータ送信部と、データを受信するデータ受信部と、データ受信部が受信したデータを演算する演算部とを備えるデータ送受信システムにおけるデータ送受信方法であって、データ受信部が、データ送信部に、データの送信要求信号を送信する工程と、データ送信部が、送信要求信号を検知したときにデータ受信部にデータを送信する工程と、データ送信部が、送信要求信号を検知せず、要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の送信要求信号を検知したときに、データに補間処理を行った補間データをデータとしてデータ受信部に送信し、演算部は、補間データを含むデータを演算する工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るデータ送受信システムは、データ受信部は、データ送信部に、データの送信要求信号を送信し、データ送信部は、送信要求信号を検知したときにデータ受信部にデータを送信し、更に、データ送信部は、送信要求信号を検知せず要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の送信要求信号を検知したときに、データに補間処理を行った補間データをデータとしてデータ受信部に送信し、演算部は、補間データを含むデータを演算するため、データ送信部が、データ送信要求信号を検知せず、データがデータ受信部に送信されなかった場合に、それ以降にデータ受信部に送信するデータを補間することができる。
【0010】
また、この発明に係るデータ送受信方法は、データ受信部が、データ送信部に、データの送信要求信号を送信する工程と、データ送信部が、送信要求信号を検知したときにデータ受信部にデータを送信する工程と、データ送信部が、送信要求信号を検知せず、要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の送信要求信号を検知したときに、データに補間処理を行った補間データをデータとしてデータ受信部に送信し、演算部は、補間データを含むデータを演算する工程とを含むため、データ送信部が、データ送信要求信号を検知せず、データがデータ受信部に送信されなかった場合に、それ以降にデータ受信部に送信するデータを補間することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1のデータ送受信システムを構成する車両航法システムの概要を示すブロック図である。
図2】実施の形態1の車両航法システムにおける、加速度データの送受信動作を示す概略図である。
図3】従来の車両航法システムにおける、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作の第1の例を示す概略図である。
図4】実施の形態1に係る車両航法システムにおける、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作を示す概略図である。
図5】実施の形態1に係る車両航法システムにおいて、時間帯T1、及び時間帯T2において送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作を示す概略図である。
図6】従来の車両航法システムにおける、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作の第2の例を示す概略図である。
図7】実施の形態2に係る車両航法システムにおける、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作を示す概略図である。
図8】実施の形態2に係る車両航法システムにおける、時間帯T1、及び時間帯T2において送信要求信号受信エラーが発生したときの加速度データの送受信動作を示す概略図である。
図9】従来の車両航法システムにおける、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作の第3の例を示す概略図である。
図10】実施の形態3における、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態1に係るデータ送受信システムを添付図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態1のデータ送受信システムを構成する車両航法システムの概要を示すブロック図である。車両航法システム10は、図示しない自動車等の車両に設けられており、車両が走行したときの加速度及び角速度を計測する慣性装置である慣性計測装置20と、慣性計測装置20に接続された航法システム通信部31と、航法システム通信部31に接続された航法システム演算部32と、航法システム通信部31及び航法システム演算部32に接続され、車両航法システム10全体の制御を行う航法システム制御部33を有する。航法システム通信部31は、車両航法システム10の各種信号の通信制御を行う。航法システム演算部32は、慣性計測装置20の計測した加速度及び角速度の計測データを航法システム通信部31を介して受信し、必要な演算を実施する。なお、車両航法システム10は、慣性計測装置20に対する上位システムを構成している。また、車両航法システム10はデータ送受信システムを構成し、慣性計測装置は慣性装置を構成し、航法システム通信部31はデータ受信部を構成し、航法システム演算部32は演算部、及び解析装置を構成している。
【0013】
慣性計測装置20は、車両が走行したときの車両の3軸の加速度を検知する加速度センサ21と、車両の3軸の角速度を検知する角速度センサ22とを有している。加速度センサ21及び角速度センサ22は、慣性計測装置全体を制御するセンサ制御部23に接続されている。センサ制御部23は、センサ通信部24に接続されている。センサ通信部24は、車両航法システム10の航法システム通信部31との間で各種信号を送受信して、慣性計測装置20と車両航法システム10との間の通信を行う。なお、加速度センサ21及び角速度センサ22は、検出装置を構成している。
【0014】
次に、本実施の形態1の車両航法システム10の動作を説明する。慣性計測装置20は、車両の走行時には、センサ制御部23が供給するセンサクロック信号の周期毎に、加速度センサ21が車両の3軸の加速度を計測し、角速度センサ22が車両の3軸の角速度を計測する。加速度センサ21は、計測した加速度データをセンサ制御部23に送信する。角速度センサ22は、計測した角速度データをセンサ制御部23に送信する。センサ制御部23は、センサ通信部24に加速度データ及び角速度データを送信し、センサ通信部24は、センサクロック信号の周期毎の加速度データ及び角速度データを記憶する。
【0015】
航法システム通信部31は、航法システム制御部33が供給する航法システムクロック信号の周期毎に、センサ通信部24に対して加速度データ及び角速度データの送信を要求するための送信要求信号を送信する。センサ通信部24は、送信要求信号を受信して検知したときに、記憶している直前の周期の加速度データ及び角速度データを航法システム通信部31に送信する。航法システム通信部31は、航法システム演算部32に受信した加速度データ及び角速度データを送信する。航法システム演算部32は、加速度データ及び角速度データを後解析し、車両の速度及び角速度を算出する。これにより、航法システム演算部32は、車両の運動状態を示す解析装置として動作する。
【0016】
次に、車両航法システム10の、加速度センサ21が計測した加速度データの送受信動作について、図1図4を参照しながら以下に詳しく説明する。図2は、本実施の形態1の車両航法システム10における、加速度データの送受信動作を示す概略図である。加速度センサ21は、センサ制御部23が供給するセンサクロック信号の周期の1秒(s)毎に、車両の3軸の加速度データを計測する。なお、以下の説明においては説明を簡単にするために、加速度センサ21が計測する車両の3軸の加速度データのうち、1軸の加速度データについて説明するが、他の2軸の加速度データについても車両航法システム10の加速度データの送受信動作は同じである。また、この説明におけるセンサクロック信号の周期、加速度データの値aの値、速度Vの値、時間tの値は、本実施の形態1の動作例における例示であって、これらの値に限定されるものではない。
【0017】
図2に示した例では、基準時間を時間t=0sとすると、加速度センサ21が計測した加速度データは、時間t=0sのときの加速度データa=1.0m/sであり、時間t=1sのときの加速度データa=1.5m/sであり、時間t=2sのときの加速度データa=2.0m/sであり、時間t=3sのときの加速度データa=2.5m/sである。
【0018】
次に、加速度センサ21は、加速度データをセンサ制御部23に送信し、センサ制御部23は、受信した加速度データをセンサ通信部24に送信する。センサ通信部24は、センサクロック信号の周期毎の加速度データを記憶する。
【0019】
次に、航法システム通信部31は、航法システム制御部33が供給する航法システムクロック信号の周期毎に、センサ通信部24に対して送信要求信号を送信する。ここで、航法システムクロック信号の周期は、センサクロック信号の周期と同じ1秒(s)であるが、航法システムクロック信号の供給タイミングと、センサクロック信号の供給タイミングとは一致していない。なお、この航法システムクロック信号の周期及びタイミングは本実施の形態1の動作例における例示であって、この値に限定されるものではない。
【0020】
次に、センサ通信部24は送信要求信号を受信して検知した後、直前に記憶した加速度データ、すなわち直前のセンサクロックの周期における加速度データを、航法システム通信部31に送信する。例えば、図2に示す例ではセンサ通信部24は、時間t=0s以上時間t=1s未満のときに送信要求信号を検知したときには加速度データa=1.0m/sを航法システム通信部31に送信する。また、センサ通信部24は、時間t=1s以上時間t=2s未満のときに送信要求信号を検知したときには加速度データa=1.5m/sを航法システム通信部31に送信し、時間t=2s以上時間t=3s未満のときに送信要求信号を検知したときには加速度データa=2.0m/sを航法システム通信部31に送信し、時間t=3s以上時間t=4s未満のときに送信要求信号を検知したときには加速度データa=2.5m/sを航法システム通信部31に送信する。
【0021】
なお、以下の説明では、説明を簡単にするために時間t=0s以上、t=1s未満を時間帯T1、時間t=1s以上、t=2s未満を時間帯T2、時間t=2s以上、t=3s未満を時間帯T3、時間t=3s以上、t=4s未満を時間帯T4という。
【0022】
次に、航法システム通信部31は、加速度データを航法システム演算部32に送信する。加速度データを受信した航法システム演算部32は、後解析の処理として、加速度データから車両の速度を演算する。
【0023】
例えば、図2に示す例では時間t=0s未満に車両の速度が0m/sであり、時間帯T1では、航法システム演算部32が加速度データa=1.0m/sを受信するため、航法システム演算部32は直前の車両の速度0m/sと1s間の加速度a=1.0m/sに基づいて、車両の速度V=1.0m/sを演算する。また、時間帯T2では、航法システム演算部32が加速度データa=1.5m/sを受信するため、航法システム演算部32は直前の車両の速度1.0m/sと1s間の加速度a=1.5m/sに基づいて、車両の速度V=2.5m/sを演算する。また、時間帯T3では、航法システム演算部32が加速度データa=2.0m/sを受信するため、航法システム演算部32は直前の車両の速度2.5m/sと1s間の加速度a=2.0m/sに基づいて、車両の速度V=4.5m/sを演算する。
【0024】
次に、従来の慣性計測装置20のセンサ通信部24が送信要求信号を検知しなかった場合に生ずる問題について説明する。車両の走行中に、図1に示す車両航法システム10のセンサ通信部24と航法システム通信部31との間の送信要求信号の通信エラー、航法システム通信部31における送信要求信号の送信エラー又はセンサ通信部24における送信要求信号の受信エラー等の、各種の通信エラーにより、センサ通信部24が送信要求信号を検知しない場合がある。以下の説明では、このように各種理由によりセンサ通信部24が送信要求信号を検知しない場合を、総称して送信要求信号受信エラーという。
【0025】
図3は、本実施の形態1と同じく、図1に示す構成を有する従来の車両航法システム10における、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作の第1の例を示す概略図である。時間帯T1の動作は、上述した図2を参照して説明した動作と同じである。時間帯T2において、航法システム通信部31が送信要求信号を送信しなかったため、送信要求信号受信エラーが発生している。そのため、センサ通信部24は、時間帯T2における加速度データa=1.5m/sを、航法システム通信部31に送信せず、記憶する。これにより、航法システム通信部31は、時間帯T2における加速度データaを受信していない状態である。この場合に、航法システム演算部32は、直前に航法システム通信部31に送信された加速度aを、その時間帯T2における加速度データaとして用い、車両の速度Vを演算する。すなわち、航法システム演算部32は、時間帯T1における加速度データa=1.0m/sを、時間帯T2における加速度データaとして用い、直前の車両の速度V=1.0m/sと、加速度a=1.0m/sに基づいて、時間帯T2の車両の速度V=2.0m/sを演算する。
【0026】
次に、時間帯T3において、航法システム通信部31が、送信要求信号を送信し、センサ通信部24が送信要求信号を検知した場合には、センサ通信部24は、時間帯T3における加速度データa=2.0m/sを送信し、航法システム通信部31は加速度データa=2.0m/sを受信する。このとき、航法システム演算部32は、直前の車両の速度V=2.0m/sと、加速度a=2.0m/sに基づいて、時間帯T3の車両の速度V=4.0m/sを演算する。
【0027】
図2に示す、送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合と、図3に示す、送信要求信号受信エラーが発生した場合とで、時間帯T3の車両の速度Vを比較すると、送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合には速度V=4.5m/sであるのに対し、送信要求信号受信エラーが発生した場合には速度V=4.0m/sである。すなわち、従来の車両航法システム10で送信要求信号受信エラーが発生した場合には、送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合に対して、速度Vに-0.5m/sの誤差が発生するという問題が生じる。
【0028】
次に、上述した問題を解決するための、本実施の形態1の特徴を説明する。図4は、本実施の形態1に係る車両航法システム10における、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作を示す概略図である。時間帯T1の動作は、上述した図2を参照して説明した動作と同じである。時間帯T2においては、航法システム通信部31が送信要求信号を送信しなかったため、送信要求信号受信エラーが発生している。そのため、センサ通信部24は、時間帯T2において、航法システム通信部31に加速度データを送信しなかったことを示す未送信フラグをONに設定する。またこのとき、センサ通信部24は、時間帯T2における加速度データa=1.5m/sを、航法システム通信部31に送信せず、記憶する。すなわち、航法システム通信部31は、時間帯T2における加速度データaを受信していない状態となる。
【0029】
この場合に、航法システム演算部32は、直前に航法システム通信部31に送信された加速度aを、時間帯T2における加速度データaとして用い、車両の速度Vを演算する。すなわち、航法システム演算部32は、時間帯T1における加速度データa=1.0m/sを、時間帯T2における加速度データaの代用データとして用い、直前の車両の速度V=1.0m/sと、加速度a=1.0m/sに基づいて、時間帯T2の車両の速度V=2.0m/sを演算する。
【0030】
次に、時間帯T3において、航法システム通信部31が、送信要求信号を送信し、センサ通信部24が送信要求信号を検知する。このとき、センサ通信部24は、未送信フラグをOFFに設定する。次に、センサ通信部24は、未送信フラグがONに設定されていた時間帯T2における、記憶した加速度データa=1.5m/sと、前回時間帯T2における加速度データaの代用データとして用いた、時間帯T1における加速度データa=1.0m/sとの差分を演算して、時間帯T3における加速度データa=2.0m/sに加算する、補間処理を行う。
【0031】
すなわち、センサ通信部24は、時間帯T3未満の加速度データaを、
加速度データa
=(時間帯T3の加速度データ)+(時間帯T2の加速度データ-時間帯T2の代用データ)
=2.0+(1.5-1.0)=2.5m/s
と演算する。これにより、送信要求信号受信エラーが発生したことによる、加速度データの欠落を補間する、補間データを作製することができる。
【0032】
次に、センサ通信部24は、加速度データa=2.5m/sを、航法システム通信部31に送信する。航法システム通信部31は加速度データa=2.5m/sを受信し、直前の車両の速度V=2.0m/sと、加速度a=2.5m/sに基づいて、時間帯T3の車両の速度V=4.5m/sを演算する。これにより、本実施の形態1の車両航法システム10において、時間帯T2で送信要求信号受信エラーが発生した場合であっても、時間帯T3における車両の速度Vを、図2に示す送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合と同じ4.5m/sに補間することができる。
【0033】
なお、上述の説明では、時間帯T2において、送信要求信号受信エラーが発生した場合を説明したが、これ以外のタイミングで送信要求信号受信エラーが発生した場合も同様に、センサ通信部24は、未送信フラグがONになっている時間の加速度データaと、その直前の未送信フラグがOFFである時間の加速度データであって、代用データとして用いた加速度データaとの差分を演算し、未送信フラグがONになっている時間の直後の未送信フラグがOFFである時間の加速度データaに加算することで、その直後の未送信フラグがOFFである時間の車両の速度Vを後解析において補間することができる。
【0034】
図5は、本実施の形態1に係る車両航法システム10において、時間帯T1、及び時間帯T2において送信要求信号受信エラーが発生したときの加速度データの送受信動作を示す概略図である。例えば、時間帯T1、及び時間帯T2において、送信要求信号受信エラーが発生した場合には、センサ通信部24は、時間帯T1、及び時間帯T2の未送信フラグをONに設定する。また、センサ通信部24は、加速度センサ21により時間帯T1に測定された加速度データa=1.0m/sと、時間帯T2に測定された加速度データa=1.5m/sとを保存する。
【0035】
この場合に、航法システム演算部32は、センサ通信部24から加速度データが送信されないため、時間帯T1及び時間帯T2における加速度データの代用データを、初期状態の0m/sとして、時間帯T1及び時間帯T2における、車両の速度V=0m/sを演算する。
【0036】
次に、センサ通信部24は、時間帯T3において、送信要求信号を検知したら、未送信フラグをOFFに設定する。次に、センサ通信部24は、未送信フラグがONに設定されていた時間帯T1における、記憶した加速度データa=1.0m/sと、初期の加速度データa=0m/sとの差分と、未送信フラグがONに設定されていた時間帯T2における、記憶した加速度データa=1.5m/sと、前回時間帯T2における加速度データaの代用データとして用いた、時間帯T1における加速度データa=1.0m/sとの差分とを演算して、時間帯T3における加速度データa=2.0m/sに加算する。
すなわち、センサ通信部24は、
補間データである加速度データa
=(時間帯T3の加速度データ)+(時間帯T1における加速度データ-時間帯T1における代用データ)+(時間帯T2における加速度データ-時間帯T2における代用データ)
=2.0+(1.0-0)+(1.5-0)=4.5m/s
と演算する、補間処理を行う。。
次に、航法システム通信部31はセンサ通信部24から補間データである加速度データaを受信し、時間帯T1以前の車両の初期速度0m/sと加速度データa=4.5m/sとに基づいて、時間帯T=3における車両の速度4.5m/sを演算する。
【0037】
これにより、車両航法システム10において、送信要求信号受信エラーが複数回発生した場合であっても、後解析において車両の速度Vを補間することができる。
【0038】
なお、本実施の形態1では、慣性計測装置20の加速度センサ21が測定した加速度データaを、センサ通信部24が航法システム通信部31に送信し、航法システム演算部32が加速度データaに基づいて車両の速度Vを演算することを説明したが、慣性計測装置20の角速度センサ22が測定した3軸の角速度データを、センサ通信部24が航法システム通信部31に送信し、航法システム演算部32が角速度データに基づいて車両の3軸の角度を演算することについても、加速度データaを補間する場合と同じように、送信要求信号受信エラーが発生したときに角速度データを補間することが可能である。
【0039】
このように、本実施の形態1に係る車両航法システム10は、加速度データ及び角速度データを送信するセンサ通信部24と、加速度データ及び角速度データを受信する航法システム通信部31と、航法システム通信部31が受信した加速度データ及び角速度データを演算する航法システム演算部32とを備え、航法システム通信部31は、センサ通信部24に、加速度データ及び角速度データの送信要求信号を送信し、センサ通信部24は、送信要求信号を検知したときに航法システム通信部31に加速度データ及び角速度データを送信し、更に、センサ通信部24は、送信要求信号を検知せず送信要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の送信要求信号を検知したときに、加速度データ及び角速度データに補間処理を行った補間データを加速度データ及び角速度データとして航法システム通信部31に送信し、航法システム演算部32は、補間データを含む加速度データ及び角速度データを演算するため、センサ通信部24がデータ送信要求信号を検知せず、加速度データ及び角速度データが航法システム通信部31に送信されなかった場合に、航法システム通信部31に送信するデータを補間することができる。
【0040】
また、センサ通信部24は、車両に設けられた慣性計測装置20において車両の運動状態を検出する検出装置であって、航法システム演算部32は、車両の運動状態を解析する解析装置であるため、車両航法システム10は、車両の運動状態を解析することができる。
【0041】
また、航法システム演算部32は、送信要求信号受信エラーが発生し、航法システム通信部31がデータを受信しなかったときに、航法システム通信部31が前回受信したデータを使用して演算し、センサ通信部24の補間処理は、次回の送信要求信号を検知したときのデータに、送信要求信号受信エラーが発生したときのデータと送信要求信号受信エラーが発生したときに対する直前のデータとの差分を、加算する処理であるため、送信要求信号受信エラーが発生し、センサ通信部24から航法システム通信部31に加速度データ及び角速度データが送信されなかったときに、その直前の速度データ及び角速度データを用いて車両の速度Vを演算する車両航法システム10において、航法システム通信部31に送信するデータを補間することができる。
【0042】
また、このように、本実施の形態1に係るデータ送受信方法は、データを送信するセンサ通信部24と、データを受信する航法システム通信部31と、航法システム通信部31が受信したデータを演算する航法システム演算部32とを備える車両航法システム10におけるデータ送受信方法であって、航法システム通信部31が、センサ通信部24に、データの送信要求信号を送信する工程と、センサ通信部24が、送信要求信号を検知したときに航法システム通信部31にデータを送信する工程と、センサ通信部24が、送信要求信号を検知せず、要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の送信要求信号を検知したときに、データに補間処理を行った補間データをデータとして航法システム通信部31に送信し、航法システム演算部32は、補間データを含むデータを演算する工程とを含むため、センサ通信部24がデータ送信要求信号を検知せず、加速度データ及び角速度データが航法システム通信部31に送信されなかった場合に、航法システム通信部31に送信するデータを補間することができる。
【0043】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、以下の実施の形態において、図1図4の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。この実施の形態2では、実施の形態1に対して、航法システム演算部32が、速度の後解析において送信要求信号受信エラー発生時の加速度データを0m/sとして扱う場合の動作について説明する。
【0044】
図6は、図1に示す構成を有する従来の車両航法システム10における、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作の第2の例を示す概略図である。図6に示す車両航法システム10の例では、時間帯T2において、航法システム通信部31が送信要求信号を送信しなかったため、送信要求信号受信エラーが発生している。そのため、センサ通信部24は、時間帯T2における加速度データa=1.5m/sを、航法システム通信部31に送信せず、記憶する。すなわち、航法システム通信部31は、時間帯T2における加速度データaを受信していない状態である。この場合に、航法システム演算部32は、その時間帯T2における加速度データaを受信していないため、時間帯T2の車両の速度Vを演算せず、時間帯T1における速度Vのままとする。すなわち、航法システム演算部32は、時間帯T1における車両の速度V=1.0m/sであるとき、時間帯T2における速度V=1.0m/sとする。
【0045】
次に、時間帯T3において、航法システム通信部31が、送信要求信号を送信し、センサ通信部24が送信要求信号を検知した場合には、センサ通信部24は、時間帯T3における加速度データa=2.0m/sを送信し、航法システム通信部31は加速度データa=2.0m/sを受信する。このとき、航法システム演算部32は、直前の車両の速度V=1.0m/sと、加速度a=2.0m/sに基づいて、時間帯T3の車両の速度V=3.0m/sを演算する。
【0046】
図2に示す、送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合と、図6に示す、送信要求信号受信エラーが発生した場合とで、時間帯T3の車両の速度Vを比較すると、送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合には速度V=4.5m/sであるのに対し、送信要求信号受信エラーが発生した場合には速度V=3.0m/sである。すなわち、従来の車両航法システム10で送信要求信号受信エラーが発生した場合には、送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合に対して、速度Vに-1.0m/sの誤差が発生するという問題が生じる。
【0047】
次に、上述した問題を解決するための、本実施の形態2の特徴を説明する。図7は、本実施の形態2に係る車両航法システム10における、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作を示す概略図である。時間帯T2において、航法システム通信部31が送信要求信号を送信しなかったため、送信要求信号受信エラーが発生している。そのため、センサ通信部24は、時間帯T2において、航法システム通信部31に加速度データを送信しなかったことを示す未送信フラグをONに設定する。またこのとき、センサ通信部24は、時間帯T2における加速度データa=1.5m/sを、航法システム通信部31に送信せず、記憶する。すなわち、航法システム通信部31は、時間帯T2における加速度データaを受信していない状態となる。
【0048】
この場合に、航法システム演算部32は、センサ通信部24から加速度データが送信されないため、時間帯T2における加速度データを無いものとして、時間帯T2における、車両の速度Vを時間帯T1の速度Vと同じV=1.0m/sとする。
【0049】
次に、時間帯T3において、航法システム通信部31が、送信要求信号を送信し、センサ通信部24が送信要求信号を検知する。このとき、センサ通信部24は、未送信フラグをOFFに設定する。次に、センサ通信部24は、未送信フラグがONに設定されていた時間帯T2における、記憶した加速度データa=1.5m/sを、時間帯T3における加速度データa=2.0m/sに加算する、補間処理を行う。
【0050】
すなわち、センサ通信部24は、時間帯T3未満の加速度データaを、
加速度データa
=(時間帯T3の加速度データ)+(時間帯T2の加速度データ)
=2.0+1.5=3.5m/s
と演算する。これにより、送信要求信号受信エラーが発生したことによる、加速度データの欠落を補間する、補間データを作製することができる。
【0051】
次に、センサ通信部24は、加速度データa=3.5m/sを、航法システム通信部31に送信する。航法システム通信部31は加速度データa=3.5m/sを受信し、直前の車両の速度V=1.0m/sと、加速度a=3.5m/sに基づいて、時間帯T3の車両の速度V=4.5m/sとして演算する。これにより、送信要求信号受信エラーが発生した場合であっても、航法システム演算部32は、時間帯T3における車両の速度Vを、図2に示す送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合と同じ4.5m/sに後解析において補間することができる。
【0052】
なお、上述の説明では、時間帯T2において、送信要求信号受信エラーが発生した場合を説明したが、これ以外のタイミングで送信要求信号受信エラーが発生した場合も同様に、センサ通信部24は、未送信フラグがONになっている時間の加速度データaと、その直前の未送信フラグがOFFである時間に測定した加速度データaとを加算することで、その直後の未送信フラグがOFFである時間の車両の速度Vを補間することができる。
【0053】
図8は、本実施の形態2に係る車両航法システム10における、時間帯T1、及び時間帯T2において送信要求信号受信エラーが発生したときの加速度データの送受信動作を示す概略図である。図8に示すように、時間帯T1、及び時間帯T2において、送信要求信号受信エラーが発生した場合には、センサ通信部24は、時間帯T1、及び時間帯T2の未送信フラグをONに設定する。また、センサ通信部24は、加速度センサ21により時間帯T1に測定された加速度データa=1.0m/sと、時間帯T2に測定された加速度データa=1.5m/sとを保存する。
【0054】
この場合に、航法システム演算部32は、センサ通信部24から加速度データが送信されないため、時間帯T1及び時間帯T2における加速度データを無いものとして、時間帯T1及び時間帯T2における、車両の速度V=0m/sとする。
【0055】
次に、センサ通信部24は、時間帯T3において、送信要求信号を検知したら、未送信フラグをOFFに設定する。次に、センサ通信部24は、未送信フラグがONに設定されていた時間帯T1及び時間帯T2における、記憶した加速度データa=1.0m/s及びa=1.5m/sを、時間帯T3における加速度データa=2.0m/sに加算する、補間処理を行う。
すなわち、センサ通信部24は、
加速度データa
=(時間帯T3の加速度データ)+(時間帯T1における加速度データ)+(時間帯T2における加速度データ)
=2.0+1.0+1.5=4.5m/s
と演算する。
次に、航法システム通信部31はセンサ通信部24から補間データである加速度データa=4.5m/sを受信し、時間帯T1以前の車両の初期速度0m/sと加速度データa=4.5m/sとに基づいて、時間帯T=3における車両の速度4.5m/sを演算する。
【0056】
これにより、車両航法システム10において、送信要求信号受信エラーが複数回発生した場合であっても、航法システム演算部32は、後解析における時間帯T3の車両の速度Vを補間することができる。
【0057】
このように、本実施の形態2に係る車両航法システム10は、航法システム演算部32は、送信要求信号受信エラーが発生し、航法システム通信部31がデータを受信しなかったときに、そのときのデータを含めずに演算し、センサ通信部24の補間処理は、次回の送信要求信号を検知したときのデータに、送信要求信号受信エラーが発生したときのデータを加算する処理であるため、送信要求信号受信エラーが発生してセンサ通信部24から加速度データが送信されないときに、そのときの加速度データを無いものとして演算する航法システム演算部32であっても、航法システム通信部31に送信するデータを補間することができる。
【0058】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。この実施の形態3では、実施の形態1に対して、送信要求信号受信エラーが、センサ制御部23が供給するセンサクロック信号と、航法システム制御部33が供給する航法システムクロック信号との同期がとれないことにより発生した場合の動作を説明する。
【0059】
図9は、図1に示す構成を有する従来の車両航法システム10における、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作の第3の例を示す概略図である。センサ制御部23が供給するセンサクロック信号と、航法システム制御部33が供給する航法システムクロック信号は共に周期1s毎に送信されるが、図9に示す車両航法システム10の例では、時間帯T1において、センサ制御部23が供給するセンサクロック信号と、航法システム制御部33が供給する航法システムクロック信号との同期がずれている。そのため、時間帯T1において、航法システム通信部31が送信要求信号を2回、センサ通信部24に送信する。センサ通信部24は、この両方の送信要求信号に対して、時間帯T1において加速度データa=1.0m/sを合計2回、航法システム通信部31に送信する。
【0060】
時間帯T1において、同じ加速度データa=1.0m/sが2回、航法システム通信部31に送信されているため、航法システム通信部31は、時間帯T1において航法システム演算部32に加速度データa=1.0m/sを2回送信する。このとき、航法システム演算部32が、2回目の加速度データa=1.0m/sを受信したときが時間帯T2であるため、航法システム演算部32は時間帯T2における加速度データa=1.0m/sとして、時間帯T2における速度V=2.0m/sを演算する。
【0061】
また、センサクロック信号と航法システムクロック信号の同期がずれていることにより、時間帯T2においては航法システム通信部31が送信要求信号をセンサ通信部24に送信していない。そのため、時間帯T2においてセンサ通信部24は、航法システム通信部31に対して加速度データを送信していない。すなわち、時間帯T2において、送信要求信号受信エラーが発生している。センサ通信部24は、時間帯T2において、航法システム通信部31に加速度データを送信しなかったことを示す未送信フラグをONに設定する。またこのとき、センサ通信部24は、時間帯T2における加速度データa=1.5m/sを、航法システム通信部31に送信せず、記憶する。
【0062】
次に、時間帯T3において、航法システム通信部31が、送信要求信号を送信し、センサ通信部24が送信要求信号を検知する。このとき、センサ通信部24は、時間帯T3における加速度データa=2.0m/sを送信し、航法システム通信部31は加速度データa=2.0m/sを受信する。このとき、航法システム演算部32は、直前の車両の速度V=2.0m/sと、加速度a=2.0m/sに基づいて、時間帯T3の車両の速度V=4.0m/sを演算する。
【0063】
図2に示す、送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合と、図9に示す、送信要求信号受信エラーが発生した場合とで、時間帯T3の車両の速度Vを比較すると、送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合には速度V=4.5m/sであるのに対し、送信要求信号受信エラーが発生した場合には速度V=4.0m/sである。すなわち、従来の車両航法システム10で送信要求信号受信エラーが発生した場合には、送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合に対して、速度Vに-0.5m/sの誤差が発生するという問題が生じる。
【0064】
次に、上述した問題を解決するための、本実施の形態3の特徴を説明する。図10は、本実施の形態3における、送信要求信号受信エラー発生時の加速度データの送受信動作を示す概略図である。図10に示す車両航法システム10の例では、センサ制御部23が供給するセンサクロック信号と、航法システム制御部33が供給する航法システムクロック信号との同期がずれている。そのため、時間帯T1において、航法システム通信部31が送信要求信号を2回、センサ通信部24に送信する。センサ通信部24は、この両方の送信要求信号に対して、加速度データa=1.0m/sを2回、航法システム通信部31に送信する。また、センサ通信部24は、加速度データaを複数送信したことを示す複数送信フラグをONに設定する。
【0065】
時間帯T1において、同じ加速度データa=1.0m/sが2回、航法システム通信部31に送信されているため、航法システム通信部31は、航法システム演算部32に加速度データa=1.0m/sを2回送信する。このとき、航法システム演算部32が、2回目の加速度データa=1.0m/sを受信したときが時間帯T2であるため、航法システム演算部32は時間帯T2における加速度データa=1.0m/sとして、時間帯T2における速度V=2.0m/sを演算する。
【0066】
また、センサクロック信号と航法システムクロック信号の同期がずれていることにより、時間帯T2においては航法システム通信部31が送信要求信号をセンサ通信部24に送信していない。そのため、時間帯T2においてセンサ通信部24は、航法システム通信部31に対して加速度データを送信しない。すなわち、時間帯T2において、送信要求信号受信エラーが発生している。センサ通信部24は、時間帯T2において、航法システム通信部31に加速度データを送信しなかったことを示す未送信フラグをONに設定し、複数送信フラグをOFFに設定する。またこのとき、センサ通信部24は、時間帯T2における加速度データa=1.5m/sを、航法システム通信部31に送信せず、記憶する。
【0067】
次に、時間帯T3において、航法システム通信部31が、送信要求信号を送信し、センサ通信部24が送信要求信号を検知する。次に、センサ通信部24は、未送信フラグをOFFに設定する。次に、センサ通信部24は、未送信フラグがONに設定されていた時間帯T2における、記憶した加速度データa=1.5m/sと、複数送信フラグがONに設定されていた時間帯T1の加速度データa=1.0m/sとの差分を演算して、時間帯T3における加速度データa=2.0m/sに加算する、補間処理を行う。
【0068】
すなわち、センサ通信部24は、時間帯T3未満の加速度データaを、
加速度データa
=(時間帯T3の加速度データ)+(時間帯T2の加速度データ-時間帯T1の加速度データ)
=2.0+1.5-1.0=2.5m/s
と演算する。これにより、送信要求信号受信エラーが発生したことによる、加速度データの欠落を補間する、補間データを作製することができる。
【0069】
次に、センサ通信部24は、加速度データa=2.5m/sを、航法システム通信部31に送信する。航法システム通信部31は加速度データa=2.5m/sを受信し、直前の車両の速度V=2.0m/sと、加速度a=2.5m/sに基づいて、時間帯T3の車両の速度V=4.5m/sとして演算する。これにより、送信要求信号受信エラーが発生した場合であっても、時間帯T3における車両の速度Vを、図2に示す送信要求信号受信エラーが発生しなかった場合と同じ4.5m/sに補間することができる。
【0070】
なお、上述の説明では、時間帯T1においてセンサクロック周期と航法システムクロック周期とがずれて、時間帯T2において送信要求信号受信エラーが発生した場合を説明したが、これ以外のタイミングでセンサクロック周期と航法システムクロック周期とがずれて送信要求信号受信エラーが発生した場合も同様に、センサ通信部24は、未送信フラグがONになっている時間の加速度データaと、その直前の複数送信フラグがONである時間に測定した加速度データaとの差分を、その直後の未送信フラグがOFFとなったときの加速度データaに加算することで、その直後の未送信フラグがOFFである時間の車両の速度Vを補間することができる。
【0071】
このように、センサ通信部24は、所定の周期毎にデータを取得し、送信要求信号受信エラーは、同一の周期のデータに対して複数回の送信要求信号を受信した場合であって、航法システム演算部32は、送信要求信号受信エラーが発生し、航法システム通信部31がデータを受信しなかったときに、航法システム通信部31が前回受信したデータを使用して演算し、センサ通信部24の補間処理は、次回の送信要求信号を検知したときのデータに、該送信要求信号受信エラーが発生したときのデータと送信要求信号受信エラーが発生したときに対する直前のデータとの差分を、加算する処理であるため、センサ制御部23が供給するセンサクロック信号と、航法システム制御部33が供給する航法システムクロック信号との同期がずれた場合であっても、航法システム通信部31に送信するデータを補間することができる。
【0072】
また、本発明の実施の形態1~3では、慣性計測装置20の加速度センサ21が測定した加速度データaを、センサ通信部24が航法システム通信部31に送信し、航法システム演算部32が加速度データaに基づいて車両の速度Vを演算することを説明したが、慣性計測装置20の角速度センサ22が測定した3軸の角速度データを、センサ通信部24が航法システム通信部31に送信し、航法システム演算部32が角速度データに基づいて車両の3軸の角度を演算することについても、加速度データaを補間する場合と同じように、送信要求信号受信エラーが発生したときに角速度データを補間することが可能である。
【0073】
また、本発明の実施の形態1~3では、センサ通信部24が加速度データaの補間処理を行っていたが、センサ制御部23が加速度データaの補間処理を行い、補間データをセンサ通信部24に送信し、センサ通信部24が補間データを航法システム通信部31に送信してもよい。
【0074】
また、本発明の実施の形態1~3では、車両航法システム10は車両に設けられた慣性計測装置20により車両の3軸の加速度及び3軸の角速度を取得し、車両の運動状態を解析するものであったが、本発明の車両航法システム10は車両以外の任意の運動体及び移動体の航法システムとして使用することが可能である。例えば、本発明の車両航法システム10を航空機に搭載して、慣性計測装置20により航空機の3軸の加速度及び3軸の角速度を取得し、航空機の運動状態を解析する航空機航法システムとして使用してもよい。また、本発明の車両航法システム10を使用することができる運動体及び移動体の他の例としては、鉄道車両、船舶、ドローン及び各種の飛翔体等が挙げられる。
【0075】
また、本発明の実施の形態1~3では、車両航法システム10の航法システム通信部31から慣性計測装置20のセンサ通信部24に加速度データaの送信要求信号を送信し、送信要求信号受信エラーが発生した場合には、センサ通信部24が加速度データaを補間処理していたが、このデータの送信要求信号受信エラーに対するデータの補間処理方法及び補間処理を行うシステムは、航法システム以外のデータ送受信システムにおいて用いられていてもよい。すなわち、この発明のデータの補間処理方法及び補間処理を行うシステムは、一方の装置の通信部から他方の装置の通信部へデータの送信要求信号を送信し、送信要求信号を受信した他方の装置が一方の装置にデータを送信する任意のデータ送受信システムにおいて、送信要求信号受信エラーが発生したときの、データの補間処理方法及び補間処理システムとして使用することができる。この発明のデータの補間処理方法及び補間処理システムを使用するデータ送受信システムとしては、例えば監視カメラシステム及び気象観測システム等を挙げることができる。
【0076】
なお、本発明の実施の形態1~3に含まれる構成要素及びその変形例に含まれる構成要素は、適当に組み合わせて用いることができる。
【0077】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0078】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0079】
(付記1)
データを送信するデータ送信部(24)と、
前記データを受信するデータ受信部(31)と、
前記データ受信部(31)が受信した前記データを演算する演算部(32)と
を備え、
前記データ受信部(31)は、前記データ送信部(24)に、前記データの送信要求信号を送信し、
前記データ送信部(24)は、前記送信要求信号を検知したときに前記データ受信部(31)に前記データを送信し、
更に、前記データ送信部(24)は、前記送信要求信号を検知せず要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の前記送信要求信号を検知したときに、前記データに補間処理を行った補間データを前記データとして前記データ受信部(31)に送信し、前記演算部(32)は、前記補間データを含む前記データを演算するデータ送受信システム。
(付記2)
前記データ送信部(24)は、運動体に設けられた慣性装置において前記運動体の運動状態を検出する検出装置に接続され、
前記演算部(32)は、前記運動体の運動状態を解析する解析装置である、付記1に記載のデータ送受信システム。
(付記3)
前記演算部(32)は、前記要求信号受信エラーが発生し、前記データ受信部(31)が前記データを受信しなかったときに、前記データ受信部(31)が前回受信した前記データを使用して演算し、
前記データ送信部(24)の前記補間処理は、次回の前記送信要求信号を検知したときの前記データに、前記要求信号受信エラーが発生したときの前記データと前記要求信号受信エラーが発生したときに対する直前の前記データとの差分を、加算する処理である、付記1又は2に記載のデータ送受信システム。
(付記4)
前記演算部(32)は、前記要求信号受信エラーが発生し、前記データ受信部(31)が前記データを受信しなかったときに、そのときの前記データを含めずに演算し、
前記データ送信部(24)の前記補間処理は、次回の前記送信要求信号を検知したときの前記データに、前記要求信号受信エラーが発生したときの前記データを加算する処理である、付記1または2に記載のデータ送受信システム。
(付記5)
前記データ送信部(24)は、所定の周期毎に前記データを取得し、
前記要求信号受信エラーは、同一の前記周期の前記データに対して複数回の前記送信要求信号を受信した場合であって、
前記演算部(32)は、前記要求信号受信エラーが発生し、前記データ受信部(31)が前記データを受信しなかったときに、前記データ受信部(31)が前回受信した前記データを使用して演算し、
前記データ送信部(24)の前記補間処理は、次回の前記送信要求信号を検知したときの前記データに、該次回の前記送信要求信号を検知したときの前記データと前記要求信号受信エラーが発生したときの前記データとの差分を、加算する処理である、付記1又は2に記載のデータ送受信システム。
(付記6)
データを送信するデータ送信部(24)と、
前記データを受信するデータ受信部(31)と、
前記データ受信部(31)が受信した前記データを演算する演算部(32)と
を備えるデータ送受信システム(10)におけるデータ送受信方法であって、
前記データ受信部(31)が、前記データ送信部(24)に、前記データの送信要求信号を送信する工程と、
前記データ送信部(24)が、前記送信要求信号を検知したときに前記データ受信部(31)に前記データを送信する工程と、
前記データ送信部(24)が、前記送信要求信号を検知せず、要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の前記送信要求信号を検知したときに、前記データに補間処理を行った補間データを前記データとして前記データ受信部(31)に送信し、前記演算部(32)は、前記補間データを含む前記データを演算する工程と
を含む、データ送受信方法。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の車両航法システム10は、加速度データ及び角速度データを送信するセンサ通信部24と、加速度データ及び角速度データを受信する航法システム通信部31と、航法システム通信部31が受信した加速度データ及び角速度データを演算する航法システム演算部32とを備え、航法システム通信部31は、センサ通信部24に、加速度データ及び角速度データの送信要求信号を送信し、センサ通信部24は、送信要求信号を検知したときに航法システム通信部31に加速度データ及び角速度データを送信し、更に、センサ通信部24は、送信要求信号を検知せず送信要求信号受信エラーが発生したときには、その後次回の送信要求信号を検知したときに、加速度データ及び角速度データに補間処理を行った補間データを加速度データ及び角速度データとして航法システム通信部31に送信し、航法システム演算部32は、補間データを含む加速度データ及び角速度データを演算するため、データ受信部がデータ送信部にデータ送信要求信号を送信し、データ送信部がデータ受信部にデータ送信をするシステムに使用する用途に適している。
【符号の説明】
【0081】
10 車両航法システム(データ送受信システム)
20 慣性計測装置(慣性装置)
21 加速度センサ(検出装置)
22 角速度センサ(検出装置)
24 センサ通信部(データ送信部)
31 航法システム通信部(データ受信部)
32 航法システム演算部(演算部,解析装置)
図1
図2
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図10