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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149985
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】パネル材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20241016BHJP
   F16L 59/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
E04B1/76 400D
F16L59/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063184
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】庄司 研
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 潔
(72)【発明者】
【氏名】新井 舞子
【テーマコード(参考)】
2E001
3H036
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001GA03
2E001GA12
2E001GA67
2E001JA06
3H036AA09
3H036AB15
3H036AB23
3H036AC06
3H036AD09
3H036AE13
(57)【要約】
【課題】断熱性能を変化させることが可能であり、板材に亀裂が多少生じたとしても、断熱性能の低下を抑制することができる、パネル材を提供する。
【解決手段】パネル材1は、間隙12をあけて設けられた一対の板材11A、11Bと、間隙12と連通するように設けられたチャンバ20と、流動性と断熱性を有し、粉体または粒体の集合として形成され、チャンバ20内の空間22に収容された、断熱体Rと、断熱体Rを、チャンバ20内の空間22と間隙12との間で自在に移動させる、断熱体移動機構30と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙をあけて設けられた一対の板材と、
前記間隙と連通するように設けられたチャンバと、
流動性と断熱性を有し、粉体または粒体の集合として形成され、前記チャンバ内の空間に収容された、断熱体と、
前記断熱体を、前記チャンバ内の前記空間と前記間隙との間で自在に移動させる、断熱体移動機構と、
を備えている、パネル材。
【請求項2】
前記断熱体移動機構は、
前記チャンバ内の前記空間に、開口部が前記間隙に向いて設けられた袋体と、
ポンプと、
を備え、
前記袋体は、前記チャンバ内の前記空間を、当該袋体の内側に位置して前記間隙と連通する第1空間と、当該袋体の外側の、当該袋体と前記チャンバの内壁との間に位置する第2空間と、に区画するように設けられ、前記第1空間に前記断熱体が収容され、
前記ポンプは、前記第2空間を加圧して、前記断熱体を、前記第1空間から前記間隙へと移動させる、請求項1に記載のパネル材。
【請求項3】
前記ポンプは、前記第2空間を減圧して、前記断熱体を、前記間隙から前記第1空間へと移動させる、請求項2に記載のパネル材。
【請求項4】
前記一対の板材は、縦方向に延在して設けられ、前記チャンバは、前記一対の板材よりも、下方に設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載のパネル材。
【請求項5】
前記間隙と、前記チャンバ内の前記空間との間を、開閉自在に設けられたシャッターを備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載のパネル材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば一般の住宅やオフィスビル等においては、壁の内部に断熱材を設けたり、窓を二重窓としたりすることで、断熱性を高めることが行われている。これにより、夏場では、屋外の熱が屋内に伝導することが抑えられ、冬場では、暖房により上昇した屋内の熱が屋外へと逃げることが抑えられる。
しかし、冷房や暖房の効率を考えると、断熱性を低くすることが望ましい場合もある。例えば、夏場において、昼間に構造物が熱せられて屋内に熱が籠った場合、夕方に気温が下がったとしても、断熱性が高いと、屋内の熱は屋外へと放出されにくい。その結果、屋内に熱が籠ったままとなり、屋内の温度を下げるために冷房が必要となる。これに対し、壁の断熱性が低ければ、熱は屋外へと自然に放出されるため、冷房の必要性が低減する。
また、例えば、複数のコンピュータ装置が屋内に収容されるデータセンタにおいては、年間を通して、屋内を低い温度とすることが求められる。このため、壁の断熱性を高くして、特に夏場において屋外の熱が屋内に伝導しにくくすることが多い。しかし、冬場においては、屋内よりも屋外の気温が低くなるため、屋外の冷熱を屋内へ導入すれば屋内の温度を効率良く下げるができるが、実際には壁の断熱性が高いために、冬場においても屋内を冷房する必要がある。
したがって、壁等における断熱性を任意に変化させることができれば、冷房や暖房をより効率的に行うことができる可能性がある。
【0003】
これに関し、例えば特許文献1には、高温空間と低温空間の間に配置され、気密空間内に連続気孔を有する多孔体が充填された放熱制御体と、この放熱制御体の気密空間に気体を供給排出する吸排気手段とを備えた構成が開示されている。
特許文献1に開示されたような構成においては、放熱制御体に気密空間を設け、気密空間に設けられた吸排気口につながる吸排気配管を、真空ポンプ等の吸排気装置に連結し、これを駆動させて気体を吸排気させて気密空間の真空度を制御することで、放熱性の低い状態と放熱性の高い状態とを変化させている。このため、例えば気密空間の壁面に多少なりとも亀裂が生じると、気密空間を真空にしようとしても亀裂から空気が流入して、気密空間の真空度を意図したように制御することができなくなり、断熱性能が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-302371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、断熱性能を変化させることが可能であり、板材に亀裂が多少生じたとしても、断熱性能の低下を抑制することができる、パネル材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のパネル材は、間隙をあけて設けられた一対の板材と、前記間隙と連通するように設けられたチャンバと、流動性と断熱性を有し、粉体または粒体の集合として形成され、前記チャンバ内の空間に収容された、断熱体と、前記断熱体を、前記チャンバ内の前記空間と前記間隙との間で自在に移動させる、断熱体移動機構と、を備えている。
このような構成によれば、一対の板材の間に設けられた間隙と、当該間隙と連通するように設けられたチャンバ内の空間との間で、チャンバ内の空間に収容された断熱体が、断熱体移動機構によって、移動させられる。断熱体は流動性を有するため、間隙と、チャンバ内の空間との間の移動は、自在に行われる。断熱体移動機構によって、断熱体が、チャンバ内の空間から間隙へと移動した際には、一対の板材の間の間隙に断熱体が収容された状態となるため、一対の板材の間の断熱性が高い状態となる。また、断熱体が、チャンバ内の空間へと移動した際には、一対の板材の間の間隙に断熱体が収容されていない状態となるため、一対の板材の間の断熱性が低い状態となる。あるいは、例えば断熱体の一部をチャンバ内の空間から間隙へと移動させることで、一対の板材の間の断熱性が高い状態と、低い状態との間の、中間の状態とすることもできる。このようにして、パネル材の断熱性能を任意に変化させることが可能である。
ここで、断熱体は、粉体または粒体の集合として形成されているため、板材に気体が流通する程度の多少の亀裂が生じたとしても、この亀裂から断熱体が流出しにくい。したがって、断熱体が失われることによって断熱性能が低下することが抑制される。
このようにして、断熱性能を変化させることが可能であり、板材に亀裂が多少生じたとしても、断熱性能の低下を抑制することができる、パネル材を提供することが可能となる。
【0007】
本発明の一態様においては、前記断熱体移動機構は、前記チャンバ内の前記空間に、開口部が前記間隙に向いて設けられた袋体と、ポンプと、を備え、前記袋体は、前記チャンバ内の前記空間を、当該袋体の内側に位置して前記間隙と連通する第1空間と、当該袋体の外側の、当該袋体と前記チャンバの内壁との間に位置する第2空間と、に区画するように設けられ、前記第1空間に前記断熱体が収容され、前記ポンプは、前記第2空間を加圧して、前記断熱体を、前記第1空間から前記間隙へと移動させる。
このような構成によれば、ポンプにより、袋体とチャンバの内壁との間に位置する第2空間を加圧すると、チャンバ内で袋体の内側に位置する第1空間に収容された断熱体が、袋体の開口部を通して、間隙に押し出される。これにより、一対の板材の間の断熱性を高めることができる。このようにして、一対の板材の間の断熱性能を自在に変化させることが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記ポンプは、前記第2空間を減圧して、前記断熱体を、前記間隙から前記第1空間へと移動させる。
このような構成によれば、ポンプにより、袋体と前記チャンバの内壁との間に位置する第2空間を減圧し、間隙、及び袋体内の圧力よりも低くすると、チャンバ内で袋体が膨らみ、袋体の内側に位置する第1空間の容積が増大する。これにより、一対の板材の間の間隙に位置していた断熱体が、袋体の開口部を通して、袋体内に戻される。これにより、一対の板材の間の断熱性を低下させることができる。このようにして、一対の板材の間の断熱性能を自在に変化させることが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記一対の板材は、縦方向に延在して設けられ、前記チャンバは、前記一対の板材よりも、下方に設けられている。
このような構成によれば、一対の板材の間の間隙に位置していた断熱体をチャンバ内の空間に戻す際、断熱体の自重を利用することができる。したがって、断熱体をチャンバ内の空間に戻すために必要なエネルギーが低減される。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明のパネル材は、前記間隙と、前記チャンバ内の前記空間との間を、開閉自在に設けられたシャッターを備えている。
このような構成によれば、シャッターを閉じていれば、一対の板材の間の間隙と、チャンバ内の空間との間における、断熱体の移動が抑制されるため、断熱体を移動させて、一対の板材の間の断熱性が低い状態、高い状態、及びこれらの中間の状態のいずれかとした後に、この状態を容易に維持できる。このため、当該状態を維持するために必要なエネルギーが低減される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、断熱性能を変化させることが可能であり、板材に亀裂が多少生じたとしても、断熱性能の低下を抑制することができる、パネル材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るパネル材の構成を示す斜視図である。
図2図1のパネル材において、チャンバ内に断熱体を収容した状態を示す断面図である。
図3】一対の板材の間隙に断熱体の一部を収容した状態を示す断面図である。
図4】一対の板材の間隙に断熱体を収容した状態を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るパネル材の第1変形例の構成を示す断面図である。
図6】本発明の実施形態に係るパネル材の第2変形例の構成を示す断面図である。
図7図6のパネル材において、一対の板材の間隙に断熱体を収容した状態を示す断面図である。
図8図6のパネル材において、一対の板材の間隙に断熱体の一部を収容した状態を示す断面図である。
図9図6のパネル材において、間隙からチャンバ内に断熱体を移動させる状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明によるパネル材を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の第1実施形態に係るパネル材の構成を示す斜視図を図1に示す。図2は、図1のパネル材において、チャンバ内に断熱体を収容した状態を示す断面図である。
図1図2に示されるように、パネル材1は、パネル本体10と、チャンバ20と、断熱体Rと、断熱体移動機構30と、を主に備えている。
【0014】
パネル本体10は、各種の建物の壁、特に外壁など、その一面側と他面側で温度差が生じるような部位に用いられる。パネル本体10は、壁に限らず、扉、窓等であってもよい。パネル本体10の一面側は、例えば、発熱源となる複数のコンピュータ装置が収容されるデータセンタのコンピュータ室、冷蔵室等、温度管理が必要な空間とされる。パネル本体10の他面側は、例えば、屋外空間とされる。
パネル本体10は、一対の板材11A、11Bを備えている。一対の板材11A、11Bの各々は、縦方向(上下方向)に延在している。一対の板材11A、11Bは、水平方向に所定の間隔をあけて互いに平行に設けられている。これにより、一対の板材11A、11Bの間には、間隙12が形成されている。一対の板材11A、11Bは、上下方向から見た際に、一対の板材11A、11Bが互いに対向する方向に対して直交する方向Daに延びている。
パネル本体10が、例えば窓として使用される場合には、一対の板材11A、11Bは、透過性を有する材料によって形成されている。この場合、一対の板材11A、11Bは、例えばガラスや、光透過性を有する樹脂等によって、形成され得る。パネル本体10が窓として使用されず、パネル本体10に透過性が求められない場合には、一対の板材11A、11Bは、例えば木材や金属、光透過性を有さない樹脂等によって形成されて構わない。
【0015】
チャンバ20は、パネル本体10の下側に設けられている。すなわち、チャンバ20は、一対の板材11A、11Bよりも、下方に設けられている。チャンバ20は、例えば中空の直方体状で、パネル本体10の下端に沿って、パネル本体10が延在する方向Daに延びている。チャンバ20の上部には、一対の板材11A、11Bの間の間隙12に連通する連通開口21が形成されている。連通開口21は、パネル本体10が延在する方向Daに連続して延びていてもよいし、方向Daに沿って間隔をあけた複数箇所に形成されていてもよい。チャンバ20内には、空間22が形成されている。空間22の体積は、間隙12の体積と、略同等となるか、もしく間隙12の体積よりも大きくなるように、構成されている。
【0016】
パネル材1は、断熱体Rを、チャンバ20内の空間22と間隙12との間で自在に移動させることで、パネル本体10の断熱性を自在に変化させる。ここで、断熱体Rは、流動性と断熱性を有した、多数の粉体または粒体の集合(集合体)として形成されている。断熱体Rを形成する粉体または粒体は、例えば、平均粒径(直径)が、数十mm程度である。断熱体Rは、断熱体移動機構30によって、間隙12とチャンバ20内の空間22との間で移動が可能な程度の流動性を有する。また、断熱体Rは、間隙12に収容された場合に、断熱体Rを間隙12に収容しない場合に比較して、パネル本体10の断熱性能を高める。このような断熱体Rとしては、例えば、シリカエアロゲルを好適に用いることができる。シリカエアロゲルは、シリカ(二酸化ケイ素:SiO2)の微粒子を立体的な網目状とした構造を有している。このような断熱体Rは、断熱性を確保するため、例えば、1~18mW/mK程度の熱伝導率を有しているのが好ましい。
また、パネル本体10を窓に用いる場合、断熱体Rは、光透過性を有したものを用いるのが好ましい。
断熱体Rは、間隙12内に移動させた際に、間隙12内の全体にわたって充填することができる程度の量が、設けられている。
【0017】
断熱体移動機構30は、断熱体Rを、間隙12とチャンバ20内の空間22との間で自在に移動させる。本実施形態では、断熱体移動機構30は、例えば、袋体31と、ポンプ32と、を備えている。袋体31は、チャンバ20の空間22内に収容されている。袋体31は、開口部31aを有する。開口部31aは、チャンバ20の連通開口21内に配置され、間隙12に向けて開口している。袋体31は、断熱体Rを収容可能である。袋体31は、可撓性、及び柔軟性を有した材料、例えば、ビニール系材料等、薄膜状の軟質樹脂材料で形成するのが好ましい。袋体31は、例えば、ゴム系材料等であってもよい。
袋体31は、チャンバ20内の空間22を、袋体31の内側に位置して間隙12と連通する第1空間22Aと、袋体31の外側の、袋体31とチャンバ20の内壁との間に位置する第2空間22Bと、に区画するように設けられている。
ポンプ32は、チャンバ20内の空間22において、袋体31の外部の第2空間22Bに接続されている。ポンプ32は、チャンバ20内の第2空間22Bを加減圧可能である。
【0018】
また、パネル材1は、間隙12と、チャンバ20内の空間22との間を、開閉自在に設けられたシャッター40を備えている。本実施形態において、シャッター40は、例えば、連通開口21(袋体31の開口部31a)を閉塞する位置P1と、連通開口21を開放する位置P2との間で、移動可能に構成されている。シャッター40は、シリンダ等、適宜のアクチュエータにより、連通開口21を開閉可能とされている。
また、本実施形態において、シャッター40は、連通開口21を閉塞した位置P1において、袋体31内の第1空間22Aから間隙12への断熱体Rの移動を許容し、間隙12から第1空間22Aへの断熱体Rの移動(逆流)を阻止する、逆止弁41を備えている。逆止弁41の弁体は、袋体31内の第1空間22Aから間隙12へと移動する断熱体Rの流れに押圧されることによって開き、間隙12から第1空間22Aに逆流しようとする断熱体Rの流れに押圧されることで閉じる。
【0019】
図3は、一対の板材の間隙に断熱体の一部を収容した状態を示す断面図である。図4は、一対の板材の間隙に断熱体を収容した状態を示す断面図である。
断熱体移動機構30によって、断熱体Rを、チャンバ20内の空間22から間隙12へと移動させる際には、シャッター40を、連通開口21を閉塞する位置P1に移動させておく。ポンプ32で第2空間22Bを加圧することによって、袋体31内の第1空間22Aから断熱体Rが押し出される。この断熱体Rの流れにより、図3に示されるように、逆止弁41が開き、断熱体Rは、間隙12へと流入する。所定量の断熱体Rが、間隙12へと移動させた後に、ポンプ32の加圧を停止させると、断熱体Rの流れが止まり、シャッター40の上方に位置する断熱体Rの自重により、逆止弁41が閉じた状態となる。
このように、シャッター40により断熱体Rのチャンバ20内の空間22への逆流が抑制されるため、所定量の断熱体Rを間隙12へと移動させた後には、第2空間22Bが加圧された状態を解除して、第2空間22Bと間隙12の気圧が同等となるように構成してもよい。
【0020】
また、断熱体Rを、間隙12からチャンバ20内に戻す際には、シャッター40を、連通開口21を開放する位置P2に移動させる。この状態で、ポンプ32により第2空間22Bを減圧することにより、袋体31がチャンバ20内で膨らむ。袋体31が膨らむことで、袋体31内の圧力が低下し、間隙12内の断熱体Rが袋体31内に効率良く回収される。また、このとき、間隙12内の断熱体Rは、自重によっても、連通開口21を通して袋体31内に回収される。
所定量の断熱体Rを間隙12へと移動させた後に、第2空間22Bが加圧された状態を解除して、第2空間22Bと間隙12の気圧が同等となるように構成した場合においては、ポンプ32により第2空間22Bを減圧せずに、間隙12内の断熱体Rを、その自重のみによって、連通開口21を通して袋体31内に回収されるようにしてもよい。この場合において、袋体31を、ゴム系材料等の、弾性を有するものにより形成すると、断熱体Rの自重に袋体31の弾性が抗することで、断熱体Rが袋体31内に、容易に回収されない可能性がある。したがって、この場合には、袋体31は、弾性を有さず、断熱体Rの自重により容易に変形可能な、ビニール系材料等、薄膜状の軟質樹脂材料で形成するのが好ましい。
【0021】
このようなパネル材1では、図4に示すように、断熱体移動機構30によって、断熱体Rを、チャンバ20内の空間22から間隙12へと移動させて、一対の板材11A、11Bの間の間隙12に断熱体Rが収容され、断熱体Rが間隙12内の全体にわたって充填されるようにした場合、パネル本体10は、一対の板材11A、11Bの間の断熱性が最も高い状態となる。
また、図2に示すように、全ての断熱体Rを、間隙12からチャンバ20内の空間22へと移動させて、一対の板材11A、11Bの間の間隙12に断熱体Rが収容されておらず、断熱体Rが間隙12内に全く充填されていないようにした場合、パネル本体10は、一対の板材11A、11Bの間の断熱性が最も低い状態となる。
また、図3に示すように、断熱体Rの一部のみを、チャンバ20内の空間22から間隙12へと移動させた状態において、ポンプ32の加圧を停止させ、断熱体Rの流れを止めた状態とすることもできる。この場合、間隙12の上側には断熱体Rが充填されず、下側のみに断熱体Rが充填されることにより、パネル本体10は、一対の板材11A、11Bの間の断熱性が最も高い状態と、断熱性が最も低い状態との間の、中間の状態となる。このように、断熱体Rを中間の状態とする場合、間隙12に収容する断熱体Rの量を任意に調整することで、パネル本体10の断熱性を、自在に調整することができる。
【0022】
上述したようなパネル材1は、間隙12をあけて設けられた一対の板材11A、11Bと、間隙12と連通するように設けられたチャンバ20と、流動性と断熱性を有し、粉体または粒体の集合として形成され、チャンバ20内の空間22に収容された断熱体Rと、断熱体Rを、チャンバ20内の空間22と間隙12との間で自在に移動させる、断熱体移動機構30と、を備えている。
このような構成によれば、一対の板材11A、11Bの間に設けられた間隙12と、間隙12と連通するように設けられたチャンバ20内の空間22との間で、チャンバ20内の空間22に収容された断熱体Rが、断熱体移動機構30によって、移動させられる。断熱体Rは流動性を有するため、間隙12と、チャンバ20内の空間22との間の移動は、自在に行われる。断熱体移動機構30によって、断熱体Rが、チャンバ20内の空間22から間隙12へと移動した際には、一対の板材11A、11Bの間の間隙12に断熱体Rが収容された状態となるため、一対の板材11A、11Bの間の断熱性が高い状態となる。また、断熱体Rが、チャンバ20内の空間22へと移動した際には、一対の板材11A、11Bの間の間隙12に断熱体Rが収容されていない状態となるため、一対の板材11A、11Bの間の断熱性が低い状態となる。あるいは、例えば断熱体Rの一部をチャンバ20内の空間22から間隙12へと移動させて、一対の板材11A、11Bの間の断熱性が高い状態と、低い状態との間の、中間の状態とすることもできる。このようにして、パネル材1の断熱性能を任意に変化させることが可能である。
ここで、断熱体Rは、粉体または粒体の集合として形成されているため、板材11A、11Bに気体が流通する程度の多少の亀裂が生じたとしても、この亀裂から断熱体Rが流出しにくい。したがって、断熱体Rが失われることによって断熱性能が低下することが抑制される。
このようにして、断熱性能を変化させることが可能であり、板材11A、11Bに亀裂が多少生じたとしても、断熱性能の低下を抑制することができる、パネル材1を提供することが可能となる。
【0023】
また、断熱体移動機構30は、チャンバ20内の空間22に、開口部31aが間隙12に向いて設けられた袋体31と、ポンプ32と、を備え、袋体31は、チャンバ20内の空間22を、袋体31の内側に位置して間隙12と連通する第1空間22Aと、袋体31の外側の、袋体31とチャンバ20の内壁との間に位置する第2空間22Bと、に区画するように設けられ、第1空間22Aに断熱体Rが収容され、ポンプ32は、第2空間22Bを加圧して、断熱体Rを、第1空間22Aから間隙12へと移動させる。
このような構成によれば、ポンプ32により、袋体31とチャンバ20の内壁との間に位置する第2空間22Bを加圧すると、チャンバ20内で袋体31の内側に位置する第1空間22Aに収容された断熱体Rが、袋体31の開口部31aを通して、間隙12に押し出される。これにより、一対の板材11A、11Bの間の断熱性を高めることができる。このようにして、一対の板材11A、11Bの間の断熱性能を自在に変化させることが可能となる。
【0024】
また、ポンプは、第2空間22Bを減圧して、断熱体Rを、間隙12から第1空間22Aへと移動させる。
このような構成によれば、ポンプ32により、袋体31とチャンバ20の内壁との間に位置する第2空間22Bを減圧し、間隙12、及び袋体31内の圧力よりも低くすると、チャンバ20内で袋体31が膨らみ、袋体31の内側に位置する第1空間22Aの容積が増大する。これにより、一対の板材11A、11Bの間の間隙12に位置していた断熱体Rが、袋体31の開口部31aを通して、袋体31内に戻される。これにより、一対の板材11A、11Bの間の断熱性を低下させることができる。このようにして、一対の板材11A、11Bの間の断熱性能を自在に変化させることが可能となる。
【0025】
また、一対の板材11A、11Bは、縦方向に延在して設けられ、チャンバ20は、一対の板材11A、11Bよりも、下方に設けられている。
このような構成によれば、一対の板材11A、11Bの間の間隙12に位置していた断熱体Rをチャンバ20内の空間22に戻す際、断熱体Rの自重を利用することができる。したがって、断熱体Rをチャンバ20内の空間22に戻すために必要なエネルギーが低減される。
特に、本実施形態において、ポンプ32により第2空間22Bを減圧せずに、間隙12内の断熱体Rを、その自重のみによって、連通開口21を通して袋体31内に回収されるように構成すれば、断熱体Rを袋体31内に戻すためには、シャッター40を、連通開口21を開放する位置P2に移動させるのみでよい。このため、断熱体Rを袋体31内に戻すために必要なエネルギーを、効率的に、低減することができる。
【0026】
また、パネル材1は、間隙12と、チャンバ20内の空間22との間を、開閉自在に設けられたシャッター40を備えている。
このような構成によれば、シャッター40を閉じていれば、一対の板材11A、11Bの間の間隙12と、チャンバ20内の空間22との間における、断熱体Rの移動が抑制されるため、断熱体Rを移動させて、一対の板材11A、11Bの間の断熱性が低い状態、高い状態、及びこれらの中間の状態のいずれかとした後に、この状態を容易に維持できる。このため、当該状態を維持するために必要なエネルギーが低減される。
【0027】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明のパネル材は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
図5は、本発明の実施形態に係るパネル材の第1変形例の構成を示す断面図である。
例えば、上記実施形態では、断熱体移動機構30として、袋体31とポンプ32と、を備えるようにしたが、これに限られない。例えば、図5に示す断熱体移動機構30Bのように、チャンバ20内にピストン35を備え、このピストン35を、適宜のアクチュエータによってチャンバ20内で往復動させることによって、断熱体Rを、チャンバ20内と間隙12との間で移動させるようにしてもよい。
【0028】
これ以外にも、断熱体移動機構30としては、断熱体Rを、間隙12とチャンバ20内の空間22との間で自在に移動させることができるのであれば、例えば、回転するスクリューによって断熱体Rを搬送するスクリューコンベア、チャンバ20内の断熱体Rを吸い込み、間隙12に吐出するバキュームコンベア等を用いてもよい。
【0029】
(実施形態の第2変形例)
また、上記実施形態では、一対の板材11A、11Bは、縦方向に延在して設けられ、パネル本体10を壁、扉、窓に用いるようにしたが、これに限られない。パネル本体10は、例えば、屋根、床等にも適用可能である。
図6は、本発明の実施形態に係るパネル材の第2変形例の構成を示す断面図である。図7は、図6のパネル材において、一対の板材の間隙に断熱体を収容した状態を示す断面図である。図8は、図6のパネル材において、一対の板材の間隙に断熱体の一部を収容した状態を示す断面図である。図9は、図6のパネル材において、間隙からチャンバ内に断熱体を移動させる状態を示す断面図である。
例えば、図6に示すように、パネル材1Bは、パネル本体10Bを構成する一対の板材11A、11Bを、水平面に沿うよう配置してもよい。この場合、袋体31を収容したチャンバ20は、パネル本体10Bの水平方向の一端部に接続される。
【0030】
このようなパネル材1Bでは、図7に示すように、断熱体移動機構30によって、断熱体Rを、チャンバ20内の空間22から間隙12へと移動させて、一対の板材11A、11Bの間の間隙12に断熱体Rが収容され、断熱体Rが間隙12内の全体にわたって充填されるようにした場合、パネル本体10Bは、一対の板材11A、11Bの間の断熱性が最も高い状態となる。
また、図6に示すように、全ての断熱体Rを、間隙12からチャンバ20内の空間22へと移動させて、一対の板材11A、11Bの間の間隙12に断熱体Rが収容されておらず、断熱体Rが間隙12内に全く充填されていないようにした場合、パネル本体10Bは、一対の板材11A、11Bの間の断熱性が最も低い状態となる。
また、図8に示すように、断熱体Rの一部のみを、チャンバ20内の空間22から間隙12へと移動させた状態において、ポンプ32の加圧を停止させ、断熱体Rの流れを止めた状態とすることもできる。この場合、間隙12の上側には断熱体Rが充填されず、下側のみに断熱体Rが充填されることにより、パネル本体10Bは、一対の板材11A、11Bの間の断熱性が最も高い状態と、断熱性が最も低い状態との間の、中間の状態となる。本変形例においては、パネル本体10Bの間隙12内で、断熱体Rは、下に位置する板材11Aの全体にわたって水平方向に拡がって設けられた状態となる。
【0031】
本変形例において、断熱体Rを、間隙12からチャンバ20内に戻す際には、図9に示すように、シャッター40を、連通開口21を開放する位置P2に移動させる。また、本変形例において、パネル本体10B内には、間隙12に収容された断熱体Rを、チャンバ20の連通開口21側に向けて押圧し、掻き寄せる、プッシャ38を備えるのが好ましい。これにより、パネル本体10Bが水平面に沿うように設けられており、断熱体Rがその自重のみでは間隙12からチャンバ20内へと容易に移動できないような場合であっても、間隙12内の断熱体Rを、チャンバ20の袋体31内に、効率良く回収することができる。
【0032】
なお、パネル本体を構成する一対の板材11A、11Bは、水平面に対して傾斜して設けるようにしてもよい。
【0033】
(その他の変形例)
上記実施形態では、シャッター40を備えるようにしたが、その構成は適宜変更可能である。例えば、連通開口21を開閉するためのシャッター40の機構は、いかなるものであってもよい。
また、上記実施形態では、シャッター40が逆止弁41を備えるようにしたが、逆止弁41を備えない構成とすることもできる。この場合には、断熱体Rが、チャンバ20内の空間22と間隙12との間を移動する際には、常に、シャッター40を、連通開口21を開放する位置P2に移動させ、断熱体Rの移動が終了した段階で、シャッター40を、連通開口21を閉塞する位置P1に移動させるようにすればよい。
【0034】
上記したようなパネル材1の用途は、上記に例示したものに限られない。パネル材1は、例えば、昼間と夜間、夏季と冬季とで、温度変化が大きいような場所に、建築構造物を施工する場合に適している。例えば、砂漠、月面等においては、昼間と夜間とで温度変化が大きいため、昼間は、パネル本体10の間隙12に断熱体Rを収容して断熱性を高め、夜間は、断熱体Rをチャンバ20内に収容してパネル本体10の断熱性を低める等してもよい。また、パネル本体10の断熱性を変化させることで、外部からの入熱を抑えてもよいし、内部からの放熱をコントロールするようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0035】
(検討例)
上記したようなパネル材1の断熱性能について試算による検討を行ったので、その結果を以下に示す。
パネル本体を構成する一対の板材としては、それぞれ、厚さ8mmのガラス板を用いた。一対の板材は、12mmの間隙をあけて配置し、間隙には、断熱材としてシリカエアロゲルを充填した(図4の状態に相当する試験体1)。ここで、ガラス板の熱伝導率は、0.776W/mKであり、シリカエアロゲルの熱伝導率は、0.017W/mKである。
また、一対の板材(ガラス板)の間隙に、シリカエアロゲルを充填せず、空気を存在させたものを用意した(図2の状態に相当する試験体2)。この場合、間隙の空気層の熱抵抗は、0.054m2・K/Wとなる。
そして、このような試験体1、2の各々について、パネル本体の一方側(室内側)の熱伝達率を9W/m2K、パネル本体の他方側(室外側)の熱伝達率を23W/m2Kとして、熱貫流率を試算した。
その結果、間隙に断熱材を充填しない試験体2では、熱貫流率は、4.46W/m2Kであった。これに対し、間隙に断熱材を充填した試験体1では、熱貫流率は、1.13W/m2Kであった。これにより、間隙に断熱材を出し入れすることにより、パネル本体の断熱性能は、4倍程度変化することが確認された。
ここで、一対のガラス板の間隙を真空状態とした、いわゆる真空ガラスの熱貫流率は、1.4W/m2Kであり、間隙に断熱材を充填することで、真空ガラスよりも高い断熱性能を有していることが確認された。
【符号の説明】
【0036】
1、1B パネル材 30、30B 断熱体移動機構
11A、11B 板材 31 袋体
12 間隙 31a 開口部
20 チャンバ 32 ポンプ
22 空間 40 シャッター
22A 第1空間 R 断熱体
22B 第2空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9