IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧 ▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ アイシン精機株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-炭化水素製造装置 図1
  • 特開-炭化水素製造装置 図2
  • 特開-炭化水素製造装置 図3
  • 特開-炭化水素製造装置 図4
  • 特開-炭化水素製造装置 図5
  • 特開-炭化水素製造装置 図6
  • 特開-炭化水素製造装置 図7
  • 特開-炭化水素製造装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150018
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】炭化水素製造装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/12 20060101AFI20241016BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20241016BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063223
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 和人
(72)【発明者】
【氏名】佐山 勝悟
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲治
(72)【発明者】
【氏名】堀部 伸光
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 征一郎
(72)【発明者】
【氏名】北中 直輝
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 翔
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC90
4H006BD84
4H006BE20
4H006BE41
(57)【要約】
【課題】触媒反応が失活するのを抑制しつつ、製造される炭化水素の純度を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】炭化水素製造装置であって、混合ガスの供給源に接続され、二酸化炭素を吸着する第1吸着材を収容し、二酸化炭素の脱離にパージガスを用いない第1回収器と、供給源に対して第1回収器と並列に接続され、二酸化炭素を吸着する第2吸着材を収容し、二酸化炭素の脱離にパージガスを用いる第2回収器と、第1回収器から供給される第1供給ガスもしくは第2回収器から供給される第2供給ガスを用いた炭化水素の合成反応を促進する触媒を収容した反応器と、第1,2供給ガスに対して水素を添加可能な水素添加部と、反応器への第1供給ガスの供給および反応器への第2供給ガスの供給を制御する制御部と、を備え、制御部は、反応器へ第2供給ガスを供給させる前に、反応器へ第1供給ガスを供給させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素製造装置であって、
二酸化炭素を含む混合ガスの供給源に接続され、前記混合ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する第1吸着材を収容し、前記第1吸着材からの二酸化炭素の脱離にパージガスを用いない第1回収器と、
前記供給源に対して前記第1回収器と並列に接続され、前記混合ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する第2吸着材を収容し、前記第2吸着材からの二酸化炭素の脱離にパージガスを用いる第2回収器と、
前記第1回収器および前記第2回収器と接続され、前記第1回収器から供給される第1供給ガスもしくは前記第2回収器から供給される第2供給ガスを用いた炭化水素の合成反応を促進する触媒を収容した反応器と、
前記第1供給ガスおよび前記第2供給ガスに対して水素を添加可能な水素添加部と、
前記反応器への前記第1供給ガスの供給および前記反応器への前記第2供給ガスの供給を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記反応器へ前記第2供給ガスを供給させる前に、前記反応器へ前記第1供給ガスを供給させる、炭化水素製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素製造装置であって、
前記制御部は、前記触媒による前記合成反応が安定していると判定した場合、前記反応器への前記第1供給ガスの供給を停止させるとともに、前記反応器への前記第2供給ガスの供給を開始させる、炭化水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二酸化炭素と水素から炭化水素を製造する炭化水素製造装置が知られている。例えば、特許文献1には、吸着器から二酸化炭素を脱離させる際に、炭化水素の合成時に生じた熱エネルギーを用いた加熱と、水素によるパージと、を利用するメタン製造装置が開示されている。パージによって吸着器から脱離した二酸化炭素とパージに用いられた水素とを含んだガスは、反応器に供給されて炭化水素の合成反応に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-142806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、吸着器に二酸化炭素を吸着させる吸着工程と吸着器から二酸化炭素を脱離される脱離工程とが交互に繰り返され、この吸着工程時には吸着器が加熱されて二酸化炭素の脱離を促している。脱離工程時に吸着器から送出されるガス中の二酸化炭素濃度は、吸着器内の温度等に応じて変動する。例えば、吸着工程と交互に繰り返される脱離工程のうち最初の脱離工程時に吸着器から送出されるガス中の二酸化炭素濃度は、加熱を十分に受けておらず比較的低温の吸着器からは二酸化炭素が脱離しにくいことから、それ以降の脱離工程時の同ガス中の二酸化炭素濃度と比べて低くなる傾向にある。また、そのような最初の脱離工程時においては、反応器も合成反応時の発熱による加熱を十分に受けておらず触媒も比較的低温であることからその触媒の活性も不安定である。そのような状態の触媒に対して、吸着器から二酸化炭素濃度の低いガス(合成反応に好適なガス比から大きく外れたガス)が供給された場合には、触媒反応を失活させる虞がある。しかし、特許文献1のメタン製造装置では、脱離工程ごとのガス中の二酸化炭素濃度の変動については、何ら考慮されていない。このため、触媒反応が失活するのを抑制しつつ、製造される炭化水素の純度を向上させることができる技術が要望されていた。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、触媒反応が失活するのを抑制しつつ、製造される炭化水素の純度を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、炭化水素製造装置が提供される。この炭化水素製造装置は、二酸化炭素を含む混合ガスの供給源に接続され、前記混合ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する第1吸着材を収容し、前記第1吸着材からの二酸化炭素の脱離にパージガスを用いない第1回収器と、前記供給源に対して前記第1回収器と並列に接続され、前記混合ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する第2吸着材を収容し、前記第2吸着材からの二酸化炭素の脱離にパージガスを用いる第2回収器と、前記第1回収器および前記第2回収器と接続され、前記第1回収器から供給される第1供給ガスもしくは前記第2回収器から供給される第2供給ガスを用いた炭化水素の合成反応を促進する触媒を収容した反応器と、前記第1供給ガスおよび前記第2供給ガスに対して水素を添加可能な水素添加部と、前記反応器への前記第1供給ガスの供給および前記反応器への前記第2供給ガスの供給を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記反応器へ前記第2供給ガスを供給させる前に、前記反応器へ前記第1供給ガスを供給させる。
【0008】
この構成によれば、第1吸着材からの二酸化炭素の脱離にはパージガスを用いないことから、第1回収器から反応器に供給される第1供給ガスは、二酸化炭素のみを含む。一方、第2吸着材からの二酸化炭素の脱離にはパージガスを用いることから、第2回収器から反応器に供給される第2供給ガスは、二酸化炭素および水素を含む。このような第1,2供給ガスのうち、第2回収器内の温度等に応じて二酸化炭素濃度が変動する第2供給ガスよりも、二酸化炭素濃度が一定の第1供給ガスの方が、水素添加部による好適なガス比への調整を精度良く行うことができる。したがって、この構成によれば、このような第1供給ガスが第2供給ガスよりも先に反応器へ供給されることから、反応器内の触媒が暖機過程にあったとしても、好適なガス比に近付くようそのガス比が精度良く調整された第1供給ガスを用いて触媒に安定的に合成反応を行わせることができる。また、このような第1供給ガス供給時には高い純度の炭化水素を触媒に合成させることができる。すなわち、この構成によれば、触媒反応が失活するのを抑制しつつ、製造される炭化水素の純度を向上させることができる。
【0009】
(2)上記形態の炭化水素製造装置において、前記制御部は、前記触媒による前記合成反応が安定していると判定した場合、前記反応器への前記第1供給ガスの供給を停止させるとともに、前記反応器への前記第2供給ガスの供給を開始させてもよい。
この構成によれば、触媒による合成反応が安定していると判定されてから、第2供給ガスが反応器に供給される。触媒による合成反応が安定している場合、触媒は十分に暖められているとみなすことができる。このため、第2供給ガスを反応器に供給する際に第2供給ガスのガス比を合成反応に好適なガス比へ精度良く調整できなかったとしても、触媒は既に十分暖められていることから、触媒反応を失活させることなく第2供給ガスを用いた合成反応を触媒に実行させることができる。
【0010】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、炭化水素製造装置、炭化水素製造システム、炭化水素製造方法、炭化水素製造装置の制御方法、これら装置や方法を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の炭化水素製造装置の構成を例示した説明図である。
図2】第1回収器の周辺に配置された構成を詳細に示した説明図である。
図3】第2回収器の周辺に配置された構成を詳細に示した説明図である。
図4】第1回収器での吸着工程と脱離工程の切り替わりを示す説明図である。
図5】第2回収器での吸着工程、脱離工程および冷却工程の切り替わりを示す説明図である。
図6】第2供給ガス中の二酸化炭素濃度の変動を示した説明図である。
図7】第2供給ガス中のガス比の変動を示した説明図である。
図8】供給ガス制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての炭化水素製造装置1の構成を例示した説明図である。炭化水素製造装置1は、二酸化炭素と水素とから炭化水素であるメタンを製造するための装置である。炭化水素製造装置1は、制御部5と、燃焼炉CFと、第1回収器11,12と、第2回収器21,22,23と、サージタンク30と、水素添加部40と、反応器50と、メタンタンク60と、を備えている。制御部5は、ROM、RAMおよびCPUを含んで構成されるコンピュータであり、炭化水素製造装置1の各種制御を行う。
【0013】
燃焼炉CFは、メタンタンク60から供給されるメタンを燃焼して、二酸化炭素および窒素を含む混合ガスを排出する。第1回収器11,12は、混合ガスの供給源である燃焼炉CFに接続されている。また、第1回収器11,12は、混合ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する第1吸着材11C,12Cをそれぞれ収容している(図2参照)。第2回収器21~23は、燃焼炉CFに対して第1回収器11,12と並列に接続されている。また、第2回収器21~23は、混合ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する第2吸着材21C~23Cを収容している(図3参照)。第1吸着材11C,12Cおよび第2吸着材21C~23Cとしては、例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲルが挙げられる。
【0014】
図2は、第1回収器11,12の周辺に配置された構成を詳細に示した説明図である。第1回収器11,12は、混合ガス流路CS1を介して、燃焼炉CFに接続されている。混合ガス流路CS1は、燃焼炉CFから排出される混合ガスを第1回収器11,12に供給するためのガス流路であり、複数の配管で形成されている。混合ガス流路CS1を形成している配管のうち第1回収器11,12の各々に接続している部分を形成している配管には、それぞれバルブVa1,Va2が設けられている。バルブVa1,Va2の各々の開閉は、制御部5によって制御される。
【0015】
燃焼炉CFからバルブVa1を経由して第1回収器11に供給された混合ガスにおいて、その混合ガスに含まれる二酸化炭素は、第1吸着材11Cに吸着される。そして、混合ガスのうち吸着されなかった残りの成分は、排出流路CE11から外部に放出される。排出流路CE11を形成している配管には、バルブVa3が設けられている。一方、燃焼炉CFからバルブVa2を経由して第1回収器12に供給された混合ガスにおいて、その混合ガスに含まれる二酸化炭素は、第1吸着材12Cに吸着される。そして、その排ガスのうち吸着されなかった残りの成分は、それぞれ排出流路CE12から外部に放出される。排出流路CE12を形成している配管には、バルブVa4が設けられている。バルブVa3,Va4の各々の開閉は、制御部5によって制御される。
【0016】
供給ガス流路SS1は、第1回収器11,12の各々から送出される第1供給ガスを反応器50に供給するための流路であり、複数の配管で形成されている。第1供給ガスとは、第1回収器11,12の各々から反応器50に供給されるガスである。供給ガス流路SS1を形成している配管のうち第1回収器11,12の各々に接続している部分を形成している配管には、バルブVa5,Va6が設けられている。バルブVa5,Va6の各々の開閉は、制御部5によって制御される。また、供給ガス流路SS1を形成している配管のうちバルブVa5,Va6よりも下流側には、真空ポンプVP1が設けられている。真空ポンプVP1は、バルブVa5およびVa6のいずれかが開弁されて空間的に真空ポンプVP1と接続している第1回収器11,12のいずれかの内部を減圧可能である。真空ポンプVP1による減圧の実行と停止は、制御部5によって制御される。供給ガス流路SS1のうち真空ポンプVP1よりも下流側の部分は、後述する供給ガス流路SS2に接続している。サージタンク30、水素添加部40および反応器50については、図3にて説明する。なお、図2では、第1回収器11,12に混合ガス流路CS1が接続している位置と、第1回収器11,12に供給ガス流路SS1が接続している位置とは、対向しているように図示されているが、図2は炭化水素製造装置1の構成を模式的に表したものであることから、第1回収器11,12において混合ガス流路CS1や供給ガス流路SS1は互いに対向した位置で接続していなくてもよく、それぞれ任意の位置で接続していてもよい。
【0017】
図3は、第2回収器21~23の周辺に配置された構成を詳細に示した説明図である。第2回収器21~23は、混合ガス流路CS1から分岐した分岐流路CS2を介して、燃焼炉CFに接続されている。すなわち、第2回収器21~23は、燃焼炉CFに対して第1回収器11,12と並列に接続されている。分岐流路CS2は、燃焼炉CFから排出される混合ガスを第2回収器21~23に供給するためのガス流路であり、複数の配管で形成されている。分岐流路CS2を形成している配管のうち第2回収器21~23の各々に接続している部分を形成している配管には、それぞれバルブVb1,Vb2,Vb3が設けられている。バルブVb1~Vb3の各々の開閉は、制御部5によって制御される。
【0018】
燃焼炉CFからバルブVb1を経由して第2回収器21に供給された混合ガスにおいて、その混合ガスに含まれる二酸化炭素は、第2吸着材21Cに吸着される。そして、混合ガスのうち吸着されなかった残りの成分は、排出流路CE21から外部に放出される。排出流路CE21を形成している配管には、バルブVb4が設けられている。一方、燃焼炉CFからバルブVb2,Vb3を経由して第2回収器22,23に供給された混合ガスにおいて、その混合ガスに含まれる二酸化炭素は、第2吸着材22C,23Cに吸着される。そして、その排ガスのうち吸着されなかった残りの成分は、それぞれ排出流路CE22,CE23から外部に放出される。排出流路CE22,CE23を形成している配管には、バルブVb5,Vb6が設けられている。バルブVb4~Vb6の各々の開閉は、制御部5によって制御される。
【0019】
水素供給源HRは、水素タンクである。水素流路HSは、水素供給源HRから供給される水素を、第2回収器21~23に供給するためのガス流路であり、複数の配管で形成されている。水素流路HSを形成している配管のうち第2回収器21~23の各々に接続している部分を形成している配管には、バルブVb7,Vb8,Vb9が設けられている。バルブVb7~Vb9の各々の開閉は、制御部5によって制御される。水素供給源HRからバルブVb7~Vb9を経由して第2回収器21~23に供給された水素は、第2吸着材21C~23Cに吸着した二酸化炭素を脱離するためのパージガスとして利用される。
【0020】
供給ガス流路SS2は、第2回収器21~23の各々から送出される第2供給ガスを反応器50に供給するための流路であり、複数の配管で形成されている。第2供給ガスとは、第2回収器21~23の各々から反応器50に供給されるガスである。供給ガス流路SS2を形成している配管のうち第2回収器21~23の各々に接続している部分を形成している配管には、バルブVb10,Vb11,Vb12が設けられている。バルブVb10~Vb12の各々の開閉は、制御部5によって制御される。また、供給ガス流路SS2を形成している配管のうちバルブVb10~Vb12よりも下流側には、真空ポンプVP2およびサージタンク30が設けられている。真空ポンプVP2は、バルブVb10~Vb12のうちのいずれかが開弁されて空間的に真空ポンプVP2と接続している第2回収器21~23のいずれかの内部を減圧可能である。真空ポンプVP2による減圧の実行と停止は、制御部5によって制御される。サージタンク30は、真空ポンプVP2よりも下流側に配置され、第2供給ガスを一時的に貯留可能なタンクである。図2にて説明した供給ガス流路SS1は、供給ガス流路SS2のうちサージタンク30よりも下流側の位置において、供給ガス流路SS2に接続している。
【0021】
水素添加部40は、供給ガス流路SS2のうち供給ガス流路SS1が接続している位置よりも下流側の部分を流れる第1供給ガスもしくは第2供給ガスに対して、水素を添加可能な水素タンクである。水素添加部40は、同部分を流れる第1供給ガス中のガス比(H2/CO2比)もしくは第2供給ガス中のガス比(H2/CO2比)が、反応器50での合成反応に好適なガス比(H2/CO2比)に近付くよう水素を添加可能である。制御部5は、同部分に配置のガスセンサで検出されたガス組成や反応器50内の温度、反応器50からメタンタンク60に向かって流れるガスの組成等に基づいて、水素添加部40による水素の添加量を制御する。
【0022】
反応器50は、供給ガス流路SS1,SS2を介して、第1回収器11,12および第2回収器21~23と接続され(図2,3参照)、第1供給ガスもしくは第2供給ガスを用いた合成反応により炭化水素(本実施形態ではメタン)を合成する装置である。反応器50は、炭化水素の合成反応を促進する触媒(不図示)を収容している。反応器50において合成された炭化水素は、図示しない圧縮機にて圧縮されたのちメタンタンク60(図1参照)に充填される。
【0023】
熱媒体流路MFは、第2吸着材21C~23Cとの間で熱交換可能な熱媒体が流通する流路であり、複数の配管で形成されている。炭化水素の合成反応によって反応器50で生じた熱は、熱媒体流路MFを流通する熱媒体を介して、第2回収器21~23に供給される。熱媒体流路MFを形成している配管には、流路切替バルブTV1,TV2,TV3,TV4が設けられている。流路切替バルブTV1~TV4は、いずれも三方弁であり、熱媒体流路MFに含まれる第1流路MF1,第2流路MF2および第3流路MF3の中から熱媒体を流通させる流路を切り替える。第1~3流路MF1~MF3は、二重管で構成された第2回収器21~23の外側管と内側管との間を通過する流路である。例えば、熱媒体を流通させる流路を第1流路MF1に切り替えると、第2回収器21内に収容された第2吸着材21Cに対して第1流路MF1を流通する熱媒体から熱が供給される。また、熱媒体流路MFを形成している配管には、循環ポンプCPが設けられている。循環ポンプCPは、第1~3流路MF1~MF3のうち流路切替バルブTV1~TV4の切替により空間的に循環ポンプCPと接続している流路の循環を促進する。流路切替バルブTV1~TV4による流路切替および循環ポンプCPによる循環促進の実行と停止は、制御部5によって制御される。なお、図3では、第2回収器21~23に分岐流路CS2が接続している位置と、第2回収器21~23に供給ガス流路SS2が接続している位置とは、対向しているように図示されているが、図3は炭化水素製造装置1の構成を模式的に表したものであることから、第2回収器21~23において分岐流路CS2や供給ガス流路SS2は互いに対向した位置で接続していなくてもよく、それぞれ任意の位置で接続していてもよい。
【0024】
図4は、第1回収器11,12における吸着工程および脱離工程の切り替わりを示す説明図である。炭化水素製造装置1では、第1吸着材11Cもしくは第1吸着材12Cに二酸化炭素を吸着させる吸着工程と、吸着工程後の第1吸着材11Cもしくは第1吸着材12Cから二酸化炭素を脱離する脱離工程と、を第1回収器11,12の各々に実行させる。図4に示すように、サイクル1およびサイクル2の順で、第1回収器11,12は、互いに異なる工程を繰り返す。すなわち、制御部5は、吸着工程と脱離工程とを第1回収器11,12に繰り返し実行させる。
【0025】
第1回収器11が吸着工程であるとき、バルブVa1,Va3は開弁状態であるとともに、バルブVa5は閉弁状態である。このような状態において、燃焼炉CFから第1回収器11に供給された混合ガスに含まれる二酸化炭素は、第1吸着材11Cに吸着される。そして、混合ガスのうち吸着されなかった残りの成分は、排出流路CE11から外部に放出される。
【0026】
第1回収器11が脱離工程であるとき、バルブVa1,Va3は閉弁状態であるとともに、バルブVa5は開弁状態である。このような状態において、真空ポンプVP1が稼働して第1回収器11の内部が減圧されることによって、第1吸着材11Cに吸着した二酸化炭素が脱離される。
【0027】
一方、第1回収器12が吸着工程および脱離工程であるときには、上述した吸着工程および脱離工程であるときの第1回収器11と同様に、第1回収器11の各種バルブに対応する第1回収器12の各種バルブの開閉および真空ポンプVP1による減圧によって、各工程が実行される。
【0028】
図5は、第2回収器21~23における吸着工程、脱離工程および冷却工程の切り替わりを示す説明図である。炭化水素製造装置1では、第2吸着材21C~23Cに二酸化炭素を吸着させる吸着工程と、吸着工程後の第2回収器21~23の内部にパージガスである水素を供給しながら第2吸着材21C~23Cから二酸化炭素を脱離する脱離工程と、脱離工程後の第2吸着材21C~23Cを冷却する冷却工程と、を第2回収器21~23の各々に実行させる。図5に示すように、サイクル1、サイクル2およびサイクル3の順で、第2回収器21~23は、互いに異なる工程を繰り返す。すなわち、制御部5は、吸着工程と、脱離工程と、冷却工程と、を第2回収器21~23に繰り返し実行させる。なお、第2回収器21~23のうち吸着工程中および冷却工程中の第2回収器には、第2回収器21~23のそれぞれに形成された図示しない流路(熱媒体流路MFとは異なる流路)を介して、常温の熱媒体が供給される。一方、第2回収器21~23のうち脱離工程中の第2回収器には、熱媒体流路MFを介して熱媒体から熱が供給される。
【0029】
第2回収器21が吸着工程であるとき、バルブVb1,Vb4は開弁状態であるとともに、バルブVb7,Vb10は閉弁状態である。このような状態において、燃焼炉CFから第2回収器21に供給された混合ガスに含まれる二酸化炭素は、第2吸着材21Cに吸着される。そして、混合ガスのうち吸着されなかった残りの成分は、排出流路CE21から外部に放出される。また、吸着工程の際には、第2回収器21に形成された図示しない流路(熱媒体流路MFとは異なる流路)を介して、常温の熱媒体が第2回収器21に供給されて第2吸着材21Cを冷却する。なお、吸着工程の際、流路切替バルブTV1~TV4の切替により熱媒体を流通させる流路は、第2流路MF2に切り替わっている。
【0030】
第2回収器21が脱離工程であるとき、バルブVb1,Vb4は閉弁状態であるとともに、バルブVb7,Vb10は開弁状態である。このような状態において、水素供給源HRから第2回収器21に供給された水素は、パージガスとして、第2吸着材21Cに吸着した二酸化炭素を脱離する。脱離された二酸化炭素は、水素とともに第2供給ガスとして供給ガス流路SS1に送り出される。また、脱離工程の際、真空ポンプVP2が稼働して第2回収器21の内部が減圧されているとともに、流路切替バルブTV1~TV4の切替により熱媒体を流通させる流路が、第1流路MF1に切り替わっている。このとき、第2回収器21内に収容された第2吸着材21Cに対して、循環ポンプCPにより第1流路MF1を流通する熱媒体から熱が供給される。
【0031】
第2回収器21が冷却工程であるとき、少なくともバルブVb1,Vb7は閉弁状態である。冷却工程の際、流路切替バルブTV1~TV4の切替により熱媒体を流通させる流路が、第1流路MF1から第3流路MF3に切り替わっている。また、冷却工程の際には、第2回収器21に形成された図示しない流路(熱媒体流路MFとは異なる流路)を介して、常温の熱媒体が第2回収器21に供給されて第2吸着材21Cを冷却する。
【0032】
第2回収器22,23がそれぞれ吸着工程、脱離工程および冷却工程であるときには、上述した吸着工程、脱離工程および冷却工程であるときの第2回収器21と同様に、第2回収器21の各種バルブに対応する第2回収器22,23の各種バルブの開閉および切替によって、各工程が実行される。
【0033】
上述したように、第1吸着材11C,12Cからの二酸化炭素の脱離にはパージガスを用いないことから、第1回収器11,12から反応器50に供給される第1供給ガスは、二酸化炭素のみを含む。このため、第1供給ガス中の二酸化炭素濃度は一定である(第1供給ガスは、純二酸化炭素ガスである)。一方、上述したように、第2吸着材21C~23Cからの二酸化炭素の脱離にはパージガスを用いることから、第2回収器21~23から反応器50に供給される第2供給ガスは、二酸化炭素および水素を含む。このため、第2供給ガス中の二酸化炭素濃度は、脱離工程において脱離される二酸化炭素の量に応じて変動する。この脱離される二酸化炭素の量は、脱離工程時の第2回収器21~23内の温度や各々の脱離工程の直前に第2吸着材21C~23Cに吸着している二酸化炭素の量に応じて変動する。制御部5は、各種バルブの開閉および真空ポンプVP1,VP2を制御することによって、反応器50への第1供給ガスの供給および反応器50への第2供給ガスの供給を制御する。
【0034】
図6は、第2回収器21から送出される第2供給ガス中の二酸化炭素濃度の変動を示した説明図である。図6の縦軸は、第2供給ガス中の二酸化炭素濃度を示す。図6の横軸は、時間を示す。図6には、1サイクル分(図5参照)の脱離工程が実行された際にその脱離工程中に変動する第2供給ガス中の二酸化炭素濃度の変動が示されている。タイミングt0は、反応器50において炭化水素の合成反応が最後に行われてから長時間経過した後のタイミングである。タイミングt0において、反応器50(および反応器50に収容された触媒)は比較的低温の状態にある。また、タイミングt0においては、第2吸着材21Cも比較的低温の状態にある。これは、第2吸着材21Cについても、熱媒体流路MFを介した熱媒体からの熱供給を最後に受けてから長時間経過しているためである。このようなタイミングt0の例としては、その日に初めて炭化水素製造装置1による炭化水素の製造が開始されたタイミング等が挙げられる。比較的低温の第2吸着材21Cからは二酸化炭素が脱離しにくいことから、タイミングt0から脱離工程が実行された際の第2供給ガス中の二酸化炭素濃度は、それ以降に脱離工程が実行された際の第2供給ガス中の二酸化炭素濃度と比べて低くなる傾向にある。また、第2供給ガス中の二酸化炭素濃度は、脱離工程の開始時において第2吸着材21Cに吸着されている二酸化炭素量にも影響を受けるため、脱離工程毎の変動も複雑である。このような変動の緩和を図るために、第2回収器21の下流側には、第2供給ガスを一時的に貯留可能なサージタンク30が設けられている。
【0035】
図7は、サージタンク30から送出される第2供給ガス中のガス比(H2/CO2比)の変動を示した説明図である。図7の縦軸は、第2供給ガス中のガス比を示す。図7の横軸は、時間を示す。図7には、供給ガス流路SS2のうち供給ガス流路SS1が接続している位置とサージタンク30との間の位置(図3参照)を流れる第2供給ガス中のガス比の変動が示されている。このガス比は、同位置に配置のガスセンサによって検出される。図7のタイミングt0は、図6のタイミングt0と同じである。また、図7に示す目標値TVは、反応器50における合成反応に好適なガス比の値であり、制御上限値ULは、水素添加部40による水素添加の制御上限の値であり、この値を超えると、第2供給ガス中のガス比を目標値TVに調整することが不可能になるとみなされる値である。制御上限値ULは、第2供給ガスのガス組成をガスセンサが検知してから実際に出力するまでの遅れ時間の長さや、水素添加部40による水素添加の調整精度に基づいて設定される。
【0036】
タイミングt0から脱離工程が実行された際の第2供給ガス中の二酸化炭素濃度は低い傾向にあることから(図6参照)、サージタンク30から送出される第2供給ガス中のガス比は、タイミングt0直後は上昇を続ける。このときタイミングt1に近付くにつれて第2供給ガス中のガス比は制御上限値ULに近付いていくことから、水素添加部40による調整幅AD(図7に図示)の長さが短くなっていくことで水素添加部40による水素添加の調整も難しくなっていく。このようにタイミングt0から脱離工程が実行された際の第2供給ガス中の二酸化炭素濃度は低い傾向にあり、且つ、その第2供給ガス中のガス比の調整は難しい。
【0037】
上述したように、タイミングt0においては、反応器50(および反応器50に収容された触媒)も比較的低温の状態にあることから、タイミングt0直後の触媒の活性は不安定である。触媒がそのような状態である場合には、熱媒体流路MFを介して熱媒体から第2吸着材21C~23Cに対して十分な熱供給を行えないことから第2吸着材21C~23Cから二酸化炭素を脱離させにくい。また、同状態の触媒に対して、タイミングt0から脱離工程が実行された際の第2供給ガスが供給された場合、その第2供給ガス中の二酸化炭素濃度は低い傾向にあり、且つ、その第2供給ガス中のガス比の調整は難しいことから、合成される炭化水素の純度の低下や触媒反応の失活を招く虞がある。
【0038】
上述した課題に対して、サージタンク30の容量を大きくすることで第2供給ガス中の二酸化炭素濃度の変動を更に緩和させる手法が考えられる。しかし、このような場合には、炭化水素製造装置1の大型化やサージタンク30の容量拡大によるコスト増加が生じる。他には、タイミングt0から脱離工程が実行された際の第2供給ガスを反応器50に供給することなく炭化水素製造装置1外へ廃棄することが考えられる。しかし、第2供給ガスの廃棄は、燃焼炉CFから排出される混合ガスを用いて炭化水素を合成した際の収率を低下させることになるため好ましくない。
【0039】
このため、炭化水素製造装置1においては、制御部5は、反応器50へ第2供給ガスを供給させる前に、反応器50へ第1供給ガスを供給させる。具体的には、制御部5は、図6,7で説明したタイミングt0において、少なくともバルブVb10~Vb12を閉弁状態にして(図3参照)反応器50への第2供給ガスの供給を停止させた状態で、第1回収器11,12のそれぞれに、吸着工程と、脱離工程と、を実行させることによって、反応器50へ第1供給ガスを供給させる。このとき、二酸化炭素のみを含む第1供給ガスは、第2回収器21~23内の温度等に応じて二酸化炭素濃度が変動する第2供給ガスと比べて、水素添加部40による好適なガス比への調整を精度良く行いやすいことから、反応器50内の触媒が暖機過程(比較的低温の状態)にあったとしても、そのような状態の触媒にとって好適なガス比に近付くよう精度良く調整された第1供給ガスを用いて触媒に安定的に合成反応を行わせることができる。第1供給ガスを用いた合成反応が継続することにより、合成反応時の発熱を利用して反応器50内の触媒は昇温され続けたのち、触媒による合成反応は安定する。
【0040】
また、制御部5は、触媒による合成反応が安定していると判定した場合、反応器50への第1供給ガスの供給を停止させるとともに、反応器50への第2供給ガスの供給を開始させる。具体的には、制御部5は、予め設定された長さの単位時間内において、基準となる温度範囲内に触媒の温度が含まれている場合、触媒による合成反応が安定していると判定する。また、制御部5は、同様の単位時間内において、反応器50からメタンタンク60に向かって流れるガスに含まれる炭化水素濃度、未反応の水素濃度および未反応の二酸化炭素濃度の各々が基準となる濃度範囲内に含まれている場合にも、触媒による合成反応が安定していると判定してもよい。このような基準に基づいて、触媒による合成反応が安定していると判定した場合、制御部5は、少なくともバルブVa5,Va6を閉弁状態にすることで(図2参照)反応器50への第1供給ガスの供給を停止させるとともに、第2回収器21~23のうちいずれかに吸着工程を実行させることによって、反応器50への第2供給ガスの供給を開始させる。その後、制御部5は、第2回収器21~23のそれぞれに、吸着工程と、脱離工程と、冷却工程と、を繰り返し実行させることによって、反応器50への第2供給ガスの供給を継続させる。第2供給ガスの供給時に第2供給ガスのガス比を合成反応に好適なガス比へ精度良く調整できなかったとしても、触媒による合成反応は予め第1供給ガスが供給されていたことにより安定している(触媒は既に十分暖められている)ことから、触媒反応を失活させることなく第2供給ガスを用いた合成反応を触媒に実行させることができる。第2回収器21~23は、第1回収器11,12と比べて、脱離工程の際に熱媒体流路MFを流通する熱媒体による加熱や水素によるパージを用いることから、二酸化炭素を脱離させる際に要するエネルギー効率は第1回収器11,12よりも優れている。このため、エネルギー効率の観点からは第2供給ガスを用いて炭化水素を合成した方が好ましい。
【0041】
図8は、供給ガス制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。供給ガス制御処理は、触媒による合成反応が安定したことに応じて、反応器50に供給していた第1供給ガスを第2供給ガスに切り替える処理である。供給ガス制御処理は、作業者からの炭化水素の製造開始の指示を制御部5が受け付けた場合に実行される。
【0042】
供給ガス制御処理が開始されると、制御部5は、まず初めに、反応器50への第1供給ガスの供給を開始させる(ステップS10)。このとき、制御部5は、反応器50への第2供給ガスの供給を停止させた状態である。具体的には、制御部5は、少なくともバルブVb10~Vb12を閉弁状態にして(図3参照)反応器50への第2供給ガスの供給を停止させた状態で、第1回収器11,12のいずれかに吸着工程を実行させることによって、反応器50への第1供給ガスの供給を開始させる。その後、制御部5は、次に説明するステップS20の処理において肯定判定を行うまで、第1回収器11,12のそれぞれに、吸着工程と、脱離工程と、を繰り返し実行させることによって、反応器50への第1供給ガスの供給を継続させる(図4参照)。
【0043】
反応器50へ第1供給ガスを供給させながら、制御部5は、反応器50内に収容された触媒による合成反応が安定しているか否か判定する(ステップS20)。合成反応が安定していないと判定した場合(ステップS20:NO)、制御部5は、再びステップS20の処理を行う。一方、合成反応が安定していると判定した場合(ステップS20:YES)、制御部5は、反応器50への第1供給ガスの供給を停止させるとともに、反応器50への第2供給ガスの供給を開始させる(ステップS30)。具体的には、制御部5は、少なくともバルブVa5,Va6を閉弁状態にすることで(図2参照)反応器50への第1供給ガスの供給を停止させるとともに、第2回収器21~23のうちいずれかに吸着工程を実行させることによって、反応器50への第2供給ガスの供給を開始させる。その後、制御部5は、第2回収器21~23のそれぞれに、吸着工程と、脱離工程と、冷却工程と、を繰り返し実行させることによって、反応器50への第2供給ガスの供給を継続させる(図5参照)。その後、制御部5は、供給ガス制御処理を終了する。
【0044】
以上説明した実施形態の炭化水素製造装置1によれば、第1吸着材11C,12Cからの二酸化炭素の脱離にはパージガスを用いないことから、第1回収器11,12から反応器50に供給される第1供給ガスは、二酸化炭素のみを含む。一方、第2吸着材21C~23Cからの二酸化炭素の脱離にはパージガスを用いることから、第2回収器21~23から反応器50に供給される第2供給ガスは、二酸化炭素および水素を含む。このような第1,2供給ガスのうち、第2回収器21~23内の温度等に応じて二酸化炭素濃度が変動する第2供給ガスよりも、二酸化炭素濃度が一定の第1供給ガスの方が、水素添加部40による好適なガス比への調整を精度良く行うことができる。したがって、炭化水素製造装置1によれば、このような第1供給ガスが第2供給ガスよりも先に反応器50へ供給されることから、反応器50内の触媒が暖機過程にあったとしても、好適なガス比に近付くようそのガス比が精度良く調整された第1供給ガスを用いて触媒に安定的に合成反応を行わせることができる。また、このような第1供給ガス供給時には高い純度の炭化水素を触媒に合成させることができる。すなわち、炭化水素製造装置1によれば、触媒反応が失活するのを抑制しつつ、製造される炭化水素の純度を向上させることができる。
【0045】
また、炭化水素製造装置1では、制御部5は、触媒による合成反応が安定していると判定した場合、反応器50への第1供給ガスの供給を停止させるとともに、反応器50への第2供給ガスの供給を開始させる。このため、触媒による合成反応が安定していると判定されてから、第2供給ガスが反応器50に供給される。触媒による合成反応が安定している場合、触媒は十分に暖められているとみなすことができる。したがって、第2供給ガスを反応器50に供給する際に第2供給ガスのガス比を合成反応に好適なガス比へ精度良く調整できなかったとしても、触媒は既に十分暖められていることから、触媒反応を失活させることなく第2供給ガスを用いた合成反応を触媒に実行させることができる。
【0046】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0047】
上記実施形態では、炭化水素製造装置1は、メタンを製造するための装置であったが、これに限られない。例えば、炭化水素製造装置は、メタンとは異なる炭化水素であるメタノールやエタノールを製造するための装置であってもよい。
【0048】
上記実施形態では、混合ガス流路CS1や分岐流路CS2を形成している配管には、脱水器が設けられていてもよい。このような場合、燃焼炉CFから排出される混合ガスは、混合ガス流路CS1や分岐流路CS2を流れる際に脱水器によって除湿されたのち、第1回収器11,12や第2回収器21~23に供給されてもよい。
【0049】
上記実施形態では、水素供給源HRは、水素タンクであったが、これに限られない。例えば、水素供給源HRは、水電解装置であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、水素添加部40は、サージタンク30と反応器50との間を流れる第1供給ガスもしくは第2供給ガスに対して、水素を添加可能に配置されていたが、これに限られない。例えば、サージタンク30とメタンタンク60との間において、複数の反応器50が直列に接続された炭化水素製造装置の場合には、反応器50同士を接続する配管の各々に水素添加部40が配置されていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、第2回収器21~23は、熱媒体流路MFを流通する熱媒体によって加熱されていたが、これに限られない。例えば、第2回収器21~23は、熱媒体流路MFに加えて、もしくは、熱媒体流路MFに代えて、第2回収器21~23内を加熱する電気ヒータを備え、その電気ヒータによって加熱されてもよい。また、第2回収器21~23に対して実行される脱離工程において、熱媒体流路MFや電気ヒータによる加熱と、真空ポンプVP2による第2回収器21~23の内部減圧と、のうちいずれか一方のみが実施されてもよい。
【0052】
上記実施形態では、第1回収器11,12に対して実行される脱離工程において、真空ポンプVP1による第1回収器11,12の内部減圧が実施されていたが、これに限られない。例えば、第1回収器11,12は、第2回収器21~23における熱媒体流路MFと同様の熱媒体流路や上述の電気ヒータを備え、脱離工程においては、真空ポンプVP1による減圧に加えて、もしくは、真空ポンプVP1による減圧に代えて、熱媒体流路や電気ヒータによる加熱が実施されてもよい。このような場合であっても、第1吸着材11C,12Cからの二酸化炭素の脱離にはパージガスを用いないことから、第1回収器11,12から反応器50に供給される第1供給ガスは、二酸化炭素のみを含む。
【0053】
上記実施形態では、供給ガス流路SS1を形成している配管のうちバルブVa5,Va6よりも下流側には、真空ポンプVP1が設けられていたが、これに限られない。例えば、供給ガス流路SS1が供給ガス流路SS2に接続している位置と真空ポンプVP1との間において、上流側から順に、圧縮機、サージタンク、流量計(マスフローコントローラ―)が設けられていてもよい。すなわち、このような形態においては、第1供給ガスは、上流側から順に、真空ポンプVP1、圧縮機、サージタンク、流量計を経由したのち、反応器50に向かう。また、上記実施形態では、供給ガス流路SS2を形成している配管のうちバルブVb10~Vb12よりも下流側には、真空ポンプVP2およびサージタンク30が設けられていたが、これに限られない。例えば、真空ポンプVP2とサージタンク30との間に圧縮機が設けられていてもよいし、供給ガス流路SS1が供給ガス流路SS2に接続している位置とサージタンク30との間に流量計が設けられていてもよい。
【0054】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…炭化水素製造装置
5…制御部
11,12…第1回収器
11C,12C…第1吸着材
21,22,23…第2回収器
21C,22C,23C…第2吸着材
30…サージタンク
40…水素添加部
50…反応器
60…メタンタンク
CE11,CE12…排出流路
CE21,CE22,CE23…排出流路
CF…燃焼炉
CP…循環ポンプ
CS1…混合ガス流路
CS2…分岐流路
HR…水素供給源
HS…水素流路
MF…熱媒体流路
MF1…第1流路
MF2…第2流路
MF3…第3流路
SS1…供給ガス流路
SS2…供給ガス流路
TV1,TV2,TV3,TV4…流路切替バルブ
VP1…真空ポンプ
VP2…真空ポンプ
Va1~Va6…バルブ
Vb1~Vb12…バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8