(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150032
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ノック式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/08 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B43K24/08 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063251
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼口 照隆
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC04
2C353HG04
(57)【要約】
【課題】ノック体の押圧過程で発生するノック音を低減させることができるノック式筆記具を提供する。
【解決手段】
出没機構が、複数のカム歯31及びカム溝32と、カム歯31またはカム溝32に交互に係合可能な複数の突条41を有する回転部材4と、突条41の後端に当接する、山部511と谷部512とが円周方向に沿って交互に配置された山谷部51を有するノック体5と、軸筒2内に収容され且つ筆記体7を後方に付勢する弾発体6と、を備える。山谷部51の各々の谷部512の底部512aが凹曲面状に形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に筆記体を前後方向に移動可能に収容し、前記筆記体のペン先を前記軸筒の前端孔から出没可能に構成したノック式筆記具であって、
前記軸筒の側壁または前記軸筒の後端にノック体が設けられ、ペン先没入状態から前記ノック体を前方に押圧操作することにより前記ペン先を前記軸筒の前端孔から突出状態にし、前記ペン先突出状態から前記ノック体を前方に押圧操作することにより前記ペン先を没入状態にする出没機構を備え、
前記出没機構が、
前記軸筒内面に形成され、円周方向に沿って交互に配置された前後方向に延びる複数のカム歯及びカム溝と、
前記軸筒内部に回転可能に配置され且つ前記カム歯または前記カム溝に交互に係合可能な複数の突条を有する、前記筆記体の後端を支持する回転部材と、
前記突条の後端に当接する、山部と谷部とが円周方向に沿って交互に配置された山谷部を有する前記ノック体と、
前記軸筒内に収容され且つ前記筆記体を後方に付勢する弾発体と、を備え、
前記山谷部の各々の谷部の底部が凹曲面状に形成されることを特徴とするノック式筆記具。
【請求項2】
前記山谷部の各々の山部の頂部が凸曲面状に形成される請求項1に記載のノック式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック式筆記具に関する。詳細には、軸筒内に筆記体を前後方向に移動可能に収容し、前記筆記体のペン先を軸筒の前端孔から出没可能に構成したノック式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、軸筒内のカム溝と、カム溝に係合可能な突起を有するとともに先端に凹凸部を有する固定カムと、固定カムの凹凸部に噛み合う噛合部及びカム溝に係合されるカム突起を有する回転カムと、固定カムを押圧するためのノック体とで構成された出没機構を備えたノック式筆記具であって、カム溝が、ペン先突出過程でカム突起が摺接する第一カム斜面と、ペン先突出状態でカム突起が当接する、第一カム斜面の側方に連設された当接面と、ペン先没入過程でカム突起が摺接する第二カム斜面と、を備え、第一カム斜面とカム突起が当接する当接面との連設部に、第一カム斜面に摺動するカム突起の速度を減速させる抵抗部(具体的には円弧)を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、この種の出没機構において、ノック体のノック操作時、ノック音が4回発生する。詳細には、前記4つノック音は、ペン先没入状態からペン先を突出させるノック体の押圧過程で発生する第1ノック音と、第1ノック音の発生後にノック体の押圧を解除してペン先突出完了時に発生する第2ノック音と、ペン先突出状態からペン先を没入させるノック体の押圧過程で発生する第3ノック音と、第3ノック音の発生後にノック体の押圧を解除してペン先没入完了時に発生する第4ノック音と、からなる。
【0005】
前記特許文献1の構成は、ノック体の押圧過程で、カム突起(本発明の突条に相当)が凹凸部(本発明の山谷部に相当)の頂部と頂部の間の底部に衝突する際に発生するノック音(第1ノック音、第3ノック音)については、低減させることが困難であった。
【0006】
また、前記特許文献1の構成は、ノック体の押圧解除後のうち、ペン先突出完了時に発生するノック音(第2ノック音)についてのみ、低減しようとするものであり、ペン先没入完了時に発生するノック音(即ち、ペン先没入完了時にカム突起がカム溝の側壁に衝突する際に発生する第4ノック音)については、低減させることが困難であった。
【0007】
本願発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、本願発明は、ノック体の押圧過程で発生するノック音(第1ノック音、及び第3ノック音)を低減させることができるノック式筆記具を提供しようとするものである。また、本願発明は、ノック体の押圧過程で発生するノック音(第1ノック音、及び第3ノック音)を低減させることができ、しかも、ペン先突出完了時に発生するノック音(第2ノック音)、及びペン先没入完了時に発生するノック音(第4ノック音)を低減させることができるノック式筆記具を提供しようとするものである。
【0008】
本願発明で、「前」とはペン先側を指し、「後」とはその反対側を指す。本発明で「ペン先没入状態」とは、ペン先が軸筒内に没入された状態を言う。本発明で「ペン先突出状態」とは、ペン先が軸筒前端孔より外部に突出した状態を言う。本発明で「ペン先突出過程」とは、ペン先没入状態からペン先突出状態に移行する過程を言う。本発明で「ペン先没入過程」とは、ペン先突出状態からペン先没入状態に移行する過程を言う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の第1の発明は、
軸筒2内に筆記体7を前後方向に移動可能に収容し、前記筆記体7のペン先71を前記軸筒2の前端孔2cから出没可能に構成したノック式筆記具であって、
前記軸筒2の側壁または前記軸筒2の後端にノック体5が設けられ、ペン先没入状態から前記ノック体5を前方に押圧操作することにより前記ペン先71を前記軸筒2の前端孔2cから突出状態にし、前記ペン先突出状態から前記ノック体5を前方に押圧操作することにより前記ペン先71を没入状態にする出没機構を備え、
前記出没機構が、
前記軸筒2内面に形成され、円周方向に沿って交互に配置された前後方向に延びる複数のカム歯21及びカム溝32と、
前記軸筒2内部に回転可能に配置され且つ前記カム歯21または前記カム溝32に交互に係合可能な複数の突条41を有する、前記筆記体7の後端を支持する回転部材4と、
前記突条41の後端に当接する、山部511と谷部512とが円周方向に沿って交互に配置された山谷部51を有する前記ノック体5と、
前記軸筒2内に収容され且つ前記筆記体7を後方に付勢する弾発体6と、を備え、
前記山谷部51の各々の谷部512の底部512aが凹曲面状に形成されることを要件とする。
【0010】
前記第1の発明のノック式筆記具1は、前記構成により、ノック体5の押圧過程で発生するノック音(第1ノック音、及び第3ノック音)を低減させることができる。
【0011】
本願の第2の発明は、前記第1の発明のノック式筆記具において、前記山谷部51の各々の山部511の頂部511aが凸曲面状に形成されることを要件とする。
【0012】
前記第2の発明のノック式筆記具1は、前記構成により、ノック体5の押圧過程で発生するノック音(第1ノック音、及び第3ノック音)を低減させることができ、しかも、ペン先突出完了時に発生するノック音(第2ノック音)、及びペン先没入完了時に発生するノック音(第4ノック音)を低減させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本願の第1の発明のノック式筆記具は、ノック体の押圧過程で発生するノック音を低減させることができる。
【0014】
本願の第2の発明のノック式筆記具は、ノック体の押圧過程で発生するノック音を低減させることができ、しかも、ペン先突出完了時に発生するノック音、及びペン先没入完了時に発生するノック音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態のペン先没入状態の縦断面図である。
【
図3】
図1の出没機構の構成部品を示す分解図である。
【
図5】ペン先突出過程を示すカム部の展開概念図である。
【
図6】ペン先没入過程を示すカム部の展開概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態のノック式筆記具1を
図1乃至
図6に示す。
【0017】
本実施の形態のノック式筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に前後方向に移動可能に収容される筆記体7と、該筆記体7のペン先71を軸筒2の前端孔2cより出没自在にさせる出没機構と、該出没機構の操作部としてのノック体5と、を備える。
【0018】
・筆記体
前記筆記体7は、ペン先71と、該ペン先71が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管と、該インキ収容管内に充填されるインキと、該インキの後端に充填され且つ該インキの消費に伴い前進する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。インキ収容管の後端開口部に、インキ収容管と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓が取り付けられる。
【0019】
前記ペン先71は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。前記ペン先71の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容される。前記スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にストレート状のロッド部を備えた構成であり、前記ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、前記スプリングの前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先71の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。
【0020】
・軸筒
前記軸筒2は、先細円筒状の前軸2aと、該前軸2aの後端部に連結される円筒状の後軸2bと、からなる。前軸2a及び後軸2bは、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体からなる。
【0021】
・カム部
図3に示すように、軸筒2(後軸2b)の内周面には、カム部3が一体に形成される。カム部3は、径方向内方に突出し、鋸歯状前端部を有する複数(例えば4個)のカム歯31と、該カム歯31間に形成され、前後方向に延びる複数(例えば4本)のカム溝32とを備える。前記カム歯31は、第1カム斜面31aと、第2カム斜面31bと、第1カム斜面31aと第2カム斜面31bとの間に形成される係止面31cとを備える。係止面31cは、軸方向に延びる面からなる。各々の第1カム斜面31aと係止面31cとの間のカム歯31には、軸方向に延びるカムガイド溝31dが形成される。カムガイド溝31dはカム溝32よりも浅い深さを有する。即ち、カムガイド溝31dの底面は、カム溝32の底面より径方向内方に位置している。尚、本実施の形態では、カム部3が軸筒2を構成する部材(例えば後軸2b)の内周面に一体に形成される構成であるが、これ以外に、本発明は、カム部3を有する別部材を軸筒2の内周面に取り付ける構成でもよい。軸筒2(後軸2b)の内周面のカム溝32の後端及びカムガイド溝31dの後端には、係止壁部33が一体に形成される。
【0022】
第1カム斜面31aの前端は、カム溝32の前端と接続される。第1カム斜面31aとカム溝32とは鋭角をなす。第1カム斜面31aの後端は、係止面31cの後端と接続される。第1カム斜面31aと係止面31cとは鋭角をなす。第2カム斜面31bの前端は、係止面31cの前端と接続される。第2カム斜面31bと係止面31cとは鋭角をなす。第2カム斜面31bの後端は、カム溝32の前端と接続される。第2カム斜面31bとカム溝32とは鈍角をなす。
【0023】
・回転部材
図1、
図2及び
図3に回転部材4を示す。回転部材4は、その外周面に前後方向に延びる複数本(例えば4本)の突条41が等間隔に一体に形成される。各々の突条41の後端にはカム斜面31aが形成される。前記突条41が、カム歯31及びカム溝32と係合される。前記回転部材4の内部には前後方向に貫通する内孔が形成される。前記回転部材4は合成樹脂(例えばポリアセタール樹脂)の成形体により得られる。
【0024】
・ノック体
図1、
図2及び
図4に示すように、前記ノック体5は、後端が閉鎖され且つ前端が開口された有底の円筒体からなり、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体により得られる。ノック体5の前端には、V状状の傾斜面を備える山谷部51が周状に一体に形成される。ノック体5の外周面には、複数のガイド突起52が一体に形成される。ガイド突起52が、カム溝32及びカムガイド溝31dと前後方向に移動可能に係合し、それによって、軸筒2内でのノック体5の回転が阻止される。本実施の形態では、山谷部51及びガイド突起52がノック体5の前端に一体に形成される構成であるが、これ以外にも、本発明は、ノック体5に取り付ける別部材に山谷部51及びガイド突起52が一体に形成される構成でもよい。
【0025】
・山谷部
山谷部51は、複数の山部511と複数の谷部512とからなり、山部511と谷部512が円周方向に沿って交互に形成される。各々の山部511は、頂部511aより後方の両側に連設される傾斜面を備える。各々の谷部512は、底部512aより前方の両側に連設される傾斜面を備える。各々の谷部512の底部512aは、凹曲面状に形成される。各々の谷部512の底部512aは、各々の谷部512の両傾斜面と円滑に連設される。即ち、各々の谷部512の底部512aと、各々の谷部512の両傾斜面とは、段差のない連続面により接続される。各々の山部511の頂部511aは、凸曲面状に形成される。各々の山部511の頂部511aは、各々の山部511の両傾斜面と円滑に連設される。即ち、各々の山部511の頂部511aと、各々の山部511の両傾斜面とは、段差のない連続面により接続される。
【0026】
各々の山部511の頂部511aの最頂点は、各々のカム溝32及びカムガイド溝31dの前後方向に延びる仮想領域と、軸筒2の軸心から見て重なる位置に、前後方向に移動可能に配置される。
【0027】
各々の谷部512の底部512aの最底点は、カム溝32とカムガイド溝31dの間のカム歯31の前後方向に延びる仮想領域(即ち、カムガイド溝31dを除く第1カム斜面31aを有するカム歯31の前後方向に延びる仮想領域、及び第2カム斜面31bを有するカム歯31の前後方向に延びる仮想領域)に、軸心から見て重なる位置に前後方向に移動可能に配置される。
【0028】
各々の谷部512の底部512aは、R曲面からなる凹曲面状に形成される。各々の谷部512の底部512aの曲率半径は、例えば、0.5mm~2mm(好ましくは0.8mm~1.5mm)の範囲内の値に設定される。前記底部512aの曲率半径が前記範囲の下限値より小さい場合、ノック音の低減効果が十分に得られないおそれがあり、前記底部512aの曲率半径が前記範囲の上限値より大きい場合、回転部材の円滑な回転作動が得られないおそれがある。
【0029】
各々の山部511の頂部511aは、R曲面からなる凸曲面状に形成される。各々の山部511の頂部511aの曲率半径は、例えば、0.5mm~2mm(好ましくは0.8mm~1.5mm)の範囲内の値に設定される。前記頂部511aの曲率半径が前記範囲の下限値より小さい場合、ノック音の低減効果が十分に得られないおそれがあり、前記頂部511aの曲率半径が前記範囲の上限値より大きい場合、回転部材の円滑な回転作動が得られないおそれがある。
【0030】
各々の谷部512の底部512aの曲率半径と各々の山部511の頂部511aの曲率半径は等しい値に設定される。
【0031】
・出没機構
出没機構は、軸筒2(後軸2b)の後端より後方に突出するノック体5を前方に押圧操作(ノック操作)するものであり、回転カム機構を用いた出没機構である。出没機構は、軸筒2(後軸2b)の内周面に形成されたカム部3と、該カム部3に係合し且つ筆記体7の後端に当接する回転部材4と、該回転部材4に係合し且つ軸筒2後端より後方に突出するノック体5と、軸筒2内に収容され且つ筆記体7を後方に付勢する弾発体6と、からなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先71を突出させる操作及びペン先71を没入させる操作のいずれもがノック体5を前方に押圧操作するダブルノック式である。本実施の形態の出没機構は、前記軸筒2の後端より後方に突出するノック体を前方に押圧操作する後端ノック式を採用しているが、これ以外に、本発明は、軸筒2の側壁より突出するノック体(例えばクリップ)を前方にスライド操作するサイドスライド式を採用してもよい。
【0032】
カム部3は、径方向内方に突出する鋸歯状前端部を有する複数(例えば4個)のカム歯31と、該カム歯31間に形成される、前後方向に延びる複数(例えば4本)のカム溝32とを備える。カム部3の後端(カム歯31の後端、及びカム溝32の後端)には、係止壁部33が形成される。回転部材4は、その外周面に長手方向に延びる複数本(例えば4本)の突条41を備える。回転部材4の突条41が、カム部3のカム歯31及びカム部3のカム溝32と係合される。ノック体5の前端には、回転部材4の突条41の後端のカム斜面31aと係合する山谷部51が周状に一体に形成される。
【0033】
・ペン先の出没
出没機構におけるペン先出没作動の概要を説明する。
ペン先没入状態からノック体5を、弾発体6による後方付勢に抗して前方に押圧操作(ノック操作)すると、ノック体5が回転部材4を前方に押圧し、回転部材4の突条41がカム溝32に沿って前方に移動する。それに伴って、回転部材4が筆記体7の後端を前方に押圧し、ペン先71が前端孔2cより外部に突出される。このとき、回転部材4の突条41とカム溝32との係合が解除されると同時に、ノック体5の山谷部51と回転部材4の突条41後端のカム斜面31aとの当接によって回転部材4がカム部3に対して一定角度だけ回転する。それにより、前記回転部材4の突条41の後端部がカム部3のカム歯31(係止面31c)に係止され、ペン先突出状態が維持される。
【0034】
ペン先突出状態からノック体5を、弾発体6による後方付勢に抗して前方に押圧操作(ノック操作)すると、ノック体5が回転部材4を前方に押圧し、回転部材4の突条41と係止面31cとの係合が解除されると同時に、ノック体5の山谷部51と回転部材4の突条41後端との当接によって回転部材4がカム部3に対して一定角度だけ回転する。それによって、突条41後端とカム部3のカム歯31(係止面31c)との係止状態が解除され、突条41がカム溝32内に挿入され、弾発体6による後方付勢により、前記突条41がカム溝32に沿って後方に移動する。回転部材4が後方に移動することに伴って、筆記体7が後方に移動し、ノック体5のガイド突起52とカム部3の係止壁部33とが係止される。それにより、ノック体5、回転部材4及び筆記体7の後方移動が阻止され、ペン先突出状態が維持される。
【0035】
・山谷部の作用
谷部512の凹曲面状の底部512aの作用、及び山部511の凸曲面状の頂部511aの作用について、以下に図面に従って説明する。
【0036】
・ペン先突出過程(
図5)
図5にペン先没入状態からペン先突出状態に移行する過程を示す。
図5は、カム部3、山谷部51、及び突条41の関係を示す展開概念図である。
図5(1)から
図5(6)までカッコ内番号に従って順に移行する。
【0037】
・
図5(1)の状態
図5(1)は、ペン先没入状態からノック体5の押圧操作を開始した状態を示す。
図5(1)において、回転部材4の突条41はカム溝32に係合されている。また、回転部材4の突条41のカム斜面41aの後端は、ノック体5の山部511の頂部511aの最頂点から周方向に僅かに離れた山谷部51の面に当接されている。
【0038】
・
図5(2)の状態
図5(1)の状態から、ノック体5の押圧操作を進めると、
図5(2)の状態になる。
図5(2)において、
図5(1)と同様、回転部材4の突条41はカム溝32に係合されている。また、
図5(1)と同様、回転部材4の突条41のカム斜面41aの後端は、ノック体5の山部511の頂部511aの最頂点から周方向に僅かに離れた山谷部51の面に当接されている。
【0039】
・
図5(3)の状態
図5(2)の状態から、ノック体5の押圧操作を進めると、
図5(3)の状態になる。
図5(3)において、突条41の後端とカム歯31の前端(第1カム斜面31aの前端とカム溝32の前端との接続部)とが一致している。即ち、突条41の後端とカム溝32との係合が解除される直前の状態である。また、
図5(2)と同様、回転部材4の突条41のカム斜面41aの後端は、ノック体5の山部511の頂部511aから周方向に僅かに離れた面に当接されている。
【0040】
・
図5(4)の状態
図5(3)の状態から、ノック体5の押圧操作を進めると、
図5(4)の状態になる。
図5(4)は、突条41とカム溝32との係合状態が解除された直後の状態を示す。
図5(4)において、突条41の後端とカム溝32との係合状態が解除された直後、突条41の後端が、山谷部51の傾斜面に沿って移動し、谷部512の凹曲面状の底部512aに摺接される。それにより、回転部材4の回転速度が弱められ、突条41の後端と谷部512底部512aとの衝突する際のノック音(第1ノック音)の発生が抑えられる。この状態において、突条41の後端とカム部3の第1カム斜面31aとは、まだ接触されておらず、非接触状態にある。
【0041】
・
図5(5)の状態
図5(4)の状態から、ノック体5の押圧を解除すると、
図5(5)の状態になる。
図5(5)は、突条41の後端が第1カム斜面31aに当接され且つ突条41の後端が山部511の頂部511aに当接された状態を示す。
図5(5)の状態から、ノック体5の押圧解除を進めると、突条41及び山谷部51が後方に移動し、突条41の後端が、山谷部51の傾斜面に沿って移動し、山部511の凸曲面状の頂部511aを乗り越えるよう、山部511の凸曲面状の頂部511aと摺接されると同時に、第1カム斜面31aと摺接される。
【0042】
・
図5(6)の状態
図5(5)の状態から、ノック体5の押圧解除を進めると、
図5(6)の状態(ぺン先突出状態)になる。
図5(6)は、回転部材4の突条41とカム部3の係止面31cとが当接された直後の状態(ペン先突出状態)を示す。
図5(5)の状態から、ノック体5の押圧操作の解除により、突条41及び山谷部51が後方に移動し、突条41の後端と第1カム斜面31aとが摺接されると同時に、突条41の後端が山谷部51の傾斜面に沿って移動し、その後、突条41とカム部3の係止面31cとが当接されるとともに、突条41の後端が山部511の凸曲状の頂部511aの最頂点から回転方向に離れた傾斜面に当接された状態[
図5(6)の状態]となる。
図5(5)に示すように、突条41とカム部3の係止面31cとが当接する直前に、突条41の後端と山部511の凸曲面状の頂部511aとの摺接によって、回転部材4の回転速度が弱められる。そのため、突条41とカム部3の係止面31cとが衝突する際の発生するノック音(第2ノック音)が低減される。
【0043】
・ペン先没入過程(
図6)
図6にペン先突出状態からペン先没入状態に移行する過程を示す。
図6は、カム部3、山谷部51、及び突条41の関係を示す展開概念図である。
図6(1)から
図6(6)までカッコ内番号に従って順に移行する。
【0044】
・
図6(1)の状態
図6(1)は、ペン先突出状態からノック体5の押圧操作を開始した状態を示す。
図6(1)において、回転部材4の突条41は係止面31cに係合されている。また、回転部材4の突条41のカム斜面41aの後端は、ノック体5の山部511の頂部511aの最頂点から周方向に僅かに離れた面に当接されている。
【0045】
・
図6(2)の状態
図6(1)の状態から、ノック体5の押圧操作を進めると、
図6(2)の状態になる。
図6(2)において、突条41の後端とカム歯31の前端(係止面31cと第2カム斜面31bの前端との接続部)とが一致している。即ち、突条41と係止面31cとの係合が解除される直前の状態である。また、
図6(2)において、
図6(1)と同様、突条41のカム斜面41aの後端は、ノック体5の山部511の頂部511aの最頂点から周方向に僅かに離れた面に当接されている。
【0046】
・
図6(3)の状態
図6(2)の状態から、ノック体5の押圧操作を進めると、
図6(3)の状態になる。
図6(3)は、突条41と係止面31cとの係合状態が解除された直後の状態を示す。
図6(3)において、突条41と係止面31cとの係合状態が解除された直後、突条41の後端が、山谷部51の傾斜面に沿って移動し、谷部512の凹曲面状の底部512aに摺接される。それにより、回転部材4の回転速度が弱められ、突条41の後端と谷部512の底部512aとの衝突する際のノック音(第3ノック音)の発生が低減される。この状態において、突条41の後端とカム部3の第2カム斜面31bとは、まだ接触されておらず、非接触状態にある。
【0047】
・
図6(4)の状態
図6(3)の状態から、ノック体5の押圧を解除すると、
図6(4)の状態になる。
図6(4)の状態において、突条41の後端が第2カム斜面31bと摺接されるとともに、突条41の後端が山部511の凸曲面状の411a頂部と摺接される。
【0048】
・
図6(5)の状態
図6(4)の状態から、ノック体5の押圧解除を進めると、
図6(5)の状態になる。
図6(5)は、回転部材4の突条41とカム部3のカム溝32の内側面とが当接された直後の状態を示す。
図6(4)の状態から、ノック体5の押圧操作の解除が進むことにより、突条41及び山谷部51が後方に移動し、突条41の後端が第2カム斜面31bに沿って後退し、その後、突条41とカム溝32の内側面とが当接されるとともに、突条41の後端が山部511の凸曲状の頂部511aの最頂点から回転方向に離れた面に当接された状態[
図6(5)の状態]となる。
図6(4)から
図6(5)の過程で、突条41とカム溝32の内側面とが当接する直前に、突条41の後端が山部511の凸曲面状の頂部511aを乗り越えるように該頂部511aと摺接するによって、回転部材4の回転速度が弱められる。そのため、突条41とカム溝32の内側面とが衝突する際の発生するノック音(第4ノック音)が低減される。
【0049】
・
図6(6)の状態
図6(5)の状態から、ノック体5の押圧解除を進めると、
図6(6)の状態になる。
図6(6)は、突条41とカム溝32の内側面とが当接された状態で、突条41がカム溝32に対して後方に移動された状態を示す。また、
図6(6)の状態において、
図6(5)と同様、突条41の後端が山部511の凸曲状の頂部511aの最頂点から回転方向に離れた面に当接された状態となる。さらに、ノック体5の押圧解除が進むと、ペン先没入状態となる。
【0050】
本実施の形態のノック式筆記具1は、軸筒2内に筆記体7を前後方向に移動可能に収容し、前記筆記体7のペン先71を前記軸筒2の前端孔2cから出没可能に構成したノック式筆記具であって、前記軸筒2の側壁または前記軸筒2の後端にノック体5が設けられ、ペン先没入状態から前記ノック体5を前方に押圧操作することにより前記ペン先71を前記軸筒2の前端孔2cから突出状態にし、前記ペン先突出状態から前記ノック体5を前方に押圧操作することにより前記ペン先71を没入状態にする出没機構を備え、前記出没機構が、前記軸筒2内面に形成され、円周方向に沿って交互に配置された前後方向に延びる複数のカム歯31及びカム溝32と、前記軸筒2内部に回転可能に配置され且つ前記カム歯31または前記カム溝32に交互に係合可能な複数の突条41を有する、前記筆記体7の後端を支持する回転部材4と、前記突条41の後端に当接する、山部511と谷部512とが円周方向に沿って交互に配置された山谷部51を有する前記ノック体5と、前記軸筒2内に収容され且つ前記筆記体7を後方に付勢する弾発体6と、を備え、前記山谷部51の各々の谷部512の底部512aが凹曲面状に形成される。それにより、ノック体5の押圧過程で発生するノック音(第1ノック音、及び第3ノック音)を低減させることができる。
【0051】
本実施の形態のノック式筆記具1は、軸筒2内に筆記体7を前後方向に移動可能に収容し、前記筆記体7のペン先71を前記軸筒2の前端孔2cから出没可能に構成したノック式筆記具であって、前記軸筒2の側壁または前記軸筒2の後端にノック体5が設けられ、ペン先没入状態から前記ノック体5を前方に押圧操作することにより前記ペン先71を前記軸筒2の前端孔2cから突出状態にし、前記ペン先突出状態から前記ノック体5を前方に押圧操作することにより前記ペン先71を没入状態にする出没機構を備え、前記出没機構が、前記軸筒2内面に形成され、円周方向に沿って交互に配置された前後方向に延びる複数のカム歯31及びカム溝32と、前記軸筒2内部に回転可能に配置され且つ前記カム歯31または前記カム溝32に交互に係合可能な複数の突条41を有する、前記筆記体7の後端を支持する回転部材4と、前記突条41の後端に当接する、山部511と谷部512とが円周方向に沿って交互に配置された山谷部51を有する前記ノック体5と、前記軸筒2内に収容され且つ前記筆記体7を後方に付勢する弾発体6と、を備え、前記山谷部51の各々の谷部512の底部512aが凹曲面状に形成され、且つ、前記山谷部51の各々の山部511の頂部511aが凸曲面状に形成されることを要件とする。それにより、ノック体5の押圧過程で発生するノック音(第1ノック音、及び第3ノック音)を低減させることができ、しかも、ペン先突出完了時に発生するノック音(第2ノック音)、及びペン先没入完了時に発生するノック音(第4ノック音)を低減させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ノック式筆記具
2 軸筒
2a 前軸
2b 後軸
2c 前端孔
3 カム部
31 カム歯
31a 第1カム斜面
31b 第2カム斜面
31c 係止面
31d カムガイド溝
32 カム溝
33 係止壁部
4 回転部材
41 突条
41a カム斜面
5 ノック体
51 山谷部
511 山部
511a 頂部
512 谷部
512a 底部
52 ガイド突起
6 弾発体
7 筆記体
71 ペン先