(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150079
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】蒸気タービン
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20241016BHJP
F01D 11/02 20060101ALI20241016BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F01D9/02 101
F01D11/02
F16J15/447
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063311
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福島 久剛
(72)【発明者】
【氏名】門倉 永
【テーマコード(参考)】
3G202
3J042
【Fターム(参考)】
3G202GA07
3G202GB05
3G202KK04
3G202KK10
3G202KK17
3J042AA03
3J042CA10
3J042CA15
3J042DA20
(57)【要約】
【課題】チップリークが蒸気の主流に再び合流する際の損失を抑制する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンは、ロータの外周に設けられる第1動翼と、ロータの軸方向下流側で第1動翼と隣り合う静翼と、を備える。静翼は、静翼翼形部と、静翼翼形部のチップ側に位置するチップ側壁面と、静翼翼形部のハブ側に位置するハブ側壁面とを有する。チップ側壁面は、軸方向下流側に向かうにつれてロータの中心軸に近づくように傾斜している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの外周に設けられる第1動翼と、
前記ロータの軸方向下流側で前記第1動翼と隣り合う静翼と、
を備え、
前記静翼は、静翼翼形部と、前記静翼翼形部のチップ側に位置するチップ側壁面と、前記静翼翼形部のハブ側に位置するハブ側壁面とを有し、
前記チップ側壁面は、前記軸方向下流側に向かうにつれて前記ロータの中心軸に近づくように傾斜している、
蒸気タービン。
【請求項2】
前記第1動翼は、前記第1動翼の第1動翼翼形部に対して前記ロータの径方向外側に設けられた外側シュラウドを有し、
前記外側シュラウドと前記外側シュラウドに対して前記径方向外側に位置する静止部材との間に前記ロータの軸方向に間隔を空けて複数列設けられ、前記ロータの周方向に延在する円弧状のシールフィン、
を備え、
前記複数列のシールフィンの内、最も前記軸方向下流側に位置する前記シールフィンの先端の前記ロータの径方向の位置は、前記静翼の前縁端における前記チップ側壁面の前記径方向の位置と同じか、該位置よりも前記径方向の内側に位置している、
請求項1に記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記最も軸方向下流側に位置する前記シールフィンは、前記静止部材から前記外側シュラウドに向けて突出する、
請求項2に記載の蒸気タービン。
【請求項4】
前記最も軸方向下流側に位置する前記シールフィンは、前記外側シュラウドから前記静止部材に向けて突出する、
請求項2に記載の蒸気タービン。
【請求項5】
前記ロータの外周であって、前記静翼の前記軸方向下流側に設けられる第2動翼、を備え、
前記第2動翼の後縁端における前記第2動翼の第2動翼翼形部の翼高さは、前記静翼の後縁端における前記静翼翼形部の翼高さと同じか該翼高さよりも高い、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラント等に用いられる蒸気タービンは、ケーシングに対して回転自在なタービンロータ(以下、単にロータとする)に支持された動翼と、ケーシングに支持された静翼とを有し、ロータの軸線方向の上流から下流へと流れる蒸気のエネルギーをロータの回転エネルギーに変換するように構成されている。
【0003】
このような蒸気タービンでは、動翼の外側シュラウドとこの外側シュラウドと径方向で向かい合う静止部材との間からの漏洩蒸気流(チップリーク)を抑制するためにシールフィンが設けられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らが鋭意検討した結果、動翼の外側シュラウドを通過してチップリークが主流に再合流する際に、混合損失が生じるとともに、静翼外周側の二次流れと干渉して付加的な損失も生じることが判明した。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、チップリークが蒸気の主流に再び合流する際の損失を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンは、
ロータの外周に設けられる第1動翼と、
前記ロータの軸方向下流側で前記第1動翼と隣り合う静翼と、
を備え、
前記静翼は、静翼翼形部と、前記静翼翼形部のチップ側に位置するチップ側壁面と、前記静翼翼形部のハブ側に位置するハブ側壁面とを有し、
前記チップ側壁面は、前記軸方向下流側に向かうにつれて前記ロータの中心軸に近づくように傾斜している。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、チップリークが蒸気の主流に再び合流する際の損失を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】幾つかの実施形態に係る蒸気タービンについて説明するための図である。
【
図2】一実施形態の動翼及び静翼の翼形部の径方向外側の端部近傍を模式的に示す図である。
【
図3】他の実施形態の動翼及び静翼の翼形部の径方向外側の端部近傍を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
図1は、幾つかの実施形態に係る蒸気タービンについて説明するための図である。
図2は、一実施形態の動翼及び静翼の翼形部の径方向外側の端部近傍を模式的に示す図である。
図3は、他の実施形態の動翼及び静翼の翼形部の径方向外側の端部近傍を模式的に示す図である。
図1に示すように、蒸気タービン1は、軸線Oを中心に回転するロータ本体11と、ロータ本体11に接続されるロータ3と、作動流体としての蒸気Sを蒸気供給源(不図示)から蒸気タービン1に供給する蒸気供給管12と、蒸気タービン1の下流側に接続されて蒸気を排出する蒸気排出管13とを備えている。
【0012】
図1において、蒸気供給管12が位置する側を上流側と呼び、蒸気排出管13が位置する側を下流側と呼び、これに準じて以降の説明をする。
【0013】
図1に示すように、蒸気タービン1は、軸線O方向(軸方向)に沿って延びるロータ3と、ロータ3を外周側から覆うように設けられた概略筒状の部材であるケーシング2と、ロータ本体11を軸線O回りに回転可能に支持する軸受部4とを備えている。
以下の説明では、軸線O方向を単に軸方向とも称し、軸線Oを中心とする径方向を単に径方向とも称し、軸線Oを中心とする周方向を単に周方向とも称する。
【0014】
幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1は、ケーシング2の内部に、静翼翼列20と、当該静翼翼列20の下流側で当該静翼翼列20と隣り合う動翼翼列30とで構成されるタービン段落60を複数備えている。静翼翼列20及び動翼翼列30は、軸方向に沿って交互に配置されている。各静翼翼列20は、ロータ3の周囲に配置された複数の静翼21で構成され、これら複数の静翼21はケーシング2側に取り付けられている。各動翼翼列30は、ロータ本体11の周囲に配置された複数の動翼31で構成され、これら複数の動翼31はロータ本体11に取り付けられている。すなわちロータ3は、ロータ本体11と動翼翼列30とを備えている。
【0015】
静翼21は、静翼翼形部22と、静翼翼形部22のチップ側、すなわち径方向外側に位置するチップ側壁面23と、静翼翼形部22のハブ側、すなわち径方向内側に位置するハブ側壁面24とを有する。
動翼31は、動翼翼形部32と、動翼翼形部32のチップ側、すなわち径方向外側に位置する外側シュラウド33とを有する。
【0016】
説明の便宜上、
図2及び
図3において図示した静翼21と軸方向上流側で隣り合う動翼31、すなわち
図2及び
図3において図示した静翼21が属するタービン段落の1つ上流側のタービン段落の動翼31を第1動翼31Aとする。以下の説明では、第1動翼31Aの動翼翼形部32のことを第1動翼翼形部32Aとも称する。
説明の便宜上、
図2及び
図3において図示した静翼21と軸方向下流側で隣り合う動翼31、すなわち
図2及び
図3において図示した静翼21が属するタービン段落の動翼31(軸方向下流側で
図2及び
図3において図示した静翼21と隣り合う動翼31)を第2動翼31Bとする。以下の説明では、第2動翼31Bの動翼翼形部32のことを第2動翼翼形部32Bとも称する。
【0017】
ケーシング2の内部において、静翼翼列20と動翼翼列30が配列された領域は、作動流体である蒸気Sが流通する主流路29を形成する。
さらに、ケーシング2の内周面28と外側シュラウド33との間には空間が形成されており、この空間をキャビティ50と称する。
【0018】
図2及び
図3に示すように、幾つかの実施形態に係るキャビティ50には、シールフィン(シール構造)40が設けられている。幾つかの実施形態のシールフィン40は、ケーシング2の内周面28から径方向内側に向かって延在する円環状の部材、又は、外側シュラウド33の外表面33aに形成され、外側シュラウド33の外表面33aからケーシング2の内周面28に向かって径方向外側に延在する円環状の部材である。より詳細には、シールフィン40は基端部40aから先端部40bに向かうに従って次第に軸線O方向の厚みが減少する形状を有するように形成されている。
図2及び
図3に示す幾つかの実施形態では、軸線O方向に沿ってキャビティ50の内部に3列のシールフィン40が配列されており、上流側から順に第1シールフィン41、第2シールフィン42及び第3シールフィン43と呼ぶ。
すなわちシールフィン40は、外側シュラウド33と外側シュラウド33に対して径方向外側に位置する静止部材であるケーシング2との間に軸方向に間隔を空けて複数列設けられている。
なお、軸線O方向に沿ってキャビティ50の内部に配列されるシールフィン40の配列数は、3列に限らず、1列以上であればよい。
【0019】
図2に示す実施形態では、第1シールフィン41及び第3シールフィン43はケーシング2の内周面28から径方向内側に向かって延在し、第2シールフィン42は外側シュラウド33の外表面33aからケーシング2の内周面28に向かって径方向外側に延在している。
図3に示す実施形態では、第1シールフィン41及び第3シールフィン43は外側シュラウド33の外表面33aからケーシング2の内周面28に向かって径方向外側に延在し、第2シールフィン42はケーシング2の内周面28から径方向内側に向かって延在している。
【0020】
図2及び
図3に示すように、幾つかの実施形態では、シールフィン40の径方向内側又は内側の先端部40bは、該先端部40bと対向する外側シュラウド33の外表面33aとの間、又は、ケーシング2の内周面28との間で微小な間隙mを形成する。径方向における間隙mの寸法は、ケーシング2や動翼翼形部32の熱膨張量や、動翼翼形部32の遠心伸び量等を考慮して、シールフィン40の先端部40bが、該先端部40bと対向する相手側の部材と接触することがない範囲で決定される。
【0021】
このように構成される幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1では、蒸気供給源からの蒸気Sが蒸気供給管12を介して蒸気タービン1に供給される。
蒸気タービン1に供給された蒸気Sは、主流路29に到達する。主流路29を到達した蒸気Sは、主流路29を流通するにともなって膨張と流れの転向を繰り返しながら、下流側に向かって流通する。動翼翼形部32は翼型断面を有するため、動翼翼形部32に蒸気Sが衝突したり、周方向に沿って隣接する動翼翼形部32同士の間に形成される翼間流路の内部でも蒸気が膨張する際の反力を受けたりすることで、ロータ3が回転する。これにより、蒸気Sの有するエネルギーは、蒸気タービン1の回転動力として取り出される。
【0022】
上述の過程において主流路29を流通する蒸気Sは、前述のキャビティ50にも流入する。すなわち、主流路29に流入した蒸気Sは静翼翼列20を通過した後、主蒸気流SMと漏洩蒸気流SL(チップリーク)とに分かれる。主蒸気流SMは、漏洩せずに動翼翼列30に導入される。
漏洩蒸気流SLは、外側シュラウド33とケーシング2との間を介してキャビティ50に流入する。
【0023】
キャビティ50に流入した漏洩蒸気流SLは、第1シールフィン41、第2シールフィン42及び第3シールフィン43が形成する間隙mを順次通過する。第3シールフィン43が形成する間隙mを通過した漏洩蒸気流SLは、動翼翼列30を通過した主蒸気流SMと共に次段落の静翼翼列20に流入する。
【0024】
発明者らが鋭意検討した結果、漏洩蒸気流SLが動翼翼列30を通過した主蒸気流SMに再び合流する際に、混合損失が生じるとともに、漏洩蒸気流SLが次段落の静翼翼列20の静翼外周側の二次流れと干渉して付加的な損失も生じることが判明した。
そこで、幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1では、上述した混合損失を抑制するために、
図2及び
図3で示すようにチップ側壁面23を軸方向下流側に向かうにつれてロータ3の軸線Oに近づくように傾斜させている。
これにより、第1動翼31Aの外側シュラウド33を通過した漏洩蒸気流SLを滑らかに主蒸気流SMへ再合流させることができ、漏洩蒸気流SLが主蒸気流SMに再合流する際の混合損失を低減させるとともに、静翼21外周側の二次流れとの干渉も抑制できる。
【0025】
幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1では、複数列のシールフィン40の内、最も下流側に位置するシールフィン40である第3シールフィン43の先端部40bの径方向の位置43Pは、静翼21の前縁端21lにおけるチップ側壁面23の径方向の位置23Pと同じか、該位置よりも径方向の内側に位置している。
これにより、最も下流側に位置するシールフィン40である第3シールフィン43の先端部40bから流出する漏洩蒸気流SLの流れが比較的スムーズに静翼21に流れるようになる。よって、漏洩蒸気流SLが主蒸気流SMに再び合流する際の漏洩蒸気流SLと静翼外周側の二次流れとの干渉による混合損失を一層抑制できる。
なお、複数列のシールフィン40の内、最も下流側に位置するシールフィン40である第3シールフィン43の先端部40bの位置は、静止部材と回転部材とが径方向で対向している位置であり、下流側の動翼翼列30に向かう漏洩蒸気流SLの径方向及び軸方向の流出開始位置を規定する位置である。
【0026】
幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1では、
図2に示すように最も下流側に位置するシールフィン40である第3シールフィン43は、静止部材としてのケーシング2の内周面28から外側シュラウド33に向かって突出するとよい。
これにより、第3シールフィン43の先端部40bから流出する漏洩蒸気流SLの径方向の流出位置が比較的径方向内側に位置することとなる。よって、軸方向下流側に向かうにつれてロータ3の軸線Oに近づくように傾斜しているチップ側壁面23の傾斜角度を比較的小さくすることができるので、静翼21に沿って流れる蒸気Sの流れにチップ側壁面23の傾斜角度が与える影響を抑制できる。
【0027】
幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1では、
図3に示すように最も下流側に位置するシールフィン40である第3シールフィン43は、外側シュラウド33から静止部材としてのケーシング2の内周面28に向けて突出してもよい。
これにより、第3シールフィン43が外側シュラウド33から静止部材(ケーシング2の内周面28)に向けて突出している場合であっても、漏洩蒸気流SLが主蒸気流SMに再び合流する際の漏洩蒸気流SLと静翼外周側の二次流れとの干渉による混合損失を抑制できる。
【0028】
幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1では、第2動翼31Bの後縁端32tにおける第2動翼翼形部32Bの翼高さHB2は、静翼21の後縁端22tにおける静翼翼形部22の翼高さHVと同じか該翼高さHVよりも高いとよい。
または、第2動翼31Bの後縁端32tにおける第2動翼31Bの第2動翼翼形部32Bの径方向外側の端部32aの径方向位置PB2は、静翼21の後縁端22tにおける静翼翼形部22の径方向外側の端部22aの径方向位置PVと同じか該径方向位置PVよりも径方向外側であるとよい。
これにより、静翼21及び第2動翼31Bの翼高さHV、HB2が蒸気タービン1内で下流側に向かうにつれて体積が膨張する蒸気の流れ(主蒸気流SM)に適したものとなる。
【0029】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0030】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービン1は、ロータ3(ロータ本体11)の外周に設けられる第1動翼31Aと、ロータ3の軸方向下流側で第1動翼31Aと隣り合う静翼21と、を備える。静翼21は、静翼翼形部22と、静翼翼形部22のチップ側に位置するチップ側壁面23と、静翼翼形部22のハブ側に位置するハブ側壁面24とを有する。チップ側壁面23は、軸方向下流側に向かうにつれてロータ3の中心軸(軸線O)に近づくように傾斜している。
【0031】
上記(1)の構成によれば、チップ側壁面23を軸方向下流側に向かうにつれてロータ3の中心軸(軸線O)に近づくように傾斜させることで、第1動翼31Aの外側シュラウド33を通過したチップリーク(漏洩蒸気流SL)を滑らかに蒸気の主流(主蒸気流SM)へ再合流させることができ、チップリーク(漏洩蒸気流SL)が蒸気の主流(主蒸気流SM)に再合流する際の混合損失を低減させるとともに、静翼21外周側の二次流れとの干渉も抑制できる。
【0032】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、第1動翼31Aは、第1動翼31Aの第1動翼翼形部32Aに対してロータ3の径方向外側に設けられた外側シュラウド33を有している。少なくとも一実施形態に係る蒸気タービン1は、外側シュラウド33と外側シュラウド33に対して径方向外側に位置する静止部材(ケーシング2)との間にロータ3の軸方向に間隔を空けて複数列設けられ、ロータ3の周方向に延在する円弧状のシールフィン40、を備えている。複数列のシールフィン40の内、最も軸方向下流側に位置するシールフィン40(第3シールフィン43)の先端(先端部40b)のロータ3の径方向の位置は、静翼21の前縁端21lにおけるチップ側壁面23の径方向の位置と同じか、該位置よりも径方向の内側に位置しているとよい。
【0033】
上記(2)の構成によれば、最も軸方向下流側に位置するシールフィン40(第3シールフィン43)の先端(先端部40b)から流出するチップリーク(漏洩蒸気流SL)の流れが比較的スムーズに静翼21に流れるようになる。これにより、チップリーク(漏洩蒸気流SL)が蒸気の主流(主蒸気流SM)に再び合流する際のチップリーク(漏洩蒸気流SL)と静翼21外周側の二次流れとの干渉による混合損失を一層抑制できる。
【0034】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、最も軸方向下流側に位置するシールフィン40(第3シールフィン43)は、静止部材(ケーシング2の内周面28)から外側シュラウド33に向けて突出するとよい。
【0035】
上記(3)の構成によれば、最も軸方向下流側に位置するシールフィン40(第3シールフィン43)の先端(先端部40b)から流出するチップリーク(漏洩蒸気流SL)の径方向の流出位置が比較的径方向内側に位置することとなる。これにより、軸方向下流側に向かうにつれてロータ3の中心軸(軸線O)に近づくように傾斜しているチップ側壁面23の傾斜角度を比較的小さくすることができる。これにより、静翼21に沿って流れる蒸気の流れ(主蒸気流SM)にチップ側壁面23の傾斜角度が与える影響を抑制できる。
【0036】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、最も軸方向下流側に位置するシールフィン40(第3シールフィン43)は、外側シュラウド33から静止部材(ケーシング2の内周面28)に向けて突出してもよい。
【0037】
上記(4)の構成によれば、最も軸方向下流側に位置するシールフィン40(第3シールフィン43)が外側シュラウド33から静止部材(ケーシング2の内周面28)に向けて突出している場合であっても、チップリーク(漏洩蒸気流SL)が蒸気の主流(主蒸気流SM)に再び合流する際のチップリーク(漏洩蒸気流SL)と静翼21外周側の二次流れとの干渉による混合損失を抑制できる。
【0038】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、ロータ3(ロータ本体11)の外周であって、静翼21の軸方向下流側に設けられる第2動翼31B、を備えていてもよい。第2動翼31Bの後縁端32tにおける第2動翼31Bの第2動翼翼形部32Bの翼高さHB2は、静翼21の後縁端22tにおける静翼翼形部22の翼高さHVと同じか該翼高さHVよりも高いとよい。
【0039】
上記(5)の構成によれば、静翼21及び第2動翼31Bの翼高さHV、HB2が蒸気タービン1内で下流側に向かうにつれて体積が膨張する蒸気の流れ(主蒸気流SM)に適したものとなる。
【符号の説明】
【0040】
1 蒸気タービン
2 ケーシング
3 ロータ
11 ロータ本体
20 静翼翼列
21 静翼
21l 前縁端
22 静翼翼形部
22a 端部
22t 後縁端
23 チップ側壁面
23P 位置
24 ハブ側壁面
28 内周面
30 動翼翼列
31 動翼
31A 第1動翼
31B 第2動翼
32 動翼翼形部
32A 第1動翼翼形部
32B 第2動翼翼形部
32a 端部
32t 後縁端
33 外側シュラウド
40 シールフィン(シール構造)
40a 基端部
40b 先端部
41 第1シールフィン
42 第2シールフィン
43 第3シールフィン
43P 位置
50 キャビティ
60 タービン段落