(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150080
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】凍結微粉砕浸漬酒の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20241016BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20241016BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241016BHJP
【FI】
C12G3/04
A23L19/00 A
A23L5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063312
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】柴 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】生木 大志
【テーマコード(参考)】
4B016
4B035
4B115
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE05
4B016LG01
4B016LG02
4B016LG05
4B016LK03
4B016LP01
4B016LP02
4B016LP11
4B035LC01
4B035LE03
4B035LG05
4B035LG32
4B035LP22
4B035LP25
4B035LP43
4B035LP56
4B115LH01
4B115LH03
4B115LH11
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、凍結微粉砕浸漬酒の製造方法のアルコール浸漬工程において比較的低いアルコール含有量を採用する際に得られる浸漬液に生じる雑味を低減することである。
【解決手段】得られた浸漬液のアルコール含有量を高める。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料又は食品の製造方法であって、
(a)原料果実及び/又は野菜の一種以上を凍結して凍結物を得る工程;
(b)前記凍結物を微粉砕して凍結微粉砕物を得る工程;
(c)当該微粉砕物をそのまま、又は解凍してペースト状にしてから、20v/v%以下のアルコールを含有する水性液に浸漬して浸漬液を得る工程;及び
(d)当該浸漬液にアルコールを加えて、当該浸漬液のアルコール含有量を増加させて、アルコール調整液を得る工程
を含む、飲料又は食品の製造方法。
【請求項2】
工程(d)において、当該浸漬液のアルコール含有量が1v/v%以上増加される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記原料果実及び/又は野菜が、柑橘類果実から選択される一種以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(c)において、前記浸漬が40℃以上で実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
工程(c)において、前記浸漬中の液のpHが4.0未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
飲料又は食品における雑味を軽減する方法であって、
(a)原料果実及び/又は野菜の一種以上を凍結して凍結物を得る工程;
(b)前記凍結物を微粉砕して凍結微粉砕物を得る工程;
(c)当該微粉砕物をそのまま、又は解凍してペースト状にしてから、20v/v%以下のアルコールを含有する水性液に浸漬して浸漬液を得る工程;及び
(d)当該浸漬液にアルコールを加えて、当該浸漬液のアルコール含有量を増加させて、アルコール調整液を得る工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結微粉砕浸漬酒の製造方法、即ち、原料果実及び/又は野菜を凍結工程、微粉砕工程、アルコール浸漬工程に付すことを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果実又は野菜などの原料から凍結微粉砕浸漬酒を製造する方法が知られている。例えば、特許文献1と2には、当該原料を、凍結工程、微粉砕工程、アルコール浸漬工程に付して浸漬液を得る方法が開示されている。そのようにして得られた浸漬液は、原料の香味をそのまま有し、従来以上に良い香味を有しており、飲料や食品の製造に適していることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2006/009252
【特許文献2】WO2007/083812
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、凍結微粉砕浸漬酒の製造方法をさらに検討し、アルコール浸漬工程において比較的低いアルコール含有量を採用すると、得られた浸漬液の味の厚みが向上するというメリットが得られることを見出した。しかしながら、そのようなアルコール含有量は、浸漬液に雑味も付与してしまった。
【0005】
ここで、当該浸漬液の味の厚みとは、当該浸漬液の摂取時に感じられる飲みごたえ、及び喉を通るかたまり感を意味する。また、当該浸漬液の雑味とは、その摂取時に感じられる後味の複雑味を意味し、消費者の好みや飲用する場面によっては、当該雑味が受け入れられない場合がある。
【0006】
本発明の課題は、凍結微粉砕浸漬酒の製造方法のアルコール浸漬工程において比較的低いアルコール含有量を採用する際に浸漬液に生じる雑味を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、当該浸漬工程の後に、当該浸漬液にアルコールを添加してアルコール含有量を増加させると、上記課題を解決することができることを見出した。
【0008】
従って、本発明は、以下のものに関するが、これらに限定されない。
[1]
飲料又は食品の製造方法であって、
(a)原料果実及び/又は野菜の一種以上を凍結して凍結物を得る工程;
(b)前記凍結物を微粉砕して凍結微粉砕物を得る工程;
(c)当該微粉砕物をそのまま、又は解凍してペースト状にしてから、20v/v%以下のアルコールを含有する水性液に浸漬して浸漬液を得る工程;及び
(d)当該浸漬液にアルコールを加えて、当該浸漬液のアルコール含有量を増加させて、アルコール調整液を得る工程
を含む、飲料又は食品の製造方法。
[2]
工程(d)において、当該浸漬液のアルコール含有量が1v/v%以上増加される、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記原料果実及び/又は野菜が、柑橘類果実から選択される一種以上である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
工程(c)において、前記浸漬が40℃以上で実施される、[1]~[3]のいずれか一項に記載の製造方法。
[5]
工程(c)において、前記浸漬中の液のpHが4.0未満である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の製造方法。
[6]
飲料又は食品における雑味を軽減する方法であって、
(a)原料果実及び/又は野菜の一種以上を凍結して凍結物を得る工程;
(b)前記凍結物を微粉砕して凍結微粉砕物を得る工程;
(c)当該微粉砕物をそのまま、又は解凍してペースト状にしてから、20v/v%以下のアルコールを含有する水性液に浸漬して浸漬液を得る工程;及び
(d)当該浸漬液にアルコールを加えて、当該浸漬液のアルコール含有量を増加させて、アルコール調整液を得る工程
を含む、前記方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、凍結微粉砕浸漬酒の製造方法を改善することができる。具体的には、当該製造方法のアルコール浸漬工程において比較的低いアルコール含有量を採用する際に得られる浸漬液に生じる雑味を低減することができる。この結果、味の厚みに優れ、しかも雑味の少ない浸漬液を得ることができ、味に優れた飲料や食品の製造に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製造方法では、原料となる果実及び/又は野菜の一種以上から、凍結工程、微粉砕工程、アルコール浸漬工程、及びアルコール含有量調整工程、そして必要に応じて混合工程を経て、飲料又は食品を製造する。その製造方法について、以下に説明する。
【0011】
なお、本明細書に記載の「アルコール」との用語は、特に断らない限りエタノールを意味する。
【0012】
(凍結工程)
本発明の製造方法においては、まず、原料果実及び/又は野菜の一種以上を凍結して凍結物を得る工程を実施する。
【0013】
凍結工程においては、原料果実及び/又は野菜を凍結して固化する。凍結のために用いられる凍結機、凍結方法は、ともに限定されず、空気凍結法、エアブラスト凍結法、接触式凍結法、ブライン凍結法、液体窒素を用いる凍結法のいずれ用いてもよい。好ましい凍結方法は、液体窒素を用いる凍結法である。液体窒素の温度は-196℃である。凍結する温度は、用いる原料果実、野菜の脆下温度以下であることが好ましい。本明細書における「脆化温度」とは、対象物が低温で急激に脆化(脆く、破壊されやすくなる)する温度を意味する。脆化温度は、高分子などで実施される従来の方法を適用して決定することができる。
【0014】
凍結工程に供する果実及び野菜の大きさは、凍結機に投入可能であれば限定されない。しかしながら、なるべく短時間で凍結するためには小さくカットしたほうが適切な場合があり、なるべく傷めず、また空気に曝さずに凍結するためにはあまり切り分けないほうが適切な場合がある。果実及び野菜は、果皮および種子を含んだ全体を凍結工程に付すことができ、あるいは、非可食部や好ましくない成分を含む部分を除去してから凍結工程に付すこともできる。このような部分の除去は、凍結工程の後に行うこともできる。凍結工程を経て、果実又は野菜の凍結物を得ることができる。
【0015】
原料果実は、限定されないが、例えば、柑橘類(バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジなどオレンジ類、グレープフルーツなどのグレープフルーツ類、レモン、ライム、シークヮーサー、ダイダイ、ゆず、カボス、すだち、シトロン、ブッシュカン、などの香酸柑橘類、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、スウィーティー、デコポンなどの雑柑類、イヨカン、タンカンなどのブンタン類、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、紀州ミカンなどのミカン類、キンカンなどのキンカン類など)、リンゴ、ブドウ、モモ、熱帯果実(パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、ライチ、パパイヤ、パッションフルーツ等)、その他果実(ウメ、ナシ、アンズ、スモモ、ベリー、キウイフルーツ等)、イチゴ、メロンなどが挙げられる。これらの果実は、1種類を単独使用しても、2種類以上を併用してもよい。当該果実は、好ましくは柑橘類果実であり、より好ましくは、オレンジ類、グレープフルーツ類、及び香酸柑橘類からなる群から選択され、より好ましくはオレンジ、グレープフルーツ、レモン、及びライムからなる群から選択され、より好ましくは、レモンである。
【0016】
原料野菜には、特別な場合を除き、葉茎菜類、果菜類(ただし、市場では果実として扱われているものを除く)、花菜類、根菜類のほか、豆類、食用の植物種子が含まれ、シソ、ショウガ、トウガラシ、ハーブ(例えば、ミント、レモングラス、コリアンダー、イタリアンパセリ、ローズマリー)、ワサビ等も含まれる。好ましい野菜の例は、トマト、セロリ、ニンジン、パセリ、ホウレン草、クレソン、ピーマン、レタス、キャベツ、ビート、ショウガ類(ショウガ、葉ショウガ)、シソ(青ジソ、赤ジソ)である。
【0017】
以下において、本発明の製造方法を果実を例にして説明することがあるが、そのような説明は、特別な場合を除き、野菜にも当てはまる。
【0018】
また、本明細書において、原料に関して「果実」、「野菜」というときは、特別な場合を除き、汁液および固形分を含む生の果実又は野菜全体、あるいはその一部を指し、これらは、「果汁」や「野菜汁」と区別される。「果汁」や「野菜汁」との用語を用いる場合には、特別な場合を除き、圧搾等の工程によりあらかじめ得た果実または野菜の汁液を指し、これには、原料として果実及び/又は野菜の全体を用いた結果として最終製品等に含まれることとなる果実及び/又は野菜の汁液は包含されない。
【0019】
(微粉砕工程)
次に、凍結物を微粉砕して、凍結微粉砕物を得る。
【0020】
この工程に用いる粉砕機、微粉砕方法は、ともに限定されない。微粉砕は、凍結物が固化している状態を保つように低温で、好ましくは液体窒素を用いた凍結条件下で行うことが好ましい。液体窒素の温度は-196℃である。微粉砕の程度は特に限定されないが、得られる微粉砕物の平均粒径が好ましくは約1μm~約1000μm、より好ましくは約1μm~200約μm、より好ましくは約1μm~約100μmとなるまで行う。なお、本明細書における平均粒径は、メディアン径(ふるい上分布曲線の50%に対応する粒径。中位径、または50%粒子径ともいう。)を意味する。微粉砕工程を経て、果実及び/又は野菜の凍結微粉砕物を得ることができる。
【0021】
(アルコール浸漬工程)
次に、凍結微粉砕物を、そのまま、又は解凍してペースト状にしてから、20v/v%以下のアルコールを含有する水性液に浸漬して浸漬液を得る。
【0022】
20v/v%以下のアルコールを含有する水性液とは、溶媒としての水とアルコールとの混合液であり、それには、少量(たとえば20w/v%以下)であればさらに他の成分が含まれていてもよい。当該水性液のアルコール含有量は、好ましくは1~20v/v%、より好ましくは1~15v/v%、より更に好ましくは5~15v/v%である。このようなアルコール含有量を採用すると、得られる浸漬液の味の厚みが向上する。
【0023】
当該水性液には、蒸留酒、醸造酒、それらの希釈液、及びそれらの混合物が包含される。この工程においては、好ましくは、当該水性液は蒸留酒又はその希釈液である。蒸留酒の例には、スピリッツ類(ラム、ウオッカ、ジン、テキーラ、ニュートラルスピリッツ等)、リキュール類、ウイスキー、ブランデー又は焼酎などが挙げられ、蒸留酒の例にはビールやワインなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は併用して用いることができる。
【0024】
浸漬の温度は、特に限定されが、例えば、0℃以上、20℃以上、又は40℃以上である。浸漬の温度が40℃以上となると、得られた浸漬液の味の厚みがさらに高まる。ここで、浸漬の温度とは、浸漬時の液温を意味する。当該温度の上限値は重要でないが、例えば、溶媒の沸点以下、又は60℃以下である。したがって、好ましい浸漬の温度は、0℃以上かつ溶媒の沸点以下、20℃以上かつ溶媒の沸点以下、又は40℃以上かつ溶媒の沸点以下である。
【0025】
浸漬中の液のpHは特に限定されないが、例えば、4.0未満、又は2.8以下である。このようなpHを採用すると、得られた浸漬液の味の厚みがさらに高まる。pHの下限値は特に限定されないが、2.0程度である。したがって、好ましいpHの範囲は、2.0以上4.8未満、又は2.0~2.8である。
【0026】
また、浸漬期間も限定されないが、典型的には、約10時間~数カ月、又は約半日間~約3日間であり、数カ月であってもよい。
【0027】
浸漬工程における凍結微粉砕物と当該水性液との比は限定されないが、典型的には、当該水性液1Lに対して凍結微粉砕物を約1g~約500g、約5g~約300g、又は約10g~約200g用いる。
【0028】
浸漬工程を経て、浸漬液が得られる。浸漬液は、そのまま次の工程に用いてもよいし、ろ過などの固形物分離手段を通じて固形物を除いてから次の工程で用いてもよい。
【0029】
本明細書においては、飲料又は水性液中のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって必要に応じて炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を水蒸気蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。あるいは、ガスクロマトグラフィーやHPLCを用いてもよい。
【0030】
(アルコール含有量調整工程)
次に、浸漬液にアルコールを加えて、当該浸漬液のアルコール含有量を増加させて、アルコール調整液を得る。この工程において、浸漬酒の雑味が低減される。
【0031】
アルコール含有量は、好ましくは1v/v以上、より好ましくは5v/v%以上、より好ましくは10v/v%以上増加される。アルコール含有量の増加量の上限値は限定されないが、例えば、10v/v%、又は20v/v%である。したがって、アルコール含有量の好ましい範囲は、例えば、1~20v/v%、5~20v/v%、又は10~20v/v%である。
【0032】
アルコール含有量を増加するための「アルコールを加える」ことには、アルコール自体を加えることだけでなく、比較的高い含有量でアルコールを含有する液を加えることも含まれる。そのような液の例は、アルコール含有水性液であり、これは、アルコール含有量を除いて、20v/v%以下のアルコールを含有する水性液と同じである。したがって、当該アルコール含有水性液は、蒸留酒や醸造酒であってもよい。好ましくは、当該アルコール含有水性液は蒸留酒又はその希釈液であり、その例は、浸漬工程において上記したとおりである。
【0033】
この工程の温度は、熱をかけない限り特に限定されない。また、時間も限定されない。
【0034】
得られた当該アルコール調整液は、一定期間、例えば、1時間から10週間、1日から10週間、又は1週間から3週間保存されてもよい。当該アルコール調整液が加熱されない限り保存温度は限定されないが、典型的には、室温、25℃以下、10℃以下、又は5℃以下である。
【0035】
(混合工程)
前記のアルコール調整液は、そのまま飲料又は食品として利用してもよいが、必要に応じて、他の原料と混合して飲料又は食品を製造してもよい。
【0036】
本発明の方法において用いられる他の原料の例は、果汁である。本発明の方法により得られる飲料又は食品中の果汁の含有量は特に限定されないが、例えば、果汁率に換算して8.0w/w%未満である。果汁率の下限値は特に重要ではない。
【0037】
本発明では、飲料中の「果汁率」を、飲料100g中に配合される果汁配合量(g)を用いて下記換算式によって計算することとする。また濃縮倍率を算出する際はJAS規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖質、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
【0038】
果汁率(w/w%)=<果汁配合量(g)>×<濃縮倍率>/100mL/<飲料の比重>×100
本発明の飲料が果汁を含有する場合、当該果汁は、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、それを濃縮して得られる濃縮果汁などのいずれの形態であってもよい。また、透明果汁、混濁果汁を使用することもでき、果実の外皮を含む全果を破砕し種子など特に粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレ、或いは、乾燥果実の果肉を破砕もしくは抽出した果汁を用いることもできる。
【0039】
果汁の原料となる果実の種類は、特に限定されないが、例えば、凍結工程に関して上記した果実から得られる果汁を用いることができる。
【0040】
当該飲料は、野菜汁を含有してもよい。上記の果汁に関する記載は、適宜変更の上で野菜汁にも適用される。
【0041】
また、他の原料の他の例は炭酸ガスである。炭酸ガスは、当業者に通常知られる方法を用いて飲料に付与することができ、例えば、これらに限定されないが、二酸化炭素を加圧下で飲料に溶解させてもよいし、ツーヘンハーゲン社のカーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と飲料とを混合してもよいし、また、二酸化炭素が充満したタンク中に飲料を噴霧することにより二酸化炭素を飲料に吸収させてもよいし、飲料と炭酸水とを混合してもよい。これらの手段を適宜用いて炭酸ガス圧を調節する。
【0042】
本発明において飲料が炭酸ガスを含有する場合、その炭酸ガス圧は、特に限定されないが、好ましくは0.7~4.5kgf/cm2、より好ましくは0.8~2.8kgf/cm2である。本発明において、炭酸ガス圧は、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500Aを用いて測定することができる。例えば、試料温度を20℃にし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書においては、特に断りがない限り、炭酸ガス圧は、20℃における炭酸ガス圧を意味する。
【0043】
他の原料の他の例は、各種添加剤である。すなわち、本発明の製造方法により得られる飲料又は食品には、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の飲料又は食品と同様、各種添加剤を配合してもよい。各種添加剤としては、例えば、酸味料、香料、ビタミン類、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、増粘剤、品質安定剤等を挙げることができる。
【0044】
(飲料又は食品)
本発明の方法により得られる飲料の種類は特に限定されないが、それには、酒類、清涼飲料、果汁飲料、ドリンク剤などが含まれる。当該飲料は、好ましくは、ハイボール、チューハイ(酎ハイ)、カクテル、サワーなどである。「ハイボール」、「チューハイ」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、水と蒸留酒と炭酸とを含有する飲料を意味する。ハイボール、チューハイは、さらに果汁を含有してもよい。また、「サワー」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、スピリッツと、酸味のある果汁又は香料、例えば柑橘類果汁又は香料と、炭酸とを含有する飲料を意味する。「カクテル」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、ベースとなる酒に果汁等を混ぜて作られたアルコール飲料を意味する。
【0045】
本発明の方法により得られる食品の種類は特に限定されないが、それには加工食品が含まれる。当該食品は、例えば、ジャム、ゼリー、アイスクリーム、ヨーグルト、ガム、ケーキ、サラダなどである。
【0046】
(他の工程)
本発明の製造方法は、その効果が損なわれない限り、上記した工程に加えて他の工程を加えてもよい。
【0047】
例えば、アルコール調整液を、必要に応じて他の原料と混合した後に、容器に詰めることができる。容器の形態には、缶等の金属容器、ペットボトル、紙パック、瓶、パウチなどが含まれるが、これらに限定されない。さらに、容器詰め工程前、工程中、及び工程後のいずれか一つ以上において殺菌工程を実施することもできる。
【0048】
(関連する方法)
本発明の製造方法は、飲料又は食品における雑味を低減することができる。したがって、本発明の製造法は、ある側面では、飲料又は食品における雑味を軽減する方法である。
【0049】
(数値範囲)
明確化のために記載すると、本明細書における数値範囲は、その端点、即ち下限値及び上限値を含む。
【実施例0050】
以下、具体的な実験例を示しつつ、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実験例に限定されるものではない。
【0051】
(実験1) 浸漬アルコール含有量の効果
原料果実として生のレモン果実を用いた。当該レモン果実を、-196℃の液体窒素を用いて凍結した。次いで、得られた凍結物を凍結粉砕機(リンレックスミル:株式会社リキッドガス)に投入し、凍結したまま微粉砕して、粒径約30μmの白い粉末状の凍結微粉砕物を得た。粒度測定には、特許文献1の実施例に記載の方法を採用した。次いで、得られた凍結微粉砕物を、種々のアルコール含有量のアルコール水性液(浸漬液)に15時間、20℃で浸漬し、得られた液から珪藻土を用いてろ過して固形分を除き、浸漬液を得た。用いたアルコール水性液は、水とニュートラルスピリッツの混合液であった。
【0052】
次いで、各浸漬液について専門パネル4名が味の厚みと雑味について官能評価し、そのスコアの平均値を求めた。いずれの項目においてもより高いスコアがよりよい結果を示す。
【0053】
具体的には、厚みについては、スコア1が最も厚みが小さい状態を示し、スコア5が最も厚みが大きい状態を示す。雑味については、スコア1が最も雑味が高い状態を示し、スコア5が最も雑味が低い状態を示す。
【0054】
評価の個人差を少なくするために、各パネルは、各スコアに対応した標準品を用いて、事前に各スコアと味との関係の共通認識を確立した。
【0055】
これらの評価基準と評価方法は、他の実験でも用いた。
【0056】
各浸漬液の調製に用いたアルコール含有量及び官能評価結果は、以下の表に示したとおりである。
【0057】
【0058】
上記の表から明らかなように、アルコール含有量が一定以下となると味の厚みが高まる一方で、雑味の問題が顕著となった。
【0059】
(実験2) アルコール含有量調整の効果
実験1において、アルコール含有量10v/v%のアルコール水性液を用いて得られた浸漬液に、ニュートラルスピリッツと水を種々の量で添加してアルコール含有量を増加させて、複数のアルコール調整液を得た。得られた調整液は、約1週間の期間冷蔵庫で保存し、その後に、実験1と同様の官能評価を実施した。その結果を以下に示す。比較のため、実験1のデータの一部も以下に示す(アルコール含有量の増加「0」v/v%)。
【0060】
【0061】
浸漬液のアルコール含有量を高めると、雑味が低減した。
【0062】
(実験3) 雑味低減効果と浸漬時のアルコール含有量との関係
実験1で得られた種々のアルコール浸漬液(1v/v%と20v/v%)のアルコール含有量を、実験2と同様にして高めてアルコール調整液を得て、得られた調整液に対して実験1と同様の官能評価を実施した。全てにおいて、アルコール含有量を5v/v%増加させた。浸漬液のアルコール含有量と評価結果を以下に示す。
【0063】
【0064】
表1の結果と比較すると、アルコール浸漬時のアルコール含有量を変えても、アルコール含有量調整工程の効果が得られたことが明らかとなった。