(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150089
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】集合住宅
(51)【国際特許分類】
E04B 5/48 20060101AFI20241016BHJP
E04B 5/18 20060101ALI20241016BHJP
E04B 5/23 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
E04B5/48 B
E04B5/18
E04B5/23
E04B5/48 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063328
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】396015046
【氏名又は名称】株式会社エス・アイ・ルネス
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】前田 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】川口 貴之
(72)【発明者】
【氏名】八田 徹也
(57)【要約】
【課題】将来の間取り変更等に伴う配管及び配線の配置換えやメンテナンス性を考慮した集合住宅を提供すること。
【解決手段】実施形態の集合住宅は、床スラブSf上に逆梁(逆大梁5L,5T、逆小梁6L,6T等)が上向きに突設された、逆梁構造のコンクリート躯体Fをもつ床構造であって、互いに対向する逆梁間に複数の大引10が橋架支持され、それらの大引10上に床板12が敷設されることで、複数の逆梁により囲まれる床下空間Hdが1以上形成される床構造を有する。複数の逆梁の少なくとも一部には、将来の任意の間取り変更のときに床下空間Hdに配置される配線及び配管を通すための予備スリーブ孔101、102が形成されている。また床下空間Hdは、作業者が配線又は配管に対する作業を行うために必要な高さHを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ上に逆梁が上向きに突設された、逆梁構造の躯体をもつ床構造であって、互いに対向する逆梁間に複数の大引が橋架支持され、それらの大引上に床材が敷設されることで、複数の前記逆梁により囲まれる床下空間が1以上形成される床構造を有する集合住宅において、
各居住者の専有部分の夫々には、
当該居住者が用いる配線及び/又は配管が前記床下空間に配置されており、
前記複数の逆梁の少なくとも一部には、将来の任意の間取り変更のときに前記床下空間に配置される前記配線及び/又は前記配管を通すための予備スリーブ孔が形成されており、
前記床下空間は、作業者が前記配線及び/又は前記配管に対する作業を行うために必要な高さを有している、
集合住宅。
【請求項2】
前記予備スリーブ孔は、
前記予備スリーブ孔の貫通径は、梁せいの1/3以下とする第1基準、
前記予備スリーブ孔の上下方向の位置は、梁せい中心付近とし、当該予備スリーブ孔の下端から梁下端までの距離の1/3以内には他の予備スリーブ孔を設置しないとする第2基準、
柱面から前記予備スリーブ孔の孔芯までの距離は、前記梁せいの2倍以上とする第3基準、
前記予備スリーブ孔が複数となる場合、前記予備スリーブ孔どうしの間隔は、孔径の3倍以上とする第4基準、
により設置条件が規定されている、
請求項1に記載の集合住宅。
【請求項3】
前記予備スリーブ孔の前記スラブの上面からの高さは、
排水管が十分な勾配を取れるように、予めの配管源から最も離れた位置に、水回りの機器材を設置する場合を想定し、その想定位置から貫通位置まで、また、貫通位置から前記配管源までで十分な勾配がとれるようにする、
という基準により設定されている、
請求項1に記載の集合住宅。
【請求項4】
前記床下空間の高さは、430mm以上である、
請求項1に記載の集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国の国土交通省によりスケルトンインフィル工法が推奨されている。このスケルトンインフィル工法に、逆梁床下構造を組みわせることで、寿命を100年以上持たせる集合住宅(以下、「100年住宅」と呼ぶ)の実現が要望されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
100年住宅を実現させるためには、将来の間取り変更等に伴う配管や配線の配置換えや、配管や配線のメンテナンス性を考慮することが要求される。
しかしながら、特許文献1を含め従来の技術では、このような要望に十分に応えることができない状況である。
【0005】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、将来の間取り変更等に伴う配管や配線の配置換えや、配管や配線のメンテナンス性を考慮した集合住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の集合住宅は、
スラブ上に逆梁が上向きに突設した、逆梁構造の躯体をもつ床構造であって、互いに対向する逆梁間に複数の大引が橋架支持され、それらの大引上に床材が敷設されることで、複数の前記逆梁により囲まれる床下空間が1以上形成される床構造を有する集合住宅において、
各居住者の専有部分の夫々には、
当該居住者が用いる配線及び配管が前記床下空間に配置されており、
前記複数の逆梁の少なくとも一部には、将来の任意の間取り変更のときに前記床下空間に配置される前記配線及び/又は前記配管を貫通させるための予備スリーブ孔が形成されており、
前記床下空間は、作業者が前記配線及び/又は前記配管に対する作業を行うために必要な高さを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、将来の間取り変更等に伴う配管や配線の配置換えや、配管や配線のメンテナンス性を考慮した集合住宅を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】逆梁大引床構造を適用した集合住宅の一部破断平面図である。
【
図3】
図1の集合住宅における床下空間の様子を示す断面図である。
【
図4】
図3の床下空間に突設される逆梁に設ける予備スリーブ孔の設置基準を説明するための図である。
【
図5】
図4の予備スリーブ孔の設置基準のうち第1基準と第2基準を説明するための図である。
【
図6】
図4の予備スリーブ孔の設置基準のうち第3基準を説明するための図である。
【
図7】
図4の予備スリーブ孔の設置基準のうち第3基準を説明するための図である。
【
図8】
図4の予備スリーブ孔の設置基準のうち第4基準を説明するための図である。
【
図9】
図4乃至
図8に示した第1基準乃至第4基準を基に複数の予備スリーブ孔を組み合わせて設置した例を示す図である。
【
図10】床下空間に予備スリーブ孔を設置した例を示す斜視図である。
【
図11】実施形態の集合住宅における変更前の間取りの一例を示す平面図である。
【
図12】実施形態の集合住宅における変更前の床下構造の一例を示す平面図である。
【
図13】実施形態の集合住宅における変更後の間取りの一例を示す平面図である。
【
図14】実施形態の集合住宅における変更後の床下構造の一例を示す平面図である。
【
図15】実施形態の集合住宅における変更前後の床下配線及び配管の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
まず、
図1乃至
図3を参照して、逆梁大引床構造を適用した本発明の床下構造の一実施形態について説明する。
図1は、逆梁大引床構造を適用した集合住宅の一部破断平面図である。
図2は、
図1の2-2線に沿う断面図である。
図3は、
図1の集合住宅における床下空間の様子を示す断面図である。
【0010】
図1乃至
図3において、逆梁構造のコンクリート躯体Fは、集合住宅の骨格を構成するものであり、水平方向に延びて、建物を複数の階層に区画する水平躯体部分Fhと、鉛直方向に延びて上下の水平躯体部分Fhを相互に連結する鉛直躯体部分Fvとを備えている。
【0011】
水平躯体部分Fhにより仕切られる各階層には、複数戸の住宅空間Hが並設され、各住宅空間Hは、その四隅にそれぞれ立設されて上下の床スラブSfを結合する躯体柱1と、対向する躯体柱1間を一体に結合する、躯体外壁2及び躯体隔壁3(耐力壁3)により仕切られる。
【0012】
水平躯体部分Fhを構成する床スラブSfには、各住宅空間Hの床下空間Hdを区画する縦、横の逆大梁5L,5Tが床スラブSfから上向きに一体に突設されている。これらの縦、横の逆大梁5L,5T上に、躯体隔壁3及び躯体外壁2の下端が一体に結合されている。また、縦、横の逆大梁5L,5Tは、住宅空間Hの四隅に位置する躯体柱1に一体に結合される。並列する複数戸の住宅空間Hの一方の躯体外壁2(
図1、左側)の外側には、通路7が構築され、それらの他方の躯体外壁2(
図1、右側)の外側には、ベランダ8が構築されている。
【0013】
各住宅空間Hにおいて、床スラブSf上には、逆大梁5L,5Tよりも低い、縦、横の逆小梁6L,6Tが上向きに一体に突設されている。これらの縦、横の逆小梁6L,6Tは互いに交差して、それらの端部は、横、縦の逆大梁5T,5Lの中間部にそれぞれ一体に連結されている。
【0014】
各住宅空間Hは、平面長方形状に形成され、その長手方向と直交する方向、すなわち該住宅空間Hの幅方向において、縦の逆大梁5Lと縦の逆小梁6Lとの比較的短いスパン間に、複数本の大引10がそれぞれ橋架支持される。
大引10は、二重床を構成する部材の一つであり、例えば防錆性の亜鉛鉄板を断面Σ状に屈曲加工して形成したものをΣビームと呼ぶ。
縦の逆大梁5Lの側部には、逆小梁6L,6Tと略同じレベルの打増部すなわち床支持部14が段状に一体に成形(縦の逆大梁5Lの型枠による成形時に同時に一体成形)されている。
床支持部14と縦の逆小梁6Lの上面との間に、複数本の大引10の端部が、アジャスター式床下支持金具FSを介してフローティング支持される。
【0015】
各住宅空間Hの縦、横の逆大梁5L,5Tと、縦、横の逆小梁6L,6T間には、床構造体Frが支持されている。
【0016】
図2に示す床構造体Frは、
図3に示すように、複数本の大引10と、それらの上にそれらと直交して支持される複数本の根太11と、それらの根太11上に敷設される木質系のフローリング板等よりなる床板12とより一体的に構成されている。該床板12は、下地材上に仕上材を一体に積層して構成したものである。
根太11は、木製のものを根太木といい、鋼製のものを鋼製根太という。鋼製根太の場合は、大引10との間にゴム部材等の緩衝材(防音及び防振材)を介在させることが好ましい。
この床構造体Frにより、住宅空間Hは、床下空間Hd(物入れ空間Hd)と、床上空間Hu(居住空間Hu)とに画成される。
床下空間Hdは、作業者が配線又は配管に対する作業を行うために必要な高さHを有する。床下空間Hdの高さHは、作業者が床下空間Hdに潜り込んで作業を行うための高さとして、例えば430mm以上とることが好ましい。
【0017】
ここで、
図4を参照して、床下空間に突設される逆梁に設ける予備スリーブ孔の設置基準について説明する。
図4は、
図3の床下空間に突設される逆梁に設ける予備スリーブ孔の設置基準を説明するための図である。
【0018】
実施形態の集合住宅は、
図1乃至
図3に示したように、床スラブSf上に逆梁(逆大梁5L,5T、逆小梁6L,6T等)が上向きに突設された、逆梁構造のコンクリート躯体Fをもつ床構造とされている。
この床構造の場合、互いに対向する逆梁(逆大梁5Lどうし,逆大梁5Tどうし、逆大梁5Lと逆小梁6L,逆大梁5Tと逆小梁6T等)との間に複数の大引10が橋架支持されており、それらの大引10上に床板12が敷設されることで、複数の逆梁により囲まれる床下空間Hdが1以上形成される。
床下空間Hdは、各居住者の専有部分の夫々に設けられており、当該居住者が用いる配線及び配管が配置されている。逆大梁5L,5T、逆小梁6L,6T等の複数の逆梁の少なくとも一部には、将来の任意の間取り変更のときに床下空間Hdに配置される配線及び/又は配管を通す(貫通させる)ための予備スリーブ孔101、102(
図10参照)が形成される。
【0019】
予備スリーブ孔101、102は、逆梁のどこに設けても良いというものではなく、
図4に示す第1基準から第4基準を含む設置基準を満たすように設置するものである。
【0020】
以下、
図4乃至
図10を参照して第1基準から第4基準を含む設置基準を説明する。
図4は、
図3の床下空間に突設される逆梁に設ける予備スリーブ孔の設置基準を説明するための図である。
図5は、
図4の予備スリーブ孔の設置基準のうち第1基準と第2基準を説明するための図である。
図6は、
図4の予備スリーブ孔の設置基準のうち第3基準を説明するための図である。
図7は、
図4の予備スリーブ孔の設置基準のうち第3基準を説明するための図である。
図8は、
図4の予備スリーブ孔の設置基準のうち第4基準を説明するための図である。
図9は、
図4乃至
図8に示した第1基準乃至第4基準を基に複数の予備スリーブ孔を組み合わせて設置した例を示す図である。
図10は、床下空間に予備スリーブ孔を設置した例を示す斜視図である。
【0021】
第1基準は、
図4及び
図5に示すように、予備スリーブ孔101、102の貫通径(孔径)Kは、梁せいDの1/3以下とする。なお、梁せいとは、梁の下面から上面までの高さのことである。
第2基準は、
図4及び
図5に示すように、予備スリーブ孔101、102の上下方向の位置は、梁せいD中心付近とし、当該予備スリーブ孔101、102の下端から梁下端までの距離の1/3以内には他の予備スリーブ孔を設置しないとする。つまり予備スリーブ孔101の下には、梁面をD/3を残すものとする。
なお、上下のヘリ空として、逆小梁6T(逆梁)の面から予備スリーブ孔101、102まで175mm~250mm以上とすることが好ましい。但し、この上下のヘリ空の規定は、梁せいや孔径により変動する。
【0022】
第3基準は、
図4、
図6及び
図7に示すように、柱面から予備スリーブ孔101、102の孔芯までの距離は、梁せいの2倍(2D)以上とする。
図7に示すように、梁端部から梁の長さ、つまり梁の全長を示すスパンSoの両側1/4の位置への設置は行わないことが好ましい。
上記の2つの条件をまとめると、予備スリーブ孔101、102は、梁端部を避けて梁の中央部付近(
図7の「望ましい範囲」参照)に設置することが望ましい。梁端部とは、例えば柱面から逆小梁6T(逆梁)の全長であるスパンSoの1/10以内でかつ梁せいの2倍以内の範囲を言う。
【0023】
第4基準は、
図4及び
図8に示すように、予備スリーブ孔が複数(予備スリーブ孔101、102)となる場合、予備スリーブ孔101、102どうしの間隔は、孔径φ1、φ2を足して2で割った距離の3倍以上とする。
なお、複数の予備スリーブ孔101、102どうしの孔径が異なる場合は平均の孔径とする。つまり予備スリーブ孔101、102どうしの間隔は、孔径φ1、φ2を足して2で割った距離の3倍以上とする((φ1+φ2)/2×3)。なお、
図6に、予備スリーブ孔101の孔径φ=200mm、予備スリーブ孔102の孔径φ=100mmのケースの孔間隔を具体的な数値(200+100/2×3=450)で示している。
【0024】
なお、この他、予備スリーブ孔101、102の床スラブSfの面からの高さ設定は、下記のようにするものとする。
排水管131が十分な勾配を取れるように、予めメータボックス(MB)又はパイプスペース(PS)等の配管源から最も離れた位置に、水回りの機材(キッチン/ユニットバス(UB)等)を設置する場合を想定し、その想定位置から貫通位置まで、また、貫通位置からMBやPSまでで十分な勾配がとれるようにする。
例えば小梁せいが450mmの場合、上記第4基準より、床スラブSfの天端から孔端部までの距離は、175mm以上、175mm×50(但し勾配1/50とする)=8,750mm、この数値と予備スリーブ孔101、102からMBやPSまでの距離を比較して大きければ良しとする。
この例において、仕上げ天端がスラブ天端+600mmとすると、600mm-175mm×50(但し勾配1/50とする)=21,250mmとなる。この数値と想定水廻り位置から予備スリーブ孔101、102までの距離を比較して大きければ良しとする。
【0025】
これにより、間取り変更後も水漏れや排水不良等の不具合が発生しない床下の配管構造を構成でき、結果として、本実施形態の床下構造が、一般的な広さの集合住宅に適用できるようになり、一般の新築の集合住宅に、より多く普及させることができる。
【0026】
ここで、上述した第1基準乃至第4基準に適合する複数の予備スリーブ孔を組み合わせて設置した例について説明する。
上述した第1基準乃至第4基準に適合する複数の予備スリーブ孔を組み合わせて設置した場合、
図9に示すように、予備スリーブ孔103の直径91は、梁せいの1/3(1/3D)とする。
柱面(壁面)から予備スリーブ孔103の中心までの距離92は、梁せいの2倍(2D)とする。
予備スリーブ孔103と予備スリーブ孔101との距離93は、孔径の3倍(3K)とする。
予備スリーブ孔103の下端から梁下端までの距離94は、1/3Dとし、梁せいが例えば600mmであれば、175mm~250mmとする。
予備スリーブ孔101の上端から梁上端までの距離94は、1/3Dとし、梁せいが例えば600mmであれば、175mm~250mmとする。
梁交差部や逆小梁6Lから予備スリーブ孔102までの距離95は、孔縁から梁面まで100mm~200mm以上とすることが好ましい。
【0027】
図10に、床下空間Hdの逆小梁6Tに、例えば予備スリーブ孔101、102を設置した具体例を斜視図で示す。この例の場合、上記第1基準乃至第4基準を適合するように予備スリーブ孔101、102を設置すると、床スラブSfに設置した排水管131よりも少し高い位置に予備スリーブ孔101、102が設置されることが分かる。
【0028】
以下、
図11乃至
図15を参照して間取り変更の具体例について説明する。
図11は、2LDKの間取りを1LDKに変更する前(間取り変更前)の間取り図である。
図12は、
図11の間取り変更前の床下空間の逆梁と配管の配置図である。
図13は、間取りを1LDKに変更した後(間取り変更後)の間取り図である。
図14は、
図13の間取り変更後の床下空間の逆梁と配管の配置図である。
【0029】
図11に示すように、間取り変更前は、洋室1,洋室2、リビング、ダイニング、キッチンを備える2LDKの間取りであった。
図11に示した間取り変更前における床下空間は、
図12に示すように、逆小梁6T、6Lが十字方向に配置されており、逆小梁6Tには、予備スリーブ孔101、102が設けられているだけで使用されてはいない。また、排水管131は、キッチンスペース121とトイレから逆小梁6T、6Lに元から設けられているスリーブ孔(図示せず)を通じて通路側の配管源(例えばメーターボックス(MB等)にそれぞれ配管されている。ガス管132についてもMBからキッチンスペース121に配置されている。
【0030】
図11の2LDKの間取りを1LDKに変更した場合、
図13に示すように、洋室2をなくし、リビングのスペースを広くすると共に、リビングのスペースの一部にキッチンを移動し、洋室1、リビング、ダイニング、キッチンといった1LDKの間取りとなった。
図13の間取り変更後における床下空間は、
図14に示すように、逆小梁6Tに事前に設けられている予備スリーブ孔101、102を通じて排水管131とガス管132(この他、
図15(B)に示す給水管133、給湯管134等も含まれる)が、配置変更されたリビングの左上隅のキッチンスペース122まで延長して配管されている。
【0031】
図15に、上記間取り変更における配管及び配線の配置変更前と配置変更後の例を斜視図で示す。
図15(A)に示すように、間取り変更前には、床スラブSfに配管及び配線がなかったが、間取り変更後には、
図15(B)に示すように、洋室1側の排水管131が、逆小梁6Tに予め配設されていた予備スリーブ孔101を通じてLDK側の床スラブSfに通されている。また、洋室1側のガス管132、給水管133、給湯管134等が、逆小梁6Tに予め配設されていた予備スリーブ孔102を通じてLDK側の床スラブSfに通させている。
なお、ここで示した予備スリーブ孔101、102と配管の例は、一例であり、他にも予備スリーブ孔を3つ、4つ設けておくことで、さまざまな配管を行うことが可能である。
【0032】
このようにこの間取り変更の例によれば、床下空間において、配管が逆梁を超えるような間取り変更が生じた際に、逆小梁6Tに事前に設けておいた予備スリーブ孔101、102を利用して排水管131とガス管132等を、逆小梁6Tに通すことができるので、大規模な床下工事を実施することなく、作業者が床下空間に潜り込んで配管や配線の配置変更作業をするだけで間取り変更に柔軟に対応することができる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものとみなす。
【0034】
以上をまとめると、本発明が適用される集合住宅は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される集合住宅は、
スラブ(例えば
図1及び
図2の床スラブSf)上に逆梁(例えば
図1及び
図2の逆大梁5L,5T及び逆小梁6L,6T)が上向きに突設された、逆梁構造の躯体をもつ床構造であって、互いに対向する逆梁間に複数の大引(例えば
図1及び
図2の大引10)が橋架支持され、それらの大引(例えば
図1及び
図2の大引10)上に床材(例えば
図1及び
図2の床板12)が敷設されることで、複数の前記逆梁により囲まれる床下空間(例えば
図4の床下空間Hd)が1以上形成される床構造を有する集合住宅において、
各居住者の専有部分の夫々には、
当該居住者が用いる配線及び/又は配管が前記床下空間(例えば
図4の床下空間Hd)に配置されており、
前記複数の逆梁の少なくとも一部には、将来の任意の間取り変更のときに前記床下空間に配置される前記配線及び/又は前記配管を通すための予備スリーブ孔(例えば
図4の予備スリーブ孔101、102)上が形成されており、
前記床下空間(例えば
図4の床下空間Hd)は、作業者が前記配線及び/又は前記配管に対する作業を行うために必要な高さ(例えば
図4の高さH)を有している。
このように構成される床構造によれば、床下に形成される専有部分の床下空間Hdに配線及び配管を配置し、予備スリーブ孔を逆梁に形成させ、床下空間の高さを、作業者による作業が可能となる高さを保つことで、将来の間取り変更等に伴う配管や配線の配置換えや、配管や配線のメンテナンス性を考慮した集合住宅が実現可能になり、ひいては100年住宅の実現が可能になる。
【0035】
上述した集合住宅において、
前記予備スリーブ孔(例えば
図4の予備スリーブ孔101、102)は、
前記予備スリーブ孔の貫通径(貫通径K)は、梁せいの1/3以下とする第1基準、
前記予備スリーブ孔の上下方向の位置は、梁せい中心付近とし、当該予備スリーブ孔の下端から梁下端までの距離の1/3以内には他の予備スリーブ孔を設置しないとする第2基準、
柱面から前記予備スリーブ孔の孔芯(孔の中心)までの距離は、梁せいの2倍以上(スパン(So)の1/10以内かつ梁せいの2倍以上が望ましい)とする第3基準、
前記予備スリーブ孔が複数となる場合、前記予備スリーブ孔どうしの間隔は、孔径(例えば
図4の貫通径K)の3倍以上(孔径が異なる場合は平均の孔径)とする第4基準、
により設置条件が規定されている。
これにより、鉄筋コンクリート構造配筋標準の図の11.梁貫通孔補強の基準に適合するので、100年住宅としての認定が得られるようになる。
【0036】
上述した集合住宅において、
前記予備スリーブ孔の前記スラブの上面からの高さは、
排水管が十分な勾配を取れるように、予め配管源(例えばメータボックスやパイプスペース等)から最も離れた位置に、水回りの機材(例えばキッチンやユニットバス等)を設置する場合を想定し、その想定位置から貫通位置まで、また、貫通位置から前記配管源までで十分な勾配がとれるようにする、
という基準により設定されている。
これにより、間取り変更後も水漏れや排水不良等の不具合が発生しない床下の配管構造を構成でき、結果として、実施形態の床下構造が、一般的な広さの集合住宅に適用できるようになり、一般の新築の集合住宅に、より多く普及させることができる。
【0037】
上述した集合住宅において、
前記床下空間の高さは、430mm以上である。
これにより、作業者は、間取り変更等に伴う配管及び配線の配置換えやメンテナンス作業の際に、床下空間に入り、無理なく作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
5L,5T・・・逆大梁、6L,6T・・・逆小梁、10・・・大引、11・・・根太、12・・・床板、101、102、103・・・予備スリーブ孔、121・・・間取り変更前のキッチンスペース(旧キッチンスペース)、122・・・間取り変更後のキッチンスペース、131・・・排水管、132・・・ガス管、133・・・給水管、134・・・給湯管、Hd・・・床下空間、H・・・床下空間の高さ、Sf・・・床スラブ