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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150091
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】保管設備
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20241016BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20241016BHJP
   H02J 50/50 20160101ALI20241016BHJP
【FI】
B65G1/00 521
H02J50/20
H02J50/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063334
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 直幹
(72)【発明者】
【氏名】緑川 浩史
(72)【発明者】
【氏名】井関 裕次
(72)【発明者】
【氏名】金崎 俊造
(72)【発明者】
【氏名】松岡 信仁
(72)【発明者】
【氏名】小谷 宏己
(72)【発明者】
【氏名】高木 賢二
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022AA06
3F022AA10
3F022BB02
3F022BB04
3F022FF01
(57)【要約】
【課題】複数の保管対象物のそれぞれに対して電力を供給可能な構成を容易に構築する。
【解決手段】保管設備1は、複数の柱部材2と、鉛直方向Zに沿って互いに離間して柱部材2に固定され、パレット8を柱部材2の間に架け渡すように支持する複数の架台部材3と、架台部材3に載置されたパレット8に電力を供給する給電部材4と、を備える。給電部材4は、柱部材2に設けられて、電源7から受けた電力をマイクロ波として柱部材2の内部に放射するマグネトロン40と、架台部材3ごとに、マイクロ波が伝播する柱部材2の内部に設けられた同軸プローブ41と、同軸プローブ41が受けたマイクロ波を所定の形態の電力に変換するRF/DC変換器42と、架台部材3に設けられて、RF/DC変換器42が出力する電力をパレット8に渡す送電電極パッド43と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットに載置された保管対象物に電力を供給可能な保管設備であって、
鉛直方向に沿って起立すると共に、前記鉛直方向と交差する方向に沿って互いに離間して配置された少なくとも2本の柱部材と、
前記鉛直方向に沿って互いに離間して前記柱部材に固定され、前記パレットを前記柱部材の間に架け渡すように支持する少なくとも2個の架台部材と、
前記架台部材に載置された前記パレットに前記電力を供給する給電部材と、を備え、
前記給電部材は、
前記柱部材の下端部に設けられて、外部電源から受けた前記電力をマイクロ波として前記柱部材の内部に放射する電力送信部と、
前記架台部材ごとに、前記マイクロ波が伝播する前記柱部材の内部又は前記架台部材の内部に設けられた電力受信部と、
前記電力受信部が受けた前記マイクロ波を所定の形態の前記電力に変換する第1電力変換部と、
前記架台部材に設けられて、前記第1電力変換部が出力する前記電力を前記パレットに渡す第1電力中継部と、を有する保管設備。
【請求項2】
前記電力受信部は、前記柱部材の内部に固定されている、請求項1に記載の保管設備。
【請求項3】
前記柱部材の側面には、前記架台部材の内部と連通し、前記柱部材を伝わる前記マイクロ波を前記架台部材の内部に導く開口が設けられ、
前記電力受信部は、前記架台部材の内部に設けられて、前記柱部材の前記開口を介して伝わる前記マイクロ波を受信する、請求項1に記載の保管設備。
【請求項4】
前記第1電力変換部は、前記架台部材に設けられている、請求項1に記載の保管設備。
【請求項5】
前記第1電力変換部は、前記マイクロ波を直流電力に変換する、請求項1に記載の保管設備。
【請求項6】
前記第1電力中継部は、前記直流電力を前記パレットに渡す金属板により形成された電極パッドである、請求項3に記載の保管設備。
【請求項7】
前記給電部材は、前記第1電力変換部が出力した前記電力を蓄える蓄電部を有する、請求項1に記載の保管設備。
【請求項8】
前記保管対象物を支持すると共に前記保管対象物に前記電力を供給可能な前記パレットをさらに備え、
前記パレットは、
前記第1電力中継部から前記電力を受ける電力受電部と、
前記第1電力中継部から受けた前記電力を交流電力に変換する第2電力変換部と、
前記第2電力変換部が出力する前記交流電力を前記保管対象物に渡す第2電力中継部と、を有する、請求項1に記載の保管設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流倉庫には、単に物品を保管するだけでなく、さまざまな付帯機能が要求されている。例えば、医薬品を保管する場合には、保管環境を一定の温度に保つ機能が要求される。温度管理機能が要求される場合には、倉庫全体をひとつの巨大な冷凍庫とすることもある。
【0003】
しかし、大規模な倉庫全体を冷凍庫とするような場合には、冷凍庫の内部温度を維持するための空調機、搬出入口を密閉する設備及び温度管理に要するその他の装置を設ける必要がある。さらに、倉庫の断熱性能を確保するための構造も要求される。したがって、付帯機能を倉庫全体で実現する構成は、設備面や運用面での負荷が大きい。そこで、要求される機能を、物流倉庫ではなく物品が収容される収容器具に持たせる手段が考えられる。例えば、医薬品を収容する収容器具に温度管理機能を持たせる。
【0004】
収容器具に温度管理といった機能を持たせるためには、電力の供給が必要となる。例えば、特許文献1に開示された保管棚は、物品を保管するための保管棚が複数並んで設けられた保管設備において、保管棚に対する電力供給を低コストで実現する。また、特許文献2、3は、電力を伝送する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-176009号公報
【特許文献2】特開2006-166662号公報
【特許文献3】国際公開第2016/129619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保管設備は、複数の保管対象物を鉛直方向に沿って積層されるように配置する。そうすると、保管設備は、鉛直方向に沿って配置された複数の保管対象物のそれぞれに対して電力を供給する必要がある。例えば、電源から複数の保管対象物のそれぞれにまで電力ケーブルを配置することも考えられる。しかし、複数の保管対象物が鉛直方向に沿って配置されているので、電力ケーブルも鉛直方向に配置する必要がある。つまり、電力ケーブルを高さ方向に配置する作業が生じる。このような電力ケーブルの配線作業は困難であるとともにメンテナンスの負担も大きい。
【0007】
そこで、本発明は、複数の保管対象物のそれぞれに対して電力を供給可能な構成を容易に構築できる保管設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、パレットに載置された保管対象物に電力を供給可能な保管設備である。保管設備は、鉛直方向に沿って起立すると共に、鉛直方向と交差する方向に沿って互いに離間して配置された少なくとも2本の柱部材と、鉛直方向に沿って互いに離間して柱部材に固定され、パレットを柱部材の間に架け渡すように支持する少なくとも2個の架台部材と、架台部材に載置されたパレットに電力を供給する給電部材と、を備える。給電部材は、柱部材の下端部に設けられて、外部電源から受けた電力をマイクロ波として柱部材の内部に放射する電力送信部と、架台部材ごとに、マイクロ波が伝播する柱部材の内部に設けられた電力受信部と、電力受信部が受けたマイクロ波を所定の形態の電力に変換する第1電力変換部と、架台部材に設けられて、第1電力変換部が出力する電力をパレットに渡す第1電力中継部と、を有する。
【0009】
この保管設備は、鉛直方向に沿って配置された複数の架台部材ごとに、電力受信部が設けられている。電力受信部は、電力送信部からマイクロ波として送信された電力を取り出すことができる。そして、取り出された電力は、第1電力変換部によって直流電力に変換されて第1電力中継部を介してパレットに渡される。従って、この保管設備は、マイクロ波を利用して鉛直方向に沿って配置された複数の架台部材ごとに電力を送るから、鉛直方向に延びる電力ケーブルの設置が不要である。その結果、複数の保管対象物のそれぞれに対して電力を供給可能な構成を容易に構築できる。
【0010】
上記の保管設備の電力受信部は、柱部材の内部に固定されていてもよい。この構成によっても、複数の保管対象物のそれぞれに対して電力を供給可能な構成を容易に構築できる。
【0011】
上記の保管設備の柱部材の側面には、架台部材の内部と連通し、柱部材を伝わるマイクロ波を架台部材の内部に導く開口が設けられ、電力受信部は、架台部材の内部に設けられて、柱部材の開口を介して伝わるマイクロ波を受信してもよい。この構成は、大電力の送電に有効である。
【0012】
上記の保管設備の第1電力変換部は、架台部材に設けられてもよい。この構成によっても、保管対象物に電力を供給可能な構成を容易に構築できる。
【0013】
上記の保管設備の第1電力変換部は、マイクロ波を直流電力に変換してもよい。この構成によれば、複数の電力受信部に向けて電力をマイクロ波によって送信することができる。
【0014】
上記の保管設備の第1電力中継部は、直流電力をパレットに渡す金属板により形成された電極パッドであってもよい。この構成によれば、パレットを架台部材に載置することによって、直流電力をパレットに渡す経路を形成することができる。
【0015】
上記の保管設備の給電部材は、第1電力変換部が出力した電力を蓄える蓄電部を有してもよい。この構成によれば、電力受信部が受信した電力とパレットが要求する電力とが一致しない場合に、余剰の電力又は不足する電力を調整することができる。
【0016】
上記の保管設備は、保管対象物を支持すると共に保管対象物に電力を供給可能なパレットをさらに備えてもよい。パレットは、第1電力中継部から電力を受ける電力受電部と、第1電力中継部から受けた電力を交流電力に変換する第2電力変換部と、第2電力変換部が出力する交流電力を保管対象物に渡す第2電力中継部と、を有してもよい。この構成によっても、保管対象物に電力を供給可能な構成を容易に構築できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の保管対象物のそれぞれに対して電力を供給可能な構成を容易に構築できる保管設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態の保管設備を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す保管設備を拡大して示す斜視図である。
図3図3は、給電部材による給電の態様を模式的に示す図である。
図4図4(a)は、実施形態の保管設備の構成要素を模式的に示す図である。図4(b)は、変形例における保管設備の構成要素を模式的に示す図である。図4(c)は、別の変形例における保管設備の構成要素を模式的に示す図である。
図5図5(a)は、変形例の保管設備の要部を拡大して示す平面図である。図5(b)は、変形例の保管設備の要部を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、保管設備1を示す。保管設備1は、複数の保管対象物9を保管する。保管設備1は、保管対象物9に対して電力を供給する。電力を受けた保管対象物9は、受けた電力を利用して、自身が備える機能を発揮する。例えば、保管対象物9が冷凍機能を有する冷凍ラックであるとき、冷凍ラックは、電力を利用して内部温度を所定の温度に維持する。
【0021】
保管対象物9は、冷凍ラックに限定されない。保管対象物9は、電力を受けて機能を発揮する電動機器であればよい。例えば、保管対象物9は、その内部に収容した物品の温度を所定の温度に保つ恒温ラックであってもよい。また、保管対象物9は、電力を蓄える蓄電池であってもよい。つまり、保管対象物9は、保管設備1から受けた電力をその場で消費するもの(例えば冷凍ラック、恒温ラック)であってもよいし、受けた電力をその場ではなく保管設備1から持ち出されたのちに消費するもの(例えば蓄電池)であってもよい。
【0022】
後者の例としては、電気自動車を挙げることができる。この場合には、保管設備1は、立体式駐車場である。電気自動車の充電池は、保管されている間に保管設備1から電力を受けて充電される。そして、電気自動車は、保管設備1から出たのちに、走行中において蓄電池に蓄えた電力を消費する。
【0023】
保管設備1は、保管対象物9を鉛直方向Zに沿って積み重ねるように配置する。保管対象物9は、その上下に位置する別の保管対象物9と直接に接することはないが、本実施形態の説明では、そのような配置も「積み重ね」と称することにする。保管設備1は、鉛直方向Zだけでなく、保管対象物9を水平方向Xにも並べるように配置する。したがって、図1の例示では、保管設備1は、保管対象物9を鉛直方向Z及び水平方向Xによって定義される仮想平面上において二次元状に配置する。なお、保管設備1に保管対象物9を配置する作業は、オペレータによって搬送ロボットを手動操作することによりなされてもよいし、コンピュータ制御によって搬送ロボットを自動制御することによりなされてもよい。
【0024】
保管設備1は、複数の柱部材2と、複数の架台部材3と、を有する。柱部材2は、ベースプレート21の上において鉛直方向Zに沿って起立する。柱部材2は、鉛直方向Zと交差する水平方向Xに沿って互いに離間して配置される。保管対象物9は、4本の柱部材2に囲まれた領域に配置される。柱部材2は、一例として鋼管である。より詳細には、柱部材2は、断面が矩形である中空の鋼管である。つまり、柱部材2は、鉛直方向Zに延びる断面が矩形の貫通穴を有する。柱部材2として、一辺が100mm~125mmである正方形断面の鋼管を用いてもよい。なお、柱部材2として用いる部材は、前述の寸法のものに限定されない。また、柱部材2として用いる部材は、角形鋼管とは別の断面形状を有する部材を用いることも可能である。例えば、H鋼を素材として、H鋼が有する一方の溝を板材でふさぐことにより、断面の一部が閉鎖されたものを採用することもできる。この場合には、閉鎖された空間が、マイクロ波の伝送経路として用いられる。
【0025】
架台部材3は、鉛直方向Zに沿って互いに離間して配置される。より詳細には、架台部材3は、奥行き方向Yに沿って並んだ2本の柱部材2の間にかけ渡される。そして、架台部材3は、2本の柱部材2のそれぞれに固定されている。架台部材3は、柱部材2に対して、例えば溶接によって固定されていてもよい。水平方向Xに並んだ2個の架台部材3の間には、パレット8が配置される。
【0026】
パレット8は、保管設備1の構成要素として定義することもできるし、保管設備1の構成要素ではないと定義することもできる。パレット8は、例えば、平面視して矩形の板部材である。パレット8は、水平方向Xに並んだ2個の架台部材3の間にかけ渡されるように配置される。パレット8は、パレット主面8aとパレット裏面8bとを有する。パレット主面8aには、保管対象物9が置かれる。パレット裏面8bは、架台部材3に接する。
【0027】
上述した柱部材2及び架台部材3によって、保管設備1の基本的な構造が構成される。保管設備1は、さらに、保管対象物9に電力を供給するための給電部材4(図2参照)を有する。給電部材4は、送電にマイクロ波を用いる。給電部材4は、柱部材2を垂直伝送経路として利用することにより、鉛直方向Zに積み重ねられた複数の保管対象物9のそれぞれに電力を送る。
【0028】
図2は、図1に示す保管設備1の一部を拡大して示す斜視図である。なお、図2では、理解を容易にするために、パレット8と保管対象物9を架台部材3から鉛直方向に離している。図2に示すように、給電部材4は、マグネトロン40(電力送信部)を有する。マグネトロン40は、電源7から受けた商用電力をマイクロ波MWに変換する。そして、マグネトロン40は、マイクロ波MWを柱部材2の内部に放射する。マグネトロン40は、柱部材2ごとに配置されている。つまり、1本の柱部材2の下端部に1台のマグネトロン40が配置されている。
【0029】
次に、架台部材3の構造について説明する。その後に、柱部材2及び架台部材3に設けられた給電部材4の構成要素について説明する。
【0030】
架台部材3は、前側連結梁31と、奥側連結梁32と左側腕木33と、右側腕木34とを有する。前側連結梁31及び奥側連結梁32は、その長手方向が水平方向Xに向く。前側連結梁31は、前側柱部材2Aに溶接される。奥側連結梁32は、奥側柱部材2Bに溶接される。前側連結梁31及び奥側連結梁32の長手方向の長さは、前側柱部材2A及び奥側柱部材2Bの幅よりも長い。したがって、前側連結梁31及び奥側連結梁32の両端は、前側柱部材2A及び奥側柱部材2Bから水平方向Xに突出する。
【0031】
前側連結梁31及び奥側連結梁32の左端部には、左側腕木33が固定される。前側連結梁31及び奥側連結梁32の右端部には、右側腕木34が固定される。左側腕木33及び右側腕木34は、リップ溝形鋼(C型鋼)であってもよい。例えば、左側腕木33及び右側腕木34として、幅60mm、高さ30mm、リップ10mmであるC型鋼を採用してよい。なお、前述の寸法は、例示である。左側腕木33及び右側腕木34として、採用する鋼材は、この寸法のものに限定されることはないし、C形鋼とは異なる断面形状の鋼材を用いることも可能である。前側連結梁31と、奥側連結梁32と左側腕木33と、右側腕木34とによって、枠状の架台部材3が形成される。
【0032】
柱部材2及び架台部材3には、給電部材4を構成するいくつかの構成要素が配置されている。給電部材4は、先に示したマグネトロン40に加えて、同軸プローブ41(電力受信部)と、RF/DC変換器42(第1電力変換部)と、送電電極パッド43(第1電力中継部)と、を有する。同軸プローブ41は、マイクロ波MWを受信する。受信されたマイクロ波MWは、RF/DC変換器42に送られる。RF/DC変換器42は、マイクロ波MWを直流電力に変換する。直流電力は、送電電極パッド43を介してパレット8に提供される。
【0033】
同軸プローブ41は、柱部材2に設けられている。具体的には、同軸プローブ41は、前側柱部材2Aの内部に配置されている。つまり、同軸プローブ41は、マイクロ波MWの伝送経路上に配置されている。同軸プローブ41は、前側柱部材2Aに複数設けられている。1本の前側柱部材2Aに設けられる同軸プローブ41の数は、1本の前側柱部材2Aに固定された架台部材3の数と一致してもよい。つまり、同軸プローブ41は、架台部材3ごとに設けられているともいえる。なお、「架台部材3ごと」とは、架台部材3に対応するように設けられていればよく、架台部材3と同軸プローブ41の数が必ずしも一致する必要はない。例えば、架台部材3の数よりも同軸プローブ41の数が多い場合でも、「架台部材3ごと」の範囲に含まれる。例えば、同軸プローブ41は、架台部材3の前側連結梁31の近傍に設けられている。前側連結梁31の近傍とは、前側連結梁31の連結梁側面31bに重複する部分であってもよい。また、前側連結梁31の近傍とは、前側連結梁31の連結梁上面31aよりも上の部分であってもよい。前側連結梁31の近傍とは、前側連結梁31の連結梁下面31cよりも下の部分であってもよい。
【0034】
RF/DC変換器42は、架台部材3に配置されている。より詳細には、RF/DC変換器42は、架台部材3の右側腕木34の連結梁上面31aに配置されている。RF/DC変換器42は、同軸プローブ41に対して同軸ケーブル44によって接続されている。
【0035】
送電電極パッド43は、架台部材3に設けられている。より詳細には、送電電極パッド43は、架台部材3の右側腕木34に設けられている。さらには、送電電極パッド43は、右側腕木34の腕木上面34aに設けられている。腕木上面34aは、パレット8と重複する部分と、パレット8が重複しない部分とを有する。送電電極パッド43は、パレット8と重複する部分に設けられている。
【0036】
送電電極パッド43は、一例として金属板である。送電電極パッド43は、RF/DC変換器42に対して電力ケーブル45によって接続されている。パレット8が配置された状態であるとき、送電電極パッド43は、パレット8に設けられた受電電極パッド81に接触する。つまり、給電部材4は、金属板同士を直接に接触させる態様によって、パレット8に電力を送る。直接接触による電力の提供は、給電部材4からパレット8に対して電力を直流として送ることにより成立させることができる。
【0037】
このような構成によると、パレット8を架台部材3に載置するだけで、電気的な接続が確保される。つまり、パレット8を架台部材3に載置したのちに、載置動作とは別に、電気的な接続を確保する動作を行う必要がない。これと同様に、パレット8を取り出す動作であるときも、電気的な接続を解除する動作を行う必要がない。さらに、送電電極パッド43と受電電極パッド81(電力受電部)とは、完全に一致するように重複している必要はない。送電電極パッド43の一部分に、受電電極パッド81の一部分が重複する場合でも、パレット8は電力を受けることができる。つまり、電気的な接続を確保するために、架台部材3に対してパレット8を精密に位置決めする必要がない。換言すると、パレット8を配置する際に許される位置ずれの量を緩やかにすることができる。
【0038】
パレット8は、電力の提供に応じる構成として、受電電極パッド81と、DC/AC変換器82(第2電力変換部)と、を有する。受電電極パッド81は、パレット裏面8bに設けられる。受電電極パッド81も、送電電極パッド43と同様に、金属板である。受電電極パッド81は、電力ケーブル45を介してDC/AC変換器82に接続されている。DC/AC変換器82は、直流電力を交流電力に変換する。DC/AC変換器82は、例えば、パレット主面8aに配置されてもよい。また、DC/AC変換器82は、パレット8の内部に埋め込まれていてもよい。
【0039】
DC/AC変換器82は、交流電力を出力する。DC/AC変換器82は、交流電力を出力するためのジャック83(第2電力中継部)を有する。ジャック83には、保管対象物9から延びるプラグ91が差し込まれる。この場合には、パレット8側のジャック83に保管対象物9側のプラグ91を差し込む作業が発生する。しかし、物流倉庫内では、保管対象物9とパレット8とは一体として搬送される。したがって、保管対象物9が載置されたパレット8を、保管設備1に載置する作業や保管設備から取り出す作業に際して、ジャック83にプラグ91に差し込むまたは抜く作業は影響しない。
【0040】
図2において、前述した架台部材3に隣接する別の架台部材3は、前述した架台部材3と協働して、パレット8を支持する。前側柱部材2A及び隣接する別の架台部材3にも、前側柱部材2A及び前述した架台部材3と同様に、給電部材4を構成する同軸プローブ41、RF/DC変換器42、および送電電極パッド43が設けられている。しかし、隣接する別の架台部材3において、左側腕木33には、図2に示すパレット8が載置される。一方、隣接する別の架台部材3において、右側腕木34には、パレット8に隣接する別のパレット8が配置される。従って、隣接する別の架台部材3に設けられた給電部材4の構成要素は、隣接する別のパレット8に電力を提供する。
【0041】
図3は、給電部材4による給電の態様を模式的に示す。例えば、保管設備1は、鉛直方向に沿って10個のパレット8を配置可能な構造を有するとする。保管設備1が給電する層の数は、10層に限定されない。保管設備1が給電する層の数は、10層より多くてもよいし、10層より少なくてもよい。この場合には、10個のパレット8を配置可能であるから、鉛直方向に沿って10個の架台部材3が配置される。そして、10個の架台部材3ごとに、10個の同軸プローブ41が配置される。
【0042】
いま、地上側に配置されたマグネトロン40から3kWの電力がマイクロ波MW1として放射されたと仮定する。まず、1層目の同軸プローブ41は、1/10の電力(3kW×1/10=0.3W)を取り出す。同軸プローブ41が取り出す電力は、同軸プローブ41の構造によって決めることができる。つまり、同軸プローブ41は、1/10の電力が取り出し可能な構造を有する。1層目の同軸プローブ41から2層目の同軸プローブ41に向かうマイクロ波MW2の電力は、2.7kWである。つぎに、2層目の同軸プローブ41は、1/9の電力(2.7kW×1/9=0.3W)を取り出す。つまり、この例示では、各層において取り出される電力は、同じであるように設定している。2層目の同軸プローブ41から3層目の同軸プローブ41に向かうマイクロ波MW3の電力は、2.4kWである。
【0043】
以下、同様に、全N層の配置構造を有する保管設備1において、n層の同軸プローブ41は、1/(N―n+1)の電力を取り出す。Nは、鉛直方向Zに沿って配置され得るパレット8の総数である。パレット8ごとに同軸プローブ41が設けられているので、Nは、鉛直方向Zに沿って配置された同軸プローブ41の数であるとも言える。nは、電力を取り出す対象となる同軸プローブ41の層数である。したがって、10層目(n=10)であるときに、すべての電力が取り出されることになる。なお、柱部材2には、最上層である10層目の同軸プローブ41からさらに上側に短絡板22を設けてもよい。
【0044】
<作用効果>
以下、本実施形態の保管設備1に至る背景を説明した後に、保管設備1の作用効果について説明する。
【0045】
近年、医薬品の保管条件として、超低温に保つことを条件とする事例が増加傾向にある。例えば、セ氏-50度以下に保つことができる物流倉庫の需要が増加している。例えば、2019年に生じたCOVID19に関するワクチンの保管が一例として挙げられる。
【0046】
物流倉庫を冷凍庫として運用する場合に、倉庫全体を冷凍庫とする手段が挙げられる。この場合には、冷凍庫の機能として、冷凍庫の内部を所定の温度に保つためのエアコンや搬出入口を密閉する装置(例えば、ドッグシェルターや断熱オートドアなど)、その他の温度管理に必要な装置(例えば、温度計や換気扇など)を設置することを要する。さらに、倉庫の断熱性能を確保するための構造も要求される。さらに、運用時においては、倉庫内全体の温度を所定の温度(例えば低温)に保つために大量の電力を要することが、問題点として挙げられる。また、倉庫全体を冷凍または冷蔵する場合には、倉庫の換気扇などの設備が故障すると、倉庫全体が使用できなくなる。その結果、運用時における各設備の冗長性を確保することが必要となる。
【0047】
物流倉庫全体を冷凍庫として運用する場合には、上記のような問題がある。したがって、倉庫内の一部を冷凍庫として運用するニーズが存在した。
【0048】
倉庫内の一部を冷凍庫として運用する手段として、倉庫内の保管棚に冷凍庫を個別に設置する手段が挙げられる。その場合には、保管棚に設置された冷凍庫に電力を供給する必要がある。複数層で構築されている保管棚の上層へ電力を供給するためには、電力を供給するための電力ケーブルを配線する作業が発生する。特に、立体自動倉庫の場合には、保管棚が高層となる。その結果、高層部の棚へ電力ケーブルを用いて電力を供給することが難しい。さらに、配線設備のメンテナンスにも多くの労力が必要である。
【0049】
上述の問題に対して、本実施形態の保管設備1は、以下の構成を備えることにより上述の問題を解決する。
【0050】
保管設備1は、鉛直方向に沿って起立すると共に、鉛直方向Zと交差する方向に沿って互いに離間して配置された複数の柱部材2と、鉛直方向Zに沿って互いに離間して柱部材2に固定され、パレット8を柱部材2の間に架け渡すように支持する複数の架台部材3と、架台部材3に載置されたパレット8に電力を供給する給電部材4と、を備える。給電部材4は、柱部材2に設けられて、電源7(外部電源)から受けた電力をマイクロ波として柱部材2の内部に放射するマグネトロン40と、架台部材3ごとに、マイクロ波が伝播する柱部材2の内部に設けられた同軸プローブ41と、同軸プローブ41が受けたマイクロ波を所定の形態の電力に変換するRF/DC変換器42と、架台部材3に設けられて、RF/DC変換器42が出力する電力をパレット8に渡す送電電極パッド43と、を有する。
【0051】
保管設備1では、1本の柱部材2には1台のマグネトロン40が設けられている。そして、保管設備1では、鉛直方向Zに沿って配置された複数の架台部材3ごとに、同軸プローブ41が設けられている。同軸プローブ41は、マグネトロン40からマイクロ波として送信された電力を取り出すことができる。つまり、保管設備1は、1台のマグネトロン40から複数の同軸プローブ41に電力を供給することが可能である。そして、取り出された電力は、RF/DC変換器42によって直流電力に変換されて送電電極パッド43を介してパレット8に渡される。従って、保管設備1は、マイクロ波を利用して鉛直方向Zに沿って配置された複数の架台部材3ごとに電力を送るから、鉛直方向に延びる電力ケーブルの設置が不要である。その結果、複数の保管対象物9のそれぞれに対して電力を供給可能な構成を容易に構築できる。
【0052】
保管設備1は、マグネトロン40から各層ごとに対して直接に電力を供給する。換言すると、1本の柱部材2に設けられている複数の同軸プローブ41は、マグネトロン40に対してそれぞれが電気的に並列に接続されている。つまり、ある層に電力を供給する場合に、その層とは別の層に対して電力が供給されているか否かは関係しない。従って、ある層に配置されたパレット8への給電に際して、別の層にパレット8が配置されているか否かは関係しない。つまり、保管設備1の給電機能を発揮するために、パレット8の配置が制限されることがないので、保管設備1の運用の自由度を阻害することなく、給電機能を発揮することができる。
【0053】
要するに、実施形態の保管設備1は、無線給電システムを備えた冷凍自動ラック倉庫である。保管設備1は、ラック柱である柱部材2を垂直伝送経路として利用する。柱部材2の下部からマイクロ波を入力し、各ラック受け架台(架台部材3)の位置に設けられた同軸プローブ41によって所定の割合(例:1/10)の電力を取り出す。取り出した電力は、パレット受け架台に設置したRF/DC変換器42を介して、直流電力のための送電電極パッド43に給電する。パレット8は、直流電力のための受電電極パッド81によって直流電力を受電する。受電した電力は、DC/AC変換器82によって交流電力に変換する。そして、交流電力は、プラグ91を介して保管対象物9である冷凍ラックに給電される。
【0054】
保管設備1によれば、自動搬送システムのみでパレット付き冷凍ラックに電力を供給することができる。さらに、ラックの組み立てと同時に給電システムを実装することができる。換言すると、ラックを組み立てたのちに、各架台ごとに配線作業を行う必要がない。柱部材2の上端には、短絡版92が設けられているので、最上層の同軸プローブ41によって残りの電力を取り出すことができる。その結果、電力の伝送効率の低下を抑制するとともにマイクロ波の反射を抑制することができる。
【0055】
さらに、保管設備1によれば、一般のラック倉庫と、特定の機能(例:冷凍機能)を備えたラック倉庫の兼用化が可能である。その結果、特定の機能に特化した専用倉庫が不要となる。
【0056】
本発明の保管設備1は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0057】
図4(a)は、実施形態の保管設備1の構成要素を模式的に示す図である。図4(a)に示すように、給電部材4を構成するいくつかの構成要素のうち、マグネトロン40及び同軸プローブ41は、柱部材2に設けられ、RF/DC変換器42及び送電電極パッド43は、架台部材3に設けられていた。
【0058】
例えば、図4(b)に示す変形例の保管設備1Aでは、マグネトロン40及び同軸プローブ41に加えてRF/DC変換器42も柱部材2に設けてもよい。つまり、架台部材3には、送電電極パッド43のみが設けられてもよい。この場合には、柱部材2からはマイクロ波MWではなく直流電力が出力される。
【0059】
例えば、図4(c)に示す別の変形例の保管設備1Bは、給電部材4の構成要素としてさらに蓄電池46(蓄電部)を有する。蓄電池46は、架台部材3に配置される。蓄電池46は、RF/DC変換器42に接続される。蓄電池46は、RF/DC変換器42から直流電力を受けて、その電力を蓄える。蓄電池46は、蓄えた電力を必要に応じて送電電極パッド43に提供する。このような構成によると、同軸プローブ41が取り出した電力と、パレット8側が要求する電力との不一致に起因する問題を解消することができる。例えば、同軸プローブ41が取り出した電力がパレット8側で要求する電力よりも大きいとき、余った電力を蓄電池46に蓄えることができる。また、同軸プローブ41が取り出した電力がパレット8側で要求する電力よりも少ないとき、不足する電力を蓄電池46から取り出すことができる。なお、蓄電池46は、パレット8に設けてもよい。また、蓄電池46は、架台部材3とパレット8の両方に設けてもよい。
【0060】
上記実施形態では、同軸プローブ41は、前側柱部材2Aに設けられていた。しかし、同軸プローブ41は、必ずしも前側柱部材2Aに設けられている必要はない。例えば、図5(a)及び図5(b)に示すさらに別の変形例である保管設備1Cでは、同軸プローブ41が架台部材3Sに設けられている。
【0061】
前側柱部材2Sは、前側連結梁31の連結梁側面31bに固定される柱部材側面2aに設けられた柱開口25(開口)を有する。柱開口25は、平面視して矩形状の貫通穴である(図5(b)参照)。さらに、柱開口25は、架台部材3Sの前側連結梁31Sに設けられた連結梁開口35に連通する。これら柱開口25と連結梁開口35とによって、前側柱部材2Sの内部と前側連結梁31Sの内部とがつながっている。その結果、前側柱部材2Sの内部を伝わるマイクロ波MWを前側連結梁31Sの内部に導くことができる。つまり、柱開口25と連結梁開口35とは、スロットアンテナ47を構成する。
【0062】
前側連結梁31Sの内部には、遮蔽板36と複数の同軸プローブ41とが設けられている。遮蔽板36は、前側柱部材2Sの側面2bに対応する位置に設けられている。複数の同軸プローブ41は、遮蔽板36の逆側に設けられている。複数の同軸プローブ41は、電気的に互いに並列に接続されている。このような前側連結梁31Sは、パレット8を支持する機能に加えて、導波管としての機能も奏する。つまり、変形例の架台部材3Sは、腕木兼同軸導波管変換器であると言える。
【0063】
このような構成によれば、マイクロ波MWを複数の同軸プローブ41によって受信することができる。従って、大電力の送電に有効である。
【0064】
実施形態の保管設備1は、架台部材3からパレット8への電力の提供は、金属板の直接接触によっていた。例えば、架台部材3からパレット8への電力の提供は、非接触給電方式を用いてもよい。つまり、架台部材3からパレット8への電力の提供は、無線給電方式を用いてもよい。さらに、パレット8を架台部材3に配置する動作に加えて、電気的な接続動作を許容する場合には、架台部材3からパレット8への電力の提供は、有線による給電方式を用いてもよい。
【0065】
保管設備1が備える給電部材4は、新規に保管設備1を施工する場合に適用することもできる。さらに、すでに構築されているラックに対して付加的に給電部材4を設けることにより、給電機能をもたない保管設備に給電機能を有する保管設備1とすることもできる。
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B,1C…保管設備、2…柱部材、2A,2S…前側柱部材、2B…奥側柱部材、3…架台部材、4…給電部材、7…電源(外部電源)、8…パレット、8a…パレット主面、8b…パレット裏面、9…保管対象物、21…ベースプレート、22…短絡板、31,31S…前側連結梁、31a…連結梁上面、31b…連結梁側面、31c…連結梁下面、32…奥側連結梁、33…左側腕木、34…右側腕木、34a…腕木上面、40…マグネトロン(電力送信部)、41…同軸プローブ(電力受信部)、42…RF/DC変換器(第1電力変換部)、43…送電電極パッド(第1電力中継部)、44…同軸ケーブル、45…電力ケーブル、46…蓄電池(蓄電部)、47…スロットアンテナ、81…受電電極パッド(電力受電部)、82…DC/AC変換器(第2電力変換部)、83…ジャック(第2電力中継部)、91…プラグ、92…短絡版、MW…マイクロ波、X…水平方向、Y…奥行き方向、Z…鉛直方向。
図1
図2
図3
図4
図5