(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150094
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 19/06 20060101AFI20241016BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20241016BHJP
F01P 7/14 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F02D19/06 B
F01P7/16 505A
F01P7/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063341
(22)【出願日】2023-04-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 直也
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092AA17
3G092AB02
3G092AB08
3G092EA02
3G092EA11
3G092FA24
3G092HA04
3G092HB09
3G092HD05
3G092HE03
3G092HE08
(57)【要約】
【課題】燃費および出力性能を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供すること。
【解決手段】制御装置の制御部は、CNGモードか否かを判断する(ステップS1)。制御部は、CNGモードであると判断した場合(ステップS1でYES)、CNGモード専用制御マップを使用して冷却水供給装置を制御する(ステップS2)。制御部は、CNGモードではないと判断した場合(ステップS1でNO)、ガソリンモード専用制御マップを使用して冷却水供給装置を制御する(ステップS3)。ガソリンモード専用制御マップおよびCNGモード専用制御マップは、内燃機関の負荷が同じであっても冷却水の水量が異なるように設定されている。制御部は、内燃機関の負荷が同じであっても、気体燃料を使用する場合には液体燃料を使用する場合よりも冷却水の水量が少なくなるように冷却水供給装置を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料と気体燃料を切り替えて使用する内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関を冷却する冷却水の水量を任意に変化させることが可能な冷却水供給装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記内燃機関の負荷が同じであっても、前記液体燃料を使用する場合と前記気体燃料を使用する場合とで、前記冷却水の水量が異なるように前記冷却水供給装置を制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記内燃機関の負荷が同じであっても、前記気体燃料を使用する場合には前記液体燃料を使用する場合よりも前記冷却水の水量が少なくなるように前記冷却水供給装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関が、排気ガスを外部EGRガスとして再循環する排気ガス再循環装置を備え、
前記制御部は、前記内燃機関の負荷が同じであっても、前記気体燃料を使用する場合には前記液体燃料を使用する場合よりも前記冷却水の水量が少なくなるように前記冷却水供給装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体燃料と気体燃料との2種類の燃料を使用するバイフューエル内燃機関が記載されており、この内燃機関にはウォータポンプが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、内燃機関の冷却系統に、冷却水の水量を変更可能な電動ウォータポンプ等を用いた冷却水供給装置を採用することで、内燃機関の状態に応じて冷却水の水量を任意に変化させることが可能となる。液体燃料であるガソリンを使用する内燃機関においては、内燃機関の冷却水の水量を任意に変化させることが可能な冷却水供給装置を採用した場合、アクセル開度が一定で車両が加速も減速もしないパーシャル領域(部分負荷領域)では、冷却水の水量を減少させて冷却水を高温にする高水温制御を行うことで、冷却損失を減少させ、燃費を向上させることができる。一方、高負荷領域や全開領域では、冷却水の水量を増加させることで、ノッキングの発生を抑えて燃費および出力性能を向上させることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、液体燃料と気体燃料とを切り替えて使用する内燃機関において、内燃機関の冷却水の水量を任意に変化させることが可能な冷却水供給装置を採用した場合の制御について十分な検討がされておらず、更に検討の余地があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、燃費および出力性能を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体燃料と気体燃料を切り替えて使用する内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、前記内燃機関を冷却する冷却水の水量を任意に変化させることが可能な冷却水供給装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記内燃機関の負荷が同じであっても、前記液体燃料を使用する場合と前記気体燃料を使用する場合とで、前記冷却水の水量が異なるように前記冷却水供給装置を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、燃費および出力性能を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る内燃機関の制御装置を備える内燃機関の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る内燃機関の制御装置を備える内燃機関の冷却水供給装置の構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る内燃機関の制御装置が用いる制御マップである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る内燃機関の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、液体燃料と気体燃料を切り替えて使用する内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、内燃機関を冷却する冷却水の水量を任意に変化させることが可能な冷却水供給装置を制御する制御部を備え、制御部は、内燃機関の負荷が同じであっても、液体燃料を使用する場合と気体燃料を使用する場合とで、冷却水の水量が異なるように冷却水供給装置を制御することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、燃費および出力性能を向上させることができる。
【実施例0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1~
図4は本発明に係る内燃機関の制御装置の一実施形態を説明する図である。
【0012】
図1において、内燃機関10は、車両などに駆動源として搭載されている。内燃機関10は、ピストン11をピストンロッド12に連結して往復運動自在にシリンダ15内に収容する機構を備えている。
【0013】
内燃機関10において、シリンダ15の上方のシリンダヘッド16下部内面とピストン11上面との間には、燃焼室17が形成されている。内燃機関10は、燃焼室17内に導入する吸気燃焼空気と噴射燃料の混合気を点火することによる燃焼膨張と排気を繰り返すことで、ピストン11を図中の上下方向に往復させるようになっている。
【0014】
内燃機関10は、往復運動するピストン11の駆動力をピストンロッド12や変速機等を介して伝達することにより、例えば、車軸を回転させて車両の走行を実現する。
【0015】
内燃機関10は、イグニッションコイル19で昇圧した高電圧を不図示の点火プラグに印加してスパークさせることにより、燃焼室17内の混合気を点火する。
【0016】
内燃機関10において、シリンダヘッド16内には、吸気弁13と排気弁14とが配設されている。吸気弁13と排気弁14とは、カムシャフト28と一体回転する駆動カム(吸気カムと排気カム)28aが図中押下方向に移動(リフト)されることで、それぞれ燃焼室17に連通する吸気ポート21と排気ポート22を開閉するようになっている。
【0017】
吸気ポート21には、サージタンク26を介してエアクリーナ25が接続されている。エアクリーナ25は、外部から取り込んだ空気(外気)を濾過する。排気ポート22には、燃焼室17から排気ガスを排出する排気マニホールド24が接続されている。排気マニホールド24には、触媒27aを内蔵する触媒コンバータ27が接続されており、触媒コンバータ27は排気ガスを浄化する。
【0018】
サージタンク26の上流側には、車両のアクセルペダルに連動するスロットルバルブ29が配置されている。内燃機関10は、スロットルバルブ29の開度を調整することにより、燃料と混合する空気の吸気量を制御する。
【0019】
また、内燃機関10は、液体燃料を吸気マニホールド23に噴射するガソリンインジェクタ31と、気体燃料を吸気マニホールド23に噴射するCNGインジェクタ32と、を備えている。本実施例では、液体燃料はガソリンからなる。以下、液体燃料のことをガソリンともいう。また、気体燃料はCNG(Compressed Natural Gas:圧縮天然ガス)からなる。以下、気体燃料のことをCNGともいう。なお、気体燃料はLPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)でもよい。
【0020】
ガソリンインジェクタ31は、液体燃料タンク33に液体燃料供給管34を介して接続されている。ガソリンインジェクタ31は、液体燃料タンク33内に常圧状態で貯留するガソリンを噴射して吸気ポート21を介して燃焼室17内に供給する。
【0021】
液体燃料タンク33には、貯留するガソリンが一定量の残量に到達するまで使用されたことを検出する残量センサ(液体燃料残量検出部)33aを備えており、残量センサ33aは、後述する制御装置41に接続されている。
【0022】
CNGインジェクタ32は、気体燃料タンク36に気体燃料供給管37を介して接続されている。気体燃料タンク36には、CNGが高圧状態で貯留されている。CNGインジェクタ32は、気体燃料タンク36内に貯留されているCNGを圧力調整した上で吸気ポート21を介して燃焼室17に噴射する。
【0023】
なお、気体燃料であるCNGをCNGインジェクタ32のみで遮断することが難しいことから、気体燃料供給管37には、減圧弁38およびストップバルブ39が設けられている。
【0024】
内燃機関10は排気ガス再循環装置62を備えている。排気ガス再循環装置62は、内燃機関10の排気ガスを外部EGRガスとして再循環する。詳しくは、排気ガス再循環装置62は、排気マニホールド24と吸気マニホールド23とに連通するEGR通路60と、EGR通路60に設けられたEGRバルブ61とを有している。EGR通路60は、燃焼室17から排気マニホールド24に排出された排気ガスを外部EGRガスとして吸気マニホールド23に供給する。EGRバルブ61は、EGR通路60を通過する排気ガスの流量を制御する。
【0025】
内燃機関10は制御装置41を備えている。制御装置41は、CPUやメモリ等からなり、各種パラメータやセンサ情報などに基づいて予め格納する制御プログラムを実行し、車両全体を統括制御するようになっている。
【0026】
制御装置41には、残量センサ33aに加えて、吸気温度センサ42と、上流側酸素センサ(空燃比センサ)43と、下流側酸素センサ44と、エンジン水温センサ45と、クランク角センサ(速度検出部)46と、カム角センサ47と、燃料切替スイッチ48と、外気温センサ49と、吸気圧センサ51と、車速センサ52と、が接続されている。
【0027】
吸気温度センサ42は、エアクリーナ25の下流側に設置されており、燃焼室17に供給される空気の温度を検出する。
【0028】
上流側酸素センサ43は、触媒コンバータ27の上流側に設置されており、燃焼室17から排気される燃焼後の排気ガス中における酸素濃度を検出して燃焼状況を検知する。
【0029】
下流側酸素センサ44は、触媒コンバータ27の下流側に設置されており、触媒27aによる浄化処理後の排気ガス中における酸素濃度を検出して浄化状況を検知する。
【0030】
エンジン水温センサ45は、内燃機関10の冷却水の温度を検出する。クランク角センサ46は、駆動回転数(駆動速度)の検出や燃料噴射タイミングの同期などを目的として、不図示のクランクシャフトのクランク角を検出する。
【0031】
カム角センサ47は、吸気側のカムシャフト28のカム角を検出する。燃料切替スイッチ48は、使用する燃料の切替操作がドライバにより行われる。外気温センサ49は、外気の温度を検出する。
【0032】
吸気圧センサ51は、吸気マニホールド23における空気の圧力(MAP:Manifold Air Pressure)を検出する。車速センサ52は、車軸の回転速度(車速)を検出する。
【0033】
制御装置41は、内燃機関10の燃焼室17に供給する燃料をガソリンまたはCNGに切り替えるようになっている。例えば、制御装置41は、燃料切替スイッチ48による手動切替操作時、液体燃料タンク33内または気体燃料タンク36内の燃料切れの検知時、あるいは、暖気運転または定常運転や加速時などの内燃機関10の運転状態に応じて、内燃機関10の使用する燃料をCNGまたはガソリンに切り替える。制御装置41は、吸気圧センサ51により検出された空気の圧力に基づいて内燃機関10の負荷を算出する。なお、制御装置41は、吸気マニホールド23における空気の流量(MAF:Manifold Air Flow)に基づいて内燃機関10の負荷を算出することもできる。
【0034】
図2において、内燃機関10は、冷却水供給装置77を備えている。冷却水供給装置77は、内燃機関10を冷却する冷却水の水量を任意に変化させることが可能に構成されている。冷却水供給装置77は、外気との熱交換により冷却水を冷却するラジエータ73と、内燃機関10からラジエータ73に冷却水を供給する上流側冷却水供給経路74と、ラジエータ73から内燃機関10に冷却水を供給する下流側冷却水供給経路75を備えている。
【0035】
また、冷却水供給装置77は、下流側冷却水供給経路75に、ウォータポンプ70と、冷却水の水量を制御する冷却水制御バルブ71とを有している。冷却水制御バルブ71はウォータポンプ70よりも上流側に配置されている。
【0036】
また、冷却水供給装置77は、ラジエータ73を迂回して冷却水を循環させるバイパス経路76を有している。バイパス経路76は、上流側冷却水供給経路74から分岐し、下流側冷却水供給経路75における冷却水制御バルブ71とウォータポンプ70との間に接続されている。
【0037】
図1において、制御装置41は、冷却水供給装置77を制御する制御部80を有している。
図2において、ウォータポンプ70は、冷却水の水量を任意に変化させることが可能な電動式ウォータポンプから構成されている。冷却水制御バルブ71は、ワックスの熱膨張により冷却水の流路を開く機械式のサーモスタットから構成されている。制御部80は、電動式のウォータポンプ70の吐出量を制御することにより、冷却水の水量を任意に変化させることができる。
【0038】
なお、内燃機関10を冷却する冷却水の水量を任意に変化させることが可能な冷却水供給装置77は、上記構成に限定されない。ウォータポンプ70として機械式のウォータポンプを用い、冷却水制御バルブ71として流路の開度を電気的に制御可能な電制バルブを用いてもよい。制御部80は、電制バルブからなる冷却水制御バルブ71の開度を制御することにより、冷却水の水量を任意に変化させることができる。
【0039】
ここで、CNGはガソリンよりも燃焼温度が低いため、CNGの使用時はガソリンの使用時よりも排気温度が低くなる。このため、CNGの使用時はガソリンの使用時よりも触媒温度も低くなり、触媒浄化率が低下してしまう。
【0040】
したがって、CNGの使用時は、排気温度の低下による触媒浄化率の低下を抑制するため、内燃機関10の負荷が同じであってもガソリンの使用時よりも冷却水の水量を減少させることが望ましい。
【0041】
また、ガソリンの使用時において、スロットルバルブが大きく開かれた状態であるWOT(Wide Open Throttle)時は、負荷が所定負荷以上に増大し、ノッキングの発生するノック領域となるため、ノッキングを回避するために点火時期が遅角される。点火時期が遅角されることで、点火時期が進角している場合よりもピストンが上死点から一定程度下降して筒内容積が増大した位置で燃焼が開始されるので、MBT(最適点火時期)で点火する場合よりも最大筒内圧力が低下する。
【0042】
一方、CNGはノッキングを発生させにくい特性(ノックフリー特性)を有し、ガソリンの使用時と内燃機関10の温度(冷却水の温度)が同じであっても、ノッキングが発生しにくい。このため、CNGの使用時においては、WOT時の点火時期の遅角量は、ガソリンの使用時よりも少なくてよい。ただし、WOT時は、ノッキングが発生していなくてもシリンダ15の最大筒内圧力がハード限界に到達する場合があるため、最大筒内圧力を抑制することを目的として点火時期を遅角する必要がある。そのため、CNGの使用時におけるWOT時の点火時期の遅角量は、最大筒内圧力がハード限界に到達しない程度の遅角量に設定される。冷却水をより高温に保って吸入空気の質量を熱膨張により減少させることで、WOT時の最大筒内圧力を抑制でき、点火時期の遅角量を減らして燃費を向上させることができる。また、冷却水をより高温に保つ方が、冷却損失を低減でき、燃費を向上させることができる。
【0043】
したがって、CNGの使用時は、WOT時の最大筒内圧力の抑制を目的とした点火時期の遅角量を減らすことができるように、内燃機関10の負荷が同じであってもガソリンの使用時よりも冷却水の水量を減少させることが望ましい。さらに、CNGの使用時は、冷却損失の低減により燃費を向上させることができるように、内燃機関10の負荷が同じであってもガソリンの使用時よりも冷却水の水量を減少させることが望ましい。
【0044】
また、CNGの使用時においては、ガソリンの使用時と比較して主成分のメタンの燃焼が遅く着火性が悪い。このため、一般的に、ガソリンの使用時よりもEGR導入量(還流させる排気ガスの量)を縮小する必要がある。また、CNGの使用時においては、ガソリンの使用時と比較して、メタンの燃焼による凝縮水の発生量が多い。このため、一般的に、EGR導入量を縮小する必要がある。このような、メタンの使用時の着火性や凝縮水に起因するEGR導入量の縮小を回避することが好ましい。
【0045】
したがって、CNGの使用時は、メタンの着火性を向上させて凝縮水を発生しにくくし、EGR導入量の縮小を回避するため、内燃機関10の負荷が同じであってもガソリンの使用時よりも冷却水の水量を減少させ、冷却水を高温化することが望ましい。
【0046】
そこで、制御部80は、内燃機関10の負荷が同じであっても、ガソリンを使用する場合とCNGを使用する場合とで、冷却水の水量が異なるように冷却水供給装置77を制御する。詳しくは、制御部80は、内燃機関10の負荷が同じであっても、CNGを使用する場合にはガソリンを使用する場合よりも冷却水の水量が少なくなるように冷却水供給装置77を制御する。
【0047】
本実施例において、制御部80は、冷却水の水量制御に用いる制御マップとして、ガソリンの使用時の冷却水の水量制御に用いるガソリンモード専用制御マップと、CNGの使用時の冷却水の水量制御に用いるCNGモード専用制御マップと、を有している。
【0048】
図3において、横軸は内燃機関10の負荷を表し、縦軸は冷却水の水量(図中、冷却水水量と記す)を表す。
図3に示すように、ガソリンモード専用制御マップ(図中、ガソリンモード専用と記す)およびCNGモード専用制御マップ(図中、CNGモード専用と記す)は、内燃機関10の負荷が同じであっても冷却水の水量が異なるように設定されている。
【0049】
詳しくは、CNGモード専用制御マップは、内燃機関10の負荷が同じであっても、ガソリンモード専用制御マップよりも冷却水の水量が少なくなるように設定されている。
【0050】
なお、
図3では、負荷が所定負荷以上のノック領域において、負荷が同じであっても、CNGモード専用制御マップにおける冷却水の水量の方が、ガソリンモード専用制御マップにおける冷却水の水量よりも少なくなるように設定されているが、所定負荷未満の領域においても、負荷が同じであっても、CNGモード専用制御マップにおける冷却水の水量の方が、ガソリンモード専用制御マップにおける冷却水の水量よりも少なくなるように設定されていてもよい。
【0051】
本実施例の内燃機関の制御装置の動作について、
図4を用いて説明する。
図4に示すように、制御部80は、CNGモードか否かを判断する(ステップS1)。つまり、制御部80は、CNGモードまたはガソリンモードの何れであるかを判断する。
【0052】
制御部80は、ステップS1でCNGモードであると判断した場合(ステップS1でYES)、CNGモード専用制御マップを使用して冷却水供給装置77を制御し(ステップS2)、今回の動作を終了する。
【0053】
制御部80は、ステップS1でCNGモードではないと判断した場合(ステップS1でNO)、ガソリンモード専用制御マップを使用して冷却水供給装置77を制御し(ステップS3)、今回の動作を終了する。
【0054】
以上のように、本実施例の内燃機関10の制御装置は、内燃機関10を冷却する冷却水の水量を任意に変化させることが可能な冷却水供給装置77と、内燃機関10の負荷が同じであっても、液体燃料を使用する場合と気体燃料を使用する場合とで、冷却水の水量が異なるように冷却水供給装置77を制御する制御部80と、を備える。
【0055】
これにより、内燃機関10の負荷が同じであっても液体燃料を使用する場合と気体燃料を使用する場合とで冷却水の水量が異なるように冷却水供給装置77が制御される。このため、気体燃料の使用時と液体燃料の使用時とのそれぞれで、冷却水および内燃機関10の温度を、燃費および出力性能を考慮して最適化することができる。この結果、燃費および出力性能を向上させることができる。
【0056】
また、本実施例の内燃機関10の制御装置において、制御部80は、内燃機関10の負荷が同じであっても、気体燃料を使用する場合には液体燃料を使用する場合よりも冷却水の水量が少なくなるように冷却水供給装置77を制御する。
【0057】
これにより、気体燃料の使用時に、冷却水がより高温に保たれる。このため、内燃機関10に吸入される空気の質量が熱膨張により減ることでWOT時の最大筒内圧力を抑制できるので、最大筒内圧力の抑制のための点火時期の遅角量を減らすことができ、燃費や出力性能を向上させることができる。
【0058】
また、内燃機関10の負荷が同じであっても、気体燃料を使用する場合には液体燃料を使用する場合よりも冷却水の水量が少なくなるように冷却水供給装置77が制御される。このため、気体燃料を使用する場合、液体燃料を使用する場合よりも冷却水温が高くなり、気筒温度が高くなる。気筒温度が高くなることで燃焼温度が高くなり、排気温度も高くなる。排気温度が高くなることで触媒温度が高くなり、触媒浄化率が高くなる。したがって、排気温度を高くして触媒浄化率を確保することができる。
【0059】
また、本実施例では、内燃機関10が、排気ガスを外部EGRガスとして再循環する排気ガス再循環装置62を備える。そして、制御部80は、内燃機関10の負荷が同じであっても、気体燃料を使用する場合には液体燃料を使用する場合よりも冷却水の水量が少なくなるように冷却水供給装置77を制御する。
【0060】
これにより、内燃機関10の負荷が同じであっても、気体燃料を使用する場合には液体燃料を使用する場合よりも冷却水の水量が少なくなるように冷却水供給装置77が制御される。このため、気体燃料の使用時に、内燃機関10がより高温に保たれるので、メタンの着火性を向上させることができ、凝縮水の発生を抑制できるので、EGR導入量を増やすことができ、EGR導入量の縮小を回避できる。したがって、EGR導入量の縮小による燃費悪化を抑制することができる。
【0061】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
本発明は、液体燃料と気体燃料を切り替えて使用する内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、前記内燃機関を冷却する冷却水の水量を任意に変化させることが可能な冷却水供給装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記液体燃料の使用時においてノッキングの発生する前記内燃機関の負荷が所定負荷以上のノック領域において、前記負荷が同じであっても、前記気体燃料を使用する場合には前記液体燃料を使用する場合よりも前記冷却水の水量が少なく、前記負荷が大きくなるほど前記液体燃料を使用する場合の前記冷却水の水量と前記気体燃料を使用する場合の前記冷却水の水量との差が大きくなるように前記冷却水供給装置を制御することを特徴とする。