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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150098
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】排水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/18 20230101AFI20241016BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20241016BHJP
【FI】
C02F3/18
C02F3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063346
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100139516
【弁理士】
【氏名又は名称】藤浪 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ガンバト ゾルザヤ
【テーマコード(参考)】
4D028
4D029
【Fターム(参考)】
4D028BB03
4D028BC24
4D028BC26
4D028BD06
4D028BD10
4D028CA00
4D028CC07
4D029AA04
4D029BB01
4D029BB08
(57)【要約】
【課題】曝気撹拌機を使用しながら曝気量と流速のバランスを好適に制御することが可能な排水処理システムを提供する。
【解決手段】曝気撹拌機14の下流側の好気性水域22と、好気性水域の終端から曝気撹拌機に至る無酸素水域24とを形成したオキシデーションディッチ法により排水処理を行うシステムにおいて、無終端水路の幅が狭くなるように設置され、水流の抵抗となると共に、水流を発生させる撹拌羽根40を備えた縦型水流発生機16と、曝気撹拌機が低回転になると縦型水流発生機が高回転となり、曝気撹拌機が高回転になると縦型水流発生機が低回転又は逆回転となるように流速を制御する制御手段18とから構成されている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無終端水路に酸素を供給すると共に、循環水流を発生させる曝気撹拌機を備え、前記曝気撹拌機の下流側の好気性水域と、前記好気性水域の終端から前記曝気撹拌機に至る無酸素水域とを形成したオキシデーションディッチ法により排水処理を行う排水処理システムにおいて、
前記無終端水路の幅が狭くなるように設置され、水流の抵抗となると共に、水流を発生させる撹拌羽根を備えた縦型水流発生機と、
前記曝気撹拌機が低回転になると前記縦型水流発生機が高回転となり、前記曝気撹拌機が高回転になると前記縦型水流発生機が低回転又は逆回転となるように流速を制御する制御手段とから構成されていることを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
無終端水路に酸素を供給すると共に、循環水流を発生させる曝気撹拌機を備え、前記曝気撹拌機の下流側の好気性水域と、前記好気性水域の終端から前記曝気撹拌機に至る無酸素水域とを形成したオキシデーションディッチ法により排水処理を行う排水処理システムにおいて、
前記無終端水路の幅が狭くなるように設置され、水流の抵抗となると共に、水流を発生させる撹拌羽根を備えた縦型水流発生機と、
前記好気性水域における上流側と下流側とに、循環水中の溶存酸素濃度を測定する上流側溶存酸素計及び下流側溶存酸素計をそれぞれ設けると共に、前記上流側溶存酸素計及び前記下流側溶存酸素計で測定した溶存酸素濃度に基づいて、前記曝気撹拌機による酸素供給量及び前記縦型水流発生機による循環水の流速を制御する制御手段を設け、
前記制御手段は、前記曝気撹拌機が低回転になると前記縦型水流発生機が高回転となり、前記曝気撹拌機が高回転になると前記縦型水流発生機が低回転又は逆回転となるように流速を制御することを特徴とする排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシデーションディッチ法を用いた排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1~3には、オキシデーションディッチ法を用いた排水処理システムが開示されている。
【0003】
このオキシデーションディッチ法による排水処理システムは、無終端水路に酸素を供給すると共に、循環水流を発生させる曝気撹拌機を備え、この曝気撹拌機の下流側の好気性水域と、この好気性水域の終端から曝気撹拌機に至る無酸素水域とを形成するように運転されている。例えば、好気性水域では、BODの除去や硝化等が行われ、無酸素水域では、脱窒が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-191599号公報
【特許文献2】特開昭60-71091号公報
【特許文献3】特許第5674327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、曝気撹拌機において、循環水中の溶存酸素濃度を高くするために、曝気撹拌機の回転数を高くすると循環水流の流速が早くなり、好気性水域が多くなる(無酸素水域が無くなる)。一方、循環水中の溶存酸素濃度を低くするために、曝気撹拌機の回転数を低くすると循環水流の流速が遅くなり、汚泥が動かなくなる(沈殿)。そして、曝気撹拌機における曝気量と循環水流の流速とを別々に制御することが困難であるため、エネルギ効率の良い2点DO制御方法を導入することが困難となる問題がある。
【0006】
このような問題を解決するため、池底に設置した散気装置と、水流発生装置とからなる排水処理システムが導入されている。
【0007】
しかしながら、既存の曝気撹拌機を備えた排水処理システムを、散気装置及び水流発生装置に変更した場合、以下のような他の問題がある。
【0008】
すなわち、曝気撹拌機、特に、水路の幅方向に設置された横型曝気撹拌機は、大型なため、屋内に設置した場合には、その撤去に時間がかかり、排水処理システムの運転を長期間停止する必要がある。また、散気装置は、ゴム部材を使用しているため、長期間の耐久性に欠け、また、池底に設置するためそのメンテナンス作業に困難を伴うという問題がある。
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、曝気撹拌機を使用しながら曝気量と流速のバランスを好適に制御することが可能な排水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、無終端水路に酸素を供給すると共に、循環水流を発生させる曝気撹拌機を備え、前記曝気撹拌機の下流側の好気性水域と、前記好気性水域の終端から前記曝気撹拌機に至る無酸素水域とを形成したオキシデーションディッチ法により排水処理を行う排水処理システムにおいて、前記無終端水路の幅が狭くなるように設置され、水流の抵抗となると共に、水流を発生させる撹拌羽根を備えた縦型水流発生機と、前記曝気撹拌機が低回転になると前記縦型水流発生機が高回転となり、前記曝気撹拌機が高回転になると前記縦型水流発生機が低回転又は逆回転となるように流速を制御する制御手段とから構成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、無終端水路に酸素を供給すると共に、循環水流を発生させる曝気撹拌機を備え、前記曝気撹拌機の下流側の好気性水域と、前記好気性水域の終端から前記曝気撹拌機に至る無酸素水域とを形成したオキシデーションディッチ法により排水処理を行う排水処理システムにおいて、前記無終端水路の幅が狭くなるように設置され、水流の抵抗となると共に、水流を発生させる撹拌羽根を備えた縦型水流発生機と、前記好気性水域における上流側と下流側とに、循環水中の溶存酸素濃度を測定する上流側溶存酸素計及び下流側溶存酸素計をそれぞれ設けると共に、前記上流側溶存酸素計及び前記下流側溶存酸素計で測定した溶存酸素濃度に基づいて、前記曝気撹拌機による酸素供給量及び前記縦型水流発生機による循環水の流速を制御する制御手段を設け、前記制御手段は、前記曝気撹拌機が低回転になると前記縦型水流発生機が高回転となり、前記曝気撹拌機が高回転になると前記縦型水流発生機が低回転又は逆回転となるように流速を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、曝気撹拌機と縦型水流発生機により曝気量と流速のバランスを好適に制御することができるので、既存の曝気撹拌機を撤去する必要なく、撤去の時間や排水処理装置を長い期間止める必要がない。また、散気装置を使用しないため、耐久性やメンテナンス性が向上する。そして、曝気量と流速のバランスを好適に制御することができるので、エネルギ効率の良い2点DO制御方法を導入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の実施形態に係る排水処理システムの模式構造図である。
図1B図1AのB-B線に沿った横軸型曝気撹拌機の模式断面図である。
図1C図1AのC-C線に沿った水流抵抗縦型水流発生機の模式断面図である。
図2】制御手段による横軸型曝気撹拌機の回転数制御と、水流抵抗縦型水流発生機の回転数制御との一例を示すグラフである。
図3図2に示す設定値が変動した場合のグラフである。
図4】本発明の他の実施形態に係る排水処理システムの模式構造図である。
図5図4に示す排水処理システムのブロック構成図である。
図6】制御手段における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】ディッチ内のDO減少直線が適正な状態となったときを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1Aに示されるように、本発明の実施形態に係る排水処理システム10は、ディッチ(オキシデーションディッチ槽)12と、横軸型曝気撹拌機14と、水流抵抗縦型水流発生機16と、制御手段18とを備えて構成されている。なお、以下の説明では、「横軸型曝気撹拌機14」を「曝気撹拌機14」と、「水流抵抗縦型水流発生機16」を「水流発生機16」という。
【0016】
ディッチ12は、平面視して略長円形状を呈し、一側通路と他側通路を区画する隔壁19を間にした無終端水路が構成されている。この無終端水路は、例えば、一側直線通路20aと、一側直線通路の終端に連続し円弧状に湾曲する一側コーナー通路20bと、一側コーナー通路20bの終端に連続し、一側直線通路20aと略平行に延出する他側直線通路20cと、この他側直線通路20cの終端に連続し円弧状に湾曲して一側直線通路20aの始端に連続する他側コーナー通路20dとから構成されている。
【0017】
また、無終端水路内には、図1Aの白抜き矢印方向に沿って流れる循環水流が形成されている。なお、本実施形態では、隔壁19を用いて無終端水路を構成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、隔壁19に代替して図示しない空間部を周回する無終端水路を構成してもよい。
【0018】
ディッチ12内に形成される循環水流によって、曝気撹拌機14から所定の距離までを好気性水域22とし、この好気性水域22の終端から曝気撹拌機14までを無酸素水域24としている。また、好気性水域22の下流部分には、最終沈殿池26への処理水流出経路28が設けられている。さらに、無酸素水域24の上流部分には、最終沈殿池26からの汚泥が返送される返送汚泥経路30、及び、原水が流入される原水流入経路32がそれぞれ設けられている。
【0019】
曝気撹拌機14は、無終端水路の幅方向に沿って長尺な「横軸型」によって構成されている。また、曝気撹拌機14は、無終端水路の幅方向に沿って延在し、且つ、図示しないモータによって回転可能なロータ34を有する(図1B参照)。このロータ34の表面には、循環水流の水面を叩いて空気を供給する多数のフィン36が設けられている(図1B参照)。
【0020】
さらに、曝気撹拌機14は、無終端水路に対して酸素を供給すると共に、循環水流を発生させることで、好気性水域22を形成するものである。なお、本実施形態において、曝気撹拌機14は、無終端水路の幅方向に沿って長尺な「横軸型」によって構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、図示しない縦軸型曝気撹拌機又は斜軸型撹拌機を用いてもよい。
【0021】
水流発生機16は、無終端水路の幅が狭くなるように、一側コーナー通路20bの内側に配置されている。また、水流発生機16は、円筒体38と、多数の撹拌羽根40と、図示しない軸受と、図示しない駆動手段とを備えて構成されている。円筒体38は、その軸線が略鉛直上下方向に沿って設けられている。各撹拌羽根40は、円筒体38の外周面に突設され、水流を発生させるものである。軸受は、円筒体38の上部に突設した回転軸を回転可能に軸支するものである。駆動手段は、例えば、モータからなり、回転軸を回転駆動するものである。
【0022】
円筒体38を含む撹拌羽根40の直径は、水路幅の1/2から1/3の割合を占め、循環水流の抵抗となるように構成されている。すなわち、曝気撹拌機14からの水流は、水流発生機16によって減速される。これにより、曝気撹拌機14の水流の流速は、水流の抵抗となる水流発生機16により常に減速側に作用するため、流速を容易に制御することができる。なお、本実施形態では、水流発生機16が一側コーナー通路20bの中央に配置されているがこれに限定されるものではなく、例えば、他側直線通路20cに配置するようにしてもよい。
【0023】
制御手段18は、図示しない各センサによって曝気撹拌機の回転数(回転速度)を検知すると共に、水流発生機16の回転数(回転速度)を検知する。制御手段18は、各センサから出力される検知信号に基づいて、曝気撹拌機14の回転数(回転速度)及び水流発生機16の回転数(回転速度)をそれぞれ制御する。例えば、好気性水域22の溶存酸素濃度が設定値となるように曝気撹拌機14の回転数を制御し、これに連動して、水流発生機16の回転数を制御するようになっている。
【0024】
本実施形態に係る排水処理システム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0025】
原水流入経路32からディッチ12に流入した原水は、曝気撹拌機14及び水流発生機16で形成された循環水流によって返送汚泥経路30から流入した汚泥と共に、ディッチ12内を循環する。また、曝気撹拌機14から供給される酸素を溶存させた好気性水域22と、溶存酸素が消費された後の無酸素水域24でそれぞれ処理されることにより、有機物や窒素が除去されて処理水流出経路28から最終沈殿池26に流出する。最終沈殿池26で汚泥から分離した処理水は、処理水流出経路42から流出される。さらに、沈殿した汚泥は、その一部が余剰汚泥として汚泥抜出経路から抜き取られ、その残部が返送汚泥経路30を経てディッチ12内に返送される。
【0026】
本実施形態において、制御手段18は、循環水流の負荷変動(溶存酸素濃度の変動)に対して、曝気撹拌機14の回転数が低回転になると水流発生機16の回転数が高回転となるように制御すると共に、曝気撹拌機14の回転数が高回転になると水流発生機16の回転数が低回転又は逆回転となるように流速を制御するようになっている。
【0027】
例えば、図2のグラフに示されるように、それぞれの上限の最高回転数を100%出力として、曝気撹拌機14の出力が50%の時、水流発生機16の出力を30%に制御する(破線D1参照)。また、曝気撹拌機14の出力が0%の時(停止時)、水流発生機16の出力を80%に制御する(破線D2参照)。さらに、曝気撹拌機14の出力が80%の時、水流発生機16の出力を0%(停止)に制御する(破線D3参照)。さらにまた、曝気撹拌機の出力が100%の時、水流発生機16の出力を-20%(逆回転)となるように制御する(破線D4参照)。このように、本実施形態では、溶存酸素濃度の変動により曝気撹拌機14の回転数が変動し、その曝気撹拌機14の回転数に対して水流発生機16の回転数が反比例するように制御される。
【0028】
これにより、本実施形態では、好気性水域22の溶存酸素濃度が設定値よりも高く、曝気撹拌機14の回転数を下げても水流発生機16の回転数が上がるので、汚泥が沈殿することを好適に回避することができる。また、好気性水域22の溶存酸素濃度が設定値よりも低く、曝気撹拌機14の回転数を上げても水流発生機16の回転数が下がるか、又は、停止(逆回転)するので、好気性水域22が無酸素水域24まで広がることがなく、良好な好気性水域22と無酸素水域24とが調和された状態で保持される。
【0029】
本実施形態において、水流発生機16は、水流抵抗となるため、好気性水域22と無酸素水域24との境目に配置することが好ましく、曝気撹拌機14からディッチ12の1/2以内が最適である。なお、例えば、ディッチ12内に曝気撹拌機14を2機配置している場合には、一方の曝気撹拌機14と他方の曝気撹拌機14との中間に水流発生機16、16を2機配置することが好ましく、曝気撹拌機14からディッチ12の1/4以内が最適である。
【0030】
また、水流発生機16は、縦型であるため、水路断面の水面から水底を塞ぐことができ、水路抵抗とすることができる。そして、水流発生機16を池底に設置することが不要であるため、池に水を張った状態でも設置することが可能である。
【0031】
本実施形態に係る排水処理システム10は、既存の曝気撹拌機14をそのまま使用しても、曝気量と水流とをそれぞれ別個に制御することができるため、散気装置と水流発生装置とに変更する必要が無く、撤去の時間や排水処理システムを長期間停止させることが不要となる。なお、本実施形態では、散気装置を使用しないため、耐久性やメンテナンス性をそれぞれ向上させることができる。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態に係る排水処理システム10aについて説明する。なお、前記実施形態の同一の構成要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
他の実施形態に係る排水処理システム10aでは、好気性水域22において、その上流側と下流側とに循環水中の溶存酸素濃度を測定(検出)する上流側溶存酸素計(第1DO計)DO1と下流側溶存酸素計(第2DO計)DO2とがそれぞれ配置されている点で前記実施形態と相違している(図4参照)。
【0034】
この第1DO計及び第2DO計は、曝気撹拌機14及び水流発生機16をそれぞれ制御するための溶存酸素濃度を測定(検出)するためのものである。図4に示されるように、第1DO計は、曝気撹拌機14の直後(下流側)に配置されている。第2DO計は、第1DO計の下流側であって、好気性水域22の終端近傍に配置されている。
【0035】
図5のブロック構成図に示されるように、第1DO計の測定値(上流側検出信号)及び第2DO計の測定値(下流側検出信号)は、制御手段18にそれぞれ入力される。制御手段18は、各測定値(上流側検出信号及び下流側検出信号)を所定の手順で処理することにより、曝気撹拌機14と水流発生機16とにそれぞれ制御信号が出力され、循環水の流速や酸素供給量が適正な範囲となるように制御される。また、酸素を供給する曝気撹拌機14は、酸素供給量に比例して水流の流速が変化するため、水流発生機16は、曝気撹拌機14の流速に対して反比例する制御が行われる。
【0036】
次に、2点DO制御について詳細に説明する。
図6は、制御手段における処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートにおける判断記号では、下向き矢印が[Yes]を示し、横向き矢印が[No]を示している。以下、このフローチャートと、図6に示されるDO減少直線とを参照して運転方法の一例を説明する。
【0037】
先ず、図7は、流入水の負荷(水質及び流量)に対して適正な制御が行われ、ディッチ12内のDO減少直線が適正な状態となった場合を示すものである。この場合、ディッチ長さに対して曝気点から5%の位置に設定した第1測定点における第1DO計が測定したDO値(DO1)は、予め設定された上流側設定値に対する上限値(DO1H)としての5.0mg/Lと、下限値(DO1L)としての4.0mg/Lとの範囲内に収まる状態となっている(図7参照)。
【0038】
一方、ディッチ長さに対して曝気点から40%の位置に設定した第2測定点における第2DO計が測定したDO値(DO2)は、予め設定された下流側設定値に対する上限値(DO2H)としての1.5mg/Lと、下限値(DO2L)としての0.5mg/Lとの範囲内に収まる状態となっている(図7参照)。
【0039】
従って、好気性水域22におけるDO減少直線は、直線L1と直線L2との間に位置する状態となり(図7参照)、ディッチ12における好気性水域22と無酸素水域24とのバランスが適正に保持された状態となっている。このとき、制御手段18では、図6に示すフローチャートに基づいた処理が行われている。
【0040】
先ず、ステップS101では、第1DO計が測定(検出)したDO1の値と、上流側上限値DO1Hとが比較され、DO1の値が上流側上限値DO1Hを下回っているか否かが判断される。ステップS101において、DO1の値が上流側上限値DO1Hを下回っていると判断された場合(Yes)、ステップS102に進む。
【0041】
また、ステップS102では、第1DO計が測定(検出)したDO1の値と、上流側下限値DO1Lとが比較され、DO1の値が上流側下限値DO1Lを超えているか否かが判断される。ステップS102において、DO1の値が上流側下限値DO1Lを超えていると判断された場合(Yes)、ステップS103に進む。
【0042】
さらに、ステップS103では、第2DO計が測定(検出)したDO2の値と、下流側上限値DO2Hとが比較され、DO2の値が下流側上限値DO2Hを下回っているか否かが判断される。ステップS103において、DO2の値が下流側上限値DO2Hを下回っていると判断された場合(Yes)、ステップS104に進む。
【0043】
さらにまた、ステップS104では、第2DO計が測定(検出)したDO2の値と、下流側下限値DO2Lとが比較され、DO2の値が下流側下限値DO2Lを超えているか否かが判断される。ステップS104において、DO2の値が下流側下限値DO2Lを超えていると判断された場合(Yes)、ステップS101に戻る。
【0044】
通常の状態では、このステップS101からステップS104までが適当な時間間隔で繰り返された状態となる(ステップS101→ステップS102→ステップS103→ステップS104→ステップS101)。上流側測定値であるDO1の値と、下流側測定値であるDO2の値とが図7に示される直線L1と直線L2との間の範囲を外れない限り、この通常の状態が継続される。
【0045】
このような通常の状態において、流入水の負荷が変化し、ステップS1でDO1の値が上流側上限値DO1Hを下回っていない、すなわち、第1DO計が測定(検出)したDO1の値が上流側上限値DO1Hよりも高いと判断された場合(DO1>DO1H、ステップS101でNo)、ステップS105に進む。
【0046】
ステップS105では、第1測定点での溶存酸素量が多い状態であるから曝気量を減少させる制御が行われる。具体的には、曝気撹拌機14の回転数を下げて曝気量を減少させる。これに伴って曝気撹拌機14の流速も下がるので、水流発生機16の回転数を上げるように制御する。
【0047】
これとは逆に、ステップS102でDO1の値が上流側下限値DO1Lを超えていない、すなわち、第1DO計が測定(検出)したDO1の値が上流側下限値DO1Lを超えていないと判断された場合(DO1<DO1L、ステップS102でNo)、ステップS106に進む。
【0048】
ステップS106では、第1測定点での溶存酸素量が少ない状態であるから曝気量を増大させる制御が行われる。具体的には、曝気撹拌機14の回転数を上げて曝気量を増大させる。これに伴って曝気撹拌機14の流速も上がるので、水流発生機16の回転数を下げるように制御する。
【0049】
また、ステップS103でDO2の値が下流側上限値DO2Hを下回っていない、すなわち、第2DO計が測定(検出)したDO2の値が下流側上限値DO2Hよりも高いと判断された場合(DO2>DO2H、ステップS103でNo)、ステップS107に進む。
【0050】
ステップS107では、第2測定点での溶存酸素量が多く、好気性水域22が下流側に延びている状態を示しているため、循環水の流速を減少させる制御が行われる。具体的には、水流発生機16の回転数を下げて循環水の流速を減少させる。この場合、図3のDOH(DO2が高い場合)が示すように、回転数の反比例直線は、設定値から左側にシフトする。
【0051】
さらに、ステップS104でDO2の値が下流側下限値DO2Lを超えていない、すなわち、第2DO計が測定(検出)したDO2の値が下流側下限値DO2Lよりも低いと判断された場合(DO2<DO2L、ステップS104でNo)、ステップS108に進む。
【0052】
ステップS108では、第2測定点において好気性水域22が十分に形成されていない状態を示しているため、循環水の流速を増大させる制御が行われる。具体的には、水流発生機16の回転数を上げて循環水の流速を増加させる制御が行われる。この場合、図3のDOL(DO2が低い場合)が示すように、回転数の反比例直線は、設定値から右側にシフトする。
【0053】
このように、他の実施形態において、エネルギ効率の良い2点DO制御方法を導入することができる。
【符号の説明】
【0054】
10、10a 排水処理システム
12 ディッチ
14 横軸型曝気撹拌機
16 水流抵抗縦型水流発生機
18 制御手段
22 好気性水域
24 無酸素水域
40 撹拌羽根
第1DO計 上流側溶存酸素計
第2DO計 下流側溶存酸素計
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7