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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150105
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】3Dプリンタ用シリンジの温調装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20241016BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241016BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241016BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20241016BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20241016BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/209
B29C64/295
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063359
(22)【出願日】2023-04-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔展示日〕 証明書記載の一覧のとおり 〔展示会名、開催場所〕 証明書記載の一覧のとおり 〔ウェブサイトの掲載日、アドレス〕 証明書記載の一覧のとおり 〔発行日、配布開始日〕 令和4年11月8日 〔配布物〕 別紙のとおり
(71)【出願人】
【識別番号】594034005
【氏名又は名称】ホッティーポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】堀田 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】田鍋 史生
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA45
4F213AP05
4F213AR06
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
4F213WL74
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】シリンジに充填されている液状シリコーンゴムの温度を調節し、材料の良好な吐出性を確保する。
【解決手段】
シリンジ12に充填された液状シリコーンゴムをステージS上に吐出し、吐出された液状シリコーンゴムを硬化させることにより、積層造形を実施する3Dプリンタ1に装着され、シリンジ12に充填されている液状シリコーンゴムの温度を調節する3Dプリンタ用シリンジの温調装置101であって、シリンジ12を収容するシリンジ保持部111と、シリンジ保持部111に装着され、シリンジ保持部111に収容されているシリンジ12を介して液状シリコーンゴムを加熱または冷却する温度調節部112とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジに充填された液状シリコーンゴムをステージ上に吐出し、吐出された前記液状シリコーンゴムを硬化させることにより、積層造形を実施する3Dプリンタに装着され、前記シリンジに充填されている前記液状シリコーンゴムの温度を調節する3Dプリンタ用シリンジの温調装置であって、
前記シリンジを収容するシリンジ保持部と、
前記シリンジ保持部に装着され、前記シリンジ保持部に収容されている前記シリンジを介して前記液状シリコーンゴムを加熱または冷却する温度調節部とを備えることを特徴とする3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項2】
前記液状シリコーンゴムは、紫外線硬化液状シリコーンゴムであり、
前記3Dプリンタは、紫外線照射部を備え、
前記ステージ上に吐出された前記紫外線硬化液状シリコーンゴムは、前記紫外線照射部からの紫外線により硬化することを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項3】
前記液状シリコーンゴムは、熱硬化液状シリコーンゴムであり、
前記3Dプリンタは、加熱部を備え、
前記ステージ上に吐出された前記熱硬化液状シリコーンゴムは、前記加熱部からの熱により硬化することを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項4】
前記液状シリコーンゴムは、RTV液状シリコーンゴムであることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項5】
前記液状シリコーンゴムは、2液混合型の液状シリコーンゴムであり、混合後の前記液状シリコーンゴムが前記シリンジに充填されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項6】
前記温度調節部は、
前記シリンジに向かう空気の流れを形成する送風ファンと、
前記送風ファンにより形成される前記空気の流れの途中に配置され、前記空気を加熱または冷却する温調部本体とを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項7】
前記温調部本体は、
ペルチェ素子を備え、前記ペルチェ素子に流れる電流に応じて発熱または吸熱するサーモモジュールと、
前記サーモモジュールに付設され、前記サーモモジュールと前記空気との間における熱の移動を促進する伝熱器と、
前記シリンジまたはこれに充填されている前記液状シリコーンゴムの実際の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された温度の、前記シリンジまたは前記液状シリコーンゴムの目標温度に対する乖離量に基づき、前記乖離量を減少させるように前記温度調節部に対する操作量を設定する制御部とを備え、
前記制御部は、前記乖離量に基づくPID制御により、前記操作量を設定することを特徴とする、請求項6に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項8】
前記液状シリコーンゴムを0℃~80℃の温度に調節することを特徴とする、請求項7に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンタ用シリンジの温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンタとして、LAM(液体積層造形)方式のものが存在する。
【0003】
LAM方式の3Dプリンタは、シリンジに充填された液状造形材料を、圧力をかけてノズルからステージ上に吐出し、吐出された液状造形材料を適宜の方法により硬化させることで、積層造形を実施するものである。
【0004】
特許文献1には、2種以上の異種樹脂材料を別個のノズルから吐出して、積層造形を実施する3Dプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6734517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液状シリコーンゴムを材料とするLAM方式の3Dプリンタにより、造形材料として2液混合型の液状シリコーンゴムにより造形を行う場合に、混合後、シリンジに貯留されている間に室温下で硬化が進行し、液状シリコーンゴムの粘度が増大する場合がある。
粘度が増大すると、混合後の材料をノズルにより吐出することが困難となるため、混合後の材料を低温環境下に保管し、粘度の増大を抑制する措置が必要となり、造形が困難である、という不具合があった。
【0007】
他方で、室温下で硬化が進行する液状シリコーンゴムは、2液混合型以外にも存在する。例えば、RTVシリコーンゴムは、1液型であっても室温下で硬化が進行するものもあるため、低温環境下での管理が必要となる。
【0008】
さらに、2液混合型の液状シリコーンゴムにも種々のタイプのものが存在し、タイプに応じて粘度も相違する。室温未満の低温または室温程度の温度では粘度が高く、ノズルによる吐出が困難なものも存在し、そのような材料にあっては、逆に温度を上昇させて粘度を低下させる必要がある。
【0009】
このような実情に鑑み、本発明は、シリンジに充填されている液状シリコーンゴムの温度を調節し、粘度を適切な範囲に維持することで、材料の良好な吐出性を確保することのできる3Dプリンタ用シリンジの温調装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明にあっては、シリンジに充填された液状シリコーンゴムをステージ上に吐出し、吐出された前記液状シリコーンゴムを硬化させることにより、積層造形を実施する3Dプリンタに装着され、前記シリンジに充填されている前記液状シリコーンゴムの温度を調節する3Dプリンタ用シリンジの温調装置であって、前記シリンジを収容するシリンジ保持部と、前記シリンジ保持部に装着され、前記シリンジ保持部に収容されている前記シリンジを介して前記液状シリコーンゴムを加熱または冷却する温度調節部とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明にあっては、前記液状シリコーンゴムは、紫外線硬化液状シリコーンゴムであり、前記3Dプリンタは、紫外線照射部を備え、前記ステージ上に吐出された前記紫外線硬化液状シリコーンゴムは、前記紫外線照射部からの紫外線により硬化することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明にあっては、前記液状シリコーンゴムは、熱硬化液状シリコーンゴムであり、前記3Dプリンタは、加熱部を備え、前記ステージ上に吐出された前記熱硬化液状シリコーンゴムは、前記加熱部からの熱により硬化することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明にあっては、前記液状シリコーンゴムは、RTV液状シリコーンゴムであることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明にあっては、前記液状シリコーンゴムは、2液混合型の液状シリコーンゴムであり、混合後の前記液状シリコーンゴムが前記シリンジに充填されることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明にあっては、前記温度調節部は、前記シリンジに向かう空気の流れを形成する送風ファンと、前記送風ファンにより形成される前記空気の流れの途中に配置され、前記空気を加熱または冷却する温調部本体とを備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明にあっては、前記温調部本体は、ペルチェ素子を備え、前記ペルチェ素子に流れる電流に応じて発熱または吸熱するサーモモジュールと、前記サーモモジュールに付設され、前記サーモモジュールと前記空気との間における熱の移動を促進する伝熱器と、前記シリンジまたはこれに充填されている前記液状シリコーンゴムの実際の温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部により検出された温度の、前記シリンジまたは前記液状シリコーンゴムの目標温度に対する乖離量に基づき、前記乖離量を減少させるように前記温度調節部に対する操作量を設定する制御部とを備え、前記制御部は、前記乖離量に基づくPID制御により、前記操作量を設定することを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明にあっては、前記液状シリコーンゴムを0℃~80℃の温度に調節することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1及び5に記載の発明によれば、液状シリコーンゴムが充填されたシリンジは、シリンジ保持部に収容され、シリンジに充填されている液状シリコーンゴムは、シリンジ保持部に装着された温度調節部により、シリンジを介して加熱または冷却される。
これにより、材料である液状シリコーンゴムの温度を管理し、材料の粘度を適切な範囲に維持することが可能となる。よって、シリンジに充填されている液状シリコーンゴムの粘度が増大して、ノズルによる吐出が困難となる事態を回避することができる。
【0019】
特に、造形材料として2液混合型の液状シリコーンゴムを使用した場合には、シリンジに充填された状態で室温環境下において硬化が進行する場合があり、加圧した場合であってもノズルから円滑に吐出せず、吐出量が低下し、安定した造形ができなくなる、という問題があったが、本発明に係る温調装置によりシリンジ内の2液混合型シリコーンゴムを所定温度(10℃以下、例えば、4℃)に冷却することにより、ノズルからの円滑な吐出を可能とし、安定した造形作業を可能とすることができる。
【0020】
また、同様に1液型の液状シリコーンゴムであっても、室温下では粘度が高く、吐出が困難である種類の液状シリコーンゴムもあるが、このような場合には、温度調節により加熱することにより粘度を低下させ、ノズルにより良好に吐出することが可能となる。
さらに、2液混合型シリコーンゴムにも様々なグレードがあり、常温で粘度が100mPa・sのものや、20000mPa・sのものもある。このような様々な種類の2液混合型シリコーンゴムであって、低温や室温程度であると粘度が高すぎて吐出できない場合であっても、加温して温度を上昇させることにより粘度を低下させ、ノズルからの吐出を容易にすることができる。
【0021】
さらに、一般的に、3Dプリンターによる造形作業は、インジェクション成型やプレス成型の場合とは異なり、液状の造形材料を積層して硬化させることにより造形することから所定の時間を要するという欠点を有しているところ、本発明に係る温調装置を使用することにより、造形材料に応じた適切な温度調節を行うことにより、造形材料のいかんにかかわらずノズルからの吐出量を向上、増大させ、造形作業に要する作業時間を低減し、高速で造形作業を行うことが可能となる。
また、粘度の低いシリコーンゴムに無機物等の添加材を混合させて造形材料として使用するような場合に、粘度が低い場合には遠心分離機で脱泡処理を行った場合に、添加材のみが集まってしまう、という不具合が生ずるが、本発明に係る温調装置を使用して加熱して粘度を高めることにより安定した造形を行うことも可能となる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、紫外線硬化液状シリコーンゴムを材料とする3Dプリンタにおいて、材料の温度管理を適切に行うことにより、ノズルからの円滑な吐出を確保することが可能となる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、熱硬化液状シリコーンゴムを材料とする3Dプリンタにおいて、材料に応じた適切な温度管理により、ノズルからの円滑な吐出を確保することが可能となる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、RTV(常温硬化型)液状シリコーンゴムを材料とする3Dプリンタにおいて、RTV液状シリコーンゴムは、常温硬化型であることから、室内温度環境下においてシリンジ内で硬化が開始する場合もあるが、本発明に係る温調装置を使用して適切に冷却することにより、RTV液状シリコーンゴムの常温環境下における硬化を防止し、円滑にノズルから吐出させて造形作業を行うことが可能となる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、温調部本体および送風ファンを備える温度調節部により、シリンジに向かう温風または冷風が形成され、シリンジに充填されている液状シリコーンゴムは、この温風または冷風により温度が調節される。これにより、液状シリコーンゴムの温度を良好に調節し、ノズルからの円滑な吐出性を確保することが可能となる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、サーモモジュールに生じた熱が伝熱器を介して伝達され、周囲の空気に放出される一方、空気の有する熱が伝熱器を介して伝達され、サーモモジュールに吸収される。これにより、シリンジに向かう流れを形成する空気を効率よく加熱または冷却し、液状シリコーンゴムの温度を迅速に調節することが可能となる。ペルチェ素子を備えるサーモモジュールを採用することで、液状シリコーンゴムの温度管理を細かく調節することが可能となる。
【0027】
さらに、シリンジまたは液状シリコーンゴムの実際の温度が検出され、実際の温度の目標温度に対する乖離量に基づき、これを減少させるように温度調節部に対する操作量が設定される。これにより、液状シリコーンゴムの温度を目標温度に近付け、ノズルからのより良好な吐出性を確保することが可能となる。操作量の設定にPID制御を採用することで、操作量をより良好に設定することが可能となる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、液状シリコーンゴムを0℃~80℃の温度に調節することで、材料の粘度を適切な範囲に維持し、ノズルからの吐出性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタの概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタに使用されるシリンジ及び、シリンジの温調に使用される温調装置を概略的に示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタに使用される温調装置を示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタに使用される温調装置の正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタに使用される温調装置の平面図である。
図6図6(a)は同上温調装置の内部構造を示す概略図であり、図6(b)は伝熱器及びサーモモジュールを示す説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタに使用される温調装置の制御系の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
本実施形態に係る3Dプリンタ10は、造形材料に液状シリコーンゴムを用い、LAM(液体積層造形)方式により三次元造形物を作成するように構成されている。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る3Dプリンタ10の基本構成は、液状シリコーンゴムMを射出するディスペンサ部20と、ディスペンサ部20から射出された液状シリコーンゴムMが積層されるステージ部30と、ディスペンサ部20とステージ部30とを互いに相対的に移動させる移動機構部40と、ステージ部30に射出された液状シリコーンゴムMに紫外線UVを照射する紫外線照射部50と、プリンタ本体60と、これら全てを覆う筐体70とを有しており、筐体70は紫外線を遮蔽するように構成されている。
【0033】
プリンタ本体60は、3Dプリンタ10の底部を構成する基部61と、基部61から上方に延びる二つの支持部62、63とを有する。ディスペンサ部20は一方の支持部62に支持されており、紫外線照射部50は他方の支持部63に支持されている。ステージ部30は、基部61上に設けられている。
【0034】
ディスペンサ部20は、液状シリコーンゴムMを収容したシリンジ12と、シリンジ12を交換可能に保持しうるシリンジ固定部22と、シリンジ固定部22に保持(装着)されたシリンジ21から液状シリコーンゴムMを射出させる圧縮空気供給部(材料射出手段)23とを有する。
本実施の形態にあっては、液状シリコーンゴムMは、いわゆる2液混合型のシリコーンゴムであって、予め2液が混合された状態でシリンジ21に充填されている。
【0035】
シリンジ固定部22は、昇降機構41を介して支持部62に支持されている。昇降機構41は、シリンジ固定部22を上下方向(矢印Zで示す方向)に移動させる。
【0036】
圧縮空気供給部23は、支持部62に固定して設けられている。圧縮空気供給部23は、圧縮空気を吐出する圧縮空気吐出機構23aと、圧縮空気吐出機構23aから吐出された圧縮空気を、シリンジ固定部22に配置されたシリンジ21に供給するための圧縮空気供給管23bと、を有している。
【0037】
本実施の形態にあっては、図1に示すように、上記構成に係る3Dプリンタ10において、シリンジ12に充填されている液状シリコーンゴムの温度を調整する温調装置101がシリンジ固定部22に固定された状態で配置されており、シリンジ12は温調装置101内部に収納される形で配設されている。
【0038】
図2~5に示すように、温調装置101は全体略直方体箱状に形成され、シリンジ固定部22に固定されるシリンジ保持部111と、シリンジ保持部111の前面部に設けられた温度調節部112を備えている。
本実施の形態にあっては、通常室温25℃において、0℃~80℃の間で冷却又は加温することにより、シリンジ内の液状シリコーンゴムの温度調節を行うことができるように構成されている。
【0039】
温調装置101は、本実施の形態にあっては、幅寸法110mm、高さ寸法155mmに形成され、支持部111の内部には、上下方向に沿って貫通して設けられたシリンジ収納空隙部111aが設けられており、内部に50ml容量のシリンジ12を、上方より挿入して収納固定できるように構成されている。
【0040】
支持部111の前面部に設けられた温度調節部112は、シリンジ保持部111を加温又は減温し、その結果、シリンジ収納空隙部111a内に固定され、液状シリコーンゴムが充填されたシリンジ12を加熱又は冷却するように構成されている。
【0041】
温度調節部112は空冷式電子冷却方式であり、加熱又は冷却により発生する熱を、適宜、放熱するための送風ファン112bを備えている。温調部本体112aは、サーモモジュール1121および伝熱器1122を備えている。サーモモジュール1121は、ペルチェ素子を備え、ペルチェ素子に流れる電流に応じて発熱または吸熱する。
【0042】
伝熱器1122は、サーモモジュール1121に付設され、サーモモジュール1121と空気との間における熱の移動を促進する。伝熱器1122は、厚さ方向に互いに隙間を空けて配置された複数の薄型放熱板を備える。
【0043】
送風ファン112bは、図示しないモータにより駆動される羽根1123を備える。
【0044】
温調装置101は、コントローラ201を備えるとともに、シリンジ12に充填されている液状シリコーンゴムの実際の温度を検出する温度センサ211を備える。本実施形態では、温度センサ211によりシリンジ12の温度を検出し、シリンジ12の温度を液状シリコーンゴムの温度として代用する。
【0045】
図6に示すように、コントローラ201は、温度センサ211により検出された温度を帰還させ、PID制御により温調装置101に対する入力量uを設定する。
【0046】
具体的には、液状シリコーンゴムの目標温度Trが設定され、減算部201aは、温調装置101の出力量である液状シリコーンゴムの温度Tyの、目標温度Trに対する乖離量eを算出する。
【0047】
PID制御器201bは、乖離量eをもとに、温調装置101に対する入力量u、つまり、温調部本体112aまたは送風ファン112bに対する操作量として設定される。この制御により得られる出力量Tyは、再度減算部201aへ戻され、同様の制御が繰り返し実行される。本実施の形態にあっては、目標温度Trは、材料である液状シリコーンゴムの種類や実際の室温等に応じて0℃~80℃の範囲で設定可能である。
【0048】
このように、本実施形態では、液状シリコーンゴムが充填されたシリンジ12は、シリンジ保持部111に収容され、シリンジ12に充填されている液状シリコーンゴムは、シリンジ保持部111に装着された温度調節部112により、シリンジ12を介して加熱または冷却される。
これにより、材料である2液混合型の液状シリコーンゴムの室温における硬化を防止し、液状シリコーンゴムの粘度を適切な範囲に維持し、ノズルから円滑に吐出させることが可能となる。
【0049】
さらに、室温下では粘度が高く、吐出が困難である種類の液状シリコーンゴムに関しては、加温させることにより粘度を低下させ、ノズル13により良好に吐出することが可能となる。
【0050】
即ち、造形材料として2液混合型の液状シリコーンゴムを使用した場合には、シリンジに充填された状態で室温環境下において硬化が進行する場合があり、加圧した場合であってもノズルから円滑に吐出せず、吐出量が低下し、安定した造形ができなくなる、という問題があったが、本実施の形態に係る温調装置101によりシリンジ内の2液混合型シリコーンゴムを所定温度(10℃以下、例えば、4℃)に冷却することにより、ノズルからの円滑な吐出を可能とし、安定した造形作業を可能とすることができる。
【0051】
また、同様に1液混合型の液状シリコーンゴムであっても、室温下では粘度が高く、吐出が困難である種類の液状シリコーンゴムもあるが、このような場合には、温度調節により加熱することにより粘度を低下させ、ノズルにより良好に吐出することが可能となる。
【0052】
さらに、一般的に、3Dプリンタによる造形作業は、インジェクション成型やプレス成型の場合とは異なり、液状の造形材料を積層して硬化させることにより造形することから所定の時間を要するという欠点を有しているところ、本発明に係る温調装置を使用することにより、造形材料に応じた適切な温度調節を行うことにより、造形材料のいかんにかかわらずノズルからの吐出量を向上、増大させ、造形作業に要する作業時間を低減し、高速で造形作業を行うことが可能となる。
【0053】
また、粘度の低いシリコーンゴムに無機物等の添加材を混合させて造形材料として使用するような場合に、粘度が低い場合には遠心分離機で脱泡処理を行った場合に、添加材のみが集まってしまう、という不具合が生ずるが、本発明に係る温調装置を使用して加熱して粘度を高めることにより安定した造形を行うことも可能となる。
【0054】
また、同様に1液型の液状シリコーンゴムであっても、室温下では粘度が高く、吐出が困難である種類の液状シリコーンゴムもあるが、このような場合には、温度調節により加熱することにより粘度を低下させ、ノズルにより良好に吐出することが可能となる。
【0055】
さらに、2液混合型シリコーンゴムにも様々なグレードがあり、常温で粘度が100mPa・sのものや、20000mPa・sのものもある。このような様々な種類の2液混合型シリコーンゴムであって、低温や室温程度であると粘度が高すぎて吐出できない場合であっても、加温して温度を上昇させることにより粘度を低下させ、ノズルからの吐出を容易にすることができる。
【0056】
以上の説明では、材料に2液混合型の液状シリコーンゴムを採用したが、1液型の液状シリコーンゴムを採用することも可能である。特に、RTVシリコーンゴムの場合には、本実施の形態に係る温調装置101を利用して冷却することにより硬化を防止し、円滑にノズルから吐出させ、造形作業を行うことが可能となる。
【0057】
本願発明の要旨の範囲内において適宜構成を変更することは可能であり、上記実施の形態には限定されない。例えば、シリンジの容積が50mlよりも大きくなる場合には、適宜、大型の温調装置を構成することができ、シリンジの大きさに適合させて形で温度調節を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
10…3Dプリンタ
12…シリンジ
13…ノズル
20 ディスペンサ部
22 シリンジ固定部
23 圧縮空気供給部
23a 圧縮空気吐出機構
23b 圧縮空気供給管
30 ステージ部
40 移動機構部
41 昇降機構
50 紫外線照射部
60 プリンタ本体
62 支持部
63 支持部
70 筐体
101…温調装置
111…支持部
111a…シリンジ収納空隙部
112…温度調節部
112a…温調部本体
112b…送風ファン
1121…サーモモジュール
1122…伝熱器
1123…羽根
201…コントローラ(制御部)
211…温度センサ(温度検出部)
M…液状シリコーンゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジに充填された液状シリコーンゴムをステージ上に吐出し、吐出された前記液状シリコーンゴムを硬化させることにより、積層造形を実施する3Dプリンタに装着され、前記シリンジに充填されている前記液状シリコーンゴムの温度を調節する3Dプリンタ用シリンジの温調装置であって、
前記シリンジを収容するシリンジ保持部と、
前記シリンジ保持部に装着され、前記シリンジ保持部に収容されている前記シリンジを介して前記液状シリコーンゴムを10℃以下マイナス10℃以上に冷却する温度調節部とを備え、
前記液状シリコーンゴムは、2液混合型の液状シリコーンゴムであり、混合後の前記液状シリコーンゴムが前記シリンジに充填されることを特徴とする3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項2】
前記液状シリコーンゴムは、紫外線硬化液状シリコーンゴムであり、
前記3Dプリンタは、紫外線照射部を備え、
前記ステージ上に吐出された前記紫外線硬化液状シリコーンゴムは、前記紫外線照射部からの紫外線により硬化することを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項3】
前記液状シリコーンゴムは、熱硬化液状シリコーンゴムであり、
前記3Dプリンタは、加熱部を備え、
前記ステージ上に吐出された前記熱硬化液状シリコーンゴムは、前記加熱部からの熱により硬化することを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項4】
前記液状シリコーンゴムは、RTV液状シリコーンゴムであることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項5】
前記温度調節部は、
前記シリンジに向かう空気の流れを形成する送風ファンと、
前記送風ファンにより形成される前記空気の流れの途中に配置され、前記空気を冷却する温調部本体とを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【請求項6】
前記温調部本体は、
ペルチェ素子を備え、前記ペルチェ素子に流れる電流に応じて発熱または吸熱するサーモモジュールと、
前記サーモモジュールに付設され、前記サーモモジュールと前記空気との間における熱の移動を促進する伝熱器と、
前記シリンジまたはこれに充填されている前記液状シリコーンゴムの実際の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された温度の、前記シリンジまたは前記液状シリコーンゴムの目標温度に対する乖離量に基づき、前記乖離量を減少させるように前記温度調節部に対する操作量を設定する制御部とを備え、
前記制御部は、前記乖離量に基づくPID制御により、前記操作量を設定することを特徴とする、請求項5に記載の3Dプリンタ用シリンジの温調装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンタ用シリンジの温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンタとして、LAM(液体積層造形)方式のものが存在する。
【0003】
LAM方式の3Dプリンタは、シリンジに充填された液状造形材料を、圧力をかけてノズルからステージ上に吐出し、吐出された液状造形材料を適宜の方法により硬化させることで、積層造形を実施するものである。
【0004】
特許文献1には、2種以上の異種樹脂材料を別個のノズルから吐出して、積層造形を実施する3Dプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6734517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液状シリコーンゴムを材料とするLAM方式の3Dプリンタにより、造形材料として2液混合型の液状シリコーンゴムにより造形を行う場合に、混合後、シリンジに貯留されている間に室温下で硬化が進行し、液状シリコーンゴムの粘度が増大する場合がある。
粘度が増大すると、混合後の材料をノズルにより吐出することが困難となるため、混合後の材料を低温環境下に保管し、粘度の増大を抑制する措置が必要となり、造形が困難である、という不具合があった。
【0007】
他方で、室温下で硬化が進行する液状シリコーンゴムは、2液混合型以外にも存在する。例えば、RTVシリコーンゴムは、1液型であっても室温下で硬化が進行するものもあるため、低温環境下での管理が必要となる。
【0008】
このような実情に鑑み、本発明は、シリンジに充填されている液状シリコーンゴムの温度を調節し、粘度を適切な範囲に維持することで、材料の良好な吐出性を確保することのできる3Dプリンタ用シリンジの温調装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明にあっては、 シリンジに充填された液状シリコーンゴムをステージ上に吐出し、吐出された前記液状シリコーンゴムを硬化させることにより、積層造形を実施する3Dプリンタに装着され、前記シリンジに充填されている前記液状シリコーンゴムの温度を調節する3Dプリンタ用シリンジの温調装置であって、前記シリンジを収容するシリンジ保持部と、前記シリンジ保持部に装着され、前記シリンジ保持部に収容されている前記シリンジを介して前記液状シリコーンゴムを10℃以下マイナス10℃以上に冷却する温度調節部とを備え、前記液状シリコーンゴムは、2液混合型の液状シリコーンゴムであり、混合後の前記液状シリコーンゴムが前記シリンジに充填されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明にあっては、前記液状シリコーンゴムは、紫外線硬化液状シリコーンゴムであり、前記3Dプリンタは、紫外線照射部を備え、前記ステージ上に吐出された前記紫外線硬化液状シリコーンゴムは、前記紫外線照射部からの紫外線により硬化することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明にあっては、前記液状シリコーンゴムは、熱硬化液状シリコーンゴムであり、前記3Dプリンタは、加熱部を備え、前記ステージ上に吐出された前記熱硬化液状シリコーンゴムは、前記加熱部からの熱により硬化することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明にあっては、前記液状シリコーンゴムは、RTV液状シリコーンゴムであることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明にあっては、前記温度調節部は、前記シリンジに向かう空気の流れを形成する送風ファンと、前記送風ファンにより形成される前記空気の流れの途中に配置され、前記空気を冷却する温調部本体とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明にあっては、前記温調部本体は、ペルチェ素子を備え、前記ペルチェ素子に流れる電流に応じて発熱または吸熱するサーモモジュールと、前記サーモモジュールに付設され、前記サーモモジュールと前記空気との間における熱の移動を促進する伝熱器と、前記シリンジまたはこれに充填されている前記液状シリコーンゴムの実際の温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部により検出された温度の、前記シリンジまたは前記液状シリコーンゴムの目標温度に対する乖離量に基づき、前記乖離量を減少させるように前記温度調節部に対する操作量を設定する制御部とを備え、前記制御部は、前記乖離量に基づくPID制御により、前記操作量を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び5に記載の発明によれば、2液型液状シリコーンゴムが充填されたシリンジは、シリンジ保持部に収容され、シリンジに充填されている液状シリコーンゴムは、シリンジ保持部に装着された温度調節部により、シリンジを介して冷却される。
【0016】
これにより、材料である2液型液状シリコーンゴムの温度を管理し、材料の粘度を適切な範囲に維持することが可能となる。よって、シリンジに充填されている2液型液状シリコーンゴムの粘度が増大して、ノズルによる吐出が困難となる事態を回避することができる。
【0017】
造形材料として2液混合型の液状シリコーンゴムを使用した場合には、シリンジに充填された状態で室温環境下において硬化が進行する場合があり、加圧した場合であってもノズルから円滑に吐出せず、吐出量が低下し、安定した造形ができなくなる、という問題があったが、本発明に係る温調装置によりシリンジ内の2液混合型シリコーンゴムを所定温度(10℃以下、例えば、4℃)に冷却することにより、ノズルからの円滑な吐出を可能とし、安定した造形作業を可能とすることができる。
【0018】
さらに、一般的に、3Dプリンターによる造形作業は、インジェクション成型やプレス成型の場合とは異なり、液状の造形材料を積層して硬化させることにより造形することから所定の時間を要するという欠点を有しているところ、本発明に係る温調装置を使用することにより、造形材料に応じた適切な温度調節を行うことにより、造形材料のいかんにかかわらずノズルからの吐出量を向上、増大させ、造形作業に要する作業時間を低減し、高速で造形作業を行うことが可能となる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、紫外線硬化液状シリコーンゴムを材料とする3Dプリンタにおいて、材料の温度管理を適切に行うことにより、ノズルからの円滑な吐出を確保することが可能となる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、熱硬化液状シリコーンゴムを材料とする3Dプリンタにおいて、材料に応じた適切な温度管理により、ノズルからの円滑な吐出を確保することが可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、RTV(常温硬化型)液状シリコーンゴムを材料とする3Dプリンタにおいて、RTV液状シリコーンゴムは、常温硬化型であることから、室内温度環境下においてシリンジ内で硬化が開始する場合もあるが、本発明に係る温調装置を使用して適切に冷却することにより、RTV液状シリコーンゴムの常温環境下における硬化を防止し、円滑にノズルから吐出させて造形作業を行うことが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、温調部本体および送風ファンを備える温度調節部により、シリンジに向かう冷風が形成され、シリンジに充填されている2液型液状シリコーンゴムは、この冷風により温度が調節される。これにより、2液型液状シリコーンゴムの温度を良好に調節し、ノズルからの円滑な吐出性を確保することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、サーモモジュールに生じた熱が伝熱器を介して伝達され、周囲の空気に放出される一方、空気の有する熱が伝熱器を介して伝達され、サーモモジュールに吸収される。これにより、シリンジに向かう流れを形成する空気を効率よく冷却し、液状シリコーンゴムの温度を迅速に調節することが可能となる。ペルチェ素子を備えるサーモモジュールを採用することで、液状シリコーンゴムの温度管理を細かく調節することが可能となる。
【0024】
さらに、シリンジまたは液状シリコーンゴムの実際の温度が検出され、実際の温度の目標温度に対する乖離量に基づき、これを減少させるように温度調節部に対する操作量が設定される。これにより、液状シリコーンゴムの温度を目標温度に近付け、ノズルからのより良好な吐出性を確保することが可能となる。操作量の設定にPID制御を採用することで、操作量をより良好に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタの概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタに使用されるシリンジ及び、シリンジの温調に使用される温調装置を概略的に示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタに使用される温調装置を示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタに使用される温調装置の正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタに使用される温調装置の平面図である。
図6図6(a)は同上温調装置の内部構造を示す概略図であり、図6(b)は伝熱器及びサーモモジュールを示す説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタに使用される温調装置の制御系の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
本実施形態に係る3Dプリンタ10は、造形材料に液状シリコーンゴムを用い、LAM(液体積層造形)方式により三次元造形物を作成するように構成されている。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る3Dプリンタ10の基本構成は、液状シリコーンゴムMを射出するディスペンサ部20と、ディスペンサ部20から射出された液状シリコーンゴムMが積層されるステージ部30と、ディスペンサ部20とステージ部30とを互いに相対的に移動させる移動機構部40と、ステージ部30に射出された液状シリコーンゴムMに紫外線UVを照射する紫外線照射部50と、プリンタ本体60と、これら全てを覆う筐体70とを有しており、筐体70は紫外線を遮蔽するように構成されている。
【0029】
プリンタ本体60は、3Dプリンタ10の底部を構成する基部61と、基部61から上方に延びる二つの支持部62、63とを有する。
【0030】
ディスペンサ部20は一方の支持部62に支持されており、紫外線照射部50は他方の支持部63に支持されている。ステージ部30は、基部61上に設けられている。
【0031】
ディスペンサ部20は、液状シリコーンゴムMを収容したシリンジ12と、シリンジ12を交換可能に保持しうるシリンジ固定部22と、シリンジ固定部22に保持(装着)されたシリンジ21から液状シリコーンゴムMを射出させる圧縮空気供給部(材料射出手段)23とを有する。
【0032】
本実施の形態にあっては、液状シリコーンゴムMは、いわゆる2液混合型のシリコーンゴムであって、予め2液が混合された状態でシリンジ21に充填されている。
【0033】
シリンジ固定部22は、昇降機構41を介して支持部62に支持されている。昇降機構41は、シリンジ固定部22を上下方向(矢印Zで示す方向)に移動させる。
【0034】
圧縮空気供給部23は、支持部62に固定して設けられている。圧縮空気供給部23は、圧縮空気を吐出する圧縮空気吐出機構23aと、圧縮空気吐出機構23aから吐出された圧縮空気を、シリンジ固定部22に配置されたシリンジ21に供給するための圧縮空気供給管23bと、を有している。
【0035】
本実施の形態にあっては、図1に示すように、上記構成に係る3Dプリンタ10において、シリンジ12に充填されている液状シリコーンゴムの温度を調整する温調装置101がシリンジ固定部22に固定された状態で配置されており、シリンジ12は温調装置101内部に収納される形で配設されている。
【0036】
図2~5に示すように、温調装置101は全体略直方体箱状に形成され、シリンジ固定部22に固定されるシリンジ保持部111と、シリンジ保持部111の前面部に設けられた温度調節部112を備えている。
【0037】
本実施の形態にあっては、通常室温25℃において、10℃からマイナス10℃の間で冷却することにより、シリンジ内の液状シリコーンゴムの温度調節を行うことができるように構成されている。
【0038】
温調装置101は、本実施の形態にあっては、幅寸法110mm、高さ寸法155mmに形成され、支持部111の内部には、上下方向に沿って貫通して設けられたシリンジ収納空隙部111aが設けられており、内部に50ml容量のシリンジ12を、上方より挿入して収納固定できるように構成されている。
【0039】
支持部111の前面部に設けられた温度調節部112は、シリンジ保持部111を減温し、その結果、シリンジ収納空隙部111a内に固定され、液状シリコーンゴムが充填されたシリンジ12を冷却するように構成されている。
【0040】
温度調節部112は空冷式電子冷却方式であり、冷却により発生する熱を、適宜、放熱するための送風ファン112bを備えている。
【0041】
温調部本体112aは、サーモモジュール1121および伝熱器1122を備えている。サーモモジュール1121は、ペルチェ素子を備え、ペルチェ素子に流れる電流に応じて発熱または吸熱する。
【0042】
伝熱器1122は、サーモモジュール1121に付設され、サーモモジュール1121と空気との間における熱の移動を促進する。伝熱器1122は、厚さ方向に互いに隙間を空けて配置された複数の薄型放熱板を備える。
【0043】
送風ファン112bは、図示しないモータにより駆動される羽根1123を備える。
【0044】
温調装置101は、コントローラ201を備えるとともに、シリンジ12に充填されている液状シリコーンゴムの実際の温度を検出する温度センサ211を備える。本実施形態では、温度センサ211によりシリンジ12の温度を検出し、シリンジ12の温度を液状シリコーンゴムの温度として代用する。
【0045】
図6に示すように、コントローラ201は、温度センサ211により検出された温度を帰還させ、PID制御により温調装置101に対する入力量uを設定する。
【0046】
具体的には、液状シリコーンゴムの目標温度Trが設定され、減算部201aは、温調装置101の出力量である液状シリコーンゴムの温度Tyの、目標温度Trに対する乖離量eを算出する。
【0047】
PID制御器201bは、乖離量eをもとに、温調装置101に対する入力量u、つまり、温調部本体112aまたは送風ファン112bに対する操作量として設定される。
【0048】
この制御により得られる出力量Tyは、再度減算部201aへ戻され、同様の制御が繰り返し実行される。本実施の形態にあっては、目標温度Trは、材料である液状シリコーンゴムの種類や実際の室温等に応じて0℃~80℃の範囲で設定可能である。
【0049】
このように、本実施形態では、液状シリコーンゴムが充填されたシリンジ12は、シリンジ保持部111に収容され、シリンジ12に充填されている液状シリコーンゴムは、シリンジ保持部111に装着された温度調節部112により、シリンジ12を介して冷却される。
【0050】
これにより、材料である2液混合型の液状シリコーンゴムの室温における硬化を防止し、液状シリコーンゴムの粘度を適切な範囲に維持し、ノズルから円滑に吐出させることが可能となる。
【0051】
即ち、造形材料として2液混合型の液状シリコーンゴムを使用した場合には、シリンジに充填された状態で室温環境下において硬化が進行する場合があり、加圧した場合であってもノズルから円滑に吐出せず、吐出量が低下し、安定した造形ができなくなる、という問題があったが、本実施の形態に係る温調装置101によりシリンジ内の2液混合型シリコーンゴムを所定温度(10℃以下、例えば、4℃)に冷却することにより、ノズルからの円滑な吐出を可能とし、安定した造形作業を可能とすることができる。
【0052】
さらに、一般的に、3Dプリンタによる造形作業は、インジェクション成型やプレス成型の場合とは異なり、液状の造形材料を積層して硬化させることにより造形することから所定の時間を要するという欠点を有しているところ、本発明に係る温調装置を使用することにより、造形材料に応じた適切な温度調節を行うことにより、造形材料のいかんにかかわらずノズルからの吐出量を向上、増大させ、造形作業に要する作業時間を低減し、高速で造形作業を行うことが可能となる。
【0053】
以上の説明では、材料に2液混合型の液状シリコーンゴムを採用したが、1液型の液状シリコーンゴムを採用することも可能である。特に、RTVシリコーンゴムの場合には、本実施の形態に係る温調装置101を利用して冷却することにより硬化を防止し、円滑にノズルから吐出させ、造形作業を行うことが可能となる。
【0054】
本願発明の要旨の範囲内において適宜構成を変更することは可能であり、上記実施の形態には限定されない。例えば、シリンジの容積が50mlよりも大きくなる場合には、適宜、大型の温調装置を構成することができ、シリンジの大きさに適合させて形で温度調節を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
10…3Dプリンタ
12…シリンジ
13…ノズル
20 ディスペンサ部
22 シリンジ固定部
23 圧縮空気供給部
23a 圧縮空気吐出機構
23b 圧縮空気供給管
30 ステージ部
40 移動機構部
41 昇降機構
50 紫外線照射部
60 プリンタ本体
62 支持部
63 支持部
70 筐体
101…温調装置
111…支持部
111a…シリンジ収納空隙部
112…温度調節部
112a…温調部本体
112b…送風ファン
1121…サーモモジュール
1122…伝熱器
1123…羽根
201…コントローラ(制御部)
211…温度センサ(温度検出部)
M…液状シリコーンゴム