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  • 特開-ゲート装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150145
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ゲート装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/04 20060101AFI20241016BHJP
   E01F 13/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B61L29/04 Z
E01F13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063408
(22)【出願日】2023-04-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年10月27日に宇部線東平原第4踏切にてゲート装置について性能試験
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520060014
【氏名又は名称】シナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】水国 智己
(72)【発明者】
【氏名】升本 隆士
(72)【発明者】
【氏名】津國 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋三
(72)【発明者】
【氏名】井上 真美
(72)【発明者】
【氏名】金子 聰史
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼下 康夫
【テーマコード(参考)】
2D101
5H161
【Fターム(参考)】
2D101CA12
2D101DA05
2D101FA27
2D101HA02
2D101HA03
5H161AA01
5H161RR13
5H161RR24
(57)【要約】
【課題】開閉動作による設置位置の制限が生じ難いゲート装置を提供する。
【解決手段】ゲート装置1は、通路を開閉する装置であり、バー2と支持部3とを備える。支持部3は、バー2の基端部を支持する。支持部3は、バー2を起伏及び旋回可能に支持する。バー2は、通路を閉じている時、所定の高さの略水平の定位置にある。支持部3は、バー2が起伏可能な範囲を定位置に対して上側に制限し、バー2が旋回可能な範囲を定位置に対して一方側に制限する。バー2が起こされたとき、支持部3は、そのバー2を定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバー2が定位置に戻る速度を抑制する。バー2が旋回されたとき、支持部3は、そのバー2を定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバー2が定位置に戻る速度を抑制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路を開閉するゲート装置であって、
通路を開閉するための長尺状のバーと、
前記バーの基端部を支持する支持部とを備え、
前記支持部は、前記バーを起伏及び旋回可能に支持するとともに、
前記バーは、通路を閉じている時、所定の高さの略水平の定位置にあり、
前記支持部は、前記バーが起伏可能な範囲を定位置に対して上側に制限し、そのバーが旋回可能な範囲を定位置に対して一方側に制限し、
前記バーが起こされたとき、前記支持部は、そのバーを定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバーが定位置に戻る速度を抑制し、
前記バーが旋回されたとき、前記支持部は、そのバーを定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバーが定位置に戻る速度を抑制することを特徴とするゲート装置。
【請求項2】
前記支持部を所定の高さに固定するための支柱を有することを特徴とする請求項1に記載のゲート装置。
【請求項3】
前記支持部は、所定の高さに固定される固定部と、その固定部に支持される旋回部と、その旋回部に支持される起伏部とを有し、
前記旋回部は、前記固定部に対して旋回可能であり、
前記起伏部は、前記旋回部に対して起伏可能であり、
前記バーの基端部は、前記起伏部に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のゲート装置。
【請求項4】
前記支持部は、2つの自閉機能装置を有し、
一方の前記自閉機能装置は、前記起伏部と前記旋回部との間に接続され、起こされた前記バーを定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバーが定位置に戻る速度を抑制し、
他方の前記自閉機能装置は、前記旋回部と前記固定部との間に接続され、旋回した前記バーを定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバーが定位置に戻る速度を抑制することを特徴とする請求項3に記載のゲート装置。
【請求項5】
前記各自閉機能装置は、ドアクローザであることを特徴とする請求項4に記載のゲート装置。
【請求項6】
踏切に設けられ、
前記バーを持ち上げること、及び踏切から退出する方向に押すことのどちらによっても通路を開くことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のゲート装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通路を開閉するゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
踏切(踏切道)は、踏切保安装置の内容によって第1種~第4種の種別がある。第1種踏切には、自動遮断機(自動的に開閉する踏切遮断機)が設けられている。第3種踏切には、踏切警報機が設けられている。第4種踏切には、自動遮断機も踏切警報機も設けられてない。現在、第2種踏切は無い。踏切での事故件数は、第4種踏切の割合が高い。しかし、第4種踏切の廃止や格上げ等の抜本対策は、地元の同意を得るのが容易ではない。
【0003】
第4種踏切の安全対策として、通行者に一旦停止を促すためのゲート装置が知られている(特許文献1参照)。この従来のゲート装置は、可動アームを水平に押し開けて通行する機構を有する。可動アームは、踏切に進入するために押されると軌道側に接近する。このため、可動アームは、鉄道の建築限界を支障しないように軌道中心から約5m以上の離隔を確保する必要があり、道路を支障するなど、現地の状況によりゲート装置を設置できない場所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-114506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するものであり、開閉動作による設置位置の制限が生じ難いゲート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のゲート装置は、通路を開閉する装置であって、通路を開閉するための長尺状のバーと、前記バーの基端部を支持する支持部とを備え、前記支持部は、前記バーを起伏及び旋回可能に支持するとともに、前記バーは、通路を閉じている時、所定の高さの略水平の定位置にあり、前記支持部は、前記バーが起伏可能な範囲を定位置に対して上側に制限し、そのバーが旋回可能な範囲を定位置に対して一方側に制限し、前記バーが起こされたとき、前記支持部は、そのバーを定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバーが定位置に戻る速度を抑制し、前記バーが旋回されたとき、前記支持部は、そのバーを定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバーが定位置に戻る速度を抑制することを特徴とする。
【0007】
このゲート装置において、前記支持部を所定の高さに固定するための支柱を有することが好ましい。
【0008】
このゲート装置において、前記支持部は、所定の高さに固定される固定部と、その固定部に支持される旋回部と、その旋回部に支持される起伏部とを有し、前記旋回部は、前記固定部に対して旋回可能であり、前記起伏部は、前記旋回部に対して起伏可能であり、前記バーの基端部は、前記起伏部に取り付けられることが好ましい。
【0009】
このゲート装置において、前記支持部は、2つの自閉機能装置を有し、一方の前記自閉機能装置は、前記起伏部と前記旋回部との間に接続され、起こされた前記バーを定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバーが定位置に戻る速度を抑制し、他方の前記自閉機能装置は、前記旋回部と前記固定部との間に接続され、旋回した前記バーを定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバーが定位置に戻る速度を抑制することが好ましい。
【0010】
このゲート装置において、前記各自閉機能装置は、ドアクローザであることが好ましい。
【0011】
このゲート装置において、踏切に設けられ、前記バーを持ち上げること、及び踏切から退出する方向に押すことのどちらによっても通路を開くことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゲート装置によれば、バーが定位置で通路を閉じるので、ゲート装置は、定常状態で通路を閉じる。バーが定位置に戻る速度が抑制されるので、通路を開いたとき、通行者が通る時間が確保される。バーが旋回可能な範囲が定位置に対して一方側に制限されるので、他方側に旋回せず、ゲート装置は、開閉動作による設置位置の制限が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の一実施形態に係るゲート装置の正面図である。
図2図2は同ゲート装置におけるバーが旋回可能な範囲を示す平面図である。
図3図3は同ゲート装置における支持部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るゲート装置について図1乃至図3を参照して説明する。図1に示すように、ゲート装置1は、通路を開閉する装置である。ゲート装置1は、バー2と支持部3とを備える。バー2は、通路を開閉するための長尺状の部材である。支持部3は、バー2の基端部を支持する。
【0015】
本実施形態では、ゲート装置1は、支柱4を有する。支柱4は、地上に立てられた柱であり、支持部3を所定の高さに固定する。図1示す例では、支柱4は、用地や埋設物等の都合により、屈曲した形状である。支柱4は、真っ直ぐでもよい。支柱4の形状は、円柱でも角柱でもよい。支柱4の下端部は、地中にあり、支柱4の径よりも大きな基礎部41を有する。なお、ゲート装置1の近くに支持部3を固定できる物がある場合、支柱4を省略してもよい。
【0016】
ゲート装置1は、支柱4の上部に表示板5を有する。表示板5は、注意喚起と、通行のし方を文字又はピクトグラムで通行者に向けて表示する。
【0017】
本実施形態では、バー2の径は、踏切遮断機の遮断桿とほぼ同じであり、風の影響が小さい。バー2の素材は、遮断桿と同じFRPであり、耐久性に実績がある。バー2の色は、視認性が良い色であり、例えばオレンジ色である。夜間の視認性を向上するため、バー2に反射材や蓄光テープを貼り付けてもよい。
【0018】
支持部3は、バー2を起伏及び旋回可能に支持する。バー2は、通路を閉じている時、所定の高さの略水平の定位置にある(実線で示すバー2)。
【0019】
バー2が起伏する動作は、基端部を中心に上下方向に回転することである。バー2は、起こされる時、上方向に回転し、先端側が高くなる(二点鎖線で示すバー2)。バー2が旋回する動作は、基端部を中心に水平方向に回転することである。バー2は、旋回する時、先端側が図1の紙面に直交する水平面上を動く。
【0020】
支持部3は、バー2が起伏可能な範囲を定位置(略水平)に対して上側に制限する。図2に示すように、支持部3は、バー2が旋回可能な範囲を定位置に対して一方側に制限する(円弧の矢印で示す範囲)。
【0021】
支持部3は、バー2が起伏及び旋回可能な範囲を制限するストッパを有する。バー2が旋回可能な範囲は、定位置に対して、例えば、図1の奥側、図2の上側の範囲である。バー2は、その逆の範囲、すなわち図1の手前側、図2の下側の範囲には動かない。
【0022】
バー2が起こされたとき、支持部3は、そのバー2を定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバー2が定位置に戻る速度を抑制する(図1参照)。バー2が旋回されたとき、支持部3は、そのバー2を定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバー2が定位置に戻る速度を抑制する。
【0023】
支持部3の構成について詳述する。図3に示すように、支持部3は、固定部31と、旋回部32と、起伏部33とを有する。固定部31は、所定の高さに固定される。旋回部32は、固定部31に支持され、固定部31に対して旋回可能である。起伏部33は、旋回部32に支持され、旋回部32に対して起伏可能である。バー2の基端部は、起伏部33に取り付けられる。
【0024】
このような構成によって、支持部3は、バー2を起伏及び旋回可能に支持する。
【0025】
支持部3は、2つの自閉機能装置34、35を有する。自閉機能装置34、35は、バー2を自動的に閉じる装置である。一方の自閉機能装置34は、起伏部33と旋回部32との間に接続され、起こされたバー2を定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバー2が定位置に戻る速度を抑制する。他方の自閉機能装置35は、旋回部32と固定部31との間に接続され、旋回したバー2を定位置に戻す付勢力を発生するとともに、そのバー2が定位置に戻る速度を抑制する。
【0026】
本実施形態では、自閉機能装置34、35は、ドアクローザである。ドアクローザは、日本産業規格に規定されている。ドアクローザは、スイングドアに用いられる自閉機能装置である(JIS A4702参照)。ドアクローザは、建築物の開口部の戸に用いる金物のうち、金属ばねと緩衝油との組合せ作用によって自動的に戸を閉じる装置である(JIS A15010-3)。ドアクローザは、速度調整弁を有し、閉じ速度(戸を閉じる速度)を調整することができる(JIS A15010-3)。
【0027】
バー2は、スイングドアと同様に、基端部を中心に回転する。自閉機能装置34、35は、ドアクローザの金属ばねによって、バー2を定位置に戻す付勢力を発生する。自閉機能装置34、35は、ドアクローザの緩衝油の作用によってバー2が定位置に戻る速度を抑制する。バー2が定位置に戻る速度(閉じ速度)は、調整可能である。自閉機能装置34、35は、動作用の電源が不要であるので、ゲート装置1は、電気的な故障が生じない。
【0028】
ドアクローザは、広く使われることで信頼性が高くなった技術である。ゲート装置1は、自閉機能装置34、35としてドアクローザを用いることによって、開発期間短縮、コスト低減、信頼性向上が図られる。
【0029】
以上、本実施形態に係るゲート装置1によれば、バー2が定位置で通路を閉じるので、ゲート装置1は、定常状態で通路を閉じる(図1参照)。バー2が定位置に戻る速度が抑制されるので、通路を開いたとき、通行者が通る時間が確保される。バー2が旋回可能な範囲を定位置に対して一方側に制限されるので、他方側に旋回せず、ゲート装置1は、開閉動作による設置位置の制限が生じ難い。
【0030】
ゲート装置1の主な用途について説明する。本実施形態では、ゲート装置1は、踏切(第4種踏切)に設けられる。このため、ゲート装置1は、踏切ゲートとも呼ばれる。ゲート装置1が設けられる踏切の通行者は、歩行者、自転車又は二輪車に乗っている人である。ゲート装置1は、バー2を持ち上げること、及び踏切から退出する方向にバー2を押すことのどちらによっても通路を開く。
【0031】
ゲート装置1のバー2は定位置で通路を閉じているので、通行者は、バー2の手前で一旦停止する。すなわち、バー2によって一旦停止が促される。通行者は、列車が来ていないことを確認した後、ゲート装置1のバー2を持ち上げて踏切に進入する。踏切遮断機がある踏切(第1種踏切)では遮断桿が上下に動くので、踏切でバー2を持ち上げる方向性に違和感はない。通行者がバー2から手を放すと、バー2は、ゆっくり下がって再び通路を閉じる。
【0032】
通行者が踏切に進入しようとしてバー2を押しても、バー2は、旋回せず、軌道側に接近しない。したがって、ゲート装置1は、建築限界を支障せず、線路に近づけて設定できる。
【0033】
通行者は、同様にバー2を持ち上げて踏切から退出する。通行者がバー2から手を放すと、バー2は、ゆっくり下がって再び通路を閉じる。
【0034】
通行者は、バー2を押して踏切から退出することもできる。バー2は、踏切から退出する方向に押されると、水平方向に旋回して通路を開く。踏切遮断機がある踏切では、通行者は、踏切内に閉じ込められた場合、遮断桿を押すと遮断桿が斜め上に上がり、踏切外に脱出できる。ゲート装置1は、バー2を押して退出できるので、踏切遮断機がある踏切と同様の方法で踏切から出ることができる。通行者がバー2を押すのをやめると、バー2はゆっくり旋回して再び通路を閉じる。
【実施例0035】
本実施形態の実施例として、ゲート装置1(踏切ゲート)を踏切に設置して効果を確認する試験を行った。試験場所は、宇部線の居能駅~岩鼻駅間にある東平原第4踏切(山口県宇部市)とした。この踏切は、第4種踏切であり、通行者は歩行者、自転車、二輪車(原付)のみであり、通行量調査では17人台/の通行量がある。試験目的でこの踏切にゲート装置1を設置した。支柱4の施工も含め、2~3人の少人数の作業員で約2時間の短時間に施工できることがわかった。
【0036】
この踏切にセンサカメラを設置した。比較のため、ゲート装置1の設置前に通行者の行動をセンサカメラで撮影した。そして、令和4年10月27日から約1か月間、ゲート装置1設置後の通行者の行動を撮影した。
【0037】
撮影した映像を分析した。ゲート装置1設置前は、通行者の踏切での一旦停止率が40%であった。ゲート装置1設置後は、一旦停止率が95%に向上した。ゲート装置1による踏切での一旦停止率向上の効果が確認された。この効果は、特許文献1に記載されているゲート装置と同等以上であった。
【0038】
ゲート装置1設置後の通行者の内訳は、歩行者146人、自転車44台、二輪車(原付)3台であった。踏切進入時の通行者の行動については、93%(136人)の歩行者が一旦停止してバー2を持ち上げた。1人の歩行者だけ、一旦停止してバー2を引き開いた。6%(9人)の歩行者が一旦停止せずにバー2の横をすり抜けた。自転車は、100%(44台)が一旦停止して通行者がバー2を持ち上げた。二輪車は、100%(3台)が一旦停止して通行者がバー2を持ち上げた。つまり、ゲート装置1によって自転車と二輪車を確実に一旦停止させることができた。
【0039】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、ゲート装置1を踏切以外に設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ゲート装置
2 バー
3 支持部
31 固定部
32 旋回部
33 起伏部
34、35 自閉機能装置
4 支柱
図1
図2
図3