(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150146
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20241016BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241016BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241016BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241016BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063410
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 智裕
(72)【発明者】
【氏名】田口 海志
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029DJ12
5H029HJ04
5H029HJ12
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050FA02
5H050FA08
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】振動による電極層の破損を防止することのできる全固体電池を提供すること。
【解決手段】全固体電池1は、第1電極層3、固体電解質層4、及び第2電極層5が順に積層された発電要素2と、発電要素を挟むように配置された第1集電体6及び第2集電体7とを備える。第1電極層3のタブ側端部における厚み減少領域の幅H1は、非タブ側端部における厚み減少領域の幅Hxの最大値がHx(Max)よりも小さい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層、固体電解質層、及び第2電極層が順に積層された発電要素と、
積層方向において前記発電要素を挟むように配置された第1集電体及び第2集電体と、
を備え、
前記第1電極層は前記第1集電体の表面上に形成されており、
前記第2電極層は前記第2集電体の表面上に形成されており、
前記積層方向に沿って見た場合に、前記第1集電体は、
集電タブが接続された辺であるタブ辺と、
前記タブ辺以外の辺である非タブ辺とを有しており、
前記積層方向に沿って見た場合に、前記第1電極層は、
前記タブ辺に沿って設けられたタブ側端部と、
前記非タブ辺に沿って設けられた非タブ側端部とを有しており、
前記第1電極層の端部において、前記第1電極層の厚みが外側に向かって減少している領域が、厚み減少領域として特定され、
前記タブ側端部における前記厚み減少領域の幅がH1であり、
前記非タブ側端部における前記厚み減少領域の幅Hxの最大値がHx(Max)であり、
H1は、Hx(Max)よりも小さい、
全固体電池。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記積層方向に沿って見た場合に、前記第1電極層は矩形状であり、
前記第1電極層は、
前記タブ側端部である第1辺と、
前記第1辺に対向する第2辺と、
前記第1辺に垂直に伸びる第3辺及び第4辺とを有し、
前記第3辺及び前記第4辺は、前記非タブ側端部であり、
前記第3辺及び前記第4辺における前記厚み減少領域の幅が、それぞれ、H3及びH4であり、
H1は、H3及びH4のそれぞれよりも小さい、
全固体電池。
【請求項3】
請求項2に記載の全固体電池であって、
前記第2辺における前記厚み減少領域の幅が、H2であり、
H2はH1以上であり、
H3及びH4は、それぞれ、H2よりも大きい、
全固体電池。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記積層方向に沿って見た場合に、前記第1電極層は長方形であり、
前記タブ側端部は、2つの短辺のうちの少なくとも一方である、
全固体電池。
【請求項5】
請求項4に記載の全固体電池であって、
前記タブ側端部は、前記2つの短辺のうちのいずれか一方である、
全固体電池。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第1電極層の断面を見た場合に、前記第1電極層の幅は、前記第1集電体側の方が、前記固体電解質層側よりも大きい、
全固体電池。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第1電極層は、正極層である、
全固体電池。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記積層方向に沿って見た場合に、前記固体電解質層の端部は、前記第1電極層の端部よりも外側に位置しており、
前記第1電極層の端面は、前記固体電解質層により覆われている、
全固体電池。
【請求項9】
請求項8に記載の全固体電池であって、
前記固体電解質層の端部は、前記第1電極層の端面に沿って配置されており、
前記第1電極層の端面と前記第1集電体の表面とによって形成される角部において、前記固体電解質層は折れ曲がっていない、
全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池は、電解質を含めて実質的に全ての材料が固体材料である二次電池である。
【0003】
全固体電池の一例が、特許文献1(特開2014-116136号公報)に開示されている。特許文献1には、「正極層と、負極層と、前記正極層及び負極層に挟持された固体電解質層とを有し、前記電解質層および正極層又は負極層の端部の厚みが、中心部のそれらと比較して薄い事を特徴とする全固体二次電池」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、全固体電池において、通常、各電極層は、集電箔上に形成される。すなわち、正極集電箔、正極層、固体電解質層、負極層、及び負極集電箔層が、この順で積層される。また、各集電箔には、集電タブが接続される。電極タブは、各電極層を外部の装置と電気的に接続するために設けられる。このような全固体電池においては、外部からの振動が集電タブを介して集電箔に伝わり、集電箔上に形成された電極層が破損してしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、振動による電極層の破損を防止することのできる全固体電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明に係る全固体電池は、第1電極層、固体電解質層、及び第2電極層が順に積層された発電要素と、積層方向において発電要素を挟むように配置された第1集電体及び第2集電体とを備える。第1電極層は第1集電体の表面上に形成されており、第2電極層5は第2集電体7の表面上に形成されている。積層方向に沿って見た場合に、第1集電体6は、集電タブが接続された辺であるタブ辺と、タブ辺以外の辺である非タブ辺とを有している。積層方向に沿って見た場合に、第1電極層は、タブ辺に沿って設けられたタブ側端部と、非タブ辺に沿って設けられた非タブ側端部とを有している。第1電極層の端部において、第1電極層の厚みが外側に向かって減少している領域が、厚み減少領域として特定される。タブ側端部における厚み減少領域の幅がH1である。非タブ側端部における厚み減少領域の幅Hxの最大値がHx(Max)である。H1は、Hx(Max)よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動による電極層の破損を防止することのできる全固体電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る全固体電池を概略的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、変形例1における第1電極層を概略的に示す図である。
【
図6A】
図6Aは、変形例2における固体電解質層の構成を示す概略断面図である。
【
図6B】
図6Bは、変形例2における固体電解質層の構成を示す概略断面図である。
【
図7A】
図7Aは、変形例3における固体電解質層の構成を示す概略断面図である。
【
図7B】
図7Bは、変形例3における固体電解質層の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
なお、本明細書において、「全固体電池」とは、固体電解質層を用いた二次電池である。ただし、固体電解質層の電解質は固体電解質が主成分であるが少量であれば液体電解質が含まれていてもよい。また、正極層及び負極層が電解質を含む場合、同様に、それらの主成分は固体電解質が主であるが、少量であれば液体電解質が含まれていてもよい。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る全固体電池1を概略的に示す平面図である。
図2は、
図1のAA断面を示す概略図である。
図3は、
図1のBB断面を示す概略図である。なお、説明の都合上、
図1においては一部の構成が省略されている。なお、
図2及び
図3においては、見やすさの為、積層方向における各構成要素間にわずかな隙間が生じているが、実際には、各構成要素は積層方向において接触している。
【0013】
図1~
図3に示されるように、全固体電池1は、発電要素2、第1集電体6、第2集電体7、集電タブ8、外装材9、及び拘束部材11を有している。
【0014】
図2及び
図3に示されるように、発電要素2は、積層方向において、第1集電体6及び第2集電体7によって挟まれている。具体的には、1枚の第1集電体6の両面上に発電要素2が配置されている。そして、各発電要素2の上に、第2集電体7が設けられている。すなわち、本実施形態においては、全固体電池1に、1枚の第1集電体6と、2個の発電要素2と、2枚の第2集電体とが含まれている。
【0015】
発電要素2は、第1電極層3、固体電解質層4及び第2電極層5がこの順に積層された構成を有している。第1電極層3は、第1集電体6に接続されている。言い換えれば、第1電極層3は、第1集電体6の表面上に形成されている。同様に、第2電極層5は、第2集電体7の表面上に形成されている。第1電極層3及び第2電極層5のうちの一方は正極層であり、他方は負極層である。第1集電体6及び第2集電体7のうちの一方は正極集電体であり、他方は負極集電体である。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、第1集電体6及び第2集電体7は、それぞれ、発電要素2に接続された領域から側方に向かって延びており、集電タブ8に接続されている。なお、第2集電体7については、発電要素2の側方において1つにまとめられ、集電タブ8に接続されている(
図2参照)。
【0017】
外装材9は、発電要素2、第1集電体6及び第2集電体7からなる積層体を収容している。外装材9は、一対のフィルムにより構成されている。一対のフィルムは積層体を挟むように配置されており、その外周部においてシールされている。一対のフィルムがシールされた部分が、以下、シール部10と称される。
【0018】
拘束部材11は、積層方向において外装材9を挟むように設けられている。一般的に、全固体電池においては、所望の電池特性を得るために、各電極層が固体電解質層に強く押し付けられている必要がある。そのため、拘束部材11により、発電要素2に圧縮されるような拘束力が加えられている。
【0019】
図1に示されるように、積層方向に沿って見た場合、発電要素2は概ね矩形である。すなわち、第1電極層3、固体電解質層4、及び第2電極層5は、いずれも、矩形である。また、第1集電体6及び第2集電体7も、矩形である。更に、外装材9のシール部10も、矩形である。より具体的には、これらはいずれも長方形である。以下、発電要素2等の長辺に沿う方向が第1方向と称され、短辺に沿う方向が第2方向と称される。
【0020】
シール部10は、積層方向に沿って見た場合に、第1集電体6及び第2集電体7を取り囲むような位置に配置されている。また、シール部10の短辺は、集電タブ8に重なっている。外装材9は、集電タブ8に重なる位置では、集電タブ8に対してシールされている。
【0021】
以上が、全固体電池1の概略的な構成である。ここで、本実施形態においては、第1電極層3の形状が工夫されている。特に、第1電極層3の端部(端面)の構成が工夫されている。
図2及び
図3に示されるように、第1電極層3の端面の形状が、辺によって異なっている。以下に、この点について説明する。
【0022】
図4は、第1電極層3の構成を示す図である。
図4(a)は、第1集電体6及び第1電極層3を示す平面図である。
図4(b)は、長辺側から見た第1電極層3の側面図である。
図4(c)は短辺側からみた第1電極層3の側面図である。
【0023】
既述のように、第1集電体6は、長方形であり、4つの辺(13-1~13-4)を有している。このうち、本実施形態においては、辺13-1に集電タブ8が接続されている。集電タブ8が接続された辺13-1が、以下、「タブ辺」と称される。一方、タブ辺以外の辺(辺13-2~13-4)が、「非タブ辺」と称される。
【0024】
第1電極層3も、第1集電体6に対応した形状であり、すなわち、長方形である。積層方向に沿って見た場合に、第1電極層3には、第1集電体6の辺13-1~辺13-4のそれぞれに沿って、端部14-1~14-4が設けられている。以下において、端部14-1~14-4のうち、タブ辺(辺13-1)に沿って設けられた端部14-1が、「タブ側端部」と称される。一方、その他の端部(14-2~14-4)は、「非タブ側端部」と称される。
【0025】
図14(b)及び(c)に示されるように、第1電極層3の端部(14-1~14-4)の少なくとも一部においては、第1電極層3の端面が第1集電体6の表面に対して垂直ではなく、傾斜している。すなわち、第1電極層3の厚みが、外側に向かって徐々に減少している。具体的には、第1電極層3の断面を見た場合に、第1集電体6側における第1電極層3の幅の方が、固体電解質層4側における第1電極層3の幅よりも大きくなるように、第1電極層3の端面が傾斜している。この傾斜部分、すなわち、第1電極層3の厚みが外側に向かって減少している領域が、以下、「厚み減少領域12」と称される。
【0026】
タブ側端部(端部14-1)における厚み減少領域12の幅が、「H1」として特定される。
図4に示される例においては、端部14-1が第1集電体6の表面に対してほぼ垂直である。従って、端部14-1においては、厚み減少領域12がほとんど存在しない。すなわち、H1は、ほぼゼロである。
【0027】
非タブ側端部(端部14-2~14-4)における厚み減少領域の幅が、「Hx」として特定される。Hxは、一定である必要はない。すなわち、場所によって、非タブ側端部における厚み減少領域12の幅は、異なっていてもよい。Hxの最大値が、「Hx(Max)」として特定される。
【0028】
ここで、本実施形態においては、H1が、Hx(Max)よりも小さい。例えば、H1は、2mm未満、好ましくは1mm未満、より好ましくは0.5mm未満、最もの好ましくは0.1mmである。Hx(Max)は、例えば2mm以上である。このような構成を採用することにより、第1電極層3の破損が防止される。この点について以下に説明する。
【0029】
例えば輸送時、あるいは衝撃が加わった場合等において、外部から集電タブ8に振動が加わる場合がある。集電タブ8に加わった振動は、第1集電体6にも伝わる。第1集電体6は、タブ辺である辺13-1の近傍において振動しやすい。ここで、
図2及び
図3に示したように、発電要素2に対しては、拘束部材11によって拘束力が加えられている。しかし、厚み減少領域12には、拘束部材11による拘束力が伝わらない。拘束されていない厚み減少領域12では、第1電極層3が振動する可能性があり、振動により第1電極層3が破損する可能性がある。振動は集電タブ8側から加わるから、タブ側端部(端部14-1)における厚み減少領域12の幅が大きいと、振動により第1電極層3が破損しやすくなる。これに対して、本実施形態によれば、タブ側端部(端部14-1)における厚み減少領域12の幅(H1)がある程度小さい(具体的には、Hx(Max)よりも小さい)から、第1電極層3の破損を防ぐことができる。
【0030】
以上、第1の実施形態について概略的に説明した。
【0031】
なお、本実施形態においては、
図4に示したように、集電タブ8が辺13-1に接続されている場合について説明した。すなわち、タブ側端部が、2つの短辺のうちの一方である場合について説明した。しかしながら、集電タブ8の接続位置は、特に限定されない。例えば、第1集電体6の長辺(辺13-3又は13-4)に集電タブ8が接続されていてもよい。この場合には、第1電極層3における端部14-3及び端部14-4が「タブ側端部」となる。
【0032】
ただし、好ましくは、タブ側端部は、2つの短辺のうちの少なくとも一方である。すなわち、第1集電体6における2つの短辺のうちの少なくとも一方に集電タブ8が接続されていることが好ましい。このような構成により、高エネルギー密度を実現することが可能となる。
【0033】
より好ましくは、タブ側端部は、2つの短辺のうちのいずれか一方である。すなわち、第1集電体6における2つの短辺のうちのいずれか一方にのみ、集電タブ8が接続されていることが好ましい。第1集電体6は、通常、溶接により集電タブ8に接続される。この際に形成される溶接部の存在により、電極面積が低下する。第1集電体6における2つの短辺のうちのいずれか一方にのみ集電タブ8が接続されていれば、溶接部の面積を最小限の大きさにすることができるから、高いエネルギー密度を実現できる。
【0034】
続いて、第1電極層3及び第2電極層5について説明する。既述の通り、第1電極層3及び第2電極層5のうちの一方は正極層であり、他方は負極層である。すなわち、第1電極層は正極層であってもよく、負極層であってもよい。ただし、好ましくは、第1電極層は、正極層及び負極層のうち、厚みが大きい方の層である。電極層の厚みが大きいほど、振動による影響を受けやすくなり、破損が生じやすくなる。従って、本実施形態に従って振動による破損を防止することの価値が大きくなる。また、一般的に、全固体電池1においては、正極層の方が負極層よりも厚いことが多い。従って、第1電極層3は、正極層であることが好ましい。
【0035】
本実施形態で特定される形状を有する第1電極層3の作製方法は、特に限定されない。例えば、第1集電体6上に、第1電極層3の構成材料を含む液状材料を塗布し、乾燥させる。この際、特段の処理をしなければ、塗布から乾燥までの間に第1電極層3が広がり、その端面が自ずと傾斜する。すなわち、厚み減少領域12が形成される。一方、乾燥後に第1電極層3の端部を切断すると、第1電極層3の端面を第1集電体6の表面に対して略垂直にすることができ、厚み減少領域12の幅を小さくすることができる。従って、液状材料の塗布により第1電極層3を形成した後、タブ側端部(端部14-1)についてのみ、切断により端面の形状を整えることにより、H1がその他の部分よりも小さい形状を有する第1電極層3を得ることができる。すなわち、H1がHx(Max)よりも小さい形状を有する第1電極層3を実現できる。
【0036】
(変形例1)
続いて、変形例1に説明する。
図5は、変形例1における第1電極層3を概略的に示す図である。説明の便宜上、以下において、第1電極層3におけるタブ側端部である端部14-1が「第1辺」と称される。また、第1辺(端部14-1)に対向する端部14-2が「第2辺」と称される。第1辺に垂直に伸びる非タブ側端部である端部14-3及び14-4が、それぞれ、「第3辺」及び「第4辺」と称される。
【0037】
既述のように、第1辺(端部14-1)における厚み減少領域12の幅は、H1である。一方、第2辺~第4辺(端部14-2~14-4)における厚み減少領域の幅は、それぞれ、H2~H4である。
【0038】
ここで、本変形例においては、H1が、H3及びH4のそれぞれよりも小さい。すなわち、「H3、H4>H1」である。言い換えれば、H3及びH4が、H1よりも大きい。好ましくは、H3及びH4は、2mm超である。このような構成により、第1電極層3の破損をより確実に防ぐことができる。この点について以下に説明する。
【0039】
図2及び
図3に示されるように、外装材9は、発電要素2が配置された領域の端部において折れ曲がる。
図2に示されるように、第1方向においては、外装材9のシール部10が発電要素2から離れた部分に位置している。そのため、第1方向の両端部における外装材9の折れ曲がり角度は、そこまで急ではない。外装材9と発電要素2との干渉は、起こりにくい。
【0040】
これに対して、
図3に示されるように、第2方向においては、シール部10が発電要素2のすぐ近くに位置している。すなわち、第2方向においては、外装材9が発電要素2の近くに位置している。従って、外装材9と発電要素2とが干渉しやすい。ここで、H3及びH4が小さい場合、すなわち、第2方向における第1電極層3の端面が第1集電体6の表面に対して垂直近い場合には、外装材9と発電要素2との干渉時に、第1電極層3の端面に形成される角部に外装材9からの負荷が集中しやすい。
図3に示した例においては、第1電極層3の端部が固体電解質層4に覆われているが、このような場合においても、外装材9からの負荷が固体電解質層4を介して第1電極層3の角部に集中的に加わりやすい。そのため、第1電極層3が破損しやすい。しかしながら、本変形例によれば、H3及びH4がある程度大きい(H1よりも大きい)く、第1電極層3の端面がテーパ―形状となっており、外装材9に沿った形状になっている。従って、外装材9と発電要素2の端部とが干渉した場合であっても、第1電極層3における一部に負荷が集中し難い。これにより、第1電極層3の破損が防止される。
【0041】
なお、H2は、H3及びH4と同じでもよいし、H3及びH4よりも小さくてもよい。また、H2はH1と同じでもよい。一例において、「H3及びH4>H2≧H1」である。
【0042】
(変形例2)
続いて、変形例2について説明する。本変形例においては、固体電解質層4に着目する。なお、以下において、特に言及の無い点については、第1の実施形態及び変形例1と同様の構成を採用することができる。
【0043】
図6A及び
図6Bは、本変形例における固体電解質層4の構成を示す概略断面図である。
図6Aは、タブ側端部における第1電極層3及び固体電解質層4等を示している。一方、
図6Bは、非タブ側端部における第1電極層3及び固体電解質層4等を示している。
【0044】
第1電極層3の端面は、固体電解質層4により覆われている。また、積層方向に沿って見た場合における固体電解質層4の端部は、第1電極層3の端部よりも外側に位置している。言い換えると、第1電極層3の端面と第1集電体6の表面とにより形成される角部(
図6A及び
図6Bにおける角部16参照)に沿って、固体電解質層4が折れ曲がっている。その結果、固体電解質層4の端部には、第1集電体6の表面に沿って延びる突き出し部15が形成されている。
【0045】
本変形例のように第1電極層3の端面が固体電解質層4により覆われている場合であっても、H1がHx(Max)よりも小さいことにより、第1電極層3の破損を防止することができる。
【0046】
なお、本変形例2における固体電解質層4は、例えば、自立膜形状の材料により形成することができる。「自立膜形状の材料」とは、それ自体(固体電解質層4のみ)で形状を維持することが可能な材料である。例えば、自立膜形状の材料として、不織布等の多孔質シートに固体電解質が担持された構成を有する材料等を用いることができる。このような材料を用いると、第1電極層3を覆うように固体電解質層4を形成することができ、第1電極層の端面を固体電解質層4により覆うことができる。
【0047】
(変形例3)
続いて、変形例3について説明する。本変形例においても、変形例2と同様に、固体電解質層4の構成について着目する。なお、以下において、特に言及の無い点については、変形例2と同様の構成を採用することができる。
【0048】
図7A及び
図7Bは、本変形例における固体電解質層4の構成を示す概略断面図である。
図7Aは、タブ側端部における第1電極層3及び固体電解質層4等を示している。一方、
図7Bは、非タブ側端部における第1電極層3及び固体電解質層4等を示している。
【0049】
本変形例においても、変形例2と同様に、固体電解質層4の端部は、第1電極層3の端面に沿って配置されている。ただし、変形例2とは異なり、第1電極層3の端面と第1集電体6の表面とによって形成される角部16において、固体電解質層4は折れ曲がっていない。すなわち、変形例2(
図6A及び
図6B)とは異なり、突き出し部15を欠いている。
【0050】
変形例2における突き出し部15においては、拘束力が加わらない。そのため、集電タブの近傍において、第1集電体6の振動が突き出し部15に加わり、突き出し部15が破損する可能性がある。これに対して、本変形例においては、突き出し部15が存在せず、固体電解質層4の全体に拘束力が加えられる。従って、第1電極層3だけでなく、固体電解質層4の破損も防止することができる。
【0051】
続いて、全固体電池1に含まれる各構成材料を説明する。
【0052】
(正極層)
正極層は、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸蔵することができる材料により形成されていればよい。正極層は、例えば、樹脂バインダと、樹脂バインダ中に分散した正極活物質とを含む材料により形成される。正極活物質としては、例えば、リチウム金属複合酸化物などを用いることができる。リチウム金属複合酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、及びLi(Ni-Mn-Co)O2等の層状岩塩型化合物、LiMn2O4、及びLiNi0.5Mn1.5O4等のスピネル型化合物、LiFePO4、及びLiMnPO4等のオリビン型化合物、あるいは、Li2FeSiO4、及びLi2MnSiO4等のSi含有化合物等が挙げられる。また、Li4Ti5O12なども用いることができる。正極層の厚みは、例えば10~500μm、好ましくは50~200μmである。
【0053】
(負極層)
負極層は、充電時にリチウムを析出させる層、あるいは、充電時にリチウムを吸蔵する層であればよい。例えば、負極層は、樹脂バインダと、樹脂バインダに分散させた負極活物質とを含む材料により、形成することができる。負極活物質としては、例えば、リチウム金属、ケイ素材料(シリコン)、スズ材料、ケイ素やスズを含む化合物(酸化物、窒化物、他の金属との合金)、および炭素材料(グラファイト等)等を用いることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る全固体電池1は、いわゆる全析出型の二次電池であってもよい。全析出型の二次電池とは、充電時に負極集電体と固体電解質層との間に負極活物質としてリチウム金属が析出するように構成された析出型の二次電池の一種であって、完全放電時には全ての負極活物質としてのリチウム金属が正極側に移動するように構成された電池である。このような全固体電池1では、完全放電時には、負極側に負極活物質としてのリチウム金属が存在しない。しかしながら、少なくとも充電時に負極集電体と固体電解質層との間に析出する負極活物質が、負極層として機能する。なお、全固体電池1が全析出型の二次電池である場合には、第1電極層3が正極層であり、第2電極層5が負極層であることが好ましい。
【0055】
析出型の二次電池においては、反応性が高いリチウム金属による固体電解質層の破損を防止するため、固体電解質層と負極集電体との間に負極保護層(負極中間層と呼ばれることもある)が設けられていてもよい。
【0056】
(固体電解質層)
固体電解質層4は、固体であり、二次電池における電解質層として機能するものであればよく、その材質は特に限定されない。既述のように、自立膜形状を有する固体電解質層4としては、不織布等の多孔質シートに固体電解質を担持させたものなどを挙げることができる。固体電解質層としては、硫化物及び酸化物などを用いることができる。硫化物固体電解質としては、例えばLPS系(例えばアルジロダイト(Li6PS5Cl))、およびLGPS系(例えばLi10GeP2S12)の材料が挙げられる。固体電解質層4の厚みは、特に限定されないが、例えば5~100μm、好ましくは20~60μmである。
【0057】
(負極集電箔及び正極集電箔)
第1集電体6及び第2集電体7の一方は負極集電箔であり、他方は正極集電箔である。負極集電箔としては、例えば、銅、銅合金、ニッケル、及びニッケル合金等の薄膜が用いられる。正極集電箔としては、例えば、アルミニウム箔などを用いることができる。
【0058】
(外装材)
外装材9としては、特に限定されるものではないが、例えば、絶縁層が表面に形成されたアルミニウム箔等を用いることができる。
【0059】
以上、本発明について実施形態及びその変形例を用いて説明した。以下に、本発明の代表的な構成とその作用効果について要約する。
【0060】
一態様において、全固体電池1は、第1電極層3、固体電解質層4、及び第2電極層5が順に積層された発電要素2と、積層方向において発電要素2を挟むように配置された第1集電体6及び第2集電体7とを備える。第1電極層3は第1集電体6の表面上に形成されている。第2電極層5は第2集電体7の表面上に形成されている。積層方向に沿って見た場合に、第1集電体6は、集電タブ8が接続された辺であるタブ辺と、タブ辺以外の辺である非タブ辺とを有している。積層方向に沿って見た場合に、第1電極層3は、タブ辺に沿って設けられたタブ側端部と、非タブ辺に沿って設けられた非タブ側端部とを有している。第1電極層3の端部において、第1電極層3の厚みが外側に向かって減少している領域が、厚み減少領域12として特定される。タブ側端部における厚み減少領域12の幅がH1である。非タブ側端部における厚み減少領域12の幅Hxの最大値がHx(Max)である。H1は、Hx(Max)よりも小さい。このような構成によれば、集電タブ8からの振動が伝わりやすいタブ側端部において、振動が加わった際に破損しやすい厚み減少領域12の幅が小さいから、第1電極層3の破損が防止される。
【0061】
一態様において、積層方向に沿って見た場合に、第1電極層3は矩形である。第1電極層3は、タブ側端部である第1辺と、第1辺に対向する第2辺と、第1辺に垂直に伸びる第3辺及び第4辺とを有する。第3辺及び第4辺は、非タブ側端部である。第3辺及び第4辺における厚み減少領域12の幅が、それぞれ、H3及びH4である。H1は、H3及びH4のそれぞれよりも小さい。このような構成によれば、すなわち、第3辺及び第4辺における第1電極層3の端面を、外装材9の形状に沿った形状にすることができる。従って、外装材9との干渉による第1電極層3の破損を防止できる。
【0062】
一態様において、第2辺における厚み減少領域の幅が、H2である。H2はH1以上である。H3及びH4は、それぞれ、H2よりも大きい。第2辺については、外装材9に接触する可能性が低い。従って、H2については、H3及びH4より小さくてもよい。
【0063】
一態様において、積層方向に沿って見た場合に、第1電極層3は長方形である。タブ側端部は、2つの短辺のうちの少なくとも一方である。このような構成によれば、高エネルギー密度を実現することができる。
【0064】
一態様において、タブ側端部は、前記2つの短辺のうちのいずれか一方である。このような構成によれば、電極面積の低下を最小限に抑えることができ、高いエネルギー密度を実現できる。
【0065】
一態様において、第1電極層3の断面を見た場合に、第1電極層3の幅は、第1集電体6側の方が、固体電解質層4側よりも大きい。
【0066】
一態様において、第1電極層3は、正極層であることが好ましい。
【0067】
一態様において、積層方向に沿って見た場合に、固体電解質層4の端部は、第1電極層3の端部よりも外側に位置している。第1電極層3の端面は、固体電解質層4により覆われている。このような構成においても、H1は、Hx(Max)であることにより、振動による第1電極層3の破損を防止できる。
【0068】
一態様において、固体電解質層4の端部は、第1電極層3の端面に沿って配置されている。第1電極層3の端面と第1集電体6の表面とによって形成される角部16において、固体電解質層4は折れ曲がっていない。このような構成によれば、固体電解質層4の全体を拘束することができる。従って、振動による固体電解質層4の損傷を防ぐことが出来る。
【符号の説明】
【0069】
1・・・全固体電池、2・・・発電要素、3・・・第1電極層、4・・・固体電解質層、5・・・第2電極層、6・・・第1集電体、7・・・第2集電体、8・・・集電タブ、9・・・外装材、10・・・シール部、11・・・拘束部材、12・・・厚み減少領域、13-1~13-4・・・辺、14-1・・・第1辺、14-2・・・第2辺、14-3・・・第3辺、14-4・・・第4辺、15・・・突き出し部、16・・・角部