(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150153
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ナイフホルダー
(51)【国際特許分類】
B26D 1/24 20060101AFI20241016BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20241016BHJP
B26D 7/26 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B26D1/24 B
F16B5/10 D
B26D1/24 E
B26D7/26
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063419
(22)【出願日】2023-04-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000147475
【氏名又は名称】株式会社西村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 周
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英明
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
3J001
【Fターム(参考)】
3C021JA03
3C021JA08
3C021JA10
3C027VV02
3J001FA02
3J001GB01
3J001GC02
3J001HA02
3J001HA07
3J001JD22
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で工具を用いることなく容易に組み立てることができるナイフホルダーを提供する。
【解決手段】ナイフホルダーである上刃ホルダー1は、スリッターナイフである上刃2を間に挟むホルダー本体10および保持リング20と、上刃2をホルダー本体10に対して押さえつける弾性部材としてのガーターばね30とを備えている。第1保持部材であるホルダー本体10は、保持リング20に向けて突出したピン11を有し、第2保持部材である保持リング20は、所定の周方向に延びるとともにピン11に嵌め合わせられる嵌合部21を有する。ガーターばね30が、ホルダー本体10と保持リング20との間に斥力を発生させることで、嵌合部21からのピン11の引き抜きと嵌合部21に対する周方向に沿ったピン11の移動とが制限されたロック状態となるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリッターナイフを間に挟む第1保持部材および第2保持部材と、
前記スリッターナイフを前記第1保持部材または前記第2保持部材に対して押さえつける弾性部材と、を備えるナイフホルダーであって、
前記第1保持部材は、前記第2保持部材に向けて突出したピンを有し、
前記第2保持部材は、所定の周方向に延びるとともに前記ピンに嵌め合わせられる嵌合部を有し、
前記弾性部材が、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に斥力を発生させることで、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きと前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動とが制限されたロック状態となるように構成されている
ことを特徴とするナイフホルダー。
【請求項2】
前記ロック状態と、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きが制限されるとともに前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動が許容されたロック解除状態と、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きが許容されたフリー状態とに切り替え可能に構成されており、
前記第1保持部材に対して前記第2保持部材が押さえつけられながら回動することで、前記ロック状態から、前記ロック解除状態を経て、前記フリー状態に切り替え可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のナイフホルダー。
【請求項3】
前記ピンは、頭部と、前記頭部よりも小さい径を有する軸部と、を有し、
前記嵌合部は、前記頭部を挿通可能な第1開口を形成する第1開口形成部と、前記周方向において前記第1開口に連続する第2開口を形成する第2開口形成部と、を有し、
前記第2開口形成部は、前記第2開口に前記軸部が挿通された状態で前記頭部が嵌まる凹部を有し、
前記凹部が、前記頭部の移動を規制することで、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きと前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動とを制限する
ことを特徴とする請求項1に記載のナイフホルダー。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記スリッターナイフの刃先に掛かる側圧を調整可能な側圧調整用スプリングである
ことを特徴とする請求項1に記載のナイフホルダー。
【請求項5】
前記弾性部材は、径方向に拡縮可能な環状のばねにより構成され、前記第1保持部材と前記第2保持部材とを離間させたとき前記ピンに掛かるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のナイフホルダー。
【請求項6】
前記第1保持部材は、前記周方向に沿って等間隔を空けて設けられた複数の前記ピンを有し、
前記第2保持部材は、前記周方向に沿って等間隔を空けて設けられた複数の前記嵌合部を有する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のナイフホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリッターナイフを保持するナイフホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、スリッターナイフを保持するナイフホルダーは、スリッターナイフを間に挟む2つの保持部材と、スリッターナイフを一方の保持部材に対して押さえ付ける弾性部材とを備えており、2つの保持部材はボルトを用いて締結される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、上記のようにボルトを用いて2つの保持部材を締結する構成では、締結用の工具が必要になるため、ナイフホルダーの組み立てに手間が掛かるという問題があり、スリッターナイフの交換作業が厄介であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で工具を用いることなく容易に組み立てることができるナイフホルダーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のナイフホルダーは、スリッターナイフを間に挟む第1保持部材および第2保持部材と、前記スリッターナイフを前記第1保持部材または前記第2保持部材に対して押さえつける弾性部材と、を備えるナイフホルダーであって、前記第1保持部材は、前記第2保持部材に向けて突出したピンを有し、前記第2保持部材は、所定の周方向に延びるとともに前記ピンに嵌め合わせられる嵌合部を有し、前記弾性部材が、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に斥力を発生させることで、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きと前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動とが制限されたロック状態となるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記ロック状態と、前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動が許容されたロック解除状態と、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きが許容されたフリー状態とに切り替え可能に構成されており、前記第1保持部材に対して前記第2保持部材が押さえつけられながら回動することで、前記ロック状態から、前記ロック解除状態を経て、前記フリー状態に切り替え可能に構成されていることが好ましい。
【0008】
また、前記ピンは、頭部と、前記頭部よりも小さい径を有する軸部と、を有し、前記嵌合部は、前記頭部を挿通可能な第1開口を形成する第1開口形成部と、前記周方向において前記第1開口に連続する第2開口を形成する第2開口形成部と、を有し、前記第2開口形成部は、前記第2開口に前記軸部が挿通された状態で前記頭部が嵌まる凹部を有し、前記凹部が、前記頭部の移動を規制することで、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きと前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動とを制限することが好ましい。
【0009】
また、前記弾性部材は、前記スリッターナイフの刃先に掛かる側圧を調整可能な側圧調整用スプリングであることが好ましい。
【0010】
また、前記弾性部材は、径方向に拡縮可能な環状のばねにより構成され、前記第1保持部材と前記第2保持部材とを離間させたとき前記ピンに掛かるように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記第1保持部材は、前記周方向に沿って等間隔を空けて設けられた複数の前記ピンを有し、前記第2保持部材は、前記周方向に沿って等間隔を空けて設けられた複数の前記嵌合部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で工具を用いることなく容易に組み立てることができるナイフホルダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)および(B)は、本発明の一実施形態に係るナイフホルダーの外観図である。
【
図2】同実施形態に係るナイフホルダーの分解斜視図である。
【
図3】(A)および(B)は、同実施形態に係るナイフホルダーが備える第1保持部材の外観図であり、(C)は、第1保持部材の断面図である。
【
図4】(A)および(B)は、同実施形態に係るナイフホルダーが備える第2保持部材の外観図である。
【
図5】(A)は、第2保持部材の拡大図であり、(B)~(D)は、第2保持部材の断面図である。
【
図6】(A)~(C)は、同実施形態に係るナイフホルダーの組み立て過程を説明するための断面図である。
【
図7】(A)は、同実施形態に係るナイフホルダーの組み立て過程を説明するための断面図であり、(B)および(C)は、同実施形態に係るナイフホルダーの分解過程を説明するための断面図である。
【
図8】(A)および(B)は、同実施形態に係るナイフホルダーの分解過程を説明するための断面図である。
【
図9】同実施形態に係るナイフホルダーを備えたスリッター装置の概略構成図である。
【
図10】一変形例に係るナイフホルダーの概略構成図である。
【
図11】一変形例に係る第2保持部材の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係るナイフホルダーである上刃ホルダー1を説明する。なお、図中の矢印で示すX方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する直線方向である。
【0015】
図1(A)は、上刃2を保持している上刃ホルダー1の斜視図であり、
図1(B)は、Y方向に対して垂直な方向から見た上刃ホルダー1の外観図である。また、
図2は、上刃ホルダー1を分解した状態を示す分解斜視図である。
【0016】
図1および
図2に示すように、上刃ホルダー1は、第1保持部材であるホルダー本体10と、第2保持部材である保持リング20と、弾性部材であるガーターばね30とを備えている。上刃ホルダー1は、上刃2を保持するナイフホルダーであり、スリッター装置が備える上刃軸4(
図9参照)に移動可能に設けられる移動式ホルダーである。
【0017】
上刃2は、下刃(図示略)とともにスリット対象であるシートを剪断可能なスリッターナイフである。上刃2は、環状に形成された丸刃であり、鋭角な刃先を有するゲーベルナイフ(ディッシュ刃)である。
【0018】
ホルダー本体10および保持リング20は、上刃2を間に挟むことで、上刃2を保持する。ホルダー本体10は、保持リング20に向けて突出した複数のピン11を有しており、保持リング20は、所定の周方向T(
図4参照)に延びるとともにピン11に嵌め合わせられる複数の嵌合部21を有している。ピン11および嵌合部21は、ホルダー本体10と保持リング20とが離間することを制限するとともに、ホルダー本体10に対して保持リング20が周方向Tに回動することを制限するように構成されている。
【0019】
ガーターばね30は、上刃2と保持リング20との間に設けられ、上刃2をホルダー本体10に対して押さえつける弾性部材である。ガーターばね30は、径方向に拡縮可能な環状のばねであって、コイルばねにより形成されている。ガーターばね30は、当該ばね30の内径が拡大することで、保持リング20を乗り越えることができるように構成されている。また、ホルダー本体10と保持リング20とを離間させたとき、ガーターばね30は、当該ばね30の内径が縮小することで、複数のピン11に掛かるように構成されている。また、本実施形態に係るガーターばね30は、上刃2の刃先に掛かる側圧を調整可能な側圧調整用スプリングである。上刃2の刃先に掛かる側圧は、
図9を参照して後述する。
【0020】
図3を参照して、ホルダー本体10を詳しく説明する。
図3(A)は、ホルダー本体10をY方向から見た図であり、
図3(B)は、ホルダー本体10をY方向に垂直な方向から見た図である。また、
図3(C)は、
図3(A)中のC-C線断面図である。
【0021】
図3(A)および
図3(B)に示すように、ホルダー本体10は、内側面12と、外側面13と、内周面14と、凸部15とを有している。ホルダー本体10は、
図3(C)に示すように、おねじ部品10Bがねじ込まれた保持リング10Aにより構成されている。また、ホルダー本体10は、上刃軸4(
図9参照)に保持リング10Aを固定する固定機構(図示略)を有している。
【0022】
複数のピン11は、内側面12からY方向に突出しており、周方向Tに沿って等間隔を空けて設けられている。本実施形態では、3つのピン11が、同一円周上に、周方向Tに沿って120度周期で設けられている。ピン11は、
図3(B)および
図3(C)に示すように、頭部11Aと、頭部11Aよりも小さい径を有する軸部11Bとを有している。ピン11は、保持リング10Aに予めねじ込まれたおねじ部品10Bにより構成されている。
【0023】
内側面12および外側面13は、Y方向を法線方向とする面である。内側面12は、上刃ホルダー1の内側に向けて設けられる面であって、保持リング20に対向する面である。外側面13は、上刃ホルダー1の外側に向けて設けられる面であって、内側面12の反対側に設けられた面である。内側面12は、外周部12Aと、外周部12Aよりも内周側に設けられた内周部12Bとを有している。外周部12Aは、上刃2を保持する上刃保持面として機能する。内周部12Bは、外周部12AよりもY方向に突出しており、ピン11が設けられたピン配置面として機能する。
【0024】
内周面14は、円筒状の面であって、内側面12から外側面13にわたって貫通している開口を形成する。内周面14により形成された開口には、上述したスリッター装置の上刃軸4が挿し入れられる。
【0025】
凸部15は、内側面12よりも内周側に設けられており、内側面12の内周部12BよりもY方向に突出している。凸部15は、保持リング20に嵌め入れられるように構成されている。
【0026】
図4および
図5を参照して、保持リング20を詳しく説明する。
図4(A)および
図4(B)は、それぞれ、保持リング20をY方向から見た図である。また、
図5(A)は、保持リング20の一部を拡大した拡大図であり、
図5(B)は、
図5(A)中のB-B線断面図であり、
図5(C)は、
図5(A)中のC-C線断面図であり、
図5(D)は、
図5(A)中のD-D線断面図である。
【0027】
図4に示すように、保持リング20は、内側面22(
図4(A)参照)と、外側面23(
図4(B)参照)と、内周面24とを有している。
図5(A)は、外側面23に開口している嵌合部21を図示した拡大図である。
【0028】
複数の嵌合部21は、周方向Tに沿って等間隔を空けて設けられている。本実施形態では、3つの嵌合部21が、同一円周上に、周方向Tに沿って120度周期で設けられている。嵌合部21は、
図5(A)~(D)に示すように、第1開口形成部21Aと、第2開口形成部21Bとを有している。第1開口形成部21Aは、ピン11の頭部11Aを挿通可能な第1開口を形成する。第2開口形成部21Bは、周方向Tにおいて第1開口に連続する第2開口を形成し、ホルダー本体10と保持リング20とが離間しないようにピン11の頭部11Aの移動を規制する。すなわち、第1開口は、ピン11の頭部11Aおよび軸部11Bが挿通可能な開口(ピン頭部貫通領域)であり、第2開口は、ピン11の頭部11Aが挿通不可能であって軸部11Bが挿通可能な開口(ピン軸部貫通領域)である。本実施形態に係る第2開口形成部21Bは、ピン11の頭部11Aが収容されるように、外側面23を窪ませて形成されている。また、第2開口形成部21Bは、第2開口にピン11の軸部11Bが挿通された状態でピン11の頭部11Aが嵌まる凹部21Cを有している。凹部21Cは、ガーターばね30により頭部11Aに対して押さえつけられ、頭部11Aの移動を規制する。
【0029】
内側面22および外側面23は、Y方向を法線方向とする面である。内側面22は、上刃ホルダー1の内側に向けて設けられる面であって、ホルダー本体10に対向する面である。外側面23は、上刃ホルダー1の外側に向けて設けられる面であって、内側面22の反対側に設けられた面である。内側面22は、外周部22Aと、外周部22Aよりも内周側に設けられた内周部22Bとを有している。外周部22Aは、外周に向かうにつれてホルダー本体10から離れるようにテーパ状に形成されており、ガーターばね30を保持する弾性部材保持面として機能する。内周部22Bは、嵌合部21が設けられた嵌合部配置面として機能する。
【0030】
内周面24は、円筒状の面であって、内側面22から外側面23にわたって貫通している開口を形成する。内周面24により形成された開口には、上述したホルダー本体10の凸部15が嵌め入れられる。
【0031】
次に、
図6(A)~(C)、および
図7(A)を参照して、上刃ホルダー1の組み立て過程を説明する。
上刃ホルダー1を組み立てる際は、まず、ホルダー本体10の外周部12Aに上刃2を載せて、次いで、
図6(A)に示すように、保持リング20の第1開口形成部21Aに形成された第1開口にピン11の頭部11Aおよび軸部11Bが挿し込まれるように、ピン11と嵌合部21とを嵌め合わせる。
【0032】
次いで、
図6(B)に示すように、ピン11が第1開口形成部21Aから第2開口形成部21Bに移動するように、ホルダー本体10に対して保持リング20を回動させ、
図6(C)に示すように、ピン11の頭部11Aが第2開口形成部21Bの凹部21Cに嵌まるように、ピン11と嵌合部21との嵌め合わせ状態を変化させる。
【0033】
そして、
図7(A)に示すように、上刃2と保持リング20との間にガーターばね30を嵌めることによって、上刃ホルダー1の組み立てが完了する。このとき、ガーターばね30は、ホルダー本体10に対して上刃2を押さえつけるとともに、ピン11の頭部11Aに対して嵌合部21の凹部21Cを押さえつける。すなわち、ガーターばね30が、ホルダー本体10と保持リング20との間に斥力を発生させ、凹部21Cは、頭部11Aの移動を規制することで、嵌合部21からのピン11の引き抜きと嵌合部21に対する周方向Tに沿ったピン11の移動を制限する。こうして、上刃ホルダー1は、嵌合部21からのピン11の引き抜きが制限されるとともに嵌合部21に対して周方向Tに沿ったピン11の移動が制限されたロック状態となる。
【0034】
次に、
図7(B),(C)、および
図8(A),(B)を参照して、上刃ホルダー1の分解過程を説明する。
上刃ホルダー1を分解する際は、まず、
図7(B)に示すように、保持リング20をホルダー本体10に対して押さえつけ、凹部21Cを頭部11Aよりも沈める。こうすることで、上刃ホルダー1は、ロック状態から、嵌合部21に対して周方向Tに沿ったピン11の移動が許容されたロック解除状態に切り替わる。
【0035】
次いで、
図7(C)に示すように、ホルダー本体10に対して保持リング20を押さえつけながら回動させ、
図8(A)に示すように、ピン11が第2開口形成部21Bから第1開口形成部21Aに移動するように、ピン11と嵌合部21との嵌め合わせ状態を変化させる。こうすることで、上刃ホルダー1は、ロック状態から、ロック解除状態を経て、嵌合部21からのピン11の引き抜きが許容されたフリー状態に切り替わる。
【0036】
ホルダー本体10に対して保持リング20を押さえつけた状態を解消すると、
図8(B)に示すように、ガーターばね30が径方向に縮小し、保持リング20の第1開口形成部21Aに形成された第1開口からピン11の軸部11Bが抜け出るように、ホルダー本体10と保持リング20とが離間する。このとき、縮小したガーターばね30は、複数のピン11に掛かり、ピン11の頭部11Aにより保持される。そして、保持リング20、ガーターばね30、および上刃2を、ホルダー本体10から順に取り外すことで、上刃ホルダー1の分解が完了する。
【0037】
図9は、上刃ホルダー1を備えたスリッター装置の概略構成図である。なお、
図9は、スリッター装置の一部のみを図示しており、
図9中の上刃ホルダー1、上刃2、および下刃3は、片側断面図として図示されている。
【0038】
図9に示すように、スリッター装置は、上刃2を保持する上刃ホルダー1と、上刃2と摺り合う下刃3と、上刃ホルダー1を支持する上刃軸4と、下刃3を支持する下刃軸5とを備えている。
【0039】
上刃ホルダー1は、上刃2の刃先が下刃3と摺り合うように設けられる。このとき、ガーターばね30は、下刃3に対して上刃2の刃先を押さえつけることで、上刃2の刃先に側圧が掛かる。ガーターばね30は、弾性変形することで、上刃2と下刃3との接圧が過剰に大きくならないように、上刃2の刃先に掛かる側圧を調整する。
【0040】
本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)ガーターばね30(弾性部材)が、ホルダー本体10(第1保持部材)と保持リング20(第2保持部材)との間に斥力を発生させることで、嵌合部21からのピン11の引き抜きと嵌合部20に対する周方向Tに沿ったピン11の移動とが制限されたロック状態となるように構成されている。したがって、ガーターばね30の作用によってホルダー本体10と保持リング20とが締結されるため、ボルトの締め付けによってホルダー本体10と保持リング20とを締結する必要がない。また、ガーターばね30が、上刃2(スリッターナイフ)を押さえつける押圧部品として機能し、ホルダー本体10と保持リング20とを締結する締結部品としても機能するため、押圧部品と締結部品とをそれぞれ異なる弾性部材とする構成に比べて、部品点数を減らすことができる。以上より、簡易な構成で工具を用いることなく容易に上刃ホルダー1(ナイフホルダー)を組み立てることができる。
【0041】
(2)ホルダー本体10に対して保持リング20が押さえつけられながら回動することで、ロック状態から、ロック解除状態を経て、フリー状態に切り替え可能に構成されている。したがって、ホルダー本体10と保持リング20との締結を解除する際もピンを取り外す必要がなく、工具を用いることなく容易に上刃ホルダー1を分解することができる。
【0042】
(3)嵌合部21に設けられた凹部21Cが、ピン11の頭部11Aの移動を規制することで、嵌合部21からのピン11の引き抜きと嵌合部21に対する周方向Tに沿ったピン11の移動とを制限する。このため、ピン11の頭部11Aを、第1開口形成部21Aから第2開口形成部21Bに移動させて凹部21Cに嵌めることで、ホルダー本体10と保持リング20との離間、および、ホルダー本体10に対する保持リング20の回動を規制できる。
【0043】
(4)ガーターばね30は、上刃2の刃先に掛かる側圧を調整可能な側圧調整用スプリングである。このため、ガーターばね30は、刃先の側圧を調整する側圧調整部品としても機能するため、押圧部品と締結部品と側圧調整部品とをそれぞれ異なる部品とする構成に比べて、部品点数を減らすことができる。
【0044】
(5)ガーターばね30(径方向に拡縮可能な環状のばね)は、ホルダー本体10と保持リング20とを離間させたときピン11に掛かる。このため、上刃ホルダー1を分解するとき、ホルダー本体10と保持リング20との間からガーターばね30が飛ばないようにし、ガーターばね30の紛失を防止できる。
【0045】
(6)複数のピン11および複数の嵌合部21は、周方向Tに沿って等間隔を空けて設けられている。この構成によれば、1つのピン11に、複数の嵌合部21のうち任意の嵌合部21を嵌め合わせることができるため、複数のピン11と複数の嵌合部21との位置合わせを容易に行うことができる。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記構成を変更することもできる。例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0047】
・上記実施形態では、ホルダー本体10は開口を形成する内周面14を有しているが、例えば
図10に示すように、ホルダー本体10に開口が形成されていなくてもよい。この場合、上刃ホルダー1は、ホルダー本体10の一部を回転可能に支持する回転支持機構(図示略)に取り付けられていればよい。
【0048】
・上記実施形態では、ガーターばね30は側圧調整用スプリングであるが、例えば
図10に示すように、ガーターばね30が下刃3に対して上刃2の刃先を押さえつけなくてもよい。この場合、上刃2の刃先に掛かる側圧は、上刃ホルダー1をY方向に移動させるホルダー移動機構(図示略)により調整することができる。
【0049】
・上記実施形態では、上刃ホルダー1は3つのピン11と3つの嵌合部21を有しているが、ピン11の数および嵌合部21の数を適宜変更してもよい。また、ピン11の形状および嵌合部21の形状を適宜変更してもよい。例えば、嵌合部21の第2開口形成部21Bが、外側面23を窪ませて形成されていなくてもよい。
【0050】
また、例えば
図11に示すように、嵌合部21は、第1開口形成部21Aと、第1開口形成部21Aを挟んで設けられた2つの第2開口形成部21Bとを有していてもよい。すなわち、2つの第2開口形成部21Bのうち、一方は、周方向Tにおいて第1開口の一端に連続する第2開口を形成し、他方は、周方向Tにおいて第1開口の他端に連続する第2開口を形成している。このような構成によれば、ロック状態からフリー状態に切り替わる際に、ピン11と第1開口形成部21Aとの精確な位置合わせが求められるため、嵌合部21からのピン11の引き抜きが意図せずに許容されることを抑止できる。
【0051】
・上記実施形態では、上刃2はディッシュ刃であるが、ディッシュ刃以外のスリッターナイフを採用してもよい。すなわち、ナイフホルダーは、スリッターナイフとして、例えばフラット刃を保持してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、上刃ホルダー1は弾性部材としてガーターばね30を備えているが、ガーターばね30以外の弾性部材を採用してもよい。すなわち、ナイフホルダーは、スリッターナイフを押さえつける弾性部材として、例えば環状の皿ばねを備えていてもよい。
【0053】
ガーターばね30に代えて皿ばねを採用した場合、上刃ホルダー1を組み立てる際は、まず、ホルダー本体10の外周部12Aに上刃2を載せ、次いで、上刃2に皿ばねを載せる。そして、ピン11と第1開口形成部21Aとが重なるように皿ばねに保持リング20を載せて、ホルダー本体10に対して保持リング20を押さえつけながら回動させることで、上刃ホルダー1はロック状態となる。
【0054】
・上記実施形態では、ガーターばね30は、上刃2をホルダー本体10に対して押さえつけるが、上刃2を保持リング20に対して押さえつけるように構成されていてもよい。すなわち、ナイフホルダーは、スリッターナイフを第1保持部材または第2保持部材に対して押さえつける弾性部材を備えていればよい。
【符号の説明】
【0055】
1 上刃ホルダー(ナイフホルダー)
2 上刃(スリッターナイフ)
10 ホルダー本体(第1保持部材)
10A 保持リング
10B おねじ部品
11 ピン
11A 頭部
11B 軸部
20 保持リング(第2保持部材)
21 嵌合部
21A 第1開口形成部
21B 第2開口形成部
21C 凹部
30 ガーターばね(弾性部材)
T 周方向
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリッターナイフを間に挟む第1保持部材および第2保持部材と、
前記スリッターナイフを前記第1保持部材または前記第2保持部材に対して押さえつける弾性部材と、を備えるナイフホルダーであって、
前記第1保持部材は、前記第2保持部材に向けて突出したピンを有し、
前記第2保持部材は、所定の周方向に延びるとともに前記ピンに嵌め合わせられる嵌合部を有し、
前記弾性部材が、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に斥力を発生させることで、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きと前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動とが制限されたロック状態となるように構成され、
前記ピンは、頭部と、前記頭部よりも小さい径を有する軸部と、を有し、
前記嵌合部は、前記頭部を挿通可能な第1開口を形成する第1開口形成部と、前記周方向において前記第1開口に連続する第2開口を形成する第2開口形成部と、を有し、
前記第2開口形成部は、前記第2開口に前記軸部が挿通された状態で前記頭部が嵌まる凹部を有し、
前記凹部が、前記頭部の移動を規制することで、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きと前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動とを制限する
ことを特徴とするナイフホルダー。
【請求項2】
前記ロック状態と、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きが制限されるとともに前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動が許容されたロック解除状態と、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きが許容されたフリー状態とに切り替え可能に構成されており、
前記第1保持部材に対して前記第2保持部材が押さえつけられながら回動することで、前記ロック状態から、前記ロック解除状態を経て、前記フリー状態に切り替え可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のナイフホルダー。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記スリッターナイフの刃先に掛かる側圧を調整可能な側圧調整用スプリングである
ことを特徴とする請求項1に記載のナイフホルダー。
【請求項4】
前記弾性部材は、径方向に拡縮可能な環状のばねにより構成され、前記第1保持部材と前記第2保持部材とを離間させたとき前記ピンに掛かるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のナイフホルダー。
【請求項5】
前記第1保持部材は、前記周方向に沿って等間隔を空けて設けられた複数の前記ピンを有し、
前記第2保持部材は、前記周方向に沿って等間隔を空けて設けられた複数の前記嵌合部を有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のナイフホルダー。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリッターナイフを間に挟む第1保持部材および第2保持部材と、
前記スリッターナイフを前記第1保持部材または前記第2保持部材に対して押さえつける弾性部材と、を備えるナイフホルダーであって、
前記第1保持部材は、前記第2保持部材に向けて突出したピンと、前記第2保持部材に対向するとともに前記ピンが設けられたピン配置面とを有し、
前記第2保持部材は、所定の周方向に延びるとともに前記ピンに嵌め合わせられる嵌合部と、前記第1保持部材に対向するとともに前記嵌合部が設けられた嵌合部配置面とを有し、
前記弾性部材が、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に斥力を発生させることで、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きと前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動とが制限されたロック状態となるように構成され、
前記ピンは、頭部と、前記頭部よりも小さい径を有する軸部と、を有し、
前記嵌合部は、前記頭部を挿通可能な第1開口を形成する第1開口形成部と、前記周方向において前記第1開口に連続する第2開口を形成する第2開口形成部と、を有し、
前記第2開口形成部は、前記第2開口に前記軸部が挿通された状態で前記頭部が嵌まる凹部を有し、
前記凹部が、前記頭部の移動を規制することで、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きと前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動とを制限し、
前記ロック状態において、前記ピン配置面および前記嵌合部配置面が互いに間隔を空けて設けられ、前記弾性部材が前記凹部を前記頭部に対して押さえつけている
ことを特徴とするナイフホルダー。
【請求項2】
前記ロック状態と、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きが制限されるとともに前記嵌合部に対する前記周方向に沿った前記ピンの移動が許容されたロック解除状態と、前記嵌合部からの前記ピンの引き抜きが許容されたフリー状態とに切り替え可能に構成されており、
前記第1保持部材に対して前記第2保持部材が押さえつけられながら回動することで、前記ロック状態から、前記ロック解除状態を経て、前記フリー状態に切り替え可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のナイフホルダー。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記スリッターナイフの刃先に掛かる側圧を調整可能な側圧調整用スプリングである
ことを特徴とする請求項1に記載のナイフホルダー。
【請求項4】
前記弾性部材は、径方向に拡縮可能な環状のばねにより構成され、前記第1保持部材と前記第2保持部材とを離間させたとき前記ピンに掛かるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のナイフホルダー。
【請求項5】
前記第1保持部材は、前記周方向に沿って等間隔を空けて設けられた複数の前記ピンを有し、
前記第2保持部材は、前記周方向に沿って等間隔を空けて設けられた複数の前記嵌合部を有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のナイフホルダー。