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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150155
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ねじ締め装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20241016BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B23P19/06 E
B25B23/14 630J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063421
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 将大
(72)【発明者】
【氏名】竹田 誉
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038CA05
3C038CB02
(57)【要約】
【課題】ねじ締めに必要な時間を低減しつつ、ねじ締めにおける不良の発生を抑制することができるねじ締め装置を提供する。
【解決手段】ねじ締め装置100は、被締結物99にねじ90を締結するねじ締め装置であって、回転工具ユニット10と、工具位置変位部3と、制御部2と、第1距離測定部51とを備えている。回転工具ユニット10は、回転工具11と、モータ12とを有している。制御部2は、モータ12および工具位置変位部3を制御する。第1距離測定部51は、ねじ90と被締結物99との間の距離を測定する。制御部2は、第1距離測定部51の出力に基づいて、ねじ90の頭部91が被締結物99に接触しないようにねじ90を被締結物99に仮締めし、ねじ90を被締結物99に仮締めした後に、ねじ90を締結するトルクを大きくするように、モータ12および工具位置変位部3を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結物にねじを締結するねじ締め装置であって、
前記ねじを回転させる回転工具と、前記回転工具を回転させるモータとを有する回転工具ユニットと、
前記回転工具ユニットを前記回転工具の回転軸方向に沿って移動させる工具位置変位部と、
前記モータおよび前記工具位置変位部を制御する制御部と、
前記ねじと前記被締結物との間の距離を測定する第1距離測定部とを備え、
前記制御部は、前記第1距離測定部からの出力に基づいて、前記ねじの頭部が前記被締結物に接触しないように前記ねじを前記被締結物に仮締めし、前記ねじを前記被締結物に仮締めした後に、前記ねじを締結するトルクを大きくするように、前記モータおよび前記工具位置変位部を制御する、ねじ締め装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記工具位置変位部の制御遅れ量と前記第1距離測定部からの出力とに基づいて、前記ねじの前記頭部が前記被締結物に接触しないように前記ねじを前記被締結物に仮締めする、請求項1に記載のねじ締め装置。
【請求項3】
前記ねじと前記回転工具の回転軸とが交差する位置に前記ねじを保持可能である第1チャックと、
前記回転軸方向に垂直な方向に沿って延在する平坦面を有している第2チャックと、を備え、
前記平坦面は、前記第1チャックと前記被締結物との間に位置する、請求項1または請求項2に記載のねじ締め装置。
【請求項4】
前記回転工具ユニットは、第2距離測定部と、前記回転工具に取り付けられるねじ押し付け部と、を有し、
前記第2距離測定部は、前記ねじ押し付け部と前記第2距離測定部との間の距離を測定し、
前記ねじ押し付け部は、前記回転工具が前記ねじに加える押し付け力が大きくなるにつれて前記第2距離測定部に近づき、
前記制御部は、前記第2距離測定部からの出力と前記第1距離測定部からの出力とに基づいて、前記ねじの前記頭部が前記被締結物に接触しないように前記ねじを前記被締結物に仮締めし、前記ねじを前記被締結物に仮締めした後に、前記ねじを締結するトルクを大きくするように、前記モータおよび前記工具位置変位部を制御する、請求項1または請求項2に記載のねじ締め装置。
【請求項5】
前記工具位置変位部と前記回転工具ユニットとを繋いでいるコンプライアンス部を備え、
前記コンプライアンス部は、前記回転軸方向に垂直な方向に沿って前記回転工具ユニットを移動可能である、請求項1または請求項2に記載のねじ締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ねじ締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ締め装置の制御方式には、ねじに加えるトルクに基づいて仮締めを終了するトルク制御方式がある。トルク制御方式を用いたねじ締め装置の一例として、国際公開第2021/261021号(特許文献1)には、回転工具と、第1モータと、第2モータと、制御部とを有するねじ締め装置が記載されている。回転工具は、ねじを回転させる。第1モータは、回転工具を回転駆動する。第2モータは、回転工具を軸方向に移動させる。制御部は、第1モータを予め決められた回転速度とし、第2モータによる回転工具の移動を、トルクが閾値トルクに達するまで行い、ねじをねじ穴にねじ込むための第1ステップと、トルクを予め決められたトルクに達するまで増加させる、ねじの本締めを行うための第2ステップと、を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/261021号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているねじ締め装置によれば、ねじ穴にねじ込む動作(仮締め)を速くするにつれて、トルクが規定値に達したことを検出してから仮締めを停止するまでに遅れが発生しやすくなる。このため、ねじに加わるトルクが過度に大きくなることによって、ねじおよび被締結物が変形する不良が発生するおそれがある。従って、ねじ締めに必要な時間を低減しつつ、ねじ締めにおける不良の発生を抑制することが困難である。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、ねじ締めに必要な時間を低減しつつ、ねじ締めにおける不良の発生を抑制することが可能なねじ締め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るねじ締め装置は、被締結物にねじを締結するねじ締め装置であって、回転工具ユニットと、工具位置変位部と、制御部と、第1距離測定部とを備えている。回転工具ユニットは、回転工具と、モータとを有している。回転工具は、ねじを回転させる。モータは、回転工具を回転させる。工具位置変位部は、回転工具ユニットを回転工具の回転軸方向に沿って移動させる。制御部は、モータおよび工具位置変位部を制御する。第1距離測定部は、ねじと被締結物との間の距離を測定する。制御部は、第1距離測定部の出力に基づいて、ねじの頭部が被締結物に接触しないようにねじを被締結物に仮締めし、ねじを被締結物に仮締めした後に、ねじを締結するトルクを大きくするように、モータおよび工具位置変位部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るねじ締め装置によれば、制御部は、第1距離測定部の出力に基づいて、ねじの頭部が被締結物に接触しないようにねじを被締結物に仮締めする。このため、仮締めを速くした場合においても、ねじの頭部が被締結物に接触することを抑制できる。これによって、ねじ締めに必要な時間を低減しつつ、ねじ締めにおける不良の発生を抑制することが可能なねじ締め装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るねじ締め装置の構成を示す一部断面模式図である。
図2図1の領域IIを示す拡大一部断面模式図である。
図3】実施の形態1に係るねじ締め装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図4】実施の形態1に係るねじ締め装置の動作を概略的に示すフロー図である。
図5】ねじを供給する工程を示す一部断面模式図である。
図6】第2チャックにねじを押し付ける工程を示す一部断面模式図である。
図7】ねじと被締結物との間の距離を測定する工程を示す一部断面模式図である。
図8】ねじと被締結物が接触する直前までねじ締めユニットを移動する工程を示す一部断面模式図である。
図9】ねじと被締結物が接触するまでねじ締めユニットを移動する工程を示す一部断面模式図である。
図10】工具位置変位部がねじを移動させる様子を示す模式図である。
図11】ねじを仮締めする工程を示す一部断面模式図である。
図12】ねじを本締めする工程を示す一部断面模式図である。
図13】実施の形態2に係るねじ締め装置の構成を示す一部断面模式図である。
図14】実施の形態2に係るねじ締め装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図15】実施の形態2に係るねじ締め装置の動作を概略的に示すフロー図である。
図16】実施の形態3に係るねじ締め装置の構成を示す一部断面模式図である。
図17】実施の形態4に係るねじ締め装置の構成を示す一部断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0010】
実施の形態1.
<ねじ締め装置の構成>
図1から図3を用いて、実施の形態1に係るねじ締め装置100の構成について説明する。図1に示されるように、ねじ締め装置100は、ねじ締めユニット1と、ユニット位置変位部4とを主に有している。ねじ締めユニット1は、ねじ90を回転させつつ、ねじ90を移動させる。ねじ締め装置100は、ユニット位置変位部4に固定されている。ユニット位置変位部4は、ねじ締めユニット1を移動させる。ねじ締め装置100は、ねじ90を被締結物99に締結する。被締結物99の主面97において、雌ねじ98が設けられている。ねじ90は、頭部91と、雄ねじ部92とを有している。雄ねじ部92は、頭部91に連なっている。頭部91は、座面93を構成している。座面93は、主面97に接触する面である。
【0011】
ねじ締めユニット1は、回転工具ユニット10と、工具位置変位部3と、チャック部6と、第1距離測定部51と、を主に有している。回転工具ユニット10は、ねじ90を回転させる。回転工具ユニット10は、工具位置変位部3に固定されている。工具位置変位部3は、ユニット位置変位部4に固定されている。工具位置変位部3は、回転工具ユニット10を移動させる。チャック部6は、ユニット位置変位部4に固定されている。チャック部6は、工具位置変位部3から離間している。チャック部6は、ねじ90を保持する。第1距離測定部51は、チャック部6に固定されている。第1距離測定部51は、ねじ90と被締結物99との間の距離を測定する。
【0012】
回転工具ユニット10は、回転工具11と、第1モータ12と、接続部45と、リニアブッシュ14と、トルクメータ17と、フレーム19と、を有している。回転工具11は、ねじ90を回転させる。第1モータ12は、回転工具11を回転させる。接続部45は、回転工具11と第1モータ12とを繋いでいる。リニアブッシュ14は、接続部45を摺動可能に支持している。トルクメータ17は、ねじ90に加えられるトルクを測定する。フレーム19は、第1モータ12、リニアブッシュ14およびトルクメータ17の各々を支持している。
【0013】
回転工具11は、ねじ90の頭部91と嵌合可能である。回転工具11の形状は、棒状である。回転工具11は、たとえばねじ回しおよびレンチなどの工具である。回転工具11から被締結物99に向かう方向は、第1方向101とされる。反対に、被締結物99から回転工具11に向かう方向は、第2方向102とされる。第2方向102は、第1方向101と反対の方向である。回転工具11の回転軸Aは、第1方向101に沿って延在している。
【0014】
第1モータ12は、回転工具11に対して第2方向102に設けられている。第1モータ12は、たとえばサーボモータである。第1モータ12は、本体部29と、軸部28とを有している。本体部29は、フレーム19に固定されている。本体部29は、軸部28を回転可能である。軸部28は、回転軸Aに沿って延在している。軸部28の回転軸は、たとえば回転軸Aと実質的に重なっている。フレーム19は、たとえば工具位置変位部3に固定されている。
【0015】
接続部45は、第1モータ12と回転工具11とを繋いでいる。接続部45は、第1モータ12が発生させた回転運動を回転工具11に伝達する。接続部45は、たとえば第1軸継手46と、第1中間部48と、第2軸継手47と、第2中間部49と、第3軸継手44とを有している。
【0016】
第1軸継手46は、軸部28に取り付けられている。第1軸継手46の形状は環状である。第1中間部48は、軸部28に対して第1方向101に設けられている。第1中間部48は、第1軸継手46に取り付けられている。別の観点から言えば、第1軸継手46は、軸部28と第1中間部48とを繋いでいる。第1中間部48の形状は、たとえば円柱状である。第1中間部48の直径は、たとえば軸部28の直径よりも小さい。第1中間部48の中心軸は、回転軸Aと実質的に重なっている。
【0017】
第2軸継手47は、第1中間部48に取り付けられている。第2軸継手47は、第1軸継手46に対して第1方向101に設けられている。第2軸継手47の形状は環状である。第2中間部49は、第2軸継手47に取り付けられている。別の観点から言えば、第2軸継手47は、第1中間部48と第2中間部49とを繋いでいる。第1方向101において、第2中間部49は、第1中間部48と回転工具11との間に設けられている。第2中間部49の形状は、たとえば円柱状である。第2中間部49の直径は、たとえば第1中間部48の直径よりも大きい。第2中間部49の中心軸は、回転軸Aと実質的に重なっている。第3軸継手44は、第2中間部49および回転工具11の各々に取り付けられている。第3軸継手44は、第2中間部49と回転工具11とを繋いでいる。第3軸継手44の形状は環状である。
【0018】
リニアブッシュ14は、フレーム19に固定されている。リニアブッシュ14は、第3軸継手44を取り囲んでいる。リニアブッシュ14は、第3軸継手44に接している。第3軸継手44が第1方向101に沿って摺動できるように、リニアブッシュ14は、第3軸継手44を支持している。リニアブッシュ14の形状は環状である。
【0019】
トルクメータ17は、フレーム19に固定されている。トルクメータ17は、たとえば第1中間部48に取り付けられている。トルクメータ17は、第1中間部48を取り囲んでいる。
【0020】
工具位置変位部3は、たとえば電動アクチュエータなどの直動機構である。工具位置変位部3は、たとえば第2モータ31と、第1直動部32とを有している。第2モータ31は、たとえばサーボモータである。第1直動部32は、第2モータ31が発生させた回転運動を直動運動に変換する。第1直動部32は、たとえば第1スライド部33と、第1ボールねじ(図示せず)と、第1リニアガイド(図示せず)とを有している。第1ボールねじは、第2モータ31に接続されている。第1スライド部33は、第1ボールねじおよび第1リニアガイドの各々に取り付けられている。第1スライド部33は、たとえば回転工具ユニット10に取り付けられている。第1スライド部33は、第1方向101に沿って移動可能である。
【0021】
チャック部6は、第1モータ12に対して第1方向101に設けられている。チャック部6は、回転工具ユニット10から離間している。チャック部6は、支持部65と、第1チャック61と、第2チャック62とを有している。支持部65は、ユニット位置変位部4に固定されている。
【0022】
第1チャック61は、支持部65に取り付けられている。第1チャック61は、ねじ90と回転軸Aとが交差する位置に、ねじ90を保持可能である。第1チャック61は、ねじ90の姿勢を整える。第1チャック61は、第1モータ12に対して第1方向101に設けられている。第1チャック61の詳細な構成は後述する。
【0023】
第2チャック62は、支持部65に取り付けられている。第2チャック62は、第1チャック61に対して第1方向101に設けられている。第2チャック62は、第1チャック61から離間している。座面93において、第2チャック62は、ねじ90を支持する。第2チャック62は、第1チャック61と被締結物99との間に位置する。第2チャック62の詳細な構成は後述する。
【0024】
第1距離測定部51は、支持部65に固定されている。第1距離測定部51は、第1方向101における座面93と主面97との間の距離(被締結物距離D)を測定する。被締結物距離Dは、ねじ90が第2チャック62に支持されている場合における座面93と主面97との間の距離である。第1距離測定部51は、たとえば非接触式変位計または接触式変位計などの変位計である。非接触式変位計は、たとえばレーザー変位計、磁気式変位計および超音波変位計などである。接触式変位計は、たとえば触針式変位計などである。
【0025】
ユニット位置変位部4は、たとえば電動アクチュエータなどの直動機構である。ユニット位置変位部4は、たとえば第3モータ41と、第2直動部42とを有している。第2直動部42は、第3モータ41が発生させた回転運動を直動運動に変換する。第2直動部42は、たとえば第2スライド部43と、第2ボールねじ(図示せず)と、第2リニアガイド(図示せず)とを有している。第2ボールねじは、第3モータ41に接続されている。第2スライド部43は、第2ボールねじおよび第2リニアガイドの各々に取り付けられている。第2スライド部43は、工具位置変位部3およびチャック部6の各々に固定されている。第2スライド部43は、第1方向101に沿って移動可能である。なお、図1において示される断面は、回転軸Aを含む断面である。
【0026】
図2に示されるように、第1チャック61は、第1部品71と、第2部品74と、第1ばね73と、第2ばね76とを有している。回転軸Aは、第1部品71と第2部品74との間に位置している。第1チャック61は、頭部91が雄ねじ部92に対して第2方向102に位置している状態で、ねじ90を保持可能である。
【0027】
第1部品71は、第1方向101に垂直な方向に沿って移動可能である。第1部品71が移動する方向は、第3方向103とされる。第1部品71は、第1傾斜面72を有している。回転軸Aを含む断面において、第1傾斜面72は、回転軸Aに対して傾斜している。具体的には、回転軸Aを含む断面において、第1傾斜面72は、第1方向101に向かうにつれて、第3方向103における回転軸Aと第1傾斜面72との間の距離が短くなるように傾斜している。第1方向101に垂直な断面において、第1傾斜面72は、たとえば半円形状である。
【0028】
第2部品74は、回転軸Aに対して第1部品71の反対側に設けられている。第2部品74は、第1部品71から離間している。第2部品74は、第3方向103と反対の方向に沿って移動可能である。第2部品74の移動方向は、第4方向104とされる。第2部品74は、第2傾斜面75を有している。
【0029】
第1傾斜面72と第2傾斜面75とは、第1隙間79を構成している。回転軸Aは、第1隙間79を通っている。第1隙間79は、ねじ90が保持される空間である。回転軸Aを含む断面において、第2傾斜面75は、回転軸Aに対して傾斜している。具体的には、回転軸Aを含む断面において、第2傾斜面75は、第1方向101に向かうにつれて、第3方向103における回転軸Aと第2傾斜面75との間の距離が短くなるように傾斜している。第1方向101に垂直な断面において、第2傾斜面75は、たとえば半円形状である。
【0030】
第1ばね73は、第1部品71と支持部65との間に設けられている。第1ばね73は、第1部品71および支持部65の各々に接触している。第1ばね73は、第3方向103に沿って伸縮可能である。第2ばね76は、第2部品74と支持部65との間に設けられている。第2ばね76は、第2部品74および支持部65の各々に接触している。第2ばね76は、第4方向104に沿って伸縮可能である。
【0031】
頭部91が第1チャック61に接触している際に、雄ねじ部92が第1チャック61に接触しないように、第1チャック61は構成されている。具体的には、第1傾斜面72および第2傾斜面75の各々の回転軸Aに対する傾斜角と、第1傾斜面72および第2傾斜面75の各々の第1方向101における長さとは、頭部91の直径および雄ねじ部92の長さに基づいて決定されている。
【0032】
第2チャック62は、第3部品63と、第4部品64とを有している。第3部品63と第4部品64とは、互いに離間している。第3部品63と第4部品64とは、第2隙間68を構成している。第2隙間68は、第1方向101に沿って延在している。回転軸Aは、第2隙間68を通っている。
【0033】
第2チャック62は、平坦面69を有している。平坦面69は、第3部品63と第4部品64とによって構成されている。平坦面69は、ねじ90を支持する面である。平坦面69は、座面93と接触する。平坦面69は、第1方向101に垂直な方向に沿って延在している。平坦面69は、第1チャック61と被締結物99との間に位置する。
【0034】
第2チャック62は、開閉機構(図示せず)を有している。開閉機構は、たとえば電動グリッパ、エアーグリッバ、アクチュエータなどである。開閉機構は、たとえば第3方向103における第3部品63と第4部品64との間の距離を調整可能である。
【0035】
図2に示されるように、第1距離測定部51は、測定面59を有している。第1距離測定部51は、測定面59と測定する対象との間の距離を測定可能である。第1方向101において、測定面59は、平坦面69と実質的に同じ位置に設けられている。第1距離測定部51は、測定面59と被締結物99との間の距離を測定することによって、被締結物距離Dを測定可能である。
【0036】
図3に示されるように、ねじ締め装置100は、制御部2を有している。制御部2には、第1距離測定部51と、トルクメータ17と、第1モータ12と、工具位置変位部3と、ユニット位置変位部4と、開閉機構67とが電気的に接続されている。制御部2は、たとえばパーソナルコンピューターと、サーボドライバとによって構成されている。
【0037】
制御部2は、第1モータ12に信号を出力することによって、第1モータ12を制御し稼働させることができる。制御部2は、第1モータ12に信号を出力することによって、回転工具11を回転可能である。具体的には、制御部2は、回転工具11の回転開始、回転工具11の回転停止、回転工具11の回転量、回転工具11の角速度および回転工具11の角加速度などを制御可能である。たとえば、制御部2は、第1モータ12に供給される電流を制御可能である。
【0038】
制御部2は、工具位置変位部3に信号を出力することによって、工具位置変位部3を制御し稼働させることができる。制御部2は、工具位置変位部3に信号を出力することによって、回転工具ユニット10を第1方向101に沿って移動可能である。具体的には、制御部2は、回転工具ユニット10の移動開始、回転工具ユニット10の移動停止、回転工具ユニット10の移動距離、回転工具ユニット10の速度、回転工具ユニット10の加速度などを制御可能である。たとえば、制御部2は、第2モータ31(図1参照)に供給される電流を制御可能である。
【0039】
制御部2は、ユニット位置変位部4に信号を出力することによって、ユニット位置変位部4を制御し稼働させることができる。制御部2は、ユニット位置変位部4に信号を出力することによって、ねじ締めユニット1を第1方向101に沿って移動可能である。制御部2は、ねじ締めユニット1の移動開始、ねじ締めユニット1の移動停止、ねじ締めユニット1の移動距離、ねじ締めユニット1の速度およびねじ締めユニット1の加速度などを制御可能である。たとえば、制御部2は、第3モータ41(図1参照)に供給される電流を制御可能である。
【0040】
制御部2は、開閉機構67に信号を出力することによって、開閉機構67を制御し稼働させることができる。制御部2は、開閉機構67に信号を出力することによって、第3部品63および第4部品64(図2参照)を移動可能である。
【0041】
制御部2は、入力部21と、記憶部22と、演算部23と、出力部24とを有している。入力部21は、第1距離測定部51、トルクメータ17、第1モータ12、工具位置変位部3およびユニット位置変位部4の各々から出力された信号が入力される。記憶部22は、入力部21に入力された信号を記憶する。
【0042】
演算部23は、入力部21に入力されたデータと、記憶部22が記憶しているデータとに基づいて、所定の演算を行う。出力部24は、第1モータ12、工具位置変位部3、ユニット位置変位部4および開閉機構67の各々に制御指令を出力する。
【0043】
<ねじ締め装置の動作>
次に、図4から図12を用いて、実施の形態1に係るねじ締め装置100の動作について説明する。
【0044】
図4および図5に示されるように、まず、ねじ90がねじ締め装置100に供給される(工程S10)。ねじ締め装置100へのねじ90の供給は、たとえば作業者の手によって行われる。ねじ90は、第1隙間79に供給される。頭部91が第1傾斜面72および第2傾斜面75(図2参照)の少なくとも一方に接触しつつ、ねじ90は、重力によって第1方向101に移動する。これによって、頭部91が雄ねじ部92に対して第2方向102に位置するように、ねじ90の姿勢が整えられる。
【0045】
ねじ90は、第1チャック61によって把持される。第1チャック61は、ねじ90と回転軸Aとが交差する位置に、ねじ90を保持する。ねじ90は、回転工具11に対して第1方向101に配置される。工程S10において、回転工具11は、ねじ90から離間している。
【0046】
次に、図6に示されるように、制御部2は、回転工具11を第1方向101に沿って移動させる(工程S20)。具体的には、制御部2は、工具位置変位部3に信号を出力する。工具位置変位部3は、制御部2からの出力に基づいて第2モータ31を稼働させることによって、第1スライド部33および回転工具ユニット10を矢印B1に沿って移動させる。矢印B1は、たとえば第1方向101に沿う方向である。回転工具11が頭部91に接触する。
【0047】
図6に示されるように、回転工具11は、ねじ90に嵌合する(工程S30)。回転工具11は、第1方向101に沿ってねじ90を押す。第1チャック61は、回転工具11によってねじ90を介して押される。第1チャック61は、回転工具11によって押し広げられる。具体的には、第1チャック61の第1部品71(図2参照)は第3方向103に沿って押され、且つ第2チャック62の第2部品74(図2参照)は、第4方向104に沿って押される。第1ばね73および第2ばね76の各々(図2参照)が縮む。第1チャック61によるねじ90の把持が解除される。ねじ90は、第1方向101に沿って移動する。
【0048】
制御部2は、開閉機構67(図3参照)に信号を出力することによって、第3部品63および第4部品64の各々の位置を制御する。具体的には、制御部2は、第3方向103における第3部品63(図2参照)と第4部品64(図2参照)との間の距離が、頭部91の直径よりも短く且つ雄ねじ部92の直径よりも大きくなるように、第3部品63および第4部品64の各々の位置を制御する。
【0049】
図6および図7に示されるように、第1チャック61から第2チャック62へねじ90が受け渡される。雄ねじ部92は、第2チャック62の第2隙間68に配置される。座面93は、平坦面69に接触する。
【0050】
回転工具11によって、第2チャック62にねじ90が押し付けられる(工程S40)。具体的には、平坦面69にねじ90が押し付けられる。回転工具11からねじ90に第1押し付け力T1が加えられる。第1押し付け力T1は、第1方向101に沿う力である。第2チャック62にねじ90が押し付けられることによって、第1方向101において、座面93が平坦面69上に位置決めされる。言い換えれば、第1方向101において、座面93の位置が、平坦面69の位置と実質的に同じになる。
【0051】
工具位置変位部3は、第2モータ31に供給される電流に関する信号を制御部2に出力する。制御部2は、第2モータ31に供給される電流を制御することによって、第2チャック62にねじ90を押し付けることができる。制御部2は、工具位置変位部3から出力された信号に基づいて、回転工具11がねじ90を平坦面69に押し付けているか否かを判定する。具体的には、制御部2は、第2モータ31に供給される電流の大きさが予め決められた規定値(第1規定値)を超えたか否かを判定することによって、回転工具11がねじ90を平坦面69に押し付けているか否かを判定する。制御部2は、第2モータ31に供給される電流値が第1規定値を超えたことを検出するまで、回転工具11を第1方向101に沿って移動させ続ける。制御部2は、第2モータ31に供給される電流値が第1規定値を超えたことを検出すると、回転工具11がねじ90を平坦面69を押し付けていると判定し、回転工具11を停止させる。
【0052】
制御部2は、開閉機構67(図3参照)に信号を出力することによって、第2チャック62を閉じさせる。具体的には、制御部2は、第3方向103における第3部品63と第4部品64との間の距離が短くなるように、第3部品63および第4部品64の各々を移動させる。第2チャック62は、雄ねじ部92を挟み込む。これによって、第3方向103におけるねじ90の位置が調整される。このため、回転軸Aとねじ90の中心軸との間の距離を短くすることができる。
【0053】
第1ばね73の弾性力によって、第1部品71は、第4方向104に沿って移動する。第2ばね76の弾性力によって、第2部品74は、第3方向103に沿って移動する。これによって、第1部品71および第2部品74の各々は、自動的に初期位置に復帰することができる。
【0054】
図7に示されるように、第1距離測定部51は、ねじ90と被締結物99との間の距離(被締結物距離D)を測定する(工程S50)。具体的には、第1距離測定部51は、第1方向101における測定面59と主面97との間の距離を測定する。主面97は、たとえば第1方向101に垂直な方向に沿って延在している。
【0055】
工程S50における被締結物距離Dは、初期被締結物距離D1とされる。工程S50において、第1方向101における座面93の位置は、第1位置P1とされる。初期被締結物距離D1は、第1方向101における第1位置P1と被締結物99との間の距離である。第1距離測定部51は、測定した初期被締結物距離D1に関する信号を出力し、制御部2に入力する。記憶部22(図3参照)は、第1距離測定部51から出力された初期被締結物距離D1に関する信号を記憶する。
【0056】
図6図7および図8に示されるように、演算部23(図3参照)は、初期被締結物距離D1に基づいて、ねじ締めユニット1の移動距離(第1移動距離H1)を計算する(工程S60)。第1移動距離H1は、後述の工程S70において、ねじ締めユニット1が移動する距離である。記憶部22は、第1方向101における雄ねじ部92の長さLと、第1余裕距離F1とを予め記憶している。第1余裕距離F1は、工程S70後におけるねじ90と被締結物99との間の第1方向101における距離である。第1余裕距離F1は、特に限定されないが、たとえば0.1mmである。演算部23は、記憶部22から初期被締結物距離D1、雄ねじ部92の長さLおよび第1余裕距離F1を読み出す。演算部23は、初期被締結物距離D1から、雄ねじ部92の長さLと第1余裕距離F1とを差し引くことによって、第1移動距離H1を計算する。
【0057】
図8に示されるように、制御部2は、被締結物99とねじ90とが接触する直前まで、ねじ締めユニット1(図6参照)を移動させる(工程S70)。具体的には、制御部2は、ユニット位置変位部4(図6参照)に信号を出力する。ユニット位置変位部4は、制御部2からの出力に基づいて第3モータ41を稼働させることによって、第2スライド部43およびねじ締めユニット1を第1方向101に沿って移動させる。ねじ90が第1方向101に移動する。第1方向101におけるねじ90の移動距離は、第1移動距離H1である。
【0058】
工程S70後において、ねじ90は、被締結物99から離間している。第1方向101におけるねじ90と被締結物99との間の距離は、実質的に第1余裕距離F1である。工程S70後において、第1方向101における座面93の位置は、第2位置P2とされる。図4に示されるように、工程S50、工程S60および工程S70の各々は、工程S20、工程S30および工程S40のいずれかと同時に行われてもよい。たとえば工程S50、工程S60および工程S70の各々は、工程S20と同時に行われる。
【0059】
図9に示されるように、工程S40および工程S70の後、制御部2は、ユニット位置変位部4に信号を出力することによって、ねじ90と被締結物99とが接触するまで、ねじ締めユニット1(図6参照)を第1方向101に沿って移動させる(工程S80)。ねじ90が第1方向101に移動する。工程S80において、第1方向101におけるねじ90の移動距離は、たとえば第1余裕距離F1である。工程S80におけるねじ締めユニット1の移動速度は、工程S70におけるねじ締めユニット1の移動速度よりも遅い。
【0060】
ユニット位置変位部4は、第3モータ41に供給される電流に関する信号を制御部2に出力する。工程S80において、制御部2は、ユニット位置変位部4から出力された信号に基づいて、ねじ90が被締結物99に接触したか否かを判定する。具体的には、制御部2は、第3モータ41に供給される電流の大きさが、予め決められた規定値(第2規定値)を超えたか否かを検出することによって、ねじ90が被締結物99に接触したか否かを判定する。制御部2は、第3モータ41に供給される電流値が第2規定値を超えたことを検出するまで、ユニット位置変位部4に信号を出力することによって、ねじ締めユニット1を第1方向101へ移動させ続ける。制御部2は、第3モータ41に供給される電流値が第2規定値を超えたことを検出すると、ねじ90が被締結物99に接触したと判定し、ねじ締めユニット1を停止させる(工程S90)。図9に示されるように、工程S90後において、第1方向101における座面93の位置は、第3位置P3とされる。以上によって、ねじ90と被締結物99とが接触する。
【0061】
ユニット位置変位部4は、第1方向101におけるねじ締めユニット1の移動距離に関する信号を制御部2に出力する。具体的には、ユニット位置変位部4は、工程S70および工程S80において、ねじ締めユニット1が移動した距離(実測移動距離G)に関する信号を制御部2に出力する。記憶部22は、実測移動距離Gに関する信号を記憶する(工程S100)。図9に示されるように、実測移動距離Gは、第1方向101における第1位置P1と第3位置P3との間の距離である。実測移動距離Gは、たとえば第1移動距離H1と第1余裕距離F1とを足し合わせた距離である。
【0062】
図10を用いて、制御遅れ量について説明する。制御部2から工具位置変位部3へ信号を出力した場合、工具位置変位部3において、制御部2から工具位置変位部3への指令に対して実際の動作が遅れることがある(制御遅れ)。制御遅れ量は、制御遅れによって生じるねじ90の移動距離のずれである。別の観点から言えば、制御遅れ量は、制御部2からの信号に基づいて工具位置変位部3がねじ90を移動させる場合における、理想的なねじ90の移動距離と、実際のねじ90の移動距離との間の差である。
【0063】
図10は、制御部2が工具位置変位部3へ信号を出力し、ねじ90を矢印B2に沿って移動させる様子を示している。図10において、制御遅れが発生しない工具位置変位部3によって移動されるねじ90が破線で示されている。図10において、制御遅れが発生する工具位置変位部3によって移動されるねじ90が実線で示されている。
【0064】
図10に示されるように、工具位置変位部3において制御遅れが発生する場合、工具位置変位部3において制御遅れが発生しない場合と比較して、工具位置変位部3によってねじ90の移動が開始される際に、ねじ90は遅れて移動を開始する。工具位置変位部3において制御遅れが発生する場合と、工具位置変位部3において制御遅れが発生しない場合との間におけるねじ90の移動距離の差は、第1遅れ量C1とされる。
【0065】
工具位置変位部3において制御遅れが発生する場合、工具位置変位部3において制御遅れが発生しない場合と比較して、工具位置変位部3によってねじ90が停止される際に、ねじ90は第2遅れ量C2だけ遅れて停止する。工具位置変位部3において制御遅れが発生する場合と、工具位置変位部3において制御遅れが発生しない場合との間における移動距離の差は、第2遅れ量C2とされる。制御遅れ量は、第1遅れ量C1と第2遅れ量C2とを足し合わせた距離である。本明細書において、理想的なねじ90の移動距離よりも実際のねじ90の移動距離の方が長い場合、制御遅れ量が「正」であるとされる。反対に、理想的なねじ90の移動距離よりも実際のねじ90の移動距離の方が短い場合、制御遅れ量が「負」であるとされる。
【0066】
制御遅れ量は、機械的な制御遅れ量と、電気的な制御遅れ量とを含む。機械的な制御遅れ量は、工具位置変位部3における物理的な慣性力によって生じる制御遅れ量である。電気的な制御遅れ量は、制御部2が信号を出力してから工具位置変位部が実際に動作を開始または動作を停止するまでの間に生じる制御遅れ量である。制御遅れ量は、ねじ締め装置100を用いてねじ締めを行う前に、予め測定可能である。具体的には、制御遅れ量は、たとえばねじ締め装置100を設置する際に測定可能である。記憶部22(図3参照)は、工具位置変位部3の制御遅れ量を予め記憶している。
【0067】
演算部23は、初期被締結物距離D1と工具位置変位部3の制御遅れ量とに基づいて、回転工具11の移動距離を計算する(工程S110)。工程S110において計算される移動距離は、後述の仮締め(工程S120)において回転工具11が移動する距離である。
【0068】
演算部23は、仮締め(工程S120)における回転工具11の移動距離の目標値(第2移動距離H2)と、制御部2から工具位置変位部3へ出力する移動距離(指令距離)との各々を計算する。演算部23は、初期被締結物距離D1、実測移動距離G、第2余裕距離F2および制御遅れ量の各々を記憶部22から読み出す。演算部23は、初期被締結物距離D1から実測移動距離Gと第2余裕距離F2とを差し引くことによって、第2移動距離H2を計算する。演算部23は、第2移動距離H2から制御遅れ量を差し引くことによって、指令距離を計算する。なお、第2余裕距離F2は、後述の仮締め(工程S120)後における座面93と被締結物99との間の第1方向101における距離である。第2余裕距離F2は、特に限定されないが、たとえば0.1mmである。記憶部22は、第2余裕距離F2を予め記憶している。
【0069】
次に、制御部2は、仮締めを実施する(工程S120)。図11に示されるように、制御部2は、開閉機構67(図3参照)に信号を出力することによって、第2チャック62を開かせる。具体的には、制御部2は、第3方向103における第3部品63と第4部品64との間の距離が頭部91の直径よりも大きくなるように、第3部品63および第4部品64の各々を移動させる。これによって、ねじ90は、第2チャック62から離間する。
【0070】
制御部2は、第1モータ12(図6参照)に信号を出力することによって回転工具11を回転させる。制御部2は、回転工具11を第1方向101に沿って指令距離だけ移動させるように、工具位置変位部3(図6参照)に信号を出力する。これによって、回転工具11およびねじ90は、回転軸Aを中心に回転しつつ、第1方向101に沿って移動する。ねじ90が被締結物99の雌ねじ98(図9参照)にねじ込まれる。
【0071】
制御部2は、回転工具11を第1方向101に沿って指令距離だけ移動させるように工具位置変位部3に信号を出力した後、回転工具11を停止させるように工具位置変位部3に信号を出力する。仮締め(工程S120)において、第1方向101における回転工具11およびねじ90の実際の移動距離は、第2移動距離H2である。第2移動距離H2は、たとえば初期被締結物距離D1から、実測移動距離Gと第2余裕距離F2とを差し引いた距離と実質的に同じである。
【0072】
工程S120後において、頭部91は、被締結物99から離間している。工程S120後において、第1方向101における座面93の位置は、第4位置P4とされる。第1方向101における第3位置P3と第4位置P4との間の距離は、第2移動距離H2である。第1方向101における第4位置P4と被締結物99との間の距離は、第2余裕距離F2である。以上によって、制御部2は、第1距離測定部51の出力に基づいて、ねじ90の頭部91が被締結物99に接触しないように、ねじ90を被締結物99に仮締めする。
【0073】
仮締め(工程S120)において、回転工具11は、ねじ90に第2押し付け力T2を加える。第2押し付け力T2は、第1方向101に沿う力である。第2押し付け力T2は、たとえば第1押し付け力T1(図6参照)と実質的に同じである。
【0074】
仮締め(工程S120)において、トルクメータ17(図6参照)は、ねじ90に加えられているトルク(発揮トルク)を測定する。トルクメータ17は、測定した発揮トルクに関する信号を制御部2に出力する。仮締め(工程S120)後において、制御部2は、トルクメータ17から出力された信号に基づいて、発揮トルクの最大値が予め決められた規定値(第3規定値)以下であるか否かを判定する(工程S130)。
【0075】
制御部2は、発揮トルクの最大値が第3規定値を超えていると判定した場合(工程S130においてNO)、ねじ90および被締結物99を不良品として排出させる(工程S140)。制御部2は、発揮トルクの最大値が第3規定値以下であると判定した場合(工程S130においてYES)、本締め(工程S150)を実施する。
【0076】
本締め(工程S150)において、制御部2は、ねじ90を締結するトルク(締結トルク)を大きくするように、第1モータ12および工具位置変位部3を制御する。具体的には、制御部2は、第1モータ12および工具位置変位部3の各々に信号を出力することによって、回転工具11およびねじ90を回転軸Aを中心に回転させつつ、回転工具11およびねじ90を第1方向101に沿って移動させる。本締め(工程S150)におけるねじ90の移動速度は、仮締め(工程S120)におけるねじ90の移動速度よりも遅い。本締め(工程S150)におけるねじ90の回転速度は、仮締め(工程S120)におけるねじ90の回転速度よりも遅い。
【0077】
本締め(工程S150)において、回転工具11は、ねじ90に第3押し付け力T3を加える。第3押し付け力T3は、第1方向101に沿う力である。第3押し付け力T3は、たとえば第1押し付け力T1(図6参照)と実質的に同じである。
【0078】
本締め(工程S150)において、制御部2は、トルクメータ17からの出力に基づいて、締結トルクが予め決められた規定の範囲(第2範囲)内に入ったか否かを判定する。制御部2は、締結トルクが第2範囲内に入ったことを検出するまで、回転工具11およびねじ90を回転軸Aを中心に回転させつつ、回転工具11およびねじ90を第1方向101に沿って移動させ続ける。制御部2は、締結トルクが第2範囲内に入ったことを検出すると、回転工具11およびねじ90を停止させる。以上によって、ねじ90が被締結物99に締結される。
【0079】
次に、制御部2は、最終データを記録する(工程S160)。記憶部22は、工程S10から工程S160までの間において、第1距離測定部51、第1モータ12、工具位置変位部3およびユニット位置変位部4の各々から出力されたデータを記憶する。具体的には、記憶部22は、たとえば、「仮締め(工程S120)における発揮トルクの時刻歴データ」、「本締め(工程S150)における締結トルクの時刻歴データ」、「第1方向101におけるねじ90の位置の時刻歴データ」、「ねじ90に加えられたトルクの最大値のデータ」、「回転工具11の回転数の時刻歴データ」、「第1方向101におけるねじ90の位置およびねじ90に加えられたトルクのデータ」などの最終データを記憶する。
【0080】
「仮締め(工程S120)における発揮トルクの時刻歴データ」、「本締め(工程S150)における締結トルクの時刻歴データ」および「ねじ90に加えられたトルクの最大値のデータ」を、たとえば作業者が参照することによって、ねじ締め動作における不良の発生の有無を判定できる。
【0081】
「第1方向101におけるねじ90の位置とねじ90に加えられたトルクのデータ」を、たとえば作業者が参照することによって、ねじ締め動作のどの時点において不良が発生したのかを分析することができる。具体的には、作業者は、「ねじ90がねじ締め装置100に供給されていない」、「ねじ90が雌ねじ98に対して斜めにねじ込まれている」、「雌ねじ98が潰れている」、「雌ねじ98とねじ90との間に異物が混入している」、「座面93が被締結物99から離間している」などの不良モードを判別できる。作業者は、ねじ締め装置100を用いて製造した製品のトレーサビリティを確保するために最終データを利用できる。
【0082】
作業者は、ねじ締め装置100とねじ締め装置100を用いて製造した製品との各々の経年変化を分析するために最終データを利用できる。具体的には、作業者は、最終データを参照して、「各種の値のばらつきが大きい」「値が上限・下限に近づいている」「経年的に値が増減している」などの現象を検出することができる。これによって、製品に発生した予期していない変化およびねじ締め装置100の経年劣化を検出することができる。
【0083】
次に、実施の形態1に係るねじ締め装置100の作用効果について説明する。
ねじ90に加えられるトルクに基づいて仮締めを終了する場合、仮締めを終了する時点において、ねじ90の頭部91は、被締結物99に接触している。このため、ねじ90に加えるトルクが規定値に達したことを検出してから仮締めを停止するまでに遅れが発生した場合、ねじに加わるトルクが過度に大きくなること(トルクオーバ)によって、ねじ90および被締結物99が変形する不良が発生することがある。特に、仮締めを速くした場合、ねじ90および被締結物99が変形する不良が発生しやすくなる。
【0084】
実施の形態1に係るねじ締め装置100によれば、制御部2は、第1距離測定部51の出力に基づいて、ねじ90の頭部91が被締結物99に接触しないようにねじ90を被締結物99に仮締めする。このため、仮締めを速くした場合においても、ねじ90の頭部91が被締結物99に接触することを抑制できる。これによって、ねじ90および被締結物99が変形する不良を抑制できる。結果として、ねじ締めに必要な時間を低減しつつ、ねじ締めにおける不良の発生を抑制することができる。
【0085】
実施の形態1に係るねじ締め装置100によれば、制御部2は、制御遅れ量と第1距離測定部51からの出力とに基づいて、ねじ90の頭部91が被締結物99に接触しないようにねじ90を被締結物99に仮締めする。このため、工具位置変位部3における制御遅れ量が過度に大きい場合であっても、頭部91が被締結物99に接触することを抑制できる。
【0086】
実施の形態1に係るねじ締め装置100によれば、第2チャック62は、平坦面69を有している。平坦面69は、第1方向101に垂直な方向に沿って延在している。このため、平坦面69に座面93を押し当てることによって、ねじ締め後のねじ90の姿勢を模擬することができる。このため、ねじ90と被締結物99との間の距離を測定する際に、ねじ90の寸法ばらつきの影響を低減できる。これによって、仮締め工程の終了時におけるねじ90の位置のばらつきを低減できる。このため、頭部91が被締結物99に接触することを抑制できる。
【0087】
また、仮締め工程の終了時において、第1方向101における座面93と被締結物99との間の距離を短くすることができる。別の観点から言えば、本締め工程において、ねじ90をねじ込む長さを短くすることができる。これによって、本締め工程に必要な時間を短縮できる。
【0088】
実施の形態1に係るねじ締め装置100によれば、第1チャック61は、ねじ90と回転軸Aとが交差する位置に、ねじ90を保持可能である。このため、制御部2は、回転工具11を第1方向101に沿って移動させることによって、ねじ90を第1チャック61から第2チャック62に受け渡すことができる。結果として、第1チャック61から第2チャック62へのねじ90の受け渡しを容易にすることができる。
【0089】
制御部2は、工具位置変位部3およびユニット位置変位部4の各々と電気的に接続されている。別の観点から言えば、1つの制御部2が工具位置変位部3およびユニット位置変位部の各々を制御する。このため、工具位置変位部3およびユニット位置変位部4の各々の動作を一括で制御できる。これによって、工具位置変位部3の動作とユニット位置変位部4の動作との間でずれが発生することを抑制できる。
【0090】
<実施の形態1の変形例>
上記において、実施の形態1に係るねじ締め装置100の構成について説明したが、ねじ締め装置100の構成は、上記の構成に限定されない。制御部2は、第1距離測定部51の出力に基づいて、被締結物99の種類を判定可能であってもよい。具体的には、記憶部22は、複数種類の被締結物99の各々における被締結物距離Dの値を記憶していてもよい。
【0091】
制御部2は、第1距離測定部51から出力された信号と、記憶部22から読み出した複数種類の被締結物99の各々における被締結物距離Dの値とを照合することによって、被締結物99の種類を判定してもよい。このため、複数種類の被締結物99にねじ90を締結する場合においても、制御部2は、第1距離測定部51の出力に基づいて、被締結物99の種類を判定可能である。これによって、制御部2は、被締結物99の種類に基づいて、ねじ90の種類、発揮トルクの大きさ、締結トルクの大きさおよびねじ締めに必要な時間などを制御することができる。結果として、被締結物99の種類を判定する装置を追加することなく、1つのねじ締め装置100を用いて複数種類の被締結物99のねじ締めを実施できる。
【0092】
記憶部22は、複数種類のねじ90の各々における必要な押し付け力を予め記憶していてもよい。制御部2は、締結するねじ90における必要な押し付け力を記憶部22から読み出す。これによって、締結するねじ90の種類が変更になった場合において、1つのねじ締め装置100によって、複数種類のねじ90をねじ締めすることができる。
【0093】
上記において、第1チャック61が第1部品71と第2部品74とを有している構成について説明したが、第1チャック61の部品の数は、特に限定されない。第1チャック61は、3以上の部品を有していてもよい。第1チャック61は、3以上の部品を用いて、ねじ90を保持してもよい。3以上の部品によって、第1隙間79が構成されていてもよい。ねじ90の長さ、ねじ90の大きさおよび被締結物99の形状に基づいて、第1チャック61の部品の数および部品の形状が決定されてもよい。ねじ締め装置100の他部品とチャック部6との干渉の回避、チャック部6の小型化および被締結物とチャック部6との干渉の回避などの理由により、第1チャック61の部品の数および部品の形状が決定されてもよい。
【0094】
工具位置変位部3は、エアシリンダ、油圧シリンダおよび多関節ロボットなどの駆動機構であってもよい。工具位置変位部3が多関節ロボットである場合、回転工具ユニット10の姿勢を変更することができる。これによって、被締結物99に複数の雌ねじ98が設けられており、且つ複数の雌ねじ98の各々の延在する方向が異なる場合においても、1つのねじ締め装置100でねじ締めを行うことができる。
【0095】
ねじ締め装置100へのねじ90の供給は、圧送を用いて行われてもよい。具体的には、空気圧を用いてチューブの内部にねじ90を流すことによって、ねじ90がねじ締め装置100へ供給されてもよい。送り出し装置を用いることによって、ねじ90がねじ締め装置100へ供給されてもよい。
【0096】
仮締め(工程S120)において、工具位置変位部3は、第1方向101における回転工具ユニット10の移動距離に関する信号を制御部2に出力してもよい。制御部2は、工具位置変位部3から出力された信号に基づいて、仮締め(工程S120)における回転工具ユニット10の移動距離が第2移動距離H2に到達したか否かを判定してもよい。制御部2は、回転工具ユニット10の移動距離が第2移動距離H2に到達したことを検出するまで、回転工具ユニット10を第1方向101に沿って移動させ続ける。制御部2は、回転工具ユニット10の移動距離が第2移動距離H2に到達したことを検出すると、回転工具11およびねじ90を停止させる。
【0097】
工程S130において、制御部2は、工具位置変位部3からの出力された回転工具ユニット10の位置に関する信号に基づいて、回転工具ユニット10の位置が予め決められた範囲内であるか否かを判定してもよい。制御部2は、回転工具ユニット10の位置が予め決められた範囲を超えていると判定した場合(工程S130においてNO)、ねじ90および被締結物99を不良品として排出させる(工程S140)。制御部2は、回転工具ユニット10の位置が予め決められた範囲内であると判定した場合、制御部2は、本締め(工程S150)を実施する。制御部2は、ユニット位置変位部4の制御遅れ量に基づいて、ユニット位置変位部4を制御してもよい。
【0098】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係るねじ締め装置100の構成について説明する。実施の形態2に係るねじ締め装置100は、主に、ねじ押し付け部18および第2距離測定部52の各々を有している点において、実施の形態1に係るねじ締め装置100の構成と異なっており、その他の点については、実施の形態1に係るねじ締め装置100の構成と実質的に同一である。以下、実施の形態1に係るねじ締め装置100の構成と異なる点を中心に説明する。
【0099】
図13に示されるように、接続部45は、ねじ押し付け部18を有していてもよい。ねじ押し付け部18は、第2中間部49に取り付けられている。ねじ押し付け部18は、回転工具11に取り付けられている。別の観点から言えば、ねじ押し付け部18は、第2中間部49と回転工具11とを繋いでいる。ねじ押し付け部18は、回転工具11からねじ90へ加えられる押し付け力を制御するために用いられる。ねじ押し付け部18は、接続ばね38と、摺動部39とを有している。
【0100】
第1方向101において、接続ばね38は、第2中間部49と回転工具11との間に設けられている。接続ばね38は、第2中間部49と回転工具11とを繋いでいる。接続ばね38は、たとえば回転軸Aに沿って設けられている。接続ばね38は、たとえばコイルばねである。接続ばね38は、第1方向101に沿って伸縮可能である。接続ばね38は、接続ばね38の弾性力を用いて、回転工具11およびねじ90に第1方向101に沿う押し付け力を加える。
【0101】
摺動部39の形状は環状である。摺動部39は、接続ばね38、回転工具11および第2中間部49の各々を取り囲んでいる。摺動部39は、被測定面15を有している。第1方向101において、被測定面15は、第1モータ12と回転工具11との間に設けられている。被測定面15は、たとえば第1方向101に実質的に垂直であってもよい。
【0102】
接続ばね38が縮むにつれて、ねじ押し付け部18は、フレーム19に対して第2方向102に移動する。別の観点から言えば、ねじ押し付け部18は、回転工具11がねじ90に加える押し付け力が大きくなるにつれて、フレーム19に対して第2方向102に移動する。接続ばね38が伸びるにつれて、ねじ押し付け部18は、フレーム19に対して第1方向101に移動する。別の観点から言えば、ねじ押し付け部18は、回転工具11がねじ90に加える押し付け力が小さくなるにつれて、フレーム19に対して第1方向101に移動する。
【0103】
リニアブッシュ14は、ねじ押し付け部18を取り囲んでいる。リニアブッシュ14は、摺動部39に接触している。ねじ押し付け部18が第1方向101に摺動できるように、リニアブッシュ14は、ねじ押し付け部18を支持している。
【0104】
回転工具ユニット10は、第2距離測定部52を有していてもよい。第2距離測定部52は、フレーム19に固定されている。第2距離測定部52は、被測定面15に対して第2方向102に設けられている。第2距離測定部52は、第1方向101における第2距離測定部52と被測定面15との間の距離(被測定面距離E)を測定する。回転工具11がねじ90に加える押し付け力が大きくなるにつれて、被測定面距離Eは短くなる。回転工具11がねじ90に加える押し付け力が小さくなるにつれて、被測定面距離Eは長くなる。図14に示されるように、第2距離測定部52は、制御部2と電気的に接続されている。第2距離測定部52は、たとえば非接触式変位計または接触式変位計などの変位計である。
【0105】
次に、実施の形態2に係るねじ締め装置100の動作について説明する。
工程S40において、第2距離測定部52は、測定した被測定面距離Eに関する信号を制御部2に入力する。制御部2は、第2距離測定部52からの出力に基づいて、第1モータ12および工具位置変位部3を制御する。具体的には、制御部2は、第2距離測定部52からの出力に基づいて、被測定面距離Eが予め決められた範囲(第1範囲)内に入るように、回転工具ユニット10を移動させる。
【0106】
制御部2は、被測定面距離Eが第1範囲よりも長いと判定した場合、回転工具11を第1方向101に移動させる。別の観点から言えば、制御部2は、第1押し付け力T1を大きくすることによって、被測定面距離Eを短くする。制御部2は、被測定面距離Eが第1範囲よりも小さいと判定した場合、回転工具11を第2方向102に移動させる。別の観点から言えば、制御部2は、第1押し付け力T1を小さくし、被測定面距離Eを長くする。
【0107】
制御部2は、被測定面距離Eが第1範囲内に入ったことを検出すると、回転工具ユニット10を停止させる。回転工具ユニット10が停止した時点における被測定面距離Eは、初期被測定面距離E1とされる。
【0108】
図15に示されるように、工程S40後において、第2距離測定部52は初期被測定面距離E1を測定する(工程S170)。記憶部22(図14参照)は、第2距離測定部52から出力された初期被測定面距離E1に関する信号を記憶する。工程S170および工程S70の後、制御部2は、工程S80を実施する。
【0109】
仮締め(工程S120)において、制御部2は、第2距離測定部52からの出力に基づいて、たとえば被測定面距離Eが初期被測定面距離E1と実質的に同じになるように、第1モータ12および工具位置変位部3を制御する。これによって、第2押し付け力T2の大きさと、第1押し付け力T1の大きさとの間の差を低減できる。
【0110】
本締め(工程S150)において、制御部2は、第2距離測定部52の出力に基づいて、たとえば被測定面距離Eが初期被測定面距離E1と実質的に同じになるように、第1モータ12および工具位置変位部3を制御する。これによって、第3押し付け力T3の大きさと、第1押し付け力T1の大きさとの間の差を低減できる。工程S160において、記憶部22は、「ねじ90に加えられた押し付け力の時刻歴データ」を記憶する。
【0111】
実施の形態2に係るねじ締め装置100によれば、第2距離測定部52は、ねじ押し付け部18と第2距離測定部52との間の距離を測定できる。ねじ押し付け部18は、回転工具11がねじ90に加える押し付け力が大きくなるにつれて第2距離測定部52に近づく。制御部2は、第2距離測定部52の出力に基づいて、第1モータ12および工具位置変位部3を制御する。このため、制御部2は、第2距離測定部52の出力に基づいて、回転工具11がねじ90に加える押し付け力を制御できる。具体的には、制御部2は、第2チャック62にねじ90を押し当てる工程、仮締め工程および本締め工程の各々において、押し付け力を制御できる。このため、押し付け力が過度に弱いことによって、回転工具11がねじ90から浮き上がることを抑制できる。
【0112】
ねじ90がねじ締め装置100に供給されていない場合、回転工具11からねじ90への押し付け力は発生しない。具体的には、ねじ90がねじ締め装置100に供給されていない場合、第2チャック62にねじ90を押し当てる工程において、接続ばね38は縮まない。このため、制御部2は、第2距離測定部52の出力に基づいて、ねじ90がねじ締め装置100に供給されていないことを検出できる。
【0113】
記憶部22は、複数種類のねじ90の各々における必要な押し付け力の大きさを記憶していてもよい。具体的には、記憶部22は、複数種類のねじ90の各々に関して、予め決められた被測定面距離Eの範囲を記憶していてもよい。これによって、1つのねじ締め装置100によって、複数種類のねじ90がねじ締めされる場合において、複数種類のねじ90の各々を好ましい押し付け力でねじ締めできる。
【0114】
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係るねじ締め装置100の構成について説明する。実施の形態3に係るねじ締め装置100は、主に、第1チャック61を有していない点において、実施の形態1に係るねじ締め装置100の構成と異なっており、その他の点については、実施の形態1に係るねじ締め装置100の構成と実質的に同一である。以下、実施の形態1に係るねじ締め装置100の構成と異なる点を中心に説明する。
【0115】
図16に示されるように、ねじ締め装置100は、第1チャック61を有していなくてもよい。ねじ90をねじ締め装置100に供給する工程(工程S10)において、ねじ90は、第2チャック62に供給される。具体的には、雄ねじ部92が、第2隙間68に配置されるように、ねじ90が第2チャック62に供給される。
【0116】
実施の形態4.
次に、実施の形態4に係るねじ締め装置100の構成について説明する。実施の形態4に係るねじ締め装置100は、主に、コンプライアンス部を有している点において、実施の形態2に係るねじ締め装置100の構成と異なっており、その他の点については、実施の形態2に係るねじ締め装置100の構成と実質的に同一である。以下、実施の形態2に係るねじ締め装置100の構成と異なる点を中心に説明する。
【0117】
図17に示されるように、ねじ締め装置100は、コンプライアンス部8を有していてもよい。コンプライアンス部8は、工具位置変位部3および回転工具ユニット10の各々に固定されている。コンプライアンス部8は、工具位置変位部3と回転工具ユニット10とを繋いでいる。コンプライアンス部8は、工具位置変位部3と回転工具ユニット10との間に設けられている。
【0118】
コンプライアンス部は、第1リニアガイド81と、第2リニアガイド82とを有している。ベース部83と、プレート部84とを有している。ベース部83は、工具位置変位部3の第1スライド部33に固定されている。ベース部83の形状は板状である。ベース部83は、第1方向101に垂直な方向に沿って延在している。第1リニアガイド81は、ベース部83に固定されている。第1リニアガイド81は、ベース部83に対して第2方向102に設けられている。第1リニアガイド81は、たとえば第3方向103に沿って延在している。
【0119】
プレート部84は、第1リニアガイド81に取り付けられている。プレート部84は、第1リニアガイド81に対して第2方向102に設けられている。プレート部84の形状は板状である。プレート部84は、第1方向101に垂直な方向に沿って延在している。プレート部84は、第1リニアガイド81上を第3方向103に沿って摺動可能である。
【0120】
第2リニアガイド82は、プレート部84に固定されている。第2リニアガイド82の延在する方向は、第1リニアガイド81の延在する方向に垂直である。具体的には、第2リニアガイド82は、たとえば第1方向101および第3方向103の各々に垂直な方向に沿って延在している。フレーム19は、第2リニアガイド82に取り付けられている。フレーム19は、第2リニアガイド82上を第2リニアガイド82の延在する方向に沿って摺動可能である。フレーム19は、第1リニアガイド81の延在する方向および第2リニアガイド82の延在する方向の各々に沿って移動可能である。別の観点から言えば、コンプライアンス部8は、第1方向101に垂直な方向に沿って回転工具ユニット10を移動可能である。第1方向101に垂直な方向に沿う力が回転工具ユニット10に加わった際に、コンプライアンス部8は、第1方向101に垂直な方向に沿って回転工具ユニット10を移動させる。
【0121】
ねじ90の中心軸と被締結物99の雌ねじ98の中心軸がずれていた場合、ねじ90を雌ねじ98にねじ込む際に、第1方向101に垂直な方向に沿う力がねじ90および回転工具11に加わる。この場合、ねじ90が雌ねじ98に対して傾いた状態で、ねじ90が雌ねじ98に締結されることがある。実施の形態4に係るねじ締め装置100は、コンプライアンス部8を有している。コンプライアンス部8は、第1方向101に垂直な方向に沿って回転工具ユニット10を移動可能である。このため、ねじ90の中心軸と被締結物99の雌ねじ98の中心軸がずれていた場合においても、第1方向101に垂直な方向に沿う力がねじ90および回転工具11に加わることによって、回転工具ユニット10が第1方向101に垂直な方向に沿って移動する。これによって、ねじ90の中心軸と雌ねじ98の中心軸とのずれを小さくすることができる。結果として、ねじ締めにおける不良の発生を抑制できる。
【0122】
同様に、ねじ90と回転工具11とを嵌合させる工程(工程S30)および本締め工程(S150)の各々においても、回転工具11、ねじ90および被締結物99の各々の中心軸のずれを小さくすることができる。
【0123】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0124】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
被締結物にねじを締結するねじ締め装置であって、
前記ねじを回転させる回転工具と、前記回転工具を回転させるモータとを有する回転工具ユニットと、
前記回転工具ユニットを前記回転工具の回転軸方向に沿って移動させる工具位置変位部と、
前記モータおよび前記工具位置変位部を制御する制御部と、
前記ねじと前記被締結物との間の距離を測定する第1距離測定部とを備え、
前記制御部は、前記第1距離測定部からの出力に基づいて、前記ねじの頭部が前記被締結物に接触しないように前記ねじを前記被締結物に仮締めし、前記ねじを前記被締結物に仮締めした後に、前記ねじを締結するトルクを大きくするように、前記モータおよび前記工具位置変位部を制御する、ねじ締め装置。
(付記2)
前記制御部は、前記工具位置変位部の制御遅れ量と前記第1距離測定部からの出力とに基づいて、前記ねじの前記頭部が前記被締結物に接触しないように前記ねじを前記被締結物に仮締めする、付記1に記載のねじ締め装置。
(付記3)
前記ねじと前記回転工具の回転軸とが交差する位置に前記ねじを保持可能である第1チャックと、
前記回転軸方向に垂直な方向に沿って延在する平坦面を有している第2チャックと、を備え、
前記平坦面は、前記第1チャックと前記被締結物との間に位置する、付記1または付記2に記載のねじ締め装置。
(付記4)
前記回転工具ユニットは、第2距離測定部と、前記回転工具に取り付けられるねじ押し付け部と、を有し、
前記第2距離測定部は、前記ねじ押し付け部と前記第2距離測定部との間の距離を測定し、
前記ねじ押し付け部は、前記回転工具が前記ねじに加える押し付け力が大きくなるにつれて前記第2距離測定部に近づき、
前記制御部は、前記第2距離測定部からの出力と前記第1距離測定部からの出力とに基づいて、前記ねじの前記頭部が前記被締結物に接触しないように前記ねじを前記被締結物に仮締めし、前記ねじを前記被締結物に仮締めした後に、前記ねじを締結するトルクを大きくするように、前記モータおよび前記工具位置変位部を制御する、付記1から付記3のいずれか1項に記載のねじ締め装置。
(付記5)
前記工具位置変位部と前記回転工具ユニットとを繋いでいるコンプライアンス部を備え、
前記コンプライアンス部は、前記回転軸方向に垂直な方向に沿って前記回転工具ユニットを移動可能である、付記1から付記4のいずれか1項に記載のねじ締め装置。
【符号の説明】
【0125】
1 ねじ締めユニット、2 制御部、3 工具位置変位部、4 ユニット位置変位部、6 チャック部、8 コンプライアンス部、10 回転工具ユニット、11 回転工具、12 第1モータ、14 リニアブッシュ、15 被測定面、17 トルクメータ、18 ねじ押し付け部、19 フレーム、21 入力部、22 記憶部、23 演算部、24 出力部、28 軸部、29 本体部、31 第2モータ、32 第1直動部、33 第1スライド部、38 接続ばね、39 摺動部、41 第3モータ、42 第2直動部、43 第2スライド部、44 第3軸継手、45 接続部、46 第1軸継手、47 第2軸継手、48 第1中間部、49 第2中間部、51 第1距離測定部、52 第2距離測定部、59 測定面、61 第1チャック、62 第2チャック、63 第3部品、64 第4部品、65 支持部、67 開閉機構、68 第2隙間、69 平坦面、71 第1部品、72 第1傾斜面、73 第1ばね、74 第2部品、75 第2傾斜面、76 第2ばね、79 第1隙間、81 第1リニアガイド、82 第2リニアガイド、83 ベース部、84 プレート部、90 ねじ、91 頭部、92 雄ねじ部、93 座面、97 主面、98 雌ねじ、99 被締結物、100 ねじ締め装置、101 第1方向、102 第2方向、103 第3方向、104 第4方向、A 回転軸、B1,B2 矢印、C1 第1遅れ量、C2 第2遅れ量、D 被締結物距離、D1 初期被締結物距離、E 被測定面距離、F1 第1余裕距離、F2 第2余裕距離、G 実測移動距離、H1 第1移動距離、H2 第2移動距離、L 長さ、P1 第1位置、P2 第2位置、P3 第3位置、P4 第4位置、T1 第1押し付け力、T2 第2押し付け力、T3 第3押し付け力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16
図17