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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150156
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】X線回析測定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/205 20180101AFI20241016BHJP
   G01N 23/2055 20180101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N23/205
G01N23/2055 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063422
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】乾 典規
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA18
2G001BA25
2G001CA01
2G001DA09
2G001EA06
2G001EA09
2G001KA01
2G001KA07
2G001LA02
(57)【要約】
【課題】試料のパラメータを測定する場合において、α相Kα回折とγ相Kβ回折を用いることで、コストを抑制する。
【解決手段】X線回析測定装置1は、X線が照射された試料から回折した回折環を検出する検出部28と、検出された回折環から得られる回折プロフィルに基づいて、α相Kα成分とγ相Kβ成分を解析する解析部64と、解析されたα相Kα成分とγ相Kβ成分に応じて、試料のパラメータを測定する測定部66と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線が照射された試料から回折した回折環を検出する検出部と、
前記検出された回折環から得られる回折プロフィルに基づいて、α相Kα成分とγ相Kβ成分を解析する解析部と、
前記解析されたα相Kα成分とγ相Kβ成分に応じて、前記試料のパラメータを測定する測定部と、
を備えるX線回析測定装置。
【請求項2】
前記解析部は、前記回折プロフィルにおいて、γ相Kβ成分が現れる回折角に対応する回折強度を補正することにより、α相Kα成分を解析する、
請求項1に記載のX線回析測定装置。
【請求項3】
前記解析部は、前記解析したα相Kα成分と、前記回折プロフィルとの差分に基づき、γ相Kβ成分を解析する、
請求項2に記載のX線回析測定装置。
【請求項4】
前記検出部は、SOIセンサによって回折環を検出する、
請求項1に記載のX線回析測定装置。
【請求項5】
前記パラメータは、残留応力又は残留オーステナイト体積率を含む、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線回析測定装置。
【請求項6】
X線が照射された試料から回折した回折環を検出する検出部と、通信可能なコンピュータを、
前記検出された回折環から得られる回折プロフィルに基づいて、α相Kα成分とγ相Kβ成分を解析する解析部、
前記解析されたα相Kα成分とγ相Kβ成分に応じて、前記試料のパラメータを測定する測定部、
として機能させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線回析測定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、試料に向けてX線を照射する照射部と、当該試料にて回折したX線の回折環を検出する検出部と、を備え、検出された回折環から得られる回折プロフィル等に基づき、試料の半価幅(鉄鋼材料では硬さに相当)や残留応力、残留オーステナイト体積率等のパラメータを測定するX線回折測定装置が知られている。
【0003】
これに関し、特許文献1には、α相(フェライト相又はマルテンサイト相)とγ相(オーステナイト相)との理論回折X線ピーク強度比から、γ相の体積率を求める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-140094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような技術では、回折強度の高いKα回折(α相Kα回折とγ相Kα回折)を用いて、α相とγ相からの回折X線積分強度比により、試料のパラメータを評価している。
【0006】
図14は、従来におけるX線回折測定装置の一例を示す概略図である。従来技術では、測角機構などを搭載した大型の装置によって回折角±数~数十度の範囲で0・一次元検出器を円弧上に移動させて回折線を得る方法や、直径50mmほどの二次元検出器において両回折線を同時に取得する方法が用いられていた。
【0007】
図15は、従来におけるX線回折測定装置によって得られるデータの一例を示す図である。ここで、α相Kα回析の回折角とγ相Kα回析の回折角は離れているため、従来技術では、X線検出可能領域を大きくする必要があり、これに伴ってコストが増大する(例えば、センサチップの増設等が必要になる)という問題があった。
また、X線でα相とγ相が混合する試料からの回折X線を計測する場合、上述のKα回折に加えて、γ相Kβ回折が現れる。しかしながら、このγ相Kβ回折は、γ相Kα回折に対して回折強度が低く、一部がα相Kα回折に重なるため、無視されたり、V(バナジウム)フィルタによって減衰(強度低下)させて利用しなかったりすることが一般的であった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、試料のパラメータを測定する場合において、α相Kα回折とγ相Kβ回折を用いることで、コストを抑制することができるX線回折測定装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様に係るX線回析測定装置は、X線が照射された試料から回折した回折環を検出する検出部と、前記検出された回折環から得られる回折プロフィルに基づいて、α相Kα成分とγ相Kβ成分を解析する解析部と、前記解析されたα相Kα成分とγ相Kβ成分に応じて、前記試料のパラメータを測定する測定部と、を備える。
【0010】
また、本発明の第二態様では、前記解析部は、前記回折プロフィルにおいて、γ相Kβ成分が現れる回折角に対応する回折強度を補正することにより、α相Kα成分を解析する。
【0011】
また、本発明の第三態様では、前記解析部は、前記解析したα相Kα成分と、前記回折プロフィルとの差分に基づき、γ相Kβ成分を解析する。
【0012】
また、本発明の第四態様では、前記検出部は、SOIセンサによって回折環を検出する。
【0013】
また、本発明の第五態様では、前記パラメータは、残留応力又は残留オーステナイト体積率を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、試料のパラメータを測定する場合において、α相Kα回折とγ相Kβ回折を用いることで、コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【0016】
図1】第一実施形態に係るX線回折測定装置の全体構成の一例を示す図である。
図2図1の測定装置の一部構成の一例を示す斜視図である。
図3図2に示す測定装置の底面図である。
図4】検出部によって検出された回折環を示す回折環画像の一例を示す図である。
図5図1に示されるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】コンピュータの機能的構成の一例を示すブロック図である。
図7】第一実施形態に係るコンピュータによる処理の流れについて説明する。
図8】(A)は、第一回折プロフィルの一例を示す図である。(B)は、第二回折プロフィルの一例を示す図である。
図9】(A)は、第一回折プロフィル(破線)と第二回折プロフィル(実線)とを比較する一例を示す図である。(B)は、第二回折プロフィルを補正して解析したα相Kα成分の一例を示す図である。
図10】(A)は、第一回折プロフィル(実線)と解析したα相Kα成分(破線)とを比較する一例を示す図である。(B)は、第一回折プロフィルとα相Kα成分の差分によって解析したγ相Kβ成分の一例を示す図である。
図11】第二実施形態に係るコンピュータによる処理の流れについて説明する。
図12】回折プロフィルにおいて、γ相Kβ成分が現れる回折角を特定する一例を示す図である。
図13】(A)は、回折プロフィルにおいて、γ相Kβ成分が現れる回折角に対応する回折強度の波形(破線部分)を除去した一例を示す図である。(B)は、残りの波形によって除去した部分の波形を補正し、解析したα相Kα成分の一例を示す図である。
図14】従来におけるX線回折測定装置の一例を示す概略図である。
図15】従来におけるX線回折測定装置によって得られるデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の複数の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
---第一実施形態---
まず、第一実施形態について説明する。例えば、第一実施形態では、Kβフィルタを利用する測定的手法によって試料のパラメータを測定する。
【0019】
<全体構成>
図1は、第一実施形態に係るX線回折測定装置1の全体構成の一例を示す図である。図1に示すように、X線回折測定装置1は、例えば、測定装置10と、コンピュータ12と、を備える。なお、図1では、測定装置10の図示を簡略化している。
【0020】
図2は、図1の測定装置10の一部構成の一例を示す斜視図である。
図3は、図2に示す測定装置10の底面図である。図2及び図3に示すように、測定装置10は、例えば、管球20と、コリメータ22と、基板24と、フィルタ切替機構26と、検出部28と、を有する。なお、図示は省略するが、測定装置10は、X線照射位置を明示するためのレーザポインタ等を含むその他の様々な構成を備えてもよい。
【0021】
管球20は、X線を生成し、生成したX線を試料に向けて照射する照射部としての機能を有する。試料には、試料のパラメータを測定する測定対象(例えば、歯車やクランク軸、シャフト等)としての測定試料等が含まれる。試料のパラメータとしては、例えば、試料の硬さ(鉄鋼材料では回折X線プロフィルの半価幅と相関)や、残留応力(回折角あるいは回折環半径のひずみから算出)、残留オーステナイト体積率(α相とγ相の各回折X線プロフィルの積分強度被)等が挙げられる。
【0022】
コリメータ22は、管球20によるX線の照射範囲を調整する機能を有する。コリメータ22は、管球20の下方(基板24側)に設けられ、基板24側に延伸している。
【0023】
フィルタ切替機構26は、駆動部の動作によって、検出部28がKβフィルタFを通過(透過)していない回折環と当該KβフィルタFを通過した回折環を検出可能とする機能を有する。例えば、フィルタ切替機構26は、ソレノイドを備える駆動部と、二つのKβフィルタFと、を有している。このフィルタ切替機構26は、基板24の一方側の面(管球20とは反対側の面)において、測定装置10の長手方向(矢印方向)に駆動可能に設けられている。第一実施形態では、フィルタ切替機構26は、回析X線側に設置される。
【0024】
例えば、フィルタ切替機構26は、駆動部のソレノイドがオフからオンになった場合、二つのKβフィルタFが回析X線側(外側)から後述するチップ28A,28Bを覆う位置に移動する。これにより、検出部28は、KβフィルタFを通過した回折環(回折X線)を検出することができる。一方、フィルタ切替機構26は、駆動部のソレノイドがオンからオフになった場合、二つのKβフィルタFが回析X線側(外側)からチップ28A,28Bを覆わない位置に移動する。これにより、検出部28は、KβフィルタFを通過していない回折環(回折X線)を検出することができる。
例えば、試料がCr(クロム)である場合、このKβフィルタFには、一般的に薄膜のV(バナジウム)フィルタが用いられる。
【0025】
検出部28は、基板24の一方側の面(管球20とは反対側の面)に設けられている。第一実施形態では、検出部28は、X線が照射された試料から回折した回折環を検出する機能を有する。例えば、検出部28は、試料にて回折した回折X線から形成される回折環を検出するセンサ部と、検出された回折環を電気信号(画素信号)に変換する回路部と、を含む。回折環は、デバイ環又はデバイ・シェラー環とも呼ばれる。検出部28は、回折環を撮像するための撮像素子であって、例えばセンサ部と回路部とが一体化されたSOI(Silicon on Insulator)センサによって回折環を検出する。このSOIセンサは、高感度であるため、Kβ回折(γ相Kβ成分)を検出することができる。また、SOIセンサは、高分解能であるため、後述するKα回折(α相Kα成分)とKβ回折(γ相Kβ成分)の波形分離解析を容易に行うことができる。ここで、SOIセンサは、チップ(28A,28B)が小型であるため、X線検出可能領域が小さい。
【0026】
基板24の一方側の面において、検出部28は、コリメータ22を間に介して並ぶように配置された二つのチップ28A,28Bを有している。二つのチップ28A,28Bの間には、コリメータ22が突出している。また、基板24の一方側の面には、検出部28が変換した電気信号をコンピュータ12に送信するためのコネクタ30等が設けられている。
【0027】
また、図3において、各チップ28A,28Bの中央部に位置する所定範囲(例えば、100ピクセル×200ピクセル等)で指定された矩形状の中央範囲36A,36Bを、仮想的に破線で示している。当該中央範囲36A,36Bに回折環の回折プロフィルのピークが位置する場合には、当該ピークの両側に十分な範囲のバッググラウンドを取って解析を行うことができる。なお、各チップ28A,28Bの中央部は、各チップ28A,28Bの検出面に沿った平面上における中心そのものであってもよく、当該中心を含む所定の領域又は当該領域中の任意の点であってもよい。
【0028】
ここで、回折プロフィルは、回折環の中心座標を基準として半径方向における回折X線の強度分布を示す。この回折プロフィルに関しては、追って詳述する。また、以下では、回折プロフィルにおいて、回折強度が最大値となる回折角を「ピーク回折角」といい、回折強度の最大値を「ピーク回折強度」という。
【0029】
図4は、検出部28によって検出された回折環を示す回折環画像の一例を示す図である。
図4に示す画像32A,32Bは、検出部28による検出値の二次元分布図である。
画像32Aは、チップ28Aによって検出された回折環の第一部分である回折環部分C1を示す。画像32Bは、チップ28Bによって検出された回折環の第二部分である回折環部分C2を示す。このように、各チップ28A,28Bは、回折X線が形成する回折環の互いに異なる部分を検出する。なお、図4に示す画像32A,32Bでは、回折環部分C1,C2のみを帯状のドットで示しているが、実際に得られる画像は、回折環部分C1,C2以外の部分も所定の検出値に対応する所定の濃度や色が付されている。
【0030】
コンピュータ12は、測定装置10における管球20やフィルタ切替機構26、検出部28とそれぞれ通信可能に接続され、接続された各装置を制御する。なお、通信可能に接続とは、有線であるか無線であるかを問わない。
第一実施形態では、コンピュータ12は、KβフィルタFを通過せずに検出部28によって検出された回折環から得られる第一回折プロフィルと、当該KβフィルタFを通過して検出部28によって検出された回折環から得られる第二回折プロフィルとを解析し、試料のパラメータを測定する。
【0031】
<コンピュータ12のハードウェア構成>
図5は、図1に示されるコンピュータ12のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0032】
図5に示すように、コンピュータ12は、制御装置40と、通信装置46と、記憶装置48と、を備える。
【0033】
制御装置40は、CPU42及びメモリ44を主に備えて構成される。CPU42は、コンピュータ12の各種構成を制御する。メモリ44は、例えばコンピュータ12における処理の実行に必要な各種プログラムや変数、回折環画像等を記憶する。
【0034】
通信装置46は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信装置46は、例えば、測定装置10やフィルタ切替機構26等との間で各種の情報を送受信する。
【0035】
記憶装置48は、ハードディスク等で構成される。記憶装置48は、制御装置40における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。
【0036】
なお、コンピュータ12は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータ等の情報処理装置を用いて実現することができる。また、コンピュータ12は、単一の情報処理装置により構成されても、通信ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置により構成されてもよい。また、図5は、コンピュータ12が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、コンピュータ12は、一般的なサーバが備える他の構成を備えてもよい。
【0037】
<コンピュータ12の機能的構成>
図6は、コンピュータ12の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【0038】
図6に示すように、コンピュータ12は、機能的構成として、測定装置10の動作を制御する制御部50と、検出部28により検出された回折環の情報を解析して試料のパラメータを測定するデータ処理部60と、を備える。これらの各機能的構成は、CPU42の制御のもとで、メモリ44又は記憶装置48に記憶されたプログラムを実行し、コンピュータ12が備える上記各種のハードウェア構成を動作させることで実現される。
【0039】
制御部50は、例えば、照射制御部52と、検出制御部54と、フィルタ制御部56と、を有する。
【0040】
照射制御部52は、X線を出力するように管球20を制御する。
【0041】
検出制御部54は、回折環を検出するように検出部28を制御する。
【0042】
フィルタ制御部56は、フィルタ切替機構26の駆動部を制御する。第一実施形態では、フィルタ制御部56は、検出部28がKβフィルタFを通過した回折環と当該KβフィルタFを通過していない回折環を検出可能とするように、フィルタ切替機構26の駆動部を制御する。例えば、フィルタ制御部56は、変数nの値に応じて、駆動部を制御する。
【0043】
データ処理部60は、例えば、画像処理部62と、解析部64と、測定部66と、を有する。
【0044】
画像処理部62は、検出部28により検出された回折環の画像(32A,32B)を生成する。以下、この画像を「回折環画像」という。なお、画像処理部62は、これらの画像32A,32Bを1枚の回折環画像に合成する処理を行ってもよい。
第一実施形態では、画像処理部62は、KβフィルタFを通過せずに検出された回折環の第一回折環画像と、KβフィルタFを通過して検出された回折環の第二回折環画像と、を生成する。
【0045】
解析部64は、検出部28によって検出された回折環から得られる回折プロフィルを生成し、試料のα相Kα成分とγ相Kβ成分を解析(波形分離解析)する機能を有する。例えば、解析部64は、画像処理部62によって生成された回折環画像に基づいて、回折プロフィルを生成する。この回折プロフィルは、x軸が回折角(画素)に対応し、y軸が回折強度に対応するグラフにおいて、波形によって表される。
【0046】
第一実施形態では、解析部64は、KβフィルタFを通過せずに検出された回折環(第一回折環画像)から得られる第一回折プロフィルと、KβフィルタFを通過して検出された回折環(第二回折環画像)から得られる第二回折プロフィルとに応じて、α相Kα成分とγ相Kβ成分を解析する。例えば、解析部64は、画像処理部62によって生成された第一回折環画像から、第一回折プロフィルを生成する。また、例えば、解析部64は、画像処理部62によって生成された第二回折環画像から、第二回折プロフィルを生成する。
【0047】
<α相Kα成分の解析>
第一実施形態では、解析部64は、第一回折プロフィルに含まれる一部のα相Kα成分に基づいて、第二回折プロフィルを補正することによって、α相Kα成分を解析する。例えば、解析部64は、KβフィルタFを通過したことによって回折強度が減衰(強度低下)した第二回折プロフィルに含まれるα相Kα成分を、回折強度が減衰していない第一回折プロフィルに含まれる一部のα相Kα成分によって補正する。
【0048】
<γ相Kβ成分の解析>
また、第一実施形態では、解析部64は、解析したα相Kα成分と、第一回折プロフィルとの差分に基づき、γ相Kβ成分を解析する。例えば、解析部64は、KβフィルタFを通過していない第一回折プロフィル(α相Kα成分とγ相Kβ成分の混合プロファイル)から、解析したα相Kα成分を差し引くことで、γ相Kβ成分を解析(波形分離解析)する。
【0049】
測定部66は、試料のパラメータを測定する機能を有する。第一実施形態では、測定部66は、解析部64によって解析されたα相Kα成分とγ相Kβ成分に基づいて、試料のパラメータを測定する。例えば、測定部66は、α相Kα成分とγ相Kβ成分の回折X線積分強度比(回折プロフィルにおける各成分の面積比)により、試料のパラメータを測定する。
【0050】
<コンピュータ12による処理の流れ>
図7は、第一実施形態に係るコンピュータ12による処理の流れについて説明する。また、以下のステップの処理は、例えば、フィルタ切替機構26の二つのKβフィルタFがチップ28A,28Bを覆わない状態で開始される。また、変数nには、初期値として1が代入されている。なお、以下のステップの順番は、適宜、変更することができる。
【0051】
(ステップSP10)
照射制御部52は、X線を出力するように管球20を制御する。そして、処理は、ステップSP12の処理に移行する。
【0052】
(ステップSP12)
検出制御部54は、試料から回折した回折環を検出するように検出部28を制御する。そして、処理は、ステップSP14の処理に移行する。
【0053】
(ステップSP14)
画像処理部62は、ステップSP12において検出部28によって検出された回折環画像を生成する。第一実施形態では、画像処理部62は、変数nが1の場合は、KβフィルタFを通過せずに検出された回折環から、第一回折環画像を生成する。また、例えば、画像処理部62は、変数nが2の場合は、KβフィルタFを通過して検出された回折環から、第二回折環画像を生成する。そして、処理は、ステップSP16の処理に移行する。
【0054】
(ステップSP16)
フィルタ制御部56は、変数nが2であるか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には、処理は、ステップSP22の処理に移行する。一方、当該判定が否定判定された場合、すなわち変数nが1である場合には、処理は、ステップSP18の処理に移行する。
【0055】
(ステップSP18)
フィルタ制御部56は、フィルタ切替機構26の駆動部を制御する。例えば、フィルタ制御部56は、フィルタ切替機構26の二つのKβフィルタFがチップ28A,28Bを覆う位置に移動させる。そして、処理は、ステップSP20の処理に移行する。
【0056】
(ステップSP20)
フィルタ制御部56は、変数nをインクリメント(+1)する。そして、処理は、ステップSP10の処理に移行する。
【0057】
(ステップSP22)
解析部64は、ステップSP14において画像処理部62によって生成された第一回折環画像に基づいて、各画素に対応する回折角と当該回折角に対応する回折強度を示す第一回折プロフィルを生成する。同様に、解析部64は、ステップSP14において画像処理部62によって生成された第二回折環画像に基づいて、各画素に対応する回折角と当該回折角に対応する回折強度を示す第二回折プロフィルを生成する。
【0058】
図8(A)は、第一回折プロフィルの一例を示す図である。図8(B)は、第二回折プロフィルの一例を示す図である。
【0059】
図8(A)に示すように、第一回折プロフィルP1は、Kβフィルタを通過していない回折環(第一回折環画像)から得られるため、α相Kα成分とγ相Kβ成分を含む混合プロファイルである。また、図8(B)に示すように、第二回折プロフィルP2の回折強度は、KβフィルタFを通過した回折環(第二回折環画像)から得られるため、γ相Kβ成分は十分吸収され、当該KβフィルタFによって減衰したα相Kα成分を含む。
【0060】
図7に戻って、処理は、ステップSP24の処理に移行する。
【0061】
(ステップSP24)
解析部64は、第一回折プロフィルに含まれる一部のα相Kα成分に基づいて、第二回折プロフィルを補正することによって、α相Kα成分を解析する。この第一回折プロフィルに含まれる一部のα相Kα成分は、例えば、第一回折プロフィルのピーク回折強度である。
【0062】
図9(A)は、第一回折プロフィルP1(破線)と第二回折プロフィルP2(実線)とを比較する一例を示す図である。図9(B)は、第二回折プロフィルP2を補正して解析したα相Kα成分の一例を示す図である。
【0063】
図9(A)に示すように、第一回折プロフィルP1のピーク回折角Xは、第二回折プロフィルP2のピーク回折角Xと同一である。一方、第二回折プロフィルP2に含まれるα相Kα成分はKβフィルタFによって減衰しているため、第一回折プロフィルP1のピーク回折強度Yは、第二回折プロフィルP2のピーク回折強度Yよりも高い。
このため、図9(B)に示すように、解析部64は、第二回折プロフィルP2のピーク回折強度Yが、第一回折プロフィルP1のピーク回折強度Y(α相Kα成分のピーク回折強度)と一致するように、第二回折プロフィルP2を補正してα相Kα成分を解析する。例えば、解析部64は、第二回折プロフィルP2のピーク回折強度Yの補正率(KβフィルタFの吸収係数)をY/Yとして最も高くし、ピーク回折角から(x軸方向に)離れるほど回折強度の補正率を減少させる。
【0064】
図7に戻って、処理は、ステップSP26の処理に移行する。
【0065】
(ステップSP26)
解析部64は、ステップSP24において解析したα相Kα成分と、第一回折プロフィルとの差分に基づき、γ相Kβ成分を解析する。例えば、解析部64は、KβフィルタFを通過していない第一回折プロフィル(α相Kα成分とγ相Kβ成分の混合プロファイル)から、ステップSP24において解析したα相Kα成分を差し引くことに応じて、γ相Kβ成分を解析する。
【0066】
図10(A)は、第一回折プロフィルP1(実線)と解析したα相Kα成分(破線)とを比較する一例を示す図である。図10(B)は、第一回折プロフィルP1とα相Kα成分の差分によって解析したγ相Kβ成分の一例を示す図である。
【0067】
図10に示すように、解析部64は、第一回折プロフィル(α相Kα成分とγ相Kβ成分の混合プロファイル)から、解析したα相Kα成分Aを差し引くことにより、γ相Kβ成分の一部B1(図10(B)の実線部分)を抽出する。続いて、解析部64は、抽出したγ相Kβ成分の一部B1から、γ相Kβ成分の残部B2(図10(B)の破線部分)を補正(補間)する。例えば、解析部64は、抽出したγ相Kβ成分の一部B1から当該γ相Kβ成分のピーク回折強度Yを特定し、当該γ相Kβ成分のピーク回折角Xを通るy軸方向の軸(y=X)を中心軸として、γ相Kβ成分の回折強度が略左右対称となるように補正(補間)する。
【0068】
図7に戻って、処理は、ステップSP28の処理に移行する。
【0069】
(ステップSP28)
測定部66は、ステップSP24及びステップSP26において解析部64によって解析されたα相Kα成分とγ相Kβ成分に基づいて、試料のパラメータを測定する。例えば、測定部66は、α相Kα成分とγ相Kβ成分の回折X線積分強度比により、試料のパラメータを測定する。そして、処理は、図7に示す一連の処理を終了する。
【0070】
<効果>
以上、第一実施形態では、X線が照射された試料から回折した回折環を検出する検出部28と、KβフィルタFを通過せずに検出された回折環から得られる第一回折プロフィルと、当該KβフィルタFを通過して検出された回折環から得られる第二回折プロフィルとに応じて、α相Kα成分とγ相Kβ成分を解析する解析部64と、解析されたα相Kα成分とγ相Kβ成分に基づいて、試料のパラメータを測定する測定部66と、を備える。
【0071】
この構成によれば、α相Kα回折とγ相Kβ回折によって試料のパラメータを測定することができるため、X線検出可能領域を大きくする必要がなくなり、コストを抑制することができる。
【0072】
また、第一実施形態では、解析部64は、第一回折プロフィルに含まれる一部のα相Kα成分に基づいて、第二回折プロフィルを補正することによって、α相Kα成分を解析する。
【0073】
この構成によれば、第一回折プロフィルに含まれる一部のα相Kα成分に基づいて、KβフィルタFを通過したことによって減衰した第二回折プロフィル(α相Kα成分)を補正するため、高い精度でα相Kα成分を解析することができる。
【0074】
また、第一実施形態では、解析部64は、解析したα相Kα成分と、第一回折プロフィルとの差分に基づき、γ相Kβ成分を解析する。
【0075】
この構成によれば、解析したα相Kα成分と、KβフィルタFを通過していない第一回折プロフィルとの差分を用いるため、高い精度でγ相Kβ成分を解析することができる。
【0076】
また、第一実施形態では、検出部28は、SOIセンサによって回折環を検出する。
【0077】
この構成によれば、高感度かつ高分解能であるSOIセンサによって回折環を検出するため、Kα回折(α相Kα成分)とKβ回折(γ相Kβ成分)の波形分離解析を容易に行うことができる。
【0078】
また、第一実施形態では、駆動部とKβフィルタFを有しており、当該駆動部の動作によって、検出部28が当該KβフィルタFを通過していない回折環と当該KβフィルタFを通過した回折環を検出可能とするフィルタ切替機構26と、を備える。
【0079】
この構成によれば、KβフィルタFを通過していない回折環と通過した回折環とを容易に検出することができるため、試料のパラメータ測定を効率的に行うことができる。
【0080】
また、第一実施形態では、パラメータは、残留応力又は残留オーステナイト体積率を含む。
【0081】
この構成によれば、試料の残留応力又は残留オーステナイト体積率について、α相Kα回折とγ相Kβ回折を用いて測定することができるため、コストを抑制することができる。
【0082】
---第二実施形態---
次に、第二実施形態について説明する。
【0083】
第二実施形態では、フィルタ切替機構26やKβフィルタを利用せず、解析的手法によって試料のパラメータを測定する点で第一実施形態と異なる。また、第二実施形態における回折プロフィルは、第一実施形態における第一回折プロフィルに該当する。なお、以下で説明しない第二実施形態に係るX線回折測定装置1の構成及び機能は、第一実施形態に係るX線回折測定装置1の構成及び機能と同様である。
【0084】
第二実施形態では、解析部64は、検出部28によって検出された回折環から得られる回折プロフィルに基づいて、α相Kα成分とγ相Kβ成分を解析する。
【0085】
<α相Kα成分の解析>
第二実施形態では、解析部64は、回折環から得られる回折プロフィルにおいて、γ相Kβ成分が現れる回折角(回折角の範囲)に対応する回折強度を補正(補間)することにより、α相Kα成分を解析する。この回折プロフィルのγ相Kβ成分が現れる回折角は、回折プロフィル(例えば波形の傾き等)から特定してもよいし、予めメモリ44や記憶装置48等に記憶されていてもよい。続いて、解析部64は、γ相Kβ成分が現れる回折角に対応する回折強度の波形を除去して、当該除去した波形を残りの波形(γ相Kβ成分が現れていないα相Kα成分の波形)で補正して、α相Kα成分を解析する。この補正(補間)には、例えば、ガウスフィッティングやリニアフィッティングが用いられる。
【0086】
<γ相Kβ成分の解析>
また、第二実施形態では、解析部64は、第一実施形態と同様に、解析したα相Kα成分と、検出部28によって検出された回折プロフィルとの差分に基づき、γ相Kβ成分を解析する。
【0087】
<コンピュータ12による処理の流れ>
図11は、第二実施形態に係るコンピュータ12による処理の流れについて説明する。なお、以下のステップの順番は、適宜、変更することができる。
【0088】
(ステップSP30~ステップSP34)
ステップSP30~ステップSP34の処理は、上述したステップSP10~ステップSP14の処理と同様であるため、説明を省略する。そして、処理は、ステップSP36の処理に移行する。
【0089】
(ステップSP36)
解析部64は、ステップSP34において画像処理部62によって生成された回折環画像に基づいて、各画素に対応する回折角と当該回折角に対応する回折強度を示す回折プロフィルを生成する。そして、処理は、ステップSP38の処理に移行する。
【0090】
(ステップSP38)
解析部64は、回折プロフィルのγ相Kβ成分が現れる回折角(回折角の範囲)を特定できるか否かを判定する。
【0091】
図12は、回折プロフィルにおいて、γ相Kβ成分が現れる回折角を特定する一例を示す図である。
【0092】
図12に示すように、解析部64は、回折プロフィルPのピーク回折角X1よりも大きい回折角(ピークよりも右側の波形)において、回折強度の傾きが0又は正の数(プラス)になる回折角Xから、当該回折角Xに所定角度を足した回折角Xk+1までとして特定する。
【0093】
図11に戻って、ステップSP38の判定が肯定判定された場合には、処理は、ステップSP40の処理に移行する。一方、当該判定が否定判定された場合には、処理は、ステップSP30の処理に移行する。
【0094】
(ステップSP40)
解析部64は、ステップSP38において特定されたγ相Kβ成分が現れる回折角に対応する回折強度の波形を除去して、当該除去した波形を残りの波形(γ相Kβ成分が現れない波形)で補正して、α相Kα成分を解析する。
【0095】
図13(A)は、回折プロフィルPにおいて、γ相Kβ成分が現れる回折角に対応する回折強度の波形Pk(破線部分)を除去した一例を示す図である。図13(B)は、残りの波形A1によって除去した部分の波形A2を補正し、解析したα相Kα成分の一例を示す図である。
【0096】
図13(A)に示すように、解析部64は、回折プロフィルPにおいて、ステップSP38において特定されたγ相Kβ成分が現れる回折角Xから、当該回折角Xに所定角度を足した回折角Xk+1までに対応する回折強度の波形Pk(破線部分)を除去する。続いて、図13(B)に示すように、解析部64は、残りの波形A1(γ相Kβ成分が現れていないα相Kα成分の波形)によって、除去した部分の波形A2(破線部分)を補正(補間)して、α相Kα成分を解析する。
【0097】
図11に戻って、処理は、ステップSP42の処理に移行する。
【0098】
(ステップSP42~ステップSP44)
ステップSP42~ステップSP44の処理は、上述したステップSP26~ステップSP28の処理と同様であるため、説明を省略する。そして、処理は、図11に示す一連の処理を終了する。
【0099】
<効果>
以上、第二実施形態では、X線が照射された試料から回折した回折環を検出する検出部28と、検出された回折環から得られる回折プロフィルに基づいて、α相Kα成分とγ相Kβ成分を解析する解析部64と、解析されたα相Kα成分とγ相Kβ成分に応じて、試料のパラメータを測定する測定部66と、を備える。
【0100】
この構成によれば、α相Kα回折とγ相Kβ回折によって試料のパラメータを測定することができるため、X線検出可能領域を大きくする必要がなくなり、コストを抑制することができる。
【0101】
また、第二実施形態では、解析部64は、回折プロフィルにおいて、γ相Kβ成分が現れる回折角に対応する回折強度を補正することにより、α相Kα成分を解析する。
【0102】
この構成によれば、γ相Kβ成分が現れる回折角に対応する回折強度を補正することで、α相Kα成分を解析することができるため、コストを抑制することができる。
【0103】
また、第二実施形態では、解析部64は、解析したα相Kα成分と、回折プロフィルとの差分に基づき、γ相Kβ成分を解析する。
【0104】
この構成によれば、解析したα相Kα成分と、回折プロフィルとの差分を用いるため、高い精度でγ相Kβ成分を解析することができる。
【0105】
また、第二実施形態では、検出部28は、SOIセンサによって回折環を検出する。
【0106】
この構成によれば、高感度かつ高分解能であるSOIセンサによって回折環を検出するため、Kα回折(α相Kα成分)とKβ回折(γ相Kβ成分)の波形分離解析を容易に行うことができる。
【0107】
また、第二実施形態では、パラメータは、残留応力又は残留オーステナイト体積率を含む。
【0108】
この構成によれば、試料の残留応力又は残留オーステナイト体積率について、α相Kα回折とγ相Kβ回折を用いて測定することができるため、コストを抑制することができる。
【0109】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記の実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0110】
例えば、第一実施形態では、フィルタ切替機構26は、回析X線側に設置される場合を説明したが、フィルタ切替機構26(KβフィルタF)は、入射するX線側に設けられてもよい。この場合、フィルタ切替機構26は、管球20とコリメータ22との間に設けられてもよいし、コリメータ22と試料との間に設けられてもよい。なお、フィルタ切替機構26は、ソレノイドでなく、ピストン機構によってKβフィルタを移動させてもよい。
【0111】
また、第二実施形態では、解析部64は、回折プロフィルにおいて、γ相Kβ成分が現れる回折角(回折角の範囲)に対応する回折強度を補正する場合を説明したが、γ相Kβ成分が現れる画素(画素の範囲)に対応する回折強度を補正してもよい。このγ相Kβ成分が現れる画素は、回折プロフィル(例えば波形の傾き等)から特定してもよいし、予めメモリ44や記憶装置48等に記憶されていてもよい。なお、第一実施形態及び第二実施形態において、回折角は、回折環画像の画素(ピクセル)に置き換えることができる。
【0112】
また、第二実施形態では、解析部64は、検出された回折プロフィル(第一回折プロフィル)からKβフィルタを通過した第二回折プロフィルを予測してもよい。例えば、解析部64は、Kβフィルタの吸収係数に基づき、第二回折プロフィルを予測する。続いて、解析部64は、第一実施形態のステップSP24と同様に、予測した第二回折プロフィルを補正することよってα相Kα成分を解析する。
【0113】
また、第二実施形態では、ステップSP40において、解析部64は、回折プロフィルにおいて、γ相Kβ成分が現れる回折角に対応する回折強度の波形を除去及び補正する場合を説明したが、当該γ相Kβ成分が現れる回折角それぞれの回折強度(波形)に適用する係数(重み)を変更することによって、α相Kα成分を解析してもよい。
【0114】
また、第二実施形態において、解析部64は、回折プロフィルのピーク回折角よりも低い回折角の回折強度(ピーク回折角よりも左側の波形)に基づいて、ピーク回折角よりも高い回折角の回折強度(ピーク回折角よりも右側の波形)を補正(補間)して、α相Kα成分を解析してもよい。例えば、解析部64は、回折プロフィルのピーク回折角よりも高い回折角の回折強度(ピーク回折角よりも右側の波形)を除去する。続いて、解析部64は、回折プロフィルのピーク回折角よりも低い回折角の回折強度に基づいて、回折プロフィルのピーク回折角を通るy軸方向の軸を中心軸として、回折プロフィルの波形が略左右対称となるように補正(補間)して、α相Kα成分を解析する。なお、解析部64は、予めメモリ44や記憶装置48等に記憶しているα相Kα成分の波形形状(サンプル波形)と、ピーク回折角よりも低い回折角の回折強度(ピーク回折角よりも左側の波形)を比較して、γ相Kβ成分の残部を補正(補間)してもよい。
【0115】
また、第一実施形態及び第二実施形態では、解析部64は、抽出したγ相Kβ成分の一部B1から当該γ相Kβ成分のピーク回折強度Yを特定し、γ相Kβ成分の回折強度が略左右対称となるように補正(補間)する場合を説明したが、予めメモリ44や記憶装置48等に記憶しているγ相Kβ成分の波形形状(サンプル形状)と、抽出したγ相Kβ成分の一部B1とを比較して、γ相Kβ成分の残部B2を補正(補間)してもよい。
【0116】
また、第一実施形態及び第二実施形態では、検出部28は、SOIセンサによって回折環を検出する場合について説明したが、他のセンサであってもよい。また、検出部28は、回折環部分C1,C2としてではなく一つの回折環として検出してもよい。
【0117】
また、本発明は、コンピュータ12等の情報処理装置を、図6に示す各機能構成として機能させるためのプログラムであってもよい。当該プログラムは、コンピュータ12の内部に配置された記憶手段に記憶されてもよく、ネットワークでX線回折測定装置1に接続された外部の記憶手段に記憶されてもよい。また、当該プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよく、インターネット等のネットワーク経由でインストールする形式で提供してもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…X線回折測定装置
28…検出部
64…解析部
66…測定部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15