(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150159
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】取付用部材の装着構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
E04F13/08 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063427
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】加藤 実紅
(72)【発明者】
【氏名】吉田 卓司
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA02
2E110AA42
2E110AA48
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110DC08
2E110GA07W
2E110GA07X
2E110GA42Z
2E110GB02Z
2E110GB03Z
2E110GB06Z
2E110GB32Z
2E110GB46W
2E110GB46X
2E110GB46Z
2E110GB48W
2E110GB48X
2E110GB52W
2E110GB52X
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建物開口を塞ぐ面材を躯体に固定するための取付用部材の装着方法及び装着構造を提供する。
【解決手段】取付用部材10は、第一の装着L材及び第二の装着L材を含み、第一の装着L材及び第二の装着L材は、それぞれT溝の溝形成方向に係合係止される水平面と、水平面と略垂直に繋がってT溝外に突出する立設面、を有し、第一の装着L材及び第二の装着L材の立設面それぞれが、相対して互いに係合する係止片と、水平面と反対側の端部に設けられて保持片、を有し、第一の装着L材及び第二の装着L材の立設面同士が対向した状態で、取付用部材10が面材に装着され、係止片同士を係合させて係合部が形成され、係合部と保持片との間に、断面略矩形の空間が形成され、空間に介在物が保持されることによって、係止片同士の係合が解除不能な構成を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口を塞ぐ面材に備えるT溝に、前記面材を躯体に固定するための取付用部材が装着された装着構造であって、
前記取付用部材は、第一の装着L材及び第二の装着L材を含み、
前記第一の装着L材及び前記第二の装着L材は、それぞれ前記T溝の溝形成方向に係合係止される水平面と、水平面と略垂直に繋がって前記T溝外に突出する立設面と、を有し、
前記第一の装着L材及び前記第二の装着L材の立設面それぞれが、相対して互いに係合する係止片と、前記水平面とは反対側の端部に設けられて保持片と、を有し、
前記第一の装着L材及び前記第二の装着L材の立設面同士が対向した状態で、前記取付用部材が前記面材に装着され、前記係止片同士を係合させて係合部が形成されており、
前記係合部と前記保持片との間に介在物が保持されることによって、前記係止片同士の係合が解除不能な構成を有すること、
を特徴する取付用部材の装着構造。
【請求項2】
前記第一の装着L材及び前記第二の装着L材の前記保持片が、それぞれ一方の前記立設面の端部から対向する他方の前記立設面側に向けて突出して設けられ、前記介在物を包摂する空間を形成していること、
を特徴とする請求項1に記載の取付用部材の装着構造。
【請求項3】
前記空間が、略矩形状の断面を有しており、
前記保持片同士の間に間隙が設けられていること、
を特徴とする請求項2に記載の取付用部材の装着構造。
【請求項4】
前記第二の装着L材が、回動して前記T溝に装着される回動装着L材であること、
を特徴とする請求項1~3のうちのいずれかに記載の取付用部材の装着構造。
【請求項5】
前記回動装着L材の水平面と立設面の交点外側角部に面取り又はR加工が施されていること、
特徴する請求項4に記載の取付用部材の装着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口を塞ぐ面材を躯体に固定するための取付用部材の装着方法及び装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1(特開2009-293194号公報)は、外壁材を建物の躯体に配置することが容易な、外壁材を建物の躯体に配置するための取り付け部材等を開示している。この取り付け部材は、建物の躯体に取り付けられる第1部材本体、及び、上記第1部材本体の端部に接続され且つ外壁材の嵌合凹部に嵌合する第1嵌合凸部、を有する第1部材と、上記第1部材本体と重ね合わされ且つ建物の躯体に取り付けられる第2部材本体、及び、上記第1部材本体の端部と対向する上記第2部材本体の端部に接続され、上記第1嵌合凸部と対向し、上記第1嵌合凸部の向きと反対の向きに突出し、且つ外壁材の嵌合凹部に嵌合する第2嵌合凸部、を有する第2部材と、を備えている。
かかる取り付け部材では、前記第1部材の前記第1嵌合凸部を、前記一方の外壁材における一方の側部に設けられた第1嵌合凹部に嵌合し、前記取り付け部材における前記第2部材の前記第2嵌合凸部を、前記他方の外壁材における一方の側部に設けられた第2嵌合凹部に嵌合することで、取り付け部材を外壁材に嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の取り付け部材が長い場合、取り付け部材の外壁材への装着は容易でない。
また、風などで外壁材に大きな負圧が掛かると、上記第1部材及び第2部材を含む一対の装着材へ応力が集中して、当該装着材がずれ動いたり変形したりしてT溝から外れてしまい、固定強度が低下する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、建物開口を塞ぐ面材への装着が容易であり、しかも装着材がずれ動いたり変形したりしてT溝から外れてしまうことを抑制し、より強固に固定できる取付用部材の装着構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
建物開口を塞ぐ面材に備えるT溝に、前記面材を躯体に固定するための取付用部材が装着された装着構造であって、
前記取付用部材は、第一の装着L材及び第二の装着L材を含み、
前記第一の装着L材及び第二の装着L材は、それぞれ前記T溝の溝形成方向に係合係止される水平面と、水平面と略垂直に繋がって前記T溝外に突出する立設面と、を有し、
前記第一の装着L材及び第二の装着L材の立設面それぞれが、相対して互いに係合する係止片と、前記水平面とは反対側の端部に設けられて保持片と、を有し、
前記第一の装着L材及び第二の装着L材の立設面同士が対向した状態で、前記取付用部材が前記面材に装着され、前記係止片同士を係合させて係合部が形成されており、
前記係合部と前記保持片との間に介在物が保持されることによって、前記係止片同士の係合が解除不能な構成を有すること、
を特徴する取付用部材の装着構造、を提供する。
【0007】
このような構成を有する本発明の取付用部材の装着構造によれば、係合部と保持片との間において介在物が保持されることによって、係止片同士の係合が解除不能になるため、風などで面材に大きな負圧がかかって、第一の装着L材と第二の装着材とが離間するような外力が取付用部材に加えられても、これら第一の装着L材及び第二の装着材がずれ動いたり変形したりすることがなく、また、T溝から外れてしまうことがないため、固定強度を確保できる。
【0008】
上記の本発明の取付用部材の装着構造においては、前記第一の装着L材及び前記第二の装着L材の前記保持片が、それぞれ一方の前記立設面の端部から対向する他方の前記立設面側に向けて突出して設けられ、前記介在物を包摂する空間を形成していること、がこのましい。
【0009】
このような構成を有する本発明の取付用部材の装着構造によれば、簡易な構造で係合部と保持片との間に介在物を確実に保持する空間を形成することができ、これによって、係止片同士の係合が解除不能になるため、風などで面材に大きな負圧がかかって、第一の装着L材と第二の装着材とが離間するような外力が取付用部材に加えられても、これら第一の装着L材及び第二の装着材がずれ動いたり変形したりすることがなく、また、T溝から外れてしまうことがないため、固定強度を確保できる。
【0010】
また、上記の本発明の取付用部材の装着構造においては、前記空間が、略矩形状の断面を有しており、前記保持片同士の間に間隙が設けられていること、が好ましい。
【0011】
このような構成を有する本発明の取付用部材の装着構造によれば、強度や剛性に優れる断面略矩形状の介在物を、係合部と保持片との間に容易に挿入して確実に保持することができ、これによって、係止片同士の係合が解除不能になるため、風などで面材に大きな負圧がかかって、第一の装着L材と第二の装着材とが離間するような外力が取付用部材に加えられても、これら第一の装着L材及び第二の装着材がずれ動いたり変形したりすることがなく、また、T溝から外れてしまうことがないため、固定強度を確保できる。
【0012】
更に、上記の本発明の取付用部材の装着構造においては、前記第二の装着L材が、回動して前記T溝に装着される回動装着L材であること、が好ましい。
【0013】
このような構成を有する本発明の取付用部材の装着構造によれば、前記回動装着L材を前記T溝に回動装着することにより、極めて容易に、前記取付用部材を前記面材に装着するとともに、前記係止片同士を係合させて係合部が形成される。
【0014】
本発明の取付用部材の装着構造においては、前記回動装着L材の水平面と立設面の交点外側角部に面取り又はR加工が施されていること、が好ましい。
【0015】
このような構成を有する本発明の取付用部材の装着構造によれば、回動装着L材の回動操作をスムーズに行うことができるので、取付用部材のT溝への装着の作業性が更に向上する。しかも、取付用部材とT溝との間の隙間を小さくすることができるので、ガタツキを小さくして強度高く取付用部材を取り付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の取付用部材の装着構造によれば、係合部と保持片との間に形成される断面略矩形の空間に介在物が保持されることによって、係止片同士の係合が解除不能になるため、風などで面材に大きな負圧がかかって、第一の装着L材と第二の装着材とが離間するような外力が取付用部材に加えられても、これら第一の装着L材及び第二の装着材がずれ動いたり変形したりすることがなく、また、T溝から外れてしまうことがないため、固定強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る取付用部材10が適用される建物1の一例を表す外観図である。
【
図2】取付用部材10が適用される面材5の一例の概略を表す裏面図、横断面図及び縦断面図である。
【
図3】取付用部材10が適用される面材5の一例をより詳細に表す拡大裏面図、拡大横断面図及び拡大縦断面図である。
【
図4】取付用部材10が適用される面材5の一例をより詳細に表す部分拡大斜視図である。
【
図5】分解された面材5の横断面図及び裏面図である。
【
図6】連結された面材5の横断面図及び裏面図である。
【
図7】取付用部材10を構成する装着L材11及び回動装着L材13の概略を示す図である。
【
図8】装着L材11及び回動装着L材13の断面形状及び形状状態を表す図である。
【
図9】面材5の連結から取付用部材10の取付までの過程を表す図である。
【
図10】面材5のT溝61、取付用部材10及び固定金物91,93の間の関係を示す図である。
【
図11】介在物の一例としての固定金物91の概略を示す正面図、上面図、左右側面図、及び、左右斜視図である。
【
図12】介在物の一例としてのジョイント材95の概略を示す正面図、上面図、左側面図、及び、斜視図である。
【
図13】取付用部材10への固定金物91,93及びジョイント材95の取付過程を示す図である。
【
図14】本実施形態の変形例1に係る取付用部材110の説明図である。
【
図15】本実施形態の変形例2に係る取付用部材210の説明図である。
【
図16】本実施形態の変形例3に係る取付用部材310の説明図である。
【
図17】取付用部材310を胴縁7に取り付けるための固定金物391の説明図である。
【
図18】固定金物を取付用部材310に固定するための固定具393の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る取付用部材の装着方法及び装着構造の代表的な実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではなく、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて大小や長短の比率や数量を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0019】
本実施形態において、取付用部材10は、建物1の開口3を塞ぐ面材5を建物1の躯体に固定するために用いられる。
ここで、建物1の開口3を建物1の外面に形成し、開口3に面材5を固定して外壁面とするのが一般的である(
図1参照)。なお、ここでは外壁面における事例について説明するが、面材5は建物1の内壁にも採用できるし、屋根面などにも採用できる。建物1の躯体は、例えば鉄骨等により形成されていてよい。
【0020】
以下、面材5の概略を説明し、次いで取付用部材10について詳細に説明することとする。ただし、取付用部材10は、ここで述べる面材5以外にも適用可能である。
ここでは便宜上、鉛直方向をZ軸方向とし、面材5の厚さ方向をY軸方向とし、Y軸方向及びZ軸方向に直交する方向をX軸方向とする(
図2参照)。また、X軸方向を横方向と言い、Z軸方向を縦方向と言うことがある。
【0021】
図2に例示するように、面材5は、略矩形状のパネル材50を並べて配置することで形成される。図では3枚のパネル材50が横方向に連結されているが、パネル材50の連結枚数に制限はない。あるいは、パネル材50は縦方向に並べられてもよいし、縦方向及び横方向に並べられてもよい。
【0022】
面材5は胴縁7を介して建物1の躯体に固定されるところ、面材5の胴縁7との固定のために取付用部材10が用いられる(
図2及び
図3参照)。本実施形態では、胴縁7として、横方向に延びる横胴縁が用いられるが、縦方向に延びる竪胴縁を用いることも可能である。後者の構造や取付方法は前者のそれと同様であるので、説明は省略する。
【0023】
例えば
図5(A)に示すように、パネル材50は、その断面構造が、表面51及び裏面52、並びにこれらの面51,52を連結する複数のリブ53から構成されている。パネル材50は、上記面51,52と上記リブ53とで囲まれた多数の中空部54を有しており、それゆえ、軽量であると共に高い剛性及び断熱性を有している。
【0024】
パネル材50を形成する材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びこれらの樹脂にガラス繊維を含有させた強化樹脂等の光透過性の合成樹脂を用いることができる。
したがって、透光性のあるパネル材50(面材5)を用いることで、断熱性を担保しながら建物1に外光を導入できる。更にパネル材50にリブ構造を採用することにより光を和らげ、やさしい光の空間を創造することができる。
【0025】
パネル材50の側部には、他のパネル材50と連結するための凸部55が形成されている。また、パネル材50の他の側部には、他のパネル材50の凸部55と係合する凹部56が形成されている。したがって、1つのパネル材50の凸部55を他のパネル材50の凹部56に押し付けて、凸部55を凹部56に嵌合させることで、複数のパネル材50を連結することができる(例えば
図6(A)参照)。
【0026】
連結の強度の観点からは、凸部55及び凹部56は、パネル材50の側部の略全てにわたって形成されていることが好ましい(例えば
図5(B)参照)。ただし、隣り合うパネル材50同士を充分な強度で連結できる限り、凸部55及び凹部56はパネル材50の側部の一部分に形成されてよい。
【0027】
面材5には、取付用部材10を装着するためのT溝61が形成されている(例えば
図9参照)。本実施形態では横胴縁7を採用しているため、T溝61は面材5に縦方向に沿って形成されているが、竪胴縁を採用する場合にはT溝61は面材5に横方向に沿って形成されてよい。また、T溝61は面材5に縦方向の略全長にわたって形成されているが、T溝61は面材5に縦方向に沿って部分的に形成されてもよい。
【0028】
例えば
図6(A)に示すように、T溝61は、逆T字状の横断面を有する溝である。つまり、T溝61は、面材5の裏面52に対して略垂直に形成された縦溝62と、縦溝62の奥側の先端から左右方向に分岐する横溝63と、を含むものである。
【0029】
本実施形態では、T溝61は、パネル材50同士を連結することで形成される。すなわち、パネル材50の一方の側部に略L字状の溝61Aが形成され、他方の側部にも略L字状の溝61Bが形成されており、パネル材50同士の連結により溝61A,61Bが組み合わされてT溝61をなす(
図5(A)及び
図6(A)参照)。ただし、面材5あるいはパネル材50の裏面52(すなわち平坦な面)にT溝61を形成しても差し支えない。
【0030】
T溝61の寸法については、おおむね次の範囲が好適である(
図6(A)参照):
縦溝62の溝幅(開口幅)b: 5~10mm
溝全体の深さU: 5~12mm
横溝63の全体幅V: 15~25mm
溝(横溝)の高さW: 2~5mm
【0031】
上述したとおり、面材5のT溝61には取付用部材10が装着される。
取付用部材10の材料としては、例えばアルミニウム、伸銅、ステンレス、鋼等の金属、メッキ鋼板、塩化ビニル等の合成樹脂、又は、上記材料の組合せを用いることができるが、これに限られない。
【0032】
本発明における取付用部材は、第一の装着L材及び第二の装着L材を含む一対の装着材からなるが、本実施形態における取付用部材10は、例えば
図7(A)及び
図8(A),(B)に示すように、略直線状に延び、略T字状の断面を有する部材であり、一対の装着L材11及び回動装着L材13からなる。すなわち、第一の装着L材が装着L材11で、第二の装着L材が回動装着L材13に相当する。
装着L材11は、T溝61の溝形成方向(横溝63が延びる方向)にT溝61と係合し及び係止される水平面11Aと、水平面11Aと略垂直に繋がってT溝61外に突出する立設面11Bと、を有する。また、回動装着L材13は、T溝61の溝形成方向にT溝61と係合し及び係止される水平面13Aと、水平面13Aと略垂直に繋がってT溝61外に突出する立設面13Bと、を有する。
【0033】
例えば
図8(C)に示すように、装着L材11と回動装着L材13は、それぞれのL字が背中合わせで対向してT溝61に装着される。すなわち、取付用部材10は、回動装着L材13の立設面13Bと装着L材11の立設面11Bとが対向ないし接触した状態で(すなわち、それぞれの立設面同士を対向させた状態で)、面材5に装着される。取付用部材10の面材5のT溝61への装着手法については追って
図9との関係で説明する。
【0034】
例えば
図8(B)に示すように、回動装着L材13の水平面13Aと立設面13Bの交点外側角部13Eには、面取り又はR(丸み付け)加工が施されていることが好ましい。つまり、回動装着L材13における屈曲部分の外面側に位置する交点外側角部13Eは角張っておらず、削り取られ又は丸みを帯びている。これにより、装着L材11及び回動装着L材13をT溝61にスムーズかつ容易に装着することができる(
図9参照)。
【0035】
また、取付用部材10では、装着L材11の立設面11B及び回動装着L材13の立設面13Bのそれぞれが、相対して互いに係合する係止片11C,13C(これらの片をそれぞれ係止部と言うことがあり、また、これらの片が互いに係止している状態を有する部分を係止部と言うことがある。)を備えることが好ましい。すなわち、係止片11C,13Cはそれぞれ立設面11B,13Bから突出する鉤状の部材であり、装着L材11と回動装着L材13とが立設面11B,13Bを背にして向かい合ったときに、係止片11C,13C同士が掛かり合って係合部を形成し、装着L材11と回動装着L材13との分離を規制する(例えば
図7(B)及び
図8(C)参照)。
【0036】
装着L材11及び回動装着L材13の寸法については、おおむね次の範囲が好適である(
図8(A),(B)参照):
水平面11Aの長さP: 5~20mm
水平面13Aの長さQ: 5~20mm
立設面11Bの長さS: 9~30mm
立設面13Bの長さT: 7~30mm
【0037】
また、回動装着L材13の交点外側角部13Eに施されるR加工の曲率半径Rは、回動装着L材13の板厚aとすれば、次式を満たすことが好ましい(
図10(A)参照):
R≧1.4a
【0038】
更に、取付用部材10の装着に必要なT溝61の開口幅bは、回動装着L材13の交点外側角部13Eに面取りまたはR加工を施す場合、次式を満たせばよい:
b≧2.4a
これに対して、交点外側角部13Cに面取り又はR加工を施さない場合には、回動装着L材13の回動装着のためにb≧3a程度のクリアランスが必要となる。
【0039】
このように面取りまたはR加工が施されると、回動装着L材13のスムーズな回動が可能になるとともに、T溝61の縦溝62の溝幅(開口幅)bを小さくすることができる。したがって、装着L材11及び回動装着L材13がT溝61内に納まった後は、T溝61の横溝63と装着L材11の水平面11A及び回動装着L材13の水平面13Aとが広範囲で接触することができるため、応力の分散によりT溝61の耐破損、変形強度を大きくすることができる。また、T溝61内での装着L材11及び回動装着L材13の移動(ガタツキ)を抑制できるので、つまり、T溝61と装着L材11及び回動装着L材13との間の隙間ないしアソビを小さくできるので、装着強度を著しく向上できる。
【0040】
また、取付用部材10に係止片11C,13Cを備えた場合には、係止片11C,13Cの厚み(横方向の長さ)を考慮して、次式を満たすようにT溝61の溝幅bを設定すればよい。
b≧2.6a
【0041】
更に、取付用部材10は、介在物を保持するための保持片11D,13D(これらの片を保持部と言うことがある。)を備える(例えば
図8(A),(B)及び
図10(C)参照)。保持片11D,13Dは、装着L材11の立設面11B及び回動装着L材13の立設面13Bにおける、水平面11A,13Aとは反対側の端部に形成されている。
【0042】
保持片11D,13Dは、
図8の(A)及び(B)に示すように、それぞれ立設面11B,11Dと同じ方向に延びる部分11D1,13D1と、当該部分の先端において他方の立設面13D,11D側に向けて延びる突出部11D2,13D2と、を有しており、
図8の(C)に示すように、後述する介在物を内側に包摂する空間Sを形成している。また、保持片11D,13Dは、全体として略C字状乃至は略L字状の断面形状を有するとも言える。これにより、簡易な構造で係合部と保持片との間に介在物を確実に保持する空間を形成することができる。
【0043】
空間Sの断面は、使用する介在物の断面形状に合わせて適宜選択することができるが、本実施形態においては、後述する介在物に適合する略矩形状である。これにより、強度や剛性に優れる断面略矩形状の介在物を使用できる。
【0044】
また、本実施形態においては、保持片11D,13D同士の間、特に上記突出部11D2,13D2との間が離間して間隙が設けられていることから、空間Sに、介在物(例えば、後述する略L字状の固定金物91,93及び略棒状のジョイント材95)を容易に挿入して保持することができる(例えば
図3参照)。これにより、係止片11C,13Cの係合状態が保持され、装着L材11と回動装着L材13とが一体化される(
図7(B)及び
図8(C)参照)。そして、固定金物91,93がネジ97で胴縁7に固定されることで、面材5と胴縁7とが取付用部材10を介して連結される。
【0045】
ここで、
図10(C)に示す、保持片11D,13Dの底部と介在物との間の隙間dは、係止片11C,13C同士の確実な係合の観点から、係止片11C,13Cのかかり寸法cに対して、
d<c
の関係を満たすことが好ましい。
【0046】
次に、介在物について説明する。介在物は、係合部(係止片11C,13C)と保持部(保持片11D,13D)との間の空間Sに挿入する等して配置及び保持されて、係止片11C,13C同士の係合を解除不能とし、係合部の解除を防止する。介在物は、保持片11D,13Dの間に形成される空間Sに入れ込まれることから、空間充填剤又は保持部充填材と呼ぶことができる。
【0047】
介在物としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、種々の構造のものを使用することができるが、強度や剛性に優れるという観点から、断面略矩形状の介在物が好ましい。本実施形態では、介在物の一例として、断面略矩形状の固定金物91,93及びジョイント材95が用いられる(例えば
図4参照)。固定金物91,93は同じ部材であるので、固定金物91のみについて説明する。
【0048】
図11に示すように、固定金物91は、全体として略L字状をなす。固定金物91は、挿入片91A、挿入片91Aから突出する突出片91B、及び、挿入片91Aと突出片91Bとを接続する接続部91Cを含む。
挿入片91Aは、扁平な板状の部材である。挿入片91Aの厚み及び横幅は、保持部(保持片11D,13D)によって形成される空間内に挿入片91Aが収まるように、適宜設計される。
【0049】
突出片91Bは、挿入片91Aの一端(上端又は下端)から挿入片91Aと略直交する方向に延びる扁平な板状の部材である。突出片91Bの厚みは挿入片91Aの厚みと略同一であり、突出片91Bの横幅は挿入片91Aの横幅よりも大きい。突出片91Bは、挿入片91Aが保持片11D,13Dの間に挿入された状態において、胴縁7と略平行になり、孔91Dを介してネジ97により胴縁7と固定される(例えば
図3(A),(B))。
【0050】
接続部91Cの厚みは、挿入片91Aの厚み及び突出片91Bの厚みと略同一であり、接続部91Cの横幅は、挿入片91Aの横幅よりも小さく、保持片11D,13Dの先端同士の間よりも小さい。これにより、挿入片91Aを保持部(保持片11D,13D)の間に保持しながら、突出片91Bを保持部の外部に配置することができる(例えば
図13(B)~(D)参照)。
【0051】
また、保持部(保持片11D,13D)により形成される空間内に、介在物が介在することにより、係止片11C,13C同士の相対的な移動ないしズレが規制されて、係止片11C,13Cの係合状態が保持される(
図10(C)参照)。これにより、装着L材11と回動装着L材13とが一体化される。
【0052】
図12に示すように、ジョイント材95は扁平な板状の部材である。ジョイント材95の厚み及び横幅は、保持部(保持片11D,13D)によって形成される空間内にジョイント材95が収まるように、適宜設計される。本実施形態では、ジョイント材95の厚み及び横幅は、固定金物91の挿入片91Aの厚み及び横幅と略同一である。ジョイント材95の長さは適宜設計されてよい。
ジョイント材95は、上下に配置される固定金物91同士の間隔を調整するために用いられる。例えば、1つ又は複数のジョイント材95が、上下に位置する固定金物91の挿入片91Aの間に介在することで、固定金物91を所望の高さに配置することができる(例えば
図13参照)。
【0053】
次に、取付用部材10の装着方法を説明する。
パネル材50、胴縁7、取付用部材10(装着L材11及び回動装着L材13)、固定金物91,93、ジョイント材95、ビス97などの部材を準備しておく。また、開口3を有する建物1を建築しておく。
【0054】
隣り合うパネル材50の凸部55と凹部56とを嵌合することでパネル材50を横方向に連結し(
図9(A)参照)、面材5を形成する。このとき、面材5に枠材57やシール材58を装着しておいてもよい(
図3(A)参照)。
次いで、例えば装着L材11を右手に、回動装着L材13を左手に持ち、まず装着L材11を水平面11A側から面材5のT溝61に入れて装着しておく(
図9(B)参照)。
【0055】
そして、回動装着L材13を水平面13A側からT溝61に差し入れ(同図(C)参照)、装着L材11の立設面11B及び回動装着L材13の立設面13B同士が徐々に向き合うように(あるいは、回動装着L材13の交点外側角部13Eが、装着L材11の立設面11Bに沿って、係止片11C側から水平面11A側に移動するように)回動装着L材13を回動させ(同図(D)参照)、係止片11C,13Cを係合させて装着L材11と回動装着L材13とを確実に係止する(同図(E)参照)。
このようにして取付用部材10を面材5に装着することができる。
【0056】
次いで、面材5を胴縁7に取り付ける。
取付用部材10の付いた面材5に胴縁7を当てる(
図13(A)参照)。次いで、取付用部材10の保持片11D,13Dに固定金物91を下向きに差し込む(同図(B)参照)。そして、別の固定金物93を上向きにして取付用部材10の保持片11D,13Dに差し込む(同図(C)参照)。
【0057】
取付用部材10の保持片11D,13Dにジョイント材95を差し込む(同図(D)参照)。このとき、ジョイント材95を取付用部材10の上端から突出させておく。
【0058】
そして、上側のT溝61に別の取付用部材10を取り付ける(同図(E)参照)。そして、取り付けた取付用部材10を下方にずらしてジョイント材95へ差し込む(同図(F)参照)。ビス97にて固定金物91,93を胴縁7に固定することで(同図(G)参照)、面材5と胴縁7とが一体化する(同図(H)参照)。
このような作業により、面材5が建物1の躯体に固定され、建物1の開口3が面材5で覆われる。
【0059】
本実施形態によれば、回動装着L材13を装着L材11に対して回動することで面材5のT溝61への装着が可能であるので、取付用部材10をT溝61に容易に装着できる。とくに、装着L材11や回動装着L材13の長さが長い場合に、回動装着L材13の立設面13Bを装着L材11の立設面11Bと対向させた状態で回動装着L材13を回動によって容易に装着できる。
【0060】
また、取付用部材10とT溝61との隙間を小さくできるので、大きなガタツキがなく、強度高く取付用部材10が取り付けられる。したがって、風などで面材5に大きな負圧がかかっても、面材5のT溝61への応力集中が緩和され、T溝61の破損や変形による取付用部材10が外れたりしない。
【0061】
次いで、本実施形態の変形例1-3を説明する。
図14を参照して、変形例1を説明する。
変形例1に係る取付用部材110は、係止片11C,13C及び保持片11D,13Dを有しない点を除いて、本実施形態の取付用部材10と共通している。すなわち、取付用部材110は、装着L材111及び回動装着L材113からなる。
【0062】
装着L材111は、T溝61の溝形成方向に係合係止される水平面111Aと、水平面111Aと略垂直に繋がってT溝61外に突出する立設面111Bと、を有する。また、回動装着L材113は、T溝61の溝形成方向に係合係止される水平面113Aと、水平面113Aと略垂直に繋がってT溝61外に突出する立設面113Bと、を有する。
【0063】
回動装着L材13の水平面113Aと立設面113Bの交点外側角部113Cには、面取り又はR加工が施されている。この点は本実施形態と同様であり、回動装着L材13のT溝61への装着を容易にしている。
【0064】
この場合、T溝61の開口幅bは、装着L材111及び回動装着L材113の板厚aに対して、
b≧2.4a
を満たすクリアランスを設けることが好ましい。
このような面取りまたはR加工により、回動装着L材113のT溝61へのスムーズな回動装着が可能になるとともに、T溝61の溝幅(開口幅)bを小さくすることができる。
【0065】
変形例1によれば、装着L材111及び回動装着L材113はシンプルな形状であるから、本実施形態の効果に加えて、製造コストを抑制することが可能となる。
【0066】
図15を参照して、変形例2を説明する。
変形例2に係る取付用部材210は、回動装着L材13の水平面113Aと立設面113Bの交点外側角部113Cに面取り又はR加工が施されていない点を除いて、変形例1の取付用部材110と共通している。
【0067】
すなわち、取付用部材210は、装着L材211及び回動装着L材213からなる。装着L材211は、T溝61の溝形成方向に係合係止される水平面211Aと、水平面211Aと略垂直に繋がってT溝61外に突出する立設面211Bと、を有する。また、回動装着L材213は、T溝61の溝形成方向に係合係止される水平面213Aと、水平面213Aと略垂直に繋がってT溝61外に突出する立設面213Bと、を有する。
したがって、装着L材211及び回動装着L材213として同じ部材を用いることができる。それゆえ、変形例2では、更なる製造コストの抑制が可能となる。
【0068】
この場合、T溝61の開口幅bは、装着L材211及び回動装着L材213の板厚aに対して、
b≧3a
を満たすクリアランスを設けることが好ましい。
【0069】
T溝61に装着された装着L材211及び回動装着L材213は、介在物の一例としての固定具(ボルト及びナット)291によって係止されてよい。これにより、取付用部材210を面材50に確実に装着できる。
【0070】
図16-18を参照して、変形例3を説明する。
取付用部材310は、装着L材311及び回動装着L材313からなる(
図16参照)。装着L材311及び回動装着L材313として本実施形態に係る装着L材11及び回動装着L材13と同じ部材を用いることができる。取付用部材310の面材5(パネル材50)への装着は先に述べたとおりである。
【0071】
装着L材311及び回動装着L材313は、介在物の一例としての固定金物391を介して胴縁7に固定される(
図16参照)。
固定金物391は、装着L材311及び回動装着L材313に対向する板片391A、胴縁7に対向する板片391B、及び、板片391A,391Bを繋ぐ板片391Cを含む。板片391A,391Bはそれぞれ略長方形状をなし、板片391Cは、板片391A,391Bの長辺同士を繋いでいるが(
図17参照)、短辺同士を繋いでもかまわない。
板片391Aにはボルト393Aを挿通するための孔391Dが、板片391Bにはネジ397を挿通するための孔391Eが、それぞれ形成されている。
【0072】
固定金物391は、固定具393を介して装着L材311及び回動装着L材313に固定される。固定具393はボルト393A及びナット393Bを含む。ボルト393Aの頭部は扁平な板状であり、装着L材311及び回動装着L材313の保持片311D,313Dの先端同士の隙間よりも広い幅を持つ。したがって、ボルト393Aの頭部とボルト393Bとの間に、装着L材311及び回動装着L材313の保持片311D,313D及び固定金物391の板片391Aを挟持することができ、これにより固定金物391が装着L材311及び回動装着L材313に固定される(
図16(A)参照)。
また、固定金物391は、ネジ397を介して胴縁7に固定される。
【0073】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更後の態様(変形例)も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
1 建物
5 面材
7 胴縁
10、110、210、310 取付用部材
11、111、211、311 装着L材
11A,111A,211A 水平面
11B,111B,211B 立設面
13,113、213、313 回動装着L材
13A,113A,213A 水平面
13B,113B,213B 立設面
61 T溝