(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150166
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/30 20060101AFI20241016BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61M1/30
A61M1/16 117
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063442
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金川 隆生
(72)【発明者】
【氏名】永井 翔
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077EE01
4C077EE03
4C077FF01
4C077HH03
4C077HH16
4C077LL05
(57)【要約】
【課題】清浄液貯液部内に血液が侵入することを抑制する。
【解決手段】本発明に基づく血液浄化装置1において、血液ポンプ30Pは、第1清浄液流路30に設けられて、双方向に送液可能である。清浄液貯液部35は、第1清浄液流路30の血液浄化器10側とは反対側の端部に接続され、清浄液Sを貯液する。排液流路40は、血液浄化器10に接続され、第2部12と連通している。第2開閉弁30Vは、血液ポンプ30Pと清浄液貯液部35との間において、第1清浄液流路30に設けられている。第1分岐流路50は、血液ポンプ30Pと第2開閉弁30Vとの間において、第1清浄液流路30から分岐している。第1貯液バッグ55は、第1分岐流路50の第1清浄液流路30側とは反対側の端部に接続され、液体を貯液可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が半透膜によって第1部および第2部に分割されている血液浄化器と、
前記血液浄化器と接続され、前記第1部と連通している血管アクセス流路と、
前記血管アクセス流路に設けられた第1開閉弁と、
前記血液浄化器に接続され、前記第1部と連通している第1清浄液流路と、
前記第1清浄液流路に設けられた双方向に送液可能な血液ポンプと、
前記第1清浄液流路の血液浄化器側とは反対側の端部に接続され、清浄液を貯液する清浄液貯液部と、
前記血液浄化器に接続され、前記第2部と連通している排液流路と、
前記血液ポンプと前記清浄液貯液部との間において、前記第1清浄液流路に設けられた第2開閉弁と、
前記血液ポンプと前記第2開閉弁との間において、前記第1清浄液流路から分岐する第1分岐流路と、
前記第1分岐流路の第1清浄液流路側とは反対側の端部に接続され、液体を貯液可能な第1貯液バッグとを備える、血液浄化装置。
【請求項2】
前記第1貯液バッグに取り付けられた第1の秤をさらに備える、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記排液流路に設けられた第3開閉弁と、
前記血液浄化器と前記第3開閉弁との間において前記排液流路から分岐する第2分岐流路と、
前記第2分岐流路の排液流路側とは反対側の端部に接続され、排液を貯液可能な第2貯液バッグと、
前記第2貯液バッグに取り付けられた第2の秤とをさらに備える、請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記排液流路に設けられた第3開閉弁と、
前記血液浄化器と前記第3開閉弁との間において前記排液流路から分岐する第2分岐流路と、
前記第2分岐流路の排液流路側とは反対側の端部に接続され、排液を貯液可能な第2貯液バッグとをさらに備え、
前記第2貯液バッグは、前記第1貯液バッグとともに前記第1の秤に取り付けられている、請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記排液流路において、前記第2分岐流路との接続部から見て血液浄化器側に設けられた排液ポンプとをさらに備える、請求項3または請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記血液浄化器に接続され、前記第2部と連通している第2清浄液流路と、
前記第2清浄液流路の血液浄化器側とは反対側の端部に接続され、清浄液を貯液する清浄液供給部とをさらに備える、請求項5に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記血液浄化器に接続され、前記第2部と連通している第2清浄液流路と、
前記第2清浄液流路および前記排液流路の各々に接続され、清浄液を第1流量で第2清浄液流路から前記第2部に流入させるとともに前記第2部から前記排液流路に排液を第2流量で流出させることができるように構成された除水制御器と、をさらに備える、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記血液浄化器に接続され、前記第2部と連通している第2清浄液流路と、
前記第2清浄液流路に設けられた第4開閉弁とをさらに備え、
前記第2清浄液流路の血液浄化器側とは反対側の端部は、前記第1清浄液流路において前記清浄液貯液部と前記第2開閉弁との間に接続されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の血液浄化装置が、国際公開第2018/235963号(特許文献1)に開示されている。特許文献1に開示された血液浄化装置では、脱血工程において、第1開閉弁が開き、第2開閉弁が閉じた状態で、血液ポンプが吸入方向に送液する。その結果、血液が血管アクセス流路から血液浄化器の第1部に流入する。血液浄化器の第1部を通過した血液は、清浄液流路に流入する。清浄液流路に流入した血液の量に応じて、清浄液流路内の清浄液が清浄液貯液部に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された血液浄化装置においては、清浄液流路に流入した血液が拡散し、清浄液貯液部に侵入する場合がある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、清浄液貯液部内に血液が侵入することを抑制できる、血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく血液浄化装置は、血液浄化器と、血管アクセス流路と、第1開閉弁と、第1清浄液流路と、血液ポンプと、清浄液貯液部と、排液流路と、第2開閉弁と、第1分岐流路と、第1貯液バッグとを備えている。血液浄化器は、内部が半透膜によって第1部および第2部に分割されている。血管アクセス流路は、血液浄化器と接続され、第1部と連通している。第1開閉弁は、血管アクセス流路に設けられている。第1清浄液流路は、血液浄化器に接続され、第1部と連通している。血液ポンプは、第1清浄液流路に設けられて、双方向に送液可能である。清浄液貯液部は、第1清浄液流路の血液浄化器側とは反対側の端部に接続され、清浄液を貯液する。排液流路は、血液浄化器に接続され、第2部と連通している。第2開閉弁は、血液ポンプと清浄液貯液部との間において、第1清浄液流路に設けられている。第1分岐流路は、血液ポンプと第2開閉弁との間において、第1清浄液流路から分岐している。第1貯液バッグは、第1分岐流路の第1清浄液流路側とは反対側の端部に接続され、液体を貯液可能である。
【0007】
上記の構成によれば、脱血工程において第2開閉弁を閉じた状態で血液ポンプが吸入方向に送液をすることで、血液が第1分岐流路を通って第1貯液バッグに流れ込む。そして、返血工程においては、引き続き第2開閉弁を閉じた状態で、血液が、第1貯液バッグから第1分岐流路を経由して患者に返される。このため、血液浄化装置において、第1清浄液流路のうち、第2開閉弁から見て清浄液貯液部側に血液が拡散することを抑制できる。ひいては、清浄液貯液部に血液が浸入することを抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、清浄液貯液部内に血液が浸入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の脱血工程を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の除水工程を示す回路図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の返血工程を示す回路図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の供給工程を示す回路図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の置換工程を示す回路図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の逆濾過工程を示す回路図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る血液浄化装置の除水工程を示す回路図である。
【
図10】本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
【
図11】本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の返血除水工程を示す回路図である。
【
図12】本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の供給工程を示す回路図である。
【
図13】本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の供給後返血工程を示す回路図である。
【
図14】本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の置換工程を示す回路図である。
【
図15】本発明の実施形態4に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
【
図16】本発明の実施形態5に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
【
図17】本発明の実施形態6に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態に係る血液浄化装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置1は、血液浄化器10と、血管アクセス流路20と、第1開閉弁20Vと、第1清浄液流路30と、第2開閉弁30Vと、血液ポンプ30Pと、清浄液貯液部35と、排液流路40と、排液貯液部45と、第3開閉弁40Vと、第1分岐流路50と、第1貯液バッグ55と、第1の秤56と、第2清浄液流路60と、第4開閉弁60Vとを備えている。
【0012】
血液浄化器10は、その内部がたとえば中空糸膜などの半透膜15によって第1部11および第2部12に分割されている。本実施形態においては半透膜15に囲まれた内側の空間が第1部11であり、半透膜15の外側の空間が第2部12である。
【0013】
血管アクセス流路20は、血液浄化器10と接続され、第1部11と連通している。血管アクセス流路20の血液浄化器10側とは反対側の端部に、穿刺針が設けられている。第1開閉弁20Vは、血管アクセス流路20に設けられている。第1開閉弁20Vは、血管アクセス流路20を開閉する。
【0014】
第1清浄液流路30は、血液浄化器10に接続され、第1部11と連通している。血液ポンプ30Pは、第1清浄液流路30に設けられている。血液ポンプ30Pは、双方向に送液可能に構成されている。清浄液貯液部35は、第1清浄液流路30の血液浄化器10側とは反対側の端部に接続され、清浄液Sを貯液する。清浄液Sは、たとえば生理食塩水または透析液からなる。第2開閉弁30Vは、血液ポンプ30Pと清浄液貯液部35との間において、第1清浄液流路30に設けられている。第2開閉弁30Vは、第1清浄液流路30を開閉する。
【0015】
排液流路40は、血液浄化器10に接続され、第2部12と連通している。本実施形態において、排液貯液部45は、排液流路40の血液浄化器10側とは反対側の端部に接続されている。排液貯液部45は、排液Dを貯液する。本実施形態において、第3開閉弁40Vは、排液流路40に設けられている。第3開閉弁40Vは、排液流路40を開閉する。なお、排液流路40には、第3開閉弁40Vの代わりに、排液流路40を閉止または排液流路40内の液体を送液可能なポンプが設けられてもよい。
【0016】
第1分岐流路50は、血液ポンプ30Pと第2開閉弁30Vとの間において、第1清浄液流路30から分岐している。第1貯液バッグ55は、第1分岐流路50の第1清浄液流路30側とは反対側の端部に接続されている。第1貯液バッグ55は、血液および清浄液などの液体を貯液可能に構成されている。第1の秤56は、第1貯液バッグ55に取り付けられている。第1の秤56は、第1の秤56に取り付けられた1以上のバッグなどの合計重量を測定可能に構成されている。本実施形態において、第1の秤56は、第1貯液バッグ55のみの重量を測定する。第1の秤は、ばねばかりであってもよいし、ロードセルであってもよい。
【0017】
第2清浄液流路60は、血液浄化器10に接続され、第2部12と連通している。本実施形態において、第2清浄液流路60の血液浄化器10側とは反対側の端部は、第1清浄液流路30において清浄液貯液部35と第2開閉弁30Vとの間に接続されている。本実施形態において、第4開閉弁60Vは、第2清浄液流路60に設けられている。第4開閉弁60Vは、第2清浄液流路60を開閉する。
【0018】
以下、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置1の動作について説明する。血液浄化装置1の透析前に、血液浄化器10、血管アクセス流路20、第1清浄液流路30、排液流路40、第1分岐流路50および第2清浄液流路60は、清浄液Sでプライミングされている。
【0019】
まず、血液浄化装置1の血液浄化実施時の動作について説明する。なお、血液浄化実施時において、血管アクセス流路20の穿刺針が患者に接続された状態であり、第4開閉弁60Vは閉じた状態である。
【0020】
図2は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の脱血工程を示す回路図である。
図2に示すように、血液浄化装置1の脱血工程においては、第1開閉弁20Vが開き、第2開閉弁30Vが閉じ、第3開閉弁40Vが閉じた状態で、血液ポンプ30Pが矢印A1で示す吸入方向に送液する。その結果、血液が血管アクセス流路20から血液浄化器10の第1部11に流入する。血液浄化器10の第1部11を通過した血液は、第1清浄液流路30に流入する。第1清浄液流路30に流入した血液は、第1清浄液流路30と第1分岐流路50との接続部51から、第1分岐流路50に流入する。第1分岐流路50に流入した血液の一部は、血液によって押し流された清浄液Sとともに第1貯液バッグ55に流入する。このように血液を第1貯液バッグ55に流入させることができるため、本実施形態においては、1回の脱血および返血の間に可能な透析量が比較的大きい。また、脱血工程においては、第1の秤56によって測定される第1貯液バッグ55の重量の増加量を、脱血量として把握することができる。
【0021】
図3は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の除水工程を示す回路図である。
図3に示すように、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置1の除水工程においては、第1開閉弁20Vが閉じ、第2開閉弁30Vが閉じ、第3開閉弁40Vが開いた状態で、血液ポンプ30Pが矢印A2で示す排出方向に送液する。その結果、血液浄化器10の第1部11に流入していた血液は、血液ポンプ30Pからの加圧により、半透膜15によって濾過される。第1部11から半透膜15を通過して第2部12に到達した排液Dは、排液流路40に流入し、排液貯液部45に貯液される。本実施形態においては、除水工程における第1貯液バッグ55の重量の低下量を、除水量として把握することができる。
【0022】
図4は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の返血工程を示す回路図である。
図4に示すように、血液浄化装置1の返血工程においては、第1開閉弁20Vが開き、第2開閉弁30Vが閉じ、第3開閉弁40Vが閉じた状態で、血液ポンプ30Pが矢印A2で示す排出方向に送液する。その結果、血液浄化器10において除水された血液が、血管アクセス流路20に流入し、患者に返血される。
【0023】
なお、除水工程において意図的に除水量を多くした場合には、返血工程において、浄化された血液とともに除水量を多くした分に相当する清浄液Sを患者に補充してもよい。患者に補充される清浄液Sは、脱血工程を実施する前に血液浄化器10、血管アクセス流路20、第1清浄液流路30および第1分岐流路50に満たされていた清浄液Sである。清浄液Sを患者に補充する場合には、返血工程の途中において清浄液Sが第1清浄液流路30に供給されてもよい。
【0024】
図5は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の供給工程を示す回路図である。
図5に示すように、供給工程においては、第1開閉弁20Vを閉じ、第2開閉弁30Vを開き、第3開閉弁40Vを閉じた状態で、血液ポンプ30Pの稼働を停止させる。これにより、清浄液貯液部35に収容されたSが、接続部51から第1分岐流路50および第1貯液バッグ55に流れ込む。このとき、返血工程で清浄液Sを使用した後に各流路および血液浄化器10に清浄液Sが満たされるように、清浄液Sが第1分岐流路50および第1貯液バッグ55に供給されることが好ましい。本実施形態においては、供給工程における第1貯液バッグ55の重量の増加量が、清浄液Sの供給量となる。なお、供給工程は、血液が接続部51より下方に位置している状態で実施される。
【0025】
供給工程の後に再び返血工程を実施する場合には、55に貯液された清浄液が50に排出される。このとき、脱血工程において第1貯液バッグ55内に流入した血液のうち残留した血液も清浄液Sと併せて排出される。このように、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置1は、血液浄化の実施中に第1貯液バッグ55を洗浄することができる。
【0026】
次に、血液浄化実施時以外の血液浄化装置1の動作について説明する。
図6は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の置換工程を示す回路図である。
図6に示すように、返血工程後に行われる血液浄化装置1の置換工程においては、第1開閉弁20Vが閉じ、第2開閉弁30Vが閉じ、第3開閉弁40Vが開き、第4開閉弁60Vが開いた状態で、血液ポンプ30Pを停止させる。その結果、清浄液貯液部35に収容されていた清浄液Sの自重により、清浄液Sが第1清浄液流路30に流入する。そして、第1清浄液流路30と第2清浄液流路60との接続部61から、清浄液Sが、第2清浄液流路60、血液浄化器10の第2部12、および、排液流路40を、この順に流れる。これにより、血液浄化器10の第2部12内の清浄液Sが置換される。
【0027】
図7は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の逆濾過工程を示す回路図である。
図7に示すように、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置1の逆濾過工程においては、第1開閉弁20Vが閉じ、第2開閉弁30Vが閉じ、第3開閉弁40Vが閉じ、第4開閉弁60Vが開いた状態で、血液ポンプ30Pが矢印A1で示す吸入方向に送液する。これにより、第1部11と第2部12との間で圧力差が生じ、清浄液Sが第2部12から半透膜15を通過して第1部11に到達する。すなわち、血液浄化器10の半透膜15の逆濾過が実施される。半透膜15を通過した清浄液Sは、第1清浄液流路30および第1分岐流路50を流れ、第1貯液バッグ55に収容される。すなわち、第1貯液バッグ55の重量の増加量を、逆濾過量として把握することができる。
【0028】
上述のように、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置1は、血液浄化器10と、血管アクセス流路20と、第1開閉弁20Vと、第1清浄液流路30と、血液ポンプ30Pと、清浄液貯液部35と、排液流路40と、第2開閉弁30Vと、第1分岐流路50と、第1貯液バッグ55とを備えている。血液浄化器10は、内部が半透膜15によって第1部11および第2部12に分割されている。血管アクセス流路20は、血液浄化器10と接続され、第1部11と連通している。第1開閉弁20Vは、血管アクセス流路20に設けられている。第1清浄液流路30は、血液浄化器10に接続され、第1部11と連通している。血液ポンプ30Pは、第1清浄液流路30に設けられて、双方向に送液可能である。清浄液貯液部35は、第1清浄液流路30の血液浄化器10側とは反対側の端部に接続され、清浄液Sを貯液する。排液流路40は、血液浄化器10に接続され、第2部12と連通している。第2開閉弁30Vは、血液ポンプ30Pと清浄液貯液部35との間において、第1清浄液流路30に設けられている。第1分岐流路50は、血液ポンプ30Pと第2開閉弁30Vとの間において、第1清浄液流路30から分岐している。第1貯液バッグ55は、第1分岐流路50の第1清浄液流路30側とは反対側の端部に接続され、液体を貯液可能である。
【0029】
上記の構成によれば、脱血工程において第2開閉弁30Vを閉じた状態で血液ポンプが矢印A1で示す吸入方向に送液をすることで、血液が第1分岐流路50を通って第1貯液バッグ55に流れ込む。そして、返血工程においては、引き続き第2開閉弁30Vを閉じた状態で、血液が、第1貯液バッグ55から第1分岐流路50を経由して患者に返される。このため、本実施形態に係る血液浄化装置1においては、第1清浄液流路30のうち、第2開閉弁30Vから見て清浄液貯液部35側に血液が拡散することを抑制できる。ひいては、清浄液貯液部35に血液が浸入することを抑制できる。
【0030】
また、本実施形態に係る血液浄化装置1は、第1貯液バッグ55に取り付けられた第1の秤56とをさらに備えている。
【0031】
上記の構成によれば、脱血工程時における第1貯液バッグ55の重量変化を第1の秤56で監視することで、脱血量をより正確に把握できる。また、除水工程時において、第1貯液バッグ55の重量変化を第1の秤56で監視することで、除水量を容易に確認できる。
【0032】
また、本実施形態に係る血液浄化装置1は、第2清浄液流路60と、第4開閉弁60Vとをさらに備えている。第2清浄液流路60は血液浄化器10に接続され、第2部12と連通している。第4開閉弁60Vは、第2清浄液流路60に設けられている。第2清浄液流路60の血液浄化器10側とは反対側の端部は、第1清浄液流路30において清浄液貯液部35と第2開閉弁30Vとの間に接続されている。
【0033】
上記の構成によれば、第1開閉弁20V、第2開閉弁30Vおよび第3開閉弁40Vを閉じ、第4開閉弁60Vを開いた状態で、血液ポンプを矢印A1で示す吸入方向へ送液することで、第1部11が第2部12に対して陰圧になる。そして、清浄液貯液部35に貯液されていた清浄液Sが第2部12から第11部へ半透膜15を通過する。すなわち、血液浄化器10の逆濾過を実施できる。さらに、半透膜15を通過した清浄液は第1貯液バッグ55に流れ込む。このため、逆濾過工程の際に半透膜15を通過した清浄液の量をより正確に把握することができる。
【0034】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置について説明する。本発明の実施形態2においては、排液流路に関連する構成が、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置1と異なる。このため、血液浄化装置1と同様である構成および効果については説明を繰り返さない。
【0035】
図8は、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
図8に示すように、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置2は、第2分岐流路70と、第2貯液バッグ75と、をさらに備える。
【0036】
第2分岐流路70は、血液浄化器10と第3開閉弁40Vとの間において排液流路40aから分岐する。第2貯液バッグ75は、第2分岐流路70の排液流路40a側とは反対側の端部に接続され、排液Dを貯液可能である。第2の秤76は、第2貯液バッグ75に取り付けられている。
【0037】
上記の構成によれば、除水工程において第1開閉弁20V、第2開閉弁30Vおよび第3開閉弁40Vを閉じた状態で、血液ポンプを排出方向に送液することで、第2貯液バッグ75に排液が流れ込む。このときの第2貯液バッグ75の重量変化を第2の秤76で測定することで、除水工程時に、除水量をより正確に把握することができる。
【0038】
なお、第2の秤76は、第1の秤56と同様に、第2の秤76に取り付けられたバッグなどの合計重量を測定可能に構成されている。具体的には、第2の秤76は、第2貯液バッグ75のみの重量を測定する。第2の秤は、ばねばりであってもよいし、ロードセルであってもよい。
【0039】
図9は、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置の除水工程を示す回路図である。
図9に示すように、本発明の実施形態2の除水工程においては、本発明の実施形態1と異なり、上述したように第3開閉弁40Vが閉じた状態で、血液ポンプ30Pが矢印A2で示す排出方向に送液する。その結果、排液流路40aに流入した排液Dは、排液流路40aと第2分岐流路との接続部71から第2分岐流路70に流入し、第2貯液バッグ75に収容される。すなわち、本実施形態においては、除水工程における第2貯液バッグ75の重量の増加量を、除水量として把握できる。
【0040】
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置について説明する。本発明の実施形態3においては、排液流路、第1貯液バッグおよび第2貯液バッグに関する構成が、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置2と異なる。このため、血液浄化装置2と同様である構成および効果については説明を繰り返さない。
【0041】
図10は、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
図10に示すように、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置3は、排液ポンプ40Pをさらに備えている。
【0042】
排液ポンプ40Pは、排液流路40bにおいて、第2分岐流路70との接続部71から見て血液浄化器10側に設けられている。
【0043】
上記の構成によれば、除水工程において排液ポンプ40Pで排液を送液することで、除水速度を速くすることができる。また、返血工程において、排液ポンプ40Pでも送液を実施することで第2部12を陰圧にして、返血と同時に除水を実施することができる。ひいては、透析効率が向上する。
【0044】
また、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置3において、第2貯液バッグ75cは、第1貯液バッグ55cとともに第1の秤56cに取り付けられている。
【0045】
上記の構成によれば、除水工程において第1開閉弁20V、第2開閉弁30Vおよび第3開閉弁40Vを閉じた状態で、血液ポンプ30Pを排出方向に送液し、排液ポンプ40Pを血液浄化器10から離れる吸出方向に送液することで、第2貯液バッグ75cに排液が流れ込む。このときの第1貯液バッグ55cおよび第2貯液バッグ75cの合計重量変化を第1の秤56cで測定し、かつ、血液ポンプ30Pおよび排液ポンプ40Pの設定送液流量を考慮することで、除水量をより正確に把握することができる。また、第1貯液バッグ55cおよび第2貯液バッグ75cを1つの第1の秤56cで測定することで、血液浄化装置3を小型にでき、かつ、廉価にできる。
【0046】
次に、上述の動作を含む、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置3の動作について説明する。まず、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置3の脱血工程は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置1の脱血工程と同様に実施される。脱血工程において、排液ポンプ40Pは稼働しない。
【0047】
図11は、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の返血除水工程を示す回路図である。
図11に示すように、血液浄化装置3の返血除水工程においては、第1開閉弁20Vが開き、第2開閉弁30Vが閉じ、第3開閉弁40Vが閉じた状態で、血液ポンプ30Pが矢印A2で示す排出方向に送液し、排液ポンプ40Pが矢印Bで示すような血液浄化器10から離れる吸出方向に送液する。
【0048】
排液ポンプ40Pの送液により、血液浄化器10の第1部11に流入していた血液は、半透膜15を通過して第2部12に到達し、排液Dとなる。すなわち、除水が実施される。また、このとき、血液ポンプ30Pによる送液量(送液速度)は、排液ポンプ40Pによる送液量(送液速度)より大きくなるように設定される。これにより、第1部11に流入していた血液が除水されつつ、血管アクセス流路20に流入し、患者に返血される。なお、本発明の実施形態2と同様に、第2貯液バッグ75cの重量の増加量を、除水量として把握できる。ここで、本発明の実施形態3においては、第2貯液バッグ75cに第1の秤56cが取り付けられているため、第2貯液バッグ75cの重量の増加量を第1の秤56cで測定することが可能である。よって、血液浄化装置3を小型かつ廉価にすることができる。
【0049】
図12は、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の供給工程を示す回路図である。
図12に示すように、供給工程においては、第1開閉弁20Vを閉じ、第2開閉弁30Vを開いた状態で、血液ポンプ30Pおよび排液ポンプ40Pの稼働を停止させる。これにより、清浄液Sの供給および第1貯液バッグ55cの洗浄が、本発明の実施形態1と同様に実施可能となる。なお、本発明の実施形態3においては、排液ポンプ40Pが排液流路40bに設けられているため、第3開閉弁40Vは開いていてもよいし、閉じていてもよい。
【0050】
図13は、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の供給後返血工程を示す回路図である。
図13に示すように、供給工程後に実施される返血工程においては、第1開閉弁20Vが開き、第2開閉弁30Vが閉じ、第3開閉弁40Vが閉じた状態で、血液ポンプ30Pが矢印A2で示す排出方向に送液し、排液ポンプ40Pの稼働は停止されている。このように、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置3の供給工程後においては、除水は実施せず、患者への返血のみが行われてもよい。
【0051】
図14は、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の置換工程を示す回路図である。
図14に示すように、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置3の置換工程においては、第1開閉弁20Vが閉じ、第2開閉弁30Vが閉じ、第3開閉弁40Vが開き、第4開閉弁60Vが開いた状態で、血液ポンプ30Pが停止され、排液ポンプ40Pが矢印Bで示すような血液浄化器10から離れる吸出方向に送液する。本発明の実施形態3の置換工程においては、排液ポンプ40Pの送液に置換工程をより速く完了できる。
【0052】
(実施形態4)
以下、本発明の実施形態4に係る血液浄化装置について説明する。本発明の実施形態4においては、第1の貯液バッグおよび第2の貯液バッグに関する構成が、本発明の実施形態3と異なる。このため、血液浄化装置3と同様である構成および効果については説明を繰り返さない。
【0053】
図15は、本発明の実施形態4に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
図15に示すように、本発明の実施形態4に係る血液浄化装置4は、本発明の実施形態2と同様に、第2の秤76を備えており、第2の秤76は第2貯液バッグ75に取り付けられている。これにより、第1貯液バッグ55を第1の秤56で測定し、第2貯液バッグ75を第1の秤56でなく第2の秤76で測定することで、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置3に対して、脱血量と除水量とを個別に把握することができる。
【0054】
(実施形態5)
以下、本発明の実施形態5に係る血液浄化装置について説明する。本発明の実施形態5においては、第2清浄液流路に係る構成が、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置3と異なる。このため、血液浄化装置3と同様である構成および効果については説明を繰り返さない。
【0055】
図16は、本発明の実施形態5に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
図16に示すように、本発明の実施形態5に係る血液浄化装置5は、清浄液供給部65をさらに備えている。
【0056】
清浄液供給部65は、第2清浄液流路60dの血液浄化器10側とは反対側の端部に接続されている。清浄液供給部65は、清浄液Sを貯液する。
【0057】
上記の構成によれば、清浄液貯液部35からではなく清浄液供給部65から第2部12に清浄液Sを供給可能となるため、脱血工程時においても第2清浄液流路60dおよび排液流路40bに清浄液を流すことができる。よって、血液浄化の工程全体にかかる時間を短縮できる。
【0058】
なお、本実施形態において、第1清浄液流路30および第2清浄液流路60dを互いに連通させるための流路が設けられてもよい。この場合、当該流路は、第1清浄液流路30のうち、第2開閉弁30Vと清浄液貯液部35との間に接続される。
【0059】
(実施形態6)
以下、本発明の実施形態6に係る血液浄化装置について説明する。本発明の実施形態6においては、排液流路および第2清浄液流路に係る構成が、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置1と異なる。このため、血液浄化装置1と同様である構成および効果については説明を繰り返さない。
【0060】
図17は、本発明の実施形態6に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
図17に示すように、本発明の実施形態6に係る血液浄化装置6は、除水制御器80をさらに備えている。
【0061】
除水制御器80は、第2清浄液流路60eおよび排液流路40eの各々に接続され、清浄液Sを第1流量で第2清浄液流路60eから第2部12に流入させるとともに第2部12から排液流路40eに排液Dを第2流量で流出させることができるように構成されている。
【0062】
上記の構成によれば、第1流量および第2流量の値を具体的に設定することで、除水速度の値が第2流量から第1流量を引いた値となるため、除水量の制御がより容易になる。
【0063】
なお、除水制御器80の機構は特に限定されないが、たとえばビスカス方式などの密閉容量式の機構を採用することができる。
【0064】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0065】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1,2,3,4,5,6 血液浄化装置、10 血液浄化器、11 第1部、12 第2部、15 半透膜、20 血管アクセス流路、20V 第1開閉弁、30 第1清浄液流路、30P 血液ポンプ、30V 第2開閉弁、35 清浄液貯液部、40,40a,40b,40e 排液流路、40P 排液ポンプ、40V 第3開閉弁、45 排液貯液部、50 第1分岐流路、55,55c 第1貯液バッグ、56,56c 第1の秤、60,60d,60e 第2清浄液流路、60V 第4開閉弁、65 清浄液供給部、70 第2分岐流路、75,75c 第2貯液バッグ、76 第2の秤、80 除水制御器、D 排液、S 清浄液。