(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150174
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】電力変換装置、電力供給システム、および制御方法
(51)【国際特許分類】
G05F 1/67 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G05F1/67 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063452
(22)【出願日】2023-04-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】麻植 実
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420BB03
5H420BB17
5H420CC03
5H420DD03
5H420EB37
5H420EB39
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF22
(57)【要約】
【課題】パワーコンディショナの動作を安定させることが可能な電力変換装置を実現する。
【解決手段】電力変換装置(5)は、DC-DCコンバータ(51)と、DC-DCコンバータの出力電力を制御する制御部(52)と、を備え、制御部は、パワーコンディショナ(2)への入力電力の変化レートに、0より大きくかつ1未満の係数を乗じた値を絶対値の変動幅の上限として、DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルとパワーコンディショナとを接続する直流母線に接続され、前記直流母線から蓄電装置への充電、および前記蓄電装置から前記直流母線への放電を行う電力変換装置であって、
DC-DCコンバータと、
前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記パワーコンディショナへの入力電力の、単位時間当たりの変動幅の絶対値を、前記パワーコンディショナへの入力電力の変化レートとして算出し、
0より大きくかつ1未満の係数を前記変化レートに乗じた値を、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値の、変動幅の絶対値の上限として、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値を決定する、電力変換装置。
【請求項2】
前記太陽電池パネルの出力電流を示す信号を出力する電流計と、
前記太陽電池パネルの出力電圧を示す信号を出力する電圧計と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記太陽電池パネルの出力電流と前記太陽電池パネルの出力電圧とを乗算して前記太陽電池パネルの出力電力を算出し、
前記太陽電池パネルの出力電力から前記DC-DCコンバータの出力電力を減算した値を前記パワーコンディショナへの入力電力として算出する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記係数は、前記太陽電池パネルの定格出力に対する実際の出力に応じて変動する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
太陽電池パネルと、
パワーコンディショナと、
直流母線と、
蓄電装置と、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置と、
を備える電力供給システム。
【請求項5】
太陽電池パネルとパワーコンディショナとを接続する直流母線に接続され、前記直流母線から蓄電装置への充電、および前記蓄電装置から前記直流母線への放電を行う電力変換装置の制御方法であって、
前記電力変換装置は、
DC-DCコンバータと、
前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する制御部と、を備え、
前記パワーコンディショナへの入力電力の、単位時間当たりの変動幅の絶対値を、入力電力の変化レートとして算出する変化レート算出ステップと、
0より大きくかつ1未満の係数を前記変化レートに乗じた値を、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値の、変動幅の絶対値の上限として、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値を決定する指令値決定ステップと、を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、当該電力変換装置を備える電力供給システム、および電力変換装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流発電装置に対して、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を行うパワーコンディショナと、電力変換装置を並列に接続する電力供給システムを構築する場合に、高精度で安定性の高いMPPT制御を実現する電力変換装置が開示されている。電力変換装置は、直流発電装置の出力側に対してMPPT制御機能を有するパワーコンディショナと並列の状態で接続され、その接続点とエネルギー貯蔵装置との間で直流電力を一方向または双方向に入出力する。電力変換装置は、パワーコンディショナの入力電力目標値に対する直流発電装置の発電電力の過不足の割合を表す変数を求める。さらに、電力変換装置は、直流発電装置の発電電流に上記変数を乗算した結果の電流値を、エネルギー貯蔵装置への入出力の電流指令値とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている電力変換装置は、電流源として動作することで、パワーコンディショナのMPPT制御に影響することなく、直流発電装置またはパワーコンディショナとエネルギー貯蔵装置との間の電流を制御する。これにより、パワーコンディショナの動作を安定させることができるというものである。
【0005】
しかしながら、当該電力変換装置は、直流発電装置の発電電力を算出するために、直流発電装置の出力電圧および出力電流を参照する。すなわち、特許文献1に開示されている電力変換装置は、直流発電装置の出力電圧の影響を受ける。このため、電力供給システムにおいて、パワーコンディショナは、直流発電装置の出力電流そのものと、直流発電装置の出力電圧の影響を受けた、電力変換装置の出力電流と、の影響を受ける。したがって、特許文献1に開示されている電力変換装置では、依然としてパワーコンディショナの動作が不安定になる可能性がある。
【0006】
本開示の一態様は、パワーコンディショナの動作を安定させることが可能な電力変換装置などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る電力変換装置は、太陽電池パネルとパワーコンディショナとを接続する直流母線に接続され、前記直流母線から蓄電装置への充電、および前記蓄電装置から前記直流母線への放電を行う電力変換装置であって、DC-DCコンバータと、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記パワーコンディショナへの入力電力の、単位時間当たりの変動幅の絶対値を、前記パワーコンディショナへの入力電力の変化レートとして算出し、0より大きくかつ1未満の係数を前記変化レートに乗じた値を、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値の、変動幅の絶対値の上限として、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値を算出する。
【0008】
また、本開示の一態様に係る制御方法は、太陽電池パネルとパワーコンディショナとを接続する直流母線に接続され、前記直流母線から蓄電装置への充電、および前記蓄電装置から前記直流母線への放電を行う電力変換装置の制御方法であって、前記電力変換装置は、DC-DCコンバータと、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する制御部と、を備え、前記パワーコンディショナへの入力電力の、単位時間当たりの変動幅の絶対値を、入力電力の変化レートとして算出する変化レート算出ステップと、0より大きくかつ1未満の係数を前記変化レートに乗じた値を、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値の、変動幅の絶対値の上限として、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値を算出する指令値算出ステップと、を含む。
【0009】
本開示の各態様に係る電力変換装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記電力変換装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記電力変換装置をコンピュータにて実現させる電力変換装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、パワーコンディショナの動作を安定させることが可能な電力変換装置などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電力変換装置を備える電力供給システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】制御部の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】太陽電池パネルにおける出力電圧と出力電力との関係を示すグラフである。
【
図4】太陽電池パネルおよびDC-DCコンバータにおける出力電力の変化を示すグラフである。
【
図5】制御部による電力変換装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0013】
(電力供給システム)
図1は、本開示の一実施形態に係る電力変換装置5を備える電力供給システム100の構成の一例を示すブロック図である。電力供給システム100は、電力系統200に電力を供給する。
図1に示すように、電力供給システム100は、太陽電池パネル1、パワーコンディショナ2、直流母線3、蓄電装置4、および電力変換装置5を備える。
【0014】
太陽電池パネル1は、太陽光の日射量に応じて直流電力を発電する。パワーコンディショナ2は、電力供給システム100から電力系統200に供給される電力を制御する。パワーコンディショナ2は、例えば太陽電池パネル1の出力電力についてMPPT制御を行う。直流母線3は、太陽電池パネル1とパワーコンディショナ2とを接続する。
【0015】
蓄電装置4は、電力を内部にエネルギーとして保持し、保持したエネルギーを必要に応じて直流により直流母線3へ供給する。蓄電装置4は、直流母線3に接続される。蓄電装置4の内部には、太陽電池パネル1から直流母線3を介して供給される直流電力が保持される。また、蓄電装置4から直流母線3へ供給される直流電力は、パワーコンディショナ2へ供給される。
【0016】
蓄電装置4は、リチウムイオン電池、NaS(ナトリウム・硫黄)電池、レドックスフロー電池、または鉛蓄電池等の2次電池を備えた装置であり得る。しかし蓄電装置4は2次電池を備えた装置に限られるものではない。蓄電装置4として、キャパシタ、超伝導電力貯蔵ユニット、フライホイール式電力貯蔵ユニット、または圧縮空気式電力貯蔵ユニットなど、電気エネルギーを貯蔵する機能を備えた任意のユニットを用いることができる。
【0017】
電力変換装置5は、直流母線3に接続され、直流母線3から蓄電装置4への充電、および蓄電装置4から直流母線3への放電を行う。電力変換装置5は、直流母線3と蓄電装置4との間に配され、直流母線3および蓄電装置4の一方から他方へ供給される電力の電圧を変換する。電力変換装置5は、DC-DCコンバータ51、制御部52、記憶部53、電流計54、および電圧計55を備える。
【0018】
DC-DCコンバータ51は、制御部52から入力される指令値に基づいて、直流母線3から入力される電力を、電圧を変換して蓄電装置4へ出力するか、または蓄電装置4から入力される電力を、電圧を変換して直流母線3へ出力する。以下の説明では、DC-DCコンバータ51の出力電力について、直流母線3から蓄電装置4へ向かう方向を正とし、蓄電装置4から直流母線3へ向かう方向を負とする。
【0019】
制御部52は、太陽電池パネル1の出力電流および出力電圧に基づいて決定した指令値をDC-DCコンバータ51へ入力することで、DC-DCコンバータ51の出力電力を制御する。制御部52の具体的な構成については後述する。
【0020】
記憶部53は、制御部52が指令値を決定するために必要な情報を記憶する記憶装置である。記憶部53は、例えばDC-DCコンバータ51へ入力する指令値を決定するためのプログラムを記憶していてよい。ただし、電力変換装置5においては、記憶部53は必須ではない。電力変換装置5は、記憶部53を備える代わりに、外部の記憶装置と無線または有線で通信可能に接続されていてもよい。
【0021】
電流計54は、太陽電池パネル1からの出力電流に応じた信号を出力する。電圧計55は、太陽電池パネル1からの出力電圧に応じた信号を出力する。電流計54および電圧計55は、直流母線3の、蓄電装置4および電力変換装置5が接続される点よりも太陽電池パネル1の側に設けられる。
【0022】
ただし、電流計54および電圧計55は、電力変換装置5の構成要素として必須ではない。例えば、制御部52は、直流母線3に設けられた、電力変換装置5の構成要素ではない電流計および電圧計から、太陽電池パネル1の出力電流および出力電圧を取得してもよい。
【0023】
(制御部)
図2は、制御部52の具体的な構成の一例を示すブロック図である。制御部52は、上述した指令値の決定を、一定の時間間隔で行う。
図2に示すように、制御部52は、乗算部52a、第1減算部52b、変化レート算出部52c、第2減算部52d、および指令値決定部52eを備える。
【0024】
乗算部52aは、太陽電池パネル1からの出力電流と出力電圧とを乗算した信号を出力する。乗算部52aの出力は、太陽電池パネル1からの出力電力を示す。
【0025】
第1減算部52bは、乗算部52aの出力から、DC-DCコンバータ51の現在の出力電力を減算した信号を出力する。第1減算部52bの出力は、パワーコンディショナ2への入力電力を示す。すなわち、第1減算部52bは、太陽電池パネル1の出力電力からDC-DCコンバータ51の出力電力を減算した値をパワーコンディショナ2への入力電力として算出する。
【0026】
変化レート算出部52cは、パワーコンディショナ2への入力電力の、単位時間当たりの変動幅の絶対値を、パワーコンディショナ2への入力電力の変化レートとして算出する。変化レートは、パワーコンディショナ2のMPPT特性を示すと言える。
【0027】
具体的には、変化レート算出部52cは、前回の指令値を決定したときの第1減算部52bの出力に対する、今回の第1減算部52bの出力の変動幅の絶対値ΔP1を算出する。また、変化レート算出部52cは、第1減算部52bが前回の信号を出力した時刻から、今回の信号を出力した時刻までの期間の長さΔtを算出する。さらに、変化レート算出部52cは、第1減算部52bが前回の信号を出力した時刻から、今回の信号を出力した時刻までの期間における、パワーコンディショナ2への入力電力の変化レートΔP1/Δtを算出する。
【0028】
第2減算部52dは、パワーコンディショナ2への所定の入力電力目標値から、乗算部52aの出力を減算した信号を出力する。第2減算部52dの出力は、DC-DCコンバータ51の出力電力を制御する指令値の基本値を示す。
【0029】
指令値決定部52eは、0より大きくかつ1未満の係数を変化レートΔP1/Δtに乗じた値を、DC-DCコンバータ51の出力電力を制御する指令値の、変動幅の絶対値の上限として、DC-DCコンバータ51の出力電力を制御する指令値を決定する。具体的には、指令値決定部52eは、変化レート算出部52cからの出力が示す変化レートΔP1/Δtに、0よりも大きく、かつ1未満の係数を乗じることで、更新レートΔP2/Δtを算出する。係数は、例えば0.3であってよいがこれに限られない。
【0030】
指令値決定部52eは、更新レートの値を、DC-DCコンバータ51に出力する指令値の、変動幅の絶対値の上限とする。具体的には、指令値決定部52eは、DC-DCコンバータ51の出力電力を制御する指令値の基本値と、前回の指令値との差分が、更新レートの値以下であるか否かを判定する。指令値の基本値と、前回の指令値との差分が、更新レートの値以下である場合には、指令値決定部52eは、指令値の基本値をそのまま指令値とする。指令値の基本値と、前回の指令値との差分が、更新レートの値以下でない場合には、指令値決定部52eは、前回の指令値との差分が更新レートの値以下になるように基本値を補正した値を指令値とする。指令値決定部52eが決定する指令値は、DC-DCコンバータ51の出力電力の現在の目標値に対する、次の目標値の変動の大きさを規定する。
【0031】
図3は、太陽電池パネル1における出力電圧と出力電力との関係を示すグラフである。
図3において、横軸は出力電圧、縦軸は出力電力を示す。
図3に示す例では、パワーコンディショナ2は、太陽電池パネル1に対し、動作点Aを初期位置とするMPPT制御を行うものとする。また、太陽電池パネル1への日射量は変動しないものとする。
【0032】
図3に示す例では、パワーコンディショナ2は、動作点Aから動作点Bおよび動作点Cへ、この順で太陽電池パネル1の動作点を移動させる。さらにパワーコンディショナ2は、動作点Dへ太陽電池パネル1の動作点を移動させた後、動作点Cと動作点Dとの間で太陽電池パネル1の動作点を往復させる。
図3に示すように、太陽電池パネル1の動作点をAからBに変化させた場合の、出力電力の変動幅の絶対値をΔP1nとする。また、太陽電池パネル1の動作点をBからCに変化させた場合の、出力電力の変動幅の絶対値をΔP1n+1とする。
【0033】
図4は、太陽電池パネル1およびDC-DCコンバータ51における出力電力の変化を示すグラフである。
図4において、横軸は時間、縦軸は出力電力を示す。
図4において、グラフ401は、太陽電池パネル1における出力電力を示す。
図4において、グラフ402は、DC-DCコンバータ51における出力電力を示す。
【0034】
図4において、時刻T1は、太陽電池パネル1の動作点が動作点Aに移動した時刻である。時刻T2は、太陽電池パネル1の動作点が動作点Bに移動した時刻である。時刻T3は、太陽電池パネル1の動作点が動作点Cに移動した時刻である。
【0035】
図4に示すように、時刻T1から時刻T2までの期間の長さがΔtnであるとする。当該期間における、太陽電池パネル1からの出力電力の、変動幅の絶対値がΔP1nであるとする。このとき、変化レートΔP1n/Δtnは、時刻T1から時刻T2までの期間におけるグラフ401の傾きとなる。
【0036】
時刻T1から時刻T2までの期間における、DC-DCコンバータ51における出力電力の変動がΔP2nであるとする。このとき、更新レートΔP2n/Δtnは、時刻T1から時刻T2までの期間におけるグラフ402の傾きとなる。また、更新レートΔP2n/Δtnは、変化レートΔP1n/Δtnに、0よりも大きく、かつ1未満の係数を乗じた値となる。
【0037】
また、時刻T2から時刻T3までの期間の長さがΔtn+1であるとする。当該期間における、太陽電池パネル1からの出力電力の、変動幅の絶対値がΔP1n+1であるとする。このとき、変化レートΔP1n+1/Δtn+1は、時刻T2から時刻T3までの期間におけるグラフ401の傾きとなる。
【0038】
時刻T2から時刻T3までの期間における、DC-DCコンバータ51における出力電力の変動がΔP2n+1であるとする。このとき、更新レートΔP2n+1/Δtn+1は、時刻T2から時刻T3までの期間におけるグラフ402の傾きとなる。また、更新レートΔP2n+1/Δtn+1は、変化レートΔP1n+1/Δtn+1に、0よりも大きく、かつ1未満の係数を乗じた値となる。
【0039】
上述したとおり、ΔP1は、第1減算部52bの出力の、前回から今回までの変動幅の絶対値である。このため、太陽電池パネル1からの出力電力の傾きが負であっても、変化レートΔP1n/ΔtnおよびΔP1n+1/Δtn+1、並びに更新レートΔP2n/ΔtnおよびΔP2n+1/Δtn+1は正となる。
【0040】
(制御方法)
図5は、制御部52による電力変換装置5の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図5に示す例において、乗算部52aは、太陽電池パネル1の出力電力を算出する(S1)。第1減算部52bは、パワーコンディショナ2への入力電力を算出する(S2)。変化レート算出部52cは、パワーコンディショナ2への入力電力の、単位時間当たりの変動幅の絶対値を、入力電力の変化レートとして算出する(S3、変化レート算出ステップ)。
【0041】
第2減算部52dは、DC-DCコンバータ51の出力電力を制御する指令値の基本値を算出する(S4)。指令値決定部52eは、0より大きくかつ1未満の係数を、S3において算出した変化レートに乗じた値を、DC-DCコンバータ51の出力電力を制御する指令値の、変動幅の絶対値の上限として、DC-DCコンバータ51の出力電力を制御する指令値を決定する(S5、指令値決定ステップ)。制御部52は、以上の一連の処理により決定した指令値をDC-DCコンバータ51に入力することで、電力変換装置5を制御する。
【0042】
図5に示した制御方法において、ステップS2およびS3とステップS4とは、必ずしもこの順で実行されなくてもよい。例えば先にステップS4が実行され、その後でステップS2およびS3が実行されてもよい。または、ステップS2およびS3の一方または両方とステップS4とが、互いに並列に実行されてもよい。
【0043】
(効果)
以上のとおり、電力変換装置5においては、DC-DCコンバータ51の出力電力を制御する指令値は、パワーコンディショナ2への入力電力の、単位時間当たりの変動幅の絶対値よりも小さくなる。すなわち、DC-DCコンバータ51の出力電力の変動が、パワーコンディショナ2への入力電力の変動よりも遅くなる。これにより、パワーコンディショナ2への入力電力がDC-DCコンバータ51の出力電力によって不安定になりにくくなる。したがって、パワーコンディショナ2の動作を安定させることができる。電力変換装置5のこのような機能について、パワーコンディショナ2のMPPT特性と制御振動を起こさないよう、更新レートを自動調整するとも表現できる。
【0044】
また、上述したように、電力変換装置5においては、第1減算部52bは、太陽電池パネル1の出力電力からDC-DCコンバータ51の出力電力を減算した値をパワーコンディショナ2への入力電力として算出する。このため、パワーコンディショナ2の入力電力を取得するために、パワーコンディショナ2から電力変換装置5への信号線を増設する必要がない。したがって、電力変換装置を備えない既存の電力供給システムに、電力変換装置5を増設することが容易である。
【0045】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0046】
実施形態1においては、更新レートΔP2/Δtの算出において、指令値決定部52eが変化レートΔP1/Δtに乗じる係数は定数であった。実施形態2では、上記の係数が変動する場合について説明する。
【0047】
指令値決定部52eが変化レートΔP1/Δtに乗じる係数は、例えば太陽電池パネル1の定格出力に対する実際の出力に応じて変動してよい。この場合、太陽電池パネル1の定格出力は、予め記憶部53に記憶されていてよい。
【0048】
指令値決定部52eは、例えば太陽電池パネル1の定格出力に対する実際の出力の比率そのものを、変化レートΔP1/Δtに乗じる係数として用いてよい。また、指令値決定部52eは、例えば太陽電池パネル1の定格出力に対する実際の出力の比率に、0よりも大きく、かつ1未満の係数をさらに乗じた値を、変化レートΔP1/Δtに乗じる係数として用いてもよい。また、指令値決定部52eは、太陽電池パネル1の定格出力に対する実際の出力の比率に基づいて、さらに別の方法で算出した値を、変化レートΔP1/Δtに乗じる係数として用いてもよい。これにより、実施形態1よりもさらに、パワーコンディショナ2への入力電力がDC-DCコンバータ51の出力電力によって不安定になりにくくなる。
【0049】
〔ソフトウェアによる実現例〕
電力変換装置5(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部52に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0050】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0051】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0052】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0053】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0054】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る電力変換装置は、太陽電池パネルとパワーコンディショナとを接続する直流母線に接続され、前記直流母線から蓄電装置への充電、および前記蓄電装置から前記直流母線への放電を行う電力変換装置であって、DC-DCコンバータと、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記パワーコンディショナへの入力電力の、単位時間当たりの変動幅の絶対値を、前記パワーコンディショナへの入力電力の変化レートとして算出し、0より大きくかつ1未満の係数を前記変化レートに乗じた値を、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値の、変動幅の絶対値の上限として、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値を算出する。
【0055】
本開示の態様2に係る電力変換装置は、態様1において、前記太陽電池パネルの出力電流を示す信号を出力する電流計と、前記太陽電池パネルの出力電圧を示す信号を出力する電圧計と、をさらに備え、前記制御部は、前記太陽電池パネルの出力電流と前記太陽電池パネルの出力電圧とを乗算して前記太陽電池パネルの出力電力を算出し、前記太陽電池パネルの出力電力から前記DC-DCコンバータの出力電力を減算した値を前記パワーコンディショナへの入力電力として算出する。
【0056】
本開示の態様3に係る電力変換装置は、態様1または2において、前記係数は、前記太陽電池パネルの定格出力に対する実際の出力に応じて変動する。
【0057】
本開示の態様4に係る電力供給システムは、太陽電池パネルと、パワーコンディショナと、直流母線と、蓄電装置と、態様1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置と、を備える。
【0058】
本開示の態様5に係る制御方法は、太陽電池パネルとパワーコンディショナとを接続する直流母線に接続され、前記直流母線から蓄電装置への充電、および前記蓄電装置から前記直流母線への放電を行う電力変換装置の制御方法であって、前記電力変換装置は、DC-DCコンバータと、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する制御部と、を備え、前記パワーコンディショナへの入力電力の、単位時間当たりの変動幅の絶対値を、入力電力の変化レートとして算出する変化レート算出ステップと、0より大きくかつ1未満の係数を前記変化レートに乗じた値を、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値の、変動幅の絶対値の上限として、前記DC-DCコンバータの出力電力を制御する指令値を算出する指令値算出ステップと、を含む。
【0059】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 太陽電池パネル
2 パワーコンディショナ
3 直流母線
4 蓄電装置
5 電力変換装置
51 DC-DCコンバータ
52 制御部
54 電流計
55 電圧計
100 電力供給システム