(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150176
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】洗面器及び洗面ボウル用受皿
(51)【国際特許分類】
A47K 1/04 20060101AFI20241016BHJP
E03C 1/24 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A47K1/04 Z
A47K1/04 D
E03C1/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063454
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】村上 文夫
(72)【発明者】
【氏名】中島 一彰
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA02
2D061DC00
(57)【要約】
【課題】洗面ボウルにオーバーフロー孔が形成された洗面器が有する種々の問題を解決することが可能な洗面器及び洗面ボウル用受皿を提供する。
【解決手段】洗面器10は、水を溜めることが可能な洗面ボウル20と、受皿30とを含む。受皿30は、受皿側排水口38を有しており、洗面ボウル20が載置される。受皿30は、洗面ボウル20が載置された状態で、洗面ボウル20を溢れ出た水が受皿側排水口38に向かう流路50を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を溜めることが可能な洗面ボウルと、
開口部を有し、前記洗面ボウルが載置される受皿と、
を含み、
前記受皿は、前記洗面ボウルが載置された状態で、前記開口部に向かう流路を有する、
洗面器。
【請求項2】
前記受皿は、前記洗面ボウルが載置された状態で前記洗面ボウルに隠れる位置に前記流路を形成する流路形成部を有する、
請求項1に記載の洗面器。
【請求項3】
前記受皿は、前記洗面ボウルから溢れ出た水を堰き止める立設部を有し、
前記流路は、断面積が少なくとも1000mm2以上である、
請求項1または2に記載の洗面器。
【請求項4】
水を溜めることが可能な洗面ボウルが載置される受皿であって、
開口部と、前記洗面ボウルが載置された状態で前記開口部に向かう流路と、を含む、
洗面ボウル用受皿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗面器及び洗面ボウル用受皿に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、オーバーフロー孔が形成されたボウル部と、オーバーフロー孔に連通するオーバーフロー流路が形成されたオーバーフロー部と、を備える洗面器が開示されている。オーバーフロー部は、ボウル部の後方に膨らむように、ボウル部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボウル部にオーバーフロー孔を有する洗面器は、衛生面の問題、美観性の問題、製造工程上の問題等、種々の問題をかかえている。例えば、オーバーフロー孔から、害虫が侵入するおそれがある。また、オーバーフロー孔を有するボウル部は、後方に膨らんでしまう。さらに、オーバーフロー孔を有するボウル部は排泥製法で製作されることが一般的であるが、排泥製法は工程数が多く、洗面器の重量も大きい。また、オーバーフローの機能がない洗面器がすでに設置されている場合、オーバーフローの機能を有する洗面器に変更しようとすると、洗面器の取り替えを要するといった問題もある。
【0005】
本開示は、上述の種々の問題を解決することが可能な洗面器及び洗面ボウル用受皿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る洗面器は、水を溜めることが可能な洗面ボウルと、開口部を有し、洗面ボウルが載置される受皿と、を含む。受皿は、洗面ボウルが載置された状態で、開口部に向かう流路を有する。
【0007】
上記洗面器によると、洗面ボウルから溢れ出た水を受皿で受けて、開口部から排出することができる。よって、洗面ボウルにオーバーフロー孔が不要となり、上述の種々の問題を解決することが可能となる。
【0008】
上記受皿は、洗面ボウルが載置された状態で洗面ボウルに隠れる位置に流路を形成する流路形成部を有していてもよい。流路形成部が洗面ボウルに隠れることにより、外観で流路形成部を視認できないか又は視認困難となり、美観に優れたものとすることができる。
【0009】
上記受皿は、洗面ボウルから溢れ出た水を堰き止める立設部を有するとよい。また、上記流路は、断面積を少なくとも1000mm2以上とするとよい。流路の断面積を少なくとも1000mm2以上にすることで、流路を流れる水の水位が低くなり、立設部の高さを低くすることができる。よって、美観に優れたものとすることができる。
【0010】
本開示に係る洗面ボウル用受皿は、水を溜めることが可能な洗面ボウルが載置される受皿である。洗面ボウル用受皿は、開口部と、洗面ボウルが載置された状態で開口部に向かう流路と、を含む。
【0011】
上記洗面ボウル用受皿によると、既存の洗面ボウルを載置することにより、かかる洗面ボウルから溢れ出た水を受皿で受けて、開口部から排出することができる。既存の洗面ボウルは、オーバーフローの機能を有しない既設の洗面ボウルであってもよく、上述の種々の問題を解決することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、上述の種々の問題を解決することが可能な洗面器及び洗面ボウル用受皿を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の洗面器の周辺を示す概略斜視図の一例である。
【
図2】本開示の洗面器の周辺を示す概略斜視図の一例であって、洗面ボウルが受皿に載置されていない状態を示す図である。
【
図4】受皿の変形例を示す概略斜視図であって、(A)第1変形例、(B)第2変形例、(C)第3変形例、を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施の形態について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1~
図3において、同一の部材には、同じ符号が付されている。なお、この明細書において、上方向は図面上の上方向、下方向は図面上の下方向を意味する。
【0015】
先ず、
図1及び
図2を参照して、本開示の洗面器10の構造について説明する。
図1は、本開示の洗面器10の周辺を示す概略斜視図の一例である。本開示の洗面器10は、洗面ボウル20と、この洗面ボウル20が載置される盆状の受皿30とを含む。
図2は、本開示の洗面器10の周辺を示す概略斜視図の一例であって、洗面ボウル20が受皿30に載置されていない状態を示す図である。なお、上記の受皿30は、本発明の「洗面ボウル用受皿」に相当する。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、本開示の洗面ボウル20及び受皿30は、いずれも平面視が例えば円形であるが、特定の形状に限定されず、楕円、矩形、及び多角形のいずれであってもよい。
【0017】
図1及び
図2を参照し、洗面ボウル20は、最も下方に位置する底部に、ボウル側排水口22を有する。吐水ハンドル70が操作されると、吐水管72から水が吐水される。吐水管72から吐水された水は、ボウル側排水口22から排出される。
図1には示されていないが、ゴム栓又は水栓金具等の水栓部材をボウル側排水口22に取り付けると、洗面ボウル20に水を溜めることができる。
【0018】
図2を参照し、受皿30は、例えば受けパンであり、立設部32と底部34と流路形成部36とを有する。立設部32は、底部34の外周部における周方向の全範囲において、底部34から上方に立設している。立設部32は、洗面ボウル20から溢れ出た水を堰き止めることができる壁として機能する。上方に立設する立設部32の高さは、美観性の観点で言えば低い方が好ましい。
【0019】
底部34は、径方向の外側から内側に向けて下方に傾斜している。底部34は、立設部32から底部34の中心に向けて下方に傾斜している。底部34は、最も下方に位置する部位に、受皿側排水口38を有する。この受皿側排水口38は、本発明の「開口部」に相当する。
【0020】
受皿側排水口38は、受皿30に洗面ボウル20が載置された状態で、ボウル側排水口22と連通するように設けられている。すなわち、受皿30に洗面ボウル20が載置されたとき、ボウル側排水口22の開口領域と受皿側排水口38の開口領域とが平面視で重なる。
【0021】
なお、受皿側排水口38の口径は、ボウル側排水口22の口径よりも大きい方が好ましい。また、受皿30に洗面ボウル20が載置されたとき、平面視で、受皿側排水口38の開口領域内に、ボウル側排水口22の開口領域の全部がおさまることが好ましい。
【0022】
流路形成部36は、底部34から上方に向けて突出し、径方向に沿って直線状に設けられている。本開示の実施の形態において、流路形成部36は、立設部32から受皿側排水口38に向けて直線状に設けられている。流路形成部36は、底部34の周方向に概ね120度の間隔で、3箇所に設けられている。流路形成部36は、受皿30に洗面ボウル20が載置された状態で底部34と洗面ボウル20との間に間隙を有するように、洗面ボウル20を支持する。
【0023】
次に、
図3を参照して、本開示の洗面器10の機能について説明する。
図3は、本開示の洗面器10の縦断面図の一例である。
【0024】
図3に示されるように、受皿30は、受皿側排水口38から排出された水が排水管60に排水されるように設置される。このように設置された受皿30に、洗面ボウル20が載置される。洗面ボウル20が受皿30に載置されると、上述したように、ボウル側排水口22と受皿側排水口38とが連通する。
【0025】
なお、
図3には水栓装置80も示されている。この水栓装置80は、ボウル側排水口22に取り付けられている。水栓装置80の詳細な説明は省略するが、水栓装置80は、一定の水位に達するまで洗面ボウル20に水を溜めることができ、一定の水位に達すると排水する機能を有する。このようにして、水栓装置80は、洗面ボウル20から水が溢れ出てしまうことを防止している。この水栓装置80は、受皿側排水口38に取り付けられるものであってもよい。
【0026】
ところで、水栓装置80に代えて例えばゴム栓がボウル側排水口22に取り付けられた場合、洗面ボウル20から水が溢れ出てしまうおそれがある。また、水栓装置80がボウル側排水口22に取り付けられていたとしても、水栓装置80から排水される量よりも多くの水が吐水された場合には、洗面ボウル20から水が溢れ出てしまうおそれがある。
【0027】
本開示の洗面器10において、洗面ボウル20から溢れ出た水は、受皿30に流れ出る。受皿30に流れ出た水は、底部34と洗面ボウル20との間の間隙を流れる。底部34と洗面ボウル20との間の間隙は、流路形成部36が洗面ボウル20を支持することによって形成された流路50である。上述のとおり、底部34が径方向の外側から内側に向けて下方に傾斜しているため、流路50を流れる水は、受皿側排水口38に向かって流れ、受皿側排水口38から排出される。受皿側排水口38から排出された水は、排水管60に排水される。
【0028】
流路50は、洗面ボウル20から溢れ出て受皿30に流れ出た水が、滞りなく受皿側排水口38に向かって流れるように形成されていることが好ましい。上述の通り、立設部32の高さを低くした方が美観に優れるため、流路50を流れる水の水位を、5mm又は2mmとする。また、排水したい流量すなわち流路50を流れる水の流量を、20[リットル/min]≒0.0003m3/sとする。この値は、BL認定基準(10リットル/min)に対して安全率を2倍としたものである。上記の値を前提にすると、トリチェリの定理より、水位5mmの場合、流路50の断面積(水が流れる方向に対して直交する方向(例えば鉛直方向)に切ったときに見える断面の面積)は1000mm2となる。また、水位2mmの場合、流路50の断面積は1500mm2となる。すなわち、水位を5mm以下にしたい場合は流路50の断面積を1000mm2以上にする必要があり、水位を2mm以下にしたい場合は流路50の断面積を1500mm2以上にする必要がある。流路50の断面積を1000mm2以上(水位5mm以下)にする場合、立設部32の高さを概ね10mm以下にすることができる。流路50の断面積を1500mm2以上(水位2mm以下)にする場合、立設部32の高さを概ね5mm以下にすることができる。このように、流路50の断面積を、少なくとも1000mm2以上、より好ましくは1500mm2以上とすることで、立設部32の高さを低くすることができ、ひいては美観に優れたものとすることができる。
【0029】
なお、流路50の断面積は、受皿側排水口38から水が排出されるまでの全ての流路50のうち、最も断面積が小さい部位の断面積(以下「最小断面積」と称する)が相当する。すなわち、水位を5mm以下にしたい場合は最小断面積を1000mm2以上にすることが好ましく、水位を2mm以下にしたい場合は最小断面積を1500mm2以上にすることが好ましい。
【0030】
このように、本開示の洗面器10によれば、美観を保ちつつ、洗面ボウル20から溢れ出た水を滞りなく排水管60に排水することができ、洗面器10の周囲が水浸しになることを防止できる。
【0031】
ところで、本開示の洗面ボウル20は、オーバーフロー孔を有していない。洗面ボウルにオーバーフロー孔を有する場合、オーバーフロー孔から害虫が侵入するおそれがあり、衛生面において改善の余地がある。また、オーバーフロー孔を有する洗面ボウルは、オーバーフロー孔から浸入した水の流路を確保するために後方が膨らみ、美観に乏しい。特に、ベッセルタイプの場合、美観が要求されるため、美観の面において改善の余地がある。さらに、オーバーフロー孔を有する洗面ボウルは排泥製法で製作されることが一般的であるが、排泥製法は工程数が多く、洗面器の重量も大きいため製造に困難を伴う。本開示の洗面器10に含まれる洗面ボウル20は、オーバーフロー孔を有する必要がない。そのため、本開示の洗面器10は、洗面ボウルにオーバーフロー孔を有する洗面器がかかえる種々の問題が解決される。すなわち、衛生面及び美観性に優れ、製造の困難性を解消した洗面器10を提供することができる。また、洗面ボウル20がオーバーフロー孔を有していないため、洗面ボウル20の後方が膨らむことがなく、ベッセルタイプであっても美観を損なわない。
【0032】
また、例えばオーバーフローの機能がない洗面器がすでに設置されている場合、オーバーフローの機能を有する洗面器に変更しようとすると、洗面器の取り替えを要する。この点、既存の洗面器を本開示の受皿30に載置するだけで、オーバーフローの機能がない洗面器を、オーバーフローの機能を有する洗面器に変更することができる。
【0033】
(変形例)
図2及び
図3に示されるように、流路形成部36は、受皿30の立設部32から受皿側排水口38に向けて直線状に設けられているが、これに限定されない。以下に、受皿30の流路形成部36の変形例について、
図4を参照して説明する。
【0034】
図4は、受皿の変形例を示す概略斜視図であって、(A)第1変形例、(B)第2変形例、(C)第3変形例、を示す図である。なお、
図4において、立設部32、底部34、及び受皿側排水口38については、
図2と共通の符号を用いることとする。
【0035】
図4(A)に示されるように、第1変形例の受皿30Aが有する流路形成部36Aは、径方向に沿って直線状に設けられているが、
図2に示される受皿30が有する流路形成部36と比べて長さが短い。具体的には、流路形成部36Aの長さが、洗面ボウル20の下部に隠れる長さとなっている。このようにすることで、受皿30Aに洗面ボウル20(例えば
図2参照)が載置されると、流路形成部36Aが洗面ボウル20の下部に隠れる。そのため、流路形成部36Aを外観で視認できないか又は視認し難くなり、美観に優れたものとすることが可能となる。なお、流路形成部36Aは、底部34と一体的に形成されていてもよいし、底部34に対して取り付けるものであってもよい。
【0036】
図4(B)に示されるように、第2変形例の受皿30Bが有する流路形成部36Bは、受皿側排水口38の径方向の外側に、例えば3つ設けられている。例えば3つの流路形成部36Bは、受皿側排水口38を中心とする円周上に沿って設けられることが好ましい。洗面ボウル20(例えば
図2参照)を、3つの流路形成部36Bによってバランスよく支持することができるためである。流路形成部36Bは、受皿30Bに洗面ボウル20が載置された状態で、洗面ボウル20の下部に隠れる位置に設けられることが好ましい。流路形成部36Bを外観で視認できないか又は視認し難くなり、美観に優れたものとすることが可能となるからである。なお、流路形成部36Bは、底部34と一体的に形成されていてもよいし、底部34に対して取り付けるものであってもよい。
【0037】
図4(C)に示されるように、第3変形例の受皿30Cが有する流路形成部36Cは、底部34から下方に凹むように設けられている。例えば、流路形成部36Cは、底部34に溝として形成されている。洗面ボウル20から受皿30に溢れ出た水は、底部34に溝として形成された流路を通って、受皿側排水口38に向けて流れ、排水管60に排水される。
図4(C)に示される流路形成部36Cは、径方向に沿って立設部32から受皿側排水口38まで形成されているが、長さはより短くてもよい。
【0038】
なお、
図4(A)~(C)に示される流路形成部36A~36Cの数は、いずれも3つであるが、これに限定されない。ただし、流路形成部36A~36Cの数が3つである場合、3点支持により、洗面ボウル20(例えば
図2参照)を安定して支持することができる。
【0039】
このように、流路形成部は、受皿に洗面ボウル20(例えば
図3参照)が載置された状態で、水が受皿側排水口38に向かって流れる流路を形成するものであれば、その態様は特定の態様に限定されない。
【0040】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の基本的な範囲は、上記の実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
10 洗面器
20 洗面ボウル
30 受皿
38 受皿側排水口
50 流路