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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150186
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】可搬式バッテリの貸出装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20241016BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063469
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 弘友希
(72)【発明者】
【氏名】浅井 成実
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】充電コストを抑えつつ短期間に貸出可能なバッテリを多数確保することが可能な、可搬式バッテリの貸出装置を提供する。
【解決手段】ユーザへ充電済みバッテリの貸し出しおよび使用済みバッテリの返却を行ってもらい、配送者に使用済みバッテリの回収および充電済みバッテリの配送をしてもらう、可搬式バッテリの貸出装置10は、バッテリへの充電を制御する充電制御部22を有する。充電制御部22は、充電率が第一閾値未満のバッテリのうち、充電率の高いバッテリから充電する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザへ充電済みバッテリの貸し出しおよび使用済みバッテリの返却を行ってもらい、配送者に使用済みバッテリの回収および充電済みバッテリの配送をしてもらう、可搬式バッテリの貸出装置であって、
バッテリへの充電を制御する充電制御部を有し、
前記充電制御部は、充電率が第一閾値未満のバッテリのうち、充電率の高いバッテリから充電する、貸出装置。
【請求項2】
前記充電制御部は、充電率が前記第一閾値よりも低い第二閾値未満のバッテリへは充電しない、請求項1に記載の貸出装置。
【請求項3】
前記充電制御部は、充電中のバッテリの充電率が前記第一閾値以上となったら充電を中止し、充電していないバッテリの中から最も充電率の高いバッテリへの充電を開始する、請求項1に記載の貸出装置。
【請求項4】
前記充電制御部は、ユーザからバッテリが返却されたときに、充電中のバッテリの内で返却されたバッテリよりも充電率の低いバッテリへの充電を中止し、返却されたバッテリへの充電を開始する、請求項1に記載の貸出装置。
【請求項5】
前記貸出装置は、配送者の配送管理装置から、次回配送時刻を含む配送スケジュールを受信する通信部を有し、
前記通信部は前記配送管理装置へ、前記次回配送時刻までに充電率が前記第一閾値とならないバッテリの個数を送信する、請求項1に記載の貸出装置。
【請求項6】
前記貸出装置は、配送者の配送管理装置から、次回配送時刻を含む配送スケジュールを受信する通信部を有し、
前記通信部は前記配送管理装置へ、前記次回配送時刻までに充電率が前記第一閾値となるバッテリの個数を送信する、請求項1に記載の貸出装置。
【請求項7】
前記貸出装置は、配送者の配送管理装置から次回配送時刻を含む配送スケジュール、および、バッテリの貸し出し予約を管理する予約管理装置から予約情報を受信する通信部を有し、
前記通信部は前記予約管理装置へ、前記次回配送時刻までに充電率が前記第一閾値となるバッテリの個数を送信する、請求項1に記載の貸出装置。
【請求項8】
前記貸出装置は、配送者の配送管理装置から、次回配送時刻を含む配送スケジュールを受信する通信部を有し、
前記充電制御部は、ユーザへの貸出履歴に基づく将来の需要予測情報に基づく前記次回配送時刻までの需要個数と、前記次回配送時刻までに充電率が前記第一閾値となるバッテリの個数と、に基づき、配送を希望する充電済みバッテリの個数を前記配送管理装置に送信する、請求項1に記載の貸出装置。
【請求項9】
前記充電制御部は、充電率が前記第一閾値よりも低い第三閾値以上のバッテリのうち、充電率の低いバッテリから放電させて充電率の高いバッテリを充電する、請求項1に記載の貸出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可搬式バッテリの貸出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、可搬式のバッテリをユーザに貸し出す充電ステーションが知られている。このような充電ステーションでは、使用済みバッテリを充電ステーション内で充電し、再びユーザに貸し出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7030994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、社会的な要請などにより可搬式バッテリの需要が高まりつつある。特許文献1のような充電ステーションでは、短時間に必要な個数のバッテリを一斉に充電しようとすると、商用電源からの買電コストが嵩み、充電コストが嵩んでしまう。
そこで本開示は、充電コストを抑えつつ短期間に貸出可能なバッテリを多数確保することが可能な、可搬式バッテリの貸出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面によれば、可搬式バッテリの貸出装置は、
ユーザへ充電済みバッテリの貸し出しおよび使用済みバッテリの返却を行ってもらい、配送者に使用済みバッテリの回収および充電済みバッテリの配送をしてもらう、可搬式バッテリの貸出装置であって、
バッテリへの充電を制御する充電制御部を有し、
前記充電制御部は、充電率が第一閾値未満のバッテリのうち、充電率の高いバッテリから充電する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、充電コストを抑えつつ短期間に貸出可能なバッテリを多数確保することが可能な、可搬式バッテリの貸出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、貸出装置が用いられるサービスの概要を示す図である。
図2図2は、貸出装置が用いられるサービスにおける情報のやり取りを示す図である。
図3図3は、予約管理装置が実行する、予約受付時のフローチャートである。
図4図4は、ユーザが貸出装置からバッテリを借りる時のフローチャートである。
図5図5は貸出装置のブロック図である。
図6図6は在庫管理部が運用する在庫管理データベースの一例を示す図である。
図7図7は、在庫管理部が次回配送時刻に配送を希望するバッテリの数を算出する手法を説明するための図である。
図8図8は、分配スケジュールを示す図である。
図9図9は、配送管理装置がPAの貸出装置に送信する配送スケジュールの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、可搬式バッテリの貸出装置10に関する。可搬式のバッテリとは、ユーザが持ち運び可能なバッテリである。可搬式のバッテリは、例えば、電動式の自動二輪車、電動式の自動四輪車、電動自転車、電動式のキックスクーターなどに搭載される車両などの移動手段に用いられるバッテリである。
【0009】
図1は、貸出装置10が用いられるサービスの概要を示す図である。図1に示すように貸出装置10は、ユーザに充電済みのバッテリを貸し出し、使用済みのバッテリを返却してもらう。また本開示の貸出装置10は、商用電源2から給電される電力で、返却されたバッテリを充電する。また、本開示のサービスにおいては、配送者により、貸出装置10に返却された使用済みのバッテリを回収してもらい、新たに充電済みバッテリを配送してもらう。充電工場3は、配送者から使用済みバッテリを引き取り、引き取ったバッテリを充電する。充電されたバッテリは、配送者により貸出装置10へ配送される。
【0010】
なお、図1では作図の都合上、単一の貸出装置10を図示したが、実際には複数の貸出装置10が設けられており、各々の貸出装置10がユーザへバッテリを貸し出したり、各々の貸出装置10で配送者からのバッテリの授受が行われる。また図1では、貸出装置10において商用電源2の電力でバッテリを充電する例を示したが、貸出装置10が太陽光発電設備を有している、あるいは太陽光発電設備に接続されており、商用電源2以外の電力源によってバッテリを充電するように構成されていてもよい。商用電源2以外の電力源としては、太陽光発電設備の他、地熱発電設備、バイオマス発電設備、風力発電設備などがあげられる。
【0011】
図2は、貸出装置10が用いられるサービスにおける情報のやり取りを示す図である。図2に示すように、貸出装置10は、配送管理装置50に配送リクエストを送信し、配送管理装置50から配送スケジュールを受信する。なお、配送管理装置50は、配送者へ運送スケジュールを送信する。配送者は配送管理装置50へ配送者の現在位置を送信するように構成されていてもよい。
【0012】
貸出装置10は、予約管理装置70に在庫情報を送信し、予約管理装置70から予約情報を受信する。予約管理装置70は、ユーザ端末40(携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、PCなど)から予約リクエストを受け付け、貸出装置10に予約情報を送信する。また、予約管理装置70は、予約リクエストに対して、ユーザ端末40へ予約受領通知を送信する。なお、配送管理装置50と予約管理装置70は、一体の管理装置として構成されていてもよいし、別に用意された管理装置であってもよい。また、貸出装置10、充電工場3、配送者、予約管理装置70は全て同一の事業者により運営されてもよいし、各々が異なる事業者によって運営されていてもよい。
【0013】
次に、図3および図4のフローチャートを用いて本サービスの概要を説明する。
図3は、予約管理装置70が実行する、予約受付時のフローチャートである。本例では、ユーザは予め本サービスの利用開始に当たって、ユーザ登録を行っており、予約管理装置70はユーザ識別情報によりユーザを識別可能とされている。図3に示すように、まずユーザはユーザ端末40を通じて予約管理装置70にユーザ識別情報などを送信し、ログイン処理を行う(step01)。ユーザがログイン処理を行った後、ユーザは、ユーザ端末40を通じて、貸し出しを希望する希望時刻と、貸し出しを希望する貸出装置10を特定する情報と、ユーザ識別情報を含む、予約リクエストを予約管理装置70へ送信する。
【0014】
予約管理装置70は、予約リクエストを取得したら(step02)、当該予約リクエストの受諾の可否を判定する(step03)。予約管理装置70は、当該予約リクエストが受諾可能と判定したら(step03:yes)、予約を受諾した旨をユーザ端末40に返信する(step04)。また予約管理装置70は、予約情報を記録部14(図5参照)に記録する(step04)。例えば予約情報は、ユーザ識別情報、貸出希望時刻、返却予定時刻、利用する貸出装置10の識別情報を含む。また予約管理装置70は、予約情報をユーザが貸し出しを希望する貸出装置10へ送信する(step04)。貸出装置10は、受信した予約情報を貸出側予約データベースに記録する。
【0015】
例えば、予約管理装置70は、ユーザが貸し出しを希望する貸出装置10において貸出希望時刻にバッテリの在庫があることを確認出来たら、当該予約リクエストが受諾可能と判定する。予約管理装置70が貸出装置10毎のバッテリの在庫状況が記録されたデータベースを有しており、予約管理装置70が該データベースを参照して予約リクエストの受諾の可否を判定してもよい。あるいは、予約管理装置70が予約リクエストを取得する都度、ユーザが貸し出しを希望する貸出装置10に貸出希望時刻にバッテリの在庫があることを問い合わせ、貸出装置10から受諾の可否を受信するように構成してもよい。
【0016】
図4は、ユーザが貸出装置10からバッテリを借りる時のフローチャートを示す。図4に示すように、ユーザは貸出希望時刻に貸出装置10へ行き、貸出装置10へユーザ識別情報を入力する(step11)。貸出装置10は、ユーザ識別情報を取得すると、貸出側予約データベースを参照し、当該ユーザによる予約の有無を確認する(step12)。貸出装置10は、当該ユーザの予約があることを確認すると(step12:yes)、当該ユーザに充電済みのバッテリを貸し出す(step13)。貸出装置10は、当該ユーザの予約がない場合(step12:no)、ユーザ識別情報を再度取得する(step11)。
【0017】
図5は、貸出装置10のブロック図である。図5に示すように、貸出装置10は、バッテリを収容するラック部11と、バッテリを充電する充電部12と、ユーザ端末40からユーザ識別情報を読み取る読取部13と、各種データベースを記録する記録部14と、各部の動作を制御する制御部20とを有する。ラック部11には、バッテリの盗難を防止するロック部と、貸出時のみバッテリのロックを解除するロック解除部とが設けられていてもよい。
【0018】
制御部20は、在庫管理部21と、充電制御部22と、通信部23とを有している。在庫管理部21は、貸出装置10におけるバッテリの在庫の状況を把握する。充電制御部22は、どのバッテリをどのタイミングで充電すべきかなど、充電部12の動作を制御する。通信部23は、予約管理装置70や配送管理装置50と通信する。
【0019】
図6は、在庫管理部21が運用する在庫管理データベースの一例を示す図である。図6に示すように在庫管理部21は、個々のバッテリを識別可能なバッテリ識別情報(バッテリID)を、各々のバッテリの情報と関連付けて在庫管理データベースに記録している。在庫管理データベースには、各々のバッテリの情報として例えば、充電率、充電開始時刻、充電終了見込み時刻、回収希望の有無、劣化度などが記録されている。
【0020】
充電率とは、各々のバッテリの充電されている度合いである。本例では、充電率が90%(第一閾値)以上のバッテリを、ユーザへ貸し出す。第一閾値とは、貸し出すバッテリの最低充電率を示す値である。この第一閾値は、サービスを提供するにあたり、ユーザとの間で契約により定められる値である。この契約により、ユーザへは第一閾値以上に充電された充電済みのバッテリが貸し出される。本例の場合、8:00現在において充電率が90%以上のバッテリは、バッテリID:0007~0010のバッテリである。これらバッテリID:0007~0010のバッテリは、配送者により8:00に配送されたバッテリである。
【0021】
充電開始時刻および充電終了見込み時刻は、各々のバッテリの充電率に基づいて充電制御部22により算出される。本例では、仮に、充電部12は1個のバッテリを一時間あたり充電率が5%上昇するように充電可能であるものとする。また、2023年2月10日の8時現在で、充電部12はバッテリID:0005(充電率が85%)のバッテリを充電中であり、9時に当該バッテリへの充電が終了する予定である。また、充電部12は、バッテリID:0006(充電率が80%)のバッテリへの充電を9時に開始し、11時に当該バッテリへの充電を終了する予定である。また、充電部12は、バッテリID:0004(充電率が70%)のバッテリへの充電を11時に開始し、15時に当該バッテリへの充電を終了する予定である。また、充電部12は、バッテリID:0003(充電率が50%)のバッテリへの充電を15時に開始し、23時に当該バッテリへの充電を終了する予定である。
【0022】
充電部12の充電能力は、貸出装置10が電力会社と契約している契約に従って定められる。あるいは、太陽光発電設備など時間によって発電容量が変化する電力源に貸出装置10が接続されている場合には、充電部12の充電能力は時間や天候などによって変化することもある。
【0023】
本例において、充電制御部22は、充電率が第一閾値未満のバッテリのうち、充電率が高いバッテリから順に充電を開始するように充電スケジュールを作成する。したがって、2023年2月10日の8時現在で、充電部12は、充電スケジュールに従い、充電率が90%未満のバッテリのうち、充電率が最も高いバッテリID:0005(充電率が85%)のバッテリを充電中である。
【0024】
また、充電制御部22は、充電率が第一閾値よりも低い第二閾値未満のバッテリへは充電しないように充電スケジュールを作成する。例えば、充電制御部22は、充電率が50%(第二閾値)未満のバッテリへは充電しないようにする。充電率が50%未満のバッテリについては、貸出装置10で充電を行わずに、充電工場3で充電を行うように、配送者に回収を希望するバッテリとして設定するようにしてもよい。
【0025】
また、充電制御部22は、充電中のバッテリの充電率が第一閾値以上となったらそのバッテリへの充電を中止し、充電していないバッテリの中から最も充電率の高いバッテリへの充電を開始するように充電スケジュールを作成する。したがって、2023年2月10日の8時現在で、充電制御部22は、充電中のバッテリID:0005のバッテリの充電が90%以上になったら(9時に充電終了予定)、充電していないバッテリの中の最も充電率が高いバッテリID:0006(充電率が80%)のバッテリへの充電を開始する充電スケジュールである。
【0026】
また、充電制御部22は、ユーザからバッテリが返却されたときに、充電中のバッテリの内でその返却されたバッテリよりも充電率の低いバッテリがある場合、その充電率の低いバッテリへの充電を中止し、返却されたバッテリへの充電を開始するように充電スケジュールを作成する。充電制御部22は、返却されたバッテリの充電率が充電中のバッテリの充電率よりも低い場合には充電の切り替えは行わない。
【0027】
回収希望の有無は、当該バッテリを配送者に回収を希望するか否かを示す情報である。ここでは、回収希望に「1」が付されている場合に回収を希望するバッテリであることを示し、回収希望に「0」が付されている場合に回収を希望しないバッテリであることを示している。在庫管理部21は、例えば、充電率が50%未満のバッテリを回収希望と判定したり、在庫しているバッテリの内で最も充電率が低いバッテリを含む一つ以上のバッテリを回収希望と判定する。あるいは在庫管理部21は、次回の配送時刻までに充電が完了しないバッテリを回収希望と判定してもよい。本例では、バッテリID:0001,0002のバッテリが回収を希望するバッテリである。
【0028】
劣化度は、当該バッテリの劣化の度合いを示す情報である。例えば、バッテリは充放電を繰り返すと劣化が進む。あるいは、充電率が高い状態で充電されると劣化が進む。在庫管理部21は、充電回数、貸出回数、いくつの充電率の時に充電されたか、などの充電履歴情報に基づき劣化度合いを算出する。充電履歴情報は、例えばバッテリに搭載されたメモリに記録されていたり、各々のバッテリの情報を管理するバッテリ情報管理装置により管理されていてもよい。
【0029】
図7は、在庫管理部21が次回配送時刻に配送を希望するバッテリの数を算出する手法を説明するための図である。なお、貸出装置10が配送管理装置50へ配送を希望するバッテリの数を算出する方法は以下の例に限られない。ここでは算出方法の一例を、図7を用いて説明する。
【0030】
図7で説明する手法においては、次回の配送時刻までに所定の個数以上のバッテリを在庫として確保するように貸出装置10が構成されている。この場合、以下の方法によって次回の配送時刻における配送を希望するバッテリの個数を算出することができる。
【0031】
図7に示したように、貸出装置10は、配送管理装置50から次回の配送時刻13:00を受信しているものとする。また、この貸出装置10における最低在庫個数は7個であるとする。また、本例における現在時刻は2023年2月10日8:00であるとする。
【0032】
貸出装置10の在庫管理部21は、現在時刻での充電率が90%以上の貸出可能なバッテリの数(在庫個数)を特定する。図7の例では在庫個数は4個である。また、在庫管理部21は、充電制御部22の充電スケジュールに基づき次回配送時刻(13:00)までに90%以上に充電されるバッテリの数を特定する。図7の例では次回配送時刻までに充電されるバッテリの数は6個である。また、在庫管理部21は過去の貸出履歴に基づく将来の需要予測情報に基づき、現在時刻から次回配送時刻までに貸し出されるバッテリの数(需要個数)を特定する。図7の例では需要個数は15個である。
【0033】
なお、需要個数の予測は、一時間毎の貸出個数を曜日ごとに統計処理することにより行うことができる。例えば、金曜日の12時~13時の貸出個数の平均が1個であると統計処理で算出されている場合は、2023年2月10日金曜日の12時~13時の貸出個数が1個であると予測してもよい。なお、このような需要予測は、様々な公知の手法を用いることができる。
【0034】
在庫管理部21は、現在時刻での貸出可能な在庫のバッテリの数(A)、次回配送時刻までに充電されるバッテリの数(B)、現在時刻から次回配送時刻までに貸し出されるバッテリの個数(C)、最低在庫個数(D)に基づき、次回配送時刻に配送を希望するバッテリの搬入希望個数(E)を算出する。具体的には、次回配送時刻に配送を希望するバッテリの搬入希望個数(E)は下記の式で算出される。
E=C+D-A-B
図7の例によれば、在庫管理部21は、次回配送時刻に配送を希望するバッテリの搬入希望個数(E)を12個と算出する。
【0035】
このようにして在庫管理部21が次回の搬入希望個数を算出する。通信部23は、算出された次回の搬入希望個数を、各々の貸出装置10を識別可能な貸出装置識別情報とともに配送管理装置50に送信する。通信部23は、配送管理装置50に、次回の搬入希望個数を次回の配送時刻の所定時間前に送信したり、配送時刻に関係なく所定時間間隔で送信したりするように構成することができる。なお本実施形態では、通信部23は、図6に示した在庫管理データベースに基づき、回収希望としたバッテリの回収希望個数も配送管理装置50に送信する。
【0036】
また、上述したように充電率の高いバッテリから充電するように構成されている場合には、バッテリが返却される度に充電の優先順位が変動し、次回の搬入時刻までに充電が完了するバッテリの個数が変動する場合がある。このため、通信部23は、貸出装置10のバッテリの在庫状況が変動するたびに、搬入希望個数を送信するように構成されていてもよい。
【0037】
あるいは、通信部23が回収を希望するバッテリの数を送信する場合、返却されるバッテリの状況に応じて回収を希望するバッテリの個数が変動する。このため、通信部23は、貸出装置10のバッテリの在庫状況が変動するたびに、搬入希望個数とともに回収希望個数を送信するように構成されていてもよい。
【0038】
配送管理装置50は、各々の貸出装置10から受信した貸出装置識別情報、次回の搬入希望個数および次回の回収希望個数に基づき、図8に示した分配スケジュールを作成する。図8に示したように分配スケジュールは、どの貸出装置10に、いつ(配送予定時刻)、何個の充電済みバッテリを配送し、何個の使用済みバッテリを回収するか、といった情報を含んでいる。本例の分配スケジュールでは、「PA」の貸出装置10に、8:00と13:00に4個、23:00に5個の充電済みバッテリを配送し、8:00と13:00に2個の使用済みバッテリを回収するようになっている。
【0039】
配送管理装置50は、個々の貸出装置10の所在地がそれぞれの貸出装置識別情報とともに記録された所在地データベースを有している。この所在地データベースと、次回の搬入希望個数に基づき、分配スケジュールを作成してもよい。この際には、次回の搬入希望個数の多い貸出装置10に早めにバッテリが配送されるようなスケジュールを作成することが好ましい。また、この際になるべく配送ルートに無駄が生じないように配送ルートが設定される。例えば配送管理装置50は、貸出装置10の搬入希望個数に応じた重み付け係数と、貸出装置10間の距離に基づく係数とを考慮して、最適な配送ルートを算出することができる。
【0040】
配送管理装置50は、図8に示した分配スケジュールに基づき、各々の貸出装置10に送信する配送スケジュールを作成する。具体的には、分配スケジュールから、各々の貸出装置10ごとに配送時刻、配送個数、回収予定個数を抽出した情報が配送スケジュールとなる。
【0041】
図9は、配送管理装置50がPAの貸出装置10に送信する配送スケジュールの一例を示す図である。図9に示すPAの貸出装置10の配送スケジュールは、図8に示す分配スケジュールに基づいて作成されたものである。図9に示すように、PAの貸出装置10には、次回の配送時刻と、そのときに配送する充電済みのバッテリの配送個数と、そのときに回収する使用済みのバッテリの回収予定個数を含む情報が、配送管理装置50から送信される。PAの貸出装置10は、通信部23により、配送者の配送管理装置50から、配送スケジュールを受信する。
【0042】
貸出装置10の通信部23は、配送管理装置50へ、次回配送時刻までに充電率が第一閾値とならないバッテリの個数を送信する。また、通信部23は、配送管理装置50へ、次回配送時刻までに充電率が第一閾値となるバッテリの個数を送信する。配送管理装置50は、バッテリの充電率に関するこれらの情報に基づき、貸出装置10に送信する配送スケジュールを作成する。
【0043】
なお、充電工場3の充電スケジュールの都合、あるいは、他の貸出装置10の予約状況などに鑑みて、配送管理装置50は、貸出装置10から受信した配送個数通りの個数の配送スケジュールを貸出装置10に送信するとは限られない。同様に、配送者の運用する配送車両の積載具合などにより、配送管理装置50は、貸出装置10から受信した回収個数通りの個数の配送スケジュールを貸出装置10に送信するとは限られない。
【0044】
また、配送管理装置50は、貸出装置10が存在する地域の交通情報を取得し、交通情報を加味して配送スケジュールを作成してもよい。例えば、特定の貸出装置10の周辺に渋滞が発生した場合など、当該貸出装置10への配送時刻に遅延が生じることが予想される場合には、配送管理装置50は、貸出装置10へ配送時刻が遅延しそうなことを示す情報を送信するように構成してもよい。
【0045】
この場合、貸出装置10が通信部23で当該遅延しそうなことを示す情報を受信した場合に、充電制御部22は充電スケジュールを更新するように構成してもよい。本実施形態では、次回の配送時刻に所定個数の貸出可能なバッテリが在庫されているように構成されているため、次回の配送時刻が変更になる場合には、当該変更の予告が貸出装置10に通知されるように構成されていることが好ましい。
【0046】
また、貸出装置10には、受け付けられた予約リクエストに基づく予約情報が、予約管理装置70から送信される。貸出装置10は、通信部23により、予約管理装置70から予約情報を受信する。通信部23は、予約管理装置70へ、次回配送時刻までに充電率が第一閾値になり充電が完了するバッテリの個数を送信する。予約管理装置70は、各貸出装置10におけるバッテリの充電状況に関する情報に基づき、バッテリの貸し出し予約を管理する。
【0047】
上述したように、本実施形態に係る可搬式バッテリの貸出装置10は、
ユーザへ充電済みバッテリの貸し出しおよび使用済みバッテリの返却を行ってもらい、配送者に使用済みバッテリの回収および充電済みバッテリの配送をしてもらう、可搬式バッテリの貸出装置であって、
バッテリへの充電を制御する充電制御部22を有し、
充電制御部22は、充電率が第一閾値(例えば90%)未満のバッテリのうち、充電率の高いバッテリから充電する。
【0048】
本実施形態に係る貸出装置10によれば、貸出装置10がユーザへ貸し出すバッテリは、充電率が所定値以上である必要がある。充電率が第一閾値(例えば90%)以上となるまで充電されたバッテリが、貸出可能バッテリとなる。
バッテリへ供給できる電流はブレーカなどで制限されるため、一斉に充電できる充電台数には制限がある。本実施形態とは異なり、返却されたバッテリから順に一定の電流で充電する場合には、充電率が低いバッテリの充電完了には長時間を要し、この間、他のバッテリを充電することができない。
一方で本実施形態によれば、充電率の高いバッテリから充電される。このため、充電率が低いバッテリを充電する代わりに、充電率が高いバッテリを充電して、短時間で貸出可能バッテリを多数確保することができる。例えば、充電完了までに要する時間が10時間かかるバッテリを1つ充電する代わりに、充電完了までに要する時間が3時間かかるバッテリを3つも用意できる。
なお本実施形態の貸出装置10においては、配送者によって使用済みバッテリが回収され、新たな充電済みバッテリが配送される。このため、充電率が低く充電に時間がかかるバッテリは配送者によって回収され、新たな充電済みの貸出可能なバッテリが配送される。このため、充電率の高いバッテリから充電する本実施形態の充電手法は、配送者によりバッテリの回収・配送がなされる貸出装置10に適している。また、配送者から充電済みのバッテリが配送されるので、貸出装置10自体が大量のバッテリを充電する必要がない。貸出装置10が大型の充電装置を必要としないため、あるいは、電力事業者と大容量の電力を受け取る契約を必要としないため、低コストで貸出装置10を設置することができる。
【0049】
また本実施形態に係る貸出装置10によれば、
充電制御部22は、充電率が第一閾値よりも低い第二閾値(例えば50%)未満のバッテリへは充電しない。
【0050】
上述した実施形態では、例えば充電率が50%未満のバッテリを配送者が回収し充電工場3で充電する例を説明した。充電工場3では、大容量の電気を扱うことが必要であるため高圧電力の契約となる。このため、低圧電力の契約による各貸出装置10でそれぞれ充電する場合よりも充電コストは下がる。また、電力量料金の1kWhあたりの単価も低圧電力の方が高圧電力よりも高価である。したがって、充電率の低いバッテリを各貸出装置10で充電するより充電工場3で充電した方が生産コストを低減できる。
【0051】
また本実施形態に係る貸出装置10によれば、
充電制御部22は、充電中のバッテリの充電率が第一閾値以上となったら充電を中止し、充電していないバッテリの中から最も充電率の高いバッテリへの充電を開始する。
【0052】
上述した実施形態においては、例えば図6の在庫管理データベースを参照して、充電中のバッテリID:0005のバッテリの充電が90%以上になったら、その充電を中止して、充電していないバッテリの中の最も充電率が高いバッテリID:0006(充電率が80%)のバッテリへの充電を開始する例を説明した。この構成によれば、充電率が高いバッテリを先に充電することで、貸出可能バッテリを短時間で多数確保できる。
【0053】
また本実施形態に係る貸出装置10によれば、
充電制御部22は、ユーザからバッテリが返却されたときに、充電中のバッテリの内で返却されたバッテリよりも充電率の低いバッテリへの充電を中止し、返却されたバッテリへの充電を開始する。
【0054】
上述した実施形態では、返却されたバッテリの充電率が充電中のバッテリの充電率よりも高い場合には充電率の低いバッテリへの充電を中止して返却された充電率の高いバッテリへの充電を開始し、返却されたバッテリの充電率が充電中のバッテリの充電率よりも低い場合には充電中のバッテリへの充電を継続する例を説明した。返却されたバッテリでも充電率が高いバッテリがある。バッテリが返却される都度、充電状況に応じて充電スケジュールを見直すことにより、貸出可能なバッテリをより多く確保しやすい。
【0055】
また本実施形態に係る貸出装置10によれば、
貸出装置10は、配送者の配送管理装置50から、次回配送時刻を含む配送スケジュールを受信する通信部23を有し、
通信部23は配送管理装置50へ、次回配送時刻までに充電率が第一閾値とならないバッテリの個数を送信する。
【0056】
上述した実施形態では、例えば、次回配送時刻までの充電未完了のバッテリ数に関する情報に基づき、配送管理装置50が使用済みバッテリの回収予定個数を含む配送スケジュールを作成する例を説明した。貸出不可能なバッテリは、配送者に回収してもらうバッテリである。配送者は回収予定個数を含む配送スケジュールに基づき、回収するために必要なスペース(例えば配送車両の積載スペース)を前もって把握でき、効率的にバッテリを回収することができる。
【0057】
また本実施形態に係る貸出装置10によれば、
貸出装置10は、配送者の配送管理装置50から、次回配送時刻を含む配送スケジュールを受信する通信部23を有し、
通信部23は配送管理装置50へ、次回配送時刻までに充電率が第一閾値となるバッテリの個数を送信する。
【0058】
上述した実施形態では、例えば、次回配送時刻までの充電完了のバッテリ数に関する情報に基づき、配送管理装置50が充電済みバッテリの配送個数を含む配送スケジュールを作成する例を説明した。配送者は、貸出装置10で用意できる充電済みバッテリの個数を把握できるので、配送者が配送すべきバッテリの個数を精度良く見積もりやすい。
【0059】
また本実施形態に係る貸出装置10によれば、
貸出装置10は、配送者の配送管理装置50から次回配送時刻を含む配送スケジュール、および、バッテリの貸し出し予約を管理する予約管理装置70から予約情報を受信する通信部23を有し、
通信部23は予約管理装置70へ、次回配送時刻までに充電率が第一閾値となるバッテリの個数を送信する。
【0060】
上述した実施形態では、例えば、次回配送時刻までの充電完了のバッテリ数に関する情報に基づき、予約管理装置70がバッテリの貸し出し予約を管理する例を説明した。予約管理装置70は、貸出装置10で用意できる充電済みバッテリの個数を把握できるので、貸出可能なバッテリの個数を精度良く見積もりやすい。
【0061】
また本実施形態に係る貸出装置10によれば、
貸出装置10は、配送者の配送管理装置50から、次回配送時刻を含む配送スケジュールを受信する通信部23を有し、
充電制御部22は、ユーザへの貸出履歴に基づく将来の需要予測情報に基づく次回配送時刻までの需要個数と、次回配送時刻までに充電率が第一閾値となるバッテリの個数と、に基づき、配送を希望する充電済みバッテリの個数を配送管理装置50に送信する。
このような構成によれば、配送管理装置50は、次回配送時刻までのバッテリの需要個数と次回配送時刻までの充電完了のバッテリ数により算出されたバッテリの搬入希望個数に基づいて、バッテリの配送個数を含む配送スケジュールを作成できる。このため、配送者は、貸出装置10で用意できる充電済みバッテリの個数をさらに正確に把握でき、配送者が配送すべきバッテリの個数を精度良く見積もりやすい。
【0062】
(変形例)
なお、貸出装置10が次回配送時刻までの需要個数や充電見込み個数などを算出するために、配送管理装置50は、次回配送時に配送するバッテリの個数を特定しない段階で、次回配送時刻のみを先に貸出装置10に送信するように構成されていてもよい。あるいは、配送時刻は貸出装置10毎に毎日8:00と23:00の二回などと予め定められていてもよい。またこのように配送時刻が原則的には定められているものの、充電工場3の充電スケジュールや他の貸出装置10の貸し出し状況などに応じて、配送管理装置50から修正された配送時刻が貸出装置10に送信されるように構成されていてもよい。
【0063】
また、上述した実施形態では、商用電源2あるいは他の電力源からバッテリを充電する例を説明したが、本開示はこれに限られない。例えば、貸出装置10内に在庫している複数のバッテリ間で電力を分配するように構成してもよい。このように構成した場合、在庫管理部21は、個々のバッテリの充電率を記録する。充電制御部22は、充電率が第一閾値より低い第三閾値以上のバッテリを特定し、特定したそれらのバッテリのうち充電率の低いバッテリから放電させて、放電される電力で充電率の高いバッテリを充電する、ようにしてもよい。ここでいう第三閾値とは、放電限界または回収目安となる充電率の下限の値である。例えば第三閾値は充電率10%などとすることができる。本開示が提供するサービスにおいては、配送者が充電済みのバッテリを配送し、充電率の低いバッテリを回収してくれるため、このような充電方法が適している。
【0064】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0065】
2 商用電源
3 充電工場
10 貸出装置
11 ラック部
12 充電部
13 読取部
14 記録部
20 制御部
21 在庫管理部
22 充電制御部
23 通信部
40 ユーザ端末
50 配送管理装置
70 予約管理装置
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