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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150201
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】水上の上部工の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
E02B3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063495
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】濱田 洋志
(72)【発明者】
【氏名】桑原 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】網野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】若松 宏知
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA28
2D118BA03
2D118BA05
2D118FA08
2D118FB21
2D118GA07
(57)【要約】
【課題】水底地盤に立設された杭に設置したプレキャストコンクリートブロックの下方での作業を行わずに、効率的に上部工を構築できる水上の上部工の構築方法を提供する。
【解決手段】挿通孔12が設けられている複数の分割部材10を、貫通孔3の周方向に並べて配設して、挿通孔12に挿通されている支持具14により、それぞれの分割部材10がプレキャストコンクリートブロック2の底面に沿ってスライド移動および回転可能に支持された状態とし、プレキャストコンクリートブロック2の上から、それぞれの分割部材10を杭40の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの分割部材10の円弧状の前端部11を杭40の外周面に外嵌めした状態にして、複数の分割部材10により杭40の外周面とプレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底地盤に立設されている杭が遊挿可能な上下に貫通する貫通孔を有するプレキャストコンクリートブロックを、前記貫通孔に前記杭を遊挿させた状態で所定位置に配置する据付工程と、前記杭の外周面と前記貫通孔の下部の内周面との間のすき間を底板によって塞いだ状態にする閉塞工程と、前記杭の外周面と前記貫通孔の内周面との間に中詰めコンクリートを充填して固化させる打設工程とを行うことで、前記プレキャストコンクリートブロックと固化された前記中詰めコンクリートとを一体化した上部工を前記杭の上部に固定する水上の上部工の構築方法において、
前記据付工程を行う前に、前記プレキャストコンクリートブロックの底面に沿って、前記底板を構成する複数の分割部材を前記貫通孔の周方向に並べて配設して、それぞれの前記分割部材には挿通孔を設けておき、上部が前記プレキャストコンクリートブロックの底部に固定されていて前記挿通孔に挿通されている支持具により、それぞれの前記分割部材が前記プレキャストコンクリートブロックの底面に沿ってスライド移動および回転可能に支持された状態とし、
前記据付工程では、平面視でそれぞれの前記分割部材を前記杭の外周面よりも外側に配置した状態で、前記貫通孔に前記杭を遊挿した状態とし、
前記閉塞工程では、前記プレキャストコンクリートブロックの上からの作業で、それぞれの前記分割部材を前記杭の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの前記分割部材の円弧状の前端部を前記杭の外周面に当接させた状態にして、複数の前記分割部材により前記すき間を塞いだ状態にすることを特徴とする水上の上部工の構築方法。
【請求項2】
前記挿通孔として、それぞれの前記分割部材に前記貫通孔の中央に向かって延在する長孔を設けておく請求項1に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項3】
それぞれの前記分割部材に1組ずつ前記長孔と前記支持具を設けて、前記分割部材が前記支持具を回転中心にして回転可能に支持された状態にする請求項2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項4】
それぞれの前記分割部材の前部に上方に延在する棒状部材を設けておき、
前記据付工程では、それぞれの前記棒状部材を前記杭の外周面と前記貫通孔の内周面との間に挿通させた状態で、前記貫通孔に前記杭を遊挿させた状態とし、
前記閉塞工程では、前記プレキャストコンクリートブロックの上から、それぞれの前記棒状部材を前記杭の外周面に向けて移動させることで、それぞれの前記分割部材を前記杭の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの前記分割部材の前記前端部を前記杭の外周面に当接させた状態にする請求項1~3のいずれかに記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項5】
それぞれの前記分割部材に対して、平面視で前記貫通孔の内周面から前記貫通孔の中央に向かって伸長可能な伸長部材を、前記貫通孔の内周面と前記分割部材の前部にある係合部との間に介在させた状態とし、
前記据付工程では、それぞれの前記伸長部材を縮めた状態で、前記貫通孔に前記杭を遊挿し、
前記閉塞工程では、それぞれの前記伸長部材を伸長させることで、それぞれの前記分割部材を前記杭の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの前記分割部材の前記前端部を前記杭の外周面に当接させた状態にする請求項1~3のいずれかに記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項6】
前記貫通孔の周方向に延在する環状の締結バンドを、それぞれの前記分割部材の前部にある係合部の外側に巻き付けた状態とし、
前記据付工程では、平面視での前記締結バンドの内径を前記杭の外径よりも大きくした状態で、前記貫通孔に前記杭を遊挿した状態とし、
前記閉塞工程では、前記締結バンドを縮径することで、それぞれの前記分割部材を前記杭の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの前記分割部材の前記前端部を前記杭の外周面に当接させた状態にする請求項1~3のいずれかに記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項7】
それぞれの前記分割部材の前部にある係合部に、上方に延在する弾性部材の先端部を押し当てた状態にしておき、
前記据付工程では、それぞれの前記弾性部材を前記杭の外周面と前記貫通孔の内周面との間に挿通させた状態で、前記貫通孔に前記杭を遊挿した状態とし、
前記閉塞工程では、前記プレキャストコンクリートブロックの上から、それぞれの前記弾性部材の後部を下方に向かって押して、前記弾性部材の中途部分を前記貫通孔の内周面に当接させ、前記弾性部材の前部を前記貫通孔の内周面から前記係合部に向けて湾曲させた状態で、それぞれの前記分割部材を前記杭の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの前記分割部材の前記前端部を前記杭の外周面に当接させた状態にする請求項1~3のいずれかに記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項8】
前記周方向に隣り合う前記分割部材を交互に、上段の前記分割部材と、上段の前記分割部材よりも下方に配置される下段の前記分割部材とに分けた構造とし、
複数の前記分割部材により前記すき間を塞いだ状態では、前記周方向に隣り合う前記分割部材の一部の領域どうしが上下に重なり合った状態にする請求項1~3のいずれかに記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項9】
前記据付工程を行う前に、平面視で前記杭の外周面から外側に向かって延在する架台を前記杭の所定高さに設置しておき、
前記閉塞工程では、それぞれの前記分割部材の前記前端部を前記杭の外周面に当接させた状態で、それぞれの前記分割部材の前部を前記架台に支持させた状態にする請求項1~3のいずれかに記載の水上の上部工の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上の上部工の構築方法に関し、さらに詳しくは、水底地盤に立設された杭に設置したプレキャストコンクリートブロックの下方での作業を行わずに、効率的に上部工を構築できる水上の上部工の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水底地盤に立設された杭に支持される桟橋等の水上の上部工を構築する方法としては、例えば、水上において鉄筋を配筋した後に型枠を設置して、施工現場で型枠内に生コンクリートを打設して固化させる方法がある。このような上部工の構築方法では、水上に仮設足場を構築する必要があり、水上での煩雑な作業も多いため、施工効率を向上させるには限界がある。
【0003】
そこで、水上構造物(上部工)の構築方法として、杭が挿通する杭孔(貫通孔)を有するプレキャストコンクリート版を地上で形成しておき、プレキャストコンクリート版の杭孔に杭の頭部を遊挿した状態で杭に対してプレキャストコンクリート版を固定し、プレキャストコンクリート版の外回りに足場を取付ける構築方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構築方法では、プレキャストコンクリート版の杭孔と杭の外周面との間のすき間を、プレキャストコンクリート版の下方に設けた漏れ止め板で塞いだ状態にして、前述したすき間に無収縮モルタルを充填することで、プレキャストコンクリート版を杭の頭部に固定している。しかしながら、特許文献1で提案されている構築方法では、プレキャストコンクリート版の杭孔と杭の外周面との間のすき間を漏れ止め板で塞ぐ作業を、杭に設置したプレキャストコンクリート版の下方から行う必要があり、潜水士などの作業者がプレキャストコンクリート版の下に入って煩雑な作業を行う必要がある。それ故、水上の上部工を構築する施工効率や作業者の安全性を向上させるには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-107631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水底地盤に立設された杭に設置したプレキャストコンクリートブロックの下方での作業を行わずに、効率的に上部工を構築できる水上の上部工の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の水上の上部工の構築方法は、水底地盤に立設されている杭が遊挿可能な上下に貫通する貫通孔を有するプレキャストコンクリートブロックを、前記貫通孔に前記杭を遊挿させた状態で所定位置に配置する据付工程と、前記杭の外周面と前記貫通孔の下部の内周面との間のすき間を底板によって塞いだ状態にする閉塞工程と、前記杭の外周面と前記貫通孔の内周面との間に中詰めコンクリートを充填して固化させる打設工程とを行うことで、前記プレキャストコンクリートブロックと固化された前記中詰めコンクリートとを一体化した上部工を前記杭の上部に固定する水上の上部工の構築方法において、前記据付工程を行う前に、前記プレキャストコンクリートブロックの底面に沿って、前記底板を構成する複数の分割部材を前記貫通孔の周方向に並べて配設して、それぞれの前記分割部材には挿通孔を設けておき、上部が前記プレキャストコンクリートブロックの底部に固定されていて前記挿通孔に挿通されている支持具により、それぞれの前記分割部材が前記プレキャストコンクリートブロックの底面に沿ってスライド移動および回転可能に支持された状態とし、前記据付工程では、平面視でそれぞれの前記分割部材を前記杭の外周面よりも外側に配置した状態で、前記貫通孔に前記杭を遊挿した状態とし、前記閉塞工程では、前記プレキャストコンクリートブロックの上からの作業で、それぞれの前記分割部材を前記杭の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの前記分割部材の円弧状の前端部を前記杭の外周面に当接させた状態にして、複数の前記分割部材により前記すき間を塞いだ状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、据付工程を行う前に、挿通孔を設けた複数の分割部材をプレキャストコンクリートブロックの貫通孔の周方向に並べて配設して、上部がプレキャストコンクリートブロックの底部に固定されていて分割部材の挿通孔に挿通されている支持具により、それぞれの分割部材がプレキャストコンクリートブロックの底面に沿ってスライド移動および回転可能に支持された状態にする。そして、閉塞工程では、プレキャストコンクリートブロックの上からの作業で、それぞれの分割部材を杭の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの分割部材の円弧状の前端部を杭の外周面に当接させた状態にする。これにより、プレキャストコンクリートブロックの貫通孔に遊挿された状態の杭の中心が、貫通孔の中心からずれている場合にも、プレキャストコンクリートブロックの上からの作業で、杭の外周面と貫通孔の下部の内周面との間のすき間を複数の分割部材で塞ぐことが可能になる。それ故、杭に設置したプレキャストコンクリートブロックの下方での作業を行わずに水上の上部工を簡易に効率よく構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の水上の上部工の構築方法で杭の上部に構築した上部工を側面視で例示する説明図である。
図2】上部工を構成するプレキャストコンクリートブロックを杭に据付ける前の状況を断面視で例示する説明図である。
図3図2の支持具を拡大して例示する説明図であり、図2の(a)は上段の分割部材を支持している支持具を示し、図2の(b)は下段の分割部材を支持している支持具を示している。
図4】上部工を構成するプレキャストコンクリートブロックを杭に据付ける前の状況を上から見た平面視で例示する説明図である。
図5図2および図4のプレキャストコンクリートブロックを杭に据付けた状況を断面視で例示する説明図である。
図6図5のプレキャストコンクリートブロックを上から見た平面視で例示する説明図である。
図7図5のプレキャストコンクリートブロックを下から見た底面視で例示する説明図である。
図8図5の状況から分割部材によって、杭の外周面とプレキャストコンクリートブロックに設けている貫通孔の下部の内周面との間のすき間を塞いだ状況を断面視で例示する説明図である。
図9図8のプレキャストコンクリートブロックを上から見た平面視で例示する説明図である。
図10図8のプレキャストコンクリートブロックを下から見た底面視で例示する説明図である。
図11図8の状況からプレキャストコンクリートブロックに設けている貫通孔に中詰めコンクリートを充填して固化させた状況を断面視で例示する説明図である。
図12】杭に設置したプレキャストコンクリートブロックの底面に沿って配設している分割部材を、伸長部材を用いて杭の外周面に向かって移動させている状況を断面視で例示する説明図である。
図13図12の伸長部材を拡大して例示する説明図である。
図14図12の状況から分割部材によって、杭の外周面とプレキャストコンクリートブロックに設けている貫通孔の下部の内周面との間のすき間を塞いだ状況を断面視で例示する説明図である。
図15】杭に設置したプレキャストコンクリートブロックの底面に沿って配設している分割部材を、締結バンドを用いて杭の外周面に向かってスライド移動させる前の状況を上から見た平面視で例示する説明図である。
図16図15の締結バンドを拡大して例示する説明図である。
図17図15の分割部材を、締結バンドを用いて杭の外周面に向かってスライド移動させている状況を断面視で例示する説明図である。
図18図15の状況から分割部材によって、杭の外周面とプレキャストコンクリートブロックに設けている貫通孔の下部の内周面との間のすき間を塞いだ状況を上から見た平面視で例示する説明図である。
図19図18の状況を断面視で例示する説明図である。
図20】杭に設置したプレキャストコンクリートブロックの底面に沿って配設している別の実施形態の分割部材を、杭の外周面に向かってスライド移動させる前の状況を上から見た平面視で例示する説明図である。
図21】杭に設置したプレキャストコンクリートブロックの底面に沿って配設している分割部材を、弾性部材を用いて杭の外周面までスライド移動させた状況を断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の水上の上部工の構築方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1に例示するように、本発明は、水底地盤WBに打設された杭40の上部に固定される桟橋等の水上の上部工1を構築する方法である。杭40としては、例えば、鋼管杭やコンクリート杭などが例示できる。この実施形態では、1本の杭40の上部に固定される上部工1を構築する場合を例示するが、本発明では2本以上の杭40の上部に固定される上部工1を構築することもできる。この実施形態では、杭40の上部が水上に突出している場合を例示しているが、杭40の上部が水上から突出していない場合もある。
【0011】
図2および図4に例示するように、本発明では、陸上や船上などで予め作製したプレキャストコンクリートブロック2を用いて上部工1を構築する。プレキャストコンクリートブロック2は、プレキャストコンクリートで形成されている。プレキャストコンクリートブロック2は、プレキャストコンクリートに鉄筋が埋設された鉄筋コンクリート構造にしてもよいし、プレキャストコンクリートに鉄筋が埋設されていない構造にすることもできる。この実施形態では、プレキャストコンクリートブロック2の外形が直方体形状に形成されている場合を例示しているが、プレキャストコンクリートブロック2の外形は直方体形状に限らず他の形状にすることもできる。
【0012】
プレキャストコンクリートブロック2は、杭40が遊挿可能な上下に貫通する貫通孔3を有している。この実施形態では、プレキャストコンクリートブロック2の中央の1ヶ所に貫通孔3が形成されている。この実施形態のプレキャストコンクリートブロック2は、プレキャストコンクリートで形成されていて貫通孔3が形成されているブロック体4と、貫通孔3に内嵌めされた上下に延在する鞘管5と、平面視で貫通孔3の内側に張り出した梁部材6と、吊金具7とを有して構成されている。
【0013】
この実施形態では、貫通孔3として、ブロック体4の下部に平面視で円形状の下部孔3bが形成されていて、下部孔3bの上方に下部孔3bよりも広い平面視で四角形状の上部孔3aが形成されている。上部孔3aと下部孔3bは上下に連通している。この実施形態では、下部孔3bに上下に延在する鞘管5が内嵌めされている。鞘管5の外周面とブロック体4を構成するプレキャストコンクリートが接着していることで、鞘管5はブロック体4に一体化されている。
【0014】
プレキャストコンクリートブロック2に鞘管5は任意に設けることができ、鞘管5を有さないプレキャストコンクリートブロック2を用いることもできる。本発明では、プレキャストコンクリートブロック2が鞘管5を有している場合には、鞘管5の内周面を貫通孔3の下部の内周面とし、プレキャストコンクリートブロック2が鞘管5を有していない場合には、貫通孔3の内側のコンクリート面を貫通孔3の下部の内周面とする。
【0015】
貫通孔3の下部の内寸(この実施形態では、鞘管5の内寸)は、杭40が遊挿可能な寸法に設定されている。貫通孔3の下部の内寸は、平面視で貫通孔3の中心位置と杭40の中心位置とを一致させた状態で貫通孔3に杭40を挿入した場合に、貫通孔3の下部の内周面と杭40の外周面との間に例えば、5cm以上20cm以下、より好ましくは10cm以上15cm以下のすき間(クリアランス)ができる寸法に設定するとよい。上部孔3aの形状は四角形状に限らず、例えば、平面視で円形状や楕円形状に形成することもできる。例えば、下部孔3bと上部孔3aを同じ形状で同じ大きさにすることもできる。
【0016】
梁部材6には、H形鋼や溝形鋼などの鉄骨を用いる。梁部材6は水平方向に延在していて、平面視で貫通孔3(鞘管5)の内側に梁部材6が張り出している。梁部材6の少なくとも一部は、平面視で貫通孔3の外側まで延在している。図2に例示するように、この実施形態では、一対の梁部材6、6が並列に間隔をあけて配置されていて、それぞれの梁部材6が貫通孔3を横断して架け渡されている。
【0017】
図4に例示するように、梁部材6は鞘管5の上部、または、鞘管5の上に配置されている。梁部材6と鞘管5は溶接などで接合することが好ましい。梁部材6の貫通孔3の内側に位置する部分が露出していて、梁部材6の貫通孔3の外側に位置する部分がブロック体4を構成するプレキャストコンクリートに埋設された構造になっている。なお、梁部材6は任意に設けることができ、梁部材6を有さないプレキャストコンクリートブロック2を用いることもできる。
【0018】
ブロック体4の上部には、プレキャストコンクリートブロック2をクレーンなどで吊り上げる際に使用する複数の吊金具7が設けられている。この実施形態では、ブロック体4の上部の四隅にそれぞれ吊金具7が配設されている。吊金具7の下部はブロック体4を構成するプレキャストコンクリートに埋設されていて、吊金具7はブロック体4に一体化されている。この実施形態では設けていないが、上部工1に係船柱などの付帯物を設ける場合には、プレキャストコンクリートブロック2(ブロック体4)に係船柱などの付帯物を一体化しておくこともできる。
【0019】
本発明の上部工1の構築方法では、上部工1を構築する施工水域において、図5図7に例示するように、プレキャストコンクリートブロック2を、貫通孔3に杭40を遊挿させた状態で所定位置に配置する据付工程を行う。次いで、図8図10に例示するように、杭40の外周面とプレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを底板9によって塞いだ状態にする閉塞工程を行う。その後、図11に例示するように、杭40の外周面とプレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の内周面との間に中詰めコンクリート8を充填して固化させる打設工程を行うことで、プレキャストコンクリートブロック2と固化された中詰めコンクリート8とを一体化した上部工1を杭40の上部に固定する。
【0020】
本発明では、前述した据付工程を行う前に陸上や船上において、図2図4に例示するように、プレキャストコンクリートブロック2の底面に沿って、底板9を構成する複数の分割部材10をプレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の周方向に並べて配設しておく。分割部材10は板状の部材であり、例えば、金属や樹脂、木材などで形成される。分割部材10の厚さは適宜決定できるが、例えば、5mm~20mm程度である。この実施形態では、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に対して6枚の分割部材10を配設している。分割部材10の数は複数であれば特に限定されず、例えば、6枚以下にすることもできるし、6枚以上にすることもできる。
【0021】
図3に例示するように、この実施形態では、貫通孔3の周方向に隣り合う分割部材10を交互に、上段の分割部材10Aと、上段の分割部材10Aよりも下方に配置される下段の分割部材10Bとに分けた構造にしている。貫通孔3の中央側に位置するそれぞれの分割部材10(10A、10B)の前端部11は、杭40の外周面にすき間なく当接するように、円弧状に形成されている。分割部材10の前端部11には、杭40の外周面との密着性を高めるゴムや樹脂などの弾性を有する部材を設けることが好ましい。
【0022】
この実施形態では、平面視で扇状の分割部材10を例示しているが、分割部材10は、円弧状の前端部11を有する形状であれば他の形状にすることもできる。それぞれの分割部材10には挿通孔12が設けられている。この実施形態では、挿通孔12として、それぞれの分割部材10に貫通孔3の中央に向かって延在する長孔(スリット)が設けられている。より詳しくは、この実施形態では、平面視でそれぞれの分割部材10の中央に1本の直線状の細長い長孔が設けられている。
【0023】
それぞれの分割部材10は、上部14aがプレキャストコンクリートブロック2の底部に固定されていて挿通孔12に挿通されている支持具14により、プレキャストコンクリートブロック2の底面に沿ってスライド移動および回転可能に支持された状態にしている。
【0024】
より詳しくは、図3の(a)に例示するように、上段の分割部材10Aに設けられている支持具14は、プレキャストコンクリートブロック2の底部に固定されている上部14aと、挿通孔12に挿通されている軸部14bと、分割部材10を支持する支持部14cとを有している。図3の(b)に例示するように、下段の分割部材10Bに設けられている支持具14は、さらに、上部14aと軸部14bとの間に、間隙形成部14dが設けられている。下段の分割部材10Bに設けられている支持具14の軸部14bと支持部14cは、上段の分割部材10Aに設けられている支持具14の軸部14bと支持部14cよりも、上段の分割部材10Aの厚さ分、下方に配置されている。
【0025】
支持具14の上部14aは、例えば、金属製のボルトなどで構成される。支持具14の上部14aは、プレキャストコンクリートブロック2を作製した後にプレキャストコンクリートブロック2の底部に挿設される。この実施形態では、軸部14bの外寸が挿通孔12である長孔の幅寸法と略同一に設定されていて、長孔と軸部14bが、分割部材10を杭40の外周面に向かってスライド移動させる際のガイドとして機能する。支持部14cは、軸部14bよりも外側に張り出していて、支持部14cの上に分割部材10が載った状態になっている。間隙形成部14dは軸部14bよりも外側に張り出している。間隙形成部14dの厚さは、上段の分割部材10Aの厚さと略同一に設定されている。軸部14b、支持部14cおよび間隙形成部14dは、例えば、金属や樹脂などで形成される。
【0026】
上段の分割部材10Aの上面とプレキャストコンクリートブロック2の底面は近接していて、両者の間にはほとんどすき間がない状態になっている。下段の分割部材10Bの上面とプレキャストコンクリートブロック2の底面との間には上段の分割部材10Aの厚さと同程度のすき間が設けられている。分割部材10(特に上段の分割部材10A)の上面は、分割部材10とプレキャストコンクリートブロック2の底面との間の摩擦を低減するフッ素樹脂などの摩擦低減材でコーティングしておくとよい。
【0027】
本発明では、プレキャストコンクリートブロック2に配設しているそれぞれの分割部材10をプレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、プレキャストコンクリートブロック2の底面に沿ってスライド移動させる。この実施形態では、分割部材10をプレキャストコンクリートブロック2の底面に沿ってスライド移動させる手段として、それぞれの分割部材10の前部に上方に延在する棒状部材16を設けている。棒状部材16の上部には、杭40の上端部に係合可能な係合具17を設けている。この実施形態では、棒状部材16に対する係合具17の上下方向の固定位置を変更できる構成になっている。
【0028】
以下、本発明の上部工1の構築方法の具体的な作業手順を説明する。
【0029】
図2および図4に例示するように、上部工1を構築する杭40のサイズに合わせて、前述した構成のプレキャストコンクリートブロック2と複数の分割部材10を陸上や船上などで予め作製しておく。据付工程を行う前に、陸上や船上などでプレキャストコンクリートブロック2の底面に沿って、複数の分割部材10を貫通孔3の周方向に並べて配設して、それぞれの分割部材10を支持具14により、プレキャストコンクリートブロック2の底面に沿ってスライド移動および回転可能に支持された状態にしておく。そして、複数の分割部材10と支持具14を配設したプレキャストコンクリートブロック2を、杭40が打設されている施工水域まで搬送する。
【0030】
施工水域では、杭40の上端から所定深さの位置に、杭40の内部を上下に隔離する仕切板30を設けておく。仕切板30の外寸は杭40の内寸と略同一に設定する。仕切板30を杭40の内部に設置する方法は特に限定されないが、例えば、杭40の上端部から吊り下げたワイヤなどの吊材で仕切板30を支持した状態にすることで、仕切板30を杭40の内部に固定する。
【0031】
次いで、据付工程では、プレキャストコンクリートブロック2に設けられているそれぞれの吊金具7にクレーンから懸下されたワイヤロープの吊具を連結し、クレーンによってプレキャストコンクリートブロック2を杭40の上方に吊上げた状態にする。平面視でそれぞれの分割部材10は杭40の外周面よりも外側に配置した状態にする。この実施形態では、それぞれの棒状部材16および係合具17は、貫通孔3の内周面の近傍に配置しておく。
【0032】
そして、図5図7に例示するように、プレキャストコンクリートブロック2に設けられている貫通孔3と杭40との位置を合わせた状態で、プレキャストコンクリートブロック2を杭40の上方から下方移動させ、プレキャストコンクリートブロック2を、貫通孔3(鞘管5)に杭40を遊挿させた状態で所定位置に配置する。この実施形態では、それぞれの棒状部材16および係合具17を、杭40の外周面と貫通孔3の内周面との間に挿通させた状態で、貫通孔3に杭40を遊挿する。
【0033】
この実施形態では、貫通孔3の内側に張り出している梁部材6を杭40の上端部に載置した状態にすることで、プレキャストコンクリートブロック2が杭40の上部に支持された状態になる。プレキャストコンクリートブロック2が杭40の上部に支持された状態にすると、作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上にのって作業を行える状態になる。
【0034】
プレキャストコンクリートブロック2を杭40に据付ける作業は水上で行うため、プレキャストコンクリートブロック2を、貫通孔3の中心と杭40の中心とが完全に一致する位置に据付けることは難しい。そのため、多くの場合、図5図7に例示するように、プレキャストコンクリートブロック2は、杭40の中心と貫通孔3の中心とがずれた状態で据付けられる。
【0035】
図8図10に例示するように、閉塞工程では、プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、それぞれの分割部材10を杭40の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの分割部材10の円弧状の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にする。そして、複数の分割部材10により、杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする。なお、図9および図10では、梁部材6の貫通孔3の内側に位置している部分は省略している。
【0036】
より詳しくは、プレキャストコンクリートブロック2が、杭40の中心と貫通孔3の中心とがずれた状態で据付けられている場合には、それぞれの分割部材10を据付工程で配置されている向きのままで貫通孔3の中央に向かって直進移動させるだけでは、それぞれの分割部材10の円弧状の前端部11が杭40の外周面にすき間なく当接した状態にはならない。そこで、本発明では、それぞれの分割部材10を支持具14により、プレキャストコンクリートブロック2の底面に沿ってスライド移動および回転可能に支持された状態にしている。本発明では、それぞれの分割部材10を杭40の外周面に向けてスライド移動させる際に、支持具14を回転中心にして分割部材10を横方向に回転させて分割部材10の向きを調整することで、分割部材10の円弧状の前端部11を杭40の外周面にすき間なく当接させることが可能になる。
【0037】
この実施形態では、作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上から棒状部材16の上部を持ち、棒状部材16を杭40の外周面に向けて移動させることで、それぞれの分割部材10を杭40の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にする。プレキャストコンクリートブロック2が、杭40の中心と貫通孔3の中心とがずれた状態で据付けられている場合にも、作業者が棒状部材16を操作して、分割部材10の向きを調整することで、分割部材10の円弧状の前端部11を杭40の外周面にすき間なく当接させた状態にすることができる。
【0038】
次いで、それぞれの棒状部材16を杭40に対して固定することで、それぞれの分割部材10を杭40に対して固定する。この実施形態では、係合具17を杭40の上端部に係合した状態で、係合具17を棒状部材16に対して固定することで、棒状部材16を杭40に対して固定している。
【0039】
この実施形態では、複数の分割部材10により杭40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態では、貫通孔3の周方向に隣り合う分割部材10の一部の領域どうしが上下に重なり合った状態にする。即ち、隣り合う上段の分割部材10Aの一部の領域と下段の分割部材10Bの一部の領域を上下に重ねた状態にする。
【0040】
複数の分割部材10により杭40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態では、それぞれの分割部材10に設けられている挿通孔12は、貫通孔3(この実施形態では、鞘管5)の内周面よりも外側に位置している。言い換えると、それぞれの分割部材10に設ける挿通孔12は、複数の分割部材10により前述したすき間Sを塞いだ状態で、貫通孔3の内周面よりも内側に位置しない範囲に形成しておく。
【0041】
次いで、貫通孔3の下端部における、それぞれの分割部材10の上面とプレキャストコンクリートブロック2の底面との間のすき間をシーリング材15によって塞ぐ。前述した作業は、プレキャストコンクリートブロック2の上から行うことができる。それぞれの分割部材10の上面とプレキャストコンクリートブロック2の底面との間のすき間が中詰めコンクリート8が漏れ出さない程度に微小な場合には、前述したすき間をシーリング材15で塞ぐ作業は省略することもできる。
【0042】
次いで、図11に例示するように、打設工程では、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の内側に中詰めコンクリート8を打設して、杭40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間Sと、仕切板30よりも上方の杭40の内側と、貫通孔3の上部(上部孔3a)に中詰めコンクリート8を充填する。
【0043】
この実施形態では、中詰めコンクリート8を2度に分けて打設している。一度目の打設では、杭40の外周面と貫通孔3の内周面との間から底板9(分割部材10)の上に5cm~20cm程度の厚さになるように第一の中詰めコンクリート8aを打設して、その第一の中詰めコンクリート8aを固化させることにより、底板9の上に薄いコンクリート版を形成している。そして、その後に、貫通孔3が埋まるように残りの中詰めコンクリート8を打設している。図11では、中詰めコンクリート8を充填している範囲を斜線で示している。
【0044】
その後、所定の養生期間が経過し、中詰めコンクリート8が固化すると、プレキャストコンクリートブロック2と固化された中詰めコンクリート8とが一体化された上部工1が杭40の上部に固定された状態になる。この実施形態では、棒状部材16と係合具17は、中詰めコンクリート8に埋設された状態になる。それぞれの分割部材10と支持具14は、上部工1の一部としてそのまま残しておいてもよいし、中詰めコンクリート8が固化した後に、上部工1から取外してもよい。以上により、上部工1の構築作業が完了する。
【0045】
このように、本発明では、据付工程を行う前に、挿通孔12を設けた複数の分割部材10をプレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の周方向に並べて配設して、支持具14により、それぞれの分割部材10がプレキャストコンクリートブロック2の底面に沿ってスライド移動および回転可能に支持された状態にしている。そして、閉塞工程では、プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、それぞれの分割部材10を杭40の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの分割部材10の円弧状の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にする。それぞれの分割部材10を杭40の外周面に向けてスライド移動させる際に、支持具14を回転中心にして分割部材10を回転させて分割部材10の向きを調整できるので、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に遊挿されている杭40の中心が貫通孔3の中心からずれている場合にも、分割部材10の円弧状の前端部11を杭40の外周面にすき間なく当接させることができる。それ故、プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを複数の分割部材10で塞ぐことが可能になり、杭40に設置したプレキャストコンクリートブロック2の下方での作業を行わずに水上の上部工1を簡易に効率的に構築することができる。
【0046】
この実施形態のように、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の内側に張り出す梁部材6を設けると、杭40の上端部に梁部材6を載置した状態にすることで、プレキャストコンクリートブロック2を杭40の上部に簡易に安定した状態で据付けることが可能になるので、施工効率を向上させるには有利になる。
【0047】
この実施形態のように、それぞれの分割部材10に挿通孔12として、貫通孔3の中央に向かって延在する長孔を設けると、長孔が分割部材10を杭40の外周面に向かってスライド移動させる際のガイドとして機能するので、分割部材10が移動する軌道が安定する。それ故、分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にする作業をより円滑に行いやすくなる。さらに、長孔の幅寸法と支持具14の軸部14bの外寸を略同一に設定すると、分割部材10が移動する軌道がより安定するので、分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にする作業をより行いやすくなる。
【0048】
さらに、この実施形態のように、それぞれの分割部材10に1組ずつ長孔(挿通孔12)と支持具14を設けて、分割部材10が支持具14を回転中心にして回転可能に支持された状態にすると、非常に簡素な構成でありながら、分割部材10がプレキャストコンクリートブロック2の底面に沿って円滑にスライド移動および回転可能に支持された状態にできる。また、分割部材10を1本の長孔に沿って移動させ、分割部材10を1点の支持具14を回転中心にして回転させることができるので、分割部材10を移動させる軌道や分割部材10を回転させる際の回転中心が安定し、分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にする作業がより一層行いやすくなる。
【0049】
なお、それぞれの分割部材10に設ける挿通孔12の形状や大きさ、数、それぞれの挿通孔12に設ける支持具14の形状や大きさなどは、分割部材10がプレキャストコンクリートブロック2の底面に沿ってスライド移動および回転可能に支持された状態にできる構成であれば、他にも様々な構成にすることができる。
【0050】
この実施形態のように、据付工程を行う前に、それぞれの分割部材10の前部に上方に延在する棒状部材16を設けておくと、閉塞工程では、プレキャストコンクリートブロック2の上からそれぞれの棒状部材16を杭40の外周面に向けて移動させることで、それぞれの分割部材10を杭40の外周面に向けてスライド移動させる作業を非常に簡易に行える。杭40の外周面とそれぞれの分割部材10の前端部11との相対的な位置関係をプレキャストコンクリートブロック2の上から目視しながら、棒状部材16によって分割部材10を移動させることができるので、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にする作業を非常に簡易に行える。さらに、それぞれの棒状部材16を杭40に対して固定することで、それぞれの分割部材10を杭40に対して安定して固定することができる。さらに、分割部材10の前部にかかる中詰めコンクリート8の荷重を棒状部材16によって安定して支持した状態にできる。
【0051】
この実施形態のように、棒状部材16の上部に杭40の上端部に係合する係合具17を設けると、少ない作業工数で簡易に棒状部材16を杭40に対して固定できるので、施工効率を高めるには有利になる。この実施形態では、棒状部材16に対して上下方向の固定位置を変更できる構成の係合具17を例示したが、係合具17は杭40に対して棒状部材16を固定できる構成であれば、他にも様々な構成にすることができる。例えば、棒状部材16の上部に回動可能な係合具17を設けることもできる。
【0052】
棒状部材16は、係合具17を用いる場合に限らず、その他の方法で杭40に対して固定することもできる。例えば、棒状部材16の上部に磁石を設けておき、その磁石を杭40に接着させることで棒状部材16を杭40に対して固定することもできる。また、例えば、棒状部材16と杭40の外周面とを接着剤や溶接で接合する方法や、棒状部材16の上部をフック状に屈曲させて、そのフック状の部位を杭40の上部に引っ掛ける方法で、棒状部材16を杭40に対して固定することもできる。
【0053】
この実施形態のように、周方向に隣り合う分割部材10を交互に、上段の分割部材10Aと下段の分割部材10Bとに分けた構造にして、複数の分割部材10により杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態で、貫通孔3の周方向に隣り合う分割部材10A、10Bの一部の領域どうしが上下に重なり合った状態にすると、隣り合う分割部材10どうしの間にすき間が生じることをより確実に防ぐことができる。
【0054】
本発明では、例えば、周方向に隣り合う分割部材10を同じ高さに配設して、複数の分割部材10により杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態で、貫通孔3の周方向に隣り合う分割部材10の側面どうしを密着させた状態にする構成にすることもできる。
【0055】
中詰めコンクリート8を打設する際には、底板9(分割部材10)に中詰めコンクリート8の荷重がかかるが、この実施形態のように、中詰めコンクリート8の打設を複数回に分けて行い、一度目の打設で、底板9の上に5cm~20cm程度の薄いコンクリート版を形成する構成にすると、その薄いコンクリート版が底板9とともに、その後に打設される中詰めコンクリート8の荷重を支持する底板として機能する。それ故、一度の打設で全ての中詰めコンクリート8を打設する場合よりも、底板9にかかる負荷を低減できる。それに伴い、分割部材10や支持具14の軽量化や簡素化を図ることができる。
【0056】
プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にする作業は、例えば、図11および図12に例示するような方法で行うこともできる。
【0057】
図12図14に例示するように、この実施形態では、図1図11に例示した先の実施形態の棒状部材16と係合具17に代えて、伸長部材18と回転具19を使用している。その他の構成は、図1図11に例示した先の実施形態と同じである。
【0058】
図12および図13に例示するように、この実施形態では、それぞれの分割部材10に対して、平面視で貫通孔3の内周面から貫通孔3の中央に向かって伸長可能な伸長部材18を、貫通孔3の内周面と分割部材10の前部にある係合部13との間に介在させている。この実施形態では、分割部材10の前部に上方に突出した係合部13があり、その係合部13の後面に伸長部材18の前端部18aを押し当てた状態にし、貫通孔3の内周面に伸長部材18の後端部18bを押し当てた状態にしている。伸長部材18は、プレキャストコンクリートブロック2の底面に沿って、横方向に向きを変更できる構成になっている。この実施形態では、伸長部材18の前端部18aと後端部18bをそれぞれ、弾性を有する部材(例えば、ゴムや樹脂など)で構成していて、伸長部材18の前端部18aと後端部18bが変形することで、伸長部材18が横方向に向きを変更できる構成になっている。
【0059】
この実施形態の伸長部材18は、テレスコピック構造の筒状部材を有して構成されている。伸長部材18は長手方向の長さを伸長できる構成であればよく、テレスコピック構造に限らず、他にも様々な構成にすることができる。この実施形態では、伸長部材18を伸長させる伸長機構18cとして、伸長部材18の上部に横方向に回転可能な嵌合部が設けられている。図12および図13に例示するように、プレキャストコンクリートブロック2の上から貫通孔3に棒状の回転具19を挿し込んで、前述した嵌合部に回転具19の下端部を嵌合させ、回転具19を軸回転させて嵌合部を横方向に回転させると、伸長部材18が貫通孔3の中央に向かって伸長する構成になっている。
【0060】
図12および図13に例示するように、据付工程では、それぞれの伸長部材18(伸長機構18c)を短く縮めて、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面よりも外側に配置した状態で、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に杭40を遊挿させた状態にする。
【0061】
図14に例示するように、閉塞工程では、それぞれの伸長部材18を伸長させることで、それぞれの分割部材10を杭40の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にすることで、複数の分割部材10により杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする。そして、それぞれ伸長部材18を貫通孔3の内周面と分割部材10の係合部13との間に突っ張らせて、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に押し当てた状態にすることで、それぞれの分割部材10を杭40に対して固定する。その後の工程は、図1図11に例示した先の実施形態と同じである。
【0062】
より詳しく説明すると、この実施形態では、伸長部材18を杭40の外周面に向かって伸長させて、分割部材10の前端部11の一部が杭40の外周面に当たるまでは、分割部材10と伸長部材18は据付工程で配置されている向きからほとんど向きを変えない状態で杭40の外周面に向かってスライド移動する。
【0063】
分割部材10の前端部11の一部が杭40の外周面に当たった後に、さらに、伸長部材18を伸長させると、分割部材10の前端部11の杭40の外周面に接触していない部分が杭40の外周面に嵌るように、分割部材10と伸長部材18とが支持具14を回転中心にして自然に横方向に回転して、分割部材10と伸長部材18の向きが、分割部材10の前端部11が杭40の外周面に当接する向きに自然に変わる。そして、分割部材10の前端部11の杭40の外周面に接触していない部分が、杭40の外周面にさらに接近して、分割部材10の前端部11が杭40の外周面に当接された状態になる。この実施形態では、弾性を有する部材で形成されている伸長部材18の前端部18aと後端部18bがそれぞれ変形することで、分割部材10の動きに合わせて伸長部材18の向きが変わる。
【0064】
この実施形態のように、伸長部材18を用いると、閉塞工程では、それぞれの伸長部材18を伸長させるだけで、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にできる。さらに、伸長部材18を貫通孔3の内周面と係合部13との間に突っ張らせた状態にするだけで、分割部材10を杭40に対して固定できる。そのため、閉塞工程を非常に少ない作業工数で完了でき、施工効率を向上させるには有利になる。
【0065】
伸長部材18を伸長させる方法や伸長部材18の構造は、この実施形態の回転具19を用いる方法に限らず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、伸長機構18cとして伸長部材18の上部にスイッチを設けておき、作業者が棒状部材などを用いてプレキャストコンクリートブロック2の上からそのスイッチを押すと、伸長部材18が伸長する構成にすることもできる。また、例えば、伸長部材18を遠隔操作機器で伸長させる構成にすることもできる。
【0066】
この実施形態では、伸長部材18の前端部18aと後端部18bをそれぞれ、弾性を有する部材で構成する場合を例示したが、分割部材10の動きに合わせて伸長部材18の向きが変更可能な構成であれば、伸長部材18の向きを可変にする構成は、他にも様々な構成にすることができる。例えば、伸長部材18の前端部18aを係合部13に対して横方向に回転可能に接続し、伸長部材18の後端部18bを貫通孔3の内周面に対して横方向に回転可能に接続した構成にすることもできる。
【0067】
プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にする作業は、例えば、図15図19に例示するような方法で行うこともできる。
【0068】
図15図17に例示するように、この実施形態では、図1図11に例示した先の実施形態の棒状部材16と係合具17に代えて、締結バンド20と回転具19を使用している。また、この実施形態では、図1図11に例示した実施形態の分割部材10とは、平面視での形状が異なる分割部材10を用いている。その他の構成は、図1図11に例示した先の実施形態と同じである。
【0069】
図15に例示するように、この実施形態の分割部材10は、杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞ぐ前部は相対的に幅が広い幅広部で構成されていて、挿通孔12が設けられている後部は前部(幅広部)よりも相対的に幅が狭い幅狭部で構成されている。より具体的には、この実施形態の分割部材10の前部は平面視で扇状に形成されていて、後部は平面視で前部よりも幅の狭い長方形状に形成されている。なお、ここでいう分割部材10の幅は、平面視で分割部材10が貫通孔3の中央に向かってスライド移動する方向(言い換えると、挿通孔12の延在方向)に対して直交する方向の寸法を示している。
【0070】
この実施形態のように、分割部材10の挿通孔12が設けられている後部を、杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞ぐ前部よりも相対的に幅が狭い幅狭部にすると、分割部材10の機能を維持しつつ、分割部材10を軽量化することができる。分割部材10を軽量化することで、分割部材10を支持する支持具14の軽量化や簡素化を図ることもできる。特に、分割部材10の幅狭部の幅寸法を、挿通孔12の幅寸法の例えば、2倍以上30倍以下、より好ましくは2.5倍以上20倍以下、更に好ましくは、3倍以上7倍以下に設定すると、支持具14によって支持される分割部材10の後部の強度を安定して確保しつつ、分割部材10をバランスよく軽量化することができる。
【0071】
図20に例示するように、後部を幅狭部にした分割部材10としては、その他にも例えば、前部が扇状に形成され後部が後方に向かって先細りする三角形状に形成されたダイヤ型の分割部材10などにすることもできる。
【0072】
図15図17に例示するように、締結バンド20は、紐状または帯状のバンド部20aと、平面視で環状にしたバンド部20aの一端部とバンド部20aの中途部を固定してバンド部20aを環状に維持する締結金具20bとを有して構成されている。この実施形態では、貫通孔3の周方向に延在する環状の締結バンド20を、それぞれの分割部材10の前部にある係合部13の外側に巻き付けた状態にしている。この実施形態では、それぞれの分割部材10の前部に上方に突出した平面視で円弧状の係合部13が設けられていて、係合部13の円弧状の外周面に締結バンド20(バンド部20a)が巻き付けられている。
【0073】
図15に例示するように、この実施形態では、据付工程では、平面視での締結バンド20の内径を杭40の外径よりも大きくして、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面よりも外側に配置した状態で、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に杭40を遊挿させた状態にする。
【0074】
図17図19に例示するように、閉塞工程では、締結バンド20(バンド部20a)を杭40の中央に向けて縮径することで、それぞれの分割部材10を杭40の外周面に向けてスライド移動させて、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にすることで、複数の分割部材10により杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする。そして、それぞれの分割部材10の係合部13を締結バンド20によって杭40の外周面に締め付けた状態にすることで、それぞれの分割部材10を杭40に対して固定する。その後の工程は、図1図11に例示した先の実施形態と同じである。
【0075】
図17に例示するように、この実施形態では、締結金具20bの上部に横方向に回転可能な嵌合部が設けられていて、プレキャストコンクリートブロック2の上から貫通孔3に棒状の回転具19を挿し込んで、前述した嵌合部に回転具19の下端部を嵌合させ、回転具19を軸回転させて嵌合部を回転させると、締結金具20bによって固定されるバンド部20aの中途部の位置が移動して、環状の締結バンド20(バンド部20a)の内径が縮径する構成になっている。
【0076】
より詳しく説明すると、この実施形態では、締結バンド20を縮径させて、分割部材10の前端部11の一部が杭40の外周面に当たるまでは、分割部材10は据付工程で配置されている向きからほとんど向きを変えない状態で杭40の外周面に向かってスライド移動する。分割部材10の前端部11の一部が杭40の外周面に当たった後に、さらに、締結バンド20を縮径させると、分割部材10の円弧状の前端部11が杭40の外周面に嵌るように、分割部材10が支持具14を回転中心にして自然に横方向に回転して、分割部材10の向きが、前端部11が杭40の外周面に当接する向きに自然に変わる。そして、分割部材10の前端部11の杭40の外周面に接触していない部分が、杭40の外周面にさらに接近して、分割部材10の前端部11が杭40の外周面に当接された状態になる。
【0077】
この実施形態のように、締結バンド20を用いると、閉塞工程では、締結バンド20を縮径させるだけで、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にできる。それぞれの分割部材10を個々に移動させる必要がなく、非常に少ない作業工数で杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞ぐことができるので、施工効率を向上させるには非常に有利になる。
【0078】
締結バンド20を縮径させる方法や締結金具20bの構造は、この実施形態の回転具19を用いる方法に限らず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、締結金具20bの上部にスイッチを設けておき、作業者が棒状部材などを用いてプレキャストコンクリートブロック2の上からそのスイッチを押すと、締結バンド20(バンド部20a)が縮径する構成にすることもできる。また、例えば、締結バンド20を遠隔操作機器で縮径させる構成にすることもできる。
【0079】
プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にする作業は、例えば、図21に例示するような方法で行うこともできる。
【0080】
図21に例示するように、この実施形態では、図1図11に例示した先の実施形態の棒状部材16と係合具17に代えて、弾性部材21を使用している。また、この実施形態では、杭40に設置する架台22を使用している。その他の構成は、図1図11に例示した先の実施形態と同じである。なお、この実施形態では、弾性部材21と架台22を併用する場合を例示するが、いずれか一方のみを使用することもできる。
【0081】
弾性部材21は、金属や樹脂で形成された弾性を有する棒状部材や板状部材で構成される。図21に例示するように、この実施形態では、それぞれの分割部材10の前端部11にある係合部13に、上方に延在する弾性部材21の先端部を押し当てた状態にしておく。この実施形態では、それぞれの分割部材10の前部に上方に突出した係合部13があり、係合部13の外周面に弾性部材21の先端部を押し当てた状態にしている。架台22は、平面視で杭40の外周面から外側に向かって延在していて杭40に対して固定できる構成になっている。
【0082】
この実施形態のように架台22を用いる場合には、据付工程を行う前に、杭40の所定高さに架台22を設置しておく。架台22は、据付工程で杭40に対してプレキャストコンクリートブロック2を据付けたときに、分割部材10の下面の高さ位置と、架台22の上面の高さ位置が一致する高さに設置しておく。
【0083】
据付工程では、それぞれの分割部材10に対して設けているそれぞれの弾性部材21を、杭40の外周面とプレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の内周面との間に挿通させた状態で、貫通孔3に杭40を遊挿させた状態にする。
【0084】
閉塞工程では、プレキャストコンクリートブロック2の上から、それぞれの弾性部材21の後部を下方に向かって押して、弾性部材21の中途部分を貫通孔3の内周面に当接させ、弾性部材21の下部を貫通孔3の内周面から分割部材10の係合部13に向けて湾曲させた状態で、それぞれの分割部材10を杭40の外周面に向けてスライド移動させる。そして、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にして、複数の分割部材10により杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする。この実施形態のように架台22を用いる場合には、それぞれの分割部材10の前部は、架台22で支持した状態にする。そして、それぞれの弾性部材21をプレキャストコンクリートブロック2に対して固定することで、それぞれの分割部材10を杭40に対して固定する。その後の工程は、図1図11に例示した先の実施形態と同じである。
【0085】
より詳しく説明すると、この実施形態では、弾性部材21の後部を下方に押して、分割部材10の前端部11の一部が杭40の外周面に当たるまでは、分割部材10は据付工程で配置されている向きからほとんど向きを変えない状態で杭40の外周面に向かってスライド移動する。分割部材10の前端部11の一部が杭40の外周面に当たった後に、さらに、弾性部材21の後端部を下方に押すと、分割部材10の前端部11の杭40の外周面に接触していない部分が杭40の外周面に嵌るように、分割部材10が支持具14を回転中心にして自然に横方向に回転して、分割部材10の向きが、分割部材10の前端部11が杭40の外周面に当接する向きに自然に変わる。そして、前端部11の杭40の外周面に接触していない部分が、杭40の外周面にさらに接近して、分割部材10の前端部11が杭40の外周面に当接された状態になる。
【0086】
この実施形態のように、弾性部材21を用いる場合には、それぞれの分割部材10の前部にある係合部13に、弾性部材21の先端部を押し当てた状態にするだけでよいため、閉塞工程を行うまでの準備に要する作業工数や作業時間を非常に少なくできる。閉塞工程では、プレキャストコンクリートブロック2の上から弾性部材21の後部を下方に押すだけで、分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にできるので、非常に簡易に杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞ぐことができる。
【0087】
この実施形態のように、杭40に架台22を設置すると、架台22によってそれぞれの分割部材10の前部を支持した状態にすることで、分割部材10をより安定した状態で固定することができる。また、分割部材10にかかる中詰めコンクリート8の荷重を架台22によって支持することができるので、分割部材10の軽量化や簡素化を図ることができる。
【0088】
なお、本発明では、プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、それぞれの分割部材10の前端部11を杭40の外周面に当接させた状態にできる方法であれば、上記で例示した実施形態とは異なる方法を採用することもできる。また、分割部材10の形状や枚数、配置などは、杭40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞ぐことができ、挿通孔12を設けられる形状であれば、上記で例示した実施形態の形状に限らず、他にも様々な形状にすることができる。
【0089】
また、上部工1(プレキャストコンクリートブロック2)の形状や大きさなどは、上記で例示した実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。この実施形態では、1本の杭40に固定される上部工1を構築する場合を例示したが、例えば、複数の貫通孔3を有するプレキャストコンクリートブロック2を作製して、それぞれの貫通孔3に別々の杭40を遊挿した状態にすることで、複数本の杭40に渡って延在する上部工1を構築することも可能である。また、例えば、上面視でL字形や多角形状や円形状などの上部工1を構築することもできる。
【符号の説明】
【0090】
1 上部工
2 プレキャストコンクリートブロック
3 貫通孔
3a 上部孔
3b 下部孔
4 ブロック体
5 鞘管
6 梁部材
7 吊金具
8 中詰めコンクリート
8a 第一の中詰めコンクリート
9 底板
10 分割部材
10A 上段の分割部材
10B 下段の分割部材
11 前端部
12 挿通孔
13 係合部
14 支持具
14a 上部
14b 軸部
14c 支持部
14d 間隙形成部
15 シーリング材
16 棒状部材
17 係合具
18 伸長部材
18a 前端部
18b 後端部
18c 伸長機構
19 回転具
20 締結バンド
20a バンド部
20b 締結金具
21 弾性部材
22 架台
30 仕切板
40 杭
S (杭の外周面と貫通孔の下部の内周面との間の)すき間
WB 水底地盤
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