(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150220
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】アンテナデバイス
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/10 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H01Q13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063531
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 政彦
(72)【発明者】
【氏名】城崎 俊文
(72)【発明者】
【氏名】嘉藤 貴博
(72)【発明者】
【氏名】高畑 利彦
(72)【発明者】
【氏名】廣川 二郎
(72)【発明者】
【氏名】戸村 崇
【テーマコード(参考)】
5J045
【Fターム(参考)】
5J045AA05
5J045AB05
5J045DA04
5J045FA02
5J045HA01
5J045JA03
5J045MA06
5J045MA07
(57)【要約】
【課題】体格の大型化を抑えつつ、4つの放射開口での電波の位相を揃えやすいアンテナデバイスを提供する。
【解決手段】アンテナデバイス1は、導波管部12と、給電開口14を介して導波管部12の内側に連通するキャビティ15を形成するキャビティ形成部16と、を備える。キャビティ形成部16は、給電開口14が形成された開口壁部161と、開口壁部161に対向する対向壁部162と、開口壁部161と対向壁部162とを繋ぐ側壁部163と、を有する。対向壁部162には、4つの放射開口17が、中心部位CPの周囲に格子状に並ぶように配設されている。給電開口14は、開口壁部161のうちキャビティ15の中心位置Cと重なり合う位置に形成されている。キャビティ15は、導波管部12の管軸方向Daxの寸法、管幅方向Dcrの寸法が、動作周波数における電波の波長の1.0倍以上、且つ、波長の2.0倍以下の範囲に設定される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナデバイスであって、
電波の伝搬路をなす導波管の一部を構成するとともに、所定の管軸方向(Dax)に延びる導波管部(12)と、
前記管軸方向に直交する一方向である管軸直交方向(Dst)において前記導波管部に隣接して設けられ、給電開口(14)を介して前記導波管部の内側に連通するキャビティ(15)を形成するキャビティ形成部(16)と、を備え、
前記キャビティ形成部は、前記導波管部に隣接するとともに前記給電開口が形成された開口壁部(161)と、前記管軸直交方向において前記開口壁部に対向する対向壁部(162)と、前記開口壁部と前記対向壁部とを繋ぐ側壁部(163)と、を有し、
前記対向壁部における前記給電開口の開口中心に対して前記管軸直交方向に対向する部位を中心部位としたとき、
前記対向壁部には、4つの放射開口(17)が、前記中心部位の周囲において格子状に並ぶように配設されており、
前記給電開口は、前記開口壁部のうち、前記管軸直交方向において前記キャビティの中心位置と重なり合う位置に形成されており、
前記キャビティは、前記管軸方向の寸法、前記管軸方向および前記管軸直交方向それぞれに直交する方向の寸法それぞれが、動作周波数における電波の波長の1.0倍以上、且つ、前記波長の2.0倍以下の範囲に設定される、アンテナデバイス。
【請求項2】
前記導波管部は、前記給電開口の開口位置よりも前記管軸方向の一方側に前記導波管の終端部をなすショート壁(121)が設けられるとともに、前記開口位置よりも前記管軸方向の他方側の少なくとも一箇所に電波の反射を抑圧する反射抑圧壁(13)が設けられている、請求項1に記載のアンテナデバイス。
【請求項3】
前記キャビティ形成部は、前記キャビティが4つの前記放射開口に対応する均等な4つの領域に区分されるように、前記側壁部から前記給電開口に近づくように延びる4つの区画壁(18)が設けられている、請求項1または2に記載のアンテナデバイス。
【請求項4】
前記対向壁部における前記中心部位を通る仮想線のうち前記管軸方向に沿うものを第1仮想線(IL1)、前記第1仮想線に直交する仮想線を第2仮想線(IL2)としたとき、
4つの前記放射開口は、前記中心部位の周囲において、前記第1仮想線に対して線対称となり、且つ、前記第2仮想線に対して線対称となるように前記対向壁部に配設されている、請求項1または2に記載のアンテナデバイス。
【請求項5】
前記キャビティは、前記管軸直交方向の寸法が前記波長の2.0倍以下に設定される、請求項1または2に記載のアンテナデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4つの放射開口を有するアンテナデバイスにおいて、電波の伝搬路を2つに分岐させる第1ブランチおよび電波の伝搬路を4つに分岐させる第2ブランチを用いて、電波の伝搬路をトーナメント状に分岐させる構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の如く、電波の伝搬路をトーナメント状に分岐させる構造とすると、4つの放射開口での電波の位相を揃えやすいが、第1ブランチおよび第2ブランチを積層させる必要があり、アンテナデバイスの体格が大きくなってしまうことが避けられない。
【0005】
本開示は、体格の大型化を抑えつつ、4つの放射開口での電波の位相を揃えやすいアンテナデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
アンテナデバイスであって、
電波の伝搬路をなす導波管の一部を構成するとともに、所定の管軸方向(Dax)に延びる導波管部(12)と、
管軸方向に直交する一方向である管軸直交方向(Dst)において導波管部に隣接して設けられ、給電開口(14)を介して導波管部の内側に連通するキャビティ(15)を形成するキャビティ形成部(16)と、を備え、
キャビティ形成部は、導波管部に隣接するとともに給電開口が形成された開口壁部(161)と、管軸直交方向において開口壁部に対向する対向壁部(162)と、開口壁部と対向壁部とを繋ぐ側壁部(163)と、を有し、
対向壁部における給電開口の開口中心に対して管軸直交方向に対向する部位を中心部位としたとき、
対向壁部には、4つの放射開口(17)が、中心部位の周囲において格子状に並ぶように配設されており、
給電開口は、開口壁部のうち、管軸直交方向においてキャビティの中心位置と重なり合う位置に形成されており、
キャビティは、管軸方向の寸法、管軸方向および管軸直交方向それぞれに直交する方向の寸法それぞれが、動作周波数における電波の波長の1.0倍以上、且つ、波長の2.0倍以下の範囲に設定される。
【0007】
これによると、給電開口の開口中心に対応する位置の周囲に、格子状に4つの放射開口を配置しているので、4つの放射開口それぞれと給電開口との間の距離を揃えることができる。また、キャビティにおける管軸方向の寸法と管軸方向および管軸直交方向それぞれに直交する方向の寸法を、電波の波長の1.0倍以上、且つ、波長の2.0倍以下の範囲に制限している。これらにより、4つの放射開口での電波の位相を揃えることができる。
【0008】
加えて、単一のキャビティによって電波を4つの放射開口へ分配する構造になっているので、従来技術の如く、電波の伝搬路をトーナメント状に分岐させる構造に比べて、アンテナデバイスの体格の大型化を抑制することができる。
【0009】
したがって、本案のアンテナデバイスによれば、体格の大型化を抑制しつつ、4つの放射開口での電波の位相を揃えることができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るアンテナデバイスを含む機器の概略構成図である。
【
図5】アンテナデバイスの模式的な分解斜視図である。
【
図7】アンテナデバイスの反射特性を説明するための説明図である。
【
図8】アンテナデバイスの放射指向性を説明するための説明図である。
【
図9】アンテナデバイスのH面およびE面における放射指向性を説明するための説明図である。
【
図10】第1実施形態の第1変形例となるアンテナデバイスの模式的な平面図である。
【
図11】第1実施形態の第2変形例となるアンテナデバイスの模式的な平面図である。
【
図12】第1実施形態の第3変形例となるアンテナデバイスの模式的な平面図である。
【
図13】第1実施形態の第4変形例となるアンテナデバイスの模式的な平面図である。
【
図14】第1実施形態の第5変形例となるアンテナデバイスの模式的な断面図である。
【
図15】第2実施形態に係るアンテナデバイスの模式的な分解斜視図である。
【
図16】第3実施形態に係るアンテナデバイスの模式的な分解斜視図である。
【
図17】アンテナデバイスの模式的な平面図である。
【
図18】アンテナデバイスの断面における電波強度を示すコンター図である。
【
図19】アンテナデバイスの平面における電波強度を示すコンター図である。
【
図20】第4実施形態に係るアンテナデバイスの模式的な分解斜視図である。
【
図21】第5実施形態に係るアンテナデバイスの模式的な断面図である。
【
図22】第6実施形態に係るアンテナデバイスの模式的な断面図である。
【
図23】第7実施形態に係るアンテナデバイスの模式的な断面図である。
【
図24】第8実施形態に係るアンテナデバイスの模式的な断面図である。
【
図25】第9実施形態に係るアンテナデバイスを含む機器の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図9を参照して説明する。本実施形態では、本開示のアンテナデバイス1を、電気部品であるMMIC2を含む機器に適用した例について説明する。なお、“MMIC”は、Monolithic Microwave Integrated Circuitの略称である。
【0014】
図1に示すMMIC2は、電波を送受信する入出力部3を含む半導体デバイスである。MMIC2は、アンテナデバイス1に対応して設けられた送受信機器である。本実施形態ではMMIC2が送受信する電波の動作周波数が、ミリ波に対応する周波数帯(例えば、76.5GHz)とされている。なお、MMIC2が送受信する電波の動作周波数は、ミリ波に対応する周波数に限定されず、ミリ波以外の周波数であってもよい。
【0015】
図2に示すように、MMIC2は、電気基板4に実装されている。電気基板4は、金属箔等の導電性部材によって複数の配線パターンが形成されたプリント基板である。電気基板4は、基板の厚み方向の一方側に一面F1が形成され、基板の厚み方向の他方側に他面F2が形成されている。
【0016】
電気基板4は、一面F1に対してMMIC2が実装されている。また、電気基板4の一面F1には、複数のスペーサ5が配置されている。スペーサ5は、例えば、導電性を有する材料で構成されている。スペーサ5は、電気基板4に対して固定されている。
【0017】
アンテナデバイス1は、電気基板4の一面F1に対してMMIC2と複数のスペーサ5を挟んで配置されている。アンテナデバイス1は、MMIC2および複数のスペーサ5それぞれに接触した状態で、ネジ止め、接着等によって電気基板4に固定されている。
【0018】
アンテナデバイス1は、MMIC2が送受信する電波を伝えるアンテナである。
図2および
図3に示すように、アンテナデバイス1は、導電性を有する3つのブロックBC1、BC2、BC3が積層された積層構造を有する構造体STである。3つのブロックBC1、BC2、BC3は、金属製のブロックで構成されている。なお、3つのブロックBC1、BC2、BC3のうち、少なくとも1つは、金属製のブロックではなく、例えば、樹脂製のブロックの表面に金属膜等の導電膜が形成されたものや、金属以外の導電性材料からなるブロックで構成されていてもよい。
【0019】
アンテナデバイス1は、3つのブロックBC1、BC2、BC3が、ネジ止め、接着等によって互いに結合されている。アンテナデバイス1は、各ブロックBC1、BC2、BC3の積層方向Dstが、電気基板4の厚み方向と一致する姿勢で、電気基板4に固定されている。本実施形態では、3つのブロックBC1、BC2、BC3について、電気基板4に近いものから順に第1ブロックBC1、第2ブロックBC2、第3ブロックBC3とする。
【0020】
3つのブロックBC1、BC2、BC3は、平面視の形状が同じ矩形形状とされている。また、3つのブロックBC1、BC2、BC3は、積層方向Dstにおいて、互いに重なり合うように、平面視における大きさが同程度とされている。
【0021】
第1ブロックBC1および第2ブロックBC2は、互いに対向する面の一部が接触している。また、第2ブロックBC2および第3ブロックBC3は、互いに対向する面の一部が接触している。これにより、3つのブロックBC1、BC2、BC3は、電気的に接続されている。
【0022】
第1ブロックBC1は、電気基板4に対向する面が、MMIC2および複数のスペーサ5を挟んで電気基板4の一面F1に対向している。図示しないが、第1ブロックBC1は、複数のスペーサ5の少なくとも一部を介して電気基板4の一面F1に形成された配線パターンに含まれるグランドパターンに電気的に接続されている。第2ブロックBC2および第3ブロックBC3は、第1ブロックBC1に電気的に接続されているので、第1ブロックBC1を介してグランドパターンに電気的に接続されている。電気基板4のグランドパターンは、接地電位とされている。
【0023】
第1ブロックBC1には、MMIC2との間で電波が伝搬するように設けられる外部ポート11が形成されている。外部ポート11は、第1ブロックBC1におけるMMIC2の入出力部3と対向する位置に形成されている。これにより、外部ポート11とMMIC2との間で電波が伝搬可能になっている。
【0024】
第1ブロックBC1および第2ブロックBC2には、電波の伝搬路となる導波管の一部を構成する導波管部12が形成されている。本実施形態では、第1ブロックBC1および第2ブロックBC2における導波管部12を形成する部位が“導波管”を構成している。
【0025】
導波管部12は、第1ブロックBC1および第2ブロックBC2における積層方向Dstに対向する部位に形成された一対の溝部121、122が結合されることで形成されている。
【0026】
第1ブロックBC1には、第2ブロックBC2に対向する部位に第1溝部121が形成されている。第1溝部121は、積層方向Dstの一方側から他方側に窪んだ有底溝で構成されている。第1溝部121の底面に外部ポート11が形成されている。
【0027】
第2ブロックBC2には、第1ブロックBC1の第1溝部121に対向する部位に第2溝部122が形成されている。第2溝部122は、積層方向Dstの他方側から一方側に窪んだ有底溝で構成されている。第2溝部122の底面に後述の給電開口14が形成されている。
【0028】
導波管部12は、積層方向Dstに直交する一方向を管軸方向Daxとし、当該管軸方向Daxに沿って延びている。管軸方向Daxは、導波管部12の中心軸線に沿う方向である。
【0029】
図4および
図5に示すように、導波管部12は、管軸方向Daxに直交する断面(すなわち、横断面)の形状が、積層方向Dstに延びる矩形形状となっている。すなわち、導波管部12は、積層方向Dstにおける寸法が、積層方向Dstおよび管軸方向Daxそれぞれに直交する方向(以下、管幅方向Dcrとも呼ぶ)における寸法よりも大きくなっている。
【0030】
導波管部12は、外部ポート11付近から後述の給電開口14付近まで延びている。導波管部12は、管軸方向Daxの両端に導波管の終端部をなす一対の終端壁123、124が設定されている。具体的には、導波管部12は、管軸方向Daxの一方側に第1終端壁123が設けられ、管軸方向Daxの他方側に第2終端壁124が設けられている。
【0031】
第2終端壁124は、管軸方向Daxに直交する方向に拡がる平面状の壁によって構成されている。第2終端壁124は、外部ポート11付近に設定されている。具体的には、第2終端壁124は、外部ポート11に隣接する位置に形成されている。
【0032】
第1終端壁123は、管軸方向Daxに直交する方向に拡がる平面状の壁によって構成されている。第1終端壁123は、後述の給電開口14付近に設定されている。具体的には、第1終端壁123は、給電開口14の開口位置よりも外部ポート11から離れた位置に形成されている。本実施形態では、第1終端壁123が、管軸方向Daxの一方側に“ショート壁”を構成している。
【0033】
給電開口14と第1終端壁123との位置関係は、導波管部12と後述のキャビティ15との間のカップリング量を加味して設定される。換言すれば、アンテナデバイス1は、給電開口14と第1終端壁123との距離によって、導波管部12と後述のキャビティ15との間のカップリング量を制御するようになっている。
【0034】
第2ブロックBC2には、導波管部12を形成する第2溝部122の底面に給電開口14が形成されている。給電開口14は、導波管部12と後述のキャビティ15との間で電波を伝搬させるポートである。給電開口14は、第2ブロックBC2を積層方向Dstに貫通する孔によって構成されている。給電開口14は、第2ブロックBC2のうち、積層方向Dstにおいて外部ポート11とは重なり合わない位置に形成されている。
【0035】
ここで、導波管部12は、電波の反射を抑圧する反射抑圧壁13が設けられている。反射抑圧壁13は、導波管部12における給電開口14の開口位置よりも管軸方向Daxの他方側の位置に設けられている。
【0036】
反射抑圧壁13は、積層方向Dstの延びる一対の突起壁131、132によって構成されている。第1突起壁131は、第1溝部121の底面から積層方向Dstの一方側に向かって突き出るように設けられている。第2突起壁132は、第2溝部122の底面から積層方向Dstの一方側に向かって突き出るように設けられている。第1突起壁131および第2突起壁132は、導波管部12における同じ位置に設けられている。また、第1突起壁131および第2突起壁132は、高さ、厚み、形状が実質的に同一となるように構成されている。なお、第1突起壁131および第2突起壁132は、互いに接触しない高さとなっている。
【0037】
ここで、第1突起壁131および第2突起壁132それぞれの位置、高さ、厚み、形状は、導波管部12における第1終端壁123と反射抑圧壁13との間の空間のインピーダンスに影響する。このため、第1突起壁131および第2突起壁132の位置、高さ、厚み、形状は、導波管部12における第1終端壁123と反射抑圧壁13との間の空間のインピーダンスとキャビティ15のインピーダンスとが整合するように設定されていることが望ましい。
【0038】
第2ブロックBC2および第3ブロックBC3には、管軸方向Daxに直交する一方向である管軸直交方向において導波管部12に隣接する位置に、給電開口14を介して導波管部12の内側に連通するキャビティ15が形成されている。本実施形態では、第2ブロックBC2および第3ブロックBC3におけるキャビティ15を形成する部位が“キャビティ形成部16”を構成している。また、管軸直交方向は、積層方向Dstと一致する方向となっている。説明の便宜上、以下では、管軸直交方向を積層方向Dstとして説明するが、積層方向Dstは、管軸直交方向に置き換えて解釈することができる。なお、
図1において、管軸直交方向は、紙面に対して垂直となる方向である。
【0039】
キャビティ形成部16は、導波管部12に隣接するとともに給電開口14が形成された開口壁部161と、管軸直交方向において開口壁部161に対向する対向壁部162と、開口壁部161と対向壁部162とを繋ぐ側壁部163と、を有する。
【0040】
開口壁部161および対向壁部162は、平面視における形状が同じ矩形形状とされている。具体的には、開口壁部161および対向壁部162は、管軸方向Daxに延びる矩形形状となっている。また、開口壁部161および対向壁部162は、積層方向Dstにおいて、互いに重なり合うように、積層方向Dstから見た際の大きさが同程度とされている。
【0041】
側壁部163は、開口壁部161の四辺と対向壁部162の四辺とを繋ぐ4つの側壁163a、163b、163c、163dを有している。4つの側壁163a、163b、163c、163dは、開口壁部161と対向壁部162との間に扁平な直方体状のキャビティ15が形成されるように設定されている。キャビティ15は、平面視における形状が矩形形状となっている。
【0042】
このように形成されるキャビティ15は、管軸方向Daxの寸法が、管幅方向Dcrの寸法および積層方向Dstの寸法よりも大きくなっている。なお、キャビティ15における管幅方向Dcrの寸法は、導波管部12における管幅方向Dcrの寸法よりも大きくなっている。
【0043】
本実施形態のキャビティ15は、第2ブロックBC2および第3ブロックBC3における積層方向Dstに対向する部位に形成された一対の凹部151、152が結合されることで形成されている。
【0044】
第2ブロックBC2には、第3ブロックBC3に対向する部位に第1凹部151が形成されている。第1凹部151は、積層方向Dstの一方側から他方側に窪んでいる。第1凹部151の底面となる開口壁部161に給電開口14が形成されている。これにより、給電開口14とキャビティ15との間で電波が伝搬可能となっている。
【0045】
第3ブロックBC3には、第2ブロックBC2に対向する部位に第2凹部152が形成されている。第2凹部152は、積層方向Dstの他方側から一方側に窪んでいる。第2凹部152の底面となる対向壁部162に4つの放射開口17が形成されている。
【0046】
これにより、キャビティ15は、給電開口14と4つの放射開口17との間で電波が伝搬可能となっている。本実施形態のキャビティ15は、給電開口14からの電波を4つの放射開口17へ分配して伝搬させる分岐部としての機能を果たしている。
【0047】
対向壁部162には、アンテナデバイス1の外部空間との間で電波が伝搬するように、アンテナ放射素子を構成する4つの放射開口17が形成されている。4つの放射開口17は、対向壁部162を積層方向Dstに貫通する孔によって構成されている。
【0048】
4つの放射開口17は、それぞれ同じ矩形形状とされている。4つの放射開口17は、対向壁部162において、管軸方向Daxおよび管幅方向Dcrの双方に間隔をあけて並ぶように形成されている。これにより、4つの放射開口17それぞれと外部空間との間で電波が伝搬可能となっている。
【0049】
本実施形態のアンテナデバイス1は、電波が4つの放射開口17で互いに打ち消し合わないように、4つの放射開口17での電波の同位相となるように構成されている。このことを実現するための構成等について、以下に説明する。
【0050】
まず、4つの放射開口17について説明すると、4つの放射開口17は、給電開口14の開口中心CLに対して積層方向Dstに対向する中心部位CPの周囲に格子状に並ぶように配設されている。
【0051】
図6に示すように、対向壁部162において中心部位CPを通る仮想線のうち管軸方向Daxに沿うものを第1仮想線IL1、第1仮想線IL1と直交する仮想線を第2仮想線IL2としたとする。このとき、4つの放射開口17は、中心部位CPの周囲において、第1仮想線IL1に対して線対称となり、且つ、第2仮想線IL2に対して線対称となるように対向壁部162に配設されている。
【0052】
より具体的には、第1仮想線IL1および第2仮想線IL2によって対向壁部162を4つの領域に分けたときに、当該4つの領域それぞれに対して放射開口17が形成されている。
【0053】
4つの放射開口17は、それぞれ同じ形状とされている。本実施形態の4つの放射開口17は、それぞれ管軸方向Daxに延びる矩形形状となっている。放射開口17は、管軸方向Daxの寸法が、動作周波数における電波の波長の約0.5倍から約1倍までとなるように構成されている。動作周波数における電波の波長は、動作周波数に含まれる代表的な周波数における電波の波長であり、例えば、動作周波数の中心周波数における電波の波長として解釈することができる。
【0054】
続いて、給電開口14は、開口壁部161のうち、積層方向Dstにおいてキャビティ15の中心位置Cと重なり合う位置に形成されている。給電開口14は、管軸方向Daxに延びる矩形形状となっている。給電開口14は、積層方向Dstにおいて4つの放射開口17と重ならないように開口壁部161に形成されている。なお、給電開口14の形状は、矩形形状ではなく、例えば、長円形状、菱形形状等とされていてもよい。
【0055】
このように構成されていることで、給電開口14から4つの放射開口17までの距離が実質的に同じ大きさになっている。換言すれば、アンテナデバイス1は、給電開口14と4つの放射開口17それぞれとの間の電波の伝送距離が実質的に同じ大きさになっている。
【0056】
続いて、キャビティ15は、第1仮想線IL1および第2仮想線IL2によって4つの空間に分けたときに、当該4つの空間それぞれが実質的に同じ立体空間となるように構成されている。
【0057】
加えて、キャビティ15は、管軸方向Daxの寸法L1および管幅方向Dcrの寸法L2それぞれが、動作周波数における電波の波長の1.0倍以上、且つ、当該波長の2.0倍以下の範囲に設定されている。本例のキャビティ15は、管軸方向Daxの寸法L1が管幅方向Dcrの寸法L2よりも大きくなっているが、これに限らず、管軸方向Daxの寸法L1が管幅方向Dcrの寸法L2以下とされていてもよい。
【0058】
ここで、キャビティ15の積層方向Dstの寸法Lstは、管軸方向Daxの寸法L1および管幅方向Dcrの寸法とは異なり、電波の逆位相と殆んど関係しないため、電波の逆位相による制限は特にない。
【0059】
但し、キャビティ15の積層方向Dstの寸法Lstが大きすぎると、キャビティ15での電波の伝搬ロスが大きくなる。このため、キャビティ15の積層方向Dstの寸法Lstは、動作周波数における電波の波長の2.0倍以下とされていることが望ましい。例えば、キャビティ15の積層方向Dstの寸法Lstは、キャビティ15の管軸方向Daxの寸法および管幅方向Dcrの寸法と同様に、動作周波数における電波の波長の1.0以上、且つ、当該波長の2.0倍以下の範囲に設定すればよい。なお、本例のキャビティ15は、積層方向Dstの寸法Lstが管幅方向Dcrの寸法よりも小さくなっている。
【0060】
このように構成されるアンテナデバイス1では、例えば、MMIC2の入出力部3から電波が出力されると、その電波は外部ポート11へ入力される。その外部ポート11へ入力された電波は、
図3の矢印A1のように、導波管部12、給電開口14の順に通ってキャビティ15へ到達する。そして、キャビティ15へ到達した電波は、矢印A2、A3のように、キャビティ15で4つの放射開口17へ分配され、4つの放射開口17から外部空間へ放射される。
【0061】
ここで、
図7は、MMIC2の入出力部3から電波を出力した際の反射特性を示すグラフである。
図7に示すように、反射特性は、中心周波数(本例では76.5GHz)±300MHzの周波数帯において、-20[dB]以下の良好な特性となっている。
【0062】
また、
図8および
図9は、本実施形態のアンテナデバイス1について、電磁界シミュレーションを行った結果を示している。なお、
図9では、磁界面であるH面での利得特性を実線で示し、電界面であるE面での利得特性を点線で示している。
【0063】
図8に示すように、アンテナデバイス1は、4つの放射開口17の略中心となる中心部位CPにおいて、積層方向Dstの一方側に向く指向性を有する。また、
図8、
図9に示すように、分布特性は、管軸方向Daxおよび管幅方向Dcrの双方において対称となる良好な特性となっている。さらに、
図9に示すように、最大利得が13[dBi]程度であり、良好な性能を有する。
【0064】
なお、例えば、MMIC2の入出力部3が外部空間から電波を受信する場合、アンテナデバイス1は、上記した入出力部3から電波が出力される場合とは逆向きに電波を伝搬する。
【0065】
以上説明したアンテナデバイス1は、キャビティ形成部16の対向壁部162に、4つの放射開口17が、中心部位CPの周囲において格子状に並ぶように配設されている。給電開口14は、キャビティ形成部16の開口壁部161のうち、積層方向Dstにおいてキャビティ15の中心位置Cと重なり合う位置に形成されている。そして、キャビティ15は、管軸方向Daxの寸法および管幅方向Dcrの寸法それぞれが、動作周波数における電波の波長の1.0倍以上、且つ、波長の2.0倍以下の範囲に設定される。
【0066】
これによると、給電開口14の開口中心CLに対応する位置の周囲に、格子状に4つの放射開口17を配置しているので、4つの放射開口17それぞれと給電開口14との間の距離を揃えることができる。また、キャビティ15における管軸方向Daxの寸法と管軸方向Daxおよび管幅方向Dcrの寸法を、電波の波長の1.0倍以上、且つ、波長の2.0倍以下の範囲に制限している。これらにより、4つの放射開口17での電波の位相を揃えることができる。
【0067】
加えて、単一のキャビティ15によって電波を4つの放射開口17へ分配する構造になっているので、従来技術の如く、電波の伝搬路をトーナメント状に分岐させる構造に比べて、アンテナデバイス1の体格の大型化を抑制することができる。
【0068】
したがって、本案のアンテナデバイス1によれば、体格の大型化を抑制しつつ、4つの放射開口17での電波の位相を揃えることができる。
【0069】
ここで、電波の伝搬路をトーナメント状に分岐させる構造では、電波の伝搬路が複雑でロバスト性が低下するが、本案の如く、単一のキャビティ15によって電波を4つの放射開口17へ分配する構造になっていればロバスト性を充分に確保することができる。
【0070】
また、電波の伝搬路をトーナメント状に分岐させる構造では、導波管の電波を2つに分配する部分に電波を4つに分配する部分を積層する積層構造が必要となる。このことは、製造コストの増大を招く要因となる。
【0071】
これに対して、本案の如く、単一のキャビティ15によって電波を4つの放射開口17へ分配する構造になっていれば、アンテナデバイス1を簡素な積層構造で実現可能となるので、製造コストの低減を図ることもできる。
【0072】
また、本実施形態のアンテナデバイス1には、以下の技術的事項が含まれている。
【0073】
(1)導波管部12は、給電開口14の開口位置よりも管軸方向Daxの一方側に導波管の終端部をなす第1終端壁123が設けられるとともに、給電開口14の開口位置よりも管軸方向Daxの他方側の少なくとも一箇所に反射抑圧壁13が設けられている。これによると、反射抑圧壁13によって、第1終端壁123等からの反射波の影響が低減されるので、反射波の影響による帯域の制限が抑えられる。この結果、アンテナデバイス1の広帯域化を図ることができる。
【0074】
(2)4つの放射開口17は、給電開口14の開口中心CLに対応する中心部位CPの周囲において、第1仮想線IL1に対して線対称となり、且つ、第2仮想線IL2に対して線対称となるように対向壁部162に配設されている。これによると、4つの放射開口17それぞれと給電開口14との間の距離を揃えて、4つの放射開口17での位相を揃えることができる。
【0075】
(3)キャビティ15は、積層方向Dstの寸法が動作周波数における電波の波長の2.0倍以下に設定される。このように、キャビティ15における積層方向Dstの寸法が波長の2.0倍以下に制限されていれば、アンテナデバイス1の体格の大型化を抑制することができる。また、4つの放射開口17と給電開口14との距離が短くなるので、キャビティ15での電波の伝搬ロスを抑えることができる。
【0076】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態で示したアンテナデバイス1は、例えば、以下の如く、変形可能である。なお、以下に示す変形例は、特段の支障がない限り、第1実施形態以外の実施形態にも適用することができる。
【0077】
(第1変形例)
第1実施形態では、対向壁部162に形成された4つの放射開口17が矩形形状となっているものを例示したが、4つの放射開口17の形状は、上記のものに限定されない。例えば、
図10に示すように、4つの放射開口17は、楕円形状になっていてもよい。なお、放射開口17は、菱形形状、長円形状等とされていてもよい。
【0078】
(第2変形例)
第1実施形態では、キャビティ15の平面視における形状が矩形形状となっているものを例示したが、キャビティ15の形状は、これに限定されない。例えば、
図11に示すように、アンテナデバイス1は、キャビティ15の平面視における形状が菱形形状となり、キャビティ15の四隅付近に矩形形状の放射開口17が配置されるものであってもよい。なお、キャビティ15は、対角線が管軸方向Daxおよび管幅方向Dcrと揃う向きで設定され、管軸方向Daxの寸法L1および管幅方向Dcrの寸法L2が、動作周波数における電波の波長の1.0倍以上、且つ、波長の2.0倍以下の範囲に設定される。
【0079】
(第3変形例)
図12に示すように、アンテナデバイス1は、キャビティ15の平面視における形状が菱形形状となり、キャビティ15の四隅付近に菱形形状の放射開口17が配置されるものであってもよい。
【0080】
(第4変形例)
図13に示すように、アンテナデバイス1は、キャビティ15の平面視における形状が菱形形状となり、キャビティ15の四隅付近に楕円形状の放射開口17が配置されるものであってもよい。
【0081】
(第5変形例)
第1実施形態では、給電開口14の開口位置よりも管軸方向Daxの他方側の一箇所に反射抑圧壁13が設けられているものを例示したが、導波管部12は、これに限定されず、複数箇所に反射抑圧壁13が設けられていてもよい。例えば、
図14に示すように、導波管部12は、給電開口14の開口位置よりも管軸方向Daxの他方側の二箇所に反射抑圧壁13A、13Bが設けられていてもよい。各反射抑圧壁13A、13Bは、管軸方向Daxにおいて異なる位置に配置される。これによると、2つの反射抑圧壁13A、13Bによって、反射波の影響が充分に低減されるので、アンテナデバイス1の帯域を広げることができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図15を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0083】
図15に示すように、アンテナデバイス1は、導電性を有する2つのブロックBC1、BC2および導電性を有するプレートPLが積層された積層構造を有する構造体STである。2つのブロックBC1、BC2は、金属製のブロックで構成されている。プレートPLは、金属製のプレートで構成されている。なお、2つのブロックBC1、BC2およびプレートPLのうち、少なくとも1つは、例えば、樹脂部材の表面に金属膜等の導電膜が形成されたものや、金属以外の導電性材料からなる導電部材で構成されていてもよい。
【0084】
アンテナデバイス1は、2つのブロックBC1、BC2およびプレートPLが、ネジ止め、接着等によって互いに結合されている。
【0085】
2つのブロックBC1、BC2およびプレートPLは、平面視の形状が同じ矩形形状とされている。また、2つのブロックBC1、BC2およびプレートPLは、積層方向Dstにおいて、互いに重なり合うように、積層方向Dstから見た際の大きさが同程度とされている。2つのブロックBC1、BC2およびプレートPLは、それぞれが積層されることで電気的に接続されている。
【0086】
本実施形態の導波管部12は、第1ブロックBC1に形成された第1溝部121と第2ブロックBC2における第1溝部121に対向する平坦な部位によって形成されている。なお、本実施形態の第2ブロックBC2には、第1実施形態で説明した第2溝部122が設けられていない。
【0087】
反射抑圧壁13は、第1溝部121の底面から積層方向Dstの一方側に向かって突き出る第1突起壁131と、第2ブロックBC2における第1溝部121に対向する部位から積層方向Dstの他方側に向かって突き出る第2突起壁132とで構成されている。
【0088】
本実施形態のキャビティ15は、第2ブロックBC2に形成された第1凹部151とプレートPLによって形成されている。本実施形態では、第2ブロックBC2およびプレートPLにおけるキャビティ15を形成する部位が“キャビティ形成部16”を構成している。なお、給電開口14は、第2ブロックBC2の第1凹部151の底面であって、第1溝部121に対向する部位に設けられている。
【0089】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態のアンテナデバイス1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0090】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図16~
図19を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0091】
図16に示すように、本実施形態のキャビティ形成部16には、キャビティ15が4つの放射開口17に対応する均等な4つの領域に区分されるように、側壁部163から給電開口14に近づくように延びる4つの区画壁18が設けられている。4つの区画壁18は、第2ブロックBC2に設けられた第1壁部18aと、第3ブロックBC3に設けられた第2壁部18bとが結合されることによって構成されている。
【0092】
具体的には、
図17に示すように、4つの区画壁18は、第1仮想線IL1に沿って延びる第1区画壁181および第2区画壁182と、第2仮想線IL2に沿って延びる第3区画壁183および第4区画壁184によって構成されている。第1区画壁181および第2区画壁182は、第2仮想線IL2に対して線対称となるように設けられている。第3区画壁183および第4区画壁184は、第1仮想線IL1に対して線対称となるように設けられている。
【0093】
4つの区画壁18は、給電開口14側に露出する内側端面18cを有している。4つの区画壁18は、給電開口14から放射開口17に向って伝搬される電波を内側端面18cで反射しないように、内側端面18cと給電開口14との間隔が充分に確保されている。4つの区画壁18における給電開口14に向かう方向の寸法は、例えば、1/4波長以下とされている。
【0094】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態のアンテナデバイス1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0095】
また、本実施形態のアンテナデバイス1は、以下の技術的事項が含まれている。
【0096】
(1)キャビティ形成部16は、キャビティ15が4つの放射開口17に対応する均等な4つの領域に区分されるように、側壁部163から給電開口14に近づくように延びる4つの区画壁18が設けられている。これによると、4つの区画壁18によって4つの放射開口17の間のアイソレーションを確保することができる。
【0097】
ここで、
図18および
図19は、MMIC2の入出力部3から電波を出力した際のキャビティ15での電波強度および4つの放射開口17での電波強度を示す等高線図(すなわち、コンター図)である。
図18によれば、本実施形態のアンテナデバイス1では、キャビティ15から4つの放射開口17へ同位相の電波が伝搬されることが判る。また、
図19によれば、電波強度の分布が4つの放射開口17で同様となっているので、4つの区画壁18によって4つの放射開口17の間のアイソレーションが確保されていることが確認できる。
【0098】
(第3実施形態の変形)
4つの放射開口17の間のアイソレーションを確保する観点では、第3実施形態の如く、キャビティ形成部16の4つの区画壁18が設けられていることが望ましい。但し、4つの区画壁18を設ける場合、4つの区画壁18の体積分だけキャビティ15の大きさを大きくする必要がある。このため、アンテナデバイス1の小型化やロバスト性向上を優先させる場合は、4つの区画壁18が省略されていてもよい。このことは以降の実施形態においても同様である。
【0099】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図20を参照して説明する。本実施形態では、第2実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0100】
図20に示すように、本実施形態のキャビティ形成部16には、キャビティ15が4つの放射開口17に対応する均等な4つの領域に区分されるように、側壁部163から給電開口14に近づくように延びる4つの区画壁18が設けられている。4つの区画壁18は、第2ブロックBC2に設けられた第1壁部18aと、プレートPLにおける第1壁部18aに対向する部位とが結合されることによって構成されている。このことを除き、4つの区画壁18は、基本的に第3実施形態で説明したものと同様である。
【0101】
その他については、第2実施形態と同様である。本実施形態のアンテナデバイス1は、第2実施形態および第3実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第2実施形態および第3実施形態と同様に得ることができる。
【0102】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、
図21を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0103】
図21に示すように、本実施形態のMMIC2は、第1実施形態で説明した入出力部3の代わりに、電気基板4に対して、接続配線41および入出力回路42が設けられている。
【0104】
接続配線41および入出力回路42は、電気基板4の一面F1に形成された導電性を有する配線パターンで構成されている。
【0105】
接続配線41は、MMIC2から電気基板4の一面F1に沿って導出されるように形成されている。接続配線41は、一端側がMMIC2の端子に電気的に接続されるとともに、他端側が入出力回路42に電気的に接続されている。
【0106】
入出力回路42は、アンテナデバイス1の外部ポート11に対して電波を送受信する。なお、入出力回路42は、第1実施形態で説明したMMIC2の入出力部3と同様に機能する。
【0107】
本実施形態の外部ポート11は、入出力回路42に対向するように配置されている。これにより、外部ポート11と入出力回路42との間で電波が伝搬可能となっている。なお、本実施形態では、第1実施形態と比較してアンテナデバイス1を電気基板4に対し積層方向Dstに近づけて配置するため、第1ブロックBC1には、積層方向Dstの一方側へ窪んだ凹溝部RGが形成されている。この凹溝部RGには、MMIC2が部分的に入り込んでいる。
【0108】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態のアンテナデバイス1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0109】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、
図22を参照して説明する。本実施形態では、第5実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0110】
図22に示すように、MMIC2は、電気基板4の一面F1ではなく、電気基板4の他面F2に実装されている。なお、第1ブロックBC1には、第5実施形態で説明した凹溝部RGが形成されていない。
【0111】
また、電気基板4には、一面F1に入出力回路42が形成され、他面F2に接続配線41が形成されている。そして、電気基板4は、電気基板4を貫通して接続配線41と入出力回路42とを電気的に接続する接続部43が設けられている。接続部43は、例えば、スルーホールによって構成される。入出力回路42および接続配線41は、接続部43を介して電気的に接続されている。
【0112】
その他については、第5実施形態と同様である。本実施形態のアンテナデバイス1は、第5実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第5実施形態と同様に得ることができる。
【0113】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、
図23を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0114】
図23に示すように、本実施形態のアンテナデバイス1は、第1ブロックBC1が、第1実施形態で説明したスペーサ5を介さずに、電気基板4の一面F1に接触するように配置されている。そして、MMIC2は、電気基板4の他面F2に実装されている。
【0115】
また、電気基板4のうちMMIC2の入出力部3に相対する位置には、積層方向Dstに電気基板4を貫通した基板貫通孔SHが形成されている。そして、外部ポート11は、MMIC2の入出力部3との間に、基板貫通孔SHを挟んでその入出力部3に対向するように配置されている。このような配置形態によって、外部ポート11とMMIC2との間で電波が伝搬可能となっている。
【0116】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態のアンテナデバイス1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0117】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、
図24を参照して説明する。本実施形態では、第6実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0118】
図24に示すように、本実施形態のアンテナデバイス1は、第1ブロックBC1が、第1実施形態で説明したスペーサ5を介さずに、電気基板4の一面F1に接触するように配置されている。そして、MMIC2は、電気基板4の他面F2に実装されている。
【0119】
また、電気基板4には、一面F1に入出力回路42が形成され、他面F2に接続配線41が形成されている。そして、電気基板4は、電気基板4を貫通して接続配線41と入出力回路42とを電気的に接続する接続部43が設けられている。接続部43は、例えば、スルーホールによって構成される。入出力回路42および接続配線41は、接続部43を介して電気的に接続されている。
【0120】
その他については、第6実施形態と同様である。本実施形態のアンテナデバイス1は、第6実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第6実施形態と同様に得ることができる。
【0121】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について、
図25を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0122】
図25に示すように、複数のアンテナデバイス1をアレイ化したアレイアンテナARによって、MMIC2が送受信する電波を伝える構成とすることができる。このようなアレイアンテナARは、例えば、複数のアンテナデバイス1における導波管部12の端をMMIC2側で集合させて、アンテナデバイス1の導波管部12とMMIC2との間で電波が伝搬可能にすることで実現できる。
【0123】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態のアンテナデバイス1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0124】
(1)前述の実施形態で説明したように、本案のアンテナデバイス1は、小型に構成することが可能であるため、このアンテナデバイス1を複数用いてアレイアンテナARを構成すすることで、小型なアレイアンテナARを実現することができる。加えて、MMIC2の入出力部3を多数の放射開口17へ連結することができるので、アンテナデバイス1の利得を高めることが可能である。
【0125】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0126】
上述の実施形態の如く、アンテナデバイス1は、導波管部12における少なくとも一箇所に反射抑圧壁13が設けられていることが望ましいが、これに限定されない。アンテナデバイス1は、反射抑圧壁13が省略された構成になっていてもよい。
【0127】
上述の実施形態の如く、4つの放射開口17は、中心部位CPの周囲において、第1仮想線IL1に対して線対称となり、且つ、第2仮想線IL2に対して線対称となるように対向壁部162に配設されていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。
【0128】
上述の実施形態の如く、キャビティ15は、積層方向Dstの寸法が動作周波数における電波の波長の2.0倍以下に設定されることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。キャビティ15は、上述したものとは異なる立体空間となっていてもよい。
【0129】
上述の第1実施形態等では、導波管部12が直線状に延伸しているが、導波管部12は、一部が曲がって延伸していてもよい。そのような導波管部12では、管軸方向Daxは、導波管部12の中心軸線の接線方向として定義される。
【0130】
上述の実施形態のアンテナデバイス1は、3つの部材を管軸直交方向に積層したもので構成されているが、これに限定されない。アンテナデバイス1は、例えば、一部または全部の部材が管軸直交方向に交差する方向に積層したもので構成されていてもよい。
【0131】
上述の実施形態のMMIC2は、電波の送受信を行うとしているが、これは一例であり、電波の送信および受信の一方だけを行うようになっていてもよい。なお、アンテナデバイス1は、MMIC2以外の半導体デバイスによって電波の送受信を行う機器にも適用可能である。
【0132】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0133】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0134】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0135】
[本開示の観点]
【0136】
[第1の観点]
アンテナデバイスであって、
電波の伝搬路をなす導波管の一部を構成するとともに、所定の管軸方向(Dax)に延びる導波管部(12)と、
前記管軸方向に直交する一方向である管軸直交方向(Dst)において前記導波管部に隣接して設けられ、給電開口(14)を介して前記導波管部の内側に連通するキャビティ(15)を形成するキャビティ形成部(16)と、を備え、
前記キャビティ形成部は、前記導波管部に隣接するとともに前記給電開口が形成された開口壁部(161)と、前記管軸直交方向において前記開口壁部に対向する対向壁部(162)と、前記開口壁部と前記対向壁部とを繋ぐ側壁部(163)と、を有し、
前記対向壁部における前記給電開口の開口中心に対して前記管軸直交方向に対向する部位を中心部位としたとき、
前記対向壁部には、4つの放射開口(17)が、前記中心部位の周囲において格子状に並ぶように配設されており、
前記給電開口は、前記開口壁部のうち、前記管軸直交方向において前記キャビティの中心位置と重なり合う位置に形成されており、
前記キャビティは、前記管軸方向の寸法、前記管軸方向および前記管軸直交方向それぞれに直交する方向の寸法それぞれが、動作周波数における電波の波長の1.0倍以上、且つ、前記波長の2.0倍以下の範囲に設定される、アンテナデバイス。
【0137】
[第2の観点]
前記導波管部は、前記給電開口の開口位置よりも前記管軸方向の一方側に前記導波管の終端部をなすショート壁(121)が設けられるとともに、前記開口位置よりも前記管軸方向の他方側の少なくとも一箇所に電波の反射を抑圧する反射抑圧壁(13)が設けられている、第1の観点に記載のアンテナデバイス。
【0138】
[第3の観点]
前記キャビティ形成部は、前記キャビティが4つの前記放射開口に対応する均等な4つの領域に区分されるように、前記側壁部から前記給電開口に近づくように延びる4つの区画壁(18)が設けられている、第1または第2の観点に記載のアンテナデバイス。
【0139】
[第4の観点]
前記対向壁部における前記中心部位を通る仮想線のうち前記管軸方向に沿うものを第1仮想線(IL1)、前記第1仮想線に直交する仮想線を第2仮想線(IL2)としたとき、
4つの前記放射開口は、前記中心部位の周囲において、前記第1仮想線に対して線対称となり、且つ、前記第2仮想線に対して線対称となるように前記対向壁部に配設されている、第1ないし第3の観点のいずれか1つに記載のアンテナデバイス。
【0140】
[第5の観点]
前記キャビティは、前記管軸直交方向の寸法が前記波長の2.0倍以下に設定される、第1ないし第4の観点のいずれか1つに記載のアンテナデバイス。
【符号の説明】
【0141】
1 アンテナデバイス
12 導波管部
14 給電開口
15 キャビティ
16 キャビティ形成部
161 開口壁部
162 対向壁部
163 側壁部
17 放射開口