(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150227
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】直動案内装置
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
F16C29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063541
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 康一
(72)【発明者】
【氏名】水村 美典
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA21
3J104BA33
3J104DA05
3J104DA14
3J104DA20
3J104EA01
3J104EA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】転動体の詰まりの発生を抑制し、安定した動作が可能な直動案内装置を提供する。
【解決手段】スライダは、スライダの軌道溝7とこれに略平行な転動体の戻し通路21とが形成されたスライダ本体と、転動通路22と戻し通路21とを連通する方向転換路25が形成されるとともにスライダ本体の長手方向の両端部に着脱可能に固定されたエンドキャップ5と、を備える。方向転換路25を構成するエンドキャップ5の湾曲面は、転動通路22に接続する方向転換路25の第1接続部分41に形成され、無限循環通路の中心を通る断面において直線状の第1直線部51と、戻し通路21に接続する方向転換路25の第2接続部分42に形成され、無限循環通路の中心を通る断面において直線状の第2直線部52と、を有する。第1直線部51のスライダの移動方向とのなす角度と、第2直線部52のスライダ2の移動方向とのなす角度が等しい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、スライダと、複数の転動体と、を有し、
前記案内レール及び前記スライダは、互いに対向する位置に、前記転動体の転動通路を形成する軌道溝をそれぞれ有し、
前記両軌道溝は前記案内レールの長手方向に延び、
前記転動体は前記転動通路に配置され、
前記転動通路内での前記転動体の転動を介して、前記スライダが前記案内レールに案内されて前記長手方向に移動可能となっており、
前記スライダは、前記スライダの軌道溝とこれに略平行な前記転動体の戻し通路とが形成されたスライダ本体と、前記転動通路と前記戻し通路とを連通する方向転換路が形成されるとともに前記スライダ本体の前記長手方向の両端部に着脱可能に固定されたエンドキャップと、を備え、
前記転動通路、前記戻し通路、及び前記方向転換路は、前記転動体を循環させる無限循環通路を形成し、
前記方向転換路を構成する前記エンドキャップの湾曲面は、
前記転動通路に接続する前記方向転換路の第1接続部分に形成され、前記無限循環通路の中心を通る断面において直線状の第1直線部と、
前記戻し通路に接続する前記方向転換路の第2接続部分に形成され、前記無限循環通路の中心を通る断面において直線状の第2直線部と、を有し、
前記第1直線部の前記スライダの移動方向とのなす角度と、前記第2直線部の前記スライダの移動方向とのなす角度が等しい、
直動案内装置。
【請求項2】
前記角度が30度以下である、
請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記角度がαであり、前記転動体の直径がDWであり、前記第1直線部または前記第2直線部の長さがLである場合に、L<DW/(2×sinα)が成立する、
請求項1または2に記載の直動案内装置。
【請求項4】
前記方向転換路を構成する前記エンドキャップの湾曲面は、2つの円弧部と、各円弧部を連結する第3直線部と、をさらに備える、
請求項1または2に記載の直動案内装置。
【請求項5】
前記方向転換路を構成する前記エンドキャップの湾曲面は、第1の曲率半径を有する2つの第1の円弧部と、各第1の円弧部を連結し、前記第1の曲率半径より大きい第2の曲率半径を有する第2の円弧部と、をさらに備える、
請求項1または2に記載の直動案内装置。
【請求項6】
前記スライダ本体に対し前記エンドキャップを位置決めするための位置決め構造が設けられている、請求項1または2に記載の直動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の直動案内装置としては、例えば下記のようなものがある。直線状に延びる断面形状略矩形の案内レールの上に、スライダが案内レールの長手方向に移動可能に組み付けられている。スライダは凹部を有して断面形状略U字状をなしており、その凹部内に案内レールの上部を収容するようにして案内レールに組み付けられている。案内レールの両側面には、前記長手方向に延びる断面円弧状の凹溝からなる軌道面が形成されており、案内レールの側面に対向するスライダの内側面(凹部の内面)には、案内レールの軌道面に対向する断面円弧状の凹溝からなる軌道面が形成されている。
【0003】
そして、案内レールの軌道面とスライダの軌道面との間に転動体であるボールが転動するための転動通路が形成されていて、この転動通路は前記長手方向に延びている。この転動通路内には複数のボールが転動自在に装填されていて、これら複数のボールの転動通路内での転動を介して、スライダが案内レールに案内されつつ前記長手方向に移動可能となっている。
【0004】
また、スライダは、スライダ本体と、スライダ本体の両端部(前記長手方向の両端部であり、スライダの移動方向の両端部とも言える)に着脱可能に取り付けられたエンドキャップと、で構成されており、スライダの軌道面はスライダ本体の内側面に形成されている。さらに、スライダは、スライダ本体の内部に、転動通路と平行をなして前記長手方向に貫通する直線孔からなる戻し通路を備えている。
【0005】
一方、エンドキャップの裏面(スライダ本体との当接面)には、円弧状に湾曲する方向転換路が形成されている。詳述すると、スライダ本体との当接面には方向転換路用凹部が形成されており、この方向転換路用凹部に半円柱状のリターンガイドが嵌合されている。リターンガイドの外径面には、ボールの案内面となる断面円弧状の凹溝が半円周状に形成され、このリターンガイドの案内面と方向転換路用凹部の内面とで方向転換路が形成されている。
【0006】
このエンドキャップをスライダ本体に取り付けると、方向転換路によって転動通路と戻し通路とが連通される。これら、転動通路、戻し通路と両端の方向転換路とで、ボールを転動通路の終点から始点へ搬送して循環させる無限循環通路が構成される。
【0007】
案内レールに組みつけられたスライダが案内レールに沿って前記長手方向に移動すると、転動通路内に装填されているボールは、転動通路内を転動しつつ案内レールに対してスライダと逆方向に移動する。そして、ボールが転動通路の終点に達すると、すくい上げ部に衝突することによって転動通路からすくい上げられ方向転換路へ送られる。方向転換路に入ったボールはUターンして戻し通路に導入され、戻し通路を通って反対側の方向転換路に至る。ここで再びUターンして転動通路の始点に戻り、このような循環経路内の循環を無限に繰り返す。
【0008】
スライダの軌道面の前記長手方向の端部とすくい上げ部との間の最短距離が、ボールの直径よりも小さい場合は、ボールがすくい上げられる際にスライダ本体の前記長手方向の端部と干渉し、ボールを方向転換路へ送ることが困難となる。そのため、スライダの軌道面の前記長手方向の端部に形成された円弧状に連続する角部を面取りして、傾斜面を設け、スライダの軌道面の前記長手方向の端部とすくい上げ部との間の最短距離が、ボールの直径以上となるようにし、ボールとスライダ本体の前記長手方向の端部との干渉を防いでいる。
【0009】
上記のような技術として、リターンガイドの案内面とスライダの軌道面の前記長手方向の端部とを滑らかに接続するために面取りを施し、ボールの循環に伴う騒音と振動を抑制する技術がある。この面取りは、ボールの循環の阻害を回避できるようなものであればいいので、通常の用途であれば、リターンガイドの案内面とスライダの軌道面の前記長手方向の端部とを必要以上に滑らかに接続しなくても差し支えない。
【0010】
特許文献1は、取扱い性及び組立性に優れ、製造コストが低く、作動性及び静粛性が優れる直動案内装置を開示している。直動案内装置は、案内レールに組み付けられていない状態のスライダから転動体が脱落することを防止する保持器を備える。樹脂材料製のエンドキャップに形成された方向転換路の戻し通路側部分の外方側内面は、戻し通路と転動通路側部分との間で円弧状に湾曲する湾曲面であり、転動通路側部分の外方側内面は、湾曲面とタング部とを接続し転動通路に対して角度をなして傾斜する平面(直線部)である。湾曲面の曲率中心は、戻し通路と転動通路との幅方向中間位置よりも転動通路側に位置している。タング部の先端と湾曲面の曲率中心とを結んだ直線と、スライダ本体の端面とがなす角度よりも、直線部の角度の方が小さくなるように設定されている。
【0011】
特許文献2は、転動体の循環が円滑で且つ製造コストが安価な直動案内装置を開示している。直動案内装置は、案内レールとスライダと複数の転動体とを有している。スライダの軌道面の案内レールの長手方向の端部には、転動通路と方向転換路とを接続するリターンガイドを構成する傾斜面が、スライダ本体の切削加工により形成されている。傾斜面はスライダの軌道面に対して傾斜しており、傾斜面とスライダの軌道面とのなす角度は15°以上50°以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2015-224694号公報
【特許文献2】特開2016-031077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1においては、このような直線部の構成は転動体の負荷転動体軌道側から方向転換路への進入部にのみ形成されており、転動体の戻り路側からエンドキャップ内部の方向転換路に進入する部位には設けられていない。このため、戻り路側から方向転換路への進入に対しては衝突を緩和することができない。スライダは案内レール上を往復運動するため、転動体が負荷転動体軌道から方向転換路への進入と戻り路から方向転換路に進入する状態が異なることにより、作動性は不安定となる。より安定した動作、作動性を得るには、戻り路側から方向転換路に進入する部位でも作動性を向上させる構造が必要である。
【0014】
本発明は、転動体の詰まりの発生を抑制し、安定した動作が可能な直動案内装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 案内レールと、スライダと、複数の転動体と、を有し、
前記案内レール及び前記スライダは、互いに対向する位置に、前記転動体の転動通路を形成する軌道溝をそれぞれ有し、
前記両軌道溝は前記案内レールの長手方向に延び、
前記転動体は前記転動通路に配置され、
前記転動通路内での前記転動体の転動を介して、前記スライダが前記案内レールに案内されて前記長手方向に移動可能となっており、
前記スライダは、前記スライダの軌道溝とこれに略平行な前記転動体の戻し通路とが形成されたスライダ本体と、前記転動通路と前記戻し通路とを連通する方向転換路が形成されるとともに前記スライダ本体の前記長手方向の両端部に着脱可能に固定されたエンドキャップと、を備え、
前記転動通路、前記戻し通路、及び前記方向転換路は、前記転動体を循環させる無限循環通路を形成し、
前記方向転換路を構成する前記エンドキャップの湾曲面は、
前記転動通路に接続する前記方向転換路の第1接続部分に形成され、前記無限循環通路の中心を通る断面において直線状の第1直線部と、
前記戻し通路に接続する前記方向転換路の第2接続部分に形成され、前記無限循環通路の中心を通る断面において直線状の第2直線部と、を有し、
前記第1直線部の前記スライダの移動方向とのなす角度と、前記第2直線部の前記スライダの移動方向とのなす角度が等しい、
直動案内装置。
(2) 前記角度が30度以下である、
(1)に記載の直動案内装置。
(3) 前記角度がαであり、前記転動体の直径がDWであり、前記第1直線部または前記第2直線部の長さがLである場合に、L<DW/(2×sinα)が成立する、
(1)または(2)に記載の直動案内装置。
(4) 前記方向転換路を構成する前記エンドキャップの湾曲面は、2つの円弧部と、各円弧部を連結する第3直線部と、をさらに備える、
(1)から(3)のいずれかに記載の直動案内装置。
(5) 前記方向転換路を構成する前記エンドキャップの湾曲面は、第1の曲率半径を有する2つの第1の円弧部と、各第1の円弧部を連結し、前記第1の曲率半径より大きい第2の曲率半径を有する第2の円弧部と、をさらに備える、
(1)から(3)のいずれかに記載の直動案内装置。
(6) 前記スライダ本体に対し前記エンドキャップを位置決めするための位置決め構造が設けられている、(1)から(5)のいずれかに記載の直動案内装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、転動体が方向転換路の両端において一定の同じ角度で進入するため、スライダの往復運動時の経路に差がなくなり、転動体の詰まりの発生を抑制し、直動案内装置の動作を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る直動案内装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、無限循環通路の中心を通る断面で、直動案内装置の上方から見た無限循環通路の全体図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る直動案内装置のエンドキャップ付近の拡大図であり、
図2のX領域の拡大図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る直動案内装置の方向転換路の拡大図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る直動案内装置の方向転換路の拡大図である。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係る直動案内装置の方向転換路の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る直動案内装置について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0019】
(直動案内装置の全体構成)
まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る直動案内装置について説明する。直動案内装置10は、一方向に延びる金属製の案内レール1と、案内レール1を跨ぐように組み付けられ、この案内レール1に対して軸方向に移動可能な断面略コの字状のスライダ2と、複数の転動体6と、を備える。なお、本明細書において、前後方向とは、スライダ2が案内レール1に沿って移動する方向を表し、左右方向とは、案内レール1に取り付けられたスライダ2の幅方向を表す。
【0020】
案内レール1の左右側面には、軸方向に延びる上下2本の軌道溝(第1の軌道溝)3がそれぞれ形成されている。スライダ2は、案内レール1の左右両側に袖部4を有するスライダ本体9と、スライダ本体9の前後方向の一端と他端に装着された一対のエンドキャップ5と、を備える。
【0021】
スライダ本体9における袖部4の内側面には、案内レール1の軌道溝3と対向する軌道溝(第2の軌道溝)7が左右両側に2本ずつ形成されている。そして、案内レール1の長手方向に延びつつ、対向して配置された軌道溝3と軌道溝7とにより、左右両側に各2本の転動通路22が構成されている。さらにスライダ本体9には、スライダ2の軌道溝7に略平行であって、転動通路22の一端と他端とを連通する戻し通路21が設けられている。転動通路22、戻し通路21、及び後述の方向転換路25は、転動体6を循環させる無限循環通路23を構成している。
【0022】
エンドキャップ5は、スライダ本体9の長手方向の前後両端部に対し、それぞれボルト12により、着脱可能に固定されている。エンドキャップ5は、例えば、合成樹脂材の射出成形品であって、スライダ本体9と同様に断面略コの字状に形成されている。
【0023】
スライダ2の内部に合計で4本設けられた無限循環通路23内には、たとえば鋼球からなる転動体(負荷ボール)6が転動自在に充填されている。複数の転動体6は、案内レール1とスライダ2との相対移動に伴って、無限循環通路23内を転動しながら無限循環する。
【0024】
図2は、無限循環通路の中心を通る断面で、直動案内装置の上方から見た、転動体6が無限循環する無限循環通路の全体図である。
図2は、スライダ本体9の片側のみの無限循環通路を示している。スライダ本体9の長手方向の両端部に設けられたエンドキャップ5は、内部に配置されたリターンガイド31と共に、転動通路22と戻し通路21とを連通する方向転換路25を構成する。方向転換路25は、直動案内装置10の上方から見て、湾曲するように構成され、転動通路22と戻し通路21とを連通する。転動通路22内での転動体6の転動を介して、スライダ2が案内レール1に案内されて、長手方向に移動可能となっている。スライダ2は、その移動により、転動体6を転動通路22の終点から始点へ搬送して循環させるようになっている。
【0025】
ここで、本実施形態においては、方向転換路25を構成するエンドキャップ5の湾曲面、即ち、方向転換路25に沿った方向の断面において円弧状の湾曲面は、転動体6が、方向転換路25から転動通路22に進入する部位と、戻し通路21から方向転換路25に進入する部位との双方に、
図2の無限循環通路23の中心を通る断面において直線状の直線部51,52が設けられている。そして、これら直線部51,52の傾斜角度を同等にすることにより、転動体6が方向転換路25に進入する際の状態が、転動通路22と戻し通路21の双方の側で同等としている。これにより、転動通路22または戻し通路21と、方向転換路25との接続部分において、転動体6が円滑に移動可能となり、直動案内装置10の動作を安定させることが可能となっている。以下、実施形態の詳細を説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係る直動案内装置10のエンドキャップ5付近の拡大図であり、
図2のX領域の拡大図である。エンドキャップ5の方向転換路25の両端は、転動通路22に接続する第1接続部分41と、戻し通路21に接続する第2接続部分42によって構成される。第1接続部分41および第2接続部分42は、転動通路22または戻し通路21から移動した転動体6をすくい上げるすくい上げ部として機能する。そして、第1直線部51が、第1接続部分41におけるスライダ2の軌道溝3の側に形成されるとともに、第2直線部52が、第2接続部分42におけるスライダ2の軌道溝3から遠い側に形成されている。
【0027】
また、第1直線部51および第2直線部52は、スライダ2の移動方向に対し、角度αをなすように形成されているが、第1直線部51のスライダ2の移動方向とのなす角度αと、第2直線部52のスライダ2の移動方向とのなす角度αは等しい。なお、本明細書において、「角度αは等しい」とは、本効果を奏する上で略等しい角度に設定されればよく、設計上の誤差を含むものとする。
【0028】
このような構成において、転動体6は二つの直線部に沿って一定の角度で方向転換路25に進入する。すなわち、転動体6は、転動通路22から方向転換路25に向けて、第1直線部51に沿って、角度αで進入する(
図3に示したエンドキャップ5、すなわち
図2のX領域とは逆側のY領域のエンドキャップ5における動きを想定)。また、転動体6は、戻し通路21から方向転換路25に向けて、第2直線部52に沿って、角度αで進入する(
図3のエンドキャップ5における動きを想定)。第1直線部51および第2直線部52の存在により、転動体6は、転動通路22または戻し通路21から、円滑に方向転換路25に向けて移動することができる。
【0029】
さらに、2つの直線部の角度が等しいということは、転動体6が転動通路22から方向転換路25に進入する角度と、転動体6が戻し通路21から方向転換路25に進入する角度が等しいということを意味する。すなわち、転動体6は、方向転換路25の両端において一定の同じ角度で進入するため、スライダ2の往復運動時の経路に差がなくなり、転動体6の詰まりの発生を抑制し、直動案内装置10の動作を安定させることが可能となる。
【0030】
第1直線部51の角度αおよび第2直線部52の角度αは、スライダ2の移動方向に対し、30度以下(α≦30°)に設定することが望ましい。これにより、転動体6の円滑な移動を容易に確保することができる。
【0031】
また、第1直線部51の傾斜方向に沿った長さが長さL1、第2直線部52の傾斜方向に沿った長さが長さL2であり、転動体の直径が直径DWである場合、長さL1および長さL2は、L<DW/(2×sinα)を満たす長さLに設定することが望ましい。これにより、エンドキャップ5の厚みT1を抑制し、スライダ本体9の全長を抑えても、転動通路22および戻し通路21の必要な長さを確保することが容易になる。
【0032】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る直動案内装置10のエンドキャップ5付近の拡大図である。第1実施形態においては、方向転換路25を構成するエンドキャップ5の湾曲面が、第1直線部51および第2直線部52を、無限循環通路23の中心を通る断面において単一の円弧状の円弧部で連結した構成を有している。一方、第2実施形態においては、方向転換路25を構成するエンドキャップ5の湾曲面が、第1直線部51および第2直線部52を連結する2つの円弧部25a,25aと、各円弧部を連結する第3直線部25bとをさらに備える。これにより、エンドキャップ5の厚みT2を、第1実施形態の厚みT1に比べて小さく抑えることができるため、スライダ2の全長を変更せずに、スライダ本体9の長さを長くし、転動通路22および戻し通路21の長さを長くすることができる。転動通路22および戻し通路21の長さを長くすれば、転動体6の数を増やすころができるため、直動案内装置10の負荷能力を高めることができる。
【0033】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る直動案内装置10のエンドキャップ5付近の拡大図である。第3実施形態においては、第2実施形態における第3直線部25bを、他の円弧部25cに置き換えている。円弧部25cの曲率半径は、2つの円弧部25a,25aの曲率半径より大きい。すなわち、方向転換路25が、第1の曲率半径を有する2つの第1の円弧部25a,25aと、各第1の円弧部を連結し、第1の曲率半径より大きい第2の曲率半径を有する第2の円弧部25cにより構成される。これにより、エンドキャップ5の厚みT3を、第1実施形態の厚みT1に比べて小さく抑えることができるため、スライダ2の全長を変更せずに、スライダ本体9の長さを長くし、転動通路22および戻し通路21の長さを長くすることができる。また、転動体6が、方向転換路25の外周側の面に沿って移動しやすくなるため、転動体6の循環が安定する。
【0034】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態に係る直動案内装置10のエンドキャップ5付近の拡大図である。第4実施形態においては、スライダ本体9に対しエンドキャップ5を位置決めするための位置決め構造60が設けられている。具体的に位置決め構造60は、エンドキャップ5およびリターンガイド31に設けられた凸部61と、スライダ本体9に設けられた凹部62とを含む。
図6においては、第2直線部52の延長線が、凸部61の根元Pに重なるように構成されている。これにより、スライダ本体9に対するエンドキャップの位置決めを容易に行うことが可能となる。ただし、位置決め構造60の具体的な構成は、本実施形態のものには限定されず、たとえば凸部をスライダ本体9に設け、凹部をエンドキャップ5およびリターンガイド31に設けることもできる。
【0035】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0036】
1 案内レール
2 スライダ
3 案内レールの軌道溝
4 袖部
5 エンドキャップ
6 転動体(負荷ボール)
7 スライダの軌道溝
9 スライダ本体
10 直動案内装置
21 戻し動路
22 転動通路
23 無限循環通路
25 方向転換路
25a 第1の円弧部
25b 第3直線部
25c 第2の円弧部
31 リターンガイド
41 第1接続部分
42 第2接続部分
51 第1直線部
52 第2直線部
60 位置決め構造
61 凸部
62 凹部