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  • 特開-吸音構造、及び車両部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150234
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】吸音構造、及び車両部品
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20241016BHJP
   G10K 11/165 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G10K11/16 120
G10K11/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063549
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】若松 洋平
(72)【発明者】
【氏名】川西 康之
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA06
5D061AA16
5D061BB28
(57)【要約】
【課題】広範囲の周波数帯域における吸音を実現できる技術を提供すること。
【解決手段】本技術では、樹脂と、磁性金属と、を有する複合膜と、遮音壁と、前記複合膜と前記遮音壁との間に設けられた空気層と、前記空気層を挟んで前記複合膜と対向する位置に備えられた磁石と、を有する吸音構造を提供する。本技術に係る吸音構造における前記複合膜としては、前記樹脂中に前記磁性金属が混合された複合膜を用いることができる。本技術に係る吸音構造における前記磁石としては、電磁石を用いることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、磁性金属と、を有する複合膜と、
遮音壁と、
前記複合膜と前記遮音壁との間に設けられた空気層と、
前記空気層を挟んで前記複合膜と対向する位置に備えられた磁石と、
を有する吸音構造。
【請求項2】
前記複合膜は、前記樹脂中に前記磁性金属が混合された複合膜である、請求項1に記載の吸音構造。
【請求項3】
前記磁石は、電磁石である、請求項1に記載の吸音構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の吸音構造を有する、車両部品、又は建築用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、吸音構造に関する。より詳細には、本技術は、吸音性能を制御し得る吸音構造、及び該吸音構造を有する車両部品に関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野や、車両・航空機等の運搬分野において、より快適な空間を作り出すために、吸音構造が広く使用されている。例えば、車両分野においては、エンジン等から発生する騒音を低減させるために、吸音構造が用いられている。近年では、吸音構造は、その用途等に合わせて様々な技術開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸音対象となる音源側に配置されるべき第1プレートと、音源とは反対側に配置されるべき第2プレートと、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置される中間プレートとを備え、前記第1プレートと前記中間プレートとの間に空洞をなす第1空間が形成され、前記第2プレートと前記中間プレートとの間に第2空間が形成され、前記第2空間に吸音材が収容され、前記第1プレートに形成された通気部を介して前記第1空間と外部が連なり、前記中間プレートに形成された通気部を介して前記第1空間と前記第2空間が連なることで、広い周波数帯域にわたり吸音率を高めることができる吸音構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-130929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸音材として頻繁に使用されている多孔質材、繊維、不織布等は、主に、1000Hz以上の高周波域の音を吸収することができる。一方、低周波域や中周波域の吸音を行う技術としては、ヘルムホルツ共鳴や板振動を利用する技術があるが、これらの方法は、素材の種類や形状により吸音可能な周波数域が決まっており、広範囲の周波数帯域における吸音を実現することができないといった問題がある。
【0006】
そこで、本技術では、広範囲の周波数帯域における吸音を実現できる技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術では、まず、樹脂と、磁性金属と、を有する複合膜と、
遮音壁と、
前記複合膜と前記遮音壁との間に設けられた空気層と、
前記空気層を挟んで前記複合膜と対向する位置に備えられた磁石と、
を有する吸音構造を提供する。
本技術に係る吸音構造における前記複合膜としては、前記樹脂中に前記磁性金属が混合された複合膜を用いることができる。
本技術に係る吸音構造における前記磁石としては、電磁石を用いることができる。
【0008】
本技術では、次に、本技術に係る吸音構造を有する車両部品、及び建築用内装材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】Aは本技術に係る吸音構造1の第1実施形態を模式的に示す一部断面模式図であり、BはAの破線部分の拡大図である。
図2】Aは本技術に係る吸音構造1の第2実施形態を模式的に示す一部断面模式図であり、BはAの破線部分の拡大図である。
図3】Aは本技術に係る吸音構造1の第3実施形態を模式的に示す一部断面模式図であり、BはAの破線部分の拡大図である。
図4】実施例における吸音率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
1.吸音構造1
図1Aは、本技術に係る吸音構造1の第1実施形態を模式的に示す一部断面模式図であり、図1B図1Aの破線部分の拡大図である。本技術に係る吸音構造1は、複合膜11と、遮音壁12と、空気層13と、磁石14と、を有する。その他、本技術に係る作用や効果を損なわない範囲において、用いる用途や構造に応じて、その他の構成を備えることもできる。以下、各構成について、詳細に説明する。
【0012】
(1)複合膜11
本技術に係る吸音構造1に用いる複合膜11は、樹脂111と、磁性金属112と、を有する。本技術に係る吸音構造1は、後述する磁石14の磁力によって、複合膜11が変形することで、吸音率の制御を行うことができる(詳細は後述する)。そのため、本技術で用いる複合膜11は、弾性、可撓性、復元性等を備えることが好ましい。複合膜11がこれらの特性を有することで、吸音構造1の吸音性能の制御性を向上させることができる。
【0013】
複合膜11の膜厚は、本技術の作用や効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いる複合膜11の膜厚の下限としては、例えば0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは0.7mm以上である。複合膜11の膜厚の下限をこの範囲とすることにより、吸音構造1の強度を向上させることができる。
【0014】
本技術に用いる複合膜11の膜厚の上限としては、例えば3.0mm以下、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。複合膜11の膜厚の上限をこの範囲とすることにより、複合膜11の弾性、可撓性、復元性を向上させることができ、その結果、吸音構造1の吸音性能の制御性を向上させることができる。
【0015】
(1-1)樹脂111
本技術に用いることができる樹脂111は、広義の樹脂であり、狭義の樹脂以外に、ゴムやエラストマー等を包含する。本技術では、本技術の作用や効果を損なわない限り、吸音構造1に用いることができる広義の樹脂を、1種又は2種以上、自由に組み合わせて用いることができる。
【0016】
狭義の樹脂としては、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられ、具体的な一例としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
【0017】
ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム(U)、エチレンープロピレンゴム(EPM、EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(1,2-BR)、ブチルゴム(IIR)、クロロスルホン化プリエチレンゴム(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、多硫化ゴム(T)、フッ素ゴム(FKM)等が挙げられる。
【0018】
エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー(TPS)、ポリウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリ塩化ビニル系エラストマー(TPVC)等が挙げられる。
【0019】
複合膜11における樹脂111の含有量は、本技術の作用や効果を損なわない限り、目的とする複合膜11の性質等に応じて、自由に設定することができる。複合膜11における樹脂111の含有量の下限としては、例えば30体積%以上、好ましくは35体積%以上、より好ましくは40体積%以上である。樹脂111の含有量の下限をこの範囲にすることで、複合膜11の弾性、可撓性、復元性を向上させることができ、その結果、吸音構造1の吸音性能の制御性を向上させることができる。
【0020】
複合膜11における樹脂111の含有量の上限としては、例えば90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。樹脂111の含有量の上限をこの範囲にすることで、複合膜11の磁性を向上させることができ、その結果、吸音構造1の吸音性能の制御性を向上させることができる。
【0021】
(1-2)磁性金属112
本技術に用いることができる磁性金属112は、本技術の作用や効果を損なわない限り、一般的な磁性金属112を、1種又は2種以上、自由に組み合わせて用いることができる。本技術では、磁性金属112として、硬磁性金属や軟磁性金属のいずれも自由に組み合わせて用いることが可能であるが、本技術では、軟磁性金属を用いることが好ましい。軟磁性金属を用いることで、吸音構造1の吸音率の制御性を向上させることができる。なお、硬磁性金属とは、外部磁界によって磁化された後、外部磁界を取り去っても磁力が残る金属であり、軟磁性金属とは、外部磁界を取り去ると磁力を失う金属である。
【0022】
本技術に用いることができる磁性金属112の具体例としては、例えば、鉄、ケイ素鉄、カルボニル鉄、Fe-Ni合金(パーマロイ)、Fe-Si-Al合金(センダスト)、Fe-Co合金(パーメンジュール)、電磁ステンレス、Fe-Si合金、Fe-Al合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Ni-Co合金(ミューメタル)、Fe-Ni-Mo合金(スーパーマロイ)、Fe-Co合金、Fe-Si-Al-Cr合金、Fe-Si-B合金、Fe-Si-Co-B合金等が挙げられる。
【0023】
磁性金属112の形態は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設計することができる。例えば、板状、フィルム状、膜状、粒状、粉状等が挙げられる。本技術では、複合膜11に用いる磁性金属112の形態としては、フィルム状、膜状、粒状、粉状が好ましく、粒状、粉状がより好ましく、粉状が更に好ましい。これらの形態の磁性金属112を用いることで、弾性、可撓性、復元性等を備える複合膜11とすることができ、その結果、吸音構造1の吸音性能の制御性を向上させることができる。
【0024】
複合膜11における磁性金属112の含有量は、本技術の作用や効果を損なわない限り、目的とする複合膜11の性質等に応じて、自由に設定することができる。複合膜11における磁性金属112の含有量の下限としては、例えば10体積%以上、好ましくは15体積%以上、より好ましくは20体積%以上である。樹脂111の含有量の下限をこの範囲にすることで、複合膜11の磁性を向上させることができ、その結果、吸音構造1の吸音性能の制御性を向上させることができる。
【0025】
複合膜11における磁性金属112の含有量の上限としては、例えば70体積%以下、好ましくは65体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。磁性金属112の含有量の上限をこの範囲にすることで、複合膜11の弾性、可撓性、復元性を向上させることができ、その結果、吸音構造1の吸音性能の制御性を向上させることができる。
【0026】
(1-3)複合膜11の構造
本技術で用いる複合膜11の構造は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設計することができる。例えば、図1に示す第1実施形態のように、樹脂111中に磁性金属112が混合された構造、図2に示す第2実施形態のように、樹脂111の表面にシート状やフィルム状の磁性金属112が積層された構造、図3に示す第3実施形態のように、樹脂111でシート状やフィルム状の磁性金属112をサンドした構造等が挙げられ、本技術では、製造容易性の観点から、図1に示す第1実施形態のような樹脂111中に磁性金属112が混合された構造が好ましい。なお、図2に示す第2実施形態のように、樹脂111の表面にシート状やフィルム状の磁性金属112が積層された構造では、図2の例では、樹脂111の空気層13側の表面に磁性金属112を積層させているが、これに限定されない。図示しないが、樹脂111の空気層13とは逆側の表面にシート状やフィルム状の磁性金属112を積層させてもよいし、樹脂111の両面にシート状やフィルム状の磁性金属112を積層させてもよい。
【0027】
(2)遮音壁12
本技術に係る吸音構造1に用いる遮音壁12としては、遮音可能な材料や構造からなる壁であり、吸音性の向上の観点からは、剛性を有することが好ましい。遮音壁12に用いる材料としては、例えば、金属、広義の樹脂、木材等が挙げられ、これらの材料を1種又は2種以上自由に組み合わせて、遮音壁12を構成することができる。
【0028】
遮音壁12の厚さは、本技術の作用や効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いる遮音壁12の厚さの下限としては、例えば5mm以上、好ましくは8mm以上、より好ましくは10mm以上である。遮音壁12の厚さの下限をこの範囲とすることにより、吸音構造1の強度及び吸音性を向上させることができる。
【0029】
本技術に用いる遮音壁12の厚さの上限としては、例えば50mm以下、好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下である。遮音壁12の厚さの上限をこの範囲とすることにより、吸音構造1の小型化や加工性を向上させることができる。
【0030】
(3)空気層13
本技術に係る吸音構造1の複合膜11と遮音壁12の間には、空気層13を設ける。本技術に係る吸音構造1は、前述した遮音壁12と空気層13を備えることで、後述するように、板振動の原理で吸音作用が発揮される。
【0031】
空気層13の層厚は、本技術の作用や効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いる空気層13の層厚の下限としては、例えば5mm以上、好ましくは8mm以上、より好ましくは10mm以上である。空気層13の層厚の下限をこの範囲とすることにより、吸音構造1の吸音性を向上させることができる。
【0032】
本技術に用いる空気層13の層厚の上限としては、例えば50mm以下、好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下である。空気層13の層厚の上限をこの範囲とすることにより、吸音構造1の小型化を向上させることができる。
【0033】
(4)磁石14
本技術に係る吸音構造1には、空気層13を挟んで複合膜11と対向する位置に、磁石14を備える。前述した複合膜11と、磁石14によって、本技術に係る吸音構造1の吸音性能の制御が実現される。
【0034】
本技術に用いる磁石14としては、本技術の作用や効果を損なわない限り、一般的な磁石を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。本技術では、例えば、フェライト磁石、希土類磁石、アルニコ磁石等の永久磁石を用いることもできるが、電流によって磁力のオンオフが可能な電磁石を用いることが好ましい。電磁石を用いることで、吸音構造1の吸音性能の制御性を向上することができる。
【0035】
磁石14は、空気層13を挟んで複合膜11と対向する位置に備えられていればよく、例えば、図1図3に示す第1実施形態~第3実施形態のように、空気層13及び遮音壁12を挟んで複合膜11と対向する位置に備えることもできるし、図示しないが、空気層13を挟んで複合膜11と対向する位置に備えられた遮音壁12の内部に磁石14を備えることも可能である。
【0036】
(5)吸音制御の原理
板振動の原理における吸音率や吸音可能な周波数は、用いる音源側の板や、その背後の空気層の厚さ(遮音壁までの距離)等によって変化する。本技術では、板振動の原理における音源側の板として、樹脂111と磁性金属112とを有する複合膜11を用いており、更に、空気層13を挟んで複合膜11と対向する位置に磁石14を配置し、磁石14によって、音源側の板の役割を果たす複合膜11を変形させることで、吸音率や吸音可能な周波数を制御することができる。
【0037】
吸音可能な周波数fは、下記の数式1で算出することができる。
【数1】
L:空気層13の層厚(m)
m:複合膜11の面密度(kg/m
E:複合膜11のヤング率(N/m
h:複合膜11の膜厚(m)
c:音速(m/sec)
a,b:複合膜11の各辺の長さ(m)
p,q:正の整数
【0038】
例えば、磁石14を用いて複合膜11を空気層13側へ引き寄せることで、空気層13の層厚が減少し、複合膜11のヤング率(張力)が増加し、複合膜11の膜厚が減少するため、吸音可能な周波数fを、高周波側へ変化させることができる。この際、磁石14として電磁石を用いれば、電流値を変化させることで磁力を変化させることができるため、吸音構造1が吸音可能な周波数を、容易に制御することができる。
【0039】
また、本技術に係る吸音構造1は、板振動の原理を用いて吸音作用を発揮するため、多孔質材、繊維、不織布等を用いた高周波域での吸音を得意とする吸音材に比べて、より低周波域、中周波域での吸音が可能である。
【0040】
更に、前述の通り、これまでの技術では、低周波域や中周波域における吸音は、広範囲の周波数帯域における吸音を実現することが難しかったが、本技術に係る吸音構造1は、低周波域や中周波域においても、吸音可能な周波数を、広範囲において容易に制御することができる。
【0041】
2.吸音構造の用途
本技術に係る吸音構造1は、その高い吸音性能及び吸音性能の高い制御性を生かして、吸音が必要なあらゆる分野において利用することができる。具体的には、例えば、エンジンアンダーカバー、ダッシュパネル、サスペンション等の車両・航空機部品、天井材等の車両・航空機内装用製品、建築用内装材等の一部に配設することで、あらゆる用途において高い吸音性能を発揮することができる。
【0042】
また、本技術に係る吸音構造1は、車両部品、航空機部品、車両・航空機内装用製品、建築用内装材等の一部に配設することで、あらゆる用途において吸音性能の高い制御性を発揮することができる。具体的には、例えば、用いる用途における位置や音源の種類等に応じて、吸音可能な周波数を制御することができる。例えば、騒音を検知するセンサー等を備え、センサー等が検知した騒音の周波数に合わせて、吸音構造1が吸音可能な周波数を制御すれば、あらゆる用途において、効率的かつ高精度な吸音性能を実現することができる。
【0043】
本技術では、本技術の作用や効果を損なわない限り、各用途の大きさや位置に応じて、本技術に係る吸音構造1を1又は2以上自由に組み合わせて用いることができる。
【0044】
なお、本技術では、以下の構成をとることもできる。
(1)
樹脂と、磁性金属と、を有する複合膜と、
遮音壁と、
前記複合膜と前記遮音壁との間に設けられた空気層と、
前記空気層を挟んで前記複合膜と対向する位置に備えられた磁石と、
を有する吸音構造。
(2)
前記複合膜は、前記樹脂中に前記磁性金属が混合された複合膜である、(1)に記載の吸音構造。
(3)
前記磁石は、電磁石である、(1)又は(2)に記載の吸音構造。
(4)
(1)から(3)のいずれかに記載の吸音構造を有する、車両部品、航空機部品、車両内装用製品、航空機内装用製品、又は建築用内装材。
【実施例0045】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0046】
(1)複合膜の作製
ショアA硬度10のEPDMゴムに、カルボニル鉄紛(BASF社製)を30体積%混合し、厚さ1mmの薄膜に加硫成形し、樹脂と磁性金属とを有する複合膜を作製した。
【0047】
(2)吸音率の測定
日本音響エンジニアリング株式会社製の垂直入射吸音率測定システム「WinZacMTX」に、前記で作製した複合膜を設置し、背後の空気層が20mmとなるように、遮音壁を設置した。遮音壁に永久磁石を取り付け、永久磁石の数を変化させた際の吸音率を、JIS A 1405-2に基づく方法に準拠して測定した。
【0048】
(3)結果・考察
吸音率の測定結果を図4のグラフに示す。図4のグラフに示す通り、永久磁石の個数を変化させることで、吸音率を制御できることが分かった。具体的には、磁石の個数を増やすことで、即ち、磁力を大きくすることで、吸音周波数が高周波側にシフトすることが分かった。
図1
図2
図3
図4