(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150243
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ
(51)【国際特許分類】
F16L 33/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
F16L33/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063562
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】横山 康晴
【テーマコード(参考)】
3H017
【Fターム(参考)】
3H017BA01
(57)【要約】
【課題】樹脂管の差し込みに要する挿入力が過度に大きくなることがなく、また止水性能が十分に優れたものとなる樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せを提供する。
【解決手段】筒状の配管接続部を有した配管用継手と、該配管接続部に外嵌される樹脂管と、該配管接続部に外嵌された樹脂管を締め付けるバンドとの組み合せであって、該配管接続部の外周面には周回する突部が所定間隔をおいて設けられている樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せにおいて、該配管接続部の最大外径Dと樹脂管の内径dとの比D/dが1.03~1.10であり、前記突部のピッチpと樹脂管の内径dとの比p/dが0.5以下であり、バンドの幅Wとピッチpとの比W/pが3.0~5.0であることを特徴とする樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の配管接続部を有した配管用継手と、該配管接続部に外嵌される樹脂管と、該配管接続部に外嵌された樹脂管を締め付けるバンドとの組み合せであって、
該配管接続部の外周面には周回する突部が所定間隔をおいて設けられている樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せにおいて、
該配管接続部の最大外径Dと樹脂管の内径dとの比D/dが1.03~1.10であり、
前記突部のピッチpと樹脂管の内径dとの比p/dが0.5以下であり、
バンドの幅Wとピッチpとの比W/pが3.0~5.0であることを特徴とする樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【請求項2】
前記配管接続部の最大外径Dと樹脂管の内径dとの比D/dが1.08~1.10である請求項1の樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【請求項3】
前記配管接続部の長さが前記内径dの1.0~4.0倍である請求項1の樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【請求項4】
前記バンドの自由内径が前記樹脂管の外径よりも小さい請求項1の樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【請求項5】
前記樹脂管を前記配管接続部に外嵌させるときの最大挿入力が800N以下である請求項1~4のいずれかの樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管用継手と、該配管用継手に接続される樹脂管(中間層に金属を積層した金属複合樹脂管であってもよい。)と、該樹脂管を締め付けるバンドとの組み合せに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂よりなる合成樹脂管や、適宜の補強層を備えた補強層付き樹脂管(例えば中間層をアルミニウム合金層としその両側にポリエチレン層を積層した金属複合樹脂管)は、給水給湯配管やファンコイルユニットと冷温水管の接続などに広く用いられている。
【0003】
樹脂管の接続に用いられる配管用継手として、筒状の配管接続部に樹脂管が外嵌され、樹脂管がバンドで締め付けられるようにしたものがある。
【0004】
図4,5に従来の配管用継手とバンドの一例を示す(特許文献1)。
図4は特許文献1の実施の形態に係る配管用継手10に樹脂管30を接続した状態を示す断面図、
図5はバンドの斜視図である。
【0005】
この配管用継手10は、内孔14を有した略々筒状であり、その一端側が配管接続部11となっており、他端側が機器等への接続部12となっており、両者の間が六角部13となっている。この機器等への接続部12の外周面には、雄ねじが設けられているが、クイックファスナ等の留付具の係止溝(図示略)が設けられることもある。
【0006】
配管接続部11の先端側の外周面にはOリング19の装着溝が設けられ、基端側の外周面には、樹脂管30を係止するための突部16が設けられている。この従来例では、Oリング19が設けられているが、省略されることもある。
【0007】
突部16は、配管接続部11の外周を周回する凸条よりなる。この突部16は、配管接続部11の先端側に向って縮径するテーパ状である。この従来例では、突部16は、配管用継手10の軸心線方向の断面が直角三角形状であり、配管接続部11の外周面のうち突部16同士の間は円筒形となっているが、後述の
図1~3のようにタケノコ状のテーパ面のみにて、配管接続部の外周面を構成することもある。
【0008】
樹脂管30は、例えばアルミ三層管であり、樹脂内層と、中間のアルミ層と、樹脂外層とを有しているが、これに限定されず、アルミ層が省略されることもある。樹脂としては架橋ポリエチレン、耐熱ポリエチレン、ポリブテンなどが好適である。
【0009】
なお、配管用継手10は通常、真鍮などの銅合金製とされる。
【0010】
樹脂管30を配管用継手10に接続するには、樹脂管30を配管接続部11に樹脂管30を差し込んで外嵌させる。なお、通常、この差し込みに際しては、スムーサ(商品名)と称される樹脂管差込用工具を用いて行われる。樹脂管30の先端が六角部13に突き当るまで樹脂管30を差し込んだ後、バンド40を樹脂管30の外周に装着し、樹脂管30を締め付けてその内周面に突部16を食い込ませる。なお、バンド40は予め樹脂管30に外嵌の先端から所要距離(配管接続部11の長さ)以上離隔した箇所に外嵌させておき、樹脂管30を差し込んだ後、配管接続部11の基端側まで移動させる。
【0011】
このバンド40は、リング部41と、該リング部41の両端にそれぞれ設けられたつまみ部42,43とを有している。リング部11の一端側にはスリット44が周方向に延設され、リング部41の他端側の小幅の舌片部45が該スリット44内に入り込んでいる。この舌片部45の先端につまみ部43が設けられている。つまみ部42,43はリング部41の中心から離反する略々放射方向に立設されている。作業者がつまみ部42,43を指又は工具でつまんで接近方向に移動させることにより、リング部41が拡径する。つまみ部42,43から指又は工具を離すと、リング部41がそれ自身の弾性により縮径し、樹脂管30が締め付けられる。
【0012】
なお、
図4のWはバンド40の幅(リング部41の幅)を示している。
【0013】
図5では、リング部41は一重となっているが、二重環状となっている二重バンドが用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記従来の樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せにあっては、樹脂管を配管接続部に差し込む際に大きな挿入力が必要になったり、バンドによる締め付けが不足して止水性能がやや劣ったりするおそれがある。
【0016】
本発明は、樹脂管の差し込みに要する挿入力が過度に大きくなることがなく、また止水性能が十分に優れたものとなる樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、次を要旨とする。
【0018】
[1] 筒状の配管接続部を有した配管用継手と、該配管接続部に外嵌される樹脂管と、該配管接続部に外嵌された樹脂管を締め付けるバンドとの組み合せであって、
該配管接続部の外周面には周回する突部が所定間隔をおいて設けられている樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せにおいて、
該配管接続部の最大外径Dと樹脂管の内径dとの比D/dが1.03~1.10であり、
前記突部のピッチpと樹脂管の内径dとの比p/dが0.5以下であり、
バンドの幅Wとピッチpとの比W/pが3.0~5.0であることを特徴とする樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【0019】
[2] 前記配管接続部の最大外径Dと樹脂管の内径dとの比D/dが1.08~1.10である請求項1の樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【0020】
[3] 前記配管接続部の長さが前記内径dの1.0~4.0倍である[1]の樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【0021】
[4] 前記バンドの自由内径が前記樹脂管の外径よりも小さい[1]の樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【0022】
[5] 前記樹脂管を前記配管接続部に外嵌させるときの最大挿入力が800N以下である[1]~[4]のいずれかの樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せ。
【発明の効果】
【0023】
本発明の樹脂管と配管用継手とバンドとの組み合せは、突部の最大外径が樹脂管の内径の1.03~1.10倍であり、樹脂管を配管接続部に外嵌させるときの挿入力が過大とならない。
【0024】
また、本発明では、バンド幅Wが突部の配列ピッチpの3.0~5.0倍であるため、バンドが2以上の突部に跨がって樹脂管を締め付けるようになると共に、p/dが0.5以下であるので、引抜性(樹脂管が抜けにくいことを表わす。以下、同様。)及び止水性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態に係る樹脂管と配管用継手を示す側面図である。
【
図2】比較例に用いられる配管用継手の一部断面図である。
【
図3】比較例に用いられる配管用継手の一部断面図である。
【
図4】従来例に係る配管用継手と樹脂管との接続状態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0027】
図1は実施の形態に係る樹脂管と配管用継手を示すものである。配管用継手1は、銅合金製であり、樹脂管8が外嵌される筒状の配管接続部2と、該配管接続部2の後端側が連なる拡径部3と、該拡径部3よりもさらに拡径するフランジ部7とを有する。
【0028】
配管接続部2は内孔2iを有している。配管接続部2の外周面は、先端2t側に向って縮径するテーパ面4,5を有する。テーパ面5は、最も先端2t側に位置しており、その配管接続部2の軸心線方向長さはテーパ面4の軸心線方向長さよりも大きい。
【0029】
この実施の形態では、5面のテーパ面4が設けられている。各テーパ面4の軸心線方向長さは同一である。各テーパ面4の軸心線方向長さが突部4b,5bの配列ピッチpである。
【0030】
この実施の形態では、各テーパ面4,5の後端側が突部(最大外径部)4b,5bとなっている。各突部(最大外径部)4b,5bにおける配管接続部2の直径は等しく、この直径が配管接続部2の最大外径Dである。
【0031】
各テーパ面4の最も先端2t側4aは、それぞれ先端2t側のテーパ面4又は5に連なっている。なお、最も先端2t側のテーパ面4の最も先端2t側はテーパ面5に連なっている。
【0032】
最も後端側のテーパ面4と拡径部3との間は、周回溝6となっている。
【0033】
配管接続部2に外嵌する樹脂管8は、架橋ポリエチレン等よりなる。なお、前述の通り、アルミニウム合金層の両側にポリエチレン層を積層した金属複合樹脂管であってもよい。
【0034】
樹脂管8は、長手方向において外径及び内径とも等径である。内孔8iの直径が内径dである。
【0035】
この樹脂管8がスムーサ(商品名)等を用いて配管接続部2に外嵌され、
図5に示したバンド40によって締め付けられる。バンドの装着方法は前述の方法が好適であるが、これに限定されない。
【0036】
この実施の形態においては、常温において、配管接続部2の最大外径Dと内径dとの比D/dが1.03~1.1、好ましくは01.08~1.10である。また、ピッチpと内径dとの比p/dは0.5以下、好ましくは0.1~0.5、特に好ましくは0.2~0.5である。
【0037】
また、バンド40の幅Wとピッチpとの比W/pは3.0~5.0、好ましくは3.0~4.0、特に好ましくは3.0~3.5である。
【0038】
また、配管接続部2の長さは、内径dの1.0~4.0倍、特に1.0~3.0倍であることが好ましい。本発明は、樹脂管8の内径dが4~22mm、特に9~13mmである場合に適用するのが好ましい。
【0039】
このように、配管接続部2の最大外径Dが樹脂管8の内径dの1.03~1.10倍であるので、樹脂管8を配管接続部2に外嵌させるときの挿入力が過大とならない。この挿入力は通常800N以下で足りる。
【0040】
また、本発明では、p/dが0.5以下であるとともに、バンド幅Wが突部4bの配列ピッチpの3.0~5.0倍であるため、バンド40が2以上の突部4bに跨がって樹脂管8を締め付けるようになるので、引抜性及び止水性が良好となる。
【0041】
なお、この実施の形態では、バンド40のリング部41の自由内径(リング部41に外力を加えない状態における内径)は、樹脂管8の外径よりも小さい。また、バンド40の装着時におけるリング部41の内径は樹脂管8の外径の1.05倍以上、特に1.05~1.20倍とりわけ1.07~1.10倍であることが好ましい。これにより、バンド40の締め付け力が適正となる。また、バンド40の装着作業性も良好となる。
【0042】
図示は省略するが、配管接続部2の外周面において、テーパ面4,4同士の間又はテーパ面4,5間に、円筒面(等径面)を設けてもよい。
【実施例0043】
[実施例1~3、比較例1~5]
図1,2又は3に示す形状の銅合金(真鍮)製の配管用継手1,1A,1Bにおいて、最大外径D、ピッチpを表1の通りとした。
【0044】
実施例1~3及び比較例2~4の配管用継手は、
図1のように6個の突部が設けられたものである。比較例1の配管用継手は、
図2の配管用継手1Aのように4個の突部が設けられたものである。比較例5の配管用継手は、
図3の配管用継手1Bのように3個の突部が設けられたものである。
図2、3の配管用継手1A,1Bのその他の構成は配管用継手1と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0045】
各配管用継手に対し、架橋ポリエチレン製の樹脂管(JIS K6769の10A。内径9.8mm、肉厚1.6mm)をスムーサを用いて外嵌させたときの最大挿入力を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
また、樹脂管を配管接続部2に装着した後、表1に示す幅W及び面圧を有するバンドを装着し、次の試験方法により引抜性と止水性を評価した。結果を表1に示す。表1中のバンドの面圧は、バンドを直径13.5mmに拡径させた状態における面厚である。
【0047】
<引抜性の試験方法>
樹脂管を配管用継手に装着した試験体を引張試験機にて引張り、引抜性の評価を実施。樹脂管が破断したものを〇、樹脂管が継手から抜けたものを×とした。
【0048】
<止水性の試験方法>
樹脂管を配管用継手に装着した試験体に水を封入し、40℃に加熱した状態で試験体が破壊するまで内圧を掛ける。樹脂管が破壊したものを〇、継手の抜けが発生したものを×とした。
【0049】
【0050】
表1の通り、実施例1~3は最大挿入力が800Nより小さく挿入性が良好であると共に、引抜性及び止水性も良好である。
【0051】
これに対し、p/dが0.5よりも大きい比較例1は、止水性が悪い。D/dが1.10よりも大きい比較例2は最大挿入力が大きく、挿入性に劣る。
【0052】
W/pが3.0よりも小さい比較例3は引抜性及び止水性が悪い。
【0053】
比較例4は止水性が悪い。比較例5は、W/pが3.0よりも小さく、p/dが0.5よりも大きいので、止水性及び引抜性が悪い。