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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150244
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】自己バイアスカスコード回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/26 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G05F3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063564
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 純
(72)【発明者】
【氏名】大東 睦夫
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420NA27
5H420NB03
5H420NB12
5H420NB25
5H420NB27
5H420NC02
5H420NC23
(57)【要約】
【課題】電流精度の低下を抑制することが可能な自己バイアスカスコード回路を提供する。
【解決手段】自己バイアスカスコード回路は、第1電圧と接続された電流源と、電流源と接続された可変抵抗部と、可変抵抗部と第2電圧との間に設けられ、流れる電流を電圧に変換するトランジスタとを含むバイアス部と、バイアス部で変換された電圧から出力電流を得るミラー部と、トランジスタの動作点を飽和領域に維持するために可変抵抗部の両端電圧の増減を抑制するように可変抵抗部を制御する制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧と接続された電流源と、前記電流源と接続された可変抵抗部と、前記可変抵抗部と第2電圧との間に設けられ、流れる電流を電圧に変換するトランジスタとを含むバイアス部と、
前記バイアス部で変換された電圧から出力電流を得るミラー部と、
前記トランジスタの動作点を飽和領域に維持するために前記可変抵抗部の両端電圧の増減を抑制するように前記可変抵抗部を制御する制御部とを備える、自己バイアスカスコード回路。
【請求項2】
前記電流源は、電流量を調整可能な可変電流源であり、
前記制御部は、前記可変電流源の電流量の調整に従って変動する前記可変抵抗部の両端電圧の増減を抑制するように前記可変抵抗部を制御する、請求項1に記載の自己バイアスカスコード回路。
【請求項3】
前記バイアス部は、前記可変抵抗部と前記第2電圧との間に直列に接続された第1および第2トランジスタを含み、
前記ミラー部は、
出力端子と、
前記出力端子と前記第2電圧との間に直列に接続された第3および第4トランジスタとを含み、
前記可変電流源と前記可変抵抗部との間の第1ノードは、前記第1および前記第3トランジスタのゲートと接続され、
前記可変抵抗部と前記第1トランジスタとの間の第2ノードは、前記第2および前記第4トランジスタのゲートと接続される、請求項1に記載の自己バイアスカスコード回路。
【請求項4】
前記制御部は、
第1の制御信号に従って、前記可変電流源に流れる電流量を調整し、
前記第1の制御信号に従う前記可変電流源に流れる電流量の調整に基づいて、前記可変抵抗部の両端電圧の増減を抑制するように第2の制御信号に従って、前記可変抵抗部のインピーダンスを変動させる、請求項1に記載の自己バイアスカスコード回路。
【請求項5】
前記可変電流源は、電流制御型D/A変換器である、請求項1に記載の自己バイアスカスコード回路。
【請求項6】
前記可変抵抗部は、少なくとも一つの抵抗素子またはトランジスタを含む、請求項1に記載の自己バイアスカスコード回路。
【請求項7】
前記第1~第4トランジスタの各々は、Nチャネル型のMOSトランジスタを含む、請求項3に記載の自己バイアスカスコード回路。
【請求項8】
前記第1~第4トランジスタの各々は、Pチャネル型のMOSトランジスタを含む、請求項3に記載の自己バイアスカスコード回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自己バイアスカスコード回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやIoT(Internet of Things)の普及に伴い、低消費電力なアナログ回路の技術ニーズが高まってきている。こうした回路では、電源電圧の低減や、余分な電流パスの削減といったアプローチをとることで、低消費電力化が図られている。
【0003】
アナログ回路において、最も頻繁に使われる要素回路の一つに、カレントミラーがある。カレントミラーでは電流精度を向上させるため、一般的にカスコードが使われるが、そのためには十分な電源電圧が必要となる。
【0004】
通常広く用いられている低電圧カスコード回路では、第1及び第2のバイアス部と、第1のミラー部から構成されており、電流源のMOSトランジスタとカスコードのMOSトランジスタが飽和動作する最小の出力電圧で駆動させることができるため、低電圧カスコード回路と呼ばれる。しかしながら、バイアス部を2つ持つことから、参照電流が2つ必要になり、消費電流が増大するという課題がある。
【0005】
特開平8-88521号公報(特許文献1)では、バイアス部の増加による消費電流の増大という課題に対して、低電圧カスコード回路の代わりに、第1のバイアス部に抵抗を用いて自己バイアスされた構成にすることで、ミラー部の出力電圧は低電圧カスコード回路と同等に維持しつつ、バイアス部を1つ減らすことで、バイアス部の参照電流を半分に削減した構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-88521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の回路構成では、参照電流の増減により、バイアス部に備えた抵抗の両端電圧が増減するため、バイアス部のMOSトランジスタの動作点が非飽和領域になり、電流精度が下がるおそれがある。
【0008】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであって、電流精度の低下を抑制することが可能な自己バイアスカスコード回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある開示に従う自己バイアスカスコード回路は、第1電圧と接続された電流源と、電流源と接続された可変抵抗部と、可変抵抗部と第2電圧との間に設けられ、流れる電流を電圧に変換するトランジスタとを含むバイアス部と、バイアス部で変換された電圧から出力電流を得るミラー部と、トランジスタの動作点を飽和領域に維持するために可変抵抗部の両端電圧の増減を抑制するように可変抵抗部を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の自己バイアスカスコード回路は、トランジスタの動作点を飽和領域に維持するために可変抵抗部の両端電圧の増減を抑制するように可変抵抗部を制御する制御部が設けられるため電流精度の低下を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る自己バイアスカスコード回路10の回路構成例を示す図である。
図2】比較例に従う自己バイアスカスコード回路20Pの回路図である。
図3】実施の形態2に従う自己バイアスカスコード回路30の回路構成例を示す図である。
図4】実施の形態2の変形例に従う自己バイアスカスコード回路40の回路構成例を示す図である。
図5】実施の形態3に従う自己バイアスカスコード回路50の回路構成例を示す図である。
図6】実施の形態3の変形例に従う自己バイアスカスコード回路60の回路構成例を示す図である。
図7】実施の形態4に従う自己バイアスカスコード回路70の回路構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る自己バイアスカスコード回路10の回路構成例を示す図である。図1を参照して、自己バイアスカスコード回路10は、入力端子VINと出力端子IOUTと、バイアス部100と、ミラー部200と、制御部300とを備える。
【0014】
バイアス部100は、可変電流源IREF1と、可変抵抗部R1と、トランジスタNM1(第1のNMOSトランジスタ)と、トランジスタNM3(第2のNMOSトランジスタ)とを含む。
【0015】
ミラー部200は、トランジスタNM2(第3のNMOSトランジスタ)とトランジスタNM4(第4のNMOSトランジスタ)とを含む。
【0016】
制御部300は、入力端子VINから入力信号を受け、可変電流源IREF1に制御信号VIを与え、可変抵抗部R1に制御信号VRを与える。
【0017】
NMOSトランジスタNM1、NM2、NM3、NM4の各々はゲートG(制御端子)と、ソースS(第1端子)と、ドレインD(第2端子)とを含む。
【0018】
可変電流源IREF1は、電源電圧VDDから電流を受け、ノードVa(第1ノード)に電流を与える。可変電流源IREF1は、制御信号VIに従って電流値を調整する。
【0019】
可変抵抗部R1は、ノードVaとノードVb(第2ノード)との間に接続される。可変抵抗部R1は、制御信号VRにより抵抗値(インピーダンス)を調整する。
【0020】
トランジスタNM3のゲートGは、ノードVaに接続され、ドレインDはノードVbに接続され、ソースSは、トランジスタNM1のドレインDに接続される。
【0021】
トランジスタNM1のゲートGは、ノードVbに接続され、ソースSは固定電圧VSSと接続される。
【0022】
トランジスタNM4のゲートGは、ノードVaに接続され、ドレインDは出力端子IOUTに接続され、ソースSはトランジスタNM2のドレインDに接続される。
【0023】
トランジスタNM2のゲートGは、ノードVbに接続され、ソースSは固定電圧VSSと接続される。
【0024】
なお、以下では固定電圧VSSに接続されていることを、接地されているとも表現する。
【0025】
図2は、比較例に従う自己バイアスカスコード回路20Pの回路図である。
図2を参照して、自己バイアスカスコード回路20Pは、特許文献1に記載の回路である。自己バイアスカスコード回路20Pは、自己バイアスカスコード回路10と比較して、バイアス部100をバイアス部100Pに置換した点が異なる。また、制御部300も設けられていない。
【0026】
バイアス部100Pは、可変でない電流源IREF2と、可変でない抵抗素子R2とが設けられている構成である。
【0027】
その他の回路構成については、図1で説明した自己バイアスカスコード回路10と同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0028】
比較例である自己バイアスカスコード回路20Pにおいて、電流源IREF2の電流値が大きくなった場合、オームの法則により、抵抗素子R2での両端電圧が大きくなる。その結果、トランジスタNM3のドレイン電圧に対してゲート電圧が大きくなり、トランジスタNM3の動作点が非飽和領域となる。
【0029】
また、比較例である自己バイアスカスコード回路20Pにおいて、電流源IREF2の電流値が小さくなった場合、オームの法則により、抵抗素子R2での両端電圧が小さくなる。その結果、トランジスタNM3のドレイン電圧に対してゲート電圧が小さくなる。トランジスタNM3のゲート-ソース間の電圧は電流に応じた値を維持するため、トランジスタNM3のゲート電圧が下がると、トランジスタNM1のドレイン電圧が減少し、トランジスタNM1の動作点が非飽和領域となる。
【0030】
したがって、バイアス部に設けられるMOSトランジスタの動作点が非飽和領域となることにより電流を電圧に変換する変換精度が低下する。これによりミラー部における電流の精度も低下することになる。
【0031】
一方で、図1の自己バイアスカスコード回路10の場合、制御部300から出力される制御信号VIにより可変電流源IREF1の電流が調整される際に、可変電流源IREF1の電流値の増大に合わせて可変抵抗部R1の抵抗値を下げることが可能である。これによりトランジスタNM3のゲート電圧が大きくなりすぎないように可変抵抗部R1の抵抗値を制御でき、トランジスタNM3の動作点を飽和領域に維持することが可能である。
【0032】
また、図1の自己バイアスカスコード回路10の場合、制御部300から出力される制御信号VIにより可変電流源IREF1の電流が調整される際に、可変電流源IREF1の電流値の減少に合わせて可変抵抗部R1の抵抗値を上げることが可能である。これによりトランジスタNM1のドレイン電圧が減少しすぎないように可変抵抗部R1の抵抗値を制御でき、トランジスタNM1の動作点を飽和領域に維持することができる。
【0033】
制御部300は、可変抵抗部R1を設ける構成によって、比例または反比例の制御を行うことで、可変抵抗の両端電圧の増減を抑制し、NMOSトランジスタNM1及びNMOSトランジスタNM3の動作点を飽和領域に維持することが可能である。なお、可変抵抗部R1に用いる抵抗の2次の温度特性を打ち消す必要がある場合は、制御部300は2次の制御を行い、制御信号VIおよびVRを調整して出力するようにしてもよい。
【0034】
当該構成により、出力電圧と消費電流は特許文献1の回路と同程度を維持しつつ、参照電流の増減に対して、MOSトランジスタの動作点が容易に飽和領域となる回路とすることが可能である。
【0035】
具体的には、バイアス部の参照電流源および抵抗を可変とし、当該参照電流源および抵抗を制御する制御部を設けることで、可変電流源と可変抵抗との値を制御する構成とするため、参照電流源の値が変化した場合でも、参照電流の変化に従って抵抗値を変化させることにより、可変抵抗の両端電圧の増減を抑制することが可能であり、MOSトランジスタの動作点が常に飽和領域になるように制御することができる。
【0036】
これにより、MOSトランジスタの動作点を常に飽和領域に維持でき、近年のIoT技術に不可欠な、ミックスドシグナルSoCの消費電流の低減および、電流精度の向上に貢献することが可能である。
【0037】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に従う自己バイアスカスコード回路30の回路構成例を示す図である。
【0038】
図3を参照して、自己バイアスカスコード回路30は、バイアス部100Aと、ミラー部200Aと、制御部300Aとを備える。
【0039】
バイアス部100Aは、図1の自己バイアスカスコード回路10のバイアス部100およびミラー部200と比較して、各NMOSトランジスタNM1、NM2、NM3、NM4をPMOSトランジスタPM1、PM2、PM3、PM4に変更し、可変電流源IREF1を電流制御型D/A変換回路DAC1に変更した点が異なる。
【0040】
ミラー部200Aについては、電源電圧VDDと出力端子IOUTとの間に、PMOSトランジスタPM2,PM4が直列に接続される。PMOSトランジスタPM1とPMOSトランジスタPM2のゲートは、ノードVa1と接続される。PMOSトランジスタPM3とPMOSトランジスタPM4のゲートは、ノードVb1と接続される。
【0041】
バイアス部100Aについては、PMOSトランジスタPM1とPM3とは、電源電圧VDDとノードVa1との間に直列に接続される。
【0042】
ノードVa1とノードVb1との間に可変抵抗部RA1が設けられる。可変抵抗部RA1の内部は、抵抗素子raが設けられ、当該抵抗素子raと、直列接続可能に設けられた抵抗素子r0~rnと、制御信号b0~bnで制御されるスイッチSWB0~SWBNとで構成される。スイッチSWB0~SWBNの各々は、抵抗素子r0~rnの各々と並列に接続される。スイッチSWB0~SWBNを選択的に導通させることにより可変抵抗部RA1の抵抗値を調整することが可能である。
【0043】
制御部300Aは、入力端子VINから入力信号を受け、制御信号b0~bnを出力する構成である。
【0044】
電流制御型D/A変換回路DAC1は、電流源C0~CNと、制御信号c0~cnで制御されるスイッチSWA0~SWANとで構成される。スイッチSWA0~SWANは、抵抗素子RDを介して電源電圧VDDから電圧を受けるノードVc1とノードVb1とでスイッチングする構成である。電流源C0~CNは、スイッチSWA0~SWANと固定電圧VSSとの間に並列にそれぞれ設けられる。
【0045】
スイッチSWA0~SWANは、ノードVb1およびVc1と電流源C0~CNとの間に並列にそれぞれ設けられる。
【0046】
電流源C0~CNは、電流量がそれぞれ異なり、電流源C0は、20×Iであり、電流源C1は、21×I、電流源CNは、2n×Iである。
【0047】
スイッチSWA0~SWANは、制御信号b0~bnに従って対応するスイッチSWAとノードVb1およびVc1のいずれか一方と接続する。
【0048】
他の部分については、図1の自己バイアスカスコード回路10の構成と同様であるため、回路構成についてのその詳細な説明については繰り返さない。
【0049】
図3を用いて、自己バイアスカスコード回路30の動作について説明する。
電流制御型D/A変換回路DAC1は、制御信号b0~bnの値によってノードVb1から引く電流値が変動する。制御信号b0~bnは、スイッチSWB0~SWBNにも接続されているため、電流値の変動に従って可変抵抗部RA1の値も変動する。例えば、スイッチSWANがONになりノードVb1から引く電流値が大きくなると、スイッチSWBNもONになり可変抵抗部RA1の抵抗値が下がる構成である。
【0050】
従って、図3の構成では、電流制御型D/A変換回路DAC1の制御信号b0~bnをそのまま可変抵抗部R1の制御信号として、スイッチSWB0~SWBNに接続するだけで効果が得られる構成である。
【0051】
電流制御型D/A変換回路DAC1が、ノードVb1から引く電流が大きい場合は、可変抵抗部RA1の抵抗値が小さくなり、電流制御型D/A変換回路DAC1がノードVb1から引く電流が小さい場合は、可変抵抗部RA1の抵抗値が大きくなることでノードVb1及びノードVa1の電圧の増減が抑制され、PMOSトランジスタPM1,PM3の動作点は飽和領域で維持される。
【0052】
なお、電流源C0~CNそれぞれの電流値が等しい場合は、抵抗素子r0~rnそれぞれの抵抗値も等しくすることで、ノードVa1およびノードVb1の電圧の増減を抑制でき、PMOSトランジスタPM1及びPM3の動作点を飽和領域に維持することが容易になる。一方で、電流源C0~CNで電流値に傾斜がある場合は、抵抗素子r0~rnの抵抗値にも傾斜をつけることで、ノードVa1およびノードVb1の電圧の増減を抑制でき、PMOSトランジスタPM1及びPM3の動作点を飽和領域に維持することが容易になる。
【0053】
これにより、MOSトランジスタの動作点を常に飽和領域に維持でき、電流精度の向上に貢献することが可能である。
【0054】
実施の形態2の変形例.
図4は、実施の形態2の変形例に従う自己バイアスカスコード回路40の回路構成例を示す図である。
【0055】
図4を参照して、自己バイアスカスコード回路40は、図3の自己バイアスカスコード回路30と比較して、可変抵抗部RA1を可変抵抗部RA#1に置換した点が異なる。
【0056】
可変抵抗部RA#1は、抵抗素子r0~rnを抵抗素子r0のみにし、スイッチSWB0~SWBNをスイッチSWBのみに変更した点が異なる。スイッチSWBは制御信号bnによって制御される構成である。これら以外は図3で説明した自己バイアスカスコード回路30の構成と同様であるため、その詳細な説明については繰り返さない。
【0057】
図4を用いて、自己バイアスカスコード回路40の動作を説明する。
電流制御型D/A変換回路DAC1は制御信号b0~bnの値によってノードVb1から引く電流値が変動する。
【0058】
ノードVb1から引く電流が最も変動するのは、最上位ビットの信号である制御信号bnが変化したときである。制御信号bnはスイッチSWBにも接続されているため、最上位ビットの変動と共に、可変抵抗部RA#1の抵抗値が調整される。例えば、スイッチSWANがONになり、ノードVb1から引く電流値が大きくなると、スイッチSWBもONになり可変抵抗部RA#1の抵抗値が下がる構成である。これにより、ノードVa1およびノードVb1の電圧の増減が抑制され、PMOSトランジスタPM1およびPM3の動作点は飽和領域で維持される。細やかな抵抗値の制御が不要であれば、図4の構成を採用することが可能である。
【0059】
上記以外にも、抵抗素子r0~rnを並列に接続した場合でも同様に、電流制御型D/A変換回路DAC1の出力電流の変化に従って可変抵抗部RA#1を調整すれば、ノードVa1およびノードVb1の電圧の増減が抑制され、PMOSトランジスタPM1及びPM3の動作点を飽和領域に維持することが可能である。
【0060】
これにより、MOSトランジスタの動作点を常に飽和領域に維持でき、電流精度の向上に貢献することが可能である。
【0061】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3に従う自己バイアスカスコード回路50の回路構成例を示す図である。
【0062】
図5を参照して、自己バイアスカスコード回路50は、図3の自己バイアスカスコード回路30の可変抵抗部RA1と比較して、可変の能動負荷部RA3に変更した点が異なる。
【0063】
可変の能動負荷部RA3は、PMOSトランジスタPM5a,PM5_0~PM5_n、PM6を含む。
【0064】
能動負荷を担うのはPMOSトランジスタPM5a,PM5_0~PM5_nであり、PMOSトランジスタPM6は、PMOSトランジスタPM5a,PM5_0~PM5_nのバイアスを生成している。スイッチSWB0~SWBNの各々は、PMOSトランジスタPM5_0~PM5_nの各々と並列に接続されており、制御信号bn~b0で制御される。これら以外は自己バイアスカスコード回路30と同様であるため、その詳細な説明については繰り返さない。
【0065】
図5を用いて、自己バイアスカスコード回路50の動作を説明する。
電流制御型D/A変換回路DAC1の動作は図3の自己バイアスカスコード回路30のDAC1と同様であり、制御信号b0~bnの値によってノードVb1から引く電流値が変動する。制御信号b0~bnはスイッチSWB0~SWBNにも接続されているため、電流値の変動に従って可変の能動負荷部R3の値も変動する。
【0066】
例えば、スイッチSWANがONになりノードVb1から引く電流値が大きくなると、スイッチSWBNもONになり可変の能動負荷部RA3の抵抗値が下がる構成である。従って、電流制御型D/A変換回路DAC1が引く電流が大きい場合は、可変の能動負荷部RA3の値が小さくなり、電流が小さい場合は、可変の能動負荷部RA3の値が大きくなりなることで、ノードVa1およびノードVb1の電圧の増減が抑制され、PMOSトランジスタPM1,PM3の動作点を飽和領域で維持することが可能となる。
【0067】
これにより、MOSトランジスタの動作点を常に飽和領域に維持でき、電流精度の向上に貢献することが可能である。
【0068】
実施の形態3の変形例.
図6は、実施の形態3の変形例に従う自己バイアスカスコード回路60の回路構成例を示す図である。図6に示されるように自己バイアスカスコード回路60は、図5の自己バイアスカスコード回路50と比較してPMOSトランジスタPM5_0~PM5_nをPMOSトランジスタPM5_0のみに、スイッチSWB0~SWBNをスイッチSWBのみに変更した点が異なる。スイッチSWBは制御信号bnによって制御される構成である。これら以外は自己バイアスカスコード回路50と同様であるため、その詳細な説明については繰り返さない。
【0069】
図6を用いて、自己バイアスカスコード回路60の動作を説明する。
電流制御型D/A変換回路DAC1は制御信号b0~bnの値によってノードVb1から引く電流値が変動する。電流制御型D/A変換回路DAC1の電流が最も変動するのは、最上位ビットの信号である制御信号bnが変化したときである。制御信号bnはスイッチSWBにも接続されているため、最上位ビットの変動と共に、可変の能動負荷部RA3が調整される。例えば、スイッチSWANがONになり、ノードVb1から引く電流値が大きくなると、スイッチSWBもONになり可変の能動負荷部RA3の抵抗値が下がる構成である。これにより、ノードVa1およびノードVb1の電圧の増減が抑制され、PMOSトランジスタPM1およびPM3の動作点は飽和領域で維持される。細やかな可変の能動負荷部RA3の制御が不要であれば、図6の構成を採用することが可能である。
【0070】
上記以外にも、可変の能動負荷であるPMOSトランジスタPM5_0~PM5_nを並列に接続した場合でも同様に、電流制御型D/A変換回路DAC1の出力電流の変化に従って可変の能動負荷部RA3を調整すれば、PMOSトランジスタPM1およびPM3の動作点を飽和領域に維持することが可能である。
【0071】
これにより、MOSトランジスタの動作点を常に飽和領域に維持でき、電流精度の向上に貢献することが可能である。
【0072】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4に従う自己バイアスカスコード回路70の回路構成例を示す図である。図7を参照して、自己バイアスカスコード回路70は、図1の自己バイアスカスコード回路10の可変電流源IREF1を可変でない電流源IREF2に変更し、制御部301から出力される制御信号VRは可変抵抗部R1のみに出力される。その他の自己バイアスカスコード回路70の構成は、図1の自己バイアスカスコード回路10の構成と同様であるため、回路構成についてその詳細な説明については繰り返さない。
【0073】
図7を用いて、自己バイアスカスコード回路70の動作を説明する。
電源電圧VDDが低く、製造ばらつきによるIREF2のわずかな変動でもNMOSトランジスタNM1及びNM3の動作点が非飽和領域に入ってしまう場合、チップ製造後のテストで電流源IREF2の値を評価し、その結果に応じて制御部301によって可変抵抗部R1の値を調整し、ノードVa及びノードVbの電圧の増減を抑制することで、NMOSトランジスタNM1及びNM3の動作点が常に飽和領域になるよう制御する。
【0074】
制御部301は、可変抵抗部R1の構成によって、比例または反比例の制御を行うことで、可変抵抗の両端電圧の増減を抑制するものである。なお、可変抵抗部R1に用いる抵抗の2次の温度特性を打ち消す必要がある場合は、制御部301は2次の制御を行い、制御信号VI及びVRを出力する。
【0075】
可変抵抗部R1の内部については、上記の実施の形態で説明した方法で実現することが可能である。
【0076】
また、参照電流源を可変としない状態で、電源電圧が低く、わずかな参照電流のばらつきでMOSトランジスタが非飽和になってしまう場合でも、抵抗値を調整することで、可変抵抗の両端電圧の増減を抑制することができ、MOSトランジスタの動作点を常に飽和領域に維持することができる。
【0077】
これにより、MOSトランジスタの動作点を常に飽和領域に維持でき、電流精度の向上に貢献することが可能である。
【0078】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて実施することも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
10,20,20P,30,40,50,60,70 自己バイアスカスコード回路、100,100A,100P バイアス部、200,200A ミラー部、300,300A,301 制御部、DAC1 電流制御型D/A変換回路。
図1
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図7