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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150249
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】パネルおよびパネル基材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
E04F13/08 A
E04F13/08 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063571
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000148151
【氏名又は名称】株式会社川島織物セルコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 義久
(72)【発明者】
【氏名】茂永 健太
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 重喜
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA02
2E110AA33
2E110AA57
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB05
2E110AB23
2E110CB03
2E110DA12
2E110DC03
2E110GA24Z
2E110GA28Y
2E110GA32W
2E110GA42W
2E110GB01Y
2E110GB42Y
2E110GB54Z
2E110GB62Y
(57)【要約】
【課題】パネルの側面の角部などしわ等の形成が起こりにくいパネルを提供する。
【解決手段】略正方形状のパネル基材10と、そのパネル基材10の表面10aおよびパネル基材10の側面10bを覆う表皮材20とを備えた略正方形状のパネル1。パネル基材10の角部112に、表裏方向に延びる切欠溝15が形成されている。切欠溝15は、パネル基材10の表面10aと非連続であり、裏面10cと連続している。そして、表皮材20の余剰部29がこの切欠溝15に挿入されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル基材と、
前記パネル基材の表面および側部を覆う表皮材とを備えたパネルであって、
前記パネル基材の側部に表裏方向に延びる切欠溝が設けられており、
前記表皮材の余剰部が前記切欠溝に挿入されている、
パネル。
【請求項2】
前記切欠溝が前記パネル基材の裏面と連続している、
請求項1記載のパネル。
【請求項3】
前記切欠溝は前記パネル基材の表面と連続していない、
請求項1記載のパネル。
【請求項4】
前記パネル基材の側部が2つの面が所定の角度で交わる表裏方向に延びる角部を有し、
前記切欠溝が少なくとも一つの前記角部に形成されている、
請求項1から3のいずれかに記載のパネル。
【請求項5】
前記パネル基材の側部が、外側に向かって湾曲する湾曲部を有し、
前記切欠溝が前記湾曲部に形成されている、
請求項1から3のいずれかに記載のパネル。
【請求項6】
前記パネル基材は、枠体と、その枠体内に配置される充填材とを備えている、
請求項1から3のいずれかに記載のパネル。
【請求項7】
表面および側面を覆う表皮材を取り付けるためのパネル基材であって、
側部に前記表皮材の余剰部を挿入するための表裏方向に延びる切欠溝が設けられている、
パネル基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁等に取り付けるためのパネルおよびそのパネルに用いられるパネル基材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や商業用施設等の建築物の内壁面に、防音、防火ならびに装飾を目的としてパネルを取り付けることが行われている。
特許文献1には、略多角形状のパネル本体と、そのパネル本体を包み込むように覆う表皮とを備えた内装パネルが開示されている。パネル本体の裏面側の角部には溝部が形成されており、その溝部に対応する表皮の縁にはつまみ縫いにより形成された縫い部が形成されている。そして、この表皮の縫い部をパネル本体の溝部に挿入するものである。この内装パネルは、表皮の縁をパネル本体の裏面に固定することにより、しわの発生や張りの偏り等のないように表皮を見栄えよく張ることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-031127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、パネル基材と、そのパネル基材を覆う表皮材とを有するパネルにおいて、パネル基材の表面と相似した形状の表皮材でパネル本体を覆う場合、表皮材をパネル基材の表面の縁部で側面に折り曲げたとき、パネル基材の側面の角部の周辺に側面に対して余る領域(余剰部)が生じる。このような余剰部では、表皮材同士が折り重なることになり、しわが発生しやすく、また、張りが甘くなって膨出しやすい。特に、角部の表面側の頂点近辺は、頂点周りの表皮材が集まってくるため、頂点周りで膨出しやすい。このように角部の頂点周りが膨出すると、例えば、図7aのように、4つのパネルをそれぞれの頂点が隣り合うように並べたとき、4つのパネルの境界点の隙間Sが大きく目立つようになる。
【0005】
特許文献1の内装パネルは、表皮をパネル本体に取り付ける際、最初に表皮の縫い部をパネル本体の溝部に挿入し、表皮をパネル本体に位置決めするものである。しかし、角部等の表皮が余る領域についての記載はない。例えば、表皮が余る領域の一部を他方に折り畳む場合、パネルの側面において表皮材が膨出するおそれがある。
また表皮材の余る領域を予め切断することが考えられる。しかし、切断によって余る領域を処理する場合、切断作業および貼り付け作業の両方を高い精度で行わなければならない。つまり、表皮材を切断しすぎるとパネル基材を覆うことができなくなり、少しでも布を余らせると重なる部分が生じる。また貼り付け作業も若干のずれでしわや膨出部が生じるため、煩雑である。さらに角部に沿って表皮材の端部が位置することになるため、装着後、外力等によって剥がれたり、傷がついたりするおそれもある。
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、パネルの側面の角部などしわ等が生じにくいパネルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパネルは、パネル基材と、前記パネル基材の表面および側部を覆う表皮材とを備えたパネルであって、前記パネル基材の側部に、表裏方向に延びる切欠溝が設けられており、前記表皮材の余剰部が前記切欠溝に挿入されていることを特徴としている。ここで「余剰部」とは、表皮材でパネル基材の表面を覆い、パネル基材の表面の縁部に沿って折ってパネル基材の側面部を覆うときに、パネル基材の側面に対して余る領域をいう。
【0007】
本発明のパネルであって、前記切欠溝が前記パネル基材の裏面と連続しているものが好ましい。
本発明のパネルであって、前記切欠溝は前記パネル基材の表面と連続していないものが好ましい。
本発明のパネルであって、前記パネル基材の側面が2つの面が所定の角度で交わる表裏方向に延びる角部を有し、前記切欠溝が少なくとも一つの前記角部に形成されているものが好ましい。ここで「角部」とは、2つの面の境界線(角)だけでなくその周辺を含む。この場合、前記パネル基材の表面が多角形状を呈しているのが好ましい。
本発明のパネルであって、前記パネル基材の側面が、外側に向かって湾曲する湾曲部を有し、前記切欠溝が前記湾曲部に形成されているものが好ましい。この場合、前記パネル基材の表面が円形状を呈しているのが好ましい。
本発明のパネルであって、前記パネル基材は、枠体と、その枠体内に配置される充填材とを備えているものが好ましい。
【0008】
本発明のパネル基材は、表面および側面を覆う表皮材を取り付けるためのパネル基材であって、側部に前記表皮材の余剰部を挿入するための表裏方向に延びる切欠溝が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパネルは、表皮材の余剰部を切欠溝に挿入することにより、表皮材をパネル基材に密着させて装着することができる。これによりしわや膨出部のない品質の高いパネルを効率良く生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1aおよび図1bはそれぞれ本発明のパネルの第1実施形態を示す表斜視図および裏斜視図であり、図1cはその分解斜視図である。
図2図2aは図1のパネルの枠体を示す表斜視図であり、図2bおよび図2cはそれぞれ図1のパネルの充填材を示す表斜視図および裏斜視図であり、図2dは図1のパネルの表皮材の展開図を示す表斜視図である。
図3図3aは本発明のパネルの第2実施形態を示す表斜視図であり、図3bは本発明のパネルの第3実施形態を示す側面図であり、図3c~図3eは本発明のパネルに用いることができるパネル基材の他の形態を示す表斜視図であり、図3fは図1のパネルの変形例である。
図4図4aおよび図4bはそれぞれ本発明のパネルの第4実施形態を示す表斜視図および裏斜視図であり、図4cは本発明のパネルの第5実施形態を示す表斜視図である。
図5図5aは本発明のパネルに用いることができるパネル基材のさらに他の形態を示す平面図であり、図5bはそのX-X線断面拡大概略図であり、図5cはパネル基材のさらに他の形態を示す断面図である。
図6図6aおよび図6bはそれぞれ本発明のパネルの実施例を示す平面写真および裏面写真であり、図6cはその角部を示す拡大写真である。
図7図7aは従来のパネルを並べた状態を示す写真であり、図7bは図6aのパネルを並べた状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は次の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
「パネル1」
図1a~図1cのパネル1は、略正方形状のパネル基材10と、そのパネル基材10の表面10aの全体およびパネル基材10の側面10bの全体を覆う表皮材20とを備えた略正方形状のものである。パネル基材10の枠体110の角部112に、表裏方向に延び、かつ、裏面10cと連続した切欠溝15が形成されている。そして、表皮材20の余剰部29がこの切欠溝15に挿入されている。
このパネル1は、建築物の壁・天井・床に取り付けられるパネルであり、特に、防音・吸音用、防火用および/または装飾用として内壁に取り付けるためのパネルである。
【0013】
「パネル基材10」
パネル基材10は、略正方形状の枠体110と、その枠体110内に配置される充填材120とを備えている。パネル基材10の表面10aと側部10bとは所定の角度(ここでは90度)で交わっている。
枠体110は、図2aに示すように、4つの細長い枠片111を幅方向に立てて、正方形状に連結したものである。この枠片111がパネル基材10の側面10bを形成する。隣接する各枠片111は、直角で交わっており、外側に突出した表裏方向に延びる角部112を形成している。この枠体110の4つ角部112には、パネル基材10の裏面に相当する枠片111の下端111c(図2aの下、図2bの上)から上端111a側に向かって外溝115が形成されている。この外溝115は、枠体110の内外を貫通するように形成されている。外溝115は、枠体110の裏面とは連続し、表面と非連続となっている。そして、角部112には、外溝115の上底115aが形成されている。なお、外溝115は、角部112の角を無くすように設けられているが、後述するように表皮材の余剰部29を挿入できて、かつ、余剰部29を挿入することにより角部112の周辺に装着される表皮材20の装飾部側面17をパネル基材に密着させることができれば、多少ずれていてもよい。
枠片111の材質は特に限定されるものではないが、例えば、木製、樹脂製あるいは金属製などの硬質材が用いられ、特に自己消化性や難燃性を有するものが好ましく用いられる。
枠体110の厚みは、例えば、4mm~100mm、好ましくは6mm~50mm、特に、6mm~30mmである。
【0014】
充填材120は、図2b、図2cに示すように、枠体110内に固定される正方形状の平板である。
取り付けられる枠体110の外溝115と対応するように充填材120の角部には、裏面120cから表面側に向かって延びる内溝125が形成されている。また内溝125は、角部から充填材120の内側(中心側)にも延びている。つまり、この内溝125は、充填材120の側部外側方向に開口し、裏面120cと連続し、表面120aと非連続である。
このような充填材120の材質は、特に限定されるものではない。しかし、吸音材としては、ウレタン等の発泡性材料、あるいは、繊維を圧縮した繊維集合体材料等が好ましく挙げられる。特に、繊維集合体としては、ガラス繊維を雲状に圧縮したモルトンや、天然繊維や化学繊維等を圧縮したフェルト等が好ましく挙げられる。
【0015】
このようにパネル基材10の切欠溝15は、枠体110の外溝115と、充填材120の内溝125とから構成されている。つまり、パネル基材10の切欠溝15は、パネル基材10の側部(角部)において、パネル基材10の裏面10cと連続し、表面10aと非連続となっている。
なお、図1のパネル基材10の切欠溝15は枠体110の外溝115と充填材120の内溝125とから構成しているが、内溝125を設けず、外溝115のみから構成してもよい。またその場合、枠片111の厚みが十分である場合は、外溝115は枠片111を貫通していなくてもよい。
切欠溝15の深さは、少なくともパネル基材10(枠体110)の厚みの50%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上であり、枠体110の厚みの95%以下、好ましくは90%以下である。例えば、5mm以上、好ましくは6mm以上、特に好ましくは8mm以上であり、80mm以下、好ましくは25mm以下、特に好ましくは20mm以下である。
切欠溝15の幅は、特に限定されるものではないが、用いる表皮材の厚みの1.5倍以上、好ましくは2倍以上、3倍以下、好ましくは2.5倍以下である。
表面10aと切欠溝15との間の距離(図2aの切欠溝115の上底115aと枠体111の上端111aの距離)は、1mm以上、好ましくは1.5mm以上、特に2mm以上であり、10mm以下、好ましくは7mm以下、特に好ましくは5mm以下である。1mmより小さいと角部の強度が弱くなり、表皮材の張力によって角がつぶれるおそれが生じる。一方、10mmより大きいと余剰部を切欠溝に挿入しにくくなる。
【0016】
「表皮材20」
表皮材20は、図2dに示すように、パネル基材10の表面を覆う装飾部表面26と、パネル基材10の側面を覆う装飾部側面27と、パネル基材10の裏面に固定される固定代部28と、余剰部29とを有する。余剰部29は、表皮材20を装飾部表面26の縁部に沿って折ったとき、隣接する装飾部側面27の間に生じる領域である。固定代部28のパネル基材10の裏面10cへの固定は、特に限定されず、例えば、両面テープ、ホットメルトや接着剤等を用いた固定が挙げられる。
この表皮材20は、余剰部29を切欠溝15に挿入することにより、装飾部表面26および装飾部側面27に所定の張力を持たせながらしわが形成されないようにパネル基材10に装着する。
表皮材20としては、特に限定されるものではないが、織物やフィルムなどが挙げられる。しかし、延性の小さいものが好ましく、例えば、延性の小さい織物が特に好ましく挙げられる。なお、表皮材20には、模様等の装飾が施されていてもよい。
なお、表皮材20の余剰部20は、切欠溝15に挿入または差込やすいように一部が切断されていてもよく、切り込みが入れられていてもよい。固定代部28も、パネル基材10に固定できれば、その形状は特に限定されない。
【0017】
「パネル1の製造方法」
次にパネル1の製造方法について説明する。
パネル基材10を準備し、パネル基材10の表面10aと表皮材20の装飾部表面26とを合わせる(図1c参照)。ついで、パネル基材10の側面10bと表皮材20の装飾部側面27とを合わせる。つまり、装飾部表面26と装飾部側面27との境界に折り目が設けられる。このとき、余剰部29は、表皮材20の裏面側に折り曲げるように重ねてパネル基材10の切欠溝15に挿入・差し込む。それと同時に、パネル基材10の切欠溝15の裏面側の開口から挿入した余剰部29を裏面方向に引っ張る。これによりパネル基材10の角部112の上部に、表皮材20を所定の張力を持たせて装着することができる。最後に、表皮材20の固定代部28および切欠溝15から裏面側に引っ張った余剰部29をパネル基材10の裏面10cに固定することによりパネル1を製造することができる。なお、裏面側に引っ張った余剰部29は、切欠溝15内にて固定してもよい。また切欠溝15の裏面側から突出した余剰部29は切断してもよい。さらに余剰部29は、裏面側から引っ張らずに治具等で押し込むようにしてもよい。また、切欠溝15の内部にエラストマーを入れて表皮材を押すことで固定しても良い。
【0018】
「パネル1の効果」
パネル1は、表皮材20の余剰部29をパネル基材10の切欠溝15に挿入している、あるいは、差し込んでいるため、外力等が加えられても剥がれたりしにくい。特に、余剰部29の切欠溝15への挿入に伴い、パネル基材110の角部112の周辺を覆う表皮材20に適切な張力を与えることができるため、角部周辺にしわや膨出部が形成されるのを防ぐことができる。そして、角部112の上側の頂点部の品質を安定させることができるため、複数のパネルを並べたときの美観を向上させることができる。また表皮材20の余剰部29をパネル基材10の切欠溝に挿入して固定することにより、パネル基材10の角部112周辺への接着剤等の使用を減少あるいは削除することが可能となり、揮発性素材の使用を減らすことができ、室内環境にも良く、燃焼時の発熱量も減少させることができる。
【0019】
「その他の形態」
図1のパネル1は正方形状を呈しているが、パネルの形状は特に限定されるものではない。例えば図3aのパネル1Aのように六角形としてもよく、正三角形や二等辺三角形等の三角形でもよく、長方形等の正方形以外の四角形でもよく、正五角形等の五角形等の多角形であってもよい。
図1のパネル1は角部の全部に切欠溝が形成されているが、いずれか一つ、二つまたは三つに設けるようにしてもよい。
図1のパネル1はパネル基材10の側面が表面に対して垂直に延びているが、図3bのパネル1Bのように側面10bが、表面10aに対して裏面10cが縮小するように傾斜していてもよい。この場合、複数のパネルを並べる際、パネルの側面の厚みに関係なく隣接したパネルの縁(辺)を近づけることができるため、並べたパネルの美観をより向上させることができる。なお、図示しないが、側面10bが、表面10aに対して裏面10cが拡大するように傾斜させてもよい。
図1のパネル1は表面と裏面とが平行になっているが、表面が裏面に対して所定の角度を有するようにしてもよい(図示せず)。
図1のパネル1のパネル基材10の切欠溝15は裏面10cと連続し、表面10aと連続していないが、図3cのパネル基材10Aのように切欠溝15は裏面10cから表面10aまで延びていてもよい(表面10aおよび裏面10cと連続)。また図3dのパネル基材10Bのように切欠溝15を裏面10cおよび表面10aのいずれとも非連続としてもよく、図3eのパネル基材10Cのように切欠溝15を表面10aと連続し、裏面10cと非連続としてもよい。
図1のパネル1は表皮材20の固定代部28をパネル基材10の裏面に接着することによって固定しているが、固定代部28を設けずに側面10bに直接接着してもよい(図示せず)。また図3fのように側面10bの全体を覆わずに側面10bの表面側の一部を覆し、それを側面10bに接着するようにしてもよい。
図1のパネル1は枠体と充填材とからなるパネル基材を用いているが、枠体を設けずに充填材にそのまま切込溝を設けるようにしてもよい(図示せず)。
【0020】
図4a、図4bのパネル1Cは、側面が外側に向かって湾曲する湾曲部を有するものであり、円形状を呈している。つまり、パネル1Cは、略円形状のパネル基材10と、そのパネル基材10の表面10aの全体およびパネル基材10の側面10bの全体を覆う表皮材20とを備えた略円形状のものである。パネル基材10の側面10bに、裏面10cから表面側にむかって形成された切欠溝15が4つ形成されている(裏面10cと連続、表面10aと非連続)。4つの切欠溝15は、90度の間隔で設けられている。そして、表皮材20の余剰部がこの切欠溝15に挿入されている。しかし、切欠溝15の数は特に限定されるものではなく、パネルの厚みおよび大きさによって、適宜選択される。つまり、円形の場合、余剰部は表皮材20の装飾部表面20aの縁部全体に生じるため、その余剰部の大きさは、パネルの表面の大きさおよびパネルの厚みに大きく依存する。そのため、余剰部を切欠溝15に挿入することにより表皮材の装飾部側面27を引っ張りながらパネル基材10の側面10bにしわなく装着できる範囲に切欠溝15は設けることになる。
その他の構成は、実質的に、図1のパネル1と同じである。そして、図1のパネル1と実質的に同様の効果を奏し、外力等が加えられても角部周辺の表皮材が剥がれたりしにくく、角部周辺に表皮材によるしわや膨出部が形成されにくい。
図4bのパネル1Dは、扇状のものであり、側面が、外側に向かって湾曲する湾曲側面10b1と、2つの平面側面10b2とからなり、3つの角部とを有する。切欠溝15は、湾曲部の中央と、3つの角部に設けられている。
【0021】
図5aのパネル基材10Eは、表皮材20の固定代部を挟持して固定する固定部119(図5b参照)を有するものである。つまり、図5bに示すように枠体110Eの枠片111Eが、パネル基材10Eの側面を構成する側壁部116と、その側壁部116の下端に設けられる表皮材を挟み込んで固定する固定部119とを有している。固定部119は、壁等に固定するための底部を兼ねている。固定部119は、枠片111Eに沿って設けられる固定溝119aと、その内部に形成された弾性を有する爪部119bとを有する。つまり、表皮材20の装飾部側面の縁を固定溝119aに挿入し、爪部119bで引っかけるものである。
また枠体110Eは、隣接する各枠片111Eが直角に交わる角部112Eを有している(図5a参照)。この枠体110Eの4つ角部112Eには、固定部119の固定溝119aから表面側に向かって切欠溝15が形成されている(図5b参照)。この切欠溝15は、枠片111Eの側壁部116を貫通するように形成されており、枠体110Eの側部外側方向のみ開口している。つまり、切欠溝15は、枠体110Eの表面と裏面の両方と非連続となっている。
【0022】
このパネル基材10Eも、図1のパネル基材10と同様にして図2cの表皮材20を装着する。つまり、パネル基材10Eを準備し、パネル基材10Eの表面10aと表皮材20の装飾部表面26とを合わせる。ついで、パネル基材10の側面10bと表皮材20の装飾部側面27とを合わせる。このとき、余剰部29が余ることになるため、表皮材20の裏面側に折り曲げて、パネル基材10Eの切欠溝15に押し込む。このとき、治具等を用い、パネル基材10Eの角部112E周辺の表皮材20に所定の張力を持たせるように装着する。最後に、表皮材20の固定代部28を固定部115に挿入して固定することによりパネルを製造することができる。
【0023】
このパネル基材10Eを用いたパネルも、図1のパネル1と同様に、表皮材の余剰部を切込溝15に挿入しているため、外力等が加えられても剥がれたりしにくい。またパネル基材10Eの角部112Eの周辺を覆う表皮材20に適切な張力を与えることができるため、角部周辺にしわや膨出部が形成されるのを防ぐことができ、美観を向上させることができる。
【0024】
図5bのパネル基材10Fは、表皮材20の縁部を挟持して固定する固定部119の位置がパネル基材10Eとは異なるものである。つまり、パネル基材10Fの枠体110Fの枠片111Fが、パネル基材10Fの側面を構成する側壁部116と、その側壁部116の裏面に設けられた固定部119とを有している。固定部119は、枠片111Fに沿って設けられる固定溝119aと、その内部に形成された弾性を有する爪部119bとを有する。つまり、表皮材の固定代部28を固定溝119aに挿入し、爪部115bで引っかけるものである。また枠体110Fは、隣接する各枠片111Fが直角に交わる角部112Fを有し、この角部112Fには、裏面から表面側に向かって切欠溝15が形成されている。この切欠溝15は、枠体110Fの内外を貫通するように形成されており、枠体110Fの裏面と連続し、枠体110Fの表面と非連続となっている。
このパネル基材10Fを用いたパネルも図1のパネル1と同様の効果を奏し、外力等が加えられても角部等の表皮材が剥がれたりしにくく、角部周辺に表皮材によるしわや膨出部が形成されにくい。
【実施例0025】
図6a~図6cのパネルは、図1のパネル1の実施例である。充填材としてガラス繊維を雲状に集合させたモルトン(吸音材)を用いている。パネルの表面および側面だけでなく、角部にもしわや膨出部が形成されていないことがわかる。
また比較例のパネル(従来品)として、余剰部29と隣接する一方の装飾部側面28との境界を切断した表皮材を切欠溝を有さないパネル基材に装着したものを準備した。なお、余剰部29は一方の装飾部側面28の内側に入れた。つまり、比較例のパネルは、パネル側面の角部の周辺に表皮材の重なり部分を有する。
図6aのパネルと比較例のパネルをそれぞれ4つ準備し、それぞれのパネルの一つの角部が隣り合うように並べた。図7aは比較例のパネルを並べたものであり、図7bは図6aのパネルを並べたものである。図7aと図7bを比べると、図7bの方が図7aに比べて、パネルの側辺同士の境界がシャープであり、パネルの頂点同士の隙間が小さいことが確認できた。このように本発明のパネルは、従来品のパネルに比べて美観が向上していることがわかる。特に、複数のパネルを並べたときの美観が向上する。
【符号の説明】
【0026】
1、1A~1F パネル
10、10A~10F パネル基材
10a パネル基材の表面
10b パネル基材の側面
10b1 パネル基材の湾曲側面
10b2 平面側面
10c パネル基材の裏面
15 切欠溝
15a 上底
20 表皮材
26 装飾部表面
27 装飾部側面
28 固定代部
29 余剰部
110 枠体
111 枠片
112 角部
115 外溝
116 側壁部
119 固定部
119a 固定溝
119b 爪部
120 充填材
120c 充填材の裏面
125 内溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7