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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150252
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】収容具
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/08 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
A61M39/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063575
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】石渡 優一
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066NN20
(57)【要約】
【課題】プライミングのための追加的な器具が不要であり、プライミングを短時間で容易に行うことができる収容具を提供する。
【解決手段】収容具10は、医療用長尺体を収容する管体20と、内部に充填された液体の放出口51を備えるバッグ50と、管体20の一端側の開口である第1開口部21とバッグ50の放出口51とを接続する接続チューブ70と、接続チューブ70の内腔に配置され、破壊により接続チューブ70の内腔を閉鎖状態から連通状態にすることを可能とする栓体80と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用長尺体を収容する管体と、
内部に充填された液体の放出口を備えるバッグと、
前記管体の一端側の開口である第1開口部と前記バッグの放出口とを接続する接続チューブと、
前記接続チューブの内腔に配置され、破壊により前記接続チューブの内腔を閉鎖状態から連通状態にすることを可能とする栓体と、を有することを特徴とする収容具。
【請求項2】
前記接続チューブは、前記管体よりも柔軟な材料により形成されることを特徴とする請求項1に記載の収容具。
【請求項3】
前記接続チューブの前記栓体よりも前記第1開口部側に位置する分岐部から分岐する分岐チューブと、
前記分岐チューブに接続されて前記分岐チューブの内腔を外部へ開閉可能なハブ部と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の収容具。
【請求項4】
前記接続チューブの前記栓体と前記分岐部との間に弁構造を有することを特徴とする請求項3に記載の収容具。
【請求項5】
前記バッグを一方側の面から支持する保護部材を有することを特徴とする請求項1または2に記載の収容具。
【請求項6】
前記保護部材は、前記バッグの少なくとも一部を収容可能な凹部を有することを特徴とする請求項5に記載の収容具。
【請求項7】
管状の長尺なカテーテル本体および前記カテーテル本体の基端部に連結されたカテーテルハブを有するカテーテルを収容する管体と、 内部に充填された液体の放出口を備えるバッグと、
前記カテーテルハブの開口部と前記バッグの放出口とを接続する接続チューブと、
前記接続チューブの内腔に配置され、破壊により前記接続チューブの内腔を閉鎖状態から連通状態にすることを可能とする栓体と、を有することを特徴とする収容具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤ等の医療用長尺体を収容する収容具に関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドワイヤやカテーテル等の体内に挿入する医療用長尺体は、保管や輸送のために、長尺な管体である収容具に収容される場合がある。例えば特許文献1には、カテーテルを収容する巻回された管体を有するカテーテルホルダが記載されている。
【0003】
医療用長尺体は、体内に挿入する前に、生理食塩液で濡らすプライミングが施される。プライミングにより、医療用長尺体は、外周面に設けられた親水性コーティングの潤滑性が発現して管体との間の摩擦が低下するため、管体から容易に引き抜くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-163045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プライミングでは、医療用長尺体が収容された収容具を、生理食塩液を満たしたトレイに浸漬するとともに、生理食塩液を収容したシリンジを管体の端部に接続して、管体の内腔に生理食塩液を注入する操作が行われる。このように、プライミングは、追加的な器具を準備する必要があり、煩雑で時間を要する作業である。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、プライミングのための追加的な器具が不要であり、プライミングを短時間で容易に行うことができる収容具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記(1)に記載の発明により達成される。
【0008】
(1) 本発明に係る収容具は、医療用長尺体を収容する管体と、内部に充填された液体の放出口を備えるバッグと、前記管体の一端側の開口である第1開口部と前記バッグの放出口とを接続する接続チューブと、前記接続チューブの内腔に配置され、破壊により前記接続チューブの内腔を閉鎖状態から連通状態にすることを可能とする栓体と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)に記載の収容具は、栓体が破壊されることにより、バッグから接続チューブを介して管体への液体の供給が可能となるため、管体の内腔に収容された医療用長尺体をプライミングできる。このため、収容具は、シリンジ等のプライミングに必要な追加的な器具が不要であり、プライミングを短時間で容易に行うことができる。
【0010】
(2) 上記(1)に記載の収容具において、前記接続チューブは、前記管体よりも柔軟な材料により形成されてもよい。これにより、収容具は、接続チューブを変形させることで、破壊するための力を栓体に作用させることが容易である。
【0011】
(3) 上記(1)または(2)に記載の収容具は、前記接続チューブの前記栓体よりも前記第1開口部側に位置する分岐部から分岐する分岐チューブと、前記分岐チューブに接続されて前記分岐チューブの内腔を外部へ開閉可能なハブ部と、を有してもよい。これにより、収容具は、バッグからのプライミングに加えて、開いたハブ部から分岐チューブを介して管体へ追加のプライミングを行うことができる。また、収容具は、医療用長尺体を収容する管体の内腔への滅菌ガスの到達性が向上する。
【0012】
(4) 上記(3)に記載の収容具は、前記接続チューブの前記栓体と前記分岐部との間に弁構造を有してもよい。これにより、収容具は、プライミングを停止したり、ハブ部から供給される液体のバッグへの流入を抑制したりすることができる。
【0013】
(5) 上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の収容具は、前記バッグを一方側の面から支持する保護部材を有してもよい。これにより、保管時や輸送時におけるバッグの破損や、栓体の意図しない開通を抑制できる。
【0014】
(6) 上記(5)に記載の収容具において、前記保護部材は、前記バッグの少なくとも一部を収容可能な凹部を有してもよい。これにより、収容具は、包装体内でのバッグの移動を制限できるやめ、保管時や輸送時におけるバッグの破損や栓体の意図しない開通を抑制できる。
【0015】
(7) 本発明に係る収容具の他の態様は、管状の長尺なカテーテル本体および前記カテーテル本体の基端部に連結されたカテーテルハブを有するカテーテルを収容する管体と、内部に充填された液体の放出口を備えるバッグと、前記カテーテルハブの開口部と前記バッグの放出口とを接続する接続チューブと、前記接続チューブの内腔に配置され、破壊により前記接続チューブの内腔を閉鎖状態から連通状態にすることを可能とする栓体と、を有することを特徴とする。収容具は、栓体が破壊されることによりバッグから接続チューブを介してカテーテルハブの開口部からカテーテルの内腔への液体の供給が可能となるため、管体に収容されたカテーテルの内腔をプライミングできる。このため、収容具は、シリンジ等のプライミングに必要な追加的な器具が不要であり、プライミングを短時間で容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る収容具の正面図である。
図2】接続チューブおよび栓体を示す断面図であり、(A)は栓体が開通する前の状態、(B)は栓体が開通した状態を示す。
図3】バッグの一部を示す断面図である。
図4】第2実施形態に係る収容具の正面図である。
図5図4の矢線Aから見た収容具の一部を示す側面図である。
図6図4のハブ部を開いた状態における図であり、(A)は図4のB-B線に沿う断面図、(B)は図4のC-C線に沿う断面図である。
図7図4のハブ部を閉じた状態における図であり、(A)は図4のB-B線に沿う断面図、(B)は図4のC-C線に沿う断面図である。
図8】第1チューブの内腔を指で閉鎖した状態を示す側面図である。
図9】第1チューブの内腔を把持具で閉鎖した状態を示す側面図である。
図10】第1チューブの分岐部と栓体との間に弁構造を配置した変形例を示す側面図である。
図11】第3実施形態に係る収容具の正面図である。
図12】第4実施形態に係る収容具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る収容具10は、図1に示すように、医療用長尺体であるガイドワイヤWを保管および輸送するために収容するものである。収容具10に収容されるガイドワイヤWとしては、公知のものが使用される。なお、医療用長尺体は、ガイドワイヤWに限定されず、例えばカテーテルであってもよい。
【0019】
収容具10は、ガイドワイヤWを内腔に収容する管体20と、管体20の形状を維持するために管体20に取り付けられる複数の留め部30と、管体20の開口部の一方に連結されるインサータ40と、内部に液体が充填されたバッグ50と、バッグ50を管体20に連結する第1連結部60と、バッグ50と管体20とを接続する接続チューブ70と、接続チューブ70の途中に配置される栓体80とを備えている。収容具10は、ガイドワイヤWを収容した状態で滅菌されて、包装体(図示せず)に包装されて保管される。
【0020】
管体20は、所定長さのチューブが1回以上(本実施形態では2~3回)巻回されて、全体として渦巻き形状となっている。巻回された管体20の内側に配置される管体20の開口部である第1開口部21には、接続チューブ70が連通するように接続されている。巻回された管体20の外側に配置される管体20の開口部である第2開口部22には、インサータ40が連通するように接続されている。なお、接続チューブ70が接続される第1開口部21が、巻回された管体20の外側に配置され、インサータ40が接続される第2開口部22が、巻回された管体20の内側に配置されてもよい。
【0021】
管体20の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド等である。
【0022】
留め部30は、管体20の周方向(巻回方向)の数箇所に設けられ、隣接する管体20同士を並列させた状態で固定している。留め部30は、並んで配置された窪み部に管体20を収容することで、管体20に連結されかつ管体20の渦巻き形状を維持する。留め部30の材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などの各種樹脂材料等である。
【0023】
インサータ40は、筒状の部材であり、管体20の第2開口部22に連結される基端開口部41と、反対側の先端開口部42とを有している。インサータ40は、先端開口部42へ向かって外径が縮径している。インサータ40は、管体20の第2開口部22に連結されて、ガイドワイヤWの先端部を保護するとともに、ガイドワイヤWをカテーテルに挿入する際のガイドとなる。
【0024】
接続チューブ70は、図1~2に示すように、管体20の第1開口部21に接続された第1チューブ71と、バッグ50の放出口51に接続された第2チューブ72と、第1チューブ71と第2チューブ72との間に配置されて栓体80が配置された栓体収容チューブ73とを有している。第1チューブ71、第2チューブ72および栓体収容チューブ73は、管体20よりも柔軟な材料により形成されて、柔軟に変形可能である。本実施形態では、第1チューブ71、第2チューブ72および栓体収容チューブ73は、別体のチューブで形成されているが、1つのチューブで一体的に形成されてもよい。栓体収容チューブ73の内径は、第1チューブ71および第2チューブ72の内径よりも大きいことが好ましい。これにより、栓体収容チューブ73は、栓体収容チューブ73の内腔に配置された栓体80による液体の流通性の低下を抑制できる。また、栓体80の外径は、第1チューブ71や第2チューブ72の内径よりも大きいことが好ましい。これにより、破壊後の栓体80が第1チューブ71や第2チューブ72に移動することを抑制できる。
【0025】
接続チューブ70の材料は、樹脂、エラストマーまたはゴムであることが好ましく、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、フッ素ゴム等である。
【0026】
栓体80は、栓体収容チューブ73の内腔に配置される筒状の部材である。栓体80は、大径部81と、大径部81よりも外径が小さい小径部82とを有している。大径部81の外周面は、栓体収容チューブ73の内周面に液密に固着され、小径部82の外周面は、栓体収容チューブ73の内周面から離れて位置する。栓体80は、大径部81が位置する側の端面から小径部82の途中まで形成された連通穴83を有する。連通穴83は、栓体80の反対側の端面(小径部82が位置する側の端面)まで到達しておらず、栓体80を貫通していない。小径部82は、連通穴83が形成されている位置に、栓体80の破壊を誘発するために、栓体80の壁の厚みが低減された薄肉部84が形成されている。栓体80としては、例えば、公知のクリックチップ(登録商標)を用いることができる。
【0027】
栓体80の材料は、人力で折り曲げて破壊可能であれば特に限定されないが、樹脂であることが好ましく、例えば、硬質ポリ塩化ビニル、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等である。
【0028】
バッグ50は、図1、3に示すように、プライミング用の液体である生理食塩液が充填されており、液体を放出可能な1つの放出口51を有している。
【0029】
バッグ50の材料は、人力で押して内部に充填された液体を加圧できるように変形可能であれば特に限定されないが、樹脂であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体等である。
【0030】
第1連結部60は、バッグ50を管体20に連結する部材である。第1連結部60は、バッグ50の縁部に固定される第1固定部62と、管体20に連結可能な第1窪み部63とを有している。第1固定部62は、例えば、バッグ50の縁部に接着や融着等により固定されている。第1窪み部63は、管体20を収容することで、第1連結部60を管体20に固定する。第1連結部60の材料は、例えば、前述した留め部30に適用可能な材料である。なお、第1連結部60は、設けられなくてもよい。
【0031】
収容具10は、ガイドワイヤWの基端部とバッグ50とが、巻回された管体20に対して同じ側に配置されることが好ましい。第1実施形態においては、ガイドワイヤWの基端部が、巻回された管体20の内側に配置されるため、接続チューブ70、栓体80およびバッグ50も、巻回された管体20の渦巻きの内側に配置される。これにより、収容具10は、接続チューブ70が巻回された管体20を横切る必要がないため、嵩張らずに包装可能である。なお、ガイドワイヤWの基端部が、巻回された管体20の外側に配置される場合には、接続チューブ70、栓体80およびバッグ50も、巻回された管体20の外側に配置されることが好ましい。
【0032】
次に、第1実施形態に係る収容具10の使用方法を説明する。
【0033】
ガイドワイヤWは、先端部を除く略全体が収容具10の管体20に収容されている。ガイドワイヤWの先端部は、管体20の第2開口部22からインサータ40を通過して外部へ突出している。ガイドワイヤWの基端は、管体20の第1開口部21の近傍に配置されることが好ましい。プライミング前の状態では、収容具10は、栓体80により接続チューブ70の内腔が閉鎖されている。
【0034】
術者は、ガイドワイヤWをプライミングする際、栓体収容チューブ73の外側から栓体80の大径部81と小径部82とを掴み、図2(B)に示すように、栓体80を折り曲げて薄肉部84を破断するように破壊する。第1チューブ71、栓体収容チューブ73および第2チューブ72が柔軟であるため、術者は、第1チューブ71、栓体収容チューブ73または第2チューブ72の少なくとも一部を変形させて、栓体80を折り曲げて破壊することができる。
【0035】
栓体80の薄肉部84が破壊されると、連通穴83が破断面にて開口する。このため、接続チューブ70の栓体80を挟む第1チューブ71と第2チューブ72とが開通する。なお、栓体80が破壊される際に、栓体80を挟む第1チューブ71と第2チューブ72とが開通するのであれば、栓体80は2つ以上の物体に分離するように破断するのではなく、完全に分離せずに部分的につながった状態で破壊されてもよい。次に、術者は、バッグ50を押圧してバッグ50内の生理食塩液を加圧する。これにより、バッグ50に充填された生理食塩液が、放出口51から第2チューブ72へ流入し、栓体収容チューブ73内の栓体80の連通穴83を通って第1チューブ71へ流入する。さらに、生理食塩液は、図1に示すように、第1開口部21から管体20の内腔に流入して管体20内を満たし、第2開口部22からインサータ40を通って、インサータ40の先端開口部42から放出される。これにより、管体20およびインサータ40に収容されているガイドワイヤWは、生理食塩液によりプライミングされる。この後、術者は、ガイドワイヤWの先端部を把持してガイドワイヤWを管体20から引き抜き、使用する。
【0036】
以上のように、第1実施形態に係る収容具10は、医療用長尺体を収容する管体20と、内部に充填された液体の放出口51を備えるバッグ50と、管体20の一端側の開口である第1開口部21とバッグ50の放出口51とを接続する接続チューブ70と、接続チューブ70の内腔に配置され、破壊により接続チューブ70の内腔を閉鎖状態から連通状態にすることを可能とする栓体80と、を有する。収容具10は、栓体80が破壊されることによりバッグ50から接続チューブ70を介して管体20への液体の供給が可能となるため、管体20の内腔に収容された医療用長尺体をプライミングできる。このため、収容具10は、シリンジ等のプライミングに必要な追加的な器具が不要であり、プライミングを短時間で容易に行うことができる。なお、収容具10を使用する際に、シリンジ等の追加的な器具が使用されてもよい。
【0037】
接続チューブ70は、管体20よりも柔軟な材料により形成される。これにより、収容具10は、接続チューブ70を変形させることで、破壊するための力を栓体80に作用させることが容易である。
【0038】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る収容具10は、図4~6に示すように、接続チューブ70に連結される分岐チューブ74およびハブ部90と、保護部材100と、第2連結部110とを有する点で、第1実施形態と異なる。
【0039】
第2実施形態において、収容具10は、接続チューブ70の第1チューブ71から分岐する分岐チューブ74と、分岐チューブ74に接続されるハブ部90と、バッグ50を保護する保護部材100と、保護部材100を管体20に連結する少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の第2連結部110とを有している。
【0040】
分岐チューブ74は、接続チューブ70の栓体80より第1開口部21側に位置する第1チューブ71の分岐部75から分岐するチューブである。分岐チューブ74は、第1チューブ71と一体的に形成されるが、第1チューブ71に接続される他のチューブであってもよい。分岐チューブ74は、図6(A)に示すように、分岐部75と反対側に、分岐開口部76が形成されている。分岐開口部76は、ハブ部90の内部に位置し、分岐チューブ74の延在方向と直交する断面が半円形状である。
【0041】
ハブ部90は、図4~6に示すように、分岐チューブ74に接続されて、分岐チューブ74の内腔を外部へ開閉可能な部材である。ハブ部90は、分岐チューブ74の分岐開口部76を囲むように筒状に形成され、分岐開口部76に対して回転可能である。ハブ部90は、分岐開口部76に連通可能であって、外部に開口しているハブ開口部91を有する。ハブ開口部91は、ハブ部90の延在方向と直交する断面が半円形状である。ハブ部90は、回転することで、ハブ開口部91と分岐開口部76とが連通した状態と、ハブ開口部91と分岐開口部76とが連通しない状態とに切り替え可能である。すなわち、回転可能なハブ部90は、図6に示すように、分岐開口部76がハブ開口部91と連通するように配置されることで、分岐開口部76をハブ開口部91を介して外部へ開口することができる。さらに、回転可能なハブ部90は、図7に示すように、分岐開口部76がハブ開口部91と連通しないように配置されることで、分岐開口部76を外部から閉鎖することができる。
【0042】
ハブ部90の材料は、例えば上述した管体20に適用可能な材料を適用できる。
【0043】
保護部材100は、図4~6に示すように、ガイドワイヤWを収容した収容具10の保管時や輸送時にバッグ50を保護する部材である。本実施形態において、保護部材100は、一方側の支持面101に、バッグ50、接続チューブ70、分岐チューブ74、ハブ部90および管体20の少なくとも一部を支持している。保護部材100は、支持面101に、段差部102と、凹部103とを有する。段差部102は、支持面101の縁部にて一段下がる段差面104を有するように窪んで形成されている。段差面104は、管体20の一部を支持している。
【0044】
凹部103は、バッグ50、接続チューブ70、分岐チューブ74およびハブ部90を嵌合可能なように、バッグ50、接続チューブ70、分岐チューブ74およびハブ部90の形状に対応する形状に形成される。
【0045】
ガイドワイヤWを収容した収容具10の保管時や輸送時において、保護部材100は、凹部103にバッグ50を収容して保護する。このため、保護部材100は、バッグ50に過大な力が作用してバッグ50が破損したり栓体80が意図せずに開通したりすることを抑制できる。また、保護部材100は、バッグ50だけでなく、接続チューブ70、栓体80、分岐チューブ74およびハブ部90も保護しているため、これらが破損したり、栓体80が意図せずに開通したりすることを抑制できる。
【0046】
保護部材100は、バッグ50、接続チューブ70、分岐チューブ74およびハブ部90を支持できる強度を有する材料により形成される。保護部材100の材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミンド、ポリイミド、紙等である。
【0047】
第2連結部110は、保護部材100に固定される第2固定部121と、管体20に連結可能な第2窪み部122とを有している。第2固定部121は、例えば、保護部材100の段差面104に接着や融着等により固定されている。なお、第2固定部121は、保護部材100の段差面104以外の面に固定されてもよい。第2窪み部122は、管体20を収容することで、第2連結部110を管体20に固定する。なお、第2連結部110は、設けられなくてもよい。第2連結部110の材料は、例えば、前述した留め部30に適用可能な材料である。
【0048】
次に、第2実施形態に係る収容具10の使用方法を説明する。
【0049】
ガイドワイヤWは、図4に示すように、先端部を除く略全体が収容具10の管体20に収容されている。ガイドワイヤWの先端部は、管体20の第2開口部22からインサータ40を通過して外部へ突出している。ガイドワイヤWの基端は、管体20の第1開口部21の近傍に配置されることが好ましい。
【0050】
ガイドワイヤWは、収容具10に収容された状態で、滅菌ガスにより滅菌される。この際、収容具10は、外部から管体20の内腔に収容されたガイドワイヤWへ滅菌ガスを届きやすくするために、図6に示すように、ハブ開口部91が分岐開口部76と連通するように配置される。したがって、ガイドワイヤWを収容した収容具10の保管時や輸送時において、収容具10は、ハブ開口部91と分岐開口部76とが連通した状態となっている。
【0051】
術者は、ガイドワイヤWをプライミングする前に、保護部材100を、管体20から取り外す。術者は、ガイドワイヤWをプライミングする際、図7に示すように、ハブ開口部91を分岐開口部76と連通しないようにハブ開口部91を回転させることで、分岐開口部76を外部から閉鎖する。これにより、バッグ50から放出される生理食塩液は、ハブ部90から外部へ放出されることなく、管体20へ効率よく流入するようになる。次に、術者は、図2(B)に示すように、栓体収容チューブ73の外側から栓体80の大径部81と小径部82とを掴み、栓体80を折り曲げて薄肉部84を破壊する。栓体80の薄肉部84が破壊されると、接続チューブ70の栓体80を挟む第1チューブ71と第2チューブ72とが連通する。次に、術者は、図4に示すバッグ50を押圧してバッグ50内の生理食塩液を加圧する。これにより、バッグ50に充填された生理食塩液が、放出口51から第2チューブ72、栓体収容チューブ73内の栓体80の連通穴83、および第1チューブ71を介して管体20へ流入し、インサータ40の先端開口部42から放出される。これにより、管体20およびインサータ40に収容されているガイドワイヤWは、生理食塩液によりプライミングされる。
【0052】
バッグ50から放出された生理食塩液によるガイドワイヤWのプライミングが不十分である場合、術者は、ハブ部90を利用して、追加のプライミングを行うことができる。術者は、図6に示すように、ハブ開口部91が分岐開口部76と連通するようにハブ部90を回転させることで、分岐開口部76を、ハブ開口部91を介して外部へ開口させる。次に、術者は、生理食塩液を充填したシリンジをハブ部90に接続して、ハブ部90へ生理食塩液を供給する。これにより、生理食塩液がハブ部90から分岐チューブ74および第1チューブ71を介して管体20へ流入し、インサータ40の先端開口部42から放出される。これにより、管体20およびインサータ40に収容されているガイドワイヤWへのプライミングが追加される。
【0053】
ハブ部90から生理食塩液を供給する際には、術者は、図8に示すように、柔軟に変形可能な第1チューブ71の分岐部75と栓体80との間の部位を指Fで挟んで変形させ、第1チューブ71の内腔を閉鎖させることが好ましい。これにより、ハブ部90から供給された生理食塩液が、第1チューブ71からバッグ50へ向かって流れることを抑制できる。また、収容具10は、図9に示すように、第1チューブ71の分岐部75と栓体80との間の部位を挟んで変形させるためのクリップ等の把持具140を含んでもよい。または、収容具10は、図10に示す変形例のように、第1チューブ71の分岐部75と栓体80との間に、第1チューブ71におけるバッグ50へ向かう流れを抑制するための弁構造77を有してもよい。弁構造77は、例えば二方活栓や逆止弁である。二方活栓は、術者の操作により流路を切り替えることにより、バッグ50からの生理食塩液の流れを停止できる。逆止弁は、バッグ50から管体20へ向かってのみ生理食塩液を流すことができる。このような弁構造77は、収容具10の保管時や輸送時に、栓体80が破損した場合に生理食塩液の流出を防止する安全機構としても機能する。
【0054】
以上のように、第2実施形態に係る収容具10は、接続チューブ70の栓体80よりも第1開口部21側に位置する分岐部75から分岐する分岐チューブ74と、分岐チューブ74に接続されて分岐チューブ74の内腔を外部へ開閉可能なハブ部90と、を有する。これにより、収容具10は、バッグ50からのプライミングに加えて、開いたハブ部90から分岐チューブ74を介して管体20へ追加のプライミングを行うことができる。また、収容具10は、医療用長尺体を収容する管体20の内腔への滅菌ガスの到達性が向上する。
【0055】
収容具10は、接続チューブ70の栓体80と分岐部75との間に弁構造77を有してもよい。これにより、収容具10は、プライミングを停止したり、ハブ部90から供給される液体のバッグ50への流入を抑制したりすることができる。
【0056】
収容具10は、バッグ50を一方側の面から支持する保護部材100を有する。これにより、保管時や輸送時におけるバッグ50の破損や栓体80の意図しない開通を抑制できる。
【0057】
保護部材100は、バッグ50の少なくとも一部を収容可能な凹部103を有する。これにより、収容具10は、包装体内でのバッグ50の移動を制限できるやめ、保管時や輸送時におけるバッグ50の破損や栓体80の意図しない開通を抑制できる。
【0058】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る収容具10は、図11に示すように、管体20が巻回されずに直線的に配置される点で、第2実施形態と異なる。なお、管体20が直線的である点以外は、第2実施形態と略同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0059】
第3実施形態に係る収容具10は、管体20が直線的であるため、直線的に保管することが望ましいガイドワイヤWやカテーテル等の医療用長尺体を収容するために適している。
【0060】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る収容具10は、図12に示すように、医療用長尺体であるカテーテル200を保管および輸送するために収容するものである。カテーテル200は、長尺な管状のカテーテル本体201と、カテーテル本体201の基端部に連結されたカテーテルハブ202を有している。カテーテル200は、カテーテル本体201が第2開口部22から管体20に挿入された状態で、管体20に保持されている。
【0061】
第4実施形態では、バッグ50、接続チューブ70および栓体80が、第1開口部21およびカテーテルハブ202の各々に接続されるように、2つずつ設けられる。一方のバッグ50、接続チューブ70および栓体80は、巻回された管体20の内側に配置されて、管体20の内側の第1開口部21に接続されている。他方のバッグ50、接続チューブ70および栓体80は、巻回された管体20の外側に配置されて、管体20の外側の第2開口部22に挿入されるカテーテル200のカテーテルハブ202の開口部203に接続されている。カテーテルハブ202の開口部203に接続される接続チューブ70は、柔軟に変形可能な密封部材210を介してカテーテルハブ202に接続されることが好ましい。密封部材210は、カテーテルハブ202の内腔と、接続チューブ70の内腔とを連通させるための貫通孔211が形成された筒状の部材である。密封部材210は、例えば貫通孔211が形成されたゴム栓である。密封部材210の材料は、高弾性材料であるゴムやエラストマーであることが好ましい。
【0062】
次に、第4実施形態に係る収容具10の使用方法を説明する。
【0063】
術者は、カテーテル200をプライミングする際、各々の栓体収容チューブ73の外側から、各々の栓体80を折り曲げて破断するように破壊する。なお、密封部材210がカテーテルハブ202から外れている場合には、密封部材210をカテーテルハブ202の開口部203に嵌合させてから、密封部材210に接続される接続チューブ70に配置される栓体80を折り曲げて破断する。
【0064】
次に、術者は、各々のバッグ50を押圧してバッグ50内の生理食塩液を加圧する。これにより、内側のバッグ50に充填された生理食塩液は、接続チューブ70を通って管体20の第1開口部21に流入し、カテーテル本体201の外周面を濡らす。また、外側のバッグ50に充填された生理食塩液は、接続チューブ70を通ってカテーテルハブ202の開口部203に流入し、カテーテル本体201の内腔を通って、カテーテル本体201の先端開口から放出される。これにより、生理食塩液は、カテーテル本体201の内周面を濡らす。カテーテル本体201の内周面をプライミングした後、術者は、密封部材210および接続チューブ70をカテーテルハブ202から取り外して、カテーテル200を管体20から引き抜く。
【0065】
第4実施形態では、2つのバッグ50を使用することにより、カテーテル200の外周面と内周面の両方をプライミングすることができる。なお、術者は、カテーテル200のプライミングにおいて、内側のバッグ50または外側のバッグ50の一方のみを使用して、カテーテル200の外周面または内周面の一方のみをプライミングしてもよい。
【0066】
以上のように、第4実施形態に係る収容具10は、管状の長尺なカテーテル本体201およびカテーテル本体201の基端部に連結されたカテーテルハブ202を有するカテーテル200を収容する管体20と、内部に充填された液体の放出口51を備えるバッグ50と、カテーテルハブ202の開口部203とバッグ50の放出口51とを接続する接続チューブ70と、接続チューブ70の内腔に配置され、破壊により接続チューブ70の内腔を閉鎖状態から連通状態にすることを可能とする栓体80と、を有する。収容具10は、栓体80が破壊されることによりバッグ50から接続チューブ70を介してカテーテルハブ202の開口部203からカテーテル200の内腔への液体の供給が可能となるため、管体20に収容されたカテーテル200の内腔をプライミングできる。このため、収容具10は、シリンジ等のプライミングに必要な追加的な器具が不要であり、プライミングを短時間で容易に行うことができる。
【0067】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、栓体80の構造は、破壊することで液体を通過可能とすることができれば、特に限定さない。また、保護部材100の凹部103は、貫通する孔であってもよい。すなわち、貫通する孔は、凹部の一形態であり得る。
【符号の説明】
【0068】
10 収容具
20 管体
21 第1開口部
50 バッグ
51 放出口
70 接続チューブ
71 第1チューブ
72 第2チューブ
73 栓体収容チューブ
74 分岐チューブ
75 分岐部
76 分岐開口部
77 弁構造
80 栓体
90 ハブ部
91 ハブ開口部
100 保護部材
103 凹部
200 カテーテル(医療用長尺体)
201 カテーテル本体
202 カテーテルハブ
203 開口部
W ガイドワイヤ(医療用長尺体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12