(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150255
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】筒状加熱部と該筒状加熱部を備えた排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/10 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H05B3/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063585
(22)【出願日】2023-04-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】592010106
【氏名又は名称】カンケンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】大前 秀治
(72)【発明者】
【氏名】前川 和廣
(72)【発明者】
【氏名】康乗 弘雅
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA02
3K092QB02
3K092QB09
3K092VV28
3K092VV40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属構造物の高温での酸化による劣化と酸化異物の発生による短絡を防止するのはもとより、電熱ヒータと金属構造物との短絡を防止して電熱ヒータの寿命を大幅に伸ばすことが出来る排ガス処理装置の筒状加熱部を提供する。
【解決手段】排ガス処理装置の筒状加熱部において、反応器への挿入基部に排ガス導入口が設けられ、排ガス処理空間に開放した被加熱排ガス出口が設けられた筒状加熱部は、金属製の内筒と金属製の外筒とを備えた二重構造の中空筒体、内筒を囲繞し且つ上下方向にて互いに間隔をあけて内筒と外筒との間のヒータ設置空間に設けられた複数の碍子、その碍子に取り付けられた電熱ヒータ、及び内筒に取着され、少なくとも碍子の下面を支持してヒータ設置空間の所定の高さ位置にて碍子を保持する板状又はブロック状の保持部材を具備する。碍子のうち最下段のものは、その荷重が電熱ヒータへと与えられる重石となっていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に排ガス処理空間(S)と、その排ガス処理空間(S)で処理された排ガス(G)の分解排ガス排出口(12)とが設けられている反応器(10)内に立設された排ガス処理装置(1)の筒状加熱部において、
上記の反応器(10)への挿入基部に排ガス導入口(15)が設けられ、上記の反応器(10)への挿入端に上記の排ガス処理空間(S)に開放した被加熱排ガス出口(16)が設けられた上記の筒状加熱部は、
金属製の内筒(21)と金属製の外筒(22)とを備えた二重構造の中空筒体(20)、
上記の内筒(21)を囲繞し且つ上下方向にて互いに間隔をあけて上記の内筒(21)と上記の外筒(22)との間のヒータ設置空間(P)に設けられた複数の碍子(30)、
その碍子(30)に取り付けられた電熱ヒータ(H)、及び
上記の内筒(21)に取着され、少なくとも上記の碍子(30)の下面を支持して上記ヒータ設置空間(P)の所定の高さ位置にて上記の碍子(30)を保持する板状又はブロック状の保持部材(40)を具備すると共に、
上記の碍子(30)のうち最下段のものは、その荷重が上記の電熱ヒータ(H)へと与えられる重石となっている、ことを特徴とする排ガス処理装置の筒状加熱部。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス処理装置の筒状加熱部において、
複数設けられる前記の碍子(30)の少なくとも一部は、
円周方向に所定の間隔をあけて複数のヒータ保持孔(32h)が穿設された大径リング状の上部本体(34)と、上記のヒータ保持孔(32h)に挿通される上記の電熱ヒータ(H)に接触しない小径リング状の下部本体(35)とを有しており、
その下部本体(35)の上面に設けられた少なくとも3つの突起(35b)と上記の上部本体(34)の下面とが点もしくは線で接触するように連設されると共に、
上記の下部本体(35)の下面が前記の保持部材(40)によって支持される、ことを特徴とする排ガス処理装置の筒状加熱部。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排ガス処理装置の筒状加熱部において、
複数設けられる前記の碍子(30)のうち、上部のものは隣接する碍子(30)間の距離が大きくなるよう設置されると共に、
隣接する碍子(30)間の距離が大きくなるよう設置された上部では、前記の電熱ヒータ(H)がセラミックスパイプ(60)で被覆される、ことを特徴とする排ガス処理装置の筒状加熱部。
【請求項4】
内部に排ガス処理空間(S)と、その排ガス処理空間(S)で処理された排ガス(G)の分解排ガス排出口(12)が設けられている反応器(10)と、その反応器(10)内に立設された筒状加熱部(14)とで構成された排ガス処理装置において、
上記の反応器(10)への挿入基部に排ガス導入口(15)が設けられ、上記の反応器(10)への挿入端に上記の排ガス処理空間(S)に開放した被加熱排ガス出口(16)が設けられた上記の筒状加熱部(14)は、
金属製の内筒(21)と金属製の外筒(22)とを備えた二重構造の中空筒体(20)、上記の内筒(21)を囲繞し且つ互いに間隔をあけて上記の内筒(21)と上記の外筒(22)との間のヒータ設置空間(P)に設けられた複数の碍子(30)、その碍子(30)に取り付けられた電熱ヒータ(H)、及び上記の内筒(21)に取着され、上記の碍子(30)を支持して上記のヒータ設置空間(P)に保持する保持部材(40)とで構成され、
上記の碍子(30)のうち最下段のものは、その荷重が上記の電熱ヒータ(H)へと与えられる重石となっている、ことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の排ガス処理装置において、
複数設けられる前記の碍子(30)の少なくとも一部は、
円周方向に所定の間隔をあけて複数のヒータ保持孔(32h)が穿設された大径リング状の上部本体(34)と、上記のヒータ保持孔(32h)に挿通される上記の電熱ヒータ(H)に接触しない小径リング状の下部本体(35)とを有しており、
その下部本体(35)の上面に設けられた少なくとも3つの突起(35b)と上記の上部本体(34)の下面とが点もしくは線もしくは小面積の面で接触するように連設されると共に、
上記の下部本体(35)の下面が前記の保持部材(40)によって支持される、ことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の排ガス処理装置において、
複数設けられる前記の碍子(30)のうち、上部のものは隣接する碍子(30)間の距離が大きくなるよう設置されると共に、
隣接する碍子(30)間の距離が大きくなるよう設置された上部では、前記の電熱ヒータ(H)がセラミックスパイプ(60)で被覆される、ことを特徴とする排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業プロセス等から排出される人体に有害なガスやオゾン層破壊ガスなどを熱分解処理する排ガス処理装置における筒状加熱部の改良に関し、更に前記筒状加熱部を備えた排ガス処理装置に係る。
【0002】
物を製造したり、処理したりする工業プロセスでは様々な種類のガスが使用されている。このため、工業プロセスから排出されるガス(以下、「処理対象排ガス」という。)の種類も非常に多岐にわたっており、処理対象排ガスの種類に応じて、様々な種類の排ガス処理方法および排ガス処理システムが用いられている。
【0003】
例えば、半導体製造プロセス一つを例にとっても、モノシラン(SiH4)、塩素ガス、PFCs(パーフルオロコンパウンド)など様々な種類のガスが使用されている。これらのガスは人体や地球環境に対して悪影響を及ぼすことから、何らかの手段によって分解或いは除去する必要があり、種々の処理方法が実用化されている。その代表例として、吸着式、湿式、電熱酸化分解式、火炎燃焼式などがあるが、各々長所と問題点とを有している。
【0004】
このうち、火炎燃焼式は、処理対象排ガスの適用分野が広く(即ち、分解処理できる処理対象排ガスの種類が多い)、大風量処理が可能であるものの、稼働に当たっての安全性に不安を残している。というのも、火炎燃焼式は、基本的に燃焼にバーナーを使用し、その燃焼雰囲気に排ガスを導入して熱分解する方式であるので、何らかの原因により火炎消滅(失火)した場合には不安全な事態を招くことになる。また、火炎燃焼式のものは、CO2やNOXの排出も問題となる。
【0005】
一方、電熱ヒータを用いる電熱酸化分解式は、半導体製造プロセスにおける排ガス処理方法として現在最も普及している分解処理方法であり、処理対象排ガスの分解処理に際して処理工程を制御しやすく、処理対象排ガスを安全に分解処理することができる。電熱ヒータを用いる排ガス処理システムとしては特許文献1に記載されたようなシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1(段落番号0056)に記載された排ガス処理システムの排ガス処理装置は、その反応器内の排ガス処理空間にて、導入された処理対象排ガスを熱分解するための筒状加熱部を備えている。この筒状加熱部は、金属製の内筒と外筒で構成された二重管の管壁間に発熱抵抗体であるニクロム線やカンタル(サンドビックAB社登録商標)線などの電熱ヒータを螺旋状に巻回して配設すると共に、絶縁のために当該二重管の管壁間にセラミック粉末或いは耐火材を充填したものである。金属製の内筒と外筒は腐蝕性処理対象排ガス雰囲気から電熱ヒータを保護するためのものである。
【0008】
この筒状加熱部は、反応器の内部中央に立設されており、筒状加熱部の底部の排ガス導入口から投入された処理対象排ガスがこの筒状加熱部の高温の内部空間を通り、その上端開口から反応器の天井付近に形成される高温の排ガス処理空間に放出されるようになっている。
処理対象排ガスは筒状加熱部の内部を通過する間、更には上記排ガス処理空間を通る間に周囲から高温(雰囲気温度で800~1150℃)で加熱されて分解される。
【0009】
このような高温を要求される筒状加熱部にあって、二重管に充填されたセラミック粉末或いは耐火材は熱容量が大きく、しかも金属に比べて熱伝導率が悪い。それ故、管壁から処理対象排ガスへの伝熱効率が悪い。上記のような高い温度を二重管の内・外壁面に発生させるには、上記雰囲気温度よりも遥かに高い温度(例えば、1400℃に近い温度)が電熱ヒータに要求される。このような高温は電熱ヒータや金属製の内・外筒の表面酸化を促進させ、金属酸化物を堆積させる。金属酸化物の堆積や電熱ヒータの酸化は断線の1つの要因となる。
【0010】
これに加えて、電熱ヒータから発した熱が電熱ヒータの周囲を取り巻く高温のセラミック粉末或いは耐火材によって電熱ヒータに反射され、この高温のセラミック粉末或いは耐火材からの放射熱が電熱ヒータの温度を制御温度以上に押し上げる。これも電熱ヒータの断線の要因となっていた。
【0011】
また、上記高温は絶縁体であるセラミック粉末或いは耐火材の電気絶縁性を低下させる。これらの電気絶縁性の低下は電熱ヒータ駆動電流の漏電による電熱ヒータと装置構造物(金属製内筒や外筒)との短絡を発生させ、これも断線の要因となっており、これらがヒータ寿命に大きく影響していた。
【0012】
本発明はこのような従来例の問題に鑑みてなされたもので、本発明の第1の目的は、金属構造物の高温での酸化による劣化と酸化異物の発生による短絡を防止するのはもとより、電熱ヒータと金属構造物との短絡を防止して電熱ヒータの寿命を大幅に伸ばすことが出来る排ガス処理装置の筒状加熱部を提供することにある。本発明の第2の目的は、前記筒状加熱部を備え、電熱ヒータの断線、漏電が大幅に抑制され、且つ熱効率に優れた排ガス処理装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、
図1~
図4に示すように、排ガス処理装置の筒状加熱部14を、次のように構成した。
すなわち、内部に排ガス処理空間Sと、その排ガス処理空間Sで処理された排ガスGの分解排ガス排出口12とが設けられている反応器10内に立設された排ガス処理装置1の筒状加熱部14において、
上記の反応器10への挿入基部に排ガス導入口15が設けられ、上記の反応器10への挿入端に上記の排ガス処理空間Sに開放した被加熱排ガス出口16が設けられた上記の筒状加熱部14は、金属製の内筒21と金属製の外筒22とを備えた二重構造の中空筒体20、上記の内筒21を囲繞し且つ上下方向にて互いに間隔をあけて上記の内筒21と上記の外筒22との間のヒータ設置空間Pに設けられた複数の碍子30、その碍子30に取り付けられた電熱ヒータH、及び上記の内筒21に取着され、少なくとも上記の碍子30の下面を支持して上記ヒータ設置空間Pの所定の高さ位置にて上記の碍子30を保持する板状又はブロック状の保持部材40を具備すると共に、上記の碍子30のうち最下段のものは、その荷重が上記の電熱ヒータHへと与えられる重石となっていることを特徴とする。
【0014】
この発明では、碍子30のうち最下段のものは、その荷重が電熱ヒータHへと与えられ、重石として機能しているので、高熱を発すると同時に熱膨張によって長手方向に伸長する電熱ヒータHが隣接する電熱ヒータHや金属製の内筒21や外筒22などと接触して短絡するのを効果的に防ぐことができる。
【0015】
本発明においては、複数設けられる前記の碍子30の少なくとも一部が、円周方向に所定の間隔をあけて複数のヒータ保持孔32hが穿設された大径リング状の上部本体34と、上記のヒータ保持孔32hに挿通される電熱ヒータHに接触しない小径リング状の下部本体35とを有し、その下部本体35の上面に設けられた少なくとも3つの突起35bと上記の上部本体34の下面とが点もしくは線もしくは小面積の面で接触するように連設されると共に、下部本体35の下面が前記の保持部材40によって支持されるようにするのが好ましい。この場合、電熱ヒータHからアース(グランド)までの抵抗値を極力大きくすることができ、高温で駆動する電熱ヒータHの駆動電流が(内筒21を介して)中空筒体20更にはアースへと漏電するのを低減させることができる。
【0016】
本発明においては、複数設けられる前記の碍子30のうち、上部のものは隣接する碍子30間の距離が大きくなるよう設置されると共に、隣接する碍子30間の距離が大きくなるよう設置された上部では、前記の電熱ヒータHをセラミックスパイプ60で被覆することも考えられる。この場合、電熱ヒータH駆動時に最も温度が上がり碍子30の電気絶縁性低下や中空筒体20表面での酸化スケール発生などが起こり易い筒状加熱部14の上部に配置する碍子30を減らしているので、漏電や酸化スケールによるトラブルを低減させることができる。加えて、碍子30の設置が減らされている筒状加熱部14の上部では、電熱ヒータHをセラミックスパイプ60で被覆しているので、隣接する電熱ヒータH同士の接触を防ぐことができる。
【0017】
また、本発明における第2の発明は、上述した筒状加熱部14を搭載した排ガス処理装置1であって、例えば
図1に示すように、次のように構成される。
内部に排ガス処理空間Sと、その排ガス処理空間Sで処理された排ガスGの分解排ガス排出口12が設けられている反応器10と、その反応器10内に立設された筒状加熱部14とで構成された排ガス処理装置1において、
上記の反応器10への挿入基部に排ガス導入口15が設けられ、上記の反応器10への挿入端に上記の排ガス処理空間Sに開放した被加熱排ガス出口16が設けられた上記の筒状加熱部14は、金属製の内筒21と金属製の外筒22とを備えた二重構造の中空筒体20、上記の内筒21を囲繞し且つ互いに間隔をあけて上記の内筒21と上記の外筒22との間のヒータ設置空間Pに設けられた複数の碍子30、その碍子30に取り付けられた電熱ヒータH、及び上記の内筒21に取着され、上記の碍子30を支持して上記のヒータ設置空間Pに保持する保持部材40とで構成され、上記の碍子30のうち最下段のものは、その荷重が上記の電熱ヒータHへと与えられる重石となっていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、複数設けられる前記の碍子30の少なくとも一部が、円周方向に所定の間隔をあけて複数のヒータ保持孔32hが穿設された大径リング状の上部本体34と、上記のヒータ保持孔32hに挿通される電熱ヒータHの上下方向への移動を阻害しない小径リング状の下部本体35とを有し、その下部本体35の上面に設けられた少なくとも3つの突起35bと上記の上部本体34の下面とが点もしくは線で接触するように連設されると共に、下部本体35の下面が前記の保持部材40によって支持されるようにすることが考えられる。また、複数設けられる前記の碍子30のうち、上部のものは隣接する碍子30間の距離が大きくなるよう設置されると共に、隣接する碍子30間の距離が大きくなるよう設置された上部では、前記の電熱ヒータHをセラミックスパイプ60で被覆するのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電熱ヒータ同士或いは電熱ヒータと金属構造物(内筒及び/又は外筒)との短絡を防止して電熱ヒータの寿命を大幅に伸ばすことができる排ガス処理装置の筒状加熱部と、その筒状加熱部を備え、電熱ヒータの断線が大幅に抑制され、且つ熱効率に優れた排ガス処理装置とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明における一実施形態の排ガス処理システムの概略図である。
【
図2】本発明における一実施形態の排ガス処理装置の筒状加熱部の要部拡大断面図である。
【
図3】本発明における碍子の一例を示す正面図(上段)と平面図(下段)であり、
図3Aは突起の形状が四角錘状のものを示し、
図3Bは突起の形状が半球状のものを示す。
【
図4】本発明における他の実施形態(第2実施形態)の排ガス処理装置の筒状加熱部の要部拡大部分断面図である。
【
図5】本発明における他の実施形態(第3実施形態)の排ガス処理装置の筒状加熱部の要部拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。
図1は、本発明の排ガス処理装置1を用いた排ガス処理システムXの一実施例を示す概略図で、工業プロセスから排出される処理対象排ガスEを熱分解する装置である。本実施形態の排ガス処理システムXは、大略、排ガス処理装置1、入口スクラバー2及び出口スクラバー5並びにその付帯設備で構成されている。
排ガス処理システムXで使用可能な排ガス処理装置には、電熱酸化分解方式、火炎燃焼方式及び電熱酸化分解方式と火炎燃焼方式とを併用した併用方式などがあるが、本発明では電熱酸化分解方式の排ガス処理装置1が用いられる。その電熱酸化分解方式の排ガス処理装置1は、大略、反応器10、筒状加熱部14、及び薬液タンク18で構成される。
【0022】
入口スクラバー2は、排ガス処理装置1に導入する処理対象排ガスEに含まれる粉塵や水溶性成分などを除去(液洗)するためのものであり、直管型の入口スクラバー本体2aと、前記入口スクラバー本体2a内部の頂部近傍に設置され、水などの薬液Yを噴霧状にして撒布するスプレーノズル4とで構成されている。この入口スクラバー本体2aの頂部には、排ガスダクト92を介して半導体製造装置などの処理対象排ガス発生源(図示せず)に連通している。
【0023】
上記入口スクラバー本体2aは薬液タンク18上に立設されており、その下端は薬液タンク18内に貯留された薬液Y内に浸漬されている。そして、スプレーノズル4と薬液タンク18との間には循環ポンプ19が設置されており、薬液タンク18内の貯留薬液Yをスプレーノズル4に揚水するようになっている。また、入口スクラバー2の下端部分は排ガス送給配管3を介して筒状加熱部14の排ガス導入口15に繋がっている。
【0024】
排ガス処理装置1は、工業プロセスから排出され、上記入口スクラバー2を通過した処理対象排ガスEを電熱酸化分解式で熱分解する装置であり、大略、筒状加熱部14、該筒状加熱部14を内蔵した反応器10及び薬液タンク18で構成されている。
【0025】
反応器10は、少なくともその内面がキャスタブルなどの耐火性材料で構成され、内部に排ガス処理空間Sが形成され、
図1に示すように、反応器10の平面部分が天地を向くように薬液タンク18上に立設される。この反応器10は円筒状の容器で、その底部11には筒状加熱部14が取り付けられる開口が設けられ、該開口に取り付けられた筒状加熱部14が底部11から反応器10の天井に向けて立設されている。そして該筒状加熱部14に隣接して反応器10の底部11に分解排ガス排出口12が設けられている。この分解排ガス排出口12から導出された分解排ガス排出配管13が薬液タンク18の上面に接続され、薬液タンク18内の上部空間介して出口スクラバー5に繋がっている。
【0026】
そして、排ガス送給配管3と分解排ガス排出配管13との間にはこれらを跨ぐように熱交換器50が取り付けられており、筒状加熱部14に導入する低温の処理対象排ガスEと反応器10で熱分解した処理後の高温の排ガスGとの間で熱交換するようになっている。
【0027】
筒状加熱部14は、筒状加熱部14の内部空間と反応器10内部の排ガス処理空間Sを加熱する熱源である。なお、本実施例では筒状加熱部14を円筒状に形成する場合を示しているが、この筒状加熱部14の形状は両端が開口した筒状であれば如何なるものであってもよく、例えば角筒状等であってもよい。
【0028】
上記の筒状加熱部14は、既に述べたように、反応器10の底部11に設けられた開口から反応器10の内部に挿入され、反応器10の排ガス処理空間Sの中央に立設される。筒状加熱部14の上端開口(被加熱排ガス出口16)が反応器10の天井面に近接し、最も高温となる領域に配置される。
この筒状加熱部14は、
図2に示すように、金属製の内筒21、外筒22、両者の間に設けられた天井板24及び底板23とで構成された二重構造の中空筒体20、上記の内筒21を囲繞し且つ互いに間隔をあけて内筒21と外筒22との間のヒータ設置空間Pに設けられた複数の碍子30、その碍子30に取り付けられた電熱ヒータH、及び、内筒21に取着され、少なくとも上記の碍子30の下面を支持して上記ヒータ設置空間Pの所定の高さ位置にて上記の碍子30を保持する板状又はブロック状の保持部材40とで構成されている。
【0029】
図2の実施形態では、二重構造の中空筒体20の内筒21は、碍子30に装着された電熱ヒータHや温度センサ70を底板23に装着した状態で外筒22の下面開口から挿脱出来るようになっている。(勿論、この中空筒体20は挿脱式でなく、内筒21、外筒22、天井板24及び底板23の接合部分を溶接した一体化したものでも良い。)外筒22に内筒21を装着した状態ではヒータ設置空間Pは密閉される。
中空筒体20の内筒21、外筒22、天井板24及び底板23は、高耐熱性及び高耐食性合金(例えば、ハステロイ、インコロイ、インコネル(いずれも登録商標))で形成されている。
【0030】
上記のように、中空筒体20の上面開口は反応器10の天井に向かって開放しており、排ガス処理空間Sに開放したこの上面開口が被加熱排ガス出口16である。そして、下端には入口スクラバー2の出口から導出された排ガス送給配管3が繋がっており、この排ガス送給配管3の接続開口が排ガス導入口15である。
【0031】
既に述べたように二重構造の中空筒体20の内筒21及び外筒22の間の空間はヒータ設置空間Pで、この空間に複数の碍子30が上下に所定の間隔で設置されている。具体的には、複数設けられる碍子30のうち、中空筒体20の上部に設置されるのものは、隣接する碍子30間の距離が大きくなるよう設置するのが好ましい。なぜなら、電熱ヒータHを駆動させると中空筒体20内のヒータ設置空間Pの温度分布は上部が相対的に高温となり、係る箇所に設置された碍子30では電気絶縁性が相対的に低下するようになるからである。
【0032】
碍子30は、セラミックスや酸化マグネシウムなどで構成され、ヒータ設置空間P内において電熱ヒータHを、電気絶縁性を持って保持する部材であり、その形状にはさまざまなものがある。
図2の実施形態の筒状加熱部14では、この碍子30のうち最下段以外のものは、ディスク状、即ち、平面視で平板リング状のセラミックス部材からなる上部本体34と、その上部本体34に連設される下部本体35とで構成されている。また、最下段のものは上記の上部本体34のみで構成されており、後述する保持部材40で支持されていない。
【0033】
上部本体34は、その中心に内筒21が挿通される中央孔34aが形成されており、該中央孔34aの周囲が一段と高くなっている。一段と高くなっている部分を円筒状段部34bとし、その周囲の1段下がった円板状の部分をフランジ部34cとする。図示しないがフランジ部34cの周縁は全周にわたって円弧状に面取りして丸みを付与するのが好適である。また、フランジ部34cには、中央孔34aと同じ中心を持つ同心円周上に均等に分布された複数のヒータ保持孔32hが上下に貫通して穿設されている。
【0034】
この上部本体34の外径は、外筒22の内径よりも小さく、内径は内筒21よりも大きく設定されており、電熱ヒータHを作動させた高温状態において、両者が接触しない大きさとなっている。また、上部本体34の内周面(すなわち中央孔34a)と内筒21の外周面との間には隙間が設けられている。
【0035】
下部本体35は、上記の上部本体34同様に、平面視で平面リング状のセラミックス部材で構成されており、その中心に内筒21が挿通される中央孔35aが形成されると共に、その上面には少なくとも3つの突起35bが設けられている。この突起35bは、上部本体34の下面と点もしくは線で接触して当該上部本体34を下から支持するように設けられる。また、この突起35bの形状は、上部本体34の下面と点もしくは線もしくは小面積の面で接触できる形状であれば如何なるものであってもよく、例えば、
図3Aに示すように四角錘状のものや、
図3Bに示すように半球状のもの等を挙げることができる。
なお、下部本体35に設ける突起35bの数は、3つ以上であれば如何なるものであってもよいが、碍子30の電気絶縁性能を鑑みると3つが最も好適となる。
【0036】
この下部本体35の外径は、上部本体34のヒータ保持孔32hに挿通される電熱ヒータHに接触しない小径のものとなっている。つまり、大径リング状の上部本体34に対し、この下部本体35は小径リング状に形成されている。また、下部本体35の内周面(すなわち中央孔35a)と内筒21の外周面との間には隙間が設けられている。
【0037】
電熱ヒータHは、ニクロム線やカンタル線(カンタルはサンドビック社登録商標)などの金属線のほかに、例えばSiCなどの発熱体を棒状或いはこれをU形に成形したもの等からなる長尺の発熱抵抗体であって、電流を流すことにより材料の種類等に応じて概ね800℃~1400℃程度まで昇温する。ここでは
図2に示すように、U形に曲げられた電熱ヒータHが、内筒21の軸周りに互いに等しい間隔をあけて碍子30のヒータ保持孔32hに複数本設置されると共に、Ni(ニッケル)やカンタル線と同一の素材などの導電性と耐食性とに優れた材料で形成されたヒータ渡りプレートHwを介して電気的に直列にて接続される。そして、この電熱ヒータHの長手方向端部(
図2の実施形態では下端)に電源75(
図1参照)からの配線75aが接続されている。
【0038】
保持部材40は、内筒21に溶接(取着)された板状又はブロック状の金属部材であり、碍子30(
図2の実施形態では下部本体35)の下面を支持してその碍子30をヒータ設置空間Pの所定の高さ位置にて保持する。この保持部材40は、断面形状が直角三角形状(或いは楔状)に形成されており、内筒21の外周回りにおいて互いに等間隔となるように少なくとも3箇所(勿論、3箇所以上でも良い)配置されている。そして、この保持部材40の幅の狭い傾斜面で碍子30を支持している。これにより、幅の狭い傾斜面の両辺が碍子30の円弧状の内周面の稜線に2点で「点接触」することになり、保持部材40と碍子30との接触面積が極小化させる結果、漏電をより効果的に抑制できる。
【0039】
この保持部材40は、上述のような金属部材のみならず、電気抵抗値のより高い金属例えばニクロムやカンタル線等のようなヒータ線材料や電気抵抗値の高いセラミックス、酸化マグネシウムなどを用いるようにしてもよい。この場合、保持部材40を内筒21の外周面に取着する際には、上記のような溶接ではなく耐熱性に優れた無機接着剤を用いるのが好適である。
なお、
図2の実施形態では、上述のように最下段の碍子30を保持部材40で支持していないが、この最下段の碍子30と常時接触しない下方位置に保持部材40を設置するようにしてもよい。
【0040】
また、
図2の実施形態では、上述のように碍子30を下側から支える保持部材40と同じ部材からなるストッパー部材41が内筒21に取り付けられている。このストッパー部材41は、
図2に示すように、装置設置後の常態において、碍子30とは接触しないようにその碍子30の上部に取着される。このストッパー部材41も、断面形状が直角三角形状(或いは楔状)に形成されており、内筒21の外周回りにおいて互いに等間隔となるように少なくとも3箇所(勿論、3箇所以上でも良い)配置されている。そして、このようなストッパー部材41を取着することにより、碍子30を介して電熱ヒータHなどが取り付けられた内筒21を倒伏させた状態で運搬する際などに、碍子30が所定の位置から離脱するのを防止することができる。
【0041】
薬液タンク18は、上述したように入口スクラバー2に供給する薬液Yを貯留し、また、入口スクラバー2および出口スクラバー5から排出される薬液Yを回収するタンクである。この薬液タンク18には、出口スクラバー5のスプレーノズル7にて噴霧された新しい薬液Yが常に供給されているので、所定量以上の薬液Yが貯留しないように余剰薬液Yをオーバーフローさせて排水処理装置(図示せず)へ送るようにしている。薬液タンク18の天井面と貯留薬液Yとの間には空間がある。
【0042】
なお、本実施例の排ガス処理システムXにおける高温となる排ガス処理装置1を除く他の部分には、処理対象排ガスEに含まれる、或いは当該ガスEの分解によって生じるフッ酸などの腐食性成分による腐蝕から各部を守るため、塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル樹脂およびフッ素樹脂などによる耐蝕性ライニングやコーティングが施されている。
【0043】
出口スクラバー5は、処理対象排ガスEを排ガス処理装置1で熱分解した際に副生する排ガスG中の粉塵や水溶性成分を最終的に除去(液洗)すると共に、当該排ガスGを冷却するためのものであり、直管型のスクラバー本体5aと、このスクラバー本体5a内にて垂直方向に間隔を隔てて複数(本実施例では4段)設置された穿孔プレート6と、最上部の穿孔プレート6の直上部に取り付けられ、排ガスGの通流方向に対向するように上方から水などの薬液Yを噴霧する下向きのスプレーノズル7とで構成されている。
【0044】
この出口スクラバー5は、水などの薬液Yを貯留する薬液タンク18上に立設されており、下端が薬液タンク18の上面に開放し、スプレーノズル7から噴霧された薬液Yが薬液タンク18に送り込まれるようになっている。なお、スプレーノズル7には、上記のように薬液タンク18内の循環薬液Yではなく、新水などの新しい薬液Yが供給されている。そして出口スクラバー5の頂部出口には処理済みの排ガスGを大気中へ放出する排気ファン8に接続されている。
【0045】
以上のように構成された排ガス処理システムXおよび排ガス処理装置1の作用について説明する。まず、始めに排ガス処理装置1の運転スイッチ(図示せず)をオンにして筒状加熱部14を作動させ、反応器10内の加熱を開始する。続いて、筒状加熱部14の熱により、反応器10の内部空間の温度(本実施例では筒状加熱部14の内部空間の温度や反応器10の排ガス処理空間Sの温度)が処理対象排ガスEの熱分解温度以上になると、排気ファン8を作動させて、排ガス処理システムXへの処理対象排ガスEの導入を開始する。すると、処理対象排ガスEは、まず始めに入口スクラバー2に導入され、この入口スクラバー2内において水などの薬液Yで洗浄され、粉塵や水溶性成分などが除去される。
【0046】
入口スクラバー2で薬洗された処理対象排ガスEは、入口スクラバー2の下部から導出された排ガス送給配管3から排ガス導入口15を通って筒状加熱部14の内部空間に導かれ、当該電熱ヒータHにより加熱され、高温となった内筒21によって熱せられた内部空間の高温雰囲気によりその大部分が熱分解される。続いて、処理対象排ガスEは筒状加熱部14の先端開口(被加熱排ガス出口16)から反応器10の天井部分に位置する排ガス処理空間Sの高温領域内へと移動する。移動したガス流、すなわち未分解の処理対象排ガスEを一部に含む高温のガス流は、この高温領域内で残留した未分解の処理対象排ガスEの熱分解を進めながら、筒状加熱部14の外周を包み込むようにして分解排ガス排出口12へと移動し、有害成分が完全に分解された排ガスGとなって分解排ガス排出配管13及び薬液タンク18の内部空間を通って出口スクラバー5に導入される。
【0047】
そして、出口スクラバー5に導入された排ガスGは、水などの薬液Yで洗浄され、粉塵や水溶性成分などが除去されると共に冷却された後、排気ファン8を介して系外(大気中)に放出される。
【0048】
本実施形態の排ガス処理システムXによれば、碍子30のうち最下段のものは、その荷重が電熱ヒータHへと与えられ、重石として機能しているので、高熱を発すると同時に熱膨張によって長手方向に伸長する電熱ヒータHが隣接する電熱ヒータHや金属製の内筒21や外筒22などと接触して短絡するのを効果的に防ぐことができる。加えて、複数設けられる碍子30のうち最下段以外のものは、上述したように上部本体34と下部本体35とで構成され、下部本体35の上面に設けられた少なくとも3つの突起35bと上部本体34の下面とが点接触するように連設され、さらに下部本体35の下面が点接触する3つの保持部材40によって支持されているので、電熱ヒータHからアース(グランド)までの抵抗値を極力大きくすることができ、高温で駆動する電熱ヒータHの駆動電流が(内筒21を介して)中空筒体20更にはアースへと漏電するのを低減させることができる。
【0049】
次に、
図4に示す第2実施形態の筒状加熱部14について説明する。上述した
図2の実施形態のものと異なる部分は、碍子30の形状とセラミックスパイプ60を備える点である。なお、これら以外の点については、上述した
図2の実施形態と同じであるため、上記の
図2の実施形態の説明を援用して本実施形態の説明に代える。
【0050】
図4に示す第2実施形態では、碍子30としていわゆる花型段付きのものを使用している。具体的には、この碍子30は、ディスク状、即ち、平面視で平板リング状のセラミックス部材からなる本体36を有する。この本体36は、その中心に内筒21が挿通される中央孔(図示せず)が形成されており、該中央孔の周囲が一段と高くなっている。一段と高くなっている部分を筒状段部36aとし、その周囲の1段下がった円板状の部分をフランジ部36bとする。この碍子30を平面視すると、筒状段部36aの形状は、フランジ部36bの周縁を外接円とする平歯車形状となっており、その形状があたかも花弁のように見えることから、花型段付きの碍子30と称される。
この碍子30の筒状段部36aとフランジ部36bには、図示しない中央孔と同じ中心を持つ同心円周上に均等に分布された複数のヒータ保持孔32hが上下に貫通して穿設されている。このため、この碍子30によって保持される電熱ヒータHは、筒状段部36aに設けられたヒータ保持孔32hとフランジ部36bに設けられたヒータ保持孔32hとを交互に通されることになる。
【0051】
ここで、
図4に示す第2実施形態では、最上段に配設される碍子30と最下段に配設される碍子30とは、2枚の花型段付きの碍子30が、一方の碍子30の筒状段部36aと他方の碍子30のフランジ部36bとが垂直方向で並ぶように重ね合わされて連設されると共に、最上段に配設される碍子30と上から2段目に配設される碍子30との間隔は、他段間のものに比べて大きくなるよう設置されている。また、最上段、上から2段目及び3段目の碍子30(つまり、最下段のものを除く)は、保持部材40によって中空筒体20のヒータ設置空間P内における所定の高さ位置に位置決めされている。
【0052】
そして、最上段の碍子30と上から2段目の碍子30とで挟まれた電熱ヒータH、すなわち、隣接する碍子30間の距離が大きくなるよう設置された筒状加熱部14の上部の電熱ヒータHの内、上から2段目の碍子30のフランジ部36bのヒータ保持孔32hに通されている電熱ヒータHは、セラミックスパイプ60で被覆されている。
【0053】
この
図4に示す第2実施形態の筒状加熱部14によれば、電熱ヒータH駆動時に最も温度が上がり碍子30の電気絶縁性低下や中空筒体20表面での酸化スケール発生などが起こり易い筒状加熱部14の上部に配置する碍子30を減らしているので、漏電や酸化スケールによるトラブルを低減させることができる。加えて、碍子30の設置が減らされている筒状加熱部14上部の電熱ヒータHをセラミックスパイプ60で被覆しているので、隣接する電熱ヒータH同士が接触して短絡するのを効果的に防ぐことができる。なお、このセラミックスパイプ60は、必要に応じて設けられるものであって、例えば、最下段の碍子30の重し効果が十分に発揮されて電熱ヒータH同士の接触を有効に防ぐことができる等の場合には、このセラミックスパイプ60を省略するようにしてもよい。
【0054】
また、
図4に示す第2実施形態では、最上段に配設される碍子30と最下段に配設される碍子30とについて、2枚の碍子30を重ねて連設する場合を示したが、1つの碍子30であっても最上段における短絡防止効果や、最下段における重し効果が十分に発揮される場合には、最上段の碍子30および最下段の碍子30をそれぞれ1つの碍子30で構成するようにしてもよい。
【0055】
次に、
図5に示す第3実施形態の筒状加熱部14について説明する。上述した第2実施形態のものと異なる部分は、碍子30の形状が花型段付きのものでなく、いわゆる花型のものを用い、全ての段において、この花型の碍子30を上下2段重ねで使用している点である。なお、これら以外の点については、上述した
図4の第2実施形態と同じであるため、上記
図4の第2実施形態の説明を援用して本実施形態の説明に代える。
【0056】
図5に示す第3実施形態では、上述のように碍子30としていわゆる花型のものを使用している。具体的にこの碍子30は、平面視で平歯車形状に外周部の肉が盗まれたセラミックス部材からなる本体37を有する。この本体37は、その中心に内筒21が挿通される中央孔(図示せず)が形成されており、外周部には周方向に突出片部37aと肉盗み部37bとが交互に設けられている。このうち、突出片部37aのそれぞれには、図示しない中央孔と同じ中心を持つ同心円周上に均等に分布されたヒータ保持孔32hが上下に貫通して穿設されている。以上のように形成された花形の碍子30は上下方向にて突出片部37a同士及び肉盗み部37b同士が重ならないように2枚一組で重ねて配設される。つまり、平面視で上の碍子30の肉盗み部37bから下の碍子30の突出片部37aが視認できるように重ねられて配設されている。そして、周方向で隣接する突出片部37aのヒータ保持孔32hと肉盗み部37bのそれぞれに電熱ヒータHが通されると共に、上から2段目の碍子30の上側には、重ね合わされた下側の碍子30の突出片部37aのヒータ保持孔32hに通された電熱ヒータHにセラミックスパイプ60が取り付けられている。
【0057】
この
図5に示す第3実施形態の筒状加熱部14によれば、上述の第2実施形態よりも漏電や酸化スケールによるトラブルをより一層低減させることができる。
なお、碍子30上に堆積する酸化スケールによる短絡をより一層効果的に防止するためには、(図示しないが)碍子30の本体37における中央孔の周囲が一段と高くなるように段部を設けることも考えられる。
【0058】
また、この第3実施形態においても、セラミックスパイプ60は、必要に応じて設けられるものであって、例えば、最下段の碍子30の重し効果が十分に発揮されて電熱ヒータH同士の接触を有効に防ぐことができる等の場合には、このセラミックスパイプ60を省略するようにしてもよい。
さらに、最下段に配設される碍子30について、2枚の碍子30を重ねて連設する場合を示したが、1つの碍子30でも重し効果を十分に発揮させることができる場合には、最下段の碍子30を1つの碍子30で構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1:排ガス処理装置,2:入口スクラバー,3:排ガス送給配管,5:出口スクラバー,8:排気ファン,10:反応器,12:分解排ガス排出口,13:分解排ガス排出配管,14:筒状加熱部,15:排ガス導入口,16:被加熱排ガス出口,18:薬液タンク,20:中空筒体,21:内筒,22:外筒,30:碍子,32h:ヒータ保持孔,34:上部本体,35:下部本体,35b:突起,40:保持部材,60:セラミックスパイプ,E:処理対象排ガス,G:排ガス,H:電熱ヒータ,Hw:ヒータ渡りプレート,P:ヒータ設置空間,S:排ガス処理空間,X:排ガス処理システム,Y:薬液.