(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150257
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】3次元積層造形装置及び3次元積層造形装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/60 20210101AFI20241016BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20241016BHJP
B22F 10/31 20210101ALI20241016BHJP
B22F 10/36 20210101ALI20241016BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20241016BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20241016BHJP
【FI】
B22F10/60
B22F10/28
B22F10/31
B22F10/36
B23K15/00 501B
B23K15/00 504D
B22F12/50
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063587
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔦川 生璃
(72)【発明者】
【氏名】北村 真一
【テーマコード(参考)】
4E066
4K018
【Fターム(参考)】
4E066BB03
4E066BB05
4E066BB06
4E066BC03
4E066BC08
4E066BC10
4E066BD02
4E066BE08
4E066CC04
4K018AA06
4K018AA14
4K018AA24
4K018BA03
4K018BA08
4K018BA13
4K018CA44
4K018DA32
4K018EA51
(57)【要約】
【課題】スループットが悪化することなく修正作業を行うことができる3次元積層造形装置及び3次元積層造形装置の制御方法を提供する。
【解決手段】3次元積層造形装置は、造形プレートと、粉末供給装置と、ビーム照射装置と、検出部と、粉末供給装置及びビーム照射装置を制御する制御部と、を備えている。
制御部は、粉末供給装置により粉末材料が敷き詰められた後で、かつ電子ビームにより粉末材料が本溶融する前に検出部が検出した反射電子信号である本溶融前反射電子信号を取得する。また、制御部は、現在の層の前層の造形工程において、電子ビームにより粉末材料が本溶融した後に検出部が検出した反射電子信号である前層の本溶融後反射電子信号を取得する。そして、制御部は、本溶融前反射電子信号と前層の本溶融後電子信号に基づいて、次層の造形工程における粉末供給装置からの粉末材料の供給量を設定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形プレートと、
前記造形プレートに粉末材料を供給し、粉末層を形成する粉末供給装置と、
前記粉末層に電子ビームを照射するビーム照射装置と、
前記電子ビームが前記粉末材料に照射した際に発生する反射電子を検出する検出部と、
前記粉末供給装置及び前記ビーム照射装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記粉末供給装置により前記粉末材料が敷き詰められた後で、かつ前記電子ビームにより前記粉末材料が本溶融する前に前記検出部が検出した反射電子信号である本溶融前反射電子信号を取得し、
現在の層の前層の造形工程において、前記電子ビームにより前記粉末材料が本溶融した後に前記検出部が検出した反射電子信号である前層の本溶融後反射電子信号を取得し、
前記本溶融前反射電子信号と前記前層の本溶融後電子信号に基づいて、次層の造形工程における前記粉末供給装置からの前記粉末材料の供給量を設定する
3次元積層造形装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記前層の本溶融後電子信号に基づいて、現在の層の造形工程における、本溶融工程の前記ビーム照射装置の制御条件を設定する
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項3】
前記制御部は、本溶融前反射電子信号及び前記前層の本溶融後電子信号に基づいて、反射電子像を生成する画像処理部を有している
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項4】
前記検出部は、複数設けられており、
前記制御部は、複数の前記検出部が検出した複数の反射電子信号を演算処理する
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項5】
粉末供給装置により造形プレートに粉末材料を供給し、粉末層を形成する工程と、
前記粉末供給装置により前記粉末材料が敷き詰められた後で、かつ電子ビームにより前記粉末材料が本溶融する前に検出部が検出した反射電子信号である本溶融前反射電子信号を取得する工程と、
ビーム照射装置を用いて、前記粉末層に前記電子ビームを照射し、前記粉末材料を溶融させる本溶融工程と、
現在の層の前層の造形工程において、前記電子ビームにより前記粉末材料が本溶融した後に検出部が検出した反射電子信号である前層の本溶融後反射電子信号を取得する工程と、
前記本溶融前反射電子信号と前記前層の本溶融後電子信号に基づいて、次層の造形工程における前記粉末供給装置からの前記粉末材料の供給量を設定する工程と、
を含む3次元積層造形装置の制御方法。
【請求項6】
前記前層の本溶融後電子信号に基づいて、現在の層の造形工程における、前記本溶融工程の前記ビーム照射装置の制御条件を設定する工程をさらに含む
請求項5に記載の3次元積層造形装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元積層造形装置及び3次元積層造形装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粉末材料を薄く敷いた層を一層ずつ重ねて造形する3次元積層造形技術が脚光を浴びており、粉末材料の材料や造形手法の違いにより多くの種類の3次元積層造形技術が開発されている。
【0003】
従来の3次元積層造形装置の造形方法としては、例えばステージの上面に設置されたベースプレート上に粉末材料を一層毎に敷き詰める。次に、ベースプレート上に敷き詰められた粉末材料に対し、造形物の一断面に相当する二次元構造部だけを電子ビームやレーザからなる加熱機構で溶融する。そして、そのような粉末材料の層を一層ずつ高さ方向(Z方向)に積み重ねることにより造形物を形成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の3次元積層造形装置では、造形工程時に、粉末材料が適切に敷き詰められなかった場合、造形動作を一時停止させて、再度粉末材料を敷き詰める作業を行っていた。そのため、従来の3次元積層造形装置では、造形動作にかかるスループットが悪化するという問題を有していた。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、スループットが悪化することなく修正作業を行うことができる3次元積層造形装置及び3次元積層造形装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の3次元積層造形装置は、造形プレートと、造形プレートに粉末材料を供給し、粉末層を形成する粉末供給装置と、粉末層に電子ビームを照射するビーム照射装置と、を備えている。また、3次元積層造形装置は、電子ビームが粉末材料に照射した際に発生する反射電子を検出する検出部と、粉末供給装置及びビーム照射装置を制御する制御部と、を備えている。
制御部は、粉末供給装置により粉末材料が敷き詰められた後で、かつ電子ビームにより粉末材料が本溶融する前に検出部が検出した反射電子信号である本溶融前反射電子信号を取得する。また、制御部は、現在の層の前層の造形工程において、電子ビームにより粉末材料が本溶融した後に検出部が検出した反射電子信号である前層の本溶融後反射電子信号を取得する。そして、制御部は、本溶融前反射電子信号と前層の本溶融後電子信号に基づいて、次層の造形工程における粉末供給装置からの粉末材料の供給量を設定する。
【0008】
また、本発明の3次元積層造形方法は、以下(1)から(5)に示す工程を含む。
(1)粉末供給装置により造形プレートに粉末材料を供給し、粉末層を形成する工程。
(2)粉末供給装置により粉末材料が敷き詰められた後で、かつ電子ビームにより粉末材料が本溶融する前に検出部が検出した反射電子信号である本溶融前反射電子信号を取得する工程。
(3)ビーム照射装置を用いて、粉末層に電子ビームを照射し、粉末材料を溶融させる本溶融工程。
(4)現在の層の前層の造形工程において、電子ビームにより粉末材料が本溶融した後に検出部が検出した反射電子信号である前層の本溶融後反射電子信号を取得する工程。
(5)本溶融前反射電子信号と前層の本溶融後電子信号に基づいて、次層の造形工程における粉末供給装置からの粉末材料の供給量を設定する工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明の3次元積層造形装置及び3次元積層造形装置の制御方法によれば、スループットが悪化することなく修正作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置における検出部の位置を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置における動作例を示すフローチャートである。
【
図5】パウダーヒート後に取得される反射電子画像の一例を示すものである。
【
図6】パウダーヒート後に取得される反射電子画像であり、適切に粉末材料が敷き詰められなかった例を示している。
【
図7】本溶融後に取得される反射電子画像であり、粉末材料が溶融された例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の3次元積層造形装置及び3次元積層造形装置の制御方法の実施の形態例について、
図1~
図7を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
1.実施の形態例
1-1.3次元積層造形装置の構成
まず、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる3次元積層造形装置の第1の実施の形態例について
図1を参照して説明する。
図1は、本例の3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。以降の説明では、3次元積層造形装置の各部の形状や位置関係などを明確にするために、
図1の左右方向をX方向、
図1の奥行き方向をY方向、
図1の上下方向をZ方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向である。また、X方向およびY方向は水平方向に平行な方向であり、Z方向は鉛直方向に平行な方向である。
【0013】
図1に示す3次元積層造形装置1は、例えば、チタン、アルミニウム、鉄等の金属粉末からなる粉末材料に電子ビームを照射して粉末材料を溶融させ、この粉末材料が凝固した層を積み重ねて立体物を造形する装置である。
【0014】
図1に示すように、3次元積層造形装置1は、真空チャンバー3と、ビーム照射装置2と、粉末供給装置16と、造形テーブル18と、造形ボックス20と、回収ボックス21と、を備えている。また、3次元積層造形装置1は、造形プレート22と、インナーベース24と、プレート移動装置26と、輻射シールドカバー28と、マスクカバー30と、カメラ42と、シャッター44と、を備えている。さらに、3次元積層造形装置1は、反射電子を検出する複数の検出部46を備えている。
【0015】
真空チャンバー3は、図示しない真空ポンプによってチャンバー内の空気を排気することにより、真空状態を作り出すためのチャンバーである。
【0016】
ビーム照射装置2は、造形プレート22または粉末材料32で形成される粉末層の造形面32aに電子ビーム15を照射する装置である。造形面32aは、粉末層の上面に相当する。粉末層の状態は、3次元積層造形の工程が進むに従って変化する。ビーム照射装置2は、図示はしないが、電子ビーム15の発生源となる電子銃と、電子銃が発生した電子ビームを集束させる集束レンズと、集束レンズで集束させた電子ビーム15を偏向する偏向レンズと、を有している。集束レンズは集束コイルを用いて構成され、集束コイルが発生する磁界によって電子ビーム15を集束させる。偏向レンズは偏向コイルを用いて構成され、偏向コイルが発生する磁界によって電子ビーム15を偏向する。
【0017】
粉末供給装置16は、造形物38の原材料となる粉末材料の一例として、粉末材料32を造形プレート22上に供給して粉末層を形成する装置である。粉末供給装置16は、ホッパー16aと、粉末投下器16bと、スキージ16cとを有している。ホッパー16aは、金属粉末を貯蔵するための容器である。粉末投下器16bは、ホッパー16aに貯蔵されている粉末材料32を造形テーブル18上に投下する機器である。スキージ16cは、Y方向に長い長尺状の部材であり、粉末敷き詰め用のブレード16dを有している。スキージ16cは、粉末投下器16bによって投下された粉末材料32を造形テーブル18上に敷き詰める。スキージ16cは、造形テーブル18の全面に粉末材料32を敷き詰めるために、X方向に移動可能に設けられている。
【0018】
造形テーブル18は、真空チャンバー3の内部に水平に配置されている。造形テーブル18は、粉末供給装置16よりも下方に配置されている。造形テーブル18の中央部は開口している。造形テーブル18の開口形状は、平面視円形または平面視角形(たとえば、平面視四角形)である。
【0019】
造形ボックス20は、造形用の空間を形成するボックスである。造形ボックス20の上端部は、造形テーブル18の開口縁に接続されている。造形ボックス20の下端部は、真空チャンバー3の底壁に接続されている。
【0020】
回収ボックス21は、粉末供給装置16によって造形テーブル18上に供給された粉末材料32のうち、必要以上に供給された粉末材料32を回収するボックスである。
【0021】
造形プレート22は、粉末材料32を用いて造形物38を形成するためのプレートである。造形物38は、造形プレート22上に積層して形成される。造形プレート22は、造形テーブル18の開口形状に合わせて平面視円形または平面視角形に形成される。造形プレート22は、電気的に浮いた状態とならないよう、アース線34によってインナーベース24に接続(接地)されている。インナーベース24は、GND(グランド)電位に保持されている。造形プレート22およびインナーベース24の上には粉末材料32が敷き詰められる。
【0022】
インナーベース24は、上下方向(Z方向)に移動可能に設けられている。造形プレート22は、インナーベース24と一体に上下方向に移動する。インナーベース24は、造形プレート22よりも大きな外形寸法を有する。インナーベース24は、造形ボックス20の内側面に沿って上下方向に摺動する。インナーベース24の外周部にはシール部材36が取り付けられている。シール部材36は、インナーベース24の外周部と造形ボックス20の内側面との間で、摺動性および密閉性を保持する部材である。シール部材36は、耐熱性および弾力性を有する材料によって構成される。
【0023】
プレート移動装置26は、造形プレート22およびインナーベース24を上下方向に移動させる装置である。プレート移動装置26は、シャフト26aと、駆動機構部26bとを備えている。シャフト26aは、インナーベース24の下面に接続されている。駆動機構部26bは、図示しないモータと動力伝達機構とを備え、モータを駆動源として動力伝達機構を駆動することにより、造形プレート22およびインナーベース24をシャフト26aと一体に上下方向に移動させる。動力伝達機構は、たとえば、ラックアンドピニオン機構、ボールネジ機構などによって構成される。
【0024】
輻射シールドカバー28は、Z方向において、造形プレート22とビーム照射装置2との間に配置されている。輻射シールドカバー28は、ステンレス鋼などの金属によって構成される。輻射シールドカバー28は、ビーム照射装置2によって粉末材料32に電子ビーム15を照射した際に発生する輻射熱をシールドする。粉末材料32を本焼結させるために粉末材料32に電子ビーム15を照射すると粉末材料32が溶融するが、このとき粉末層の造形面32aから放射される熱、すなわち輻射熱が真空チャンバー3内に広く拡散すると熱効率が悪くなる。これに対し、造形プレート22の上方に輻射シールドカバー28を配置した場合は、造形面32aから放射される熱が輻射シールドカバー28によってシールドされるとともに、シールドされた熱が輻射シールドカバー28により反射されて造形プレート22側に戻される。このため、電子ビーム15の照射によって発生する熱を効率良く利用することができる。
【0025】
また、輻射シールドカバー28は、粉末材料32に電子ビーム15を照射した際に発生する蒸発物質が真空チャンバー3の内壁に付着(蒸着)することを抑制する機能を果たす。粉末材料32に電子ビーム15を照射すると、溶融した金属の一部が霧状の蒸発物質となって造形面32aから立ち昇る。輻射シールドカバー28は、この蒸発物質が真空チャンバー3内に拡散しないよう、造形面32aの上方空間を覆うように配置されている。
【0026】
マスクカバー30は、開口部30aおよびマスク部30bを有する。マスクカバー30は、造形物38を形成するにあたって、粉末材料32の上面、すなわち造形面32aに被せて配置される。その際、開口部30aは、造形プレート22上に敷き詰められる粉末材料32を露出させ、マスク部30bは、開口部30aよりも外側に位置する粉末材料32を遮蔽する。開口部30aの形状は、造形プレート22の形状にあわせて設定される。たとえば、造形プレート22が平面視円形であれば、これにあわせて開口部30aの平面視形状は円形に設定され、造形プレート22が平面視角形であれば、これにあわせて開口部30aの平面視形状は角形に設定される。
【0027】
マスクカバー30は、輻射シールドカバー28の下方に配置されている。マスクカバー30の開口部30aおよびマスク部30bは、Z方向において、造形プレート22と輻射シールドカバー28との間に配置されている。マスクカバー30は囲い部30cを有する。囲い部30cは、開口部30aの上方空間を囲うように配置される。囲い部30cの一部(上部)は、Z方向において輻射シールドカバー28とオーバーラップしている。囲い部30cは、造形面32aから発生する輻射熱をシールドする機能と、造形面32aから発生する蒸発物質の拡散を抑制する機能とを果たす。つまり、囲い部30cは、輻射シールドカバー28と同様の機能を果たす。
【0028】
マスクカバー30は、造形物38の原料として使用する粉末材料32よりも融点が高い金属で構成される。また、マスクカバー30は、粉末材料32との反応性が低い材料によって構成される。マスクカバー30の構成材料としては、たとえばチタンを挙げることができる。また、マスクカバー30は、使用する粉末材料32と同じ材質の金属によって構成してもよい。マスクカバー30は、電気的にGNDに接地されている。マスクカバー30は、後述する本焼結工程前の予備加熱工程において、電子ビーム15の照射により粉末材料32を仮焼結させる場合に、電気的なシールド機能を果たすことにより、粉末飛散の発生を小規模に抑える。
【0029】
カメラ42は、粉末層の造形面32aを撮影可能なカメラである。カメラ42は、ビーム照射装置2と位置が干渉しないよう、ビーム照射装置2とはY方向に位置をずらして配置されている。カメラ42は、たとえばデジタルビデオカメラなどの可視光カメラによって構成することが好ましい。カメラ42は、粉末層の造形面32aを撮影して粉末層の画像(画像データ)を生成する。このため、カメラ42が生成する画像は、粉末層の造形面32aの状態を示す画像になる。カメラ42による撮影は、3次元積層造形装置1が備える照明光源(図示せず)が発する照明光を粉末層の造形面32aに当てた状態で行われる。
【0030】
シャッター44は、電子ビーム15の照射によって粉末材料32を溶融させる際に造形面32aから発生する蒸発物質がカメラ42や観察窓に付着しないよう、カメラ42や観察窓を保護するものである。カメラ42による造形面32aの撮影は、シャッター44を開けた状態で行われる。また、蒸発物質が発生しやすい工程や、蒸発物質の発生量が多い工程、すなわち、粉末材料32を電子ビーム15で溶融する際は、シャッター44を閉じた状態で行われる。
【0031】
反射電子を検出する複数の検出部46は、ビーム照射装置2の下方に配置されている。具体的には、検出部46は、ビーム照射装置2と造形プレート22に形成される造形物38の造形面32aの間に配置される。
【0032】
図3は、検出部46の位置を示す平面図である。
図3に示すように、複数の検出部46a、46b、46c、46dは、造形物38の周囲を囲むようにして配置される。第1検出部46aは、造形物38のX方向の一側に配置され、第2検出部46bは、造形物38のX方向の他側に配置される。そして、第1検出部46aと第2検出部46bは、造形物38を間に挟んで対向している。第3検出部46cは、造形物38のY方向の一側に配置され、第4検出部46dは、造形物38のY方向の他側に配置される。そして、第3検出部46cと第4検出部46dは、造形物38を間に挟んで対向している。
【0033】
なお、検出部46を複数配置した例を説明したが、これに限定されるものではなく、検出部46の数は1つでもよく、あるいは3つ以下、又は5つ以上配置してもよい。
【0034】
検出部46としては、半導体検出器等に限定されるものではなく、電子励起による2次電子放出率の小さいTi製電極等でもよい。また、検出部46としては、電極に入射する反射電子を電流検出アンプで電流として検出し、その増減を検出してもよい。
【0035】
図2は、本例の3次元積層造形装置1の制御系の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、3次元積層造形装置1は、電子ビーム制御部を示す偏光アンプ制御回路101と、アナログ-デジタル変換回路(ADC)102と、プリアンプ(Pre-AMP)103と、制御部の一例を示すパーソナルコンピュータ(PC)104と、表示部105とを有している。
【0036】
偏光アンプ制御回路101は、ビーム照射装置2及びPC104に接続されている。そして、偏光アンプ制御回路101は、設定されたビーム走査情報に基づいて、ビーム照射装置2を制御する。これにより、ビーム照射装置2は、所定の位置に電子ビーム15を照射する。また、偏光アンプ制御回路101は、電子ビーム15の照射位置を示すビーム照射位置情報をPC104に送信する。
【0037】
Pre-AMP103は、検出部46及びADC102に接続されている。そして、Pre-AMP103は、検出部46が検出した反射電子電流を電流信号から電圧信号に変換する。Pre-AMP103で変換された電圧信号は、ADC102に送信される。ADC102は、電圧信号となった反射電子信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してPC104に送信する。
【0038】
PC104は、不図示の画像処理部と、記憶部と、を有している。また、PC104の画像処理部は、カメラ42が生成する画像を取り込むとともに、取り込んだ画像に所定の画像処理を施す。そして、PC104は、画像処理部で画像処理を行ったカメラ画像を表示部105に出力する。
【0039】
記憶部には、画像処理部で生成されたカメラ画像が記憶される。さらに、記憶部には、偏光アンプ制御回路101から送信されたビーム照射位置情報が記憶される。また、記憶部には、複数の検出部46a、46b、46c、46dから取得した反射電子信号に対して演算処理を行うための複数の演算式が記憶されている。
【0040】
PC104は、造形工程に応じて複数の演算式から所定の演算式を選択する。そして、PC104は、選択した演算式を用いて、反射電子信号に対して演算処理を行い、演算信号を演算する。そして、画像処理部は、演算信号を画像化して反射電子画像(BSE像)を取得する。PC104は、取得した反射電子画像(BSE像)を表示部105に出力する。また、記憶部には、反射電子画像(BSE像)が記憶される。
【0041】
表示部105は、例えば、液晶表示装置(LCD)又は有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイにより構成されている。表示部105は、PC104から出力されたBSE像及びカメラ画像を表示画面106(
図4等参照)に表示する。
【0042】
1-2.3次元積層造形装置の動作例
次に、上述した構成を有する3次元積層造形装置1の動作例について
図4を参照して説明する。
図4は、3次元積層造形装置1の動作例を示すフローチャートである。
【0043】
図4に示すように、ビーム照射装置2は、PC104から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、造形プレート22を加熱する(ステップS1)。ステップS1において、ビーム照射装置2は、マスクカバー30の開口部30aを通して造形プレート22に電子ビーム15を照射するとともに、造形プレート22上で電子ビーム15を走査する。これにより、造形プレート22は、粉末材料32が仮焼結する程度の温度に加熱される。
【0044】
次に、造形プレート22上に粉末材料32を敷き詰める(ステップS2)。ステップ2において、プレート移動装置26は、PC104から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、造形プレート22を所定量だけ下降させる。プレート移動装置26は、造形テーブル18上に敷き詰められた粉末材料32の上面よりも造形プレート22の上面が僅かに下がった状態となるように、インナーベース24を所定量だけ下降させる。このとき、造形プレート22は、インナーベース24と共に所定量だけ下降する。
【0045】
そして、粉末供給装置16は、ホッパー16aから粉末投下器16bに供給された粉末材料32を、粉末投下器16bによって造形テーブル18上に投下した後、スキージ16cをX方向の一端側から他端側へと移動させることにより、インナーベース24上に粉末材料32を敷き詰める。このとき、粉末材料32は、ΔZ相当の厚さで造形テーブル18の上に敷き詰められる。また、余分な粉末材料32は、回収ボックス21に回収される。このとき、前層のステップS8の工程で設定した粉末材料32が敷き詰められる。例えば、前層のステップS8において、粉末材料32が適切に敷かれていなかったとPC104が判断した場合、2層分の粉末材料32が敷き詰められる。
【0046】
次に、ビーム照射装置2は、偏光アンプ制御回路101及びPC104から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、造形プレート22上の粉末層を予備加熱、いわゆるパウダーヒート(P.H)する(ステップS3)。このステップS3においては、粉末材料32を仮焼結させるために粉末層を予備加熱する。粉末材料32を仮焼結させると、粉末材料32に導電性を持たせることができる。このため、予備加熱工程の後に行われる本焼結工程での粉末飛散を抑制することができる。
【0047】
ステップS3において、ビーム照射装置2は、造形プレート22上の粉末材料32に電子ビーム15を照射する。また、ビーム照射装置2は、造形物38を形成するための領域(以下、「造形領域」ともいう。)よりも広範囲に電子ビーム15を走査する。これにより、造形領域に存在する粉末材料32と、造形領域の周囲に存在する粉末材料32とが、共に仮焼結される。
【0048】
なお、前層のステップS8において、粉末材料32が適切に敷かれていなかったとPC104が判断した場合、ステップS2において2層分の粉末材料が敷き詰められている。そのため、ステップS3におけるパウダーヒートの時間を正常時よりも長く行う。これにより、2層分の粉末材料32を完全に仮焼結させることができる。
【0049】
次に、本溶融前の反射電子画像(BSE像)を取得する(ステップS4)。ステップS4においては、まず、ビーム照射装置2は、偏光アンプ制御回路101及びPC104から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、仮焼結された粉末材料32が存在する仮焼結領域に電子ビーム15を走査する。この際、ビーム照射装置2は、電子ビーム15の電子ビーム電流をできるだけ小さくし、造形面32aにフォーカスを合わせて照射する。そして、検出部46は、電子ビーム15によって発生した反射電子を検出する。
【0050】
また、検出部46は、検出した反射電子信号をPre-AMP103及びADC102を介してPC104に出力する。そして、PC104の画像処理部は、検出部46から取得した反射電子信号(反射電子情報)に対して演算処理を行い、反射電子画像(BSE像)を取得する。また、画像処理部は、取得した本溶融前(メルト前)のBSE像を記憶部に記憶する。
【0051】
次に、PC104は、前層のメルト後のBSE像を判定して、後述するステップS6で行うメルト条件を設定する(ステップS5)。このメルト条件は、後述するステップS6の本溶融工程におけるビーム照射装置2の制御条件である。ステップS5において、PC104は、記憶部から前層を形成した際に、ステップS7で取得したBSE像(以下、前層メルト後BSE像という)を取得する。そして、前層メルト後BSE像の判定は、例えば、造形面32aの凹凸解析を用いる場合がある。すなわち、凹凸の周波数を検出し、周波数が閾値よりも高い場合は未溶融と判断し、周波数が閾値よりも低い場合は過溶融と判断する。そして、PC104は、粉末材料32の溶融度合いに応じて、電子ビーム15の照射スポット径や走査速度、電子ビーム15により供給された熱エネルギー値等のメルト条件を設定する。
【0052】
さらに、前層のステップS8において、粉末材料32が適切に敷かれていなかったとPC104が判断した場合、ステップS2において2層分の粉末材料32が敷き詰められている。そのため、PC104は、2層分の粉末材料32を溶融できるようにメルト条件を設定する。
【0053】
なお、ステップS5のメルト条件の設定工程は、前層の造形作業時における後述するステップS7におけるメルト後BSE像を取得してから、現在の層の造形作業におけるステップS6の本溶融工程の間に行えればよい。
【0054】
次に、ビーム照射装置2は、ステップS5で設定したメルト条件に基づいて動作することにより、粉末材料32を溶融および凝固によって本焼結(メルト)させる(ステップS6)。ステップS6においては、上述のように仮焼結させた粉末材料32を電子ビーム15の照射によって溶融および凝固させることにより、仮焼結体としての粉末材料32を本焼結させる。
【0055】
ステップS6において、ビーム照射装置2は、目的とする造形物38の三次元CADデータを一定の厚み(ΔZに相当する厚み)にスライスした二次元データに基づいて造形領域を特定し、この造形領域を対象に電子ビーム15を走査することにより、造形プレート22上の粉末材料32を選択的に溶融する。電子ビーム15の照射によって溶融した粉末材料32は、電子ビーム15が通過した後に凝固する。これにより、1層目の造形物が形成される。
【0056】
ステップS6の工程が完了すると、次に、本溶融後の反射電子画像(BSE像)、すなわちメルト後BSE像を取得する(ステップS7)。ステップS7においては、まず、ビーム照射装置2は、偏光アンプ制御回路101及びPC104から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、仮焼結された粉末材料32が存在する仮焼結領域に電子ビーム15を走査する。この際、ビーム照射装置2は、電子ビーム15の電子ビーム電流をできるだけ小さくし、造形面32aにフォーカスを合わせて照射する。そして、検出部46は、電子ビーム15によって発生した反射電子を検出する。
【0057】
また、検出部46は、検出した反射電子信号をPre-AMP103及びADC102を介してPC104に出力する。また、検出部46は、検出した反射電子信号をPre-AMP103及びADC102を介してPC104に出力する。そして、PC104の画像処理部は、検出部46から取得した反射電信信号に対して演算処理を行い、反射電子画像(BSE像)を取得する。
【0058】
次に、PC104は、前層のメルト後BSE像と今回のメルト前BSE像を比較し、次層における、粉末供給装置16からの粉末材料32の供給量を設定する(ステップS8)。ステップS8において、PC104は、記憶部から前層を形成した際に、ステップS7で取得したBSE像(以下、前層メルト後BSE像という)を取得する。さらに、PC104は、記憶部から今回の層を形成する際にステップS4で取得したメルト前BSE像を取得する。そして、PC104は、2つのBSE像を比較し、粉末材料32の敷き詰め度合いを判定し、次の層を形成するステップ2での粉末供給量を設定する。
【0059】
ここで、2つのBSE像の差が微小な場合、今回のステップ2で粉末材料32が適切に敷かれなかったとPC104は判断する。そして、次の層におけるステップS2において2層分の粉末供給量を設定する。
【0060】
なお、ステップS8に示す粉末供給量の設定工程は、今回のメルト前BSE像を取得するステップS4の工程の後に行ってもよい。この場合、もし粉末が適切に敷かれていなかった場合には、直後に行うメルトで使用するメルト電流を小さくして造形物38への影響を最小限に抑えることが可能である。
【0061】
次に、粉末材料32を敷き詰めるための準備として、造形面32aを加熱するアフターヒート(A.H)を行う(ステップS9)。ステップS9において、ビーム照射装置2は、偏光アンプ制御回路101及びPC104の制御下で動作することにより、マスクカバー30の開口部30aを通して造形面32aに電子ビーム15を照射する。このとき、偏光アンプ制御回路101は、ビーム照射装置2が備える対物レンズ等によって電子ビーム15をデフォーカスさせる。このデフォーカスは、電子ビーム15の合焦位置が造形面32aよりも下方にずれた状態、すなわちアンダーフォーカスの状態とする。
【0062】
また、偏光アンプ制御回路101及びPC104は、マスクカバー30の開口部30aよりも広範囲に電子ビーム15を走査するように、ビーム照射装置2を制御する。これにより、開口部30aに露出している造形面32aの全域に電子ビーム15が照射される。また、造形面32aは、粉末材料32が仮焼結する程度の温度に加熱される。造形面32aを所定の温度に加熱したら、ビーム照射装置2は、電子ビーム15の照射を停止する。
【0063】
また、ステップS8において、粉末材料32が適切に敷かれなかったと判断された場合、次の層では2層分の粉末材料が敷かれることになる。そのため、ステップS9におけるアフターヒートの時間を正常時よりも長くし、造形面32aの温度を高くする。これにより、次の層のステップS2において、2層分に増量した粉末材料32が敷かれても造形面32aの温度が下がりすぎることを防止できる。
【0064】
次に、造形プレート22を所定量(ΔZ)だけ下降させる(ステップ10)。ステップS10において、プレート移動装置26は、造形テーブル18上に敷き詰められた粉末材料32の上面よりも造形面32aが僅かに下がった状態となるように、インナーベース24をΔZだけ下降させる。
【0065】
以降は、ステップS11において最終層まで造形が完了、すなわち造形物38の造形が完了するまで、上記ステップS2~S11の工程を繰り返す。造形物38の造形は、造形物38の造形に必要な層の数だけ粉末材料32の溶融および凝固が行なわれた段階で完了となる。これにより、目的とする造形物38が得られる。
【0066】
このように、本例の3次元積層造形装置1の動作例によれば、ステップS6における本溶融の前後のステップS5及びステップS8において、粉末材料32の敷き詰め具合及び造形物38の溶け具合を判断している。そして、必要に応じて次層での粉末材料32の供給量やメルト条件を設定し、修正を行っている。これにより、造形物38の造形が失敗する回数を減少できる。
【0067】
さらに、粉末材料32が適切に敷かれなかった、及び適切に溶融しなかった等の問題に関する造形プロセスの修正作業を問題が発生した層ではなく、次の層で実施している。さらに、修正作業は、次の層における粉末材料32の供給量や、本溶融工程のメルト条件を変更することで行われている。これにより、造形動作にかかるスループットを常に同じタイミングで行うことができ、スループットが悪化することなく修正作業を行うことができる。
【0068】
また、修正作業を次の層で実施することで、同じ層で仮焼結をした後に、さらに、仮焼結を促進させるような加熱工程を実施する必要がなくなる。これにより、仮焼結体が必要以上に固くなることを防止でき、3次元造形動作後に行われるブラスト処理を容易に行うことができる。また、修正作業を行った造形物38の機械的特性が、修正作業を行うことなくできた造形物38と比較して異なることを抑制できる。
【0069】
なお、ステップS5及びステップS8の判定を行うために、BSE像を用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、検出部46が検出した反射電子信号(反射電子情報)に対して画像変換処理を行わずに、反射電子信号を用いてステップS5及びステップS8の判定を行ってもよい。
【0070】
2.反射電子画像例
次に、ステップS4及びステップS7で取得される反射電子画像(BSE像)の例について
図5から
図7を参照して説明する。
図5は、パウダーヒート後に取得される反射電子画像の一例を示すものである。
【0071】
画像処理部は、複数の検出部46a、46b、46c、46dから取得した反射電子信号に対して演算処理を行い、反射電子画像を生成する。ここで、ステップS4におけるパウダーヒート後に取得される反射電子画像においては、画像処理部は、互いに対向して配置された第1検出部46aの第1反射電子信号Aと、第2検出部46bの第2反射電子信号Bを加算する。すなわち、演算式は、A+Bとなる。なお、互いに対向して配置された第3検出部46cの第3反射電子信号Cと、第4検出部46dの第4反射電子信号Dを加算してもよい(C+D)。このような演算式により、造形物38の輪郭が強調された反射電子画像を取得することができる。その結果、粉末材料32が適切に敷かれたかどうかを確認しやすくなり、ステップS8の工程において、PC104による粉末材料32が適切に敷き詰め具合の判定処理を正確に行うことができる。
【0072】
図7は、本溶融後に取得される反射電子画像の一例を示すものである。
ステップS7における本溶融後に取得される反射電子画像において、画像処理部は、第1反射電子信号Aと第2反射電子信号Bを減算する。または、第3反射電子信号Cと第4反射電子信号Dを減算する。これにより、造形物38の造形面32aの凹凸が強調された反射電子画像を取得することができる。
【0073】
なお、演算式としては、(A-B)/(A+B)又は(C-D)/(C+D)を用いてもよい。すなわち、2つの反射電子画像の減算信号を2つの反射電子画像の加算信号で除算することで、電子ビーム電流の変動や、ノイズの影響を抑制できる。これにより、
図7に示すように、造形物38の造形面32aの凹凸が強調された反射電子画像を取得することができる。その結果、粉末材料32が適切に溶融されたかどうかをより確認しやすくなり、ステップS5の工程において、PC104による粉末材料32の溶融度合いの判定処理を正確に行うことができる。
【0074】
3.粉末材料の敷き詰め具合の判定例
次に、ステップS8で行われる粉末材料32の敷き詰め度合いを判定例について
図5及び
図6を参照して説明する。
図6は、パウダーヒート後に取得される反射電子画像であり、適切に粉末材料32が敷き詰められなかった例を示している。なお、
図6に示す反射電子画像は、演算式A+Bで取得された反射電子画像である。
【0075】
粉末材料が適切に敷かれれば反射電子画像はほとんど全画面が黒い画像となる(
図5参照)。そして、全く粉末材料が敷かれなければ
図6に示すように、前の層でメルトされた部分全てが白く、その他のエリアは黒い画像となる。そして、一部分が敷かれた場合は前の層でメルトされた部分の一部(粉末材料が敷かれた部分)が黒く、残りのメルトされた部分(粉末材料32が敷かれなかった部分)が白く、残りの粉末材料32の部分は全て黒い画像となる。
【0076】
ここで、xyzの3次元座標を考える。そして、前層のメルト後BSE像と現在の層のメルト前BSE画像のデータを(x,y,z)の形で全ての画素数で数値化してxyzの3次元データにする。すなわち、BSE像のx座標としての位置、BSE像のY座標としての位置、Xの座標とYの座標に対応するBSE画像の明暗値を設定する。この時、明暗値は画像が白い程値が大きく、黒い程値が小さいものとする。
【0077】
そして、2つの3次元データの同じxy座標に該当するz座標の値(Xの座標とYの座標に対応するBSE像の明暗値)の差分をとった3次元データを導出する。この前層のメルト後BSE像と現在の層のメルト前BSE像の差分をとった3次元データは、粉末材料が敷かれていなければ2つの3次元データのz座標の値(明暗値)がどのxy座標でもほぼ同じになる。そのため、どのxy座標においてもz座標の値はほぼ0に近い値を取る事が予想される。
【0078】
一方、粉末材料32が適切に敷かれていれば、前層で白かった造形物の部分が黒くなる為、差分をとった3次元データは造形物の位置を示すxy座標におけるz座標の値が白と黒の差分を示す明暗値になる(確実に0よりも大きい値となる。)。そこで、2つの値に注目する。1つ目の値は、差分のデータをとった3次元データのz座標(2つのBSE像の明暗の差分値)である。そして、この値に対して閾値を設定する。2つ目の値は、差分のデータをとった3次元データのz座標(2つのBSE像の明暗の差分値)の閾値を超えた画素数の合計値を、前層の造形物が存在する事によってBSE画像が白くなった部分の画素数の合計値で割った値(以後、粉末敷き詰め割合と呼ぶ。)である。この粉末敷き詰め割合に対しても閾値を設定出来るようにして、この閾値よりも粉末敷き詰め割合の値が小さければ、粉末は適切に敷かれていないものと判断する。これにより、ステップS8で行われる粉末材料32の敷き詰め度合いを判定することができる。
【0079】
4.粉末材料の溶融度合いの判定例
次に、ステップS5で行われる粉末材料32の溶融度合いの判定例について
図7を参照して説明する。
図7は、本溶融後に取得される反射電子画像である。そして、
図7は、比較的適切に粉末材料が溶融された部分(i)と、適切に溶融されたかった部分(j)から(q)の両方を含んだ例を示している。なお、
図7に示す反射電子画像は、演算式(A-B)/(A+B)で取得された反射電子画像である。
【0080】
粉末材料32が適切に溶融された場合、
図7の部分(i)に示すように造形面32aの最表面はフラットになる。そして、
図7の部分(j)から(q)に示すように、適切に溶融されなかった場合、造形面32aの最表面は凹凸が激しくなる。ここで、再表面の凹凸は、3次元の波とみなす事が出来る。そこで、この3次元の波の最大振幅と最大周期を求める。また、再表面の凹凸は、xyzの3次元座標(x,y,z)の形で全ての画素数で数値化し、xyzの3次元データにする事が出来る。すなわち、BSE像のX座標としての位置、BSE像のY座標としての位置Xの座標とYの座標に対応するBSE像の明暗値を設定する。
【0081】
そして、3次元データから最大振幅と最大周期を求める。振幅と周期に閾値を設け、両者、あるいは一方の閾値を超えた時に粉末材料32は適切に溶融されていないと判断する。これにより、ステップS5で行われる粉末材料32の溶融度合いを判定することができる。
【0082】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0083】
例えば、上述した実施の形態例では、粉末材料としてチタン、アルミニウム、鉄等の金属粉末を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、粉末材料としては、樹脂等を用いてもよい。また、粉末材料を予熱や溶融させる加熱機構として電子ビームを照射する電子銃を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。加熱機構としては、例えば、レーザを照射するレーザ照射部を適用してもよい。
【0084】
また、上述した実施の形態例では、検出部46が輻射シールドカバー28の内側に配置される例を説明したが、これに限定されるものではない。検出部46を輻射シールドカバー28の外側に配置してもよい。
【0085】
また、制御部として、PC104を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。制御部としては、ビーム照射装置2を制御する電子ビーム制御部等その他各種の演算機能を有する制御部が適用できるものである。
【0086】
また、上記の各構成要素、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路の設計などによりハードウエアで実現してもよい。また、上記の各構成要素、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0087】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…3次元積層造形装置、 2…ビーム照射装置、 3…真空チャンバー、 15…電子ビーム、 16…粉末供給装置、 16a…ホッパー、 16b…粉末投下器、 16c…スキージ、 16d…ブレード、 18…造形テーブル、 20…造形ボックス、 21…回収ボックス、 22…造形プレート、 24…インナーベース、 26…プレート移動装置、 32…粉末材料、 32a…造形面、 38…造形物、 42…カメラ、 44…シャッター、 46…検出部、 101…偏光アンプ制御回路、102…デジタル変換回路(ADC)、 103…プリアンプ(Pre-AMP) 104…パーソナルコンピュータ(PC、制御部)、 105…表示部、 106…表示画面
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形プレートと、
前記造形プレートに粉末材料を供給し、粉末層を形成する粉末供給装置と、
前記粉末層に電子ビームを照射するビーム照射装置と、
前記電子ビームが前記粉末材料に照射した際に発生する反射電子を検出する検出部と、
前記ビーム照射装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
現在の層の前層の造形工程において、前記電子ビームにより前記粉末材料が本溶融した後に前記検出部が検出した反射電子信号である前層の本溶融後反射電子信号を取得し、
前記制御部は、前記前層の本溶融後電子信号に基づいて、現在の層の造形工程における、本溶融工程の前記ビーム照射装置の制御条件を設定する
3次元積層造形装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記粉末供給装置を制御し、前記粉末供給装置により前記粉末材料が敷き詰められた後で、かつ前記電子ビームにより前記粉末材料が本溶融する前に前記検出部が検出した反射電子信号である本溶融前反射電子信号を取得し、
前記本溶融前反射電子信号と前記前層の本溶融後電子信号に基づいて、次層の造形工程における前記粉末供給装置からの前記粉末材料の供給量を設定する
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項3】
前記制御部は、本溶融前反射電子信号及び前記前層の本溶融後電子信号に基づいて、反射電子像を生成する画像処理部を有している
請求項2に記載の3次元積層造形装置。
【請求項4】
前記検出部は、複数設けられており、
前記制御部は、複数の前記検出部が検出した複数の反射電子信号を演算処理する
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項5】
粉末供給装置により造形プレートに粉末材料を供給し、粉末層を形成する工程と、
現在の層の前層の造形工程において、電子ビームにより前記粉末材料が本溶融した後に検出部が検出した反射電子信号である前層の本溶融後反射電子信号を取得する工程と、
ビーム照射装置を用いて、前記粉末層に前記電子ビームを照射し、前記粉末材料を溶融させる本溶融工程と、
を含み、
前記前層の本溶融後電子信号に基づいて、現在の層の造形工程における、前記本溶融工程の前記ビーム照射装置の制御条件を設定する
3次元積層造形装置の制御方法。
【請求項6】
前記粉末供給装置により前記粉末材料が敷き詰められた後で、かつ電子ビームにより前記粉末材料が本溶融する前に検出部が検出した反射電子信号である本溶融前反射電子信号を取得する工程と、
前記本溶融前反射電子信号と前記前層の本溶融後電子信号に基づいて、次層の造形工程における前記粉末供給装置からの前記粉末材料の供給量を設定する工程と、をさらに含む
請求項5に記載の3次元積層造形装置の制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の3次元積層造形装置は、造形プレートと、造形プレートに粉末材料を供給し、粉末層を形成する粉末供給装置と、粉末層に電子ビームを照射するビーム照射装置と、を備えている。また、3次元積層造形装置は、電子ビームが粉末材料に照射した際に発生する反射電子を検出する検出部と、ビーム照射装置を制御する制御部と、を備えている。
制御部は、現在の層の前層の造形工程において、電子ビームにより粉末材料が本溶融した後に検出部が検出した反射電子信号である前層の本溶融後反射電子信号を取得する。そして、制御部は、前層の本溶融後電子信号に基づいて、現在の層の造形工程における、本溶融工程のビーム照射装置の制御条件を設定する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、本発明の3次元積層造形方法は、以下(1)から(3)に示す工程を含む。
(1)粉末供給装置により造形プレートに粉末材料を供給し、粉末層を形成する工程。
(2)現在の層の前層の造形工程において、電子ビームにより粉末材料が本溶融した後に検出部が検出した反射電子信号である前層の本溶融後反射電子信号を取得する工程。
(3)ビーム照射装置を用いて、粉末層に電子ビームを照射し、粉末材料を溶融させる本溶融工程。
そして、前層の本溶融後電子信号に基づいて、現在の層の造形工程における、本溶融工程のビーム照射装置の制御条件を設定する。