(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150263
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】水中光無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/80 20130101AFI20241016BHJP
H04B 10/69 20130101ALI20241016BHJP
【FI】
H04B10/80
H04B10/69
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063595
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 真之助
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA52
5K102AH26
5K102KA13
5K102KA39
5K102MA02
5K102MB08
5K102MB13
5K102MC23
5K102MD01
5K102MD03
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH16
5K102MH22
5K102PB01
5K102PH31
5K102RD05
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】通信光とともに外乱光が受光された場合でも、外乱光によって通信光による通信が阻害されることを抑制することが可能な水中光無線通信装置を提供する。
【解決手段】この水中光無線通信装置1は、他の無線通信装置2から照射された通信光90を受光する第1受光部11と、通信光90以外の光である外乱光91を受光する第2受光部13と、第1受光部11によって受光された通信光90の強度と、第2受光部13によって受光された外乱光91の強度35とに基づいて、第1受光部11のゲインを調整する制御を行う制御部14と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線通信装置から照射された通信光を受光する第1受光部と、
前記通信光以外の光である外乱光を受光する第2受光部と、
前記第1受光部によって受光された前記通信光の強度と、前記第2受光部によって受光された前記外乱光の強度とに基づいて、前記第1受光部のゲインを調整する制御を行う制御部と、を備える、水中光無線通信装置。
【請求項2】
前記第1受光部によって受光された前記通信光の強度に基づいてゲインにより増幅された電流値を取得する電流値取得部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2受光部によって受光された前記外乱光の強度に基づいて、前記電流値取得部によって取得される前記通信光の強度に基づく前記電流値が、予め設定された目標値に近づくように、前記第1受光部のゲインを調整する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の水中光無線通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1受光部によって受光された前記通信光の強度に基づく前記電流値が、設定された前記目標値に近づくように、前記第1受光部に印加するゲイン制御電圧を調整することにより、前記第1受光部のゲインを調整する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の水中光無線通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記外乱光の強度が大きい場合には、前記目標値を大きくする制御を行い、前記外乱光の強度が小さい場合には、前記目標値を小さくする制御を行うように構成されている、請求項3に記載の水中光無線通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記外乱光の強度が大きく、前記目標値を大きくする制御を行う場合には、前記第1受光部から出力される前記電流値が、前記第1受光部の定格電流以下となるように、前記目標値を設定する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の水中光無線通信装置。
【請求項6】
前記第1受光部は、複数の受光素子を含み、
前記制御部は、前記複数の受光素子の各々によって受光された前記通信光の強度に基づく前記電流値と、前記目標値と、前記外乱光の強度とに基づいて、前記複数の受光素子の各々のゲインを独立して調整する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の水中光無線通信装置。
【請求項7】
複数の受光素子から出力された電流を電圧に変化する複数の電流電圧変換部をさらに備え、
前記制御部は、ゲインが調整された後の前記複数の受光素子から出力され、前記複数の電流電圧変換部によって変換された電圧の合計値を、前記通信光の信号として取得する制御を行うように構成されている、請求項6に記載の水中光無線通信装置。
【請求項8】
前記第1受光部によって受光された前記通信光の強度に基づく前記電流値の前記目標値と、前記外乱光の強度との相関関係を示す目標値相関情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2受光部によって受光された前記外乱光の強度と、前記目標値相関情報とに基づいて、前記目標値を調整する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の水中光無線通信装置。
【請求項9】
前記第1受光部と、前記第2受光部と、前記制御部とを収容する筐体をさらに備え、
前記第1受光部および前記第2受光部の各々は、前記筐体において、前記外乱光の入射方向が等しくなる位置に設けられる、請求項1に記載の水中光無線通信装置。
【請求項10】
前記第1受光部は、光電子増倍管を含み、
前記第2受光部は、前記光電子増倍管よりも強度の高い光を受光することが可能なフォトダイオードを含む、請求項1に記載の水中光無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中光無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中光無線通信装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、第1の水中通信装置と、第2の水中通信装置とを備える水中光無線通信装置が開示されている。第1の水中通信装置は、可視光を照射する照射部と、可視光を受光する受光部と、照射部および受光部を制御する制御部と、を有する。第2の水中通信装置は、可視光を照射する照射部と、可視光を受光する受光部と、照射部および受光部を制御する制御部と、を有する。第1の水中通信装置は、第2の水中通信装置から照射された可視光を受光することにより、第2の水中通信装置と通信を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には開示されていないが、第1の水中通信装置(水中光無線通信装置)が配置される位置(水深)によっては、水中光無線通信装置に対して、可視光(通信光)とともに、通信光以外の外乱光が入射される場合がある。すなわち、水中光無線通信装置の受光部(第1受光部)において、水中光無線通信装置が配置される水深が浅い場合には、通信光および外乱光の両方が受光される場合がある。この場合、通信光とともに受光された外乱光によって、通信光による通信が阻害されるという不都合がある。そこで、通信光とともに外乱光が受光された場合でも、外乱光によって通信光による通信が阻害されることを抑制することが可能な水中光無線通信装置が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、通信光とともに外乱光が受光された場合でも、外乱光によって通信光による通信が阻害されることを抑制することが可能な水中光無線通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における水中光無線通信装置は、他の無線通信装置から照射された通信光を受光する第1受光部と、通信光以外の光である外乱光を受光する第2受光部と、第1受光部によって受光された通信光の強度と、第2受光部によって受光された外乱光の強度とに基づいて、第1受光部のゲインを調整する制御を行う制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一の局面による水中光無線通信装置では、上記のように、第1受光部によって受光された通信光の強度と、第2受光部によって受光された外乱光の強度とに基づいて、第1受光部のゲインを調整する制御を行う制御部を備える。これにより、第1受光部によって受光された通信光の強度と、第2受光部によって受光された外乱光の強度とに基づいて第1受光部のゲインが調整されるので、外乱光が大きい場合には、通信光の振幅を大きくすることができる。したがって、通信光に含まれる外乱光によるノイズに対して、通信光の振幅の比率を大きくすることが可能となるので、通信光のSN比を向上させることができる。その結果、通信光とともに外乱光が受光される場合でも、外乱光によって通信光90による通信が阻害されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による第1水中光無線通信装置を備える水中光無線通信システムの概略を示した模式図である。
【
図2】一実施形態による第1水中光通信装置の概略を示したブロック図である。
【
図3】一実施形態による第2水中光通信装置の概略を示したブロック図である。
【
図4】第1水中光通信装置において、第1受光部のゲインを調整する構成を説明するための模式図である。
【
図5】第1受光部のゲインを調整する前の第1受光部が出力する電流信号を説明するためのグラフである。
【
図6】第1受光部のゲインを調整した後の第1受光部が出力する電流信号を説明するためのグラフである。
【
図7】面積を小さくした複数の受光素子を含む第1受光部のゲインを調整する前の第1受光部が出力する電流信号を説明するためのグラフである。
【
図8】面積を小さくした複数の受光素子を含む第1受光部のゲインを調整した後の第1受光部が出力する電流信号を説明するためのグラフである。
【
図9】外乱光によるオフセットを含む通信光に基づく電圧信号を説明するためのグラフである。
【
図10】外乱光によるオフセットを除外した通信光に基づく電圧信号を説明するためのグラフである。
【
図11】外乱光によるオフセットを除外した通信光に基づく複数の電圧信号を加算した後の電圧信号を説明するためのグラフである。
【
図12】通信光の信号を取得する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図13】第1受光部のゲインを調整する処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1および
図2を参照して、一実施形態による第1水中光無線通信装置1および第2水中光無線通信装置2を備える水中光無線通信システム100の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、水中光無線通信システム100は、第1水中光無線通信装置1と、第2水中光無線通信装置2とを備える。第1水中光無線通信装置1と第2水中光無線通信装置2とは、同時に双方向の光通信が可能なように構成されている。水中光無線通信システム100は、洋上風力発電機、いけすなどの、水中に設けられた構造物の検査に用いられる。
【0013】
第1水中光無線通信装置1は、水中に配置されている。具体的には、第1水中光無線通信装置1は、水中を移動する移動体80に設けられている。移動体80は、たとえば、AUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律型無人潜水機)を含む。また、移動体80は、推進機構80aを備える。また、移動体80は、照明光91bを照射可能に構成されている。
【0014】
推進機構80aは、制御部14(
図2参照)の制御の下、移動体80に対して推進力を与えるように構成されている。推進機構80aは、たとえば、プロペラ(図示せず)と、プロペラを駆動する駆動源(図示せず)とを含む。推進機構80aは、プロペラを回転させることによって水をかき推進力を得る、いわゆるスクリュー構成であってもよいし、後方に高圧の水流を噴出することにより推進力を得る、いわゆるウォータージェット推進機構であってもよい。
【0015】
第2水中光無線通信装置2は、水中に配置されている。具体的には、第2水中光無線通信装置2は、水中に固定された固定体81に設けられている。固定体81は、保持部材81aを介して海底82に設置されることにより、水中に固定されている。
【0016】
なお、
図1に示すように、第1水中光無線通信装置1、および、第2水中光無線通信装置2は、外乱光91が入射する環境下において、通信光90を用いて通信を行う。外乱光91は、たとえば、太陽83から照射される太陽光91a、および、移動体80から照射される照明光91bが含まれる。すなわち、第1水中光無線通信装置1および第2水中光無線通信装置2は、比較的水深が浅い位置において、通信光90を用いた無線通信を行う。
【0017】
図2に示すように、第1水中光無線通信装置1は、発光部10と、第1受光部11と、第2受光部13と、制御部14とを備える。また、本実施形態では、第1水中光無線通信装置1は、記憶部15を備える。また、第1水中光無線通信装置1は、と、ゲイン調整部16と、信号取得部17とを備える。
【0018】
発光部10は、通信光90(
図1参照)を信号光として発光するように構成されている。通信光90は、青色または紫色の波長帯域を中心波長とする光である。青色の波長帯域とは、435nmから480nmの範囲の波長帯域である。また、紫色の波長帯域とは、400nmから435nmの範囲の波長帯域である。発光部10は、半導体レーザ光源、または、LED(Light Emitting Diode)を含む。なお、信号光とは、所定のタイミングで光源の強度を変化させることによって情報を伝達するための光である。
【0019】
第1受光部11は、他の無線通信装置(第2水中光無線通信装置2(
図1参照))から照射された通信光90を受光するように構成されている。本実施形態では、第1受光部11は、光電子増倍管を含む。また、本実施形態では、第1受光部11は、複数の受光素子12を含む。すなわち、複数の受光素子12の各々は、光電子増倍管である。なお、第1受光部11には、通信光90以外の波長帯域の光を除去するフィルタ(図示せず)が設けられている。したがって、第1受光部11は、通信光90の波長帯域と等しい波長帯域の光を受光する。なお、外乱光91には、様々な波長帯域の光が含まれる。そのため、外乱光91の一部は、通信光90以外の波長帯域の光を除去するフィルタを透過し、通信光90とともに第1受光部11に受光される。
【0020】
第2受光部13は、通信光90以外の光である外乱光91を受光するように構成されている。本実施形態では、第2受光部13は、光電子増倍管よりも強度の高い光を受光することが可能なフォトダイオードを含む。なお、第2受光部13には、通信光90の波長帯域の光を除去するフィルタ(図示せず)が設けられている。したがって、第2受光部13は、通信光90以外の外乱光91を受光する。
【0021】
制御部14は、第1水中光無線通信装置1の各部の制御、および、移動体80(
図1参照)の移動の制御を行うように構成されている。また、制御部14は、第1受光部11のゲインを調整する制御を行うように構成されている。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、または、回路(circuitry)などのプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、および、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されたコンピュータである。また、制御部14は、機能ブロックとしての第1ゲイン演算部14a、および、第2ゲイン演算部14bを含む。制御部14は、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより、第1水中光無線通信装置1の各部の制御、移動体80の制御を行う制御部として機能する。制御部14が第1受光部11のゲインを調整する構成の詳細については、後述する。
【0022】
第1ゲイン演算部14a、および、第2ゲイン演算部14bは、制御部14が記憶部15に記憶された各種プログラムを実行することにより実現される機能ブロックとしてソフトウェア的に構成される。第1ゲイン演算部14a、および、第2ゲイン演算部14bは、専用のプロセッサ(処理回路)を設けて、互いに個別のハードウェアにより構成されてもよい。第1ゲイン演算部14aの機能の詳細、および、第2ゲイン演算部14bの機能の詳細については、後述する。
【0023】
記憶部15は、制御部14が実行する各種プログラムを記憶している。また、記憶部15は、目標値相関情報34を記憶するように構成されている。記憶部15は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、または、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置を含む。
【0024】
目標値相関情報34は、第1受光部11によって受光された通信光90の強度に基づく電流値30(
図4参照)の目標値31と、外乱光91の強度35との相関関係を示す情報である。本実施形態では、記憶部15は、データテーブルの形式で、目標値相関情報34を記憶するように構成されている。なお、通信光90の強度に基づく電流値30の目標値31と、外乱光91の強度35との相関関係を示す情報であれば、目標値相関情報34を記憶する形式は問わない。また、目標値相関情報34は、予め実験的に取得され、記憶部15に記憶されている。
【0025】
ゲイン調整部16は、制御部14の制御の下、第1受光部11のゲインを調整するように構成されている。ゲイン調整部16の構成の詳細、および、ゲイン調整部16が第1受光部11のゲインを調整する構成の詳細については、後述する。
【0026】
信号取得部17は、制御部14の制御の下、第1受光部11によって受光された通信光90に基づく信号を取得するように構成されている。信号取得部17の構成の詳細、および、信号取得部17が信号を取得する構成の詳細については、後述する。
【0027】
また、本実施形態では、第1水中光無線通信装置1は、筐体1aを備える。筐体1aは、発光部10と、第1受光部11と、第2受光部13と、制御部14と、記憶部15と、ゲイン調整部16と、信号取得部17と、を収容する。第1受光部11および第2受光部13の各々は、筐体1aにおいて、外乱光91の入射方向が等しくなる位置に設けられる。また、複数の受光素子12の各々は、受光する光の入射角度が略等しくなるように、筐体1aに設けられている。
【0028】
また、本実施形態では、第1水中光無線通信装置1は、発光部10から発光された通信光90を透過する窓部(図示せず)、第1受光部11に照射される光を透過する窓部(図示せず)、および、第2受光部13に照射される光を透過する窓部(図示せず)を備える。各窓部は、たとえば、アクリル板、またはガラス板などによって形成されている。
【0029】
図3に示すように、第2水中光無線通信装置2は、発光部20と、第1受光部21と、第2受光部23と、制御部24と、記憶部25と、ゲイン調整部26と、信号取得部27と、を備える。第2水中光無線通信装置2は、固定体81(
図1参照)に設けられている点を除いて、第1水中光無線通信装置1(
図2参照)と同様の構成である。
【0030】
すなわち、発光部20、第1受光部21、第2受光部23、制御部24、記憶部25、ゲイン調整部26、および、信号取得部27は、それぞれ、発光部10(
図1参照)、第1受光部11(
図1参照)、第2受光部13(
図1参照)、制御部14(
図1参照)、記憶部15(
図1参照)、ゲイン調整部16(
図1参照)、および、信号取得部17(
図1参照)と同様の構成である。また、第1受光部21は、複数の受光素子22を含む。受光素子22の構成は、受光素子22の構成と同様である。また、制御部24は、機能ブロックとしての第1ゲイン演算部24aおよび第2ゲイン演算部24bを含む。また、記憶部25は、目標値相関情報34を記憶するように構成されている。
【0031】
(通信光の信号の取得)
次に、
図4を参照して、第1水中光無線通信装置1(
図2参照)が、通信光90(
図1参照)の信号を取得する構成について説明する。
【0032】
第1水中光無線通信装置1は、制御部14(
図2参照)の制御の下、ゲイン調整部16および信号取得部17によって、通信光90の信号を取得する。
【0033】
図4に示すように、ゲイン調整部16は、AD変換部16aと、電流電圧変換部16bと、AD変換部16cと、DA変換部16dとを含む。AD変換部16aは、第1受光部11によって受光された通信光90の強度に基づいてゲインにより増幅された電流値30を取得するように構成されている。AD変換部16a、および、AD変換部16cは、たとえば、アナログの電流値をデジタルの電流値に変換するADコンバーターを含む。また、電流電圧変換部16bは、たとえば、電流電圧コンバーターを含む。また、DA変換部16dは、デジタルの電圧値をアナログの電圧値に変換するDAコンバーターを含む。なお、AD変換部16aは、特許請求の範囲の「電流値取得部」の一例である。また、本実施形態では、第1受光部11が、複数の受光素子12を含むため、AD変換部16a、および、DA変換部16dは、受光素子12の個数に応じた数のチャネルを含む。本実施形態では、第1受光部11が4つの受光素子12を含むため、AD変換部16a、および、DA変換部16dの各々は、4つのチャネルを含む。
【0034】
また、
図4に示すように、信号取得部17は、電流電圧変換部17aと、直流成分除去部17bと、電圧加算部17cと、電圧ゲイン調整部17dと、AD変換部17eと、DA変換部17fと、直流成分除去部17gと、リミットアンプ17hとを含む。電流電圧変換部17aは、たとえば、電流電圧コンバーターを含む。また、直流成分除去部17bおよび直流成分除去部17bは、コンデンサを含む。また、電圧加算部17cは、電圧加算回路を含む。また、電圧ゲイン調整部17dは、ゲイン調整回路を含む。また、AD変換部17eは、アナログの電圧値をデジタルの電圧値に変換するADコンバーターを含む。また、DA変換部17fは、デジタルの電圧値をアナログの電圧値に変換するDAコンバーターを含む。
【0035】
信号取得部17は、第1受光部11によって受光され、出力された電流の電流信号を電圧信号に変換し、通信光90の信号を取得する。また、ゲイン調整部16は、第1受光部11から出力された電流を通信光90の信号として処理し、第1受光部11のゲインを調整する。
【0036】
図4に示すように、複数の受光素子12の各々は、受光した通信光90の強度に応じた電流値30の電流を出力する。複数の受光素子12の各々から出力された電流は、AD変換部16a、および、電流電圧変換部17aに入力される。
【0037】
本実施形態では、電流電圧変換部17aは、複数の受光素子12の数に応じた複数の電流電圧変換部を含む。また、直流成分除去部17bについても、複数の受光素子12の数に応じた複数の直流成分除去部を含む。
【0038】
電流電圧変換部17aは、複数の受光素子12から出力された電流を電圧に変化する。電流電圧変換部17aによって変換された電圧信号の各々は、対応する直流成分除去部17bによって直流成分が除去される。第1受光部11によって受光される光には、通信光90および外乱光91が含まれる。外乱光91は、直流成分であるため、直流成分除去部17bによって直流成分を除去することにより、通信光90の電圧信号を取得することができる。その後、通信光90の電圧信号は、電圧加算部17cによって加算される。そして、電圧加算部17cによって加算された後の通信光90の電圧信号は、直流成分除去部17gによって直流成分が除去された後、リミットアンプ17hに入力される。リミットアンプ17hに入力された通信光90の電圧信号は、所定の振幅に変換され、制御部14に出力される。このようにして、通信光90の信号が取得される。
【0039】
なお、本実施形態では、第2ゲイン演算部14bは、電圧ゲイン調整部17dを制御することにより、リミットアンプ17hに入力される通信光90の電圧信号の増幅率を調整するように構成されている。具体的には、第2ゲイン演算部14bは、電圧ゲイン調整部17dから出力され、AD変換部17eにおいてデジタル値に変換された電圧の合計値33を取得する。そして、第2ゲイン演算部14bは、電圧の合計値33が、リミットアンプ17hの入力許容電圧の範囲内に収まるように、電圧ゲイン調整部17dに対して制御電圧を印加する。具体的には、第2ゲイン演算部14bは、DA変換部17fによってデジタルアナログ変換を行ったアナログの第2ゲイン制御電圧70を電圧ゲイン調整部17dに対して印加する。電圧ゲイン調整部17dは、印加された第2ゲイン制御電圧70に基づいて、出力する電圧のゲインを調整する。すなわち、第2ゲイン演算部14bは、PID(Proportional Integral Differential)制御などのフィードバック制御により、電圧ゲイン調整部17dの制御を行う。
【0040】
ここで、太陽83(
図1参照)から照射される太陽光91a(
図1参照)の強度、および、移動体80(
図1参照)から照射される照明光91b(
図1参照)の強度は、通信光90の強度よりも大きい。したがって、太陽光91aおよび照明光91bなどの外乱光91が通信光90とともに受光された場合、第1受光部11によって受光される光の強度のうちの、通信光90の強度の比率が小さくなる。そのため、外乱光91が通信光90とともに受光された場合、通信光90を用いた無線通信が阻害される。
【0041】
(第1受光部のゲイン調整)
そこで、本実施形態では、制御部14(
図2参照)は、外乱光91が通信光90とともに受光された場合でも、第1水中光無線通信装置1と第2水中光無線通信装置2との間において、通信光90を用いた無線通信を行うことが可能なように制御するように構成されている。なお、制御部24(
図3参照)についても、制御部14と同様の構成によって、外乱光91が通信光90とともに受光された場合における制御を行う。そのため、外乱光91が通信光90とともに受光された場合の制御について、制御部14を代表して説明する。
【0042】
本実施形態では、制御部14(第1ゲイン演算部14a)は、第1受光部11によって受光された通信光90の強度と、第2受光部13によって受光された外乱光91の強度35(
図2参照)とに基づいて、第1受光部11のゲインを調整する制御を行うように構成されている。具体的には、本実施形態では、第1ゲイン演算部14aは、第2受光部13によって受光された外乱光91の強度35に基づいて、AD変換部16aによって取得される通信光90の強度に基づく電流値30が、予め設定された目標値31(
図2参照)に近づくように、第1受光部11のゲインを調整する制御を行うように構成されている。
【0043】
図4に示すように、制御部14は、ゲイン調整部16を制御することにより、第1受光部11のゲインを調整するように構成されている。なお、
図4に示す例では、第1受光部11(
図2参照)は、複数の受光素子12として、4つの受光素子12を含む。AD変換部16aは、複数の受光素子12の各々から出力された電流の電流値30を、アナログ値からデジタル値に変換する。そして、AD変換部16aは、デジタル値に変換した電流値30を、第1ゲイン演算部14aに対して出力する。
【0044】
また、第1ゲイン演算部14aは、外乱光91の強度35を取得する。具体的には、第1ゲイン演算部14aは、電流電圧変換部16bによって変換された外乱光電圧値36を取得する。なお、第1ゲイン演算部14aは、AD変換部16cによってデジタル値からアナログ値に変換された後の外乱光電圧値36を取得する。
【0045】
そして、第1ゲイン演算部14aは、電流値30と、外乱光電圧値36と、記憶部15(
図2参照)に記憶された目標値相関情報34(
図2参照)とに基づいて、複数の受光素子12の各々に印加する第1ゲイン制御電圧32を取得する。そして、第1ゲイン演算部14aは、取得した第1ゲイン制御電圧32を、複数の受光素子12の各々に対して印加する。すなわち、本実施形態では、第1ゲイン演算部14aは、第2受光部13によって受光された外乱光91の強度35と、目標値相関情報34とに基づいて、目標値31を調整する制御を行うように構成されている。
【0046】
なお、本実施形態では、第1ゲイン演算部14aは、第1受光部11によって受光された通信光90の強度に基づく電流値30が、設定された目標値31に近づくように、第1受光部11に印加する第1ゲイン制御電圧32を調整することにより、第1受光部11のゲインを調整する制御を行うように構成されている。すなわち、第1ゲイン演算部14aは、通信光90の強度に基づく電流値30と、目標値31と、外乱光91の強度35とに基づいて、PID制御などのフィードバック制御を行うことにより、第1受光部11のゲインを調整するように構成されている。
【0047】
また、本実施形態では、第1ゲイン演算部14aは、複数の受光素子12の各々によって受光された通信光90の強度に基づく電流値30と、目標値31と、外乱光91の強度35とに基づいて、複数の受光素子12の各々のゲインを独立して調整する制御を行うように構成されている。
【0048】
なお、第1ゲイン演算部14aは、外乱光91の強度35が大きい場合には、目標値31を大きくする制御を行い、外乱光91の強度35が小さい場合には、目標値31を小さくする制御を行うように構成されている。
【0049】
上記のように、制御部14は、ゲインが調整された後の複数の受光素子12から出力され、複数の電流電圧変換部17aによって変換された電圧の合計値33を、通信光90の信号として取得する制御を行うように構成されている。したがって、外乱光91が通信光90とともに受光された場合でも、外乱光91の強度35に応じて第1受光部11(複数の受光素子12の各々)のゲインを調整することにより、通信光90に基づく信号によって通信を行うことができる。
【0050】
(ゲイン調整前の電流値)
図5に示すグラフ40は、ゲイン調整を行う前の第1受光部11(
図4参照)から出力される電流の電流信号41を示すグラフである。グラフ40は、縦軸が電流値であり、横軸が時間である。
【0051】
通信光90(
図1参照)に基づく信号は、通信光90のオンオフによって、情報を伝達する。そのため、グラフ40に示すように、ゲイン調整を行う前の第1受光部11から出力された電流に基づく電流信号41は、山部分41aと、谷部分41bとを有する、いわゆる、パルス信号となる。なお、光を用いた通信の場合、数十Mbpsの通信速度で通信光90による通信が行われる。そのため、電流信号41の平均値41cの強度を、電流信号41の強度として扱う。なお、本実施形態では、第1ゲイン演算部14a(
図4参照)は、電流信号41の平均値41cの値が、設定された目標値31(
図2参照)に近づくように、第1受光部11のゲインを調整する制御を行うように構成されている。
【0052】
外乱光91(
図1参照)が通信光90とともに受光された場合、グラフ40に示すように、電流信号41は、外乱光91の強度35(
図2参照)に応じた電流値37の分だけオフセットされる。そのため、外乱光91の強度35を考慮せずに第1受光部11のゲインを調整した場合、ゲイン調整後の第1受光部11から出力される電流に基づく電流信号41が、定格電流38aを超える可能性がある。
【0053】
(ゲイン調整後の電流値)
そこで、本実施形態では、第1ゲイン演算部14aは、外乱光91の強度35が大きく、目標値31を大きくする制御を行う場合には、第1受光部11から出力される電流値30が、第1受光部11の定格電流38a以下となるように、目標値31を設定する制御を行うように構成されている。
【0054】
図6に示すグラフ42は、ゲイン調整後の第1受光部11(
図2参照)から出力される電流の電流信号43を示すグラフである。グラフ42は、縦軸が電流値であり、横軸が時間である。電流信号43も、電流信号41(
図5参照)と同様に、山部分43aおよび谷部分43bを有するパルス信号である。なお、
図6に示すグラフ42は、第1受光部11のゲインを増加させた場合における電流信号43のグラフである。
【0055】
グラフ42に示すように、第1受光部11のゲインが調整されたため、電流信号43の平均値43cは、電流信号41の平均値41c(
図5参照)よりも大きい値となる。また、第1受光部11のゲインが調整されたため、第1受光部11によって受光される光量が増加する。そのため、外乱光91の強度35に応じた電流値37aも、第1受光部11のゲインが調整される前の外乱光91の強度35に応じた電流値37よりも大きくなる。
【0056】
本実施形態では、第1ゲイン演算部14a(
図4参照)は、目標値相関情報34(
図2参照)に基づいて、定格電流38aを超えないように、第1受光部11のゲインを調整する。これにより、第1受光部11から出力される電流の電流信号43の振幅61は、ゲインを調整する前の第1受光部11から出力される電流の電流信号41(
図5参照)の振幅60(
図5参照)よりも大きくなる。この場合、通信光90に含まれるノイズ成分に起因する電流値も大きくなる。しかしながら、ノイズ成分に対する電流信号41の振幅60の比率よりも、ノイズ成分に対する電流信号43の振幅61の比率を向上させることができる。すなわち、第1受光部11のゲインを調整することにより、第1受光部11によって受光される通信光90の信号成分のSN比を高めることができる。なお、電流信号43の振幅61とは、電流信号43の山部分43aの値と、谷部分43bの値との差である。
【0057】
(受光素子の受光面積を小さくした場合におけるゲイン調整前の電流値)
ここで、第1受光部11を第1水中光無線通信装置1に設ける場合、スペースなどによって、第1受光部11の受光面積は制限を受ける。そこで、第1受光部11が複数の受光素子12を含む構成において、複数の受光素子12の受光面積を小さくした場合について説明する。たとえば、第1受光部11が4つの受光素子12を含む場合、第1受光部11が1つの受光素子12を含む場合と比較して、受光素子12の各々の受光面積を1/4にする。受光素子12によって受光される光の強度は、受光素子12の受光面積に比例するため、受光素子12の受光面積を小さくした場合、受光素子12において受光される光の強度も小さくなる。
【0058】
この場合、
図7に示すグラフ44のように、受光面積を小さくした受光素子12(
図4参照)から出力される電流の電流信号45の振幅62は、受光素子12の面積を小さくしない場合の信号の振幅よりも小さくなる。たとえば、受光素子12の受光面積を1/4にした場合、電流信号45の振幅62は、受光素子12の面積を小さくしない場合の信号の振幅の1/4となる。この場合、電流信号45の平均値45cと定格電流38aの値との差38bが大きくなり、第1受光部11のゲインを調整する際の調整幅が広がる。なお、グラフ44は、縦軸が電流値であり、横軸が時間である。また、電流信号45は、山部分45aおよび谷部分45bを有する、いわゆる、パルス信号となる。
【0059】
(受光素子の受光面積を小さくした場合におけるゲイン調整後の電流値)
図8に示すグラフ46は、受光素子12(
図4参照)の受光面積を1/4にし、受光素子12のゲインを調整した後の、受光素子12から出力される電流の電流信号47を示している。グラフ46は、縦軸が電流値であり、横軸が時間である。また、電流信号47は、山部分47aおよび谷部分47bを有する、いわゆる、パルス信号である。
【0060】
受光素子12のゲインが調整されているため、電流信号47の平均値47cは、受光素子12のゲインを調整する前の電流信号45の平均値45cよりも大きい値となっている。また、電流信号47の山部分47aの値と谷部分47bの値との差の大きさである振幅63についても、受光素子12のゲインを調整する前の電流信号45(
図7参照)の山部分45a(
図7参照)の値と谷部分45b(
図7参照)の値との差の大きさである振幅62(
図7参照)よりも大きくなっている。
【0061】
(ゲイン調整後の信号値の加算)
また、本実施形態では、信号取得部17(
図4参照)は、複数の受光素子12(
図4参照)の各々から出力された電流値30(
図4参照)に基づく電圧の合計値33(
図4参照)を、通信光90(
図1参照)の信号を含む信号の電圧として取得する。
図9に示すグラフ50は、1つの受光素子12から出力され、電流電圧変換部17a(
図4参照)によって変換された電圧信号51を示している。グラフ50は、縦軸が電圧値であり、横軸が時間である。また、電圧信号51は、山部分51aおよび谷部分51bを有する、いわゆる、パルス信号である。
【0062】
グラフ50に示すように、第1受光部11によって受光された光に基づく電圧信号51は、外乱光91の強度35に応じた電圧値39の分だけオフセットしている。電圧信号51が外乱光91の強度35に応じた電圧値39の分だけオフセットしているため、外乱光91の強度35に応じた電圧値39を考慮せずに第1受光部11のゲインを調整した場合、定格電圧37cを超える場合がある。第1受光部11から出力された電流に基づく電圧の合計値33が定格電圧37cを超えた場合、通信光90に基づく電圧信号が飽和し、通信光90に基づく通信を行うことができなくなる。
【0063】
そこで、本実施形態では、制御部14(
図2参照)は、信号取得部17(
図4参照)を制御することにより、直流成分除去部17bによって外乱光91に基づく電圧値39を除去する。これにより、
図10のグラフ52において示す電圧信号53を得ることができる。グラフ52は、縦軸が電圧値であり、軸が時間である。また、電圧信号53は、山部分53aおよび谷部分53bを有する、いわゆる、パルス信号である。グラフ52に示す電圧信号53は、グラフ50(
図9参照)に示す電圧信号51(
図9参照)から、外乱光91の強度35に応じた電圧値39を除去した信号であるため、電圧信号53の振幅65は、電圧信号51の振幅64(
図9参照)と同様の振幅を有する。
【0064】
本実施形態では、第1受光部11(
図2参照)は、複数の受光素子12(
図4参照)を含んでおり、信号取得部17は、複数の受光素子12の各々から出力された電流に基づいて、通信光90の信号を取得する。具体的には、信号取得部17は、複数の受光素子12の各々から出力された電流を、複数の電流電圧変換部17aによって電圧に変換する。そして、複数の受光素子12から出力された電流に対応する電圧の各々から、直流成分除去部17bによって外乱光91の強度35に応じた電圧値39を除去した後、電圧加算部17cによって加算する。なお、本実施形態では、制御部14は、加算後の電圧値(電圧の合計値33(
図4参照))が、定格電圧37cを超えないように、第1受光部11のゲインを調整する。
【0065】
図11に示すグラフ54は、複数の受光素子12(
図4参照)から出力された電流値30(
図4参照)に対応する複数の電圧を合計した後の電圧信号55を示している。言い換えると、電圧信号55は、電圧の合計値33の信号である。グラフ54は、縦軸が電圧であり、横軸が時間である。また、電圧信号55は、山部分55aおよび谷部分55bを有する、いわゆる、パルス信号である。グラフ54に示すように、複数の電圧を合計した後の電圧信号55の振幅66は、電圧を合計する前の電圧信号53(
図10参照)の振幅65(
図10参照)よりも大きくなっている。本実施形態では、4つの受光素子12を含むため、電圧信号55の振幅66は、電圧信号53の振幅65の4倍となる。
【0066】
(通信光の信号取得処理)
次に、
図12を参照して、制御部14(
図2参照)が、通信光90(
図1参照)の信号を取得する構成について説明する。なお、
図12に示す処理は、第1水中光無線通信装置1(
図2参照)が第2水中光無線通信装置2(
図1参照)から、通信光90を受信することにより通信を行っている間、所定の間隔で継続して行われ、通信が終了する際に終了する。
【0067】
ステップ101において、制御部14は、通信光90による通信を行えるか否かを判定する。具体的には、制御部14は、通信光90の強度が、所定の強度よりも大きいか否かに基づいて、通信光90による通信を行えるか否かを判定する。通信光90による通信を行える場合、処理は、ステップ102へ進む。通信光90による通信を行えない場合、処理は、ステップ104へ進む。
【0068】
ステップ102において、制御部14は、第1受光部11(
図4参照)から出力された電流を、電流電圧変換部17a(
図4参照)によって電圧に変換する。本実施形態では、制御部14は、複数の受光素子12(
図4参照)の各々から出力された電流を、複数の電流電圧変換部17aによって電圧に変換する。
【0069】
ステップ103において、制御部14は、信号取得部17(
図4参照)を制御することにより、ステップ102において変換された電圧の合計値33を、通信光90の信号の電圧値として取得する。その後、処理は、終了する。
【0070】
ステップ101からステップ104に処理が進んだ場合、ステップ104において、制御部14(第1ゲイン演算部14a(
図4参照))は、ゲイン調整部16(
図4参照)を制御することにより、第1受光部11のゲインを調整する。第1ゲイン演算部14aが第1受光部11のゲインを調整する処理の詳細については、後述する。
【0071】
ステップ105において、制御部14は、ゲイン調整後の第1受光部11から出力された電流を、電流電圧変換部17aによって電圧に変換する。本実施形態では、制御部14は、ゲイン調整後の複数の受光素子12の各々から出力された電流を、複数の電流電圧変換部17aによって電圧に変換する。その後、処理は、ステップ103へ進む。
【0072】
なお、ステップ105からステップ103へ処理が進んだ場合、ステップ103において、制御部14は、信号取得部17を制御することにより、ステップ105において変換された電圧の合計値33を、通信光90の信号の電圧値として取得する。
【0073】
(第1受光部のゲイン調整処理)
次に、
図13を参照して、第1ゲイン演算部14a(
図4参照)が、複数の受光素子12(
図4参照)のゲインを調整する処理について説明する。
【0074】
ステップ104aにおいて、第1ゲイン演算部14aは、複数の受光素子12のゲインにより増幅された電流値30(
図4参照)を取得する。本実施形態では、第1ゲイン演算部14aは、複数の受光素子12からゲインにより増幅され、AD変換部16a(
図4参照)によってアナログ値からデジタル値に変換された電流値30を、複数の受光素子12の各々から取得する。
【0075】
ステップ104bにおいて、第1ゲイン演算部14aは、外乱光91(
図1参照)の強度35(
図2参照)を取得する。本実施形態では、第1ゲイン演算部14aは、第2受光部13(
図4参照)から出力され、電流電圧変換部16b(
図4参照)によって電流から電圧に変換された電圧のアナログ値を、AD変換部16cによってデジタル値に変換することにより、外乱光91の強度35を取得する。
【0076】
ステップ104cにおいて、第1ゲイン演算部14aは、目標値31(
図2参照)を取得する。具体的には、第1ゲイン演算部14aは、既に設定されている目標値31を取得する。なお、目標値31が設定されていない場合、第1ゲイン演算部14aは、規定値を目標値31として設定する。
【0077】
ステップ104dにおいて、第1ゲイン演算部14aは、外乱光91の強度35が大きいか否かを取得する。具体的には、第1ゲイン演算部14aは、ステップ104cにおいて取得した目標値31と、ステップ104aにおいて取得した電流値30との値を比較する。電流値30の値が目標値31よりも小さい場合、第1ゲイン演算部14aは、外乱光91の強度35が大きいと判定する。また、電流値30の値が目標値31よりも大きい場合、第1ゲイン演算部14aは、外乱光91の強度35が小さいと判定する。外乱光91の強度が大きい場合、処理は、ステップ104eへ進む。外乱光91の強度35が小さい場合、処理は、ステップ104fへ進む。
【0078】
ステップ104eにおいて、第1ゲイン演算部14aは、目標値31を大きくする。具体的には、第1ゲイン演算部14aは、ステップ104aにおいて取得した電流値30の値と、ステップ104bにおいて取得した外乱光91の強度35と、記憶部15(
図2参照)に記憶された目標値相関情報34(
図2参照)とに基づいて、目標値31を取得する。なお、外乱光91の強度35が大きい場合、目標値相関情報34に基づいて目標値31を取得することにより、通信光90によって通信可能な目標値31が取得される。すなわち、ステップ104eの処理によって、目標値31を大きくすることができる。その後、処理は、ステップ104gへ進む。
【0079】
また、ステップ104dからステップ104fへ処理が進んだ場合、第1ゲイン演算部14aは、目標値31を小さくする。具体的には、第1ゲイン演算部14aは、ステップ104aにおいて取得した電流値30の値と、ステップ104bにおいて取得した外乱光91の強度35と、記憶部15に記憶された目標値相関情報34とに基づいて、目標値31を取得する。なお、外乱光91の強度35が小さい場合に目標値相関情報34に基づいて目標値31を取得することにより、結果として、ステップ104cにおいて取得した目標値31よりも、目標値31を小さくすることができる。その後、処理は、ステップ104gへ進む。
【0080】
ステップ104gにおいて、第1ゲイン演算部14aは、ステップ104eまたはステップ104fにおいて取得(変更)した目標値31に基づいて、複数の受光素子12の各々に対して、第1ゲイン制御電圧32(
図4参照)を印加する。本実施形態では、第1ゲイン演算部14aは、複数の受光素子12の各々に対して、個別に設定された第1ゲイン制御電圧32を印加することにより、複数の受光素子12の各々に対して個別にゲイン調整を行う。その後、処理は、ステップ105へ進む。
【0081】
なお、ステップ104aの処理と、ステップ104bの処理とは、どちらが先に実行されてもよい。また、本実施形態では、ステップ104d~ステップ104gの処理は、複数の受光素子12の各々に対して個別に行われる。
【0082】
また、第2水中光無線通信装置2(
図3参照)においても、第1水中光無線通信装置1(
図2参照)から発光された通信光90(
図1参照)を受光する際に、通信光90とともに外乱光91(
図1参照)が受光される場合がある。したがって、第2水中光無線通信装置2の制御部24(
図3参照)も、第1水中光無線通信装置1の制御部14(
図2参照)と同様に、第1受光部21(
図3参照)のゲインを調整するように構成されている。これにより、第1水中光無線通信装置1および第2水中光無線通信装置2において、通信光90を用いた双方向通信を行うことができる。
【0083】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0084】
本実施形態では、上記のように、第1水中光無線通信装置1は、他の無線通信装置(第2水中光無線通信装置2)から照射された通信光90を受光する第1受光部11と、通信光90以外の光である外乱光91を受光する第2受光部13と、第1受光部11によって受光された通信光90の強度と、第2受光部13によって受光された外乱光91の強度35とに基づいて、第1受光部11のゲインを調整する制御を行う制御部14と、を備える。
【0085】
これにより、第1受光部11によって受光された通信光90の強度と、第2受光部13によって受光された外乱光91の強度35とに基づいて第1受光部11のゲインが調整されるので、外乱光91が大きい場合には、通信光90の振幅を大きくすることができる。したがって、通信光90に含まれる外乱光91によるノイズに対して、通信光90の振幅の比率を大きくすることが可能となるので、通信光90のSN比を向上させることができる。その結果、通信光90とともに外乱光91が受光される場合でも、外乱光91によって通信光90による通信が阻害されることを抑制することができる。
【0086】
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0087】
すなわち、本実施形態では、上記のように、第1受光部11によって受光された通信光90の強度に基づいてゲインにより増幅された電流値30を取得するAD変換部16a(電流値取得部)をさらに備え、制御部14は、第2受光部13によって受光された外乱光91の強度35に基づいて、AD変換部16aによって取得される通信光90の強度に基づく電流値30が、予め設定された目標値31に近づくように、第1受光部11のゲインを調整する制御を行うように構成されている。これにより、外乱光91の強度35に基づいて、予め設定された目標値31に近づくように第1受光部11のゲインが調整されるので、目標値31を算出することなく、第1受光部11のゲインの調整を行うことができる。その結果、第1受光部11のゲインの調整を行う際の制御部14(第1ゲイン演算部14a)の処理負担を軽減することができる。
【0088】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、第1受光部11によって受光された通信光90の強度に基づく電流値30が、設定された目標値31に近づくように、第1受光部11に印加する第1ゲイン制御電圧32(ゲイン制御電圧)を調整することにより、第1受光部11のゲインを調整する制御を行うように構成されている。これにより、第1ゲイン制御電圧32によって第1受光部11のゲインを調整することにより、第1受光部11によって受光された通信光90の強度に基づく電流値30を、設定された目標値31に容易に近づけることができる。その結果、第1受光部11のゲインを容易に調整することができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、外乱光91の強度35が大きい場合には、目標値31を大きくする制御を行い、外乱光91の強度35が小さい場合には、目標値31を小さくする制御を行うように構成されている。ここで、外乱光91の強度35が大きい場合、第1受光部11において受光された光の強度のうち、通信光90の強度が相対的に小さくなる。すなわち、外乱光91の強度35が大きい場合、通信光90による通信が困難になる。一方、外乱光91の強度35が小さい場合、第1受光部11において受光された光の強度のうち、通信光90の強度が相対的に大きくなる。すなわち、外乱光91の強度35に基づかずに目標値31を設定した場合、第1受光部11のゲインを増加させすぎる場合がある。そのため、上記のように構成することにより、外乱光91の強度35に応じて、第1受光部11のゲインによる電流値30の増加率が適切な値となるような目標値31に設定することができる。その結果、外乱光91の強度35が変化した場合でも、第1受光部11のゲインによる電流値30の増加率が適切な増加率となるように、第1受光部11のゲイン調整を容易に行うことができる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、外乱光91の強度35が大きく、目標値31を大きくする制御を行う場合には、第1受光部11から出力される電流値30が、第1受光部11の定格電流38a以下となるように、目標値31を設定する制御を行うように構成されている。これにより、第1受光部11のゲインを大きくする際に、第1受光部11から出力される電流値30が定格電流38aを超えることを防止することができる。その結果、第1受光部11のゲインを大きくしすぎることに起因して、第1受光部11から出力される電流値が飽和することを防止することが可能となるので、第1受光部11から出力される電流値が飽和することに起因して、通信光90による通信が阻害されることを防止することができる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、第1受光部11は、複数の受光素子12を含み、制御部14は、複数の受光素子12の各々によって受光された通信光90の強度に基づく電流値30と、目標値31と、外乱光91の強度35とに基づいて、複数の受光素子12の各々のゲインを独立して調整する制御を行うように構成されている。ここで、たとえば、受光素子12の受光面積を小さくしつつ、受光素子12の数を増やした場合、1つ当たりの受光素子12に受光される光の強度を低くすることができる。また、受光素子12の定格電流38aの値は変化しないため、複数の受光素子12の各々において受光される光の強度に基づく電流値30と定格電流38aとの差を大きくすることができる。その結果、受光素子12のゲインを調整する際の調整範囲を広げることができる。この場合、複数の受光素子12の各々を、互いに異なる方向に向けて配置することにより、複数の方向から通信光90を受光することが可能となる。この場合、複数の受光素子12の各々のゲインを独立して調整するため、通信光90が入射する方向に対応した受光素子12において受光する光に通信光90および外乱光91が含まれる場合でも、対応する受光素子12のゲインを個別に適切に調整することができる。その結果、複数の方向から受光する通信光90によって通信する場合でも、外乱光91に起因して通信光90による通信が阻害されることを抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、複数の受光素子12から出力された電流を電圧に変化する複数の電流電圧変換部17aをさらに備え、制御部14は、ゲインが調整された後の複数の受光素子12から出力され、複数の電流電圧変換部17aによって変換された電圧の合計値33を、通信光90の信号として取得する制御を行うように構成されている。これにより、たとえば、1つの受光素子12から出力される電流を変換した電圧に基づく信号の振幅が小さい場合でも、複数の受光素子12から出力される電流を変換した電圧が合計されるため、電圧の合計値33に基づく信号の振幅を大きくすることができる。したがって、個々の受光素子12のゲインを調整した後に得られる電圧に基づく信号の振幅を大きくすることが困難な場合でも、複数の電圧を合計することによって得られる電圧の合計値33に基づく信号によって、通信光90に基づく信号の振幅を大きくすることができる。その結果、通信光90に基づく信号の振幅を大きくすることが可能となるので、通信光90による通信の強度を向上させることができる。
【0093】
また、本実施形態では、上記のように、第1受光部11によって受光された通信光90の強度に基づく電流値30の目標値31と、外乱光91の強度35との相関関係を示す目標値相関情報34を記憶する記憶部15をさらに備え、制御部14は、第2受光部13によって受光された外乱光91の強度35と、目標値相関情報34とに基づいて、目標値31を調整する制御を行うように構成されている。これにより、目標値相関情報34と外乱光91の強度35とにより、外乱光91の強度35に応じて第1受光部11のゲインを適切なゲインに調整するための目標値31を容易に取得することができる。その結果、外乱光91の強度35に応じて、第1受光部11のゲインを適切なゲインに容易に調整することができる。
【0094】
また、本実施形態では、上記のように、第1受光部11と、第2受光部13と、制御部14とを収容する筐体1aをさらに備え、第1受光部11および第2受光部13の各々は、筐体1aにおいて、外乱光91の入射方向が等しくなる位置に設けられる。これにより、第1受光部11によって受光される外乱光91の強度35と、第2受光部13によって受光される外乱光91の強度35との差異が大きくなることを抑制することができる。その結果、外乱光91の強度35に基づいて第1受光部11のゲインを調整する際の精度が低下することを抑制することができる。
【0095】
また、本実施形態では、上記のように、第1受光部11は、光電子増倍管を含み、第2受光部13は、光電子増倍管よりも強度の高い光を受光することが可能なフォトダイオードを含む。ここで、フォトダイオードは、光電子増倍管と比較して、受光可能な光量の上限値が大きい。また、水中においては、一般的に、外乱光91は、通信光90よりも強度が大きい。そのため、上記のように、光電子増倍管よりも受光可能な光量の上限が大きいフォトダイオードを含む第2受光部13によって、通信光90よりも強度が大きい外乱光91を受光するように構成することにより、第2受光部13が光電子増倍管を含む構成と比較して、第2受光部13によって受光することが可能な外乱光91の強度35の上限値を大きくすることができる。その結果、外乱光91の強度35が高くなり、通信光90による通信がより行いにくい環境においても、外乱光91の強度35に応じて第1受光部11のゲインを精度よく調整することが可能となるので、外乱光91の影響がより強い環境においても、通信光90による通信が可能な第1水中光無線通信装置1(水中光無線通信装置)を提供することができる。
【0096】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0097】
たとえば、上記実施形態では、制御部14(第1ゲイン演算部14a)が、第1受光部11から出力される電流値30の値を目標値31に近づけるように、第1受光部11のゲインを調整する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部14は、第1受光部11のゲインを直接変更するように構成されていてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、第1ゲイン演算部14aが、第1受光部11から出力された電流値30に基づいて、第1受光部11のゲインを調整する構成の例を示したが本発明はこれに限られない。たとえば、第1ゲイン演算部14aは、第1受光部11から出力された電流を電流電圧変換部17aによって変換した電圧値に基づいて、第1受光部11のゲインを調整するように構成されていてもよい。この場合、目標値相関情報は、第1受光部11から出力される電圧値の目標値と、外乱光91の強度35との相関関係を示す情報とすればよい。
【0099】
また、上記実施形態では、複数の受光素子12の各々が、第1受光部11が1つの受光素子12を含む場合と比較して、1/4の受光面積を有する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の受光素子12の各々が、第1受光部11が1つの受光素子12を含む場合と同様の受光面積を有し、受光部全体として4倍の受光面積を有するように構成されていてもよい。このように構成した場合、受光素子12の各々の受光面積を1/4にする構成と比較して、電流信号の平均値と定格電流38aの値との差が小さくなり、第1受光部11のゲインを調整する際の調整幅が狭まる。しかしながら、第1受光部11が1つの受光素子12を含む場合と異なり、各受光素子12によって受光した通信光90の信号を加算することが可能であるため、信号取得部17によって取得される信号(電圧信号)の振幅を大きくすることができる。
【0100】
また、上記実施形態では、第1受光部11が、4つの受光素子12を含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。第1受光部11が含む受光素子12の数は、4つ以外であってもよい。たとえば、第1受光部11は、1つの受光素子12を含むように構成されていてもよい。また、第1受光部11は、4つ未満の複数の受光素子12を含んでいてもよいし、4つよりも多い受光素子12を含んでいてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、複数の受光素子12の各々を、互いに等しい向きに配置する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の受光素子12の各々を、互いに異なる向きに配置するように構成されていてもよい。このように構成すれば、複数の受光素子12の各々によって、複数の方向から入射する通信光90による通信を行うことができる。
【0102】
また、上記実施形態では、第1水中光無線通信装置1が、1つの第1受光部11を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1水中光無線通信装置1は、複数の第1受光部11を備えていてもよい。この場合、複数の第1受光部11をそれぞれ異なる方向に配置することにより、複数の方向から入射する通信光90による通信を行うことができる。
【0103】
また、上記実施形態では、第2受光部13が、フォトダイオードを含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。第2受光部13が、第1受光部11よりも強度の高い光を受光することが可能であれば、第2受光部13はどのような受光素子を含んでいてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、第1水中光無線通信装置1が移動体80であるAUVに設けられる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1水中光無線通信装置1は、有人潜水艇(HOV:Human Occupied Vehicle)に設けられてもよい。また、第1水中光無線通信装置1は、ケーブルを介して人が操縦する遠隔操縦ロボット(ROV:Remotely Operated Vehicle)に設けられてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、第2水中光無線通信装置2が固定体81に設けられ、第1水中光無線通信装置1が移動体80に設けられる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1水中光無線通信装置1が移動体80に設けられ、第2水中光無線通信装置2が固定体81に設けられていてもよい。また、第1水中光無線通信装置1および第2水中光無線通信装置2の各々が、互いに異なる移動体80に設けられてもよい。
【0106】
[態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0107】
(項目1)
他の無線通信装置から照射された通信光を受光する第1受光部と、
前記通信光以外の光である外乱光を受光する第2受光部と、
前記第1受光部によって受光された前記通信光の強度と、前記第2受光部によって受光された前記外乱光の強度とに基づいて、前記第1受光部のゲインを調整する制御を行う制御部と、を備える、水中光無線通信装置。
【0108】
(項目2)
前記第1受光部によって受光された前記通信光の強度に基づいてゲインにより増幅された電流値を取得する電流値取得部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2受光部によって受光された前記外乱光の強度に基づいて、前記電流値取得部によって取得される前記通信光の強度に基づく前記電流値が、予め設定された目標値に近づくように、前記第1受光部のゲインを調整する制御を行うように構成されている、項目1に記載の水中光無線通信装置。
【0109】
(項目3)
前記制御部は、前記第1受光部によって受光された前記通信光の強度に基づく前記電流値が、設定された前記目標値に近づくように、前記第1受光部に印加するゲイン制御電圧を調整することにより、前記第1受光部のゲインを調整する制御を行うように構成されている、項目2に記載の水中光無線通信装置。
【0110】
(項目4)
前記制御部は、前記外乱光の強度が大きい場合には、前記目標値を大きくする制御を行い、前記外乱光の強度が小さい場合には、前記目標値を小さくする制御を行うように構成されている、項目2または3に記載の水中光無線通信装置。
【0111】
(項目5)
前記制御部は、前記外乱光の強度が大きく、前記目標値を大きくする制御を行う場合には、前記第1受光部から出力される前記電流値が、前記第1受光部の定格電流以下となるように、前記目標値を設定する制御を行うように構成されている、項目2~4のいずれか1項に記載の水中光無線通信装置。
【0112】
(項目6)
前記第1受光部は、複数の受光素子を含み、
前記制御部は、前記複数の受光素子の各々によって受光された前記通信光の強度に基づく前記電流値と、前記目標値と、前記外乱光の強度とに基づいて、前記複数の受光素子の各々のゲインを独立して調整する制御を行うように構成されている、項目2~5のいずれか1項に記載の水中光無線通信装置。
【0113】
(項目7)
複数の受光素子から出力された電流を電圧に変化する複数の電流電圧変換部をさらに備え、
前記制御部は、ゲインが調整された後の前記複数の受光素子から出力され、前記複数の電流電圧変換部によって変換された電圧の合計値を、前記通信光の信号として取得する制御を行うように構成されている、項目6に記載の水中光無線通信装置。
【0114】
(項目8)
前記第1受光部によって受光された前記通信光の強度に基づく前記電流値の前記目標値と、前記外乱光の強度との相関関係を示す目標値相関情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2受光部によって受光された前記外乱光の強度と、前記目標値相関情報とに基づいて、前記目標値を調整する制御を行うように構成されている、項目2~7のいずれか1項に記載の水中光無線通信装置。
【0115】
(項目9)
前記第1受光部と、前記第2受光部と、前記制御部とを収容する筐体をさらに備え、
前記第1受光部および前記第2受光部の各々は、前記筐体において、前記外乱光の入射方向が等しくなる位置に設けられる、項目1~8のいずれか1項に記載の水中光無線通信装置。
【0116】
(項目10)
前記第1受光部は、光電子増倍管を含み、
前記第2受光部は、前記光電子増倍管よりも強度の高い光を受光することが可能なフォトダイオードを含む、項目1~9のいずれか1項に記載の水中光無線通信装置。
【符号の説明】
【0117】
1 第1水中光無線通信装置(水中光無線通信装置)
2 第2水中光無線通信装置(他の無線通信装置)
11、21 第1受光部
12、22 受光素子(複数の受光素子)
13、23 第2受光部
14、24 制御部
15、25 記憶部
16a AD変換部(電流値取得部)
32 第1ゲイン制御電圧(ゲイン制御電圧)
33 電圧の合計値
38a 定格電流
90 通信光
91 外乱光