(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150264
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】自動車の車体構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20241016BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063598
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】712005920
【氏名又は名称】新明和パークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 淳
【テーマコード(参考)】
3D235
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB17
3D235BB41
3D235CC15
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH08
3D235HH63
(57)【要約】
【課題】自動車の充電時に発生する出代を抑制する。
【解決手段】自動車の車体構造10は、充電ケーブル60の一端に設けられた充電ガン64が差し込まれる充電口12が、自動車30の車内に設けられ、充電ケーブル60を自動車30の車内から車外へ引き出すための通線路16が、自動車30の乗降用ドア34及び/又は乗降用ドア34に隣接する車体部分38に設けられている。これにより、充電口12を覆っていて充電のために開かれるリッドや、充電口12に差し込まれた充電ガン64が、車体の壁面から外側に突出するようなことはなく、それらを車内空間に配置することができる。更に、充電ケーブル60を乗降用ドア34により押えることができるため、車体側面からの突出量を抑制することができる。従って、自動車30の充電時に充電ケーブル60を接続しても、車体からの充電ケーブル60などの出代を抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電ケーブルを介して充電可能な自動車の車体構造であって、
前記充電ケーブルの一端に設けられた充電ガンが差し込まれる充電口が、前記自動車の車内に設けられ、
前記充電ケーブルを前記自動車の車内から車外へ引き出すための通線路が、前記自動車の乗降用ドア及び/又は該乗降用ドアに隣接する車体部分に設けられていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
前記自動車の車内に、前記充電ケーブルの余長部分を案内するためのガイド手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車の車体構造。
【請求項3】
前記通線路に、前記充電ケーブルの有無に応じて開閉する開閉手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車の車体構造。
【請求項4】
前記充電口が、前記自動車の運転席の近傍に設けられ、
前記通線路が、前記運転席の乗降用ドア及び/又は該乗降用ドアに隣接する車体部分に設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車の車体構造。
【請求項5】
前記充電口が、前記自動車のダッシュボードに設けられていることを特徴とする請求項4記載の自動車の車体構造。
【請求項6】
前記充電口が、少なくとも普通充電用の充電口を含むことを特徴とする請求項1記載の自動車の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電ケーブルを介して充電可能な自動車の車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やプラグインハイブリッド車などの、電気で駆動させるモーターを備えた自動車の増加に伴い、そのような自動車のバッテリーを充電するための充電設備を備えた施設が増えている。自動車の充電は、充電設備と自動車とが充電ケーブルを介して接続されることで行われるため、そのような作業を行うためのスペースや、充電ケーブルの配線スペースが必要になる。更に、それらに加えて、充電ケーブルの端部に設けられて自動車の充電口に差し込まれる充電ガンの配置スペースや、充電口を覆っていて充電のために開かれたリッドの配置スペースなども必要になる。すなわち、自動車の充電口は、通常、自動車の車体の壁面などの車外に設けられているため(例えば、特許文献1、2参照)、そこへ差し込まれる充電ガンや開かれたリッドの出代が発生する。従って、充電設備を備えた施設では、自動車の充電が行われることが予め考慮されて、充電中の自動車のための駐車スペースが広く確保されている場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-211976号公報
【特許文献2】特許第5714720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば既存の駐車スペースに充電設備を後から設置する場合などは、自動車の充電のためのスペースが十分に確保できず、充電ガンなどの出代が利用者の通行を妨げたり、駐車スペースに収まらなかったりする虞がある。特に、機械式駐車装置の自動車収容のためのパレットに充電設備を設置する場合は、パレット内に充電ケーブルや充電ガンなどが収まっていないと、それらがパレットの移動時に他の設備に接触してしまうリスクがある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動車の充電時に発生する出代を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。そのため、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)充電ケーブルを介して充電可能な自動車の車体構造であって、前記充電ケーブルの一端に設けられた充電ガンが差し込まれる充電口が、前記自動車の車内に設けられ、前記充電ケーブルを前記自動車の車内から車外へ引き出すための通線路が、前記自動車の乗降用ドア及び/又は該乗降用ドアに隣接する車体部分に設けられている自動車の車体構造。
【0007】
本項に記載の自動車の車体構造は、電気により駆動するモーターを備えた、充電ケーブルを介して充電可能な自動車に適用されるものであって、充電ケーブルの一端に設けられた充電ガンを差し込むための充電口が、自動車の車外ではなく車内に設けられている。更に、充電ケーブルを車内から充電設備が設置されている車外へと引き出すために、自動車の乗降用ドア及び/又はこの乗降用ドアに隣接する車体部分に通線路が設けられている。これにより、自動車の充電の際には、車内に設けられた充電口に充電ガンが差し込まれ、その充電ガンから延びる充電ケーブルが、乗降用ドアや窓が開かれたままにされることなく、乗降用ドアや車体部分に設けられた通線路を介して車外へと引き出され、充電ケーブルの他端に設けられた充電プラグが充電設備に接続される。
【0008】
このため、従来の車体構造と異なり、充電口を覆っていて充電のために開けられたリッドや、充電口に差し込まれた充電ガンが、車体の壁面から外側に突出するようなことはなく、それらは車内空間に配置される。更に、通線路を介して車外へと引き出される充電ケーブルは、通線路の位置に起因して少なくとも部分的に乗降用ドアにより押えられる態様となるため、車体側面からの突出量が抑制される。従って、自動車の充電時に充電ケーブルが接続されても、従来構造と比較して明らかに、車体からの充電ケーブルなどの出代が抑制されるものである。
【0009】
それにより、既存の駐車スペースに後から充電設備が設置される場合であっても、そこへ駐車される自動車が本項に記載の自動車の車体構造を備えていれば、充電時の出代が利用者の通行を妨げることはなく、更に駐車スペースに十分に収まるものとなる。また、機械式駐車装置の充電対応のパレットにそのような自動車が収容される場合でも、充電ケーブルなどの出代はパレット内に十分に収まるものとなり、それらがパレットの移動時に他の設備に接触することが防止されるものである。しかも、充電口の車内への設置により、例えば雨天時であっても、充電口への充電ガンの接続が車内で行われるため作業性が向上するものとなり、更に充電ガンや充電口が風雨などに曝されることが防止されるため、それらの劣化が抑制されるものとなる。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記自動車の車内に、前記充電ケーブルの余長部分を案内するためのガイド手段が設けられている自動車の車体構造。
本項に記載の自動車の車体構造は、充電ケーブルの余長部分を案内するためのガイド手段が、自動車の車内に設けられたものである。これにより、充電ケーブルの余長部分が、自動車の車内で案内されて収納された状態になるため、自動車の車外で余分なスペースをとったり駐車スペースからはみ出したりすることが防止される。このため、これによっても、充電ケーブルの出代が抑制されるものとなる。
【0011】
(3)上記(1)項において、前記通線路に、前記充電ケーブルの有無に応じて開閉する開閉手段が設けられている自動車の車体構造。
本項に記載の自動車の車体構造は、充電ケーブルを車内から車外へ引き出すための通線路に、充電ケーブルの有無に応じて開閉する開閉手段が設けられたものである。これにより、充電ケーブルを介した自動車の充電時以外には、通線路が開閉手段によって閉じられることになる。このため、例えば自動車の走行中などの使用中に、開かれた状態の通線路を空気が通ることに起因して、車内の温度調整の品質が低下したり、異音が発生したりすることなどが防止されるものである。
【0012】
(4)上記(1)項において、前記充電口が、前記自動車の運転席の近傍に設けられ、前記通線路が、前記運転席の乗降用ドア及び/又は該乗降用ドアに隣接する車体部分に設けられている自動車の車体構造。
本項に記載の自動車の車体構造は、充電ガンが差し込まれる充電口が、自動車の運転席の近傍に設けられると共に、充電ケーブルを車内から車外へ引き出すための通線路が、運転席の乗降用ドア及び/又はその乗降用ドアに隣接する車体部分に設けられたものである。すなわち、自動車の充電作業は、自動車の運転者によって行われる場合が多いと想定される。このため、上記のような位置に充電口及び通線路が設けられていることで、運転席に着座して運転席の乗降用ドアから乗降車する運転者により、充電口への充電ガンの差し込みや充電ケーブルの配線といった、自動車の充電のための各種の作業が効率よく行われるものとなる。
【0013】
(5)上記(4)項において、前記充電口が、前記自動車のダッシュボードに設けられている自動車の車体構造。
本項に記載の自動車の車体構造は、充電ガンが差し込まれる充電口が、運転席から操作されることが多い各種の操作手段などが配置される、自動車の運転席近傍のダッシュボードに設けられたものである。これにより、例えば充電口が車内の他の部分に設けられる場合と比較して、運転席からの充電口に対する充電ガンの着脱操作が容易に行われるものとなり、充電時の作業性が向上されるものである。
【0014】
(6)上記(1)項において、前記充電口が、少なくとも普通充電用の充電口を含む自動車の車体構造。
本項に記載の自動車の車体構造は、自動車の車内に設けられる充電口が、少なくとも普通充電用の充電口を含むものである。すなわち、モーターを備えた自動車は、通常、一般家庭などで行われる普通充電用の充電口と、サービスエリアなどで行われる急速充電用の充電口とを備えており、そのうちの少なくとも普通充電用の充電口が、自動車の車内に設けられたものである。
【0015】
ここで、既存の駐車スペースに後から設置される充電設備は、その設置スペースなどの観点から、比較的大型の急速充電用の充電設備ではなく、それよりも小型の普通充電用の充電設備であることが多いと考えられる。特に、機械式駐車装置のパレットには、スペースの制約があることや、充電しながら自動車が長時間収容される利用方法などが考慮されて、通常は普通充電用の充電設備が設置される。このため、本項に記載の自動車の車体構造のように、普通充電用の充電口が車内に設けられていることで、戸建て住宅の駐車スペース、集合住宅の平面駐車場の駐車スペースや機械式駐車装置のパレットなどを含む、多くの場所で行われる自動車の普通充電時に、充電ケーブルなどの出代が抑制されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明はこのように構成したので、自動車の充電時に発生する出代を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造の一例を概略的に示す三面図である。
【
図2】
図1の自動車の車体構造を有する自動車が機械式駐車装置のパレットに収容された様子を示す三面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造の、通線路が
図1と異なる形態を有する自動車の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。また、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略するものとする。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10の構成の一例を、この車体構造10を備えた自動車30と共に示しており、
図1には、平面の駐車スペースに設けられたスタンド型の充電設備72が利用されて、自動車30が充電される様子が示されている。本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10が適用される自動車30には、電気自動車やプラグインハイブリッド車などの、充電ケーブル60を介して充電可能なバッテリーを内蔵するあらゆる種類の車両が想定され、
図1に例示された自動車30は、4つの乗降用ドア34、2つのサイドミラー50、運転席42を含む座席、ダッシュボード46などを備えている。なお、
図1及び後述する
図2では、図示の便宜上、一部の部材が透過して図示されている。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10は、充電口12、通線路16、ガイド手段20、及び開閉手段24(
図3参照)を含んでいる。充電口12は、自動車30が内蔵するバッテリーに対して充電を行う際に、充電ケーブル60を接続するためのものであり、自動車30の車内に設けられている。より詳しくは、本実施形態の充電口12は、自動車30の運転席42の前方側(
図1(a)、(b)における右側)に位置するダッシュボード46の、自動車30の幅方向(
図1(a)における上下方向、
図1(c)における左右方向)の中央近傍に設けられている。
図1には、その充電口12に対して、充電ケーブル60の一端に設けられた充電ガン64が差し込まれた状態が示されている。なお、
図1に図示されている充電口12は、自動車30が対応する普通充電と急速充電との2つの充電方法のうち、普通充電を行なう際に利用されるものであって、急速充電用の充電口は、充電口12と同様に車内に設けられていてもよく、車外に設けられていてもよい。
【0020】
通線路16は、充電ケーブル60を車内から車外へ引き出すために利用されるものである。本実施形態の通線路16は、
図1(b)に示すように、運転席42用の乗降用ドア34の一部と、その乗降用ドア34の下方に位置する車体部分38の一部とに、切欠きなどが設けられることで形成されている。
図1の通線路16は、
図1(b)のような側面視で、運転席42の乗降用ドア34の図中左下近傍から、下斜め左方(下斜め後方)に向かって延びている。このため、このような通線路16に充電ケーブル60が通される際には、運転席42の乗降用ドア34が開かれて、車体部分38側の通線路16に充電ケーブル60が配置された状態で、乗降用ドア34が閉められることになる。そして、通線路16を介して自動車30の車内から車外へと引き出された充電ケーブル60は、自動車30の側部に沿って後方側へと引き回され、自動車30の右後方側に設置されている充電設備72のコンセントに、充電ケーブル60の他端に設けられた充電プラグ68が差し込まれている。
【0021】
ガイド手段20は、充電ケーブル60の余長部分を自動車30の車内において案内するためのものであり、本実施形態では、運転席42の下面と車内の床面との間のスペースが、ガイド手段20として利用されている。また、ガイド手段20は、例えば、車内の床面に設けられた窪みによって実現されてもよく、充電ケーブル60を巻き付けたり、押えたり、通したりするための各種の部材によって実現されてもよい。何れの場合であっても、充電ケーブル60の想定される余長部分の長さや、充電口12から通線路16までの配線ルートなどが考慮されて、適切な位置、形状、及び大きさのガイド手段20が設置されるものとする。
【0022】
図3を参照して、開閉手段24は、通線路16において充電ケーブル60の有無に応じて通線路16を開閉するためのものである。すなわち、開閉手段24は、
図3(a)に示すように、通線路16に充電ケーブル60が配置されていない状態では通線路16を閉じ、
図3(b)に示すように、通線路16に充電ケーブル60が配置されている状態では通線路16を開くように構成されている。このため、例えば開閉手段24は、
図3(a)のような閉状態となるように常に付勢され、充電ケーブル60の配置の際に軽い力で開かれるようになっていてもよい。なお、開閉手段24は、通線路16を少なくとも1箇所で塞ぐことができるような構成であればよく、その設置位置などに応じて、乗降用ドア34或いは車体部分38の何れか一方に設けられてもよく、それらの双方から協働して開閉を行うように設けられてもよい。通線路16を開閉できるものであれば、開閉手段24の構造や形状なども任意である。また、開閉手段24に代えて、充電ケーブル60の有無に応じて着脱される単なる塞ぎ材などが設置されてもよい。
【0023】
続いて、
図2には、
図1に示した自動車の車体構造10を備える自動車30が、機械式駐車装置のパレット80に収容された状態で、充電が行われている様子が示されている。すなわち、
図2に示されたパレット80は、自動車30の充電のための充電設備72を備えており、
図2の実施形態では、スタンド型の充電設備72が、パレット80の側方両側(
図2(a)における上下両側)に形成された立ち上がり部84のうち、一方の立ち上がり部84の後方側(
図2(a)、(b)における左側)に設置されている。そして、
図2では、自動車30の車内の様子は省略されているものの、通線路16を介して車外へと引き出された充電ケーブル60が、立ち上がり部84に沿って車両載置面80a上で後方側へと引き回され、充電設備72のコンセントに充電プラグ68が接続された様子が図示されている。
【0024】
ここで、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10は、
図1から
図3に示したような構成に限定されるものではなく、状況などに合わせて様々な形態を取り得るものである。例えば、充電口12は、ダッシュボード46以外の場所に設けられていてもよく、運転席42周辺の床面や、運転席42の側面などに設けられてもよい。更に、充電口12は、自動車30の車内に設けられていれば、運転席42の近傍に限らず、他の座席の周辺に設けられていてもよい。加えて、充電口12は、充電ガン64が常時接続されて、充電の度に充電ケーブル60が車外へと引き出されるような使用方法であれば、アクセスはし難いものの自動車30の走行時などに邪魔にならない、座席の下などに設けられていてもよい。
【0025】
また、通線路16の位置や形状なども、
図1及び
図2の例と異なっていてもよく、充電口12の位置や充電ケーブル60の引き出し角度などに応じて、任意の適切な位置及び形状で形成されてよい。例えば
図4には、自動車30の後方側へ向かって充電ケーブル60が引き出されるように形成された、通線路16の一例が図示されている。更に、通線路16は、運転席42の乗降用ドア34に限らず、別の乗降用ドア34やそれに隣接する車体部分38に設けられてもよく、乗降用ドア34とそれに隣接する車体部分38との何れか一方に設けられてもよい。
【0026】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10は、
図1に示すように、電気により駆動するモーターを備えた、充電ケーブル60を介して充電可能な自動車30に適用されるものであって、充電ケーブル60の一端に設けられた充電ガン64を差し込むための充電口12が、自動車30の車外ではなく車内に設けられている。更に、充電ケーブル60を車内から充電設備72が設置されている車外へと引き出すために、自動車30の乗降用ドア34及び/又はこの乗降用ドア34に隣接する車体部分38に通線路16が設けられている。これにより、自動車30の充電の際には、車内に設けられた充電口12に充電ガン64を差し込み、その充電ガン64から延びる充電ケーブル60を、乗降用ドア34や窓を開いたままにすることなく、乗降用ドア34や車体部分38に設けられた通線路16を介して車外へと引き出すことができる。そして、充電ケーブル60の他端に設けられた充電プラグ68を充電設備72に接続する。
【0027】
このため、従来の車体構造と異なり、充電口12を覆っていて充電のために開けられたリッドや、充電口12に差し込まれた充電ガン64が、車体の壁面から外側に突出するようなことはなく、それらを車内空間に配置することができる。更に、通線路16を介して車外へと引き出される充電ケーブル60を、通線路16の位置に起因して少なくとも部分的に乗降用ドア34により押えることができるため、車体側面からの突出量を抑制することができる。従って、自動車30の充電時に充電ケーブル60を接続しても、従来構造と比較して明らかに、車体からの充電ケーブル60などの出代を抑制することが可能となる。
【0028】
それにより、既存の駐車スペースに後から充電設備72が設置される場合であっても、そこへ駐車される自動車30が本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10を備えていれば、充電時の出代が利用者の通行を妨げることはなく、更に駐車スペースに十分に収めることができる。また、
図2に示すように、機械式駐車装置の充電対応のパレット80にそのような自動車30が収容される場合でも、特に
図2(a)で確認できるように、折り畳まれたサイドミラー50と同様に、充電ケーブル60などの出代をパレット80内に十分に収めることができ、それらがパレット80の移動時に他の設備に接触することを防止することができる。しかも、充電口12の車内への設置により、例えば雨天時であっても、充電口12への充電ガン64の接続を車内で行うことができるため、作業性を向上させることができる。更に、充電ガン64や充電口12が風雨などに曝されることを防止することができるため、それらの劣化を抑制することも可能となる。
【0029】
また、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10は、
図1に示すように、充電ケーブル60の余長部分を案内するためのガイド手段20が、自動車30の車内に設けられたものである。これにより、充電ケーブル60の余長部分を、自動車30の車内で案内して収納することができるため、それらが自動車30の車外で余分なスペースをとったり駐車スペースからはみ出したりすることを防止することができる。このため、これによっても、充電ケーブル60の出代を抑制することが可能となる。
【0030】
更に、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10は、
図3に示すように、充電ケーブル60を車内から車外へ引き出すための通線路16に、充電ケーブル60の有無に応じて開閉する開閉手段24が設けられたものである。これにより、充電ケーブル60を介した自動車30の充電時以外には、通線路16を開閉手段24によって閉じることができる。このため、例えば自動車30の走行中などの使用中に、開かれた状態の通線路16を空気が通ることに起因して、車内の温度調整の品質が低下したり、異音が発生したりすることなどを防止することができる。
【0031】
加えて、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10は、
図1に示すように、充電ガン64が差し込まれる充電口12が、自動車30の運転席42の近傍に設けられると共に、充電ケーブル60を車内から車外へ引き出すための通線路16が、運転席42の乗降用ドア34及び/又はその乗降用ドア34に隣接する車体部分38に設けられたものである。すなわち、自動車30の充電作業は、自動車30の運転者によって行われる場合が多いと想定される。このため、上記のような位置に充電口12及び通線路16が設けられていることで、運転席42に着座して運転席42の乗降用ドア34から乗降車する運転者により、充電口12への充電ガン64の差し込みや充電ケーブル60の配線といった、自動車30の充電のための各種の作業を効率よく行うことが可能となる。
【0032】
また、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10は、充電ガン64が差し込まれる充電口12が、運転席42から操作されることが多い各種の操作手段などが配置される、自動車30の運転席42近傍のダッシュボード46に設けられたものである。これにより、例えば充電口12が車内の他の部分に設けられる場合と比較して、運転席42からの充電口12に対する充電ガン64の着脱操作を容易に行うことができ、充電時の作業性を向上させることができる。
【0033】
更に、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10は、自動車30の車内に設けられる充電口12が、少なくとも普通充電用の充電口12を含むものである。すなわち、モーターを備えた自動車30は、通常、一般家庭などで行われる普通充電用の充電口12と、サービスエリアなどで行われる急速充電用の充電口とを備えており、そのうちの少なくとも普通充電用の充電口12が、自動車30の車内に設けられたものである。ここで、既存の駐車スペースに後から設置される充電設備72は、その設置スペースなどの観点から、比較的大型の急速充電用の充電設備72ではなく、それよりも小型の普通充電用の充電設備72であることが多いと考えられる。特に、機械式駐車装置のパレット80には、スペースの制約があることや、充電しながら自動車30が長時間収容される利用方法などが考慮されて、通常は普通充電用の充電設備72が設置される。このため、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造10のように、普通充電用の充電口12が車内に設けられていることで、戸建て住宅の駐車スペース、集合住宅の平面駐車場の駐車スペースや機械式駐車装置のパレット80などを含む、多くの場所で行われる自動車30の普通充電時に、充電ケーブル60などの出代を抑制することができる。
【符号の説明】
【0034】
10:自動車の車体構造、12:充電口、16:通線路、20:ガイド手段、24:開閉手段、30:自動車、34:乗降用ドア、38:車体部分、42:運転席、46:ダッシュボード、60:充電ケーブル、64:充電ガン