(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150269
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】潤滑油添加剤および潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 155/02 20060101AFI20241016BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20241016BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20241016BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20241016BHJP
C10N 40/20 20060101ALN20241016BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20241016BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C10M155/02
C10M101/02
C10N30:06
C10N40:25
C10N40:20 Z
C10N40:04
C10N40:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063608
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】増本 覚
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB08A
4H104BB32A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104CA04A
4H104CJ07C
4H104DA02A
4H104EA03R
4H104LA03
(57)【要約】
【課題】優れた潤滑性を付与することができ、硫黄、リン、金属の含有量が低減された安全性の高い潤滑油添加剤および潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】本発明の潤滑油添加剤は、ポリオルガノシロキサン基を有するビニルモノマー(a)に由来する構造単位(a-1)を含むAブロックと、極性基を含有するビニルモノマー(b)に由来する構造単位(b-1)を含むBブロックとを含むブロック共重合体からなることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサン基を有するビニルモノマー(a)に由来する構造単位(a-1)を含むAブロックと、極性基を含有するビニルモノマー(b)に由来する構造単位(b-1)を含むBブロックとを含むブロック共重合体からなることを特徴とする潤滑油添加剤。
【請求項2】
前記ビニルモノマー(a)が、ポリオルガノシロキサン基を有する(メタ)アクリレートおよび/またはポリオルガノシロキサン基を有する(メタ)アクリルアミドである請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項3】
前記ビニルモノマー(a)の数平均分子量が、500~50,000である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項4】
前記ビニルモノマー(b)が、一般式(3)で表される請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【化1】
〔式中、R
31は水素原子またはメチル基を示す。R
32は単結合または2価の有機基を示す。Y
3は極性基を示す。〕
【請求項5】
前記極性基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基およびアミノ基よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項6】
前記ブロック共重合体中のAブロックとBブロックとの質量比(Aブロック/Bブロック)が、50/50~99/1である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項7】
前記ブロック共重合体の数平均分子量が、5,000~100,000である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項8】
前記ブロック共重合体が、リビングラジカル重合により得られたものであり、その分子量分布が2.5以下である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項9】
前記ブロック共重合体が、主鎖または側鎖に硫黄原子を含有しない請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項10】
基油と、請求項1~9のいずれか1項に記載の潤滑油添加剤とを含有する潤滑油組成物。
【請求項11】
前記基油が、鉱物油および合成油よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記潤滑油添加剤の配合量が、基油100質量部に対して、1質量部~20質量部である請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
金属材料と請求項10に記載の潤滑油組成物とが接触する潤滑システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油添加剤および潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤(潤滑油)は、金属加工油、エンジン油、駆動系油、作動油等の様々な用途に用いられている。近年、各種装置の高性能化や大型化、省燃費性向上のため潤滑油の低粘度化が進んでいる。これらの影響で潤滑が必要な接触面には今まで以上に高い圧力がかかる場合が増え、接触面で摩耗が発生することが問題となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、下記一般式(1)で表され、HLBが4以下であり、かつ重量平均分子量が500~10,000であるポリエーテル(E)の1種以上を含有する潤滑油が開示されている。
R1-{(O-CH2CH2CH2CH2)m/(O-A)n}-OR2 (1)
[式中R1は炭素数1~24の炭化水素基、R2は炭素数1~4のアルキル基、Aは1,4-ブチレン基を除く炭素数1~4のアルキレン基から選ばれる1種以上であり、mおよびnは(E)の重量平均分子量が500~10,000を満たす1以上の整数である。オキシテトラメチレン基(O-CH2CH2CH2CH2基)とオキシアルキレン基(O-A基)とはランダムに結合していてもブロック状に結合していてもよい。]
【0004】
特許文献2には、潤滑基油に、(A)成分として、特定の構造を有する亜鉛ジチオホスフェートをリン含量として100~500質量ppm、(B)成分として、2価以上のヒンダードアルコールと炭素数8以上のモノカルボン酸との反応物を0.01~20質量%含有するエンジン油組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、潤滑剤組成物であって、(A)非シリコーンベースストックオイルと、(B)(A)+(B)の総重量に基づく0.5~50重量%のシリコーンオイルと、を含み、前記潤滑剤組成物の粘度指数が、ASTM D 2270-10e1に従って測定するとき、前記非シリコーン潤滑剤ベースオイル(A)の粘度指数より少なくとも10%大きく、前記潤滑剤組成物が、DIN 51350-6(A法)に従って測定するとき、剪断安定性であることを特徴とする潤滑剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-012881号公報
【特許文献2】特開2005-325241号公報
【特許文献3】特開2015-525827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
潤滑剤(潤滑油)には、極圧性、耐摩耗性、酸化安定性等の各種性能を向上する目的で、基油に添加剤が配合されている。なかでも、極圧性、耐摩耗性に影響する添加剤は、摩擦を低減する効果があることから負荷が高い部材の摩耗対策に使用されている。極圧性の向上を目的とした従来の潤滑油添加剤は、硫黄、リン、鉛、亜鉛、塩素等の元素を含有している(特許文献1(段落0024)、特許文献2(段落0031)および特許文献3(段落0057)参照)。そのため、潤滑面の腐食、人体の健康被害、廃棄時の環境問題がある。
本発明は、優れた潤滑性を付与することができ、硫黄、リン、金属の含有量が低減された安全性の高い潤滑油添加剤および潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することができた本発明の潤滑油添加剤は、ポリオルガノシロキサン基を有するビニルモノマー(a)に由来する構造単位(a-1)を含むAブロックと、極性基を含有するビニルモノマー(b)に由来する構造単位(b-1)を含むBブロックとを含むブロック共重合体からなることを特徴とする。
本発明で使用するブロック共重合体は、極性の高いBブロックが、鉄、鋼、ステンレス、アルミなどの金属に対して吸着する吸着部を形成し、Aブロックが基油に溶解する潤滑部を形成する。その結果、本発明で使用するブロック共重合体は、摩擦や摩耗を低減する効果を発揮すると考えられる。したがって、潤滑油添加剤(例えば、油性向上剤、極圧剤、摩耗調整剤、耐摩耗性向上剤など)として使用することができる。
【0009】
本発明の潤滑油組成物は、基油と前記本発明の潤滑油添加剤とを含む。
【0010】
本発明には、金属材料と本発明の潤滑油組成物とが接触する潤滑システムが含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた潤滑性を付与することができ、硫黄、リン、金属の含有量が低減された安全性の高い潤滑油添加剤、およびこれを用いた潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。ただし、以下の実施形態は単なる例示である。本発明は以下の実施形態に何ら限定されない。
【0013】
本発明の潤滑油添加剤は、ポリオルガノシロキサン基を有するビニルモノマー(a)に由来する構造単位(a-1)を含むAブロックと、極性基を含有するビニルモノマー(b)に由来する構造単位(b-1)を含むBブロックとを含むブロック共重合体からなることを特徴とする。
【0014】
本明細書において、「Aブロック」は「Aセグメント」と言い換えることができ、「Bブロック」は「Bセグメント」と言い換えることができる。「ポリオルガノシロキサン基」とは、-SiR2-[OSiR2]n-R(Rは、独立に1価有機基、nは2以上の整数)で示される1価有機基である。「ビニルモノマー」とは分子中にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を有するモノマーのことをいう。「ビニルモノマーに由来する構造単位」とは、ビニルモノマーのラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合が、重合して炭素-炭素単結合になった構造単位をいう。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイルおよびメタクリロイルの少なくとも一方」をいう。
【0015】
(構造単位(a-1))
本発明のブロック共重合体は、ポリオルガノシロキサン基を有するビニルモノマー(a)に由来する構造単位(a-1)を有するAブロックを有する。
【0016】
前記ビニルモノマー(a)は、1分子中にビニル基とポリオルガノシロキサン基とを有するものであれば、特に限定されない。前記ビニルモノマーのビニル基の官能基当量(g/mol)は、重合性の観点から、500以上が好ましく、600以上がより好ましく、700以上がさらに好ましく、50,000以下が好ましく、3,000以下がより好ましく、1,200がさらに好ましい。前記ビニルモノマー(a)が有するビニル基の数は、特に限定されないが、1個であることが好ましい。
【0017】
前記ビニルモノマー(a)の数平均分子量(Mn)は、500以上が好ましく、600以上がより好ましく、700以上がさらに好ましく、50,000以下が好ましく、3,000以下がより好ましく、1,200がさらに好ましい。前記ビニルモノマー(a)の数平均分子量(Mn)が、前記範囲内であれば、基油と混合させた際、共重合体成分が析出することなく相溶性が良好となるからである。
【0018】
前記ビニルモノマー(a)としては、例えば、ポリオルガノシロキサン基を有する(メタ)アクリレート、ポリオルガノシロキサン基を有する(メタ)アクリルアミド等を挙げることができ、好ましくはポリオルガノシロキサン基を有する(メタ)アクリレートである
【0019】
前記ビニルモノマー(a)は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】
〔式中、R
11は水素原子またはメチル基を示す。R
12、R
13、R
14、R
15およびR
16は、独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~10の飽和炭化水素基を示す。Q
1は単結合または2価の有機基を示す。nは2以上の整数を示す。〕
【0020】
R12、R13、R14、R15およびR16の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルコキシ基等が挙げられる。
【0021】
R12、R13、R14、R15およびR16は、独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~10の飽和炭化水素基である。置換基を有していてもよい炭素数1~10の飽和炭化水素基としては、炭素数1~8のアルキル基、フルオロアルキル基が好ましく、メチル基、トリフルオロプロピル基がより好ましく、メチル基がより好ましい。合成が容易である点では、R12、R13、R14、R15およびR16は同一であることが好ましい。求められる物性に応じて、その一部に異なる基が導入されてもよい。
【0022】
Q1は単結合または2価の有機基である。2価の有機基としては、例えば、炭素原子間に、エーテル基(-O-)、エステル基(-C(=O)O-または-OC(=O)-)、アミド基(-C(=O)NH-)、ウレタン基(-NHC(=O)-O-)を有してもよい炭素数1~10の置換または非置換の2価飽和炭化水素基を挙げることができる。置換基としてはハロゲン原子、炭素数1~10のアルコキシ基等が挙げられる。
【0023】
nは、2以上の整数であること好ましく、6以上の整数であることがより好ましく、300以下の整数であることが好ましい。
【0024】
構造単位(a-1)を形成するビニルモノマー(a)は、下記一般式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【化2】
〔式中、R
21は水素原子またはメチル基を示す。R
22は炭素数1~4のアルキル基を示す。m1は1~6の数である。m2は20~300の数である。〕
【0025】
前記式(1)を有するビニルモノマー(a)としては、具体的には、信越化学工業社(変性シリコーンオイルシリーズ)やJNC株式会社(サイラプレーン(登録商標))から市販されており、信越化学社製のX-22-2404[官能基当量(g/mol):420][数平均分子量:420]、X-22-174ASX[官能基当量(g/mol):900][数平均分子量:900]、X-22-174BX[官能基当量(g/mol):2,300][数平均分子量:2,300]、KF-2012[官能基当量(g/mol):4,600]、X-22-2426[官能基当量(g/mol):12,000][数平均分子量:12,000]、JNC株式会社製のFM-0711[数平均分子量:1,000]、FM-0721[数平均分子量:5,000]、FM-0725[数平均分子量:10,000](以上、商品名)等が挙げられる。なお、前記官能基当量は、ビニル基1モルの官能基当量である。ビニルモノマー(a)が1官能である場合、官能基当量[g/mol]はシロキサン1モルに対するビニルモノマー(a)の数平均分子量と見做すことができる。
【0026】
本発明で使用するブロック共重合体のAブロックは、実質的にポリオルガノシロキサン基を有するビニルモノマー(a)に由来する構造単位(a-1)のみから構成されてもよいし、他の構造単位が含まれてもよい。
【0027】
Aブロックにおけるポリオルガノシロキサン基を有するビニルモノマー(a)に由来する構造単位(a-1)の含有率は、Aブロックを構成する構造単位100質量%中において、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、100質量%以下が好ましい。構造単位(a-1)の含有率を前記範囲とすることで、基油と混合させた際、共重合体成分が析出することなく相溶性が良好となるからである。
【0028】
また、前記Aブロックは、Bブロックが有する構造単位(b-1)を実質的に含有しないことが好ましい。即ち、Aブロックにおいて、Bブロックが有する構造単位(b-1)の含有率は、Aブロックを構成する構造単位100質量%中において、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、2質量%以下が特に好ましい。なお、前記含有率の下限は、0質量%である。
【0029】
なお、本発明で使用するブロック共重合体のAブロックは、実質的にポリオルガノシロキサン基を有するビニルモノマー(a)に由来する構造単位(a-1)のみからなることも好ましい。
【0030】
(構造単位(b-1))
本発明で使用するブロック共重合体のBブロックは、極性基を含有するビニルモノマー(b)に由来する構造単位(b-1)を有する。
【0031】
前記極性基は、隣接する2原子の電気陰性度の差が大きい構造を含む基をいい、具体的にはヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基等が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基、カルボキシ基およびアミノ基よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0032】
前記ビニルモノマー(b)としては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【化3】
〔式中、R
31は水素原子またはメチル基を示す。R
32は単結合または2価の有機基を示す。Y
3は極性基を示す。〕
【0033】
前記一般式(3)において、2価の有機基R32としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、-CO-NH-R321-基(アミド基)、-CO-O-R322-基(エステル基)等が挙げられ、好ましくは-CO-NH-R321-基および/または-CO-O-R322-基であり、より好ましくは-CO-O-R322-基である。なお、アミド基、エステル基の結合方向は特に限定されないが、アミド基の結合態様としてはC-CO-NH-R321-Y3が好ましく、エステル基の結合態様としては、C-CO-O-R322-Y3が好ましい。
【0034】
前記R321は、好ましくはアルキレン基(-R3211-基)またはエステル基(-R3212-O-CO-R3213-基)であり、より好ましくはエステル基である。なお、エステル基の結合方向は特に限定されないが、エステル基の結合態様としては-R3212-O-CO-R3213-Y3が好ましい。
【0035】
前記R3211は、好ましくは直鎖状アルキレン基または分岐鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~10の直鎖状アルキレン基または炭素数3~10の分岐鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖状アルキレン基である。具体例としては、メチレン基 、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。
【0036】
前記R3212は、好ましくは直鎖状アルキレン基または分岐鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~10の直鎖状アルキレン基または炭素数3~10の分岐鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖状アルキレン基である。具体例としては、メチレン基 、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。
【0037】
前記R3213は、好ましくは直鎖状アルキレン基、分岐鎖状アルキレン基、環状アルキレン基またはアリーレン基であり、より好ましくは炭素数1~10の直鎖状アルキレン基、炭素数3~10の分岐鎖状アルキレン基、炭素数6~10の環状アルキレン基または炭素数6~10のアリーレン基であり、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖状アルキレン基である。具体例としては、メチレン基 、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基等を挙げることができる。
【0038】
前記R322は、好ましくはアルキレン基(-R3221-基)またはエステル基(-R3222-O-CO-R3223-基)であり、より好ましくはエステル基である。なお、エステル基の結合方向は特に限定されないが、エステル基の結合態様としては-R3222-O-CO-R3223-Y3が好ましい。
【0039】
前記R3221は、好ましくは直鎖状アルキレン基または分岐鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~10の直鎖状アルキレン基または炭素数3~10の分岐鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖状アルキレン基である。具体例としては、メチレン基 、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。
【0040】
前記R3222は、好ましくは直鎖状アルキレン基または分岐鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~10の鎖状アルキレン基または炭素数3~10の分岐鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖状アルキレン基である。具体例としては、メチレン基 、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。
【0041】
前記R3223は、好ましくは直鎖状アルキレン基、分岐鎖状アルキレン基、環状アルキレン基またはアリーレン基であり、より好ましくは炭素数1~10の直鎖状アルキレン基、炭素数3~10の分岐鎖状アルキレン基、炭素数6~10の環状アルキレン基または炭素数6~10のアリーレン基であり、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖状アルキレン基である。具体例としては、メチレン基 、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基等を挙げることができる。
【0042】
Y3で表される極性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基等が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基、カルボキシ基およびアミノ基よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0043】
ヒドロキシ基を有するビニルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0044】
カルボキシ基を有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0045】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、コハク酸水素2-アクリロイルオキシエチル、コハク酸水素2-メタクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸水素2-(アクリロイルオキシ)エチル、ヘキサヒドロフタル酸水素2-(メタクリロイルオキシエチル)、フタル酸水素2-アクリロイルオキシエチル、フタル酸水素2-メタクリロイルオキシエチル、アクリル酸のカプロラクトン付加物、メタクリル酸のカプロラクトン付加物等が挙げられる。
【0046】
アミノ基を有するビニルモノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、エチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、プロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、プロピルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0047】
構造単位(b-1)の含有率は、Bブロックを構成する構造単位100質量%中において、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。なお、前記構造単位(b-1)の含有率の上限は、100質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。構造単位(b-1)の含有率を前記範囲とすることで、基材と十分に吸着することが可能となるからである。
【0048】
Bブロックは、構造単位(b-1)のみから構成されてもよいし、他の構造単位が含まれていてもよい。また、Bブロックは、Aブロックが有する構造単位(a-1)を実質的に含有しないことが好ましい。即ち、Bブロックにおいて、Aブロックが有する構造単位(a-1)の含有率は、Bブロックを構成する構造単位100質量%中において、6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。なお、前記含有率の下限は、0質量%である。
【0049】
本発明で使用するブロック共重合体は、本発明の効果を損なわない限り、前記ビニルモノマー(a)およびビニルモノマー(b)と共重合可能の他のビニルモノマー(c)に由来する構造単位を含むことができる。
【0050】
他のビニルモノマー(c)としては、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、直鎖状アルキル基の炭素数が1~20である直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、直鎖状アルキル基の炭素数が1~10である直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。前記直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
前記分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、分岐鎖状アルキル基の炭素数が3~20である分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、分岐鎖状アルキル基の炭素数が3~10である分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。前記分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
前記環状アルキル基としては、単環構造を有する環状アルキル基(例えば、シクロアルキル基)、橋かけ環構造を有する環状アルキル基(例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基)が挙げられる。
前記単環構造の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、環状アルキル基の炭素数が6~12の単環構造の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。単環構造の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
橋かけ環構造を有する環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、橋かけ環構造の炭素数が6~12の橋かけ環構造を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。橋かけ環構造を有する環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
前記芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、芳香族基の炭素数が6~12の芳香族基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。芳香族基としては、アリール基等を挙げることができ、またアルキルアリール基、アラルキル基、アリールオキシアルキル基等のように鎖状部分を有していてもよい。芳香族基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
本発明で使用するブロック共重合体は、上述した構造単位から構成されることにより、主鎖または側鎖に硫黄原子を含有しないことが好ましい。
【0057】
(ブロック共重合体)
本発明で使用するブロック共重合体は、前記Aブロックと、前記Bブロックとを有する。ブロック共重合体の構造は、(A-B)m型、(A-B)m-A型および(B-A)m-B型(mは1以上の整数、例えば1~3の整数)よりなる群から選択される少なくとも1種の構造を持つ共重合体であることが好ましい。これらの中でも、前記ブロック共重合体は、加工時の取扱い性、組成物の物性の観点から、A-B型ジブロック共重合体であることが好ましい。前記ブロック共重合体は、AブロックおよびBブロック以外の他のブロックを有していてもよい。
【0058】
前記Aブロックの含有率は、ブロック共重合体を構成する構造単位100質量%中において、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。Aブロックの含有率を上記範囲内に調整することで、目的の機能を有するブロック共重合体を調整することができるからである。
【0059】
前記Bブロックの含有率は、ブロック共重合体を構成する構造単位100質量%中において、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。Bブロックの含有率を上記範囲内に調整することで、目的の機能を有するブロック共重合体を調整することができる。
【0060】
前記ブロック共重合体において、前記Aブロックと前記Bブロックとの質量比(Aブロック/Bブロック)は、50/50以上が好ましく、より好ましくは60/40以上、さらに好ましくは70/30以上であり、99/1以下が好ましく、より好ましくは95/5以下、さらに好ましくは90/10以下である。前記質量比(Aブロック/Bブロック)が、前記範囲内であれば、目的の機能を有するブロック共重合体を調整することができるからである。
【0061】
前記ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、5,000以上が好ましく、7,000以上がより好ましく、10,000以上がさらに好ましく、100,000以下が好ましく、80,0000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。数平均分子量が前記範囲内であれば、基油に混合させた際、析出することなく混和することが可能となるからである。
【0062】
前記ブロック共重合体の分子量分布(D)は、2.5以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましい。分子量分布が2.5以下であれば、基油に溶解しかつ基材に吸着しやすくなるからである。なお、本発明において、分子量分布(D)とは、(ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw))/(ブロック共重合体の数平均分子量(Mn))によって求められるものである。Mw/Mnが小さいほど分子量分布の幅が狭い、分子量のそろった共重合体となり、その値が1.0のとき最も分子量分布の幅が狭い。前記ブロック共重合体の分子量分布(D)が、2.5を超えると、分子量の小さいものや、分子量の大きいものが含まれることになる。
【0063】
なお、前記重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」という)法により測定される。
【0064】
(ブロック共重合体の製造方法)
前記ブロック共重合体の製造方法としては、ビニルモノマーの重合反応によって、Aブロックを先に製造し、AブロックにBブロックのモノマーを重合する方法;Bブロックを先に製造し、BブロックにAブロックのモノマーを重合する方法;AブロックとBブロックとを別々に製造した後、AブロックとBブロックとをカップリングする方法等が挙げられる。
【0065】
重合法は特に限定されないが、リビングラジカル重合が好ましい。すなわち、前記ブロック共重合体としては、リビングラジカル重合により重合されたものが好ましい。従来のラジカル重合法は、開始反応、成長反応だけでなく、停止反応、連鎖移動反応により成長末端の失活が起こり、様々な分子量、不均一な組成のポリマーの混合物となり易い傾向がある。これに対してリビングラジカル重合法は、従来のラジカル重合法の簡便性と汎用性を保ちながら、停止反応や、連鎖移動反応が起こりにくく、成長末端が失活することなく成長するため、分子量分布の精密制御、均一な組成のポリマーの製造が容易である点で好ましい。
【0066】
リビングラジカル重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、ニトロキサイドラジカルを生じ得る化合物を用いる方法(ニトロキサイド法;NMP法);銅、ルテニウム等の金属錯体を用いて、ハロゲン化化合物を重合開始化合物として、その重合開始化合物からリビング的に重合させる方法(ATRP法);ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物を用いる方法(RAFT法);有機テルル化合物を用いる方法(TERP法);有機ヨウ素化合物を用いる方法(ITP法);ヨウ素化合物を重合開始化合物とし、リン化合物、窒素化合物、酸素化合物、又は炭化水素などの有機化合物を触媒として用いる方法(可逆的移動触媒重合;RTCP法、可逆的触媒媒介重合;RCMP法)等の方法がある。これらの方法の中でも、使用できるモノマーの多様性、高分子領域での分子量制御、均一な組成、または着色の観点から、TERP法を用いることが好ましい。
【0067】
TERP法とは、有機テルル化合物を連鎖移動剤として用い、ラジカル重合性化合物(ビニルモノマー)を重合させる方法であり、例えば、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された方法である。
【0068】
TERP法の具体的な重合法としては、下記(a)~(d)が挙げられる。
(a)ビニルモノマーを、式(4)で表される有機テルル化合物を用いて重合する方法。
(b)ビニルモノマーを、式(4)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との混合物を用いて重合する方法。
(c)ビニルモノマーを、式(4)で表される有機テルル化合物と式(5)で表される有機ジテルリド化合物との混合物を用いて重合する方法。
(d)ビニルモノマーを、式(4)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と式(5)で表される有機ジテルリド化合物との混合物を用いて重合する方法。
【0069】
【化4】
[式(4)において、R
41は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を示す。R
42およびR
43は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~8のアルキル基を示す。R
44は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基を示す。
式(5)において、R
41は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を示す。]
【0070】
式(4)で表される有機テルル化合物は、具体的にはエチル=2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、エチル=2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、(2-ヒドロキシエチル)=2-メチル-メチルテラニル-プロピオネート等、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された有機テルル化合物が挙げられる。式(5)で表される有機ジテルリド化合物の具体例としては、ジメチルジテルリド、ジブチルジテルリド等が挙げられる。アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができ、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)等が挙げられる。
【0071】
重合工程は、不活性ガスで置換した容器で、ビニルモノマーと式(4)の有機テルル化合物と、ビニルモノマーの種類に応じて反応促進、分子量および分子量分布の制御等の目的で、さらにアゾ系重合開始剤および/または式(5)の有機ジテルリド化合物を混合する。このとき、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。前記ビニルモノマー(a)および(b)の使用量は、目的とする共重合体の物性により適宜調節すればよい。
【0072】
重合反応は、無溶媒でも行うことができるが、ラジカル重合で一般に使用される非プロトン性溶媒またはプロトン性溶媒を使用し、前記混合物を撹拌して行なってもよい。使用できる非プロトン性溶媒は、例えば、アセトニトリル、メチルエチルケトン、アニソール、ベンゼン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトン、ジオキサン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。また、プロトン性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量としては、適宜調節すればよく、例えば、ビニルモノマー1gに対して、0.01ml~50mlが好ましい。反応温度、反応時間は、得られる共重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、0℃~150℃で、1分~100時間撹拌する。このとき、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧または減圧しても構わない。重合反応の終了後、得られた反応混合物から、通常の分離精製手段により、使用溶媒、残存ビニルモノマーの除去等を行い、目的とする共重合体を分離することができる。
【0073】
重合反応により得られる共重合体の成長末端は、テルル化合物由来の-TeR41(式中、R41は上記と同じである)の形態であり、重合反応終了後の空気中の操作により失活していくが、テルル原子が残存する場合がある。テルル原子が末端に残存した共重合体は着色したり、熱安定性が劣ったりするため、テルル原子を除去することが好ましい。テルル原子を除去する方法としては、ラジカル還元方法;活性炭等で吸着する方法;イオン交換樹脂等で金属を吸着する方法等が挙げられ、また、これらの方法を組み合わせて用いることもできる。なお、重合反応により得られる共重合体の他方端(成長末端と反対側の末端)は、テルル化合物由来の-CR42R43R44(式中、R42、R43およびR44は、式(4)中のR42、R43およびR44と同じである。)の形態である。
【0074】
本発明には、基油と前記本発明の潤滑油添加剤とを含有する潤滑油組成物が含まれる。
【0075】
基油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油又はこれらを水素化精製、溶剤脱れき、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水添脱ろう、接触脱ろう、水素化分解、アルカリ蒸留、硫酸洗浄、白土処理等の精製した精製鉱油等の鉱物油;ポリ-α-オレフィン、エチレン-α-オレフィン共重合体、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリフェニルエーテル、アルキル置換ジフェニルエーテル、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、ヒンダードエステル、モノエステル、GTL(Gas to Liquids)等の合成油;鉱物油と合成油の混合油を挙げることができる。
【0076】
本発明のブロック共重合体からなる潤滑油添加剤の含有量は、基油100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、13質量部以下がさらに好ましい。ブロック共重合体からなる潤滑油添加剤の含有量が、前記範囲内であれば、基油と混在した際、共重合体成分が析出することなく、潤滑性能を持つことが可能となるからである。
【0077】
(他の添加剤)
本発明の潤滑油組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記配合剤以外に、他の配合剤を配合することができる。他の配合剤としては、酸化防止剤、摩擦低減剤、油性向上剤、清浄剤、分散剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、腐食防止剤、消泡剤等を挙げることができ、硫黄原子を含有しないことがこのましい。
【0078】
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4 -エチルフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール)、2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、2,6- ビス(2’-ヒドロキシ-3’-t- ブチル-5’-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3-(4-ヒドロキシ-3,5- ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3-(4- ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールジエステル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールジエステル、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール) 、4,4’- チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’- チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N’-ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル- オキシエチル}イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル- 4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス{2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル}サルファイド、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル-ジ(2,6-ジメチル-4-t-ブチル-3-ヒドロキシベンジルサルファイド)、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス( オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン、2,2-チオ-{ジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)}プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシナミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジル-リン酸ジエステル、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルベンジルサルファイド、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス{3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル等のフェノール系酸化防止剤;1-ナフチルアミン、フェニル-1-ナフチルアミン、p-オクチルフェニル-1-ナフチルアミン、p-ノニルフェニル-1- ナフチルアミン、p-ドデシルフェニル-1-ナフチルアミン、フェニル-2-ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;N,N’-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジイソブチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジオクチル-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系酸化防止剤;ジピリジルアミン、ジフェニルアミン、p,p’-ジ-n-ブチルジフェニルアミン、p,p’-ジ-t-ブチルジフェニルアミン、p,p’-ジ-t-ペンチルジフェニルアミン、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン、p,p’-ジノニルジフェニルアミン、p,p’-ジデシルジフェニルアミン、p,p’-ジドデシルジフェニルアミン、p,p’-ジスチリルジフェニルアミン、p,p’-ジメトキシジフェニルアミン、4,4’-ビス(4-α,α-ジメチルベンゾイル)ジフェニルアミン、p-イソプロポキシジフェニルアミン、ジピリジルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;フェノチアジン、N-メチルフェノチアジン、N-エチルフェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、フェノチアジンカルボン酸エステル、フェノセレナジン等のフェノチアジン系酸化防止剤;亜鉛ジチオホスフェートが挙げられる。前記酸化防止剤の配合量は、基油100質量部に対して0.01質量部~5質量部であることが好ましい。
【0079】
摩擦低減剤としては、例えば、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジチオフォスフェート等の有機モリブデン化合物が挙げられる。前記摩擦低減剤の配合量は、基油100質量部に対してモリブデン含量で0.003質量部~0.2質量部であることが好ましい。
【0080】
油性向上剤としては、例えば、オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸類;オレイルグリセリンエステル、ステリルグリセリンエステル、ラウリルグリセリンエステル等のエステル類;ラウリルアミド、オレイルアミド、ステアリルアミド等のアミド類;ラウリルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン等のアミン類;ラウリルグリセリンエーテル、オレイルグリセリンエーテル等のエーテル類が挙げられる。前記油性向上剤の配合量は、基油100質量部に対して0.1質量部~5質量部であることが好ましい。
【0081】
清浄剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのスルフォネート、フェネート、サリシレート、フォスフェートおよびこれらの過塩基性塩が挙げられる。これらの中でも過塩基性塩が好ましく、過塩基性塩の中でもTBN(トータルベーシックナンバー)が30mgKOH/g~500mgKOH/gのものがより好ましい。更に、リンおよび硫黄原子のないサリシレート系の清浄剤が好ましい。前記清浄剤の配合量は、基油100質量部に対して0.5質量部~10質量部であることが好ましい。
【0082】
分散剤としては、例えば、重量平均分子量500~3,000のアルキル基またはアルケニル基が付加されたコハク酸イミド、コハク酸エステル、ベンジルアミンまたはこれらのホウ素変性物等が挙げられる。前記分散剤の配合量は、基油100質量部に対して0.5質量部~10質量部であることが好ましい。
【0083】
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリ(C1~C18)アルキル(メタ)アクリレート、(C1~C18)アルキルアクリレート/(C1~18)アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート/(C1~C18)アルキル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン/(C1~1C8)アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/イソプレン水素化共重合体等が挙げられる。または、分散性能を付与した分散型もしくは多機能型粘度指数向上剤を用いてもよい。平均分子量は1 0,000~1,500,000程度であることが好ましい。前記粘度指数向上剤の配合量は、基油100質量部に対して0.1質量部~20質量部であることが好ましい。
【0084】
流動点降下剤としては、例えば、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテート等が挙げられる。前記流動点降下剤の重量平均分子量は1,000~100,000であることが好ましい。前記流動点降下剤の配合量は、基油100質量部に対して0.005質量部~3質量部であることが好ましい。
【0085】
防錆剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、酸化パラフィンワックスカルシウム塩、酸化パラフィンワックスマグネシウム塩、牛脂脂肪酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアミン塩、アルケニルコハク酸又はアルケニルコハク酸ハーフエステル(アルケニル基の分子量は100~300程度)、ソルビタンモノエステル、ノニルフェノールエトキシレート、ラノリン脂肪酸カルシウム塩等が挙げられる。前記防錆剤の配合量は、基油100質量部に対して0.01質量部~3質量部であることが好ましい。
【0086】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、テトラアルキルチウラムジサルファイド等が挙げられる。前記腐食防止剤の配合量は、基油100質量部に対して0.01質量部~3質量部であることが好ましい。
【0087】
消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシリコーン、トリフルオロプロピルメチルシリコーン、コロイダルシリカ、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、アルコールエトキシ/プロポキシレート、脂肪酸エトキシ/プロポキシレート、ソルビタン部分脂肪酸エステル等が挙げられる。前記消泡剤の配合量は、基油100質量部に対して0.001質量部~0.1質量部であることが好ましい。
【0088】
本発明の潤滑油組成物は、例えば、鉄、鋼、ステンレス、アルミなどの金属材料と接触する潤滑システムの潤滑油組成物として使用することができ、特に寒冷環境下で好適に使用できる。そのような潤滑油組成物としては、金属加工油、エンジン油、駆動系油、作動油等を挙げることができる。
【実施例0089】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0090】
PDMSMA:ポリジメチルシロキサン基を有するメタアクリレート(信越化学社製X-174ASX、官能基当量(g/mol):900、数平均分子量:900)
MOESA:コハク酸水素2-メタクリロイルオキシエチル
SMA:ステアリルメタクリレート
HEMA:ヒドロキシメチルメタクリレート
BTEE:エチル=2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート
DBDT:ジブチルジテルリド
AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)
BuAc:酢酸ブチル
【0091】
[評価方法]
(重合率)
核磁気共鳴(NMR)測定装置(Bruker社製、型式:AVANCE500(周波数500MHz))を用いて、1H-NMRを測定(溶媒:重水素化クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン)した。得られたNMRスペクトルについて、モノマー由来のビニル基と、ポリマー由来のエステル側鎖のピークの積分比を求め、モノマーの重合率を算出した。
【0092】
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(D))
高速液体クロマトグラフ(東ソー製、型式:HLC-8320)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。カラムはSHODEX GPC KF-603(Φ6.0mm×150mm)(昭和電工社製)を1本、移動相に30mmol/L臭化リチウム-30mmol/L酢酸-N-メチルピロリドン溶液、検出器に示差屈折計を使用した。測定条件は、カラム温度を40℃、試料濃度を10mg/mL、試料注入量を10μL、流速を0.2mL/minとした。標準物質としてポリスチレン(分子量70,500、37,900、19,920、10,200、4,290、2,630、1,150)を使用して検量線(校正曲線)を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。これらの測定値から分子量分布(D=Mw/Mn)を算出した。
【0093】
(摩擦係数測定)
摩擦係数は協和界面科学製の自動摩擦摩耗解析装置TS500を用いて測定した。具体的には基油としてポリ-α-オレフィン100質量部に対して、10質量部の潤滑油添加剤を加えて潤滑油を作製した。鋼板の上に基油溶液20μl滴下し、SUS製のビーズを用い、50gの荷重をかけながら点接触条件下50回繰り返し測定した。冷却測定の場合、鋼板板を-10℃まで冷却し、同様の方法で10回繰り返し測定した。
【0094】
<共重合体の製造>
(合成例1)
アルゴン置換された50mL反応器中に、予めアルゴン置換したPDMSMA 12.00g、BTEE 0.30mg、DBDT 0.18mg、AIBN 33mg、BuAc 12.00gを仕込み、60℃で24時間反応させた。重合率は99%だった。
【0095】
この反応液に、予めアルゴン置換したMOESA 2.00g、BuAc 2.00gを加え、60℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を攪拌下のメタノール中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥し、共重合体1を得た。重合率は97%、数平均分子量(Mn)は14430、分子量分布(D)は1.38だった。
【0096】
(合成例2~4)
合成例1と同様にして共重合体2~4を作製した。表1に、使用したモノマー、有機テルル化合物、有機ジテルル化合物、アゾ系重合開始剤、溶媒、反応温度、反応時間、重合率を示した。また、表2に各共重合体の組成、数平均分子量(Mn)、分子量分布(D)を示した。なお、共重合体中の各構造単位の含有率は、重合反応に用いたモノマーの仕込み比率および重合率から算出した。
【0097】
【0098】
【0099】
(実施例1)
合成例1で得られた共重合体1を基油であるポリ-α-オレフィン100質量部に対して、11.1質量部を加えて溶解した。この溶解液をSS400基板に20μl滴下し、50gの荷重を乗せたSUJ-2(3mm、等級G-20)を用い、速度0.2mm/sの条件下、4mm移動させた。この測定を23℃で50回繰り返し行い、摩擦係数を測定した。
【0100】
(実施例2)
共重合体1の代わりに、合成例2で得られた共重合体2を用いた以外、実施例1と同様の測定を行った。
【0101】
(実施例3)
共重合体1の代わりに、合成例3で得られた共重合体3を用いた以外、実施例1と同様の測定を行った。
【0102】
(比較例1)
共重合体1の代わりに、シリコーンオイル(信越化学製KF-96-50CS)を用いた以外、実施例1と同様の測定を行った。
【0103】
(比較例2)
共重合体1の代わりに、合成例4で得られた共重合体4を用いた以外、実施例1と同様の測定を行った。
【0104】
(実施例4)
合成例5で得られた共重合体3を基油であるポリ-α-オレフィン100質量部に対して、11.1質量部を加えて溶解した。この溶解液を-10℃まで冷やした50gの荷重を乗せたSUJ-2(3mm、等級G-20)を用い、速度0.2mm/sの条件下、4mm移動させた。この測定を50回繰り返し行い、摩擦係数を測定した。
【0105】
(比較例3)
共重合体3の代わりに、合成例4で得られた共重合体4を用いた以外、実施例4と同様の測定を行った。
【0106】
各潤滑油について、評価した結果を表3に示した。
【表3】
【0107】
表3の結果から、ポリオルガノシロキサン基を有するビニルモノマー(a)に由来する構造単位(a-1)を含むAブロックと、極性基を含有するビニルモノマー(b)に由来する構造単位(b-1)を含むBブロックとを含むブロック共重合体からなる潤滑油添加剤を配合した本発明の潤滑油は、摩擦係数が小さい。
【0108】
実施例1および実施例2の対比から、極性基を含有するビニルモノマー(b)として、カルボキシ基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を含むBブロックを有するブロック共重合体からなる潤滑油添加剤を配合した潤滑油の摩擦係数が、ヒドロキシ基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を含むBブロックを有するブロック共重合体からなる潤滑油添加剤を配合した潤滑油の摩擦係数よりも小さくなることが分かる。また、実施例4および比較例3との対比から、本発明の潤滑油添加剤の効果は、低温領域で顕著であることが分かる。
本発明の潤滑油添加剤は、金属加工油、エンジン油、駆動系油、作動油等の様々な用途の潤滑油に好適に適用できる。また、本発明の潤滑油添加剤は、硫黄を含有せず、環境負荷が小さい。
本発明の好ましい態様(1)は、ポリオルガノシロキサン基を有するビニルモノマー(a)に由来する構造単位(a-1)を含むAブロックと、極性基を含有するビニルモノマー(b)に由来する構造単位(b-1)を含むBブロックとを含むブロック共重合体からなることを特徴とする潤滑油添加剤である。
本発明の好ましい態様(2)は、前記ビニルモノマー(a)が、ポリオルガノシロキサン基を有する(メタ)アクリレートおよび/またはポリオルガノシロキサン基を有する(メタ)アクリルアミドである態様(1)に記載の潤滑油添加剤である。
本発明の好ましい態様(5)は、前記極性基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基およびアミノ基よりなる群から選択される少なくとも1種である態様(1)~(4)のいずれか一つに記載の潤滑油添加剤である。
本発明の好ましい態様(6)は、前記ブロック共重合体中のAブロックとBブロックとの質量比(Aブロック/Bブロック)が、50/50~99/1である態様(1)~(5)のいずれか一つに記載の潤滑油添加剤である。
本発明の好ましい態様(7)は、前記ブロック共重合体の数平均分子量が、5,000~100,000である態様(1)~(6)のいずれか一つに記載の潤滑油添加剤である。
本発明の好ましい態様(8)は、前記ブロック共重合体が、リビングラジカル重合により得られたものであり、その分子量分布が2.5以下である態様(1)~(7)のいずれか一つに記載の潤滑油添加剤である。
本発明の好ましい態様(12)は、前記潤滑油添加剤の配合量が、基油100質量部に対して、1質量部~20質量部である態様(10)または(11)に記載の潤滑油組成物である。